連載小説
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後編
 魔物の国から帰った俺らはお偉いさんの屋敷に招かれて、そこで見たままを伝えた。もっともフェルニストさんとの悪巧みだけは秘密だが。

「おお! よくぞお戻りになられました勇者さま」
「とつぜん飛び出してどうもすいませんでしたね。いてもたってもいられなくなっちまいまして」
「いえいえ、民の暮らしがおびやかされてると見れば行動に移す。勇者さまにふさわしい正義感でございます」

 わかりやすいおべんちゃらだな。手が早いのが勇者なら、お望みどおりにしてやるとするか。

「まあだが、先走った分の収穫はあったぜ。ほらよ」

 無造作に投げつけた書類は、悪徳貴族どもの金遣いをわかりやすくまとめたもんだ。商いをしている奴ならろくでもないと一目でわかるシロモンで、読んでる爺さんの顔はどんどん青ざめていき。途中でグシャッと握りつぶした。
 もったいねぇな、コピーがあるとはいえ。

「こ、これは一体……」
「まっ、悪い事はできねぇって事だな」

 意味深に天井を見上げてやれば、俺らの間にある机が派手な音を立てた。
 お天道さまの裁きだとても思ったかね。ホントのとこはこの国に忍び込んだ魔物たちの成果ってやつなんだが。
 冷静ならハッタリだと気付けそうなもんだが、まぁそそっかしく振舞ってた俺からいきなり悪事の証拠を突き付けられりゃ、動揺しないのは無理ってもんだ。

「年貢の納め時ってやつ……いやわかんねえか。まあ私腹はもう十分膨れたろ。大人しくしな」

 椅子から立ち上がった俺は、爺さんの傍まで近寄り自首を勧める。この国の法律はわかんねぇが、みっともなく足掻くよりは国民からの心証は良いほうがいいだろう。

「ふ、ふふ……よくできた偽物ですな」
「なら調べてみるかい? そん時ぁ公衆の面前でになんがな」
「ぐっ……その必要はございませんぞ」

 爺さんが髭を撫でるのと、俺の首があった場所に刃が振られるのはほとんど同時だった。

「あっぶねぇなおい!」
「なっ!?」

 あちらさんの目には、切ったはずの俺が霧みてぇにかき消えただろうな。
 うちの流派に伝わる奥義の一つ。足さばきで位置を誤認させる日食の型。お返しに魔物の国で買った長巻を食らわせてやれば、刺客は床に倒れて動かなくなった。
 と言っても死んだわけじゃなく。理屈はわからんが魔物の武器は、魔力だけを切って無力化させるらしい。

「こんくらい予想してねぇわけないだろ。舐めすぎたな爺さん」

 刃を向けられて観念した爺さんを縛り上げ、あとはスールが護衛しているお姫さんに引き渡せば俺の仕事は終わりだ。
 魔物って悪を切る勇者の仕事はできなかったが、代わりに金の亡者って奴に仕置きしたんだからこれで勘弁してくれんかね。



──────



 借り受けた部屋の窓から国を見下ろす。俺が召喚された時とそう変わりない、ありふれた日常ってやつだ。

 国のお偉いさんがいきなり捕まったとありゃ、混乱すっちゃかめっちゃかと思っちゃいたがそんなことはなく。横領に関わらずに冷や飯ぐらいだった人材が穴を埋め。むしろ今までよりずっとスムーズに回ってるそうだ。
 スールが教えてくれたが、お姫さんはずっと前から反撃の人手を集めてたらしい。裏で動いてたのはフェルニストさんだけじゃなかったってわけか。

「ここにいましたかフユキ」
「スールか、今更だが助かったよ。あんたがいたおかげで、混乱は最小限で済んだからな」

 天使がいたってのも王女さんの正当性を高めた。あの後、お姫さんは税を搾り取っていた家臣を公衆の面前で裁き。苦しい生活を強いたことを国民たちへ詫びた。
 そん時に俺とスールは勇者と天使って立場をちょいと使わせてもらい。お姫さんの横に控えて我こそ正義って感じの演出を手助けさせてもらったわけだ。

「苦しむ民を救う一助になれたのならば喜ばしいことです。ですが……」
「そこは悪かったよ、神さまからの使命は宙ぶらりんにさせちまったからな」
「これで良かったのか? どうしてもそう思ってしまうのです」

 俺が召喚されてスールが降臨したのは、魔物が攻めてくるからだ。けれどフェルニストが治める国に侵略の意志はなく。動いていたのは、やり方はともかくこの国を救うため。

「魔物を倒すのはヴァルキリーの使命……けれど、それは恩知らずな行為です」

 敵とはいえ助けてくれた相手を襲うなんて、真面目なスールにはできねぇだろうな。
 魔物と天使について俺はあんまし……いやまったくわかんねぇ。下手な慰めやフォローは余計に悩ませるかもしんねえ。

「親父やお袋に言われたことあってな。正しいかどうかなんてお空のお月さんと同じで、ちょいと立ち位置変えれば変わるもんだってな」

 だが落ち込んでるパートナー。それも惚れた相手をほっとくなんざ、ただのクソ野郎だ。地雷踏んで嫌われようと上等。

「私の悩みに意味はない……そう言いたいのですか?」
「そうじゃなくてな。なんだ、どうやったって誰もかれもハッピーエンドなんてうまい話はそうそう無いってやつでな。だから……」

 なにが言いてぇんだ俺は。

「あー、悪党こらしめたからってまだ終わりじゃなくてだな。助けた人の暮らしが台無しになんねぇように、こっから頑張ってかなきゃなんねぇだろ」

 駄目だこりゃ。ヘンにかっこつけようとしちまって、自分でも意味わかんねぇ。
 スールも首傾げちまってるじゃねぇか。可愛いなちくしょう。

「フユキはなにが言いたいのですか?」
「お前の暗い顔を見たくねぇ。そんだけだ」

 けっきょく本音を言って背を向けちまう。かっこつかねぇな俺は。
 この空気をどうしたもんか、顔が熱くて夜風が気持ちいいや。

「フユキは弁舌に長けていると思っていましたが……ふふっ、そうではなかったようですね」
「俺もたったいま知ったよ」
「でしたら私とおそろいですね。私もたったいま、私自身も知らなかった己を知りました」

 背中で感じる二つの感触。勘違いのしようがねぇ、この感触に股のもんを挟まれて、好き放題もみまくったんだからな。

「優しいけれど嘘つきなあなたに、嘘をついてほしくないんです。私だけには」
「俺が天使さんに嘘ついたことなんてないだろよ」
「たったいまつきました」
「あー……そうだな」
「それに、フユキは初めから魔物と戦う気はなかったなのではないですか?」

 大当たりだ。魔物が理性もクソもない奴らでもない限り、交渉やら口車で丸めこんでお姫さんと協力して国内の膿を切りだすつもりだった。
 戦う気がなかったとまでは言わねぇが、優先順位としてはかなり下なのは確かだ。

「他にも今回、私に王女さまの護衛をさせたのも理由があるのではないですか? 私に言った心の支えや万が一の備え以外に」
「…………まぁな」

 時代劇みたく口封じしてくんじゃねぇかと予想してたから遠ざけたな。人間守る天使が人間と戦えんのかって気になったし。
 背中越しに抱きしめる力が強くなる。

「私はフユキを支えるために来たというのに、もっと私に甘えてください」
「わかった、わかったからいったん手ぇ離してくれ!」
「嫌です。もう嘘はつかない証拠をしてください」

 証拠っつったてな。俺が頭抱えたくなってる間にも、腕の力は強くなる。胃のあたりが締め付けられて、流石にちょいと痛くなってきやがった。
 もっかい離してくれるよう頼もうとしたところに、身体がクルッと半回転。

「私の欲しいもの。わかってて困っていませんか?」

 とのことだ。なんともまあ、天使なのに誘惑が上手いと改めて思い知らされんな。

「んっ……」

 唇を重ねて舌を伸ばすと、向こうも受け入れて舌を絡ませ合う。
 心地いい水音が耳で反響し、目の前の女がいっそう愛おしく。緩んだ腕から引っこ抜いた腕で、割れ物を触れるように抱きしめる。

「キス……だけですか。あっ……」

 もちろんキスだけで我慢できるわきゃねえ。腰に回した手を下にずらして、パンツを下げる。
 スールも抵抗はせず窓に腰かけ、自分からもスカートをずらして割れ目を見せつけてきた。

「フユキのキスですっかり疼いてしまいましたもちろん、あなたで埋めてくれるのですよね」
「口にだすのは無粋ってやつじゃねぇかな」
「愛する人の誓いが欲しいと思うのはいけないことですか?」
「いいや」

 んな言い方されちゃ否定なんてできるわけないだろ。

「正直俺は品行方正ってわけじゃねえ。これからも天使としちゃ受け入れられねぇ悪だくみもすんだろうな」

 いまさらその辺の生き方を変えられるほど、俺は素直じゃない。これからも正しいと思ったら人さまを平気で騙す。天使と共に戦う勇者としちゃ落第だろう。
 けれどその上で──

「こんな俺でよけりゃ、ずっとついてきて欲しい。スール」
「もちろんです。大好きなあなたが胸を張っていられるように、私が支えてみせますから」
「ははは、そりゃありがてぇな」

 ぶっちゃけ正統派勇者とかソロじゃ無理だからな。まっとうなパートナーがいるってのはありがたい。

「そんじゃ、続きをしていいか? 我慢すんのも限界なんだ」
「はい♡」

 ズボンから引っぱりだしたモノは、ずっと我慢してたのもあって今にも爆発しちまいそうだ。
 挿入したとたんに暴発なんてしらけるマネしたくはねぇが、耐えられる自信はどんどんなくなっていきやがる。

 手のひらから伝わる柔らかさ。金細工みてぇな髪が揺れるたびにただよってくる香り。腰を挟んでた腕は力を緩めて俺が動き出すのを待ってて。どれもこれもこれからするコトを意識しちまう。

「足、片っぽ持ち上げるぞ」

 そうでもしねえと期待しすぎて暴れる股間を入れられそうにねえ。
 ここまで緊張するような男だったかな俺は。女との経験はあるんだが、心底惚れちまってる相手だからかね。
 なんて股から意識を逸らして、なんとかスールの割れ目にチンコが入る。

「ぐっ……」
「あっ 大きい……♡ん、あぁ♡私の内側をフユキが満たして……押し広げてぇ……♡あぁ……はぁぁ……♡どんどん奥に♡んんっ!」

 スールの背中がピクンと跳ねた。どうやら軽くイッちまったらしく、すぐさま精液を搾ろうと締まりがきつくなった。
 暴発しちまわないように堪えながら、奥へとゆっくりチンコを沈ませてくがそれでも高まってく射精感はすぐにでも限界がきちまいそうだ。

「ひゃッ! アッ くぅふぅぅぅ♡わ、私のお腹の中が……愛する人の形に変わっていきますぅ♡」

 そのうえ蕩けたスールの声がどうしたって興奮しちまう。
 下半身からドクドク湧き上がる衝動は、ちょっとでも気を抜いたらすぐにでも溢れだしちまいそうだ。
 せっかく一つになれたってのに、んなしまらないマネできるか。その一心で射精を耐える。

「んんッ♡ああぁ! あ……はぁ……♡身体がぴったりとくっつきましたね♡中も外も、フユキを感じます♡」
「ああ……ならもっとくっつこうか」

 ようやく一番奥までたどり着くと、絶頂したスールはうっとりとした顔で俺に抱きつく。抱きついてきたのはスールのナカも一緒で、とうとう我慢の限界がきちまった俺は思いっきり腰を押し付けた。

「んッ! ぁ……♡はあぁぁぁぁ……♡ん♡気持ちいい……♡」

 ほとんど漏らすような射精だったが、これまで感じたことのない快感になんも言えねぇ。
 呆けてた俺の口に柔らかいものが触れたかと思えば、そのまま中に熱が入り込む。

「んっ……フユキ……愛してます♡器用なのに不器用なあなたを、世界の誰よりも求めています」

 それがスールの舌だと気付いた時には、股間がまたガチガチに固さを取り戻してて。スールの気持ちが流れ込んだかのように俺は腰を動かしてた。

「ああっ♡奥までもうこれ以上はいりませんんっ。あっ♡はあっ♡」

 スールのアソコをほぐすように……いや、俺の形を二度と忘れられなくしてやろうと、強く抱きついてくる極上の肉壺にチンコをグリグリねじ込む。

「ひゃ! あっ! ダメですっ♡やっ、止めないでください♡これぇ、気持ちいいですからぁ♡フユキと擦れるたびにっ、身体がふわふわして♡頭の中まっしろに気持ちいい……♡」

 スールのおねだりに俺はもう夢中になって両手に力が入る。鍛えられた張りのある尻を揉み。首筋や耳になんどもなんどもキスを繰り返す。

「くぁ、ひゃ、ん♡ふぁ♡くすぐった……♡あんっ♡キスされるの、はあぁ! もっとぉ♡」

 ピクン、ピクンとスールの腰が踊る。そのたびに強く締まった肉壁にチンコを擦られて、トんじまいそうな快感に意識がもってかれそうだ。
 鬼頭の裏っかわを激しく叩かれ、跳ねたチンコがしっとりとした温かい感触に受け止められる。一瞬のうちに来る二つの快感。射精を我慢しようとついついスールを抱きしめちまう。

「スール……俺もそろそろ……」
「はいっ♡思いっきり、私の中に思いっきりあなたをください♡」

 密着したことでスールの柔らかさをダイレクトに感じて、もうチンコが我慢できそうにねぇ。窓に押し付ける勢いで、腰をスールにくっつけ。

「あッ♡ふぁあああぁぁぁぁぁ♡私の中っ……ドクドクと脈をうって♡イ、イクッ! ん、あはあぁっぁぁ♡ああっ♡まだでてるぅ……♡ふあ……ああ……♡」

 ドッと溢れる快感がスールの身体をイカせ。震える割れ目はまだ足りないと、俺のチンコから精液を搾り取ろうとリズム良くマッサージしてきやがった。
 身体中から快感が搾られて、その全部が一か所に集まってチンコから吐きだされてく。気持ち良すぎる爆発が、何度も何度も一番敏感な部分でおこる。意識が絶頂でまっしろになっちまう。

「はぁぁぁぁ……♡お腹であなたを感じます♡フユキ……♡あなたは?」
「ああ、そうだな……この世にいるのが俺とお前だけって気分だな」

 ぶっ倒れてねぇのは、すぐ傍で感じるスールがいるおかげだ。文字通り一つになったような多好感。夢を見てるみてぇなふわふわした感覚に、このままずっとひたったまま。それ以外のなんもかんも考えらんねぇ。



──────



「んっ……と、寝てたのかね俺は」

 眩しさに目を開けてみりゃ、豪華な天井が出迎えてくれた。
 寝ぼけた頭で記憶をひっくり返すよりも早く、隣に感じる布越しじゃ感じられない体温が最高の気分で思い出させてくれた。

「目が覚めたのですか? 射精しながら眠ってしまうのでしたから、驚きましたよ」
「そーかい、悪かった」

 どうも自分でもびっくりするくらい疲れがたまってたらしい。そりゃ召喚されてからずっと頭を回しっぱなしの警戒しっぱなしだったんだから当たり前っちゃ当たり前だ。

「ありがとな」
「え? ええ、どういたしまして」

 どこに隠れてやがったのか、どっと疲れが湧き出てきて身体が一段とベッドに沈み込んだ気分にさせられる。
 スールって俺にはもったいねぇ女が傍にいる。その安心感に、ようやっと俺は心の底から気を抜けたらしい。

「なあ……もうちょっと寄ってくれねぇか?」

 一目ぼれから改めて惚れちまったもんで抱きつきたくなったんだが、気を張りっぱなしだったもんで身体が動かねぇ。情けねえが向こうから抱いてもらうしかなく。
 そんな俺をスールは小さく笑って抱きしめてくれた。

「むしろこちらからお願いしたいくらいです。これから毎日でも、抱きしめてあげますよフユキ」

 胸の谷間に頭を埋められて、ちょいと……だいぶ恥ずかしいんだが、やっぱなしにすんのはもったいなねぇ。
 なにより、好きな女に抱きしめられるなんてご褒美。頼まれたってごめんだね。
23/12/29 18:20更新 / オーデコロン
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