二人だけの朗読会
今より少し昔に、友達と森へ遊びに行って迷子になったことがある。お祭りで忙しい大人たちに花冠をプレゼントして驚かせてやろうと、子供だけでこっそりと、ちょっとした探検気分で出かけたのだった。
両親が薬師で普段から薬草を取りに森に入ることが多い僕は、ついつい得意になって、一人森の奥深くまで入り込み帰れなくなってしまった。
その後、子供がいないことに気づいた大人たちが、眠っていた僕を見つけだし。子供たちは、全員まとめて村長に特大の雷を落とされた。
さすがに懲りたのか、その後森で遊ぼうとすることはなくなった。けれど僕だけはまだ森の奥へと足を踏み入れる。そこに住む友達に会うために。
「こんにちわ、お姉さん！ 家で作ったアプリコット持ってきました！」
「いらっ、しゃい、アミル。怪我とか、して、ない？」
「大丈夫です、お父さんから色々教わりましたし。もう暗くなってもへっちゃらです！」
帰り道が分からなくなり、心細くて泣きだしそうになっていた時。大きな翼が僕を包み込んだ、驚いて振り向くと大きなフクロウの格好をした女の人が、不安そうな顔で僕を見つめていた。
最初はびっくりしたけど大きくて奇麗な眼を見ている内に、さっきまで感じいた心細さは無くなり。お姉さんが話す遠い国のおとぎ話や勇者の話に夢中になっている内に、いつの間にか眠ってしまい、目を覚ました時には家のベッドの上だった。
「だめ、よ、夜の森は、危ないから、暗くなる、前に、帰るの、いい？」
そう言ってバスケットを受け取ったお姉さんは、近くの木を背もたれにして座り込み、両膝をぽんぽんと叩く。
「おいで、今日は、どんな、お話が、聞きたい、の？」
僕が膝の上に乗ると、両翼で抱きかかえてくる。お姉さんの胸が枕みたいに当たって少し恥ずかしいけど、暖かい羽毛の感触とミルクの様な甘い匂いが心地よくて、ついつい寄りかかってしまう。
「んー、前に言ってた、東を目指す勇者の話が聞きたいです」
「うん、シルクの、勇者、様の、お話、ね」
そう言って空を見上げて小さく何か呟き、大きく息を吸った後。お姉さんはゆっくりと語り始めた。
「昔々、ある一人の旅人が、遠く東の国へと旅をしていました。」
いつもと違う歌うような話し方で、物語を話すお姉さんは、とても楽しそうで、普段の物静かで奇麗な様子と違い、あの時の眼みたいな暖かい日だまりのようで。それを独り占めしてると思うと、なんだか嬉しくなってしまう。
「こうして勇者となった旅人と一人ぼっちのお姫様は、小指と小指を絡めて何時かのように約束しました『この指、もう二度と離しませんわ旦那様』そう言っお姫様は初めて笑った顔を見せたのです」
「めでたしめでたし……ね。どう、だったかしら？」
強く優しい主人公が、孤独な女性を救い出すお話。お姉さんはこういったお話に憧れているのか、いつも以上に眼をキラキラさせて僕を見ている。
「悲しいお話だと思います。たとえいつか会えるとしても、大切な人がそばにいないなんて僕には耐えられません」
けれど、僕はそう思えなかった。
ほんの少しとはいえ一人になってしまったあの夜。たったそれだけで僕は、空っぽの世界に取り残されたような気持ちになった。それが何年の続くなんて考えたくもない。
自分の好きなものを否定されてお姉さんが悲しむかもしれない、でも嘘をつきたくはなかった。
「そう……」
「だから今、僕はお姉さんと一緒に居れて幸せなんです」
恥ずかしいのを我慢してお姉さんに寄りかかる。体がこわばり胸の鼓動が鳴りやまない、一生分の勇気を振り絞って顔を上げる。そこには、大きく眼を見開いて固まってるお姉さんの真っ赤な顔が見える。
「え、えっと……だからその……あの……」
言葉が出てこない、お姉さんの悲しんだ顔が見たくないからってこれは無い。唐突に告白なんかして、ムードも何もあったもんじゃない。
……いや、ここまで来たらもう覚悟を決めよう、ついさっき勇気を振り絞ったばかりじゃないか。両手で頬を抑えて眼を閉じて、僕を強く抱きしめたまま、動かないお姉さんともう一度見つめあう。
「大好きです、僕を見つけてくれたあの時から」
顔が熱い、今どんな表情をしているんだろう。どうでもいい考えばかりが頭の中でぐるぐると回っている。とにかく笑ってたほうがいい気がする、少なくともかっこ悪くはない……と思う。
「ありがとう、ね。でも、そういう、のは、大人になるまで、取って、おく、ものよ」
「無理ですよ、さっき言ったじゃないですか。大切な人がそばにいないなんて耐えられないって」
顔をそらして僕を抱きしめていた翼から力が抜ける。けれど、無理やり膝上からどかすわけではなく、ただそのまま拒絶でも受け入れるわけでもない、中途半端な態度をお姉さんは取り続けている。
「お姉さん」
体を動かしてお姉さんと向き合う。僕の気持ちがまっすぐ伝わるようにと。
「嫌なら嫌って言ってください、僕はそれを受け止めます。二度とここに来ないと約束します」
「だからどうかお姉さんの気持ちを教えてください」
「……だって、私、ずる、してる、もの」
ぽつりと、顔を伏せたままそう呟く。その声はいつも以上に弱弱しく、消え入りそうだった。
「アミルが、本当に、私、なんかと……楽しい、のかって。魔法で、こっそり……」
「思ったことを正直に言うようにしてたんですか？」
お姉さんは眼を逸らしたまま小さくうなずく。もしかしてさっきの告白もそうだったのだろうか、もしそうだったらもう一回やったほうが良いかもしれない。
「ええ、何度も……ね、幻滅、した、でしょう？」
「そんなこと……」
「いいの、お願い、こんな、事、して、嫌われない、わけ、ない、から」
否定しようとしても、お姉さんは聞く耳持とうとはしない。
どうしてわかってくれないのか、言葉だけじゃ足りないのか、ならやるべきなのは一つしかない。
「アミル……だから、私……みたいな……んんぅ！？」
精一杯体を伸ばして唇を重ねる、暖かくて柔らかい感触が気持ちいい。
ずっとこのままでいたいという誘惑を振り切って唇を離す。
「あっ……」
「これが僕の気持ちですよ。お姉さんが僕のことで思い悩んでくれることが嬉しくてたまらない、そんな悪い子なんですよ僕は」
そう言ってもう一度、唇を重ねる。頭がどんどん熱く滅茶苦茶になるけど、胸の中が何かで一杯になって落ち着く不思議な気持ち。
お姉さんにも伝わっているんだろうか？ それとも伝わってるからこんな気持ちになるのか。
この大好きって気持ちが絶対に変わらない、そんな僕の思いが届いてくれるだろうか？
そのまましばらく……もしかしたら一瞬だったかもしれない。お姉さんしか映ってなかった視界が突然開いて青空になる。腰の辺りに触れる柔らかい感触に、誰かに押し倒されて馬乗りにされていることに気づく。
「ふふっ♪ ふふふ……」
聞いたことのない甘い声に驚いて目を向ければ、目と口を大きく歪めて怪しく笑う女の人。それがお姉さんだと一瞬疑ってしまうほどに、豹変したその姿に見惚れてしまう。
「駄目よ、そんなこと言っちゃ？ そんなに甘やかされたら私、我慢する気なくなっちゃうじゃない。分かってて言ってるのかしら？ ふふっ、そんな悪い子だなんて知らなかったなぁ♪」
初めて見るえっちな顔、初めて聞く甘い声、その二つがまるで僕の体に沁み込んで、ふわふわとした感覚に包み込まれる。
「知ってる？ 昔は悪いことをすると、魔物が食べに来るって言い聞かせてたのよ。アミルも私に食べられたいのかしら？」
「ふひゃぁ……」
夢見心地のままぼんやりとしていた頭が現実に引き戻される。ひんやりとした舌の感覚が耳を這いまわり、思わず腰が跳ねそうになるが、お姉さんに抑え込まれ身動きできない。
「気持ちいい？ ねぇ、気持ちいいかしら？ それとも、これじゃ物足りない？」
「っあ……おねーさん……まだ……」
「なぁに？ もっとペロペロしてほしい？ ギュッとしてほしい？」
耳元でささやかれる甘い声に、首を縦に振りそうになる。でもまだ駄目だ、まだ聞かなきゃならないことがある。答えを催促するかのように腰を擦り付けてくる、お姉さんの誘惑に耐えつつ口を開く。
「返事を……その……僕の告白の返事が効きたいです」
「へうっ！？」
僕のお願いが予想外だったのか、さっきまでの強気な態度が一変して、いつものお姉さんが戻ってきたようで。顔を真っ赤にして目を泳がせている。
「うぅ……い、今、こうしてるの、だから、分かる、でしょう……」
「そうですけど……それだけじゃ、物足りないんです」
こうして気持ちがいいことをされていると、お姉さんも僕と同じ気持ちだということが何となく分かるけれど、何となくじゃなくて、はっきりとお姉さんの気持ちを知りたい。
これは僕のわがままだ、聞かなければお姉さんを困らせることは無かった。
体をくっ付けるだけじゃなくて、同じ思いを言葉にしてほしい、そんなわがまま。それでも、言わずにはいられなかった。
僕が最初に好きになったのは、泣き出しそうになっていた僕を励まそうと、おろおろしながら色々なお話をしてくれた、お姉さんの不器用だけど優しい言葉だったから。
「もぅ……発情期の、勢い、なら、私、でも、できそう、だったのに……」
「だってズルいじゃないですか、僕だけ告白するの」
「う〜、だって、恥ずかしい、じゃない、あんなのぉ……」
僕に跨ったまま、顔を覆い隠したお姉さんが落ち着くまで待つ。
「私ね、昔は主神教団の人間だったの」
はっきりと静かに、僕をまっすぐ見つめてお姉さんが口を開く。僕に物語を話してくれる時と同じように、自分の思いを僕に伝えようとしてくれている。
「人と話すのが苦手で、本ばっかり読んで、魔法の才能があるって、司教様に拾われてもそれは変わらなくて。ずっと逃げ続けて、その結果がこの姿」
そっと、熱くなった僕の頬をお姉さんの翼がなでる。
「あなたを見かけた時もね、怖がられたら嫌だからって、何もできなかった……酷いでしょう？」
「それでもお姉さんは僕を助けたじゃないですか」
「そうね……自分を見てるみたいで、気が付いたら抱きしめてた」
僕をなでる翼に手を添える、ふわふわした羽毛が僕の手を包み込み。お姉さんの温もりが体に伝える。
「それからは色々理由をつけては、私のとこに来てくれたわね。最初はお礼を言いに、次はお父さんを説得したって言いに来て……ふふっ、楽しみに待ってたのよ？」
「あの時はすいませんでした」
お父さんから、森で生きる知識をしっかりと学んでからという条件で、お姉さんと会うことを許可されたのが嬉しくて、飛び出してしまった。
案の定怒られて、合格をもらうまでかなり扱かれる羽目になった。それだけ、お姉さんに早く会えたから、結果的に良かったかもしれないけど。あの時の事を思い出すと、頭を抱えたくなる。
「そうね、なかなか来ないだもの、とっても寂しかったわ。でもね、誰かを待つなんて初めてでそれ以上にドキドキしたの。アミル、あなたと出会ってから、あなたのことを思うだけで、私の心は暖かくなるの」
そう言って、空を見上げて小さく呟き、大きく息を吸う。
「この暖かさが好きって気持ちなら……いいえ、私はあなたが好き、大好き。だからもう、これからは我慢なんてしないからね♥ んっ……」
ふわりと、さっき押し倒した時と違って、お姉さんの唇が重ねられ。そのまま、ドアをノックするかのように僕の唇を舌で突いてくる。
誘われるまま口を開くと、熱いものが僕の口の中を這いまわり、その熱が体に火を付ける。熱に浮かされるまま僕も舌を伸ばし、お互いの舌を絡ませる。
「ちゅぱ、んちゅ……あむ……はぁ……どう？ 大人のキス、今度は私が奪っちゃった」
「あっ……」
唾液が糸を引いて、僕たちの舌を繋ぐ。口の中がジュースを飲んだ時みたいに甘い。
さっき押し倒された時以上の変な感覚に、舌が回らず生返事になってしまう。
「さぁ、キスの次はここ……私のオマンコとアミルのおちんちん……今度はここでキスをするの♥」
お姉さんに下着をずらされると、服に抑えられていたおちんちんが勢いよく跳ね上がり、別の生き物みたいにびくびくと震える。
「これが男の子の……うん、準備万端ね……うん、よし……
ほら、アミル？ 私の恥ずかしいところよく見て……」
僕に見せつけるかのように太ももを開いて、トロトロと何かの液体を垂らす穴を広げる。それを見ていると、ただでさえ大きくなっていたおちんちんが膨れて。爆発するんじゃないかと思うほど、何かがこみあげてくる。
それでも、その穴から目を逸らすことはできずにいると。お姉さんが僕のおちんちんに向けて、ゆっくりと腰を落としてくる。
「大丈夫よ、怖くなんてないから、あんっ……一緒に気持ちよくなりましょう♥」
「お姉さん……血がっ」
おちんちんの入った場所から血が流れる。慌てる僕に対して、お姉さんは僕の頬にキスをする。
「いいのよ、これは私とアミルが一緒になった証拠だから」
そのまま僕を抱きしめ、体を持ち上げて、向き合ったまま僕の膝にお姉さんが乗り、いつものお話を聞く時とは逆の体勢になる。
「アミルの胸、すごいドキドキしてる……緊張しているの？」
「ん……ぁ……お姉さん、もっ……」
「うん、私もすごいドキドキしてる、大好きな人と一緒になるなんてできないと思ってたんだもの」
温かくて柔らかい、知らない感覚がおちんちんを包んで、うまく話せない。気を抜いたらどうにかなってしまいそうな、とにかく自分を押さえることに必死だった。
「我慢しなくてもいいのよ、いっぱい気持ちよくなりましょう？」
お姉さんの腰が動きだす。それと同時に、頭の中が真っ白になる。
「はぁっ、ああっ！ アミル、あなたも好きにっ♪ ん、動いてっいいのよっ……」
その言葉にはじかれるように、お姉さんを強く抱きしめる。
「おねえさん……おねえさんっ！」
「ひゃぁ……ん、よしよし、おちんちんもっ……ギュ〜てしてあげるね♥」
「あっ、あぁぁぁ！」
優しく撫でられていたおちんちんが、強く締め付けられつい呻いてしまう。
痛くはない。けれど、ずっと耐えていた何かが、限界を知らせるように頭の中でチカチカとする。そんな僕に、お姉さんは腰をぐりぐりと押し付け、我慢をやめさせるように、体とおちんちんを抱きしめて離さない。
もう限界。そう思ったら、体が勝手に腰を突き上げ、力の限りお姉さんにくっつく。
「あはぁっ♥ そうっ！ 中にっぃ♥ 私の一番奥にアミルの全部っ！！」
「ダメですっ……くるっ、なにかくるっ！ ふぁぁぁぁ！！！」
おちんちんが壊れる、そう思ってしまうほどの気持ちよさが爆発する。
顔を胸にうずめたまま、荒い呼吸を繰り返す。いつもの甘いにおいと汗のにおいが混ざって、なんだか眠くなってくる。
何とか首を動かして、お姉さんを見ると。固く結んだ口から、よだれを垂らし、体を震わせながらも、優しい眼で僕を見ていた。
「んっ♥ ふぅ……お疲れ様、アミル……ゆっくり、休んで、ね」
「おはよう、もう、起きて、も、大丈夫？」
目を覚ますと、体がずっしりと重い。でも、不思議と気分がいい。
「はい、だけどもう少し……このまま横になってもいいですか？」
「ええ、ちゃんと、暗く、なる、前に、帰るのなら、ね」
「ありがとうございます」
お姉さんはいつものように、膝の上に僕を載せて、翼で僕の体を包んでくれる。それが、いつも以上に嬉しくて、より特別な存在になった証拠みたいで。僕たちは、その心地よい感覚に身を任せ、ゆっくり目を閉じた。
両親が薬師で普段から薬草を取りに森に入ることが多い僕は、ついつい得意になって、一人森の奥深くまで入り込み帰れなくなってしまった。
その後、子供がいないことに気づいた大人たちが、眠っていた僕を見つけだし。子供たちは、全員まとめて村長に特大の雷を落とされた。
さすがに懲りたのか、その後森で遊ぼうとすることはなくなった。けれど僕だけはまだ森の奥へと足を踏み入れる。そこに住む友達に会うために。
「こんにちわ、お姉さん！ 家で作ったアプリコット持ってきました！」
「いらっ、しゃい、アミル。怪我とか、して、ない？」
「大丈夫です、お父さんから色々教わりましたし。もう暗くなってもへっちゃらです！」
帰り道が分からなくなり、心細くて泣きだしそうになっていた時。大きな翼が僕を包み込んだ、驚いて振り向くと大きなフクロウの格好をした女の人が、不安そうな顔で僕を見つめていた。
最初はびっくりしたけど大きくて奇麗な眼を見ている内に、さっきまで感じいた心細さは無くなり。お姉さんが話す遠い国のおとぎ話や勇者の話に夢中になっている内に、いつの間にか眠ってしまい、目を覚ました時には家のベッドの上だった。
「だめ、よ、夜の森は、危ないから、暗くなる、前に、帰るの、いい？」
そう言ってバスケットを受け取ったお姉さんは、近くの木を背もたれにして座り込み、両膝をぽんぽんと叩く。
「おいで、今日は、どんな、お話が、聞きたい、の？」
僕が膝の上に乗ると、両翼で抱きかかえてくる。お姉さんの胸が枕みたいに当たって少し恥ずかしいけど、暖かい羽毛の感触とミルクの様な甘い匂いが心地よくて、ついつい寄りかかってしまう。
「んー、前に言ってた、東を目指す勇者の話が聞きたいです」
「うん、シルクの、勇者、様の、お話、ね」
そう言って空を見上げて小さく何か呟き、大きく息を吸った後。お姉さんはゆっくりと語り始めた。
「昔々、ある一人の旅人が、遠く東の国へと旅をしていました。」
いつもと違う歌うような話し方で、物語を話すお姉さんは、とても楽しそうで、普段の物静かで奇麗な様子と違い、あの時の眼みたいな暖かい日だまりのようで。それを独り占めしてると思うと、なんだか嬉しくなってしまう。
「こうして勇者となった旅人と一人ぼっちのお姫様は、小指と小指を絡めて何時かのように約束しました『この指、もう二度と離しませんわ旦那様』そう言っお姫様は初めて笑った顔を見せたのです」
「めでたしめでたし……ね。どう、だったかしら？」
強く優しい主人公が、孤独な女性を救い出すお話。お姉さんはこういったお話に憧れているのか、いつも以上に眼をキラキラさせて僕を見ている。
「悲しいお話だと思います。たとえいつか会えるとしても、大切な人がそばにいないなんて僕には耐えられません」
けれど、僕はそう思えなかった。
ほんの少しとはいえ一人になってしまったあの夜。たったそれだけで僕は、空っぽの世界に取り残されたような気持ちになった。それが何年の続くなんて考えたくもない。
自分の好きなものを否定されてお姉さんが悲しむかもしれない、でも嘘をつきたくはなかった。
「そう……」
「だから今、僕はお姉さんと一緒に居れて幸せなんです」
恥ずかしいのを我慢してお姉さんに寄りかかる。体がこわばり胸の鼓動が鳴りやまない、一生分の勇気を振り絞って顔を上げる。そこには、大きく眼を見開いて固まってるお姉さんの真っ赤な顔が見える。
「え、えっと……だからその……あの……」
言葉が出てこない、お姉さんの悲しんだ顔が見たくないからってこれは無い。唐突に告白なんかして、ムードも何もあったもんじゃない。
……いや、ここまで来たらもう覚悟を決めよう、ついさっき勇気を振り絞ったばかりじゃないか。両手で頬を抑えて眼を閉じて、僕を強く抱きしめたまま、動かないお姉さんともう一度見つめあう。
「大好きです、僕を見つけてくれたあの時から」
顔が熱い、今どんな表情をしているんだろう。どうでもいい考えばかりが頭の中でぐるぐると回っている。とにかく笑ってたほうがいい気がする、少なくともかっこ悪くはない……と思う。
「ありがとう、ね。でも、そういう、のは、大人になるまで、取って、おく、ものよ」
「無理ですよ、さっき言ったじゃないですか。大切な人がそばにいないなんて耐えられないって」
顔をそらして僕を抱きしめていた翼から力が抜ける。けれど、無理やり膝上からどかすわけではなく、ただそのまま拒絶でも受け入れるわけでもない、中途半端な態度をお姉さんは取り続けている。
「お姉さん」
体を動かしてお姉さんと向き合う。僕の気持ちがまっすぐ伝わるようにと。
「嫌なら嫌って言ってください、僕はそれを受け止めます。二度とここに来ないと約束します」
「だからどうかお姉さんの気持ちを教えてください」
「……だって、私、ずる、してる、もの」
ぽつりと、顔を伏せたままそう呟く。その声はいつも以上に弱弱しく、消え入りそうだった。
「アミルが、本当に、私、なんかと……楽しい、のかって。魔法で、こっそり……」
「思ったことを正直に言うようにしてたんですか？」
お姉さんは眼を逸らしたまま小さくうなずく。もしかしてさっきの告白もそうだったのだろうか、もしそうだったらもう一回やったほうが良いかもしれない。
「ええ、何度も……ね、幻滅、した、でしょう？」
「そんなこと……」
「いいの、お願い、こんな、事、して、嫌われない、わけ、ない、から」
否定しようとしても、お姉さんは聞く耳持とうとはしない。
どうしてわかってくれないのか、言葉だけじゃ足りないのか、ならやるべきなのは一つしかない。
「アミル……だから、私……みたいな……んんぅ！？」
精一杯体を伸ばして唇を重ねる、暖かくて柔らかい感触が気持ちいい。
ずっとこのままでいたいという誘惑を振り切って唇を離す。
「あっ……」
「これが僕の気持ちですよ。お姉さんが僕のことで思い悩んでくれることが嬉しくてたまらない、そんな悪い子なんですよ僕は」
そう言ってもう一度、唇を重ねる。頭がどんどん熱く滅茶苦茶になるけど、胸の中が何かで一杯になって落ち着く不思議な気持ち。
お姉さんにも伝わっているんだろうか？ それとも伝わってるからこんな気持ちになるのか。
この大好きって気持ちが絶対に変わらない、そんな僕の思いが届いてくれるだろうか？
そのまましばらく……もしかしたら一瞬だったかもしれない。お姉さんしか映ってなかった視界が突然開いて青空になる。腰の辺りに触れる柔らかい感触に、誰かに押し倒されて馬乗りにされていることに気づく。
「ふふっ♪ ふふふ……」
聞いたことのない甘い声に驚いて目を向ければ、目と口を大きく歪めて怪しく笑う女の人。それがお姉さんだと一瞬疑ってしまうほどに、豹変したその姿に見惚れてしまう。
「駄目よ、そんなこと言っちゃ？ そんなに甘やかされたら私、我慢する気なくなっちゃうじゃない。分かってて言ってるのかしら？ ふふっ、そんな悪い子だなんて知らなかったなぁ♪」
初めて見るえっちな顔、初めて聞く甘い声、その二つがまるで僕の体に沁み込んで、ふわふわとした感覚に包み込まれる。
「知ってる？ 昔は悪いことをすると、魔物が食べに来るって言い聞かせてたのよ。アミルも私に食べられたいのかしら？」
「ふひゃぁ……」
夢見心地のままぼんやりとしていた頭が現実に引き戻される。ひんやりとした舌の感覚が耳を這いまわり、思わず腰が跳ねそうになるが、お姉さんに抑え込まれ身動きできない。
「気持ちいい？ ねぇ、気持ちいいかしら？ それとも、これじゃ物足りない？」
「っあ……おねーさん……まだ……」
「なぁに？ もっとペロペロしてほしい？ ギュッとしてほしい？」
耳元でささやかれる甘い声に、首を縦に振りそうになる。でもまだ駄目だ、まだ聞かなきゃならないことがある。答えを催促するかのように腰を擦り付けてくる、お姉さんの誘惑に耐えつつ口を開く。
「返事を……その……僕の告白の返事が効きたいです」
「へうっ！？」
僕のお願いが予想外だったのか、さっきまでの強気な態度が一変して、いつものお姉さんが戻ってきたようで。顔を真っ赤にして目を泳がせている。
「うぅ……い、今、こうしてるの、だから、分かる、でしょう……」
「そうですけど……それだけじゃ、物足りないんです」
こうして気持ちがいいことをされていると、お姉さんも僕と同じ気持ちだということが何となく分かるけれど、何となくじゃなくて、はっきりとお姉さんの気持ちを知りたい。
これは僕のわがままだ、聞かなければお姉さんを困らせることは無かった。
体をくっ付けるだけじゃなくて、同じ思いを言葉にしてほしい、そんなわがまま。それでも、言わずにはいられなかった。
僕が最初に好きになったのは、泣き出しそうになっていた僕を励まそうと、おろおろしながら色々なお話をしてくれた、お姉さんの不器用だけど優しい言葉だったから。
「もぅ……発情期の、勢い、なら、私、でも、できそう、だったのに……」
「だってズルいじゃないですか、僕だけ告白するの」
「う〜、だって、恥ずかしい、じゃない、あんなのぉ……」
僕に跨ったまま、顔を覆い隠したお姉さんが落ち着くまで待つ。
「私ね、昔は主神教団の人間だったの」
はっきりと静かに、僕をまっすぐ見つめてお姉さんが口を開く。僕に物語を話してくれる時と同じように、自分の思いを僕に伝えようとしてくれている。
「人と話すのが苦手で、本ばっかり読んで、魔法の才能があるって、司教様に拾われてもそれは変わらなくて。ずっと逃げ続けて、その結果がこの姿」
そっと、熱くなった僕の頬をお姉さんの翼がなでる。
「あなたを見かけた時もね、怖がられたら嫌だからって、何もできなかった……酷いでしょう？」
「それでもお姉さんは僕を助けたじゃないですか」
「そうね……自分を見てるみたいで、気が付いたら抱きしめてた」
僕をなでる翼に手を添える、ふわふわした羽毛が僕の手を包み込み。お姉さんの温もりが体に伝える。
「それからは色々理由をつけては、私のとこに来てくれたわね。最初はお礼を言いに、次はお父さんを説得したって言いに来て……ふふっ、楽しみに待ってたのよ？」
「あの時はすいませんでした」
お父さんから、森で生きる知識をしっかりと学んでからという条件で、お姉さんと会うことを許可されたのが嬉しくて、飛び出してしまった。
案の定怒られて、合格をもらうまでかなり扱かれる羽目になった。それだけ、お姉さんに早く会えたから、結果的に良かったかもしれないけど。あの時の事を思い出すと、頭を抱えたくなる。
「そうね、なかなか来ないだもの、とっても寂しかったわ。でもね、誰かを待つなんて初めてでそれ以上にドキドキしたの。アミル、あなたと出会ってから、あなたのことを思うだけで、私の心は暖かくなるの」
そう言って、空を見上げて小さく呟き、大きく息を吸う。
「この暖かさが好きって気持ちなら……いいえ、私はあなたが好き、大好き。だからもう、これからは我慢なんてしないからね♥ んっ……」
ふわりと、さっき押し倒した時と違って、お姉さんの唇が重ねられ。そのまま、ドアをノックするかのように僕の唇を舌で突いてくる。
誘われるまま口を開くと、熱いものが僕の口の中を這いまわり、その熱が体に火を付ける。熱に浮かされるまま僕も舌を伸ばし、お互いの舌を絡ませる。
「ちゅぱ、んちゅ……あむ……はぁ……どう？ 大人のキス、今度は私が奪っちゃった」
「あっ……」
唾液が糸を引いて、僕たちの舌を繋ぐ。口の中がジュースを飲んだ時みたいに甘い。
さっき押し倒された時以上の変な感覚に、舌が回らず生返事になってしまう。
「さぁ、キスの次はここ……私のオマンコとアミルのおちんちん……今度はここでキスをするの♥」
お姉さんに下着をずらされると、服に抑えられていたおちんちんが勢いよく跳ね上がり、別の生き物みたいにびくびくと震える。
「これが男の子の……うん、準備万端ね……うん、よし……
ほら、アミル？ 私の恥ずかしいところよく見て……」
僕に見せつけるかのように太ももを開いて、トロトロと何かの液体を垂らす穴を広げる。それを見ていると、ただでさえ大きくなっていたおちんちんが膨れて。爆発するんじゃないかと思うほど、何かがこみあげてくる。
それでも、その穴から目を逸らすことはできずにいると。お姉さんが僕のおちんちんに向けて、ゆっくりと腰を落としてくる。
「大丈夫よ、怖くなんてないから、あんっ……一緒に気持ちよくなりましょう♥」
「お姉さん……血がっ」
おちんちんの入った場所から血が流れる。慌てる僕に対して、お姉さんは僕の頬にキスをする。
「いいのよ、これは私とアミルが一緒になった証拠だから」
そのまま僕を抱きしめ、体を持ち上げて、向き合ったまま僕の膝にお姉さんが乗り、いつものお話を聞く時とは逆の体勢になる。
「アミルの胸、すごいドキドキしてる……緊張しているの？」
「ん……ぁ……お姉さん、もっ……」
「うん、私もすごいドキドキしてる、大好きな人と一緒になるなんてできないと思ってたんだもの」
温かくて柔らかい、知らない感覚がおちんちんを包んで、うまく話せない。気を抜いたらどうにかなってしまいそうな、とにかく自分を押さえることに必死だった。
「我慢しなくてもいいのよ、いっぱい気持ちよくなりましょう？」
お姉さんの腰が動きだす。それと同時に、頭の中が真っ白になる。
「はぁっ、ああっ！ アミル、あなたも好きにっ♪ ん、動いてっいいのよっ……」
その言葉にはじかれるように、お姉さんを強く抱きしめる。
「おねえさん……おねえさんっ！」
「ひゃぁ……ん、よしよし、おちんちんもっ……ギュ〜てしてあげるね♥」
「あっ、あぁぁぁ！」
優しく撫でられていたおちんちんが、強く締め付けられつい呻いてしまう。
痛くはない。けれど、ずっと耐えていた何かが、限界を知らせるように頭の中でチカチカとする。そんな僕に、お姉さんは腰をぐりぐりと押し付け、我慢をやめさせるように、体とおちんちんを抱きしめて離さない。
もう限界。そう思ったら、体が勝手に腰を突き上げ、力の限りお姉さんにくっつく。
「あはぁっ♥ そうっ！ 中にっぃ♥ 私の一番奥にアミルの全部っ！！」
「ダメですっ……くるっ、なにかくるっ！ ふぁぁぁぁ！！！」
おちんちんが壊れる、そう思ってしまうほどの気持ちよさが爆発する。
顔を胸にうずめたまま、荒い呼吸を繰り返す。いつもの甘いにおいと汗のにおいが混ざって、なんだか眠くなってくる。
何とか首を動かして、お姉さんを見ると。固く結んだ口から、よだれを垂らし、体を震わせながらも、優しい眼で僕を見ていた。
「んっ♥ ふぅ……お疲れ様、アミル……ゆっくり、休んで、ね」
「おはよう、もう、起きて、も、大丈夫？」
目を覚ますと、体がずっしりと重い。でも、不思議と気分がいい。
「はい、だけどもう少し……このまま横になってもいいですか？」
「ええ、ちゃんと、暗く、なる、前に、帰るのなら、ね」
「ありがとうございます」
お姉さんはいつものように、膝の上に僕を載せて、翼で僕の体を包んでくれる。それが、いつも以上に嬉しくて、より特別な存在になった証拠みたいで。僕たちは、その心地よい感覚に身を任せ、ゆっくり目を閉じた。
19/03/14 23:40更新 / オーデコロン