討鬼伝
松尾佑二の住む町には、大きな山がある。
鬼が住んでいること以外は何の特徴も無い、手つかずの自然に包まれた平凡な野山だ。
人が歩ける程度に道は整備されていたが、逆に言えばそれしか無い。視界に入るのは植物だけ。それも大して珍しくないものばかり。ハイキングやピクニックがしたいなら、他の所に行った方がマシだ。
余人にとっては、本当にその程度の価値しかない山である。
「おーい!」
だが松尾佑二は違った。彼にとってその山には、足を向けるだけの価値があった。
正確に言うと、彼は「山に住むもの」に価値を見出していた。山そのものに魅力を感じていたわけではない。
不憫な山である。しかし実際魅力が無いから仕方がない。
「鬼やーい!」
町内の小学校に通う小学五年生男子が、山の中で声を上げる。申し訳程度に舗装された砂利道の上に立ち、周囲を緑色の樹木に囲まれた中で堂々と叫ぶ。
道のど真ん中で独り仁王立ちするその姿に恐怖はなく、その顔には期待と決意が溢れていた。彼は覚悟してここにいた。
「来たぞー! 出てこーい!」
佑二が再び叫ぶ。声変わり前のハスキーボイスが木々の間をすり抜け、山の彼方へこだまする。風がそよぎ、鳥の鳴き声がまばらに返ってくる。
風が肌を撫で、鳥の声が耳をくすぐる。佑二は目を閉じ、両手を広げてそれらの感覚に身を任せる。大自然の息吹が全身に降り注ぐ。気持ち良いことこの上ない。
次の瞬間、その息吹に異物が混じった。
「おう坊主! 佑二! 今日も来たのか!」
佑二から見て右手側に広がる樹海。その中から威勢のいい声が響き、同時に「それ」がぬうっと姿を現す。虎柄の布で胸と腰回りを隠し、手に酒入りの瓢箪と金棒を持つ、額に角を生やした赤い肌の女。
アカオニ。昔からこの山に住んでいる鬼である。アカオニは金棒を持った方の手を元気よく振り回し、草木をかき分け大股で佑二の方へ近づいていった。
「いつも時間通りだなあ! 偉いぞー!」
「だって約束したからね! 約束は守らないと!」
一方で彼女の声を聞いた佑二も、すぐにそちらへ体を向けた。そして佑二は笑みを浮かべ、その人外の存在を正面から待ち構えた。彼は鬼を恐れず、鬼も彼を恐れなかった。
やがて二人が相対する。鬼も人も笑っていた。この瞬間を待ちわびていたような、恍惚とした笑みを湛えていた。
「一週間ぶりだな、佑二」
「僕も会いたくってウズウズしてた」
「お前もか! ワハハッ、嬉しいこと言ってくれるなあ」
二回りも小さい少年の言葉に、アカオニが呵々と笑って言い返す。それから佑二が自然な動きでアカオニに寄り添い、彼女の腰布の端をそっとつまむ。
「じゃあ今日も行くか。特訓の成果、ちゃんと見せてもらうからな」
「うん!」
姉と弟――あるいは母と息子――のように、二人並んで砂利道を歩く。二人の足取りに迷いはなく、慣れた動きで山道を進む。
当然である。佑二達にとってこの行軍は、もはや週に一度の恒例行事と化していたからだ。
佑二がその鬼と知り合ったのは、今から一年ほど前のことである。その日の夕方、学校から帰る途中で、佑二は同じく山に帰ろうとする件の鬼とばったり出くわしたのである。
「あっ、鬼だ」
「お? なんだ坊主、本物見るのは初めてか?」
その山に鬼が住んでいるというのは、その町では当たり前のこととして受け入れられていた。アカオニは当たり前のように山を下り、当たり前のように人前に出現し、当たり前のように買い物したり飲み食いしたりする。
佑二もその鬼のことは話に聞いていた。しかし実際に会うのは初めてだったので、初遭遇の際にちょっと驚いてしまった。それもまあ無理からぬことではあったので、アカオニはそれについて特に咎めることはしなかった。
「坊主、小学生か。今から帰りか?」
アカオニが佑二に近づき、自分から屈み佑二と同じ目線に並んで話しかける。最初驚いていた佑二もすぐに慣れ、アカオニの顔をまっすぐ見つめながらそれに答えた。
「うん。今日は五時間目で授業終わったから」
「そうか、そうか。ちゃんと休まないで学校行ったのか。偉いぞー」
佑二の言葉を聞いたアカオニはそう言って破顔し、眼前の小学生の頭をわしわしと撫でる。鬼からの暖かなスキンシップに、佑二の警戒心がみるみる氷解していく。
同時にアカオニの中で、それまで抱くことのなかった感情が芽生え始める。アカオニはそれの正体にすぐに気づき、またそれのもたらす衝動に逆らうこともしなかった。
「ところで坊主、この後ヒマか? 一緒にいいことしないか?」
すぐさま行動に移る。佑二は即答せず、顔を曇らせた。
「駄目だよ。ちゃんと帰らないとお母さん心配しちゃうし……」
「大丈夫だって。お母さんには私の方から話しておくから」
アカオニはしつこかった。そしてアカオニが素で放つ圧迫感に、佑二はまだ抗えなかった。
「わ、わかりました……」
結局佑二は、アカオニの提案に乗った。押し切られた形である。
「よし! じゃあ私のうちに行こう! 私はメグ。よろしくな!」
「ぼ、僕は松尾佑二です」
「わかった佑二。ついてきな!」
アカオニ――メグがそう言って、佑二に手を差し出す。佑二がその手を掴み、メグがそれを握り返す。
三十分後、佑二はメグの住処である穴ぐらの中で「食われた」。出会って一時間も経っていない。スピード決着である。
その後佑二とメグが恋仲になったのは言うまでもない。そもそも好きでない人間と愛を交わす魔物娘など存在しない。相手が好きだから食うのだ。メグも同じだ。
「これで私とお前は恋人だ。もう離さないからな」
「うん。僕ももう離れないからね」
「嬉しいこと言ってくれるじゃねえか。それでこそ私の旦那様だ」
接合を果たした後、すっかり互いの虜になった二人が、同じ藁の上に寝そべってピロートークを交わす。こうして晴れて二人は恋人となり、定期的に会っては「仲良し」をしていた。
それから一年が経った。関係は変わらず、それどころか二人は日を追うごとに愛を深めていった。誰も彼らの間には立てず、ただ遠くから見守ることしか出来ない。
「大好きだぞ、佑二」
「大好きだよ、メグ」
そして今日も二人は、山の中で愛を囁き合うのであった。
「よーしメグ、今日こそ君を退治してやるからな!」
山の一角、メグの住処とする穴倉の中。互いに服を脱ぎ捨て全裸で向き合い、いつもの藁の上で佑二が宣言する。二人の間でのみ通じる合言葉、始まりの合図である。
これからメグは、佑二の「金棒」によって退治されるのだ。
「おお、怖い怖い。それじゃあ今日も佑二に懲らしめられちまおうかな」
期待に胸膨らませ、ニコニコ笑ってメグが答える。怪物を討つのはいつだって人間だ。
「でもその前に、まずはお前の金棒をおっ勃たせないとな」
メグがそう言って、佑二の前に跪く。膝をついて中腰の姿勢になり、彼の肉棒と己の視線を同じ位置に置く。
眼前に映る佑二の「男」は、まだ完全に目覚めてはいなかった。まずは半勃ちのそれを準備万端にすることから始めなければ。メグはそう考え、それを見つめながら佑二に言った。
「私がいじらないと起きないなんて、世話のかかるふにゃちん君だぜ」
「ご、ごめんね。僕もう、メグにいじってもらわないと、おちんちんおっきくならなくなっちゃったんだ」
「……この変態め♪」
佑二の告白を聞いたメグが、間を置いて言い返す。二人して顔を真っ赤にし、期待と興奮で心臓を激しく高鳴らせていた。
その後メグが両手を動かす。右手でらっきょうサイズの竿を撫で、左手をしわしわの玉袋に添える。
「あっ」
性器にアカオニの指の感触を覚え、佑二が上ずった声をあげる。その初々しい反応に喜びを感じ、メグが責めを続行する。
「ほーれ、さすさす、さわさわ……」
爪で裏筋を擦り、手のひらで袋を揺らす。肉棒を指で包み、優しく上下にさする。
愛を込めて、まごころたっぷりに佑二の性器に奉仕する。自分を貫く肉棒に感謝を捧げ、うっとりした顔で愛撫を続ける。
「あっ、あっ、ああっ……」
メグの愛撫にあわせて、佑二の体が小刻みに震える。自分の奉仕に、愛する佑二が敏感に反応してくれる。
可愛い佑二が可愛い声で鳴いてくれる。
「メグ、もっと、もっとさわって……」
佑二が自分を求めてくる。
嬉しい。好き。
メグの心がますます燃え上がる。胸の奥が好きで溢れていっぱいになる。
もっと彼に喜んでもらおうと、奉仕に込める愛をさらに強くする。
「あー……ん……ちゅ、ちゅっ……」
肉棒から手を離し、袋は掴んだままそれを口で咥える。唇で根元を挟み、口内に受け入れた肉竿を舌で舐めしゃぶる。
「ちゅ、くちゅ、んちゅ……」
優しく、ねっとりと。真っ赤なナメクジが表皮を這い回り、彼の男根を愛していく。
「ちゅるっ、くちゅ、じゅるるっ」
「ああ、あ、うああっ……!」
メグの口が男根に吸いつく。佑二の喘ぎ声が一段階高くなる。腰砕けになるのを防ぐように、メグが佑二の背中に手を回し、がっしりと固定させる。
「んふふ、にがふぁない」
吸引を中断し、しかし肉棒は咥えたまま、上目遣いでメグが言う。佑二も涙目になりつつ、メグを見つめ返して言い返す。
「もっとして……?」
「ん♪」
佑二のリクエストにメグが頷く。直後、以前よりもペースを速めて口内愛撫を再開させる。
肉棒に舌を絡みつかせ、下品な音を立てて激しくストロークする。
「じゅるっ! ずるるっ! じゅちゅ、じゅるっ! ずぞぞぉ……っ!」
年端もいかない子供の性器を咥えこみ、一心不乱にむしゃぶりつく。佑二の体が律儀にそれに反応し、今まで以上にビクビクと全身を震わせる。
「じゅりゅ、じゅる、ずるるっ!」
「ひ、ひぃ、ひいぃぃぃ……!」
佑二の喉から情けない呻き声が上がる。男の尊厳も人間性もかなぐり捨てた、肉欲を貪るだけのふしだらな雄叫び。
それがメグを震わせる。愛する人を玩具にしている。その事実がメグの脳を揺さぶり、股間を喜びでぐっしょり濡らす。
もう限界だ。早く金棒で倒されたい。
「メグ、メグっ! もう僕、ぼくぅ……!」
女の子のように上ずった声で佑二が叫ぶ。限界が近いことを示す合図だ。メグは心中で頷き、ラストスパートをかける。
「じゅる、じゅぽっ! ぐちゅ! じゅるるっ!」
アカオニが喉を鳴らし、激しく上下動を繰り返す。鬼の暴力的なフェラチオを受けて佑二の下半身に血が溜まり、彼を限界へと近づけていく。
そしてその時が来る。
「メグっ! 出るッ!」
佑二が吠える。メグの後頭部を両手で掴み、肉棒を奥深くまで咥えさせる。
直後、佑二の男が爆発する。粘ついた白濁液が鈴口から噴き出し、メグの口を容赦なく汚す。生臭い刺激臭が喉から鼻を通り、アカオニの思考を快楽で塗り潰す。
「ふぐッ、グブッ! ブふゥ……ッ!」
佑二の迸りをまともに食らい、メグが声にならない声を上げる。肉棒を咥えたまま放つ、豚の鳴き声のような醜い叫び。しかし心は躍っていた。
彼が自分で興奮してくれた。嬉しくないわけがない。メグは呻きながら、それでも最後の一滴まで飲み干していった。
「んッ、ん、んグッ、ぐうッ……」
どろりとした感触が喉を通り、胃の中へ流れ込む。それがたまらなく愛おしい。メグはそのまま口の中のモノを全て飲み込み、その後ゆっくりと肉棒から顔を離していった。
「あー……」
離した後、メグが口を開けて舌を突き出し、口の中を佑二に見せつける。どうだ、お前のモノを全部喰らってやったぞ。
メグは佑二に自慢したかった。褒めてもらいたかったのだ。
「おいしかった?」
佑二が問う。一旦口を閉じ、それからメグが笑って答える。
「美味かったよ」
「……えへへ」
よかった。それを聞いた佑二が笑みをこぼす。好きな人に美味しいと言ってもらえて、喜ばぬ者はいない。
「ひひっ、お前の精液はいつ飲んでも美味いからな」
そしてメグもつられて笑う。大好きな佑二が褒めてくれたのだ。嬉しくないわけがない。
「本当? 嬉しいなあ」
「私がお前にウソつくわけないだろ。ドロドロでねばねばしてて、もう病みつきだ」
幸せな余韻に浸りながら、じゃれ合うように言葉を交わす。そしてお互い笑いあう中で、おもむろに佑二が腰を降ろす。
佑二が膝立ちの姿勢になる。メグの視線の位置に、佑二の視線が来る。二人の視線が絡み合い、吐息が互いの髪を揺らす。
「もっとくれよ」
相手の顔をじっと見ながら、メグが佑二に懇願する。アカオニから熱っぽい声でおねだりされて、佑二の体に火が灯る。
「いいよ」
佑二が小さく頷く。メグが佑二に優しく抱きつき、佑二がそれを受け入れる。
「もっとしよう」
年下の少年が耳元で囁く。年上の鬼が心を震わせ、そのまま前のめりに佑二を押し倒す。
第二回戦。本番の始まりだ。
藁の上に佑二が仰向けになる。その上からメグが向かい合うように重なり、互いの素肌を密着させる。
二つの裸体が一つになり、心音と体温を伝え合う。メグの温もりを全身で感じ、佑二が恍惚とした表情で呟く。
「メグのからだ、何度抱いてもあったかくて気持ちいいね」
「佑二の体も、ぽかぽかであったかいぞ」
負けじとメグが言い返す。佑二の耳元で鬼が囁き、少年の体がびくりと震える。
その初々しい反応を愛しく感じながら、メグが再び佑二の耳元で呟く。
「もっとくっつきたい。いいか?」
「――うん」
佑二が頷く。許可をもらったメグが体を離し、腰を浮かせて狙いを定める。
少年の股間にそそり立つ金棒は、既に戦闘態勢を整えていた。膨張した表面には血管が浮き上がり、剥き出しになった亀頭は立派なカリ首を備えていた。
準備万端だ。とても子供のものとは思えないほど立派な逸物を見て、メグが思わずため息を漏らす。
「お前のちんぽ、本当にでかくなったなあ」
「メグに鍛えられたからね」
「物覚えのいい奴め……今日も貫いてくれるか?」
「うん」
メグの問いに、佑二が力強く頷く。それを見たメグも微笑み、ゆっくり腰を降ろしていく。
既に愛液でびちょびちょになったメグの割れ目に、佑二の亀頭が迫る。雌と雄がどんどん距離を詰めていき、やがて二つが接触する。
「あン♪」
直後、メグがそこで動きを止め、艶めいた声をあげる。陰唇の入口と亀頭の先が触れあっただけなのに、甘い電流が全身を駆け巡る。
全部挿入れたらどうなるんだろう。メグの胸が期待で高鳴る。視線を降ろすと、佑二もメグと同じくらい興奮しているのが見てとれる。目を見開き、激しく口で呼吸し、こちらをじっと見つめてくる。
二人の視線が交錯する。佑二が微笑み、メグが目を細める。
「……いくぜ」
アカオニが告げる。そして相手の返事を待たぬまま、一気に腰を落とす。
ぐちゃり。亀頭が割れ目を切り開き、肉棒が根元まで入り込む。
佑二の熱を体内で感じる。幸せの電流が脳味噌を溶かし、メグが喜悦の叫びをあげる。
「あああぁぁぁぁぁ……ッ♪」
鬼殺しの金棒が、致命の一撃を食らわせた瞬間である。そして一撃を貰い、おとがいを上げて咆哮するメグを、佑二はうっとりとした顔で見つめた。
綺麗だ。いやらしい。エロい。佑二の目と心がメグに食いついて離れなくなる。佑二は完全にメグの虜となっていた。
すると気を持ち直したメグが、彼の視線に気づいてそちらを見た。
「な、なんだぁ……? 軽くイった私を見て、エロいって思ったりしたのかあ?」
そして彼の心をずばり言い当てる。見抜かれたところで何の問題もない。佑二は正直に首を縦に振った。
メグはそれに気分を良くし、佑二の頬に手を添え言った。
「そうかあ、私でエロいって思ってくれたのかぁ……♪」
「うん。大声出した時のメグ、凄いエロかった」
「そうかそうか。じゃあ次は、エロいお前を見せてもらおうかな♪」
正直に答えた佑二に、メグが同じように欲望を正直に吐露する。鬼からの催促に対し、しかし佑二は笑みを浮かべた。
「気持ちよくさせてください、メグ」
「いいぜ。死ぬほど気持ちよくさせてやる」
人間の欲望を鬼が首肯する。そして腰に力を込め、肉棒を咥えた下半身を上下に動かし始める。
「あッ、あン、ンっ、にゃあンッ♪」
肉の弾ける音に混じって、メグの甘い悲鳴が響く。水音と打擲音と嬌声が穴ぐらで反響し、何度も何度も佑二の耳に突き刺さっていく。
その音と目の前で跳ねるメグの姿が、佑二のなけなしの理性を溶かしていく。もっと乱れろ。もっと盛れ。五感を通して脳に焼きつく非道徳的な世界が、性に疎い小学生を底なし沼に引きずり込む。
ヤっていい。
もっとハメていいんだ。
「あぁっメグっ、メグうぅぅっ……!」
堕ちる。肉の虜になった佑二が自分から腰を動かす。大好きな魔物娘の名前を呼びながら、大好きな魔物娘の動きに合わせて、より深く肉の槍を突き刺さんと奮闘する。
すぐに努力の成果が生まれる。何度目かのピストンの直後、亀頭と子宮口がぶつかりあい、佑二とメグを激しく揺さぶる。
「ひィん!」
「あッ、ほ、おほおぉぉぉ……ッ♪」
二匹の獣が絶叫する。佑二が堪えるように――そして我慢しきれなくなった声を上げ、メグが遠慮なく叫んで無様なひょっとこ顔を晒す。
「イぎゅッ♪ イギッ♪ もっと、もっとぉッ!」
味を占めたアカオニが一層動きを激しくする。股ぐらを上から押し潰さんとするような容赦のない上下運動が、佑二の下半身を襲う。しかし佑二も負けじと腰に力を込め、メグのプレスを正面から受け止めるように力強いピストンを行う。
「もっと! もっと入れるッ! もっとメグをッ!」
ぱちん! ぱちん! ぱんぱんぱんぱん!
「うあああッ、佑二ッ! いいぞッ、やればできるじゃねえかッ!」
「ああっ、うあああッ、メグっ、メグぅッ!」
「ああいる! 私はここにいるぞ! もっと突け! 鬼を斃してみやがれぇッ!」
肉のぶつかる音がさらに強くなる。テンポも速くなり、二人の息がどんどん荒くなる。結合部分から愛液と我慢汁のカクテルが滝のように溢れ出す。
愛が溢れて止まらない。脳と心が快楽で埋め尽くされ、体が欲望に支配される。
好き合いたい。愛し合いたい。汚し合いたい。苛烈な感情が胸を焼く。
「ゆーじ! ゆーじ! 犯せ! もっと突け! わたしをブチ抜けえぇぇッ!」
「メグ! メグと、もっとえっちするッ! もっとおにと、もっとえっちなことするよぉッ!」
アカオニが欲望のままに叫び、佑二が思考放棄して感情のままに叫ぶ。下半身の動きは止まらず、ばきばきに強張った肉棒がぐちょぐちょに熟れた肉壺を激しく突きまくる。カリが襞を擦り、襞が表皮を舐め回す。
「あッ、ギッ! ひぃぃぃッ!」
「んオッ、あぎッ、んヒぃぃっ!」
言葉にならない声が二人の口から飛び出す。完全に獣だ。二人して汗と涎を垂れ流し、思うままに肉を貪る。獣だ。
でも愛はある。二人のけだものが、愛を求めて絡み合う。
「めぐッ! もうむり! ぼくもうむりだよッ!」
そして限界が来る。佑二が情けない声を上げる。腰の振りは止めないまま、メグが佑二に言い返す。
「いいぞッ! 出せッ! 私を汚せッ!」
メグも限界だった。何より一刻も早く、佑二の精を味わいたかった。互いに許可を出した二匹が、ラストスパートをかける。
「佑二! 佑二! ゆーじゆーじッ!」
「メグ! ああメグ! メグぅっ!」
相手の名を呼ぶ。手を重ね、指を絡める。最後の瞬間を求めて、二人一緒に高みへ向かう。
やがてその時が来る。
「あッ――」
佑二が情けない声を出す。
刹那、亀頭が爆発する。
「ひッ」
精液が子宮を塗り潰す。白濁が腹を内から叩く。熱い。胎内が燃える。
体の中が佑二でいっぱいになる。脳が焼ける。
熱い。好き。愛してる。好き。
「――ひいいいいいいいいいん♪」
感情を処理できなくなったメグが絶叫する。言葉で説明せず、心のままに叫びまくる。
「ヒいッ、いいッ、ヒいいいいいッ!」
少年に襲われたアカオニが、だらしのない声を出す。屈辱とは思わない。むしろこうでなくては。
メグは幸福感と満足感を噛み締めながら絶頂を続けた。
「ああ、はっ、ああ……」
それもやがて終わりが来る。肉棒が精を出し終えると同時に、メグの心が落ち着きを取り戻す。佑二も同じく平静を取り戻し、理性を獲得した獣が顔を見合わせる。
「……よかった?」
「……良かった♪」
佑二の問いにメグが答える。メグはそのまま顔を近づけ、佑二の唇に自分の唇を重ねた。
「ん……」
ただ唇を触れ合わせるだけの、シンプルなキス。アカオニがすぐに顔を離し、再び佑二を見る。
「佑二は? 満足できたか?」
「うん。最高だった」
メグが尋ね、佑二が答える。彼の顔は憔悴していたが、同時に喜びに満ちてもいた。
「よかったよ、メグ」
「へへっ♪」
少年の心からの言葉に、アカオニがにっこり笑う。そして再び顔を近づけ、佑二の唇を奪う。
今度は本気のキス。舌をねじ込み、佑二の舌を力任せにしゃぶる。佑二は一瞬驚いたが、すぐに反撃を開始する。
「ん、ちゅっ、くちゅっ……」
「じゅる、ちゅ、あむ、ちゅっ……」
口の中で二人の舌が踊る。唾液を交換し、互いの味を確かめ合う。
それからたっぷり数分、鬼と人は事後の余韻に浸りながら、ディープキスを堪能した。
「ぷは……っ」
数分後、メグが口を離す。名残を惜しむように、唾液が互いの唇に橋を架ける。
橋が切れる。メグと佑二の視線が重なる。全く同時に二人が微笑む。
「もう一回する?」
「当然だ。するぞ」
微笑みながら佑二が問う。笑みを深めてメグが答える。その答えを予測していたかのように、佑二も同意するように首を縦に振る。
鬼が一回だけで満足するはずがない。佑二はそれを過去の経験から知っていた。そして彼もまた、一回だけでは満足できない体になっていた。
「もっともっと鳴かせてやる。覚悟しろよ?」
「うん♪」
脅すようなメグの言葉に、佑二が笑って頷く。それを見たメグは頼もしさを覚えつつ、体の位置をずらして半勃ちの肉棒を視界に収める。
「いい返事だ」
そう言って、目の前の肉棒にかぶりつく。唇で挟み、歯で甘噛みし、愛液の残滓を舌で絡めとる。
鬼の愛撫に佑二が甘い声を上げる。それに気を良くしたメグが、どんどんペースを上げていく。佑二の嬌声が高まり、棒が硬さを取り戻していく。
第二回戦の始まりだ。
「あー、喰った喰った♪」
一時間後。二人は同じ藁の上で仰向けになり、悦びを共有していた。二人は一時間の内に三回――家に帰る時間も考慮しなければならない――本番を行い、存分に精と愛を貪った。そうして身も心も満たされた二人は、仲良く全裸で横並びになっていた。
「いやー、なんど味わっても最高だな。お前の精は本当飽きないぜ」
「僕もその、メグの味、好きだよ」
豪快に言ってのけるメグの横で、佑二も恥じらいながら感想を言う。それを聞いたメグはますます気分を良くし、佑二の側頭部に手を回して力任せに引き寄せた。
「可愛いやつめ」
「からかわないでよ」
「からかってねえよ。私は本気で言ってる」
「むう……」
堂々と言い放つメグに、佑二が困った顔で言い淀む。そんなにすっぱり言われると、恥ずかしくてたまらない。
そうして顔を赤くする佑二を見て、メグがゲラゲラ笑って佑二の頭を撫でる。まだまだ子供は鬼に勝てない。
「本当に可愛い奴だよお前は」
「もう、子ども扱いしないでよ」
「まだ小学生だろお前」
「むうううっ……!」
反抗するも図星を突かれた佑二が黙り込む。そのまま頬をふくらませてそっぽを向く。完全に子供である。
メグはその姿を見て、実に愉快そうに笑った。そしてさらに不貞腐れる佑二の額に狙いをつけ、そこに不意打ち気味にキスをした。
「な」
奇襲を食らった佑二が固まる。子供だ。メグはすぐ顔を離し、それまでとは違う笑み――慈愛に満ちた微笑みを見せながら、佑二に言った。
「まだまだ子供だな」
「あ、あう」
「私はそんなお前が好きだ」
またしても奇襲。佑二が硬直する。後手後手である。
そうして固まる佑二の頬を、メグが優しく撫でる。
「好きだぞ、佑二」
メグの優しい言葉が、佑二の耳にするりと入り込む。直後、佑二の体から緊張が抜けていく。
固まらせたり、ほぐしたり。さっきからずっとメグにいいようにされている。メグはずるい。
「メグばっかりずるいよ」
本音が口から飛び出す。メグは笑って佑二に言い返す。
「お前もまだまだだな」
「もう!」
メグの言葉に、佑二がまたも頬を膨らませる。もはやそれしか出来ない。
堂々巡りだ。しかし佑二はこの時、それすらも心地よいと感じてしまっていた。メグに翻弄されている時間を、とても愛おしいと思っていた。
「絶対ぎゃふんと言わせてやるんだから!」
「その意気だ。頑張れよ佑二♪」
「がんばる!」
若い少年が鬼退治を果たすのは、当分先の事である。
鬼が住んでいること以外は何の特徴も無い、手つかずの自然に包まれた平凡な野山だ。
人が歩ける程度に道は整備されていたが、逆に言えばそれしか無い。視界に入るのは植物だけ。それも大して珍しくないものばかり。ハイキングやピクニックがしたいなら、他の所に行った方がマシだ。
余人にとっては、本当にその程度の価値しかない山である。
「おーい!」
だが松尾佑二は違った。彼にとってその山には、足を向けるだけの価値があった。
正確に言うと、彼は「山に住むもの」に価値を見出していた。山そのものに魅力を感じていたわけではない。
不憫な山である。しかし実際魅力が無いから仕方がない。
「鬼やーい!」
町内の小学校に通う小学五年生男子が、山の中で声を上げる。申し訳程度に舗装された砂利道の上に立ち、周囲を緑色の樹木に囲まれた中で堂々と叫ぶ。
道のど真ん中で独り仁王立ちするその姿に恐怖はなく、その顔には期待と決意が溢れていた。彼は覚悟してここにいた。
「来たぞー! 出てこーい!」
佑二が再び叫ぶ。声変わり前のハスキーボイスが木々の間をすり抜け、山の彼方へこだまする。風がそよぎ、鳥の鳴き声がまばらに返ってくる。
風が肌を撫で、鳥の声が耳をくすぐる。佑二は目を閉じ、両手を広げてそれらの感覚に身を任せる。大自然の息吹が全身に降り注ぐ。気持ち良いことこの上ない。
次の瞬間、その息吹に異物が混じった。
「おう坊主! 佑二! 今日も来たのか!」
佑二から見て右手側に広がる樹海。その中から威勢のいい声が響き、同時に「それ」がぬうっと姿を現す。虎柄の布で胸と腰回りを隠し、手に酒入りの瓢箪と金棒を持つ、額に角を生やした赤い肌の女。
アカオニ。昔からこの山に住んでいる鬼である。アカオニは金棒を持った方の手を元気よく振り回し、草木をかき分け大股で佑二の方へ近づいていった。
「いつも時間通りだなあ! 偉いぞー!」
「だって約束したからね! 約束は守らないと!」
一方で彼女の声を聞いた佑二も、すぐにそちらへ体を向けた。そして佑二は笑みを浮かべ、その人外の存在を正面から待ち構えた。彼は鬼を恐れず、鬼も彼を恐れなかった。
やがて二人が相対する。鬼も人も笑っていた。この瞬間を待ちわびていたような、恍惚とした笑みを湛えていた。
「一週間ぶりだな、佑二」
「僕も会いたくってウズウズしてた」
「お前もか! ワハハッ、嬉しいこと言ってくれるなあ」
二回りも小さい少年の言葉に、アカオニが呵々と笑って言い返す。それから佑二が自然な動きでアカオニに寄り添い、彼女の腰布の端をそっとつまむ。
「じゃあ今日も行くか。特訓の成果、ちゃんと見せてもらうからな」
「うん!」
姉と弟――あるいは母と息子――のように、二人並んで砂利道を歩く。二人の足取りに迷いはなく、慣れた動きで山道を進む。
当然である。佑二達にとってこの行軍は、もはや週に一度の恒例行事と化していたからだ。
佑二がその鬼と知り合ったのは、今から一年ほど前のことである。その日の夕方、学校から帰る途中で、佑二は同じく山に帰ろうとする件の鬼とばったり出くわしたのである。
「あっ、鬼だ」
「お? なんだ坊主、本物見るのは初めてか?」
その山に鬼が住んでいるというのは、その町では当たり前のこととして受け入れられていた。アカオニは当たり前のように山を下り、当たり前のように人前に出現し、当たり前のように買い物したり飲み食いしたりする。
佑二もその鬼のことは話に聞いていた。しかし実際に会うのは初めてだったので、初遭遇の際にちょっと驚いてしまった。それもまあ無理からぬことではあったので、アカオニはそれについて特に咎めることはしなかった。
「坊主、小学生か。今から帰りか?」
アカオニが佑二に近づき、自分から屈み佑二と同じ目線に並んで話しかける。最初驚いていた佑二もすぐに慣れ、アカオニの顔をまっすぐ見つめながらそれに答えた。
「うん。今日は五時間目で授業終わったから」
「そうか、そうか。ちゃんと休まないで学校行ったのか。偉いぞー」
佑二の言葉を聞いたアカオニはそう言って破顔し、眼前の小学生の頭をわしわしと撫でる。鬼からの暖かなスキンシップに、佑二の警戒心がみるみる氷解していく。
同時にアカオニの中で、それまで抱くことのなかった感情が芽生え始める。アカオニはそれの正体にすぐに気づき、またそれのもたらす衝動に逆らうこともしなかった。
「ところで坊主、この後ヒマか? 一緒にいいことしないか?」
すぐさま行動に移る。佑二は即答せず、顔を曇らせた。
「駄目だよ。ちゃんと帰らないとお母さん心配しちゃうし……」
「大丈夫だって。お母さんには私の方から話しておくから」
アカオニはしつこかった。そしてアカオニが素で放つ圧迫感に、佑二はまだ抗えなかった。
「わ、わかりました……」
結局佑二は、アカオニの提案に乗った。押し切られた形である。
「よし! じゃあ私のうちに行こう! 私はメグ。よろしくな!」
「ぼ、僕は松尾佑二です」
「わかった佑二。ついてきな!」
アカオニ――メグがそう言って、佑二に手を差し出す。佑二がその手を掴み、メグがそれを握り返す。
三十分後、佑二はメグの住処である穴ぐらの中で「食われた」。出会って一時間も経っていない。スピード決着である。
その後佑二とメグが恋仲になったのは言うまでもない。そもそも好きでない人間と愛を交わす魔物娘など存在しない。相手が好きだから食うのだ。メグも同じだ。
「これで私とお前は恋人だ。もう離さないからな」
「うん。僕ももう離れないからね」
「嬉しいこと言ってくれるじゃねえか。それでこそ私の旦那様だ」
接合を果たした後、すっかり互いの虜になった二人が、同じ藁の上に寝そべってピロートークを交わす。こうして晴れて二人は恋人となり、定期的に会っては「仲良し」をしていた。
それから一年が経った。関係は変わらず、それどころか二人は日を追うごとに愛を深めていった。誰も彼らの間には立てず、ただ遠くから見守ることしか出来ない。
「大好きだぞ、佑二」
「大好きだよ、メグ」
そして今日も二人は、山の中で愛を囁き合うのであった。
「よーしメグ、今日こそ君を退治してやるからな!」
山の一角、メグの住処とする穴倉の中。互いに服を脱ぎ捨て全裸で向き合い、いつもの藁の上で佑二が宣言する。二人の間でのみ通じる合言葉、始まりの合図である。
これからメグは、佑二の「金棒」によって退治されるのだ。
「おお、怖い怖い。それじゃあ今日も佑二に懲らしめられちまおうかな」
期待に胸膨らませ、ニコニコ笑ってメグが答える。怪物を討つのはいつだって人間だ。
「でもその前に、まずはお前の金棒をおっ勃たせないとな」
メグがそう言って、佑二の前に跪く。膝をついて中腰の姿勢になり、彼の肉棒と己の視線を同じ位置に置く。
眼前に映る佑二の「男」は、まだ完全に目覚めてはいなかった。まずは半勃ちのそれを準備万端にすることから始めなければ。メグはそう考え、それを見つめながら佑二に言った。
「私がいじらないと起きないなんて、世話のかかるふにゃちん君だぜ」
「ご、ごめんね。僕もう、メグにいじってもらわないと、おちんちんおっきくならなくなっちゃったんだ」
「……この変態め♪」
佑二の告白を聞いたメグが、間を置いて言い返す。二人して顔を真っ赤にし、期待と興奮で心臓を激しく高鳴らせていた。
その後メグが両手を動かす。右手でらっきょうサイズの竿を撫で、左手をしわしわの玉袋に添える。
「あっ」
性器にアカオニの指の感触を覚え、佑二が上ずった声をあげる。その初々しい反応に喜びを感じ、メグが責めを続行する。
「ほーれ、さすさす、さわさわ……」
爪で裏筋を擦り、手のひらで袋を揺らす。肉棒を指で包み、優しく上下にさする。
愛を込めて、まごころたっぷりに佑二の性器に奉仕する。自分を貫く肉棒に感謝を捧げ、うっとりした顔で愛撫を続ける。
「あっ、あっ、ああっ……」
メグの愛撫にあわせて、佑二の体が小刻みに震える。自分の奉仕に、愛する佑二が敏感に反応してくれる。
可愛い佑二が可愛い声で鳴いてくれる。
「メグ、もっと、もっとさわって……」
佑二が自分を求めてくる。
嬉しい。好き。
メグの心がますます燃え上がる。胸の奥が好きで溢れていっぱいになる。
もっと彼に喜んでもらおうと、奉仕に込める愛をさらに強くする。
「あー……ん……ちゅ、ちゅっ……」
肉棒から手を離し、袋は掴んだままそれを口で咥える。唇で根元を挟み、口内に受け入れた肉竿を舌で舐めしゃぶる。
「ちゅ、くちゅ、んちゅ……」
優しく、ねっとりと。真っ赤なナメクジが表皮を這い回り、彼の男根を愛していく。
「ちゅるっ、くちゅ、じゅるるっ」
「ああ、あ、うああっ……!」
メグの口が男根に吸いつく。佑二の喘ぎ声が一段階高くなる。腰砕けになるのを防ぐように、メグが佑二の背中に手を回し、がっしりと固定させる。
「んふふ、にがふぁない」
吸引を中断し、しかし肉棒は咥えたまま、上目遣いでメグが言う。佑二も涙目になりつつ、メグを見つめ返して言い返す。
「もっとして……?」
「ん♪」
佑二のリクエストにメグが頷く。直後、以前よりもペースを速めて口内愛撫を再開させる。
肉棒に舌を絡みつかせ、下品な音を立てて激しくストロークする。
「じゅるっ! ずるるっ! じゅちゅ、じゅるっ! ずぞぞぉ……っ!」
年端もいかない子供の性器を咥えこみ、一心不乱にむしゃぶりつく。佑二の体が律儀にそれに反応し、今まで以上にビクビクと全身を震わせる。
「じゅりゅ、じゅる、ずるるっ!」
「ひ、ひぃ、ひいぃぃぃ……!」
佑二の喉から情けない呻き声が上がる。男の尊厳も人間性もかなぐり捨てた、肉欲を貪るだけのふしだらな雄叫び。
それがメグを震わせる。愛する人を玩具にしている。その事実がメグの脳を揺さぶり、股間を喜びでぐっしょり濡らす。
もう限界だ。早く金棒で倒されたい。
「メグ、メグっ! もう僕、ぼくぅ……!」
女の子のように上ずった声で佑二が叫ぶ。限界が近いことを示す合図だ。メグは心中で頷き、ラストスパートをかける。
「じゅる、じゅぽっ! ぐちゅ! じゅるるっ!」
アカオニが喉を鳴らし、激しく上下動を繰り返す。鬼の暴力的なフェラチオを受けて佑二の下半身に血が溜まり、彼を限界へと近づけていく。
そしてその時が来る。
「メグっ! 出るッ!」
佑二が吠える。メグの後頭部を両手で掴み、肉棒を奥深くまで咥えさせる。
直後、佑二の男が爆発する。粘ついた白濁液が鈴口から噴き出し、メグの口を容赦なく汚す。生臭い刺激臭が喉から鼻を通り、アカオニの思考を快楽で塗り潰す。
「ふぐッ、グブッ! ブふゥ……ッ!」
佑二の迸りをまともに食らい、メグが声にならない声を上げる。肉棒を咥えたまま放つ、豚の鳴き声のような醜い叫び。しかし心は躍っていた。
彼が自分で興奮してくれた。嬉しくないわけがない。メグは呻きながら、それでも最後の一滴まで飲み干していった。
「んッ、ん、んグッ、ぐうッ……」
どろりとした感触が喉を通り、胃の中へ流れ込む。それがたまらなく愛おしい。メグはそのまま口の中のモノを全て飲み込み、その後ゆっくりと肉棒から顔を離していった。
「あー……」
離した後、メグが口を開けて舌を突き出し、口の中を佑二に見せつける。どうだ、お前のモノを全部喰らってやったぞ。
メグは佑二に自慢したかった。褒めてもらいたかったのだ。
「おいしかった?」
佑二が問う。一旦口を閉じ、それからメグが笑って答える。
「美味かったよ」
「……えへへ」
よかった。それを聞いた佑二が笑みをこぼす。好きな人に美味しいと言ってもらえて、喜ばぬ者はいない。
「ひひっ、お前の精液はいつ飲んでも美味いからな」
そしてメグもつられて笑う。大好きな佑二が褒めてくれたのだ。嬉しくないわけがない。
「本当? 嬉しいなあ」
「私がお前にウソつくわけないだろ。ドロドロでねばねばしてて、もう病みつきだ」
幸せな余韻に浸りながら、じゃれ合うように言葉を交わす。そしてお互い笑いあう中で、おもむろに佑二が腰を降ろす。
佑二が膝立ちの姿勢になる。メグの視線の位置に、佑二の視線が来る。二人の視線が絡み合い、吐息が互いの髪を揺らす。
「もっとくれよ」
相手の顔をじっと見ながら、メグが佑二に懇願する。アカオニから熱っぽい声でおねだりされて、佑二の体に火が灯る。
「いいよ」
佑二が小さく頷く。メグが佑二に優しく抱きつき、佑二がそれを受け入れる。
「もっとしよう」
年下の少年が耳元で囁く。年上の鬼が心を震わせ、そのまま前のめりに佑二を押し倒す。
第二回戦。本番の始まりだ。
藁の上に佑二が仰向けになる。その上からメグが向かい合うように重なり、互いの素肌を密着させる。
二つの裸体が一つになり、心音と体温を伝え合う。メグの温もりを全身で感じ、佑二が恍惚とした表情で呟く。
「メグのからだ、何度抱いてもあったかくて気持ちいいね」
「佑二の体も、ぽかぽかであったかいぞ」
負けじとメグが言い返す。佑二の耳元で鬼が囁き、少年の体がびくりと震える。
その初々しい反応を愛しく感じながら、メグが再び佑二の耳元で呟く。
「もっとくっつきたい。いいか?」
「――うん」
佑二が頷く。許可をもらったメグが体を離し、腰を浮かせて狙いを定める。
少年の股間にそそり立つ金棒は、既に戦闘態勢を整えていた。膨張した表面には血管が浮き上がり、剥き出しになった亀頭は立派なカリ首を備えていた。
準備万端だ。とても子供のものとは思えないほど立派な逸物を見て、メグが思わずため息を漏らす。
「お前のちんぽ、本当にでかくなったなあ」
「メグに鍛えられたからね」
「物覚えのいい奴め……今日も貫いてくれるか?」
「うん」
メグの問いに、佑二が力強く頷く。それを見たメグも微笑み、ゆっくり腰を降ろしていく。
既に愛液でびちょびちょになったメグの割れ目に、佑二の亀頭が迫る。雌と雄がどんどん距離を詰めていき、やがて二つが接触する。
「あン♪」
直後、メグがそこで動きを止め、艶めいた声をあげる。陰唇の入口と亀頭の先が触れあっただけなのに、甘い電流が全身を駆け巡る。
全部挿入れたらどうなるんだろう。メグの胸が期待で高鳴る。視線を降ろすと、佑二もメグと同じくらい興奮しているのが見てとれる。目を見開き、激しく口で呼吸し、こちらをじっと見つめてくる。
二人の視線が交錯する。佑二が微笑み、メグが目を細める。
「……いくぜ」
アカオニが告げる。そして相手の返事を待たぬまま、一気に腰を落とす。
ぐちゃり。亀頭が割れ目を切り開き、肉棒が根元まで入り込む。
佑二の熱を体内で感じる。幸せの電流が脳味噌を溶かし、メグが喜悦の叫びをあげる。
「あああぁぁぁぁぁ……ッ♪」
鬼殺しの金棒が、致命の一撃を食らわせた瞬間である。そして一撃を貰い、おとがいを上げて咆哮するメグを、佑二はうっとりとした顔で見つめた。
綺麗だ。いやらしい。エロい。佑二の目と心がメグに食いついて離れなくなる。佑二は完全にメグの虜となっていた。
すると気を持ち直したメグが、彼の視線に気づいてそちらを見た。
「な、なんだぁ……? 軽くイった私を見て、エロいって思ったりしたのかあ?」
そして彼の心をずばり言い当てる。見抜かれたところで何の問題もない。佑二は正直に首を縦に振った。
メグはそれに気分を良くし、佑二の頬に手を添え言った。
「そうかあ、私でエロいって思ってくれたのかぁ……♪」
「うん。大声出した時のメグ、凄いエロかった」
「そうかそうか。じゃあ次は、エロいお前を見せてもらおうかな♪」
正直に答えた佑二に、メグが同じように欲望を正直に吐露する。鬼からの催促に対し、しかし佑二は笑みを浮かべた。
「気持ちよくさせてください、メグ」
「いいぜ。死ぬほど気持ちよくさせてやる」
人間の欲望を鬼が首肯する。そして腰に力を込め、肉棒を咥えた下半身を上下に動かし始める。
「あッ、あン、ンっ、にゃあンッ♪」
肉の弾ける音に混じって、メグの甘い悲鳴が響く。水音と打擲音と嬌声が穴ぐらで反響し、何度も何度も佑二の耳に突き刺さっていく。
その音と目の前で跳ねるメグの姿が、佑二のなけなしの理性を溶かしていく。もっと乱れろ。もっと盛れ。五感を通して脳に焼きつく非道徳的な世界が、性に疎い小学生を底なし沼に引きずり込む。
ヤっていい。
もっとハメていいんだ。
「あぁっメグっ、メグうぅぅっ……!」
堕ちる。肉の虜になった佑二が自分から腰を動かす。大好きな魔物娘の名前を呼びながら、大好きな魔物娘の動きに合わせて、より深く肉の槍を突き刺さんと奮闘する。
すぐに努力の成果が生まれる。何度目かのピストンの直後、亀頭と子宮口がぶつかりあい、佑二とメグを激しく揺さぶる。
「ひィん!」
「あッ、ほ、おほおぉぉぉ……ッ♪」
二匹の獣が絶叫する。佑二が堪えるように――そして我慢しきれなくなった声を上げ、メグが遠慮なく叫んで無様なひょっとこ顔を晒す。
「イぎゅッ♪ イギッ♪ もっと、もっとぉッ!」
味を占めたアカオニが一層動きを激しくする。股ぐらを上から押し潰さんとするような容赦のない上下運動が、佑二の下半身を襲う。しかし佑二も負けじと腰に力を込め、メグのプレスを正面から受け止めるように力強いピストンを行う。
「もっと! もっと入れるッ! もっとメグをッ!」
ぱちん! ぱちん! ぱんぱんぱんぱん!
「うあああッ、佑二ッ! いいぞッ、やればできるじゃねえかッ!」
「ああっ、うあああッ、メグっ、メグぅッ!」
「ああいる! 私はここにいるぞ! もっと突け! 鬼を斃してみやがれぇッ!」
肉のぶつかる音がさらに強くなる。テンポも速くなり、二人の息がどんどん荒くなる。結合部分から愛液と我慢汁のカクテルが滝のように溢れ出す。
愛が溢れて止まらない。脳と心が快楽で埋め尽くされ、体が欲望に支配される。
好き合いたい。愛し合いたい。汚し合いたい。苛烈な感情が胸を焼く。
「ゆーじ! ゆーじ! 犯せ! もっと突け! わたしをブチ抜けえぇぇッ!」
「メグ! メグと、もっとえっちするッ! もっとおにと、もっとえっちなことするよぉッ!」
アカオニが欲望のままに叫び、佑二が思考放棄して感情のままに叫ぶ。下半身の動きは止まらず、ばきばきに強張った肉棒がぐちょぐちょに熟れた肉壺を激しく突きまくる。カリが襞を擦り、襞が表皮を舐め回す。
「あッ、ギッ! ひぃぃぃッ!」
「んオッ、あぎッ、んヒぃぃっ!」
言葉にならない声が二人の口から飛び出す。完全に獣だ。二人して汗と涎を垂れ流し、思うままに肉を貪る。獣だ。
でも愛はある。二人のけだものが、愛を求めて絡み合う。
「めぐッ! もうむり! ぼくもうむりだよッ!」
そして限界が来る。佑二が情けない声を上げる。腰の振りは止めないまま、メグが佑二に言い返す。
「いいぞッ! 出せッ! 私を汚せッ!」
メグも限界だった。何より一刻も早く、佑二の精を味わいたかった。互いに許可を出した二匹が、ラストスパートをかける。
「佑二! 佑二! ゆーじゆーじッ!」
「メグ! ああメグ! メグぅっ!」
相手の名を呼ぶ。手を重ね、指を絡める。最後の瞬間を求めて、二人一緒に高みへ向かう。
やがてその時が来る。
「あッ――」
佑二が情けない声を出す。
刹那、亀頭が爆発する。
「ひッ」
精液が子宮を塗り潰す。白濁が腹を内から叩く。熱い。胎内が燃える。
体の中が佑二でいっぱいになる。脳が焼ける。
熱い。好き。愛してる。好き。
「――ひいいいいいいいいいん♪」
感情を処理できなくなったメグが絶叫する。言葉で説明せず、心のままに叫びまくる。
「ヒいッ、いいッ、ヒいいいいいッ!」
少年に襲われたアカオニが、だらしのない声を出す。屈辱とは思わない。むしろこうでなくては。
メグは幸福感と満足感を噛み締めながら絶頂を続けた。
「ああ、はっ、ああ……」
それもやがて終わりが来る。肉棒が精を出し終えると同時に、メグの心が落ち着きを取り戻す。佑二も同じく平静を取り戻し、理性を獲得した獣が顔を見合わせる。
「……よかった?」
「……良かった♪」
佑二の問いにメグが答える。メグはそのまま顔を近づけ、佑二の唇に自分の唇を重ねた。
「ん……」
ただ唇を触れ合わせるだけの、シンプルなキス。アカオニがすぐに顔を離し、再び佑二を見る。
「佑二は? 満足できたか?」
「うん。最高だった」
メグが尋ね、佑二が答える。彼の顔は憔悴していたが、同時に喜びに満ちてもいた。
「よかったよ、メグ」
「へへっ♪」
少年の心からの言葉に、アカオニがにっこり笑う。そして再び顔を近づけ、佑二の唇を奪う。
今度は本気のキス。舌をねじ込み、佑二の舌を力任せにしゃぶる。佑二は一瞬驚いたが、すぐに反撃を開始する。
「ん、ちゅっ、くちゅっ……」
「じゅる、ちゅ、あむ、ちゅっ……」
口の中で二人の舌が踊る。唾液を交換し、互いの味を確かめ合う。
それからたっぷり数分、鬼と人は事後の余韻に浸りながら、ディープキスを堪能した。
「ぷは……っ」
数分後、メグが口を離す。名残を惜しむように、唾液が互いの唇に橋を架ける。
橋が切れる。メグと佑二の視線が重なる。全く同時に二人が微笑む。
「もう一回する?」
「当然だ。するぞ」
微笑みながら佑二が問う。笑みを深めてメグが答える。その答えを予測していたかのように、佑二も同意するように首を縦に振る。
鬼が一回だけで満足するはずがない。佑二はそれを過去の経験から知っていた。そして彼もまた、一回だけでは満足できない体になっていた。
「もっともっと鳴かせてやる。覚悟しろよ?」
「うん♪」
脅すようなメグの言葉に、佑二が笑って頷く。それを見たメグは頼もしさを覚えつつ、体の位置をずらして半勃ちの肉棒を視界に収める。
「いい返事だ」
そう言って、目の前の肉棒にかぶりつく。唇で挟み、歯で甘噛みし、愛液の残滓を舌で絡めとる。
鬼の愛撫に佑二が甘い声を上げる。それに気を良くしたメグが、どんどんペースを上げていく。佑二の嬌声が高まり、棒が硬さを取り戻していく。
第二回戦の始まりだ。
「あー、喰った喰った♪」
一時間後。二人は同じ藁の上で仰向けになり、悦びを共有していた。二人は一時間の内に三回――家に帰る時間も考慮しなければならない――本番を行い、存分に精と愛を貪った。そうして身も心も満たされた二人は、仲良く全裸で横並びになっていた。
「いやー、なんど味わっても最高だな。お前の精は本当飽きないぜ」
「僕もその、メグの味、好きだよ」
豪快に言ってのけるメグの横で、佑二も恥じらいながら感想を言う。それを聞いたメグはますます気分を良くし、佑二の側頭部に手を回して力任せに引き寄せた。
「可愛いやつめ」
「からかわないでよ」
「からかってねえよ。私は本気で言ってる」
「むう……」
堂々と言い放つメグに、佑二が困った顔で言い淀む。そんなにすっぱり言われると、恥ずかしくてたまらない。
そうして顔を赤くする佑二を見て、メグがゲラゲラ笑って佑二の頭を撫でる。まだまだ子供は鬼に勝てない。
「本当に可愛い奴だよお前は」
「もう、子ども扱いしないでよ」
「まだ小学生だろお前」
「むうううっ……!」
反抗するも図星を突かれた佑二が黙り込む。そのまま頬をふくらませてそっぽを向く。完全に子供である。
メグはその姿を見て、実に愉快そうに笑った。そしてさらに不貞腐れる佑二の額に狙いをつけ、そこに不意打ち気味にキスをした。
「な」
奇襲を食らった佑二が固まる。子供だ。メグはすぐ顔を離し、それまでとは違う笑み――慈愛に満ちた微笑みを見せながら、佑二に言った。
「まだまだ子供だな」
「あ、あう」
「私はそんなお前が好きだ」
またしても奇襲。佑二が硬直する。後手後手である。
そうして固まる佑二の頬を、メグが優しく撫でる。
「好きだぞ、佑二」
メグの優しい言葉が、佑二の耳にするりと入り込む。直後、佑二の体から緊張が抜けていく。
固まらせたり、ほぐしたり。さっきからずっとメグにいいようにされている。メグはずるい。
「メグばっかりずるいよ」
本音が口から飛び出す。メグは笑って佑二に言い返す。
「お前もまだまだだな」
「もう!」
メグの言葉に、佑二がまたも頬を膨らませる。もはやそれしか出来ない。
堂々巡りだ。しかし佑二はこの時、それすらも心地よいと感じてしまっていた。メグに翻弄されている時間を、とても愛おしいと思っていた。
「絶対ぎゃふんと言わせてやるんだから!」
「その意気だ。頑張れよ佑二♪」
「がんばる!」
若い少年が鬼退治を果たすのは、当分先の事である。
18/11/10 20:34更新 / 黒尻尾