大事なものは
それはとある雨の日。町で騒動が起こった。
まだこの国が魔物と共和していなかった頃の話。
一匹の子竜が逃げていた。
腕や足にはあざや傷を負っている。
後ろには剣やら弓矢やら武器を持って追いかける人間がいる。
「いたぞ!!!」
「くそっ!!」
なかなか撒くことが出来なかった。
「森のなかに逃げたぞ!追え!」
「しかしこの雨で森のなかに入るのは危険です!」
「構わん!折角の金ズルを逃してたまるか!」
森はかなり茂って硬い枝などが子竜の肌を刺す。
「ッ!!」
森を抜けたと思ったらそこは高い崖だった。
ドラゴンが飛べるようになるのは子竜と成竜の中間と言われている。
しかしこの子はまだまだ子供。到底飛べる訳がない。
「いたぞ!弓矢で射抜いてしまえ!」
その命令を聞いた兵士のひとりは弓矢をとり、射抜く。
矢は子竜の腕にヒットした。
「っが!!!」
不覚にも足を踏み外し崖から落ちてしまった。
「コラァ!!誰が落とせといった!?···」
そんな声が聞こえて意識をなくしてしまった。
おーい····
「おーい、生きてるかー?」
「う···ん?」
子竜は目を覚ました。見慣れない洞窟の風景と一人の人間が見えた。
「!?貴様、誰だ!?」
「助けておいてそれは無いだろう···」
「助けただと?」
「お前さん、崖から落ちて気失ってただろ?傷も受けてたし」
「···こんなものはかすり傷だ」
「子供でもドラゴンの気の強さは変わんないんだな」
「···俺を助けてどうする」
「お前さんはどうしたい?」
「奴等に復讐する」
「何故?」
「貴様には関係ない」
「では問おう、その腕に刺さってた矢は何だ」
「奴等に射抜かれただけだ」
「奴等が憎いか?」
「ああ、ドラゴンのプライドをズタズタにしたからな」
子竜の顔には復讐の二文字しか写っていない。
「では言わせてもらう、お前さんは勝てない」
「貴様もドラゴンをバカにする気か!?」
「そうではない。私はこれまで幾万の魔物と戦ってきた」
「しかしどの魔物も人が憎いだの、殺すだの、壊すだの言っている事がまるでこどもの様だった」
「·····」
「一番大事なものは力でも、金でも、復讐でもない、心だぞ」
「私は初めて魔物の子供に出会ったが、子供は心が清い事が分かった。お前さんの目は十分澄んでいる」
「·····何が言いたいんだ」
「まあ、簡単に言えば」
「お前さんの誇りは復讐だけなのか、と言いたかったんじゃ。年を取ると表現力に乏しくてなあ」
「···!!!」
ドラゴンは怒りと悔しさが混ざったような顔をして走り去っていった。
あれから50年後、
遂に人間と魔物の戦いに終止符が打たれた。
これからは互いに共和していくことになり、それは互いの発展に大きく貢献した。
たった一匹の竜の、鶴の一声によって。
まだこの国が魔物と共和していなかった頃の話。
一匹の子竜が逃げていた。
腕や足にはあざや傷を負っている。
後ろには剣やら弓矢やら武器を持って追いかける人間がいる。
「いたぞ!!!」
「くそっ!!」
なかなか撒くことが出来なかった。
「森のなかに逃げたぞ!追え!」
「しかしこの雨で森のなかに入るのは危険です!」
「構わん!折角の金ズルを逃してたまるか!」
森はかなり茂って硬い枝などが子竜の肌を刺す。
「ッ!!」
森を抜けたと思ったらそこは高い崖だった。
ドラゴンが飛べるようになるのは子竜と成竜の中間と言われている。
しかしこの子はまだまだ子供。到底飛べる訳がない。
「いたぞ!弓矢で射抜いてしまえ!」
その命令を聞いた兵士のひとりは弓矢をとり、射抜く。
矢は子竜の腕にヒットした。
「っが!!!」
不覚にも足を踏み外し崖から落ちてしまった。
「コラァ!!誰が落とせといった!?···」
そんな声が聞こえて意識をなくしてしまった。
おーい····
「おーい、生きてるかー?」
「う···ん?」
子竜は目を覚ました。見慣れない洞窟の風景と一人の人間が見えた。
「!?貴様、誰だ!?」
「助けておいてそれは無いだろう···」
「助けただと?」
「お前さん、崖から落ちて気失ってただろ?傷も受けてたし」
「···こんなものはかすり傷だ」
「子供でもドラゴンの気の強さは変わんないんだな」
「···俺を助けてどうする」
「お前さんはどうしたい?」
「奴等に復讐する」
「何故?」
「貴様には関係ない」
「では問おう、その腕に刺さってた矢は何だ」
「奴等に射抜かれただけだ」
「奴等が憎いか?」
「ああ、ドラゴンのプライドをズタズタにしたからな」
子竜の顔には復讐の二文字しか写っていない。
「では言わせてもらう、お前さんは勝てない」
「貴様もドラゴンをバカにする気か!?」
「そうではない。私はこれまで幾万の魔物と戦ってきた」
「しかしどの魔物も人が憎いだの、殺すだの、壊すだの言っている事がまるでこどもの様だった」
「·····」
「一番大事なものは力でも、金でも、復讐でもない、心だぞ」
「私は初めて魔物の子供に出会ったが、子供は心が清い事が分かった。お前さんの目は十分澄んでいる」
「·····何が言いたいんだ」
「まあ、簡単に言えば」
「お前さんの誇りは復讐だけなのか、と言いたかったんじゃ。年を取ると表現力に乏しくてなあ」
「···!!!」
ドラゴンは怒りと悔しさが混ざったような顔をして走り去っていった。
あれから50年後、
遂に人間と魔物の戦いに終止符が打たれた。
これからは互いに共和していくことになり、それは互いの発展に大きく貢献した。
たった一匹の竜の、鶴の一声によって。
12/12/03 23:52更新 / マジックアンク