Jingle, Jangle, Jingle
とある親魔物領の街。時節は冬。
街は年に一回の祝祭の日を迎えていた。街中がこの日を祝い、楽しみ、隣人と喜びを分かち合っていた。
通りには幾多もの店が特別な装飾で客を迎え、行き交う無数の人々は肩を組み浮かれて笑いあっている。
「イェッピィェェェェ〜。フンフフンフンフン〜♪」
そんな通りをある男が一人で歩いていた。家族連れ、恋人同士、ハーレム夫婦。行き交う人々の幸せそうな雰囲気にも怖気づくことなく、鼻歌を歌いながら道の真ん中を歩いていく。まるで一人でいるのが楽しくてしょうがないといった様子だ。
ポケットに手を突っ込んで口笛を吹き、リズムを合わせて頭を揺らす。歩いてくる人の波もひょいひょいと軽快な身のこなしで翻し、ついでにステップを踏みながらすれ違った人々に挨拶をする。にこやかに笑いかけられたカップルは戸惑いながらも釣られて笑う。
「よう！元気か！」
「フンフン…ん？ああ、おかげ様でな！」
「こないだは助かったよ。ありがとうな。」
「イエア！それならよかった！」
群衆の中から呼びかける声に男が振り向くと、一組のカップルがいた。その夫の方が手を上げて男に話しかけ、男も陽気に返事を返す。
後ろ向きで歩きながら適当な会話を交わし、最後に男が調子よく両手の人差し指を向けながら「それじゃあな、いい子供産めよ！」などと言うとカップルは顔を赤くして困ったように二人で見つめ合った。
二人の世界に入ってしまったカップルを尻目に男が正面に向き直ると、その瞬間、ドンと小さな子供にぶつかってしまった。ぶつかった子供は反動で転びそうになるが、その前に男が肩を掴んで支える。しゃがんで子供と目線を合わせた男は、その子の持っていた箱を拾い上げて握らせると、にやりと笑いながらその中にカランと硬貨を落とした。
「おっとぉ、悪いね。お詫びのコインだ。良い祝祭を！」
子供の頭をわしゃわしゃと撫でながら男は立ち上がる。ふと顔を上げると、その子の保護者なのか修道女の格好をした魔物がいた。
「その子がぶつかってしまってすみません。それに募金にもご協力いただいて…。」
「いやあ、今日は祝祭ですからね。こんな日にまで仕事をしては堕落神に怒られてしまいますよ。ではお姉さんも楽しんで！」
「そうですね、ありがとうございます。では、もしよろしければこの後……ってああっ、行っちゃいました…。」
そうして男は振り返り何事も無かったかのように歩いていく。変わらず陽気に鼻歌を歌いながら、自由気ままに思うがままに祝祭の街を歩いていく。
その後もその男はそんな調子だった。ふらふらと街を徘徊し、出店の装飾が壊れて困ってる娘を見つけては元通り以上に飾り立て、走り回る子供たちを見つけては一緒になって追いかけっこをし、テラスで酔っぱらってる集団を見つけては一緒になって酒を飲んで歌った。まるで一人でいることの自由さを謳歌しているかのようだった。
「ねぇ、お兄さん、一人？良かったら今晩、どう…？」
「やぁ、そんなこと言っちゃいけない。大事な祝祭の日ですよ、こんな男より妹さんと一緒に過ごしなさいな！」
「そんなこといわずにさぁ…ああっ、行っちゃった。しゅん。」
そうしてまた見知らぬ人々と陽気な会話を繰り広げた男は、おどけた様子で一礼してその場を歩き去ってしまう。溜息をつきながらその姿を見る女性に、後ろから別の男が声をかける。
「姉ちゃん、やめとけやめとけ！あいつはあんな感じなんだ。」
「あんな感じ、って何？どういうこと？」
「しばらく前からああやって陽気で気前も良いから度々魔物の姉ちゃん達に誘われるんだがよ、毎回断ってるらしいぜ。なんか一人でいるのが楽しくてしょうがないって感じだよなぁ。前はああじゃなかったんだけどな…子供嫌いだし気難しかったし…。」
「ふーん…。じゃあアンタが相手してくれるってのはどう？えいっ。」
「おわっ！？」
そうして祝祭の日は更けていく。日は落ちて空は暗くなり、暗くなった空には星が瞬いて、その星が照らす街は暖かな家々の明かりや店の装飾で互いに照らしあう夜となった。男が歩くこの道も、すっかり暗くなって道行く人の数も少なくなってくる。
通りの両側から優しい明かりに照らされながら、幾多もの人と魔物が二人連れ、もしくはそれ以上で引っ付き合いながら歩いてくる。じきに祝祭も終わる頃合いで、皆それぞれの家に帰るところだろう。男だけが、皆とは違う方向に歩き続ける。彼はふと立ち止まって教会の時計塔を見上げ、次いでその上の尖塔を見上げた。時計の針はまもなく真上で重なる頃合いだった。男は一人、にやりと笑ってまた歩き始めた。
男が見上げていた時計塔。その上は暗く、一つの明かりもない。目下の家々が発する橙色の光が下からぼんやりと照らすのみである。
だが、そこには一つの人影があった。それはたった今、屋根を伝い、空を駆けこの場所に降り立ってきた。大きな袋を携え、血に染まったかのような赤い服。柔らかな毛並みに包まれた肢体と、頭から生えるねじくれた角。"務め"を終えた一体のクランプスが、肩の荷を下ろしてふぅと一息ついた。
いつから、誰が始めたのかも定かではないが、この地方には祝祭の日に空からやってくる魔物が授け物をする文化がある。良い子にはささやかな贈り物を、悪い子には良い子になれるようなおまじないを。街の魔物たちはその文化を活かすため、協力して街中の子供の元を巡るのだ。
クランプスは手すりにもたれながら街を見下ろす。暖炉の明かりが漏れ出る家々の一軒一軒を見ながら、彼女は今日見てきた様々な笑顔を脳裏に思い浮かべていた。文房具を貰って喜ぶ子、可愛い服を貰ってはにかむ子、いろんな笑顔を思い出し、その親の感謝の言葉を反芻して、彼女はどこか誇らしい気持ちになる。だが、同時に彼女はどこか寂しいような気持ちで両手に息をかけて擦り合わせた。目下の人々は皆愛する人と共にいる。自分だけがここに一人ぼっちだ。そんなような想いさえ浮かんでくる。
そこで突然に、彼女の後ろのドアが音を立てて開いた。彼女が振り向くと、そこには一人の男がいた。彼女はその姿を見て目を細めて笑った。二人は互いに歩み寄っていく。
「ああっ…♪やっと来たぁっ…♪」
「予定より早かったね。」
そうして抱き合った二人は唇を合わせた。労わるような、求めるような情熱的な口づけ。抱き合ったまま互いの舌を絡ませ、しばらくして顔を離す。
「どうだった？」
「いっぱい子供たちの笑顔見られたよ。みんな喜んでた。」
「そりゃ良かった。お疲れさま。…んっ…。」
「んん♥んむ…あむ…んんっ♥…ん、ちゅっ♥んぁ…んむ♥」
少しだけ息をついて、また唇を重ねる二人。くちゅくちゅと唇の合間から音が漏れ、混ざり合った唾液がクランプスの胸の上に垂れて彼女がぶるりと悦びに震える。
たっぷりと数十秒粘膜で絡み合った彼らはようやく口を離すが、それは終わりではなく始まりを意味していた。
「んぁ…んちゅ♥んむ♥んふふ♪んん……ぷはっ、はぁ、はぁ、なぁ、もう我慢できないぃ…♥」
「はぁ…はぁ…うん、わかってる。」
その言葉を皮切りに男を押し倒すクランプス。柔らかな毛が生えた腕で優しく男の身体を横たえると、男の下半身に覆いかぶさるようにして服を脱がした。途端、男のモノがぶるんと突き上げて震える。鼻腔に届く雄の匂いに彼女はだらしなく頬を緩めた。
「はぁぁぁぁっ…♥もうビンビンになってる…♥じゃあ…いつも通りにまずはやさしくしてやるからな…ん、ちゅ…♥」
彼女はそそり立つ剛直に口付け、ぱくりと唾液に塗れた暖かな口内に咥え込む。じゅるじゅると舌で肉棒を舐め回し、かと思えばちゅるりと音を立ててすぼめた唇で扱くように上下する。一番深くまで飲み込んで止まり、上目遣いで男の表情を伺いながら、もぐもぐと口を動かし、ごくりと唾液を飲み込んだ後にはぁぁ、と熱い吐息を吐く。濡れた肉棒の表面が情念の籠った吐息で撫でられる感覚に男は呻き声を上げた。
男の反応に愉悦を覚えて目を細め、今度は顔を上に傾ける。彼女は大きな舌を出して見せつけるように、包み込むようにして男の裏筋をゆっくり、とてもゆっくりした動きで舐め上げた。最後に舌がちゅるりと先っぽを撫でて男がびくびくと震えると、彼女は大きな手で肉棒を優しく擦りながら問いかける。
「はぁ…♥なにかして欲しいことあるか…？なんでもしてあげるぞ…♥」
「はぁ、はぁ…して欲しいこと…。んー……俺も君を気持ち良くさせたい。」
「くすっ。お前は優しいな♥」
「君のおかげでそうなれたんだ。」
「いいや、ずっと前からそうだったよ。気づいてなかっただけで…♪」
言い終わると彼女は横たわる男の上でくるりと体勢を入れ替え、上下逆に抱き合うような姿勢となった。丁度互いの目の前に互いの性器がある形だ。男の頭を両の脚で挟みこむように密着しながら、彼女は肉棒を手で扱いて言う。
「ほら♥これならどうだ？いっぱい舐めていいぞ♥はぁ、はぁ……。……？」
男の目の前にはとろとろの愛液に濡れた秘所がふるふると震えて誘うように涎を垂らしていたが、男はそれはそれとして彼女の長い毛に覆われた脚を持ち上げて自身の顔に押し付けた。
「…なにやってるんだ？」
「んー……いい匂いのもふもふを堪能してる。んふー。」
「はぁ…しょうがないやつ。もういい、こっちは勝手にお前ｎひゃうっ！？」
「ん…レロ…もうどろどろだね…。ちゅるっ…んあ…。」
「ばっかっ♥いきなりっアソコ舐めるなぁっ♥♥このやろっ、こっちだって…♥あむ…♥」
「んんんっ！！…んぐ、んちゅるっ、れろれろ…。」
そうして二人は互いの性器を貪り合った。女の方は唾液でどろどろになった肉棒に両手を添えてちゅこちゅこと上下し、掌に滑らかに生えそろった体毛で肉棒に刺激を与える。同時に唇と舌、喉奥、と口内全体を使って男を責め立てる。にゅるりと粘膜同士が擦れて刺激に肉棒が震えたところを、唾液濡れの体毛で優しく包み込むように撫で上げる。
男の方は女の臀部をがっしりと掴み、彼女の秘所を顔に押し付けて舐めた。赤く充血した肉のひだはふるふると震えて雌の匂いを湧き立たせ、小ぶりな突起にキスすればびくりと震えて愛液が染み出し、舌を差し入れるときゅうきゅうと全体が締めつけた。
「んっふぅっ…♥んんっ♥んむ…♥くちゅっ、じゅぽっ、じゅぽっ、じゅぽっ♥」
「ぐぅぅ…ぅっ…んむ、れろれろ…ちゅるっ、んむ…んむ…。」
時間が立つごとに二人の吐息は荒くなり、それぞれの腰がびくびくと前後し始める。それがしばらく続いて激しさを増したとき、男の方に限界が訪れ、男は秘所に顔を埋めたまま声にならない声を上げて射精した。吐精するたびに突き上がる男の腰にしがみつくようにして、彼女は熱い息を吐きながら掌で白濁を受け止める。その間ももう一方の手でゆるゆると肉棒を扱き続け、男に甘美な絶頂の感覚を少しでも長く味わわせるために動きを止めない。
「んんん〜〜〜っ〜〜〜〜っ！！」
「はぁっ、はぁっ、あは、イったぁ♥はぁ♥びゅくびゅくしてるぅ♥ふぅ、ふぅ、キモチよさそぅぅ…♥ふへ、全然止まらないぃ♥」
数十秒してようやく男の脈動が収まってきて、それを見届けた彼女は心底安心したように息を吐いて肉棒に縋りつき、手で受け止めた白濁液を舐め始めた。
「はぁ、はぁ…よかったっ…先にイかされる所だったっ…はぁっ…はぁっ…ん、ちゅるっ。」
「はぁ…はぁ…イきたくないの？」
「んちゅるっ、そんなことない…でも、お前に先に気持ちよくなって欲しかった…♥」
彼女はそう言って身体を起こす。がくがくと脚が興奮で震えているが、構わず体勢を変えて男の脚の上に座り込む。彼女の下腹部に未だ熱を帯びる肉棒が押し付けられ、二人が顔を見合わせられる形だ。彼女が少し腰を上げればいつでも繋がり合うことができる。
「はぁっ♥あは♥はは♥じゃあもういいか？いいよな？シよう、いっぱいシよう♥♥いっぱい気持ちよくしてやる、から、ぁ、ぁ、ぁ〜〜〜〜っ〜〜〜♥♥」
「う…わっ…！きっつ……っ…！」
彼女の秘所がゆっくりと肉棒を飲み込んでいく。崩れ落ちるようにして彼女の脚から力が抜けていくが、ぎゅうぎゅうと秘所が締め付けるせいで一気に入り込まない。互いの恥部の粘膜のあらゆる部分がゆっくりと擦れ合って二人の脳髄を快楽で染める。
互いに手や歯に力を込めて耐えるように快楽を受け止める。いくらか経ったとき、ようやく男の肉棒はすべて彼女の膣内に収まっていた。男は食いしばった歯から力を抜くように息を吐き、女は男の腹に手をついて背を丸めてやり過ごす。
「ふぅっ♥ふぅ♥ふぅ♥ふぅぅぅっぅ…♥それ、じゃあ…っ、うごく、から、な…♥」
「わか、った、っ、はぁ、はぁっ。」
「ん、んんっ…♥あ、ふっ♥はぁっ♥あっ♥あっ♥んんっ♥はぁんっ♥♥」
彼女がゆっくりと腰を上げて、そして下げる。上げるときは肉襞でなぞり上げるようにし、下げるときは一直線に突き入れて、一拍止まって最奥に擦り付けるように腰をくねらせる。二度、三度と腰が上下すると互いの接触部に体液が糸を引き、時折秘所がぷじゅりと男の下腹部と触れて音を出す。始めは緩やかなその動きも、互いの体液が馴染んでくるとともに段々と早さを増していき、それに伴って二人の口から漏れる喘ぎも大きくなっていく。
「あ♥ふあっ♥どう、だっ♥きもちいいかっ？ぁっ♥」
「ああ…っ！気持ち良すぎ、だよ…っ！」
「良かったぁ♥ぁんっ♥ぁっ♥ぁっ♥」
ぱちゅぱちゅと腰が打ち付けられるごとに互いの身体の中に快楽が積み重なっていく。彼女は一際大きく腰を沈めると一瞬身体をびくんと硬直させ、口の端から涎を垂らしながら息を吐き、身体を倒して男に覆い被さった。男の目の前にぶるりと柔らかな乳房が揺れ、男の顔に涎が落ちる。
「っっ〜〜っ♥♥ぅぅぅ♥ふぅぅ♥ふぅぅ♥あぶないぃ♥もうちょっとでいくところだったぁ♥はぁ♥どうせなら、いっしょにっ♥いっしょに♥♥」
「ふぅっ…ふぅっ…！」
「やっ♥あんっ♥胸もむなぁっ♥いまはだめっ、だめだからぁっ♥こっちで我慢してっ♥」
そう言って彼女は男の両手を取り、男の両手ごと自分の両腕を男の顔に押し付けた。柔らかな毛に覆われた腕が男の顔を覆って呼吸を妨げるが、魔物の臂力を跳ねのけることなど並の人間にはできない。たまらず男は顔中に広がる体毛の感触とともに魔物の発情した香りを吸い込まざるを得なかった。
「あっ♥ちょっと大きくなったぁ♥あはっ♥ああぅ♥これヤバっ♥ごりごりあたるぅ♥ぁっ♥ぁっ♥ぁっ♥」
「ふぅっ、ふぅっ、んんぅぅっ！」
「なぁっ、そろそろ、そろそろっイキそうだろっ？どうするっ？どうしてほしいっ、手でほっぺたもふもふしてやろうかっ？はぁっ、それとも胸で顔はさんでやろうかっ？」
「うっ…ぐ…、はぁっ、君の、顔をみながらシたいっ…！」
「ああっ…♥まったく、しかたないやつだなっ♥ほらっ♥いっぱいみろっ♥おまえのためにっ♥イくのいっぱい我慢した顔、みてっ♥ぁ♥は♥も、だめ…っ…♥ふぅううん…っ…んぁっ…ぁぁっ♥♥♥」
ついに限界に達した彼女が背を丸めて、男に縋りつくようにして達する。声を抑えながらびくびくと震えて身体中を駆け巡る快楽を享受する。だが同時に彼女の膣が強く男の肉棒を締め上げたせいで男が腰を突き上げながら射精した。体内にぶちまけられる熱いドロドロの感触に、彼女はたまらず弓なりに身体を反らせて声を上げて絶頂した。
「……ぁっ♥あああっ♥きたぁぁっ♥びゅるびゅるきたぁっ♥♥ああああああっ♥♥〜〜〜〜〜〜っ♥♥♥♥」
男のモノが脈動して精液を吐き出す度に、彼女はびくびくと身体を揺らして快感に酔い痴れた。何回目かの脈動の後、それが収まってもしばらく二人とも放心したかのように動かなかった。しばらくして風が体液に濡れた肌を撫でると、彼女は繋がったままゆっくりと身体を倒して恋人を抱きしめた。
しんしんと静まり返る夜。大地は月明かりに照らされ、家々は暖炉の明かりで暖かく揺れる。
冷たい風が撫で上げる時計台の上では、二人の男女が繋がったまま抱き合っていた。
互いに動くことなく、互いの体温と鼓動に耳を傾けているのである。
そんな彼らは何かに気づいたのか、二人してふとどこかを見上げる。風を切り、屋根を駆ける黒い影はどれもこれも異形の姿だった。時計の針が零時を回ったのを皮切りに彼女たちは一斉に飛び立った。誰も彼もがその胸にとびきりの贈り物を持って、あるいは自分自身を飾り立ててそれぞれの獲物の元に向かう。その中には、いまこの場所にいる彼女と同じ種族の者も何人かいるようだった。彼女らは一様にして黒い色の悪魔の衣装に身を包んでいた。それを見た彼女はどこか懐かしい気持ちになりながら抱擁の手を強めた。
「あの人たちも出発したみたいだね。」
「そうだな…とびっきりの"悪い子"を懲らしめに行くために、な♪」
街中に潜んでいた彼女らが次から次へと飛び出して、またすぐに辺りは静かになる。月明かりに照らされて、風の音を聞きながら二人は静かに抱き合った。
「…ちょっと冷えてきたかも」
「じゃあ…ほら♥」
男がぶるりと身体を震わせると、彼女は近くに放り出していた大きな袋を手に取った。彼女たちの種族にとっては大切な意味を持つ袋だ。それを男の頭からすっぽりと被せると、自身も器用にその中に入り、繋がり合ったまま二人の首から下は袋の中に納まった。
狭い空間で愛する人と密着し、その体温を逃がさず感じられるようになったことに彼女は目を細めて喜んだ。
「なぁっ、なぁ♥このままシよう♥交尾しよう♥」
「わっ、ちょ、ちょっと、ちょっとまって。」
「む〜…なんだよ？」
抱き着いたまま身体を前後に揺らして交尾を再開しようとする彼女だが、男が制止する。得心が行かない彼女だが、男はもぞもぞと何かを準備しながら言葉を続ける。
「実は祝祭の贈り物があるんだ。いつも頑張ってる君にね。」
「えっ…こんな、私に、か…？嬉しい…♥」
「よいしょ…何だと思う？」
「はぁ♥はぁ♥なんだろな♥キスかな♥せーえきかな♥それとも首輪とか鎖とか？あはっ♥」
「あー…そういうのはまた来年にかな。ほら、これだよ。」
やっとのことで衣服の合間からそれを取り出した男。小さなその箱を良く見えるようにと彼女の目の前に掲げる。そして、そっとその蓋を開けると、そこには二つの指輪が入っていた。
「今日は記念日だから…何を言うか色々迷ったけど、一番言いたいことを言うよ。結婚しよう。」
その言葉を受けた彼女は一瞬きょとんとした顔になる。状況が飲み込めないのか、よほど意外だったのか。数秒の後ににへらと破顔して男を抱きしめた。
「あはっ♥うそだろっ♥うれしっ♥超うれしいっ♥んちゅっ♥んんむっ♥んむ♥」
「んむっ！？んん…っ、ぷはっ。ははっ、独り身も今日が最後…んむっ！んん…」
「んんん………ぷあっ、ありがとう…♥お前の方から言ってくれるなんて、嬉しい…♥」
そう言って彼女は小さな箱を大事そうに受け取り、胸元に置いて目を閉じた。男にしなだれかかり、喜びを噛みしめる。男もへらりと調子ついた笑顔を浮かべて彼女を抱きしめ、告白の余韻を味わった。
しばしの後、いつもの調子で男がおどけて言う。
「それで、俺には贈り物は無いのかな？"Yes"の返事とか贈ってくれると超嬉しいんだけど。」
「あ…あー………その、な…。」
「？」
男の言葉に彼女は頬を染めて恥ずかしそうに目線を逸らす。いつもの彼女にしては歯切れの悪い態度に男の胸中は不安に包まれるが、彼女はどこかからすっと何かを取り出して男に見せる。それは先ほど男が持ってきたものとよく似た小さい箱で、彼女がぱかりと開けると中には別のデザインの指輪が二つ入っていた。
「…その…贈り物…被っちゃった…。」
「…………くくっ、ふははっ！」
「…ふふふっ、あはははっ♥」
互いに相手が同じようなことを企んでいたと気づいた二人は思わず噴き出した。抱き合って楽しそうに笑う二人、その顔は愛欲とは別のもので少し赤らんでいた。
そうして笑いあった二人は、しばらくしてその場を離れた。彼女が担ぐあの袋に包まれて、袋に入る者と運ぶ者が顔を並べて歩く。昔のように袋詰めにされながら男は彼女を自宅に招いた。
そこには暖かい暖炉の火と、テーブルに並んだ豪勢な食事。それから少しの果実酒。
祝祭が終わって街が静まり返る中、彼らはちょっと遅い二人だけの祝祭を楽しんだ。
街は年に一回の祝祭の日を迎えていた。街中がこの日を祝い、楽しみ、隣人と喜びを分かち合っていた。
通りには幾多もの店が特別な装飾で客を迎え、行き交う無数の人々は肩を組み浮かれて笑いあっている。
「イェッピィェェェェ〜。フンフフンフンフン〜♪」
そんな通りをある男が一人で歩いていた。家族連れ、恋人同士、ハーレム夫婦。行き交う人々の幸せそうな雰囲気にも怖気づくことなく、鼻歌を歌いながら道の真ん中を歩いていく。まるで一人でいるのが楽しくてしょうがないといった様子だ。
ポケットに手を突っ込んで口笛を吹き、リズムを合わせて頭を揺らす。歩いてくる人の波もひょいひょいと軽快な身のこなしで翻し、ついでにステップを踏みながらすれ違った人々に挨拶をする。にこやかに笑いかけられたカップルは戸惑いながらも釣られて笑う。
「よう！元気か！」
「フンフン…ん？ああ、おかげ様でな！」
「こないだは助かったよ。ありがとうな。」
「イエア！それならよかった！」
群衆の中から呼びかける声に男が振り向くと、一組のカップルがいた。その夫の方が手を上げて男に話しかけ、男も陽気に返事を返す。
後ろ向きで歩きながら適当な会話を交わし、最後に男が調子よく両手の人差し指を向けながら「それじゃあな、いい子供産めよ！」などと言うとカップルは顔を赤くして困ったように二人で見つめ合った。
二人の世界に入ってしまったカップルを尻目に男が正面に向き直ると、その瞬間、ドンと小さな子供にぶつかってしまった。ぶつかった子供は反動で転びそうになるが、その前に男が肩を掴んで支える。しゃがんで子供と目線を合わせた男は、その子の持っていた箱を拾い上げて握らせると、にやりと笑いながらその中にカランと硬貨を落とした。
「おっとぉ、悪いね。お詫びのコインだ。良い祝祭を！」
子供の頭をわしゃわしゃと撫でながら男は立ち上がる。ふと顔を上げると、その子の保護者なのか修道女の格好をした魔物がいた。
「その子がぶつかってしまってすみません。それに募金にもご協力いただいて…。」
「いやあ、今日は祝祭ですからね。こんな日にまで仕事をしては堕落神に怒られてしまいますよ。ではお姉さんも楽しんで！」
「そうですね、ありがとうございます。では、もしよろしければこの後……ってああっ、行っちゃいました…。」
そうして男は振り返り何事も無かったかのように歩いていく。変わらず陽気に鼻歌を歌いながら、自由気ままに思うがままに祝祭の街を歩いていく。
その後もその男はそんな調子だった。ふらふらと街を徘徊し、出店の装飾が壊れて困ってる娘を見つけては元通り以上に飾り立て、走り回る子供たちを見つけては一緒になって追いかけっこをし、テラスで酔っぱらってる集団を見つけては一緒になって酒を飲んで歌った。まるで一人でいることの自由さを謳歌しているかのようだった。
「ねぇ、お兄さん、一人？良かったら今晩、どう…？」
「やぁ、そんなこと言っちゃいけない。大事な祝祭の日ですよ、こんな男より妹さんと一緒に過ごしなさいな！」
「そんなこといわずにさぁ…ああっ、行っちゃった。しゅん。」
そうしてまた見知らぬ人々と陽気な会話を繰り広げた男は、おどけた様子で一礼してその場を歩き去ってしまう。溜息をつきながらその姿を見る女性に、後ろから別の男が声をかける。
「姉ちゃん、やめとけやめとけ！あいつはあんな感じなんだ。」
「あんな感じ、って何？どういうこと？」
「しばらく前からああやって陽気で気前も良いから度々魔物の姉ちゃん達に誘われるんだがよ、毎回断ってるらしいぜ。なんか一人でいるのが楽しくてしょうがないって感じだよなぁ。前はああじゃなかったんだけどな…子供嫌いだし気難しかったし…。」
「ふーん…。じゃあアンタが相手してくれるってのはどう？えいっ。」
「おわっ！？」
そうして祝祭の日は更けていく。日は落ちて空は暗くなり、暗くなった空には星が瞬いて、その星が照らす街は暖かな家々の明かりや店の装飾で互いに照らしあう夜となった。男が歩くこの道も、すっかり暗くなって道行く人の数も少なくなってくる。
通りの両側から優しい明かりに照らされながら、幾多もの人と魔物が二人連れ、もしくはそれ以上で引っ付き合いながら歩いてくる。じきに祝祭も終わる頃合いで、皆それぞれの家に帰るところだろう。男だけが、皆とは違う方向に歩き続ける。彼はふと立ち止まって教会の時計塔を見上げ、次いでその上の尖塔を見上げた。時計の針はまもなく真上で重なる頃合いだった。男は一人、にやりと笑ってまた歩き始めた。
男が見上げていた時計塔。その上は暗く、一つの明かりもない。目下の家々が発する橙色の光が下からぼんやりと照らすのみである。
だが、そこには一つの人影があった。それはたった今、屋根を伝い、空を駆けこの場所に降り立ってきた。大きな袋を携え、血に染まったかのような赤い服。柔らかな毛並みに包まれた肢体と、頭から生えるねじくれた角。"務め"を終えた一体のクランプスが、肩の荷を下ろしてふぅと一息ついた。
いつから、誰が始めたのかも定かではないが、この地方には祝祭の日に空からやってくる魔物が授け物をする文化がある。良い子にはささやかな贈り物を、悪い子には良い子になれるようなおまじないを。街の魔物たちはその文化を活かすため、協力して街中の子供の元を巡るのだ。
クランプスは手すりにもたれながら街を見下ろす。暖炉の明かりが漏れ出る家々の一軒一軒を見ながら、彼女は今日見てきた様々な笑顔を脳裏に思い浮かべていた。文房具を貰って喜ぶ子、可愛い服を貰ってはにかむ子、いろんな笑顔を思い出し、その親の感謝の言葉を反芻して、彼女はどこか誇らしい気持ちになる。だが、同時に彼女はどこか寂しいような気持ちで両手に息をかけて擦り合わせた。目下の人々は皆愛する人と共にいる。自分だけがここに一人ぼっちだ。そんなような想いさえ浮かんでくる。
そこで突然に、彼女の後ろのドアが音を立てて開いた。彼女が振り向くと、そこには一人の男がいた。彼女はその姿を見て目を細めて笑った。二人は互いに歩み寄っていく。
「ああっ…♪やっと来たぁっ…♪」
「予定より早かったね。」
そうして抱き合った二人は唇を合わせた。労わるような、求めるような情熱的な口づけ。抱き合ったまま互いの舌を絡ませ、しばらくして顔を離す。
「どうだった？」
「いっぱい子供たちの笑顔見られたよ。みんな喜んでた。」
「そりゃ良かった。お疲れさま。…んっ…。」
「んん♥んむ…あむ…んんっ♥…ん、ちゅっ♥んぁ…んむ♥」
少しだけ息をついて、また唇を重ねる二人。くちゅくちゅと唇の合間から音が漏れ、混ざり合った唾液がクランプスの胸の上に垂れて彼女がぶるりと悦びに震える。
たっぷりと数十秒粘膜で絡み合った彼らはようやく口を離すが、それは終わりではなく始まりを意味していた。
「んぁ…んちゅ♥んむ♥んふふ♪んん……ぷはっ、はぁ、はぁ、なぁ、もう我慢できないぃ…♥」
「はぁ…はぁ…うん、わかってる。」
その言葉を皮切りに男を押し倒すクランプス。柔らかな毛が生えた腕で優しく男の身体を横たえると、男の下半身に覆いかぶさるようにして服を脱がした。途端、男のモノがぶるんと突き上げて震える。鼻腔に届く雄の匂いに彼女はだらしなく頬を緩めた。
「はぁぁぁぁっ…♥もうビンビンになってる…♥じゃあ…いつも通りにまずはやさしくしてやるからな…ん、ちゅ…♥」
彼女はそそり立つ剛直に口付け、ぱくりと唾液に塗れた暖かな口内に咥え込む。じゅるじゅると舌で肉棒を舐め回し、かと思えばちゅるりと音を立ててすぼめた唇で扱くように上下する。一番深くまで飲み込んで止まり、上目遣いで男の表情を伺いながら、もぐもぐと口を動かし、ごくりと唾液を飲み込んだ後にはぁぁ、と熱い吐息を吐く。濡れた肉棒の表面が情念の籠った吐息で撫でられる感覚に男は呻き声を上げた。
男の反応に愉悦を覚えて目を細め、今度は顔を上に傾ける。彼女は大きな舌を出して見せつけるように、包み込むようにして男の裏筋をゆっくり、とてもゆっくりした動きで舐め上げた。最後に舌がちゅるりと先っぽを撫でて男がびくびくと震えると、彼女は大きな手で肉棒を優しく擦りながら問いかける。
「はぁ…♥なにかして欲しいことあるか…？なんでもしてあげるぞ…♥」
「はぁ、はぁ…して欲しいこと…。んー……俺も君を気持ち良くさせたい。」
「くすっ。お前は優しいな♥」
「君のおかげでそうなれたんだ。」
「いいや、ずっと前からそうだったよ。気づいてなかっただけで…♪」
言い終わると彼女は横たわる男の上でくるりと体勢を入れ替え、上下逆に抱き合うような姿勢となった。丁度互いの目の前に互いの性器がある形だ。男の頭を両の脚で挟みこむように密着しながら、彼女は肉棒を手で扱いて言う。
「ほら♥これならどうだ？いっぱい舐めていいぞ♥はぁ、はぁ……。……？」
男の目の前にはとろとろの愛液に濡れた秘所がふるふると震えて誘うように涎を垂らしていたが、男はそれはそれとして彼女の長い毛に覆われた脚を持ち上げて自身の顔に押し付けた。
「…なにやってるんだ？」
「んー……いい匂いのもふもふを堪能してる。んふー。」
「はぁ…しょうがないやつ。もういい、こっちは勝手にお前ｎひゃうっ！？」
「ん…レロ…もうどろどろだね…。ちゅるっ…んあ…。」
「ばっかっ♥いきなりっアソコ舐めるなぁっ♥♥このやろっ、こっちだって…♥あむ…♥」
「んんんっ！！…んぐ、んちゅるっ、れろれろ…。」
そうして二人は互いの性器を貪り合った。女の方は唾液でどろどろになった肉棒に両手を添えてちゅこちゅこと上下し、掌に滑らかに生えそろった体毛で肉棒に刺激を与える。同時に唇と舌、喉奥、と口内全体を使って男を責め立てる。にゅるりと粘膜同士が擦れて刺激に肉棒が震えたところを、唾液濡れの体毛で優しく包み込むように撫で上げる。
男の方は女の臀部をがっしりと掴み、彼女の秘所を顔に押し付けて舐めた。赤く充血した肉のひだはふるふると震えて雌の匂いを湧き立たせ、小ぶりな突起にキスすればびくりと震えて愛液が染み出し、舌を差し入れるときゅうきゅうと全体が締めつけた。
「んっふぅっ…♥んんっ♥んむ…♥くちゅっ、じゅぽっ、じゅぽっ、じゅぽっ♥」
「ぐぅぅ…ぅっ…んむ、れろれろ…ちゅるっ、んむ…んむ…。」
時間が立つごとに二人の吐息は荒くなり、それぞれの腰がびくびくと前後し始める。それがしばらく続いて激しさを増したとき、男の方に限界が訪れ、男は秘所に顔を埋めたまま声にならない声を上げて射精した。吐精するたびに突き上がる男の腰にしがみつくようにして、彼女は熱い息を吐きながら掌で白濁を受け止める。その間ももう一方の手でゆるゆると肉棒を扱き続け、男に甘美な絶頂の感覚を少しでも長く味わわせるために動きを止めない。
「んんん〜〜〜っ〜〜〜〜っ！！」
「はぁっ、はぁっ、あは、イったぁ♥はぁ♥びゅくびゅくしてるぅ♥ふぅ、ふぅ、キモチよさそぅぅ…♥ふへ、全然止まらないぃ♥」
数十秒してようやく男の脈動が収まってきて、それを見届けた彼女は心底安心したように息を吐いて肉棒に縋りつき、手で受け止めた白濁液を舐め始めた。
「はぁ、はぁ…よかったっ…先にイかされる所だったっ…はぁっ…はぁっ…ん、ちゅるっ。」
「はぁ…はぁ…イきたくないの？」
「んちゅるっ、そんなことない…でも、お前に先に気持ちよくなって欲しかった…♥」
彼女はそう言って身体を起こす。がくがくと脚が興奮で震えているが、構わず体勢を変えて男の脚の上に座り込む。彼女の下腹部に未だ熱を帯びる肉棒が押し付けられ、二人が顔を見合わせられる形だ。彼女が少し腰を上げればいつでも繋がり合うことができる。
「はぁっ♥あは♥はは♥じゃあもういいか？いいよな？シよう、いっぱいシよう♥♥いっぱい気持ちよくしてやる、から、ぁ、ぁ、ぁ〜〜〜〜っ〜〜〜♥♥」
「う…わっ…！きっつ……っ…！」
彼女の秘所がゆっくりと肉棒を飲み込んでいく。崩れ落ちるようにして彼女の脚から力が抜けていくが、ぎゅうぎゅうと秘所が締め付けるせいで一気に入り込まない。互いの恥部の粘膜のあらゆる部分がゆっくりと擦れ合って二人の脳髄を快楽で染める。
互いに手や歯に力を込めて耐えるように快楽を受け止める。いくらか経ったとき、ようやく男の肉棒はすべて彼女の膣内に収まっていた。男は食いしばった歯から力を抜くように息を吐き、女は男の腹に手をついて背を丸めてやり過ごす。
「ふぅっ♥ふぅ♥ふぅ♥ふぅぅぅっぅ…♥それ、じゃあ…っ、うごく、から、な…♥」
「わか、った、っ、はぁ、はぁっ。」
「ん、んんっ…♥あ、ふっ♥はぁっ♥あっ♥あっ♥んんっ♥はぁんっ♥♥」
彼女がゆっくりと腰を上げて、そして下げる。上げるときは肉襞でなぞり上げるようにし、下げるときは一直線に突き入れて、一拍止まって最奥に擦り付けるように腰をくねらせる。二度、三度と腰が上下すると互いの接触部に体液が糸を引き、時折秘所がぷじゅりと男の下腹部と触れて音を出す。始めは緩やかなその動きも、互いの体液が馴染んでくるとともに段々と早さを増していき、それに伴って二人の口から漏れる喘ぎも大きくなっていく。
「あ♥ふあっ♥どう、だっ♥きもちいいかっ？ぁっ♥」
「ああ…っ！気持ち良すぎ、だよ…っ！」
「良かったぁ♥ぁんっ♥ぁっ♥ぁっ♥」
ぱちゅぱちゅと腰が打ち付けられるごとに互いの身体の中に快楽が積み重なっていく。彼女は一際大きく腰を沈めると一瞬身体をびくんと硬直させ、口の端から涎を垂らしながら息を吐き、身体を倒して男に覆い被さった。男の目の前にぶるりと柔らかな乳房が揺れ、男の顔に涎が落ちる。
「っっ〜〜っ♥♥ぅぅぅ♥ふぅぅ♥ふぅぅ♥あぶないぃ♥もうちょっとでいくところだったぁ♥はぁ♥どうせなら、いっしょにっ♥いっしょに♥♥」
「ふぅっ…ふぅっ…！」
「やっ♥あんっ♥胸もむなぁっ♥いまはだめっ、だめだからぁっ♥こっちで我慢してっ♥」
そう言って彼女は男の両手を取り、男の両手ごと自分の両腕を男の顔に押し付けた。柔らかな毛に覆われた腕が男の顔を覆って呼吸を妨げるが、魔物の臂力を跳ねのけることなど並の人間にはできない。たまらず男は顔中に広がる体毛の感触とともに魔物の発情した香りを吸い込まざるを得なかった。
「あっ♥ちょっと大きくなったぁ♥あはっ♥ああぅ♥これヤバっ♥ごりごりあたるぅ♥ぁっ♥ぁっ♥ぁっ♥」
「ふぅっ、ふぅっ、んんぅぅっ！」
「なぁっ、そろそろ、そろそろっイキそうだろっ？どうするっ？どうしてほしいっ、手でほっぺたもふもふしてやろうかっ？はぁっ、それとも胸で顔はさんでやろうかっ？」
「うっ…ぐ…、はぁっ、君の、顔をみながらシたいっ…！」
「ああっ…♥まったく、しかたないやつだなっ♥ほらっ♥いっぱいみろっ♥おまえのためにっ♥イくのいっぱい我慢した顔、みてっ♥ぁ♥は♥も、だめ…っ…♥ふぅううん…っ…んぁっ…ぁぁっ♥♥♥」
ついに限界に達した彼女が背を丸めて、男に縋りつくようにして達する。声を抑えながらびくびくと震えて身体中を駆け巡る快楽を享受する。だが同時に彼女の膣が強く男の肉棒を締め上げたせいで男が腰を突き上げながら射精した。体内にぶちまけられる熱いドロドロの感触に、彼女はたまらず弓なりに身体を反らせて声を上げて絶頂した。
「……ぁっ♥あああっ♥きたぁぁっ♥びゅるびゅるきたぁっ♥♥ああああああっ♥♥〜〜〜〜〜〜っ♥♥♥♥」
男のモノが脈動して精液を吐き出す度に、彼女はびくびくと身体を揺らして快感に酔い痴れた。何回目かの脈動の後、それが収まってもしばらく二人とも放心したかのように動かなかった。しばらくして風が体液に濡れた肌を撫でると、彼女は繋がったままゆっくりと身体を倒して恋人を抱きしめた。
しんしんと静まり返る夜。大地は月明かりに照らされ、家々は暖炉の明かりで暖かく揺れる。
冷たい風が撫で上げる時計台の上では、二人の男女が繋がったまま抱き合っていた。
互いに動くことなく、互いの体温と鼓動に耳を傾けているのである。
そんな彼らは何かに気づいたのか、二人してふとどこかを見上げる。風を切り、屋根を駆ける黒い影はどれもこれも異形の姿だった。時計の針が零時を回ったのを皮切りに彼女たちは一斉に飛び立った。誰も彼もがその胸にとびきりの贈り物を持って、あるいは自分自身を飾り立ててそれぞれの獲物の元に向かう。その中には、いまこの場所にいる彼女と同じ種族の者も何人かいるようだった。彼女らは一様にして黒い色の悪魔の衣装に身を包んでいた。それを見た彼女はどこか懐かしい気持ちになりながら抱擁の手を強めた。
「あの人たちも出発したみたいだね。」
「そうだな…とびっきりの"悪い子"を懲らしめに行くために、な♪」
街中に潜んでいた彼女らが次から次へと飛び出して、またすぐに辺りは静かになる。月明かりに照らされて、風の音を聞きながら二人は静かに抱き合った。
「…ちょっと冷えてきたかも」
「じゃあ…ほら♥」
男がぶるりと身体を震わせると、彼女は近くに放り出していた大きな袋を手に取った。彼女たちの種族にとっては大切な意味を持つ袋だ。それを男の頭からすっぽりと被せると、自身も器用にその中に入り、繋がり合ったまま二人の首から下は袋の中に納まった。
狭い空間で愛する人と密着し、その体温を逃がさず感じられるようになったことに彼女は目を細めて喜んだ。
「なぁっ、なぁ♥このままシよう♥交尾しよう♥」
「わっ、ちょ、ちょっと、ちょっとまって。」
「む〜…なんだよ？」
抱き着いたまま身体を前後に揺らして交尾を再開しようとする彼女だが、男が制止する。得心が行かない彼女だが、男はもぞもぞと何かを準備しながら言葉を続ける。
「実は祝祭の贈り物があるんだ。いつも頑張ってる君にね。」
「えっ…こんな、私に、か…？嬉しい…♥」
「よいしょ…何だと思う？」
「はぁ♥はぁ♥なんだろな♥キスかな♥せーえきかな♥それとも首輪とか鎖とか？あはっ♥」
「あー…そういうのはまた来年にかな。ほら、これだよ。」
やっとのことで衣服の合間からそれを取り出した男。小さなその箱を良く見えるようにと彼女の目の前に掲げる。そして、そっとその蓋を開けると、そこには二つの指輪が入っていた。
「今日は記念日だから…何を言うか色々迷ったけど、一番言いたいことを言うよ。結婚しよう。」
その言葉を受けた彼女は一瞬きょとんとした顔になる。状況が飲み込めないのか、よほど意外だったのか。数秒の後ににへらと破顔して男を抱きしめた。
「あはっ♥うそだろっ♥うれしっ♥超うれしいっ♥んちゅっ♥んんむっ♥んむ♥」
「んむっ！？んん…っ、ぷはっ。ははっ、独り身も今日が最後…んむっ！んん…」
「んんん………ぷあっ、ありがとう…♥お前の方から言ってくれるなんて、嬉しい…♥」
そう言って彼女は小さな箱を大事そうに受け取り、胸元に置いて目を閉じた。男にしなだれかかり、喜びを噛みしめる。男もへらりと調子ついた笑顔を浮かべて彼女を抱きしめ、告白の余韻を味わった。
しばしの後、いつもの調子で男がおどけて言う。
「それで、俺には贈り物は無いのかな？"Yes"の返事とか贈ってくれると超嬉しいんだけど。」
「あ…あー………その、な…。」
「？」
男の言葉に彼女は頬を染めて恥ずかしそうに目線を逸らす。いつもの彼女にしては歯切れの悪い態度に男の胸中は不安に包まれるが、彼女はどこかからすっと何かを取り出して男に見せる。それは先ほど男が持ってきたものとよく似た小さい箱で、彼女がぱかりと開けると中には別のデザインの指輪が二つ入っていた。
「…その…贈り物…被っちゃった…。」
「…………くくっ、ふははっ！」
「…ふふふっ、あはははっ♥」
互いに相手が同じようなことを企んでいたと気づいた二人は思わず噴き出した。抱き合って楽しそうに笑う二人、その顔は愛欲とは別のもので少し赤らんでいた。
そうして笑いあった二人は、しばらくしてその場を離れた。彼女が担ぐあの袋に包まれて、袋に入る者と運ぶ者が顔を並べて歩く。昔のように袋詰めにされながら男は彼女を自宅に招いた。
そこには暖かい暖炉の火と、テーブルに並んだ豪勢な食事。それから少しの果実酒。
祝祭が終わって街が静まり返る中、彼らはちょっと遅い二人だけの祝祭を楽しんだ。
22/12/25 00:59更新 / パスタリアン