君の幸せをこの一杯に願う
人はセックスのみで生きるにあらず。
とある偉人が言ったらしいが、素晴らしい名言だと私も思う。
「しかし本当にそうだろうか?」
魔物はとかく性に貪欲で、サテュロスある私なんか特にそう誤解されがちだ。だが考えてみて欲しい。ワインを片手にしては愛しい人を抱けない。
もっと言ってしまえば、朝のおはようや夜のお休みと口ずさむのはセックスと無関係と断言できるのか?
私は違うと断言する。ワインが時間をかけて成熟するように、日々の積み重ねは愛を深めセックスをより上質に変えるのだ。
「つまりはこの瞬間も私たちは身体を重ねていて。生きるということはつまりセックスをし続けることなのだよ」
「アホ言ってないで朝食食えよ」
「うーん、相変わらず渋い顔だね少年」
「朝っぱらから意味わからん妄言聞かされたらな。誰が魔物なんかと……拾ってくれた恩は忘れちゃない」
憎まれ口を途中でフォローにしてしまうあたり、育ちはだいぶ良かったんだろうね。恐らくは貴族か教団のお偉いさんかな?
どうしてそんな少年がどうして魔界に逃げてきたのか、掘り起こすのは野暮だし楽しくない。
「君が嫌なら信頼できる人間に預けようか? 私みたいな美人と二人では、少年も悶々としてしまうだろうしね」
楽しくないのはサテュロスの流儀に背くというやつだ。ここらで一つジョークで挟もう。
両腕で胸を抑えて強調しつつからかってやれば、わかりやすく顔を背ける少年に良くない感情がわいてしまう。
冗談でなく本気にしてしまおうか。
「チッ」
「ごめんごめん。少し魔物らしさを我慢できなかったよ」
「謝るなよ……」
やっぱなしだ。本気で嫌がってしまっている。
「魔物は男を食うもんなんだろ。こっちは屋根を借りてる身なんだ。俺はいつでも食われる覚悟はしてる」
「生憎と私は過程を大事にしたいんだ。それに、魔物だって男ならだれでもいいわけではないよ」
不器用なOKサイン──というよりは降伏宣言。少年の心にあるよどみは拾った時から少しも減っていない。
強引に迫れば彼は抵抗しないし、そのままサテュロスの快楽に陶酔させれば過去を忘れさせる自身はある。けれど──
（やれやれ、私もたいがい未練がましいね）
それでも酔いに頼らず人として乗り越えて欲しいと少年に願ってしまう。
私もまだまだ前職の習慣が抜けきっていないようだ。
「……急に黙ってどうしたんだよ?」
「なーに、少年への給料を真面目に考えていたんだよ。ブドウ畑の手伝いだけで助かっているし、これ以上は少年から対価をもらうのは気が引けるからね」
黙った私に少年が傍から顔を覗いてくる。鼻血を気合で我慢しつつ、サテュロスらしく気さくに気さくに。
「つっても金ないだろ。ここ」
「ははは……そこはまあほら、しっかりとした農場じゃなくて素人の道楽モドキだしね」
「よく生きてこれたな……」
乾いた笑いをあげつつも私の悩みは誤魔化せたようで、同時に楽しい朝食の時間も終わってしまった。
もっとゆっくりしていたいのだが、肝心の少年がテキパキとかたずけを始めてしまっていて。私と少年が向かい合えるのは次の食事までのお預けだ。
────────
「ふぅー、このあたりで一休み。んんっー、はぁ」
農作業も一段落し、大きく背伸びして胸を揺らしても見てくれる人はいない。
「少年が遅刻……いや大遅刻とは珍しい。明日は雪でも降るんじゃないかな」
朝食の後は主神に祈りを捧げ、農作業の手伝いをする。それがあの子のルーティンワークだったのだけれど、昼過ぎになっても来ないとは。少年の真面目さを考えるとおかしい。
私の脚は自然と少年の元へと急ぎ。小さな家の後ろに建てられた荒々しい作りの小屋をこっそりのぞき込む。
「少年は……うん、何事もないようだね。よかったぁ……」
幸い、最悪の想像は外れてくれたようで小屋の中に少年はいた。なにもかも手作りな小屋の中で、唯一違う小さな主神像へと一心不乱に祈る彼。それがあまりにも一心不乱だったから──
（そういえば祈るのは私も好きだったかな）
少しばかり昔を思い出して、久しぶりに祈りでも捧げてみようかと少年の隣に行く。
よほど熱心に祈っているのか少年は私に気付かない。私が真横にいるのを知った時どんなリアクションをするのだろうとイタズラ心がチクチクとくすぐられるじゃないか。
うん。捧げる祈りの内容をあれこれ考えていたが決まった。少年の悩みが吹き飛ぶようなビックリを願うとしよう。
主神様へはさすがに不敬なので、適当な堕落神へと祈りを始める。
（懐かしいな、こうしてただ一心に祈るのは……やっぱり気持ちが落ち着く）
少しずつ世界が狭まって、自分以外が別の世界に行ってしまったような静寂。
魔物になる前はこの感覚がとても好きだったな。聖堂で一人静かに祈っているときは、自分が真っ当だと思えたから。
「やっぱり今の僕には答えてくれないか……ん? ぬおわぁあぁぁぁぁぁ!!」
「おや、面白いリアクション」
物思いにふけっているうちに少年の祈りが済んだらしく。私に気付いてグルグル後転を繰り返して逆さのまま壁に背中をぶつけて止まった。
「随分集中してたじゃないか? 隣にいる私をずーと無視してたよ」
「あっ……待てよ! 俺ヘンなこと言ってないよな!?」
「言ってない言ってない。一人称が僕になってた以外はね。早く起き上がりなよ、頭に血が上ってしまうよ?」
まだまだ落ち着かないのか不自然に視線を彷徨わせる少年の手を引いて立たせると、これまた面白いくらい顔を真っ赤になる。
あんまりにも可愛らしくて下腹部がキュンと洪水警報を鳴らしてしまう。
ようやく覗けた少年の素顔。ちょっと卑怯じゃないか、衝動的に襲いたくなってしまうからやめてくれ。私はムードを大切にしたい派なんだ。
「なんでなんだよ?」
「なんでと聞かれても、私は魔法使いじゃないんだ。ちゃんと言葉を使ってくれないと伝わらないよ」
「祈るあんた……国にいたシスターみたいだった。あんたみたいな魔物がなんでシスターに見えたんだよ!」
閉じた目から涙を滲ませ少年は叫ぶ。教えられた魔物への敵意だけじゃない。私の祈る姿を見て、幸せだった過去が次々と思い出されてしまったんだろう。
「それは当然だよ。私はシスターだったからね」
「えっ」
「まあとてもではないが自慢できる立場ではなかったし、あの時の方が、教団の言う魔物らしい生き方をしていたかもしれないね」
膝を折って視線をそろえれば、朝のむっすり顔からは想像もできないしょげ顔。
抱きしめてあげたい。けれどぐっとこらえて私の過去を告げる。
「小さいころ司教に選ばれてね。私はほら、この通り見た目が良かったから。お金持ちに寄進をお願いする役としてはうってつけだったのさ」
「それって……」
「おおっとそこまでだ。私にとってはもうワインのつまみにもならない過去。いまはブドウ畑のほうが優先だ。少年がサボってたから仕事が溜まってるぞー!」
サテュロスらしく陽気におどけて、少年の手にそっと手を重ねた。
すっかり元気のなくしてしまった彼を日の当たる場所に連れていきたくて。けれど私から手を掴むことはせずに。
彼は強い。私が手を引かなくても立ち上がれる。なにせ今日にいたるまで私の誘惑に耐え続けてきたのだ。
まあ女として見られてない気がして普通に悔しいし、しょんぼりしそうだけどそれはそれ。
そっと握ってくる小さな、けれど土仕事で荒れた大人の手を握りかえした。
────────
少年が戻ってくれたおかげで仕事は順調に終わり。残るは夕食の支度のみ。
何度も繰り返した一日──とは言い難く。昼からずっと少年はソワソワしっぱなし。
これが告白の前振りなら大歓迎なのだけれど、まあ昼間のあれこれなんだろうな。
泣き出しそうな少年の顔を見て、ついつい口を滑らせてしまった。
「うーん今日の夕食は少年の好きなものにしよう! な〜んてできればいいんだけどね」
私は少年の好みを一切知らない。なにを出してもいつも仏頂面で平らげてしまうからね。
「となればあれでいこう。私の幸せの象徴。いつまでも熟成しっぱなしというわけにはいかないからね」
夕食もあれに合わせて濃い目の肉料理にしよう。ワインセラーの一番奥にある瓶を手に取れば、自然と鼻歌が心地よく耳に響く。
上機嫌にテーブルへ向かえば、椅子に座った少年がこちらの顔色を窺ってくる。
いつもの渋顔はどこへやら。よっぽど教団の腐敗を知ってしまったのがショックだったのか。
それとも私に同情してるのかな。そのくらいの自惚れはしてもいいよね。
「やあやあ待たせたね少年」
「……妙に上機嫌だな。いい肉でもあったのかよ?」
「残念外れだ。私の機嫌がいいのは、この幸せの味を飲めるからさ!」
「へー、普段のワインと違うのか?」
「ふふ、飲めばわかるさ。あっ、媚薬なんかは入ってないよ」
グラスになみなみと注がれる赤い液体の美しいこと。グイッとあおる私に続いて少年が口をつけ、盛大に噴きだした。
「ぶぅーーー! なんだこれ!? ワインじゃなくてビネガーの間違いじゃないのか!」
失敬な、れっきとしたワインだとも。ただちょっと上手く作れなかっただけで。
「それは私が初めて作ったワインでね。味はまあ……よくわかったと思うけど、私にとっては紛れもなく幸せの味なんだよ。文字通り人生をやり直せた味だからね」
「大切なのわかったけど、人に飲ませるなよ。鼻がス―スーしてきた」
私が口を滑らせた過去は決して良いものではなかったけど、このワインと一緒に飲み干せたものだ。だからあまり気にしなくてもいい。
ワインに込めた意味をしっかり受け取ってくれたようで、いつもの渋顔が戻ってきた。
「こんなもん飲ませたんだから……その、ちゃんと埋め合わせしてもらうからな」
「ん? まあいいよ。少年には普段から手伝ってもらってるからね」
らしくない返事が返ってきたな。いつもなら居候の身だからと文句言うくらいなのだけれど。
たぶん風呂を譲れとか主神像の小屋直すの手伝えくらいだろうし、その程度の埋め合わせなら別にたいしたことじゃない。
「じゃあ……言うぞ、ほんとに言うからな!」
「はいはい、いったいどんな埋め合わせを頼むんだい? あんまり女性を焦らすのは……いや焦らした方が味わい深くなるかもね」
「ぼ、僕を抱け!」
「いいよ。……ん? あれ、え、待って……ええっ!?」
だいて……台て……抱いて!?
ちょっと唐突過ぎてビックリだよ。いったいいつから私は未来に来てしまったんだろう。
「このワインはやり直すためのなんだろ。だったら責任とってくれよ!」
「いやっ! ああ、そうなるね。うーん、嬉しいけど……いいのかい? 私は魔物だし、男性経験も褒められたもんじゃないよ」
魔物である私に拾われたとはいえ、少年はまだ主神を信仰している。生まれ持っての信仰を投げ捨てるなんてそうそうできるもんじゃないだろう。私も一応シスターだったからわかる。
「そんなことどうでもいいよ。あんたは僕の恩人で、今の僕にとって唯一……安心は……できないけど、一緒にいたいと思えるんだよ」
「あ、あはは。可愛い告白してくれるじゃないか。はぁーふぅ。まだ言いたいことがあるなら、私の理性が保っていられるうちに頼むよ♥」
いま自分がどんな顔してるかわからない。鼻が熱くてちょっとヤバい。いま飲んだのはワインなのか、頭の中がグツグツして少年を押し倒そうと手足が動きだそうだ。
「正直魔物のことはまだ信じられない。でもあんたは、元人間だから……そうじゃなくて、無礼な態度をとってた僕を守ってくれた。あんたのおかげで……僕は立ち直れたんだよ。ほんのちょっぴりな!」
気付いたら少年に跨って唇を奪っていた。
「あはっ♥ そうかそうか、ほんのちょっぴりね。だったらもっと幸せにしてあげるよ」
「ぷは……ふぁ……」
「っ〜〜! はぁはぁ……い、嫌なら早く言ってくれよ? 悪いけど私にはもう自分が抑えられそうにないんだ。少年が悪いんだぞ♥ 少年が可愛すぎるから、ちゅ」
まだ小さくて柔らかい。けれど男らしい筋肉の固さを持ちつつある発展途上の唇。
ずっとずっと我慢していた瞬間は、私からいともたやすく理性を奪ってしまった。
性を知らない少年を優しく手ほどきするなんて、事前にしていた妄想はまるで役に立たず。辛うじて主導権を少年に託すのが精いっぱい。
「ふわぁぁぁ……き……キルシュ……僕の名前……あふ、呼んで欲しい……」
「っ、うぅぅ〜♥ まったく君はぁ〜♥ どうして誘うのが上手いんだい!」
けれどもっと先を求められてしまい。私たちの愛を阻むものは一切取り除かれてしまった。
胸の谷間に少年の頭を埋めて、呼吸さえも私を感じるように。独占欲まる出しな女の情欲を我慢できない。
「ほら、キルシュ君……息を吸って……そうゆっくりと、体の中まで私を受け入れてくれ……」
「ん、すぅー。はぁ……」
「ふふ、サテュロスの匂いはどうかな? 息をするだけで夢のようだろう。けれど、本当の夢はここからだからね」
ズボンを脱がしてやれば、立派なおちんちんも私に抱き着こうと飛びだす。
お腹を叩く少年の男に茹だった理性が腰を浮かす。早く愛しい彼を私の中に受け入れたい。
けれど今からするのはただ快楽を求めるだけじゃない。心を満たすため、愛情を確かめ合うための行為。
「ふふっ、すっかり大きくなってるじゃないか。それじゃあ触るよ、キルシュ君」
胸の中でコクンと頷くのを感じ、おちんちんのそっと触れる。
「わっと、驚かせてしまったかな。もう少し優しく撫でるとしよう」
軽く握っただけで激しく震える少年の愛らしさと言ったらもうたまらない。おちんちんを触れられるのが初めてだからか、それとも触れるのが私だからか。できれば後者だと嬉しいね。
「ほら、さわさわ……シコシコ……我慢しなくてもいいよ。ここを撫でられて気持ちが良いのは自然なことだ。無理に意識せずに受け入れたほうが、むしろ長持ちするよ?」
指先だけで上下におちんちんを扱いて、快感に耐えようと息を止める少年の背を撫でる。性を知らない少年に、付き合い方を教えていく。
「大丈夫、大丈夫。恥ずかしいのは君だけじゃないんだよ♥ こーやって、キルシュ君に甘くささやくのは、私だってちょっと恥ずかしいんだからさ」
身体を丸めて耳のすぐ傍でささやくたびに、抱きしめた小さな身体がビクッと反応する。普段と違って素直で、だらしなく頬が緩んでしまう。
こんなに胸がドキドキするのは初めてだ。たくさんの司祭や貴族に抱かれてきたけれど、今の私は初めて恋をした少女のように酔っている。
「でもそれでいいじゃないか、恥ずかしい姿を二人占めにできるんだ。気持ち良くて震えてしまうキルシュ君を知ってるのは私だけ。少女みたいに胸をときめかせてる私を知ってるのはキルシュ君だけ。それはとても特別で、幸せなことだと思わないか♥」
私の胸に荒い熱息がかかる。快感を受け入れた少年は手コキに合わせて腰を動かそうとして、上から乗っかかった私の太ももと擦れる。
まだまだ小柄な少年の体重では私を動かすことはできないけれど、いじらしいおねだりに私はすっかりやられてしまった。
少年の顎を持ち上げて、愛らしいつやつやの唇を奪う。
「んっ、ふぅ……ちゅる、れろぉ」
胸の谷間で火照った少年はぼんやりと私を見つめ、自分の舌で私を抱きとめてくれた。
舌を通して感じる少年の味によだれが止まらず。そんな私の恥ずかしい蜜を、こくこく喉を鳴らして飲んでくれる少年。
ああ、もう。いったいどれだけ可愛らしいんだ。これ以上なく可愛いと思っても、どんどん愛しさがこみ上げる。
絡み合う舌の心地よさに、本当に口が溶けてしまったよう。
これ以上は本当に我慢できない。私たちの初めての絶頂は、やっぱり一つになってがいい。
「ぷはっ……入れるよ?」
「……うん」
腰を浮かして、握ったままのおちんちんを私の入り口に導く。
いよいよだ。顔を上げるとちょうど少年も同じようにしていて、素敵な偶然に肩の力を抜け。視線が交わったまま私たちは一つになる。
「ふぁ……♥ なにこれっ♥ 下半身が溶けてぇ♥」
「あっ♥ イイッ♥ こんなに気持ちいいの初めて♥ もうイッてしまう♥」
一つになれた悦びに私たちは共に達する。
私のナカを熱いものがおっかなびっくりに昇ってくるのが、愛らしくて愛らしくて。初めての絶頂に困惑している彼を抱きしめた。
「……ふふ、大丈夫かい? 初めての経験でびっくりしたのかな? 落ち着いて、その気持ち良さに身を任せて、ゆっくりと息をするんだ」
「う、うん。すぅーふぅ……」
「んっ。ちょっとくすぐったいな。このままじゃ、またすぐ火がついてしまいそうだよ♥」
上着越しとはいえ、愛する人の吐息は情欲を煽り。恍惚の余韻をさらに味わい深く。幸せにうっとりと沈んでしまいそうだ。
「おっ♥ やっぱり若いと元気だね♥ もう動いて大丈夫かな?」
「う……うん♥ 今度は僕も動く……」
「無理はダメだよキルシュ君。それに、君の成長を楽しむ機会を奪わないで欲しいな」
今日は君をただただ甘やかしたい。固さを取り戻したおちんちんを、強く締め付けないよう細心の加減で腰を前後に動かす。
くちゅ、くちゅ、かき混ぜられる二人の愛。室内にいやらしい音が広がるのに、少年は恥ずかしそうにしながらも興奮して呼吸を荒げる。
私のナカが優しく舐めまわすたびに、おちんちんはビクビク跳ね。絶頂の余韻もほどほどに次の幸せをどん欲に求めだす。
「んっ、はぁ……♥ 私はとっても気持ちいいよキルシュ君。君はどうだい?」
「僕もっ……気持ちいいッ。あんたをすぐ近くで感じるのが……すごくて全部忘れそうでっ♥」
わがままになっていく気持ちに私たちの身体も動きを激しくなり。
「あっ♥ ふぅぅッ♥ キルシュ……もう我慢できそうにないよ……私がこんな簡単にイカせるのは君くらいっ♥ ……だ♥」
「そうっ、なのかっ? だ、だったら……次はッ、もっといかせる? ……からな♥」
「ふふふっ♥ 言ってくれるじゃないか。この女たらしめ♥」
けれど私たちははちきれそうな喘ぎを抑えて愛を確かめ合う。
こんなに幸せに身体を重ねているのに、肉欲に溺れるだけなんてもったいなさすぎる。
「それじゃあ次は、私の名前も読んでくれよ? 初めて会った時に名乗ったあの名前♥」
「あっ……うぅ……♥」
もう少年の限界が近い。そろそろとびっきりの絶頂で終わらせよう。
その前にちょっぴりからかってやろう。そんな私の稚気に、しっかりと少年は応えてくれた。
「ふゃっ! あはあぁぁぁぁぁぁぁ♥」
絶頂の直前に抱き着いてきた少年のささやきは、間違いなく私の人生で最高の絶頂をくれて。
生娘のようにのけ反りイク私に引きずられ、一緒になって床に倒れる。
「はぁぁ……♥ まったく、本当に女たらしだねキルシュ君。あのタイミングで名前呼びは反則♥」
「う、うぅ……へぇ、いいこと聞いた。次の時も……その次も、ずっと気持ちいい瞬間に名前を呼んでやろ」
「こいつめ♥ 嘘だったら承知しないからね」
「ん、守るに決まってんだろ。ふぁ」
「ふふん、ならその愛らしいあくびに免じて信じてあげるよ。今日はこのまま……眠るとしよう」
固い床に背中を預けたまま、私たちは目を閉じた。今は床の固さよりも、愛する人のぬくもりを一秒でも長く感じていたかったから。
────────
「いたた……腰が……」
「いい年なのに床で寝るからだろ。今日の作業は俺に任せてろ」
とある偉人が言ったらしいが、素晴らしい名言だと私も思う。
「しかし本当にそうだろうか?」
魔物はとかく性に貪欲で、サテュロスある私なんか特にそう誤解されがちだ。だが考えてみて欲しい。ワインを片手にしては愛しい人を抱けない。
もっと言ってしまえば、朝のおはようや夜のお休みと口ずさむのはセックスと無関係と断言できるのか?
私は違うと断言する。ワインが時間をかけて成熟するように、日々の積み重ねは愛を深めセックスをより上質に変えるのだ。
「つまりはこの瞬間も私たちは身体を重ねていて。生きるということはつまりセックスをし続けることなのだよ」
「アホ言ってないで朝食食えよ」
「うーん、相変わらず渋い顔だね少年」
「朝っぱらから意味わからん妄言聞かされたらな。誰が魔物なんかと……拾ってくれた恩は忘れちゃない」
憎まれ口を途中でフォローにしてしまうあたり、育ちはだいぶ良かったんだろうね。恐らくは貴族か教団のお偉いさんかな?
どうしてそんな少年がどうして魔界に逃げてきたのか、掘り起こすのは野暮だし楽しくない。
「君が嫌なら信頼できる人間に預けようか? 私みたいな美人と二人では、少年も悶々としてしまうだろうしね」
楽しくないのはサテュロスの流儀に背くというやつだ。ここらで一つジョークで挟もう。
両腕で胸を抑えて強調しつつからかってやれば、わかりやすく顔を背ける少年に良くない感情がわいてしまう。
冗談でなく本気にしてしまおうか。
「チッ」
「ごめんごめん。少し魔物らしさを我慢できなかったよ」
「謝るなよ……」
やっぱなしだ。本気で嫌がってしまっている。
「魔物は男を食うもんなんだろ。こっちは屋根を借りてる身なんだ。俺はいつでも食われる覚悟はしてる」
「生憎と私は過程を大事にしたいんだ。それに、魔物だって男ならだれでもいいわけではないよ」
不器用なOKサイン──というよりは降伏宣言。少年の心にあるよどみは拾った時から少しも減っていない。
強引に迫れば彼は抵抗しないし、そのままサテュロスの快楽に陶酔させれば過去を忘れさせる自身はある。けれど──
（やれやれ、私もたいがい未練がましいね）
それでも酔いに頼らず人として乗り越えて欲しいと少年に願ってしまう。
私もまだまだ前職の習慣が抜けきっていないようだ。
「……急に黙ってどうしたんだよ?」
「なーに、少年への給料を真面目に考えていたんだよ。ブドウ畑の手伝いだけで助かっているし、これ以上は少年から対価をもらうのは気が引けるからね」
黙った私に少年が傍から顔を覗いてくる。鼻血を気合で我慢しつつ、サテュロスらしく気さくに気さくに。
「つっても金ないだろ。ここ」
「ははは……そこはまあほら、しっかりとした農場じゃなくて素人の道楽モドキだしね」
「よく生きてこれたな……」
乾いた笑いをあげつつも私の悩みは誤魔化せたようで、同時に楽しい朝食の時間も終わってしまった。
もっとゆっくりしていたいのだが、肝心の少年がテキパキとかたずけを始めてしまっていて。私と少年が向かい合えるのは次の食事までのお預けだ。
────────
「ふぅー、このあたりで一休み。んんっー、はぁ」
農作業も一段落し、大きく背伸びして胸を揺らしても見てくれる人はいない。
「少年が遅刻……いや大遅刻とは珍しい。明日は雪でも降るんじゃないかな」
朝食の後は主神に祈りを捧げ、農作業の手伝いをする。それがあの子のルーティンワークだったのだけれど、昼過ぎになっても来ないとは。少年の真面目さを考えるとおかしい。
私の脚は自然と少年の元へと急ぎ。小さな家の後ろに建てられた荒々しい作りの小屋をこっそりのぞき込む。
「少年は……うん、何事もないようだね。よかったぁ……」
幸い、最悪の想像は外れてくれたようで小屋の中に少年はいた。なにもかも手作りな小屋の中で、唯一違う小さな主神像へと一心不乱に祈る彼。それがあまりにも一心不乱だったから──
（そういえば祈るのは私も好きだったかな）
少しばかり昔を思い出して、久しぶりに祈りでも捧げてみようかと少年の隣に行く。
よほど熱心に祈っているのか少年は私に気付かない。私が真横にいるのを知った時どんなリアクションをするのだろうとイタズラ心がチクチクとくすぐられるじゃないか。
うん。捧げる祈りの内容をあれこれ考えていたが決まった。少年の悩みが吹き飛ぶようなビックリを願うとしよう。
主神様へはさすがに不敬なので、適当な堕落神へと祈りを始める。
（懐かしいな、こうしてただ一心に祈るのは……やっぱり気持ちが落ち着く）
少しずつ世界が狭まって、自分以外が別の世界に行ってしまったような静寂。
魔物になる前はこの感覚がとても好きだったな。聖堂で一人静かに祈っているときは、自分が真っ当だと思えたから。
「やっぱり今の僕には答えてくれないか……ん? ぬおわぁあぁぁぁぁぁ!!」
「おや、面白いリアクション」
物思いにふけっているうちに少年の祈りが済んだらしく。私に気付いてグルグル後転を繰り返して逆さのまま壁に背中をぶつけて止まった。
「随分集中してたじゃないか? 隣にいる私をずーと無視してたよ」
「あっ……待てよ! 俺ヘンなこと言ってないよな!?」
「言ってない言ってない。一人称が僕になってた以外はね。早く起き上がりなよ、頭に血が上ってしまうよ?」
まだまだ落ち着かないのか不自然に視線を彷徨わせる少年の手を引いて立たせると、これまた面白いくらい顔を真っ赤になる。
あんまりにも可愛らしくて下腹部がキュンと洪水警報を鳴らしてしまう。
ようやく覗けた少年の素顔。ちょっと卑怯じゃないか、衝動的に襲いたくなってしまうからやめてくれ。私はムードを大切にしたい派なんだ。
「なんでなんだよ?」
「なんでと聞かれても、私は魔法使いじゃないんだ。ちゃんと言葉を使ってくれないと伝わらないよ」
「祈るあんた……国にいたシスターみたいだった。あんたみたいな魔物がなんでシスターに見えたんだよ!」
閉じた目から涙を滲ませ少年は叫ぶ。教えられた魔物への敵意だけじゃない。私の祈る姿を見て、幸せだった過去が次々と思い出されてしまったんだろう。
「それは当然だよ。私はシスターだったからね」
「えっ」
「まあとてもではないが自慢できる立場ではなかったし、あの時の方が、教団の言う魔物らしい生き方をしていたかもしれないね」
膝を折って視線をそろえれば、朝のむっすり顔からは想像もできないしょげ顔。
抱きしめてあげたい。けれどぐっとこらえて私の過去を告げる。
「小さいころ司教に選ばれてね。私はほら、この通り見た目が良かったから。お金持ちに寄進をお願いする役としてはうってつけだったのさ」
「それって……」
「おおっとそこまでだ。私にとってはもうワインのつまみにもならない過去。いまはブドウ畑のほうが優先だ。少年がサボってたから仕事が溜まってるぞー!」
サテュロスらしく陽気におどけて、少年の手にそっと手を重ねた。
すっかり元気のなくしてしまった彼を日の当たる場所に連れていきたくて。けれど私から手を掴むことはせずに。
彼は強い。私が手を引かなくても立ち上がれる。なにせ今日にいたるまで私の誘惑に耐え続けてきたのだ。
まあ女として見られてない気がして普通に悔しいし、しょんぼりしそうだけどそれはそれ。
そっと握ってくる小さな、けれど土仕事で荒れた大人の手を握りかえした。
────────
少年が戻ってくれたおかげで仕事は順調に終わり。残るは夕食の支度のみ。
何度も繰り返した一日──とは言い難く。昼からずっと少年はソワソワしっぱなし。
これが告白の前振りなら大歓迎なのだけれど、まあ昼間のあれこれなんだろうな。
泣き出しそうな少年の顔を見て、ついつい口を滑らせてしまった。
「うーん今日の夕食は少年の好きなものにしよう! な〜んてできればいいんだけどね」
私は少年の好みを一切知らない。なにを出してもいつも仏頂面で平らげてしまうからね。
「となればあれでいこう。私の幸せの象徴。いつまでも熟成しっぱなしというわけにはいかないからね」
夕食もあれに合わせて濃い目の肉料理にしよう。ワインセラーの一番奥にある瓶を手に取れば、自然と鼻歌が心地よく耳に響く。
上機嫌にテーブルへ向かえば、椅子に座った少年がこちらの顔色を窺ってくる。
いつもの渋顔はどこへやら。よっぽど教団の腐敗を知ってしまったのがショックだったのか。
それとも私に同情してるのかな。そのくらいの自惚れはしてもいいよね。
「やあやあ待たせたね少年」
「……妙に上機嫌だな。いい肉でもあったのかよ?」
「残念外れだ。私の機嫌がいいのは、この幸せの味を飲めるからさ!」
「へー、普段のワインと違うのか?」
「ふふ、飲めばわかるさ。あっ、媚薬なんかは入ってないよ」
グラスになみなみと注がれる赤い液体の美しいこと。グイッとあおる私に続いて少年が口をつけ、盛大に噴きだした。
「ぶぅーーー! なんだこれ!? ワインじゃなくてビネガーの間違いじゃないのか!」
失敬な、れっきとしたワインだとも。ただちょっと上手く作れなかっただけで。
「それは私が初めて作ったワインでね。味はまあ……よくわかったと思うけど、私にとっては紛れもなく幸せの味なんだよ。文字通り人生をやり直せた味だからね」
「大切なのわかったけど、人に飲ませるなよ。鼻がス―スーしてきた」
私が口を滑らせた過去は決して良いものではなかったけど、このワインと一緒に飲み干せたものだ。だからあまり気にしなくてもいい。
ワインに込めた意味をしっかり受け取ってくれたようで、いつもの渋顔が戻ってきた。
「こんなもん飲ませたんだから……その、ちゃんと埋め合わせしてもらうからな」
「ん? まあいいよ。少年には普段から手伝ってもらってるからね」
らしくない返事が返ってきたな。いつもなら居候の身だからと文句言うくらいなのだけれど。
たぶん風呂を譲れとか主神像の小屋直すの手伝えくらいだろうし、その程度の埋め合わせなら別にたいしたことじゃない。
「じゃあ……言うぞ、ほんとに言うからな!」
「はいはい、いったいどんな埋め合わせを頼むんだい? あんまり女性を焦らすのは……いや焦らした方が味わい深くなるかもね」
「ぼ、僕を抱け!」
「いいよ。……ん? あれ、え、待って……ええっ!?」
だいて……台て……抱いて!?
ちょっと唐突過ぎてビックリだよ。いったいいつから私は未来に来てしまったんだろう。
「このワインはやり直すためのなんだろ。だったら責任とってくれよ!」
「いやっ! ああ、そうなるね。うーん、嬉しいけど……いいのかい? 私は魔物だし、男性経験も褒められたもんじゃないよ」
魔物である私に拾われたとはいえ、少年はまだ主神を信仰している。生まれ持っての信仰を投げ捨てるなんてそうそうできるもんじゃないだろう。私も一応シスターだったからわかる。
「そんなことどうでもいいよ。あんたは僕の恩人で、今の僕にとって唯一……安心は……できないけど、一緒にいたいと思えるんだよ」
「あ、あはは。可愛い告白してくれるじゃないか。はぁーふぅ。まだ言いたいことがあるなら、私の理性が保っていられるうちに頼むよ♥」
いま自分がどんな顔してるかわからない。鼻が熱くてちょっとヤバい。いま飲んだのはワインなのか、頭の中がグツグツして少年を押し倒そうと手足が動きだそうだ。
「正直魔物のことはまだ信じられない。でもあんたは、元人間だから……そうじゃなくて、無礼な態度をとってた僕を守ってくれた。あんたのおかげで……僕は立ち直れたんだよ。ほんのちょっぴりな!」
気付いたら少年に跨って唇を奪っていた。
「あはっ♥ そうかそうか、ほんのちょっぴりね。だったらもっと幸せにしてあげるよ」
「ぷは……ふぁ……」
「っ〜〜! はぁはぁ……い、嫌なら早く言ってくれよ? 悪いけど私にはもう自分が抑えられそうにないんだ。少年が悪いんだぞ♥ 少年が可愛すぎるから、ちゅ」
まだ小さくて柔らかい。けれど男らしい筋肉の固さを持ちつつある発展途上の唇。
ずっとずっと我慢していた瞬間は、私からいともたやすく理性を奪ってしまった。
性を知らない少年を優しく手ほどきするなんて、事前にしていた妄想はまるで役に立たず。辛うじて主導権を少年に託すのが精いっぱい。
「ふわぁぁぁ……き……キルシュ……僕の名前……あふ、呼んで欲しい……」
「っ、うぅぅ〜♥ まったく君はぁ〜♥ どうして誘うのが上手いんだい!」
けれどもっと先を求められてしまい。私たちの愛を阻むものは一切取り除かれてしまった。
胸の谷間に少年の頭を埋めて、呼吸さえも私を感じるように。独占欲まる出しな女の情欲を我慢できない。
「ほら、キルシュ君……息を吸って……そうゆっくりと、体の中まで私を受け入れてくれ……」
「ん、すぅー。はぁ……」
「ふふ、サテュロスの匂いはどうかな? 息をするだけで夢のようだろう。けれど、本当の夢はここからだからね」
ズボンを脱がしてやれば、立派なおちんちんも私に抱き着こうと飛びだす。
お腹を叩く少年の男に茹だった理性が腰を浮かす。早く愛しい彼を私の中に受け入れたい。
けれど今からするのはただ快楽を求めるだけじゃない。心を満たすため、愛情を確かめ合うための行為。
「ふふっ、すっかり大きくなってるじゃないか。それじゃあ触るよ、キルシュ君」
胸の中でコクンと頷くのを感じ、おちんちんのそっと触れる。
「わっと、驚かせてしまったかな。もう少し優しく撫でるとしよう」
軽く握っただけで激しく震える少年の愛らしさと言ったらもうたまらない。おちんちんを触れられるのが初めてだからか、それとも触れるのが私だからか。できれば後者だと嬉しいね。
「ほら、さわさわ……シコシコ……我慢しなくてもいいよ。ここを撫でられて気持ちが良いのは自然なことだ。無理に意識せずに受け入れたほうが、むしろ長持ちするよ?」
指先だけで上下におちんちんを扱いて、快感に耐えようと息を止める少年の背を撫でる。性を知らない少年に、付き合い方を教えていく。
「大丈夫、大丈夫。恥ずかしいのは君だけじゃないんだよ♥ こーやって、キルシュ君に甘くささやくのは、私だってちょっと恥ずかしいんだからさ」
身体を丸めて耳のすぐ傍でささやくたびに、抱きしめた小さな身体がビクッと反応する。普段と違って素直で、だらしなく頬が緩んでしまう。
こんなに胸がドキドキするのは初めてだ。たくさんの司祭や貴族に抱かれてきたけれど、今の私は初めて恋をした少女のように酔っている。
「でもそれでいいじゃないか、恥ずかしい姿を二人占めにできるんだ。気持ち良くて震えてしまうキルシュ君を知ってるのは私だけ。少女みたいに胸をときめかせてる私を知ってるのはキルシュ君だけ。それはとても特別で、幸せなことだと思わないか♥」
私の胸に荒い熱息がかかる。快感を受け入れた少年は手コキに合わせて腰を動かそうとして、上から乗っかかった私の太ももと擦れる。
まだまだ小柄な少年の体重では私を動かすことはできないけれど、いじらしいおねだりに私はすっかりやられてしまった。
少年の顎を持ち上げて、愛らしいつやつやの唇を奪う。
「んっ、ふぅ……ちゅる、れろぉ」
胸の谷間で火照った少年はぼんやりと私を見つめ、自分の舌で私を抱きとめてくれた。
舌を通して感じる少年の味によだれが止まらず。そんな私の恥ずかしい蜜を、こくこく喉を鳴らして飲んでくれる少年。
ああ、もう。いったいどれだけ可愛らしいんだ。これ以上なく可愛いと思っても、どんどん愛しさがこみ上げる。
絡み合う舌の心地よさに、本当に口が溶けてしまったよう。
これ以上は本当に我慢できない。私たちの初めての絶頂は、やっぱり一つになってがいい。
「ぷはっ……入れるよ?」
「……うん」
腰を浮かして、握ったままのおちんちんを私の入り口に導く。
いよいよだ。顔を上げるとちょうど少年も同じようにしていて、素敵な偶然に肩の力を抜け。視線が交わったまま私たちは一つになる。
「ふぁ……♥ なにこれっ♥ 下半身が溶けてぇ♥」
「あっ♥ イイッ♥ こんなに気持ちいいの初めて♥ もうイッてしまう♥」
一つになれた悦びに私たちは共に達する。
私のナカを熱いものがおっかなびっくりに昇ってくるのが、愛らしくて愛らしくて。初めての絶頂に困惑している彼を抱きしめた。
「……ふふ、大丈夫かい? 初めての経験でびっくりしたのかな? 落ち着いて、その気持ち良さに身を任せて、ゆっくりと息をするんだ」
「う、うん。すぅーふぅ……」
「んっ。ちょっとくすぐったいな。このままじゃ、またすぐ火がついてしまいそうだよ♥」
上着越しとはいえ、愛する人の吐息は情欲を煽り。恍惚の余韻をさらに味わい深く。幸せにうっとりと沈んでしまいそうだ。
「おっ♥ やっぱり若いと元気だね♥ もう動いて大丈夫かな?」
「う……うん♥ 今度は僕も動く……」
「無理はダメだよキルシュ君。それに、君の成長を楽しむ機会を奪わないで欲しいな」
今日は君をただただ甘やかしたい。固さを取り戻したおちんちんを、強く締め付けないよう細心の加減で腰を前後に動かす。
くちゅ、くちゅ、かき混ぜられる二人の愛。室内にいやらしい音が広がるのに、少年は恥ずかしそうにしながらも興奮して呼吸を荒げる。
私のナカが優しく舐めまわすたびに、おちんちんはビクビク跳ね。絶頂の余韻もほどほどに次の幸せをどん欲に求めだす。
「んっ、はぁ……♥ 私はとっても気持ちいいよキルシュ君。君はどうだい?」
「僕もっ……気持ちいいッ。あんたをすぐ近くで感じるのが……すごくて全部忘れそうでっ♥」
わがままになっていく気持ちに私たちの身体も動きを激しくなり。
「あっ♥ ふぅぅッ♥ キルシュ……もう我慢できそうにないよ……私がこんな簡単にイカせるのは君くらいっ♥ ……だ♥」
「そうっ、なのかっ? だ、だったら……次はッ、もっといかせる? ……からな♥」
「ふふふっ♥ 言ってくれるじゃないか。この女たらしめ♥」
けれど私たちははちきれそうな喘ぎを抑えて愛を確かめ合う。
こんなに幸せに身体を重ねているのに、肉欲に溺れるだけなんてもったいなさすぎる。
「それじゃあ次は、私の名前も読んでくれよ? 初めて会った時に名乗ったあの名前♥」
「あっ……うぅ……♥」
もう少年の限界が近い。そろそろとびっきりの絶頂で終わらせよう。
その前にちょっぴりからかってやろう。そんな私の稚気に、しっかりと少年は応えてくれた。
「ふゃっ! あはあぁぁぁぁぁぁぁ♥」
絶頂の直前に抱き着いてきた少年のささやきは、間違いなく私の人生で最高の絶頂をくれて。
生娘のようにのけ反りイク私に引きずられ、一緒になって床に倒れる。
「はぁぁ……♥ まったく、本当に女たらしだねキルシュ君。あのタイミングで名前呼びは反則♥」
「う、うぅ……へぇ、いいこと聞いた。次の時も……その次も、ずっと気持ちいい瞬間に名前を呼んでやろ」
「こいつめ♥ 嘘だったら承知しないからね」
「ん、守るに決まってんだろ。ふぁ」
「ふふん、ならその愛らしいあくびに免じて信じてあげるよ。今日はこのまま……眠るとしよう」
固い床に背中を預けたまま、私たちは目を閉じた。今は床の固さよりも、愛する人のぬくもりを一秒でも長く感じていたかったから。
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「いたた……腰が……」
「いい年なのに床で寝るからだろ。今日の作業は俺に任せてろ」
23/04/16 17:43更新 / オーデコロン