カリュブディス&スキュラ&主人公
「船長ーーー!!!!
渦潮だぁー!!!!コイツはデカいですぜー!!!」
僕の乗っている船の行く先に、波の渦が出来ている。
「何だとォ!?この辺じゃこんなに大きな渦潮は滅多に出来んのだがなぁ!!
緊急事態だー!!!総員、至急、帆を張れ!!!渦から脱出だあ!!!」
おいおい、この渦潮どんどんデカくなってるぜ。
間に合わないんじゃないか?
「ボサッとしてんな!!!お前も手伝え!!!」
「はい!!!」
稼げるって言うから小遣い稼ぎの気軽な気持ちで船に乗る仕事をしたは良いが、こんな目に遭うなんて聞いてない。
行きの3日と帰りの3日で、半月以上の稼ぎになるなんて話が上手すぎたんだ、それなりのリスクがやはりあるもんだ。
それにしたって、この海路はかなり安全って話だったんだがなぁ…。
「オーエス!オーエス!」
〜〜〜〜〜〜
「船長!帆を張り終わりました!」
「…あぁ。それなんだがな?もう意味がなくなっちまったぽいな。
もう逃げられん。
こんだけ大きい渦に飲まれたらどうしたって無理ってもんだ。
後は、海の神様に祈るしかねえ。
まぁ、魔物の仕業だったら生きて帰れる事もあるかもしれんが、それだってどうなるか分からん。
おっかねえ魔物に捕まっちまえばタダじゃ済まんだろうしな。
この船が完全に飲まれる前に小型のボートで逃げた方がまだ希望はあるな。
おめぇは只の日雇いだろ。
はよ逃げろや」
「そんな!じゃあ、船長は!?」
「船長が真っ先に逃げてどうするよ!何とかならぁ!気にせず早よう行け!!!」
お、漢だ。これが海の漢だ…。
「は、はい!」
小型ボートを海に降ろし、乗り込む。
もう巨大な渦潮に差し掛かろうとしている。
早く逃げなければ。
僕の他の乗員を見回す。
5人。全員、僕と同じ日雇いの若い男達だ。
この船の船員達は皆、ボートを辞退して、船に残るのか。
天晴れ、漢達。
出発するこの小型ボートに浮き輪が人数分投げ込まれる。
「多分この中で1人!多くて2人だ!他の奴らは浮き輪で何とか生き残れよ!!!」
ん?何の事だ?
よく分からないまま小型ボートと船を繋ぐロープが切られる。
そうして、皆で力を合わせ、オールを必死に漕ぎ渦潮からの脱出を図る。
「オーエス!オーエス!」
船とも大分距離が離れた。
もう少し漕げば完全に渦潮から逃れられるだろう。
船長、船員、皆立派な人達だった。
感慨深く、船の方を望むと、なんだか様子がおかしい。
船の行く先にあった大きな渦潮が弱くなっている気がする。
ん?
おかしいぞ。
それになんだか、やけにこのボートが揺れる。
ん?何故?
沢山の渦潮がこのボートの辺りそこら中に出来ている。
え?
ボートが渦潮に乗る、ぐるぐると渦に巻かれて操縦が効かない。
ぐるぐると流され飲まれ、ボートが転覆してしまいそうになる。
全員で何とか力を合わせて頑張って漕いでいるが、こんな小さなオールがいくつあったって意味が無い。
遂には、ボートがひっくり返った。
皆、必死にもがくが、駄目だ。
渦に飲まれてしまう。
ゴボゴボと渦に攫われ、意識も遠くなって行く。
沈む、沈む。
僕の意識も暗い所に沈んでいく。
目の前が真っ暗になった。
「んちゅ…んちゅ。ちゅぱ…ちゅぱ…」
気持ち良い…体の至る所が気持ち良い…
特に下半身が
「んん…此処は?」
「あっ。。
目覚めましたか?…あっ、あのっ此処は海の中です…今っ!私の魔力で海の中でも生きられる様に…してたんです…!///」
目を覚ますとそこは海の中で、目の前には、癖っ毛の髪をした、幼く、大人しそうな、例えば美術部にいそうな文学系のかわいい子がいた。
ん?海?
「…???海?」
…!!!!!???!!
僕、海の中で呼吸が出来ている!?
どうなってる???
「あのっ…!人間はそのままだと水中では生きられないんです…だから、私達魔物が魔力を注いであげないと、、なので…私が…あの…こうして///」
!!!???この子!!!
裸だ!!!
!?ていうか、俺も裸だ!!!???
「えぇ!?き、君は!?魔物!?
何で裸なの?」
「は、はい…。フジツボって言えば分かるでしょうか?
その生物とよく似た魔物です…「カリュブディス」って言うんです…この岩場に張り付いて生活しています。
普段は渦潮を起こしたりして、す、好きな人!を…見つけたらこうして…海に誘っています…。
で、でも!私がここまで招いた人はアナタが初めてです!!
…こんな風に体を重ねるのも…///」
!!!???!!!?
やけに下半身が熱く、蕩けるように気持ちが良いと思ったら、俺、彼女と繋がっている!?!?
すっ裸で、女の子と向き合って、知らぬ内にギンギンの俺の棒を、小柄な少女のツルツルの股の間に突っ込んでいる。
???
俺は海に飲まれて、知らぬ内に童貞卒業して、見知らぬ女の子の処女を奪ってしまったのか…。
嘘だろ?
これは本当は、海で溺れた俺の死の間際に見る「夢」なのではなかろうか?
理解が、追いつかない…。
「わ、私も!…本当はちゃんとお互い知り合ってから、こ、こういう事///した方が良いって思ってたんですけど…!」
彼女が強く訴える様に僕の方に詰め寄ると、彼女の蜜壺に僕の棒が絡め擦られて、昇天しそうな程の快感が押し寄せる。
「ッッ!!う、動かないで!気持ち良過ぎるから!…イッちゃうから!!」
「!そ、そうですか…/// でも、いつでもアナタの好きな時に出しても良いんですよ?
私はもう準備、出来てます///」
彼女の腰が焦らす様にクネクネと動く。
ビクビクと跳ねる様にして、快楽に翻弄される僕の肉棒。
耐えられる訳が無い。
も、もうダメだ!
「ゴメン!イく!」
「…はい!!///」
彼女はとても嬉しそうな笑顔で、僕の射精を全て中で受ける。
「とってもたくさん出ましたね!…気持ち良かったですか…?」
上目遣いで僕の顔色を窺うように、尋ねてくる。
「…う、うん。過去1番で。…所でさ、この状況が未だに理解出来ていないんだけども…
どうして、あのー…僕達は、セックスしてるのかな?」
賢者モードのお陰で、割と冷静に質問が出来た。
「ゴメンなさい!本当はちゃんと説明してからアナタとこういう事したかったんですけど///、とある理由があって…
あの、私の友達に「スキュラ」の「サキ」ちゃんって子がいて、あっ…申しおくれました!
私の名前は「カリオペ」って言います…!
アナタの名前は、「アロス」さん…ですよね!あ、あの、ポケットの中の身分証明書、みちゃいました…ゴメンなさい…。」
「いや、それは別に全然良いよ。大した事じゃ無いしね。
カリオペちゃんか、良い名前だね。
それで、この状況なんだけど」
「は、はい!
そのサキちゃん何ですけど、いっつも私が海に呼び込んだ男の人を横取りしちゃうんです。
あっ、さっきも言いましたけど!その男の人達は只、気になっただけで!
近くで見たくなっただけなんです!
わ、私がここまで招いたのは、本当に!あ、アナタが初めてです…!///
それで…!サキちゃんが来る前に…早くしなきゃって…思って…!」
魔物の娘はこうして気に入った男を探すのか、知らなかった。
状況が全くよく分からないせいか、賢者モードのせいか、僕は何故かかなり落ち着いている。
僕は起こった事を受け入れる事しか出来ない。
…待てよ。
ん?あれ?…って事は。
「…ん?…って事は、僕をここまで運んだ渦潮を起こしたのは君なの?」
「はい、そうです!
一目見ただけで、もう、すごく好きになって、いても経ってもいられなくて!
渦潮を起こしてしまいました…!」
「…そ、そっかぁ…因みに、この辺で渦潮を起こせる魔物の娘って他にもいるの?」
「?この辺りでは「カリュブディス」は私だけだと思いますよ?」
…あの、船長ぉぉ!!!!それに、船員共!!!!
あの巨大な渦潮が魔物の仕業だって知ってたんじゃねーか!?
だとしたら辻褄が合う。
魔物の娘に、気に入られた可能性のある新人だけをボートに詰め込み切り離す、そうすれば船を沈めようとしていた大渦潮は鎮まる。そんで、ボートを沈めようと新たに渦潮が出来る。
「多分この中で1人!多くて2人だ!他の奴らは浮き輪で何とか生き残れよ!!!」
このセリフも、そういう事だよな!?
なーにが「漢」だ!!!
何も知らない新人を囮に逃げただけじゃねぇか!!!
…まぁ、あの状況じゃあそうする他無かったのかも知れないけれど、尊敬してた分だけムカついてきた。
あの船長、何カッコつけてんだ!
あぁ、ムカつく。
「どうしました?」
「い、いや、何でも無いよ。
ちょっと、「漢」に失望していただけだよ」
「???」
「それで…さっきの話の続きを聞かせて貰えるかな?」
「は、はい。それでそのサキちゃん何ですけど…」
彼女の顔色が変わる。
「…ッ!も、もう来ちゃった!ど、どうしよう…!」
「どうしたの?きたって、誰が?」
「そのサキちゃんです!!アロスさん!私の中に隠れて下さい!」
グッと体を彼女の足元のフジツボの中に押し込まれる。
深い…!どんだけ奥が深いんだ!?
こ、怖い…。完全に入り込んだら、2度と出られ無いんじゃ無いのかと、凄く怖くなる。
頭をグイグイと押され凄い勢いで暗い穴に向かって押し込まれるが、何とか穴の淵に右手を引っ掛ける。
俺の右手以外は、カリオペちゃんの下に開いている謎の穴に沈んでしまう。
…わあ…真っ暗だ…先が見えない…というかあり得ない広さだろう。この穴。
僕がいくら手足をジタバタさせて足掻いても床にも壁にも当たらない。
この穴の中は一体どうなってるんだろう。
不思議だ…。
僕が穴の中で不思議さに戸惑っていると、上から何やら大きな声が響いて来た。
「良いだろ?出せよ!隠すなよ!?別に取って食おうって訳じゃねえんだ!良いだろ!」
「ダメ!ぜっったいに駄目!今度だけは絶対に渡さない!絶対ダメ!
本当に渡さないから!」
「そんな事言うなよ?な?
本当だよ、本当に横取りしようなんて思ってねえからよ。
ちょっと、話をさせて欲しいんだ。
なんせ、オレの親友の初めての彼氏だろ?
ちょっとだけ、話ぐらいさせてくれても良いじゃねぇか?」
「サキちゃんは、いっつもいっつもそうやって私が海中に引き込んだ男の人を横からとって行くじゃない!
いつも我慢してたけど!今日だけは絶対にダメ!
親友親友って、サキちゃんは都合の良い時しか私の事をそんな風に言わない癖に!
いつも私の事、利用するばっかり!
もう帰って!」
「…!!!
何だよ、それ!!
別に一方的にオレが「カリ」を利用してる訳じゃねえだろうが!
カリが入れない所に入って欲しいモンとって来てるのは誰だと思ってんだよ!
男の事だって、只、声をかけて助けたのがオレが先だっただけの話じゃねえか!
奪ってる訳じゃねえ!」
「声をかけたのが先だったって!私は岩に張り付いてるんだから、どうしたってサキちゃんの後になるに決まってるじゃない!
私が良いなって思ったの分かっててそういう事してるんでしょ!?
それに私が沈めた船から、積荷を探る時だって1番良い物はいっつもサキちゃんが取って行っちゃうくせに!!!」
「そ、それは!お前に聞いても他ので良いって言うから…!
男の事だって、別にそんなつもりじゃ…。」
「サキちゃん、「これ貰ったぜ!」なんて、もう自分の物みたいにいうんだから!ダメなんて言え無いじゃない!それに!」
女の子同士の喧嘩の様だ…これは…順調にヒートアップして行っているな…カリオペちゃんに関しては今までに溜まった物が一気に噴出している…このままだと収まりが付かなさそうだ…ちょっとだけ、落ち着いて貰おうか…
穴の中から顔を出してみる
「あのー…お二人とも、少し落ち着いて…話さないか?」
「あ!出て来ちゃダメー!」
「お前がカリの彼氏だな。ちょっと顔貸しな!」
あっという間もなく、スルッと僕に接近してそのまま僕は連れ去られる。
「カリ!コイツ、ちょっと借りてくぜ!
絶対返すからよ!」
「あー!!ダメだってば!!今すぐ返して!!!私のなんだから!!!」
「ちょっとだけだ!心配すんなって!じゃあな!」
「ダメだってばー!!!!!!」
サキちゃんとやらの小脇に抱えられて、僕は何処かに連れて行かれた。
「此処まで来れば大丈夫か。
よぉ、オメェ、カリと付き合ってんだよな?」
コギャルの様な、ヤンキーの様な雰囲気をした女の子が僕にそう迫る。
勿論只の女の子じゃない、下半身がタコの確か「スキュラ」という種族の魔物の女の子だ。
カリオペちゃんよりも、もう少し大人な見た目だ。
気の強そうなつり目で、ツンとした顔立ちをして、スレンダーながらも豊満な胸を持っている。
そして、下半身から蛸足が幾本も生えている。
ユラユラと揺れている。
「どうなんだよ?何とか言え。」
付き合っては…いないよな。
そんな話をする前に、こんな事になってしまったし。
「イヤ、付き合ってる訳じゃ無いな。
そういう関係には、まだなっていない」
「…フーン。
よし!じゃあ、お前オレと付き合っちまえよ!
さっきのカリオペ見ただろ?アイツはああやってたまに凄く強情になるんだよ!
面倒くせぇだろ?オレならそんな事無いぜ。
あんな風に束縛もしねえしな。
アイツと違ってオレは色んな男と経験あるからかよ、お前にも色んな事してやるぜ?
な?いいだろ?」
「え、イヤ…それは…ちょっと…カリオペちゃんに悪いし…」
「………あ?
別に付き合ってねえんだろお前ら。
なら、遠慮する事ねえだろうが。」
「それでも、僕も男の責任みたいなものがあって…」
「いいから!とりあえずオレと1発ヤッてみろ!」
途端に何本もの蛸足が伸びてくる。
それはヌルヌルと淫猥に僕の体に纏わりつき、全身を舐め尽くす。
体の全ての性感帯を刺激されて、僕は跳ね上がってしまう。
「ッ!ち、ちょっと…!何して」
「うるせえ!お前は黙ってオレのされるがままになってろよ!」
な、何だこれ…全身を余す事無くヌルヌルと愛撫されて、何が何だか分からなくなる。
「オラ!これでどうだ!?」
図らずも勃起してしまった僕の肉棒を、幾つもの蛸足で包まれ、犯される。
粘液で滑って、蛸足の吸盤が気持ちのいい所を刺激する。
普通に女性器に挿入するよりも刺激が強く、快感の波に溺れそうだ。
その間も全身を嬲る蛸足の動きは止まっていない。
気持ち良すぎてどうにかなそうだ。
「まだイクんじゃねえぞ!」
サキちゃんは、自身の性器に僕の肉棒を誘導すると、一息に咥え込んだ。
膣内も、蛸足に劣らず粘液で溢れヌルヌルとして、良く締まって気持ちが良い。
それから、サキちゃんの望むがままに貪られ、僕は我慢を出来なくなり、果てた。
「フー…どうだ?オレの方が良いだろ?
お前はオレの物だ。オレの彼氏だ。」
………めちゃくちゃ気持ち良かった。
だけど、何か引っかかる。モヤモヤする。
それが何なのか自分でも分からない。
カリちゃんの処女を貰っていながらこんな風に瞬く間で他の女の子と性行為をしている事への罪悪感なのだろうか。
それとも。
「凄く気持ち良かった、確かにそうだ。
でも、今、君と付き合う気は無いよ。
カリオペちゃんとも、もう一度話し合わないといけないし。
一先ず、カリオペちゃんの所へ返してくれるかな?」
「…チッ。イヤだってのかよ。オレの事が!」
「そうは言ってないよ。
けど、君もカリオペちゃんと約束していたろう?
僕をちゃんと返すって」
「チッ!」
そうして、僕はカリオペちゃんの所へ戻った。
「やっと来た!!こんなに長い時間何してたの!?
また、私の気に入った人だからって、手を出したんでしょう!?
返して!私のアロスさん返してよ!」
「はいはい。ホラよ。
ちょっとどんな男か味見しただけだよ。
その証拠に、こうしてちゃんと返しに来ただろ?
な?オレはちゃんと約束は守るんだ。
カリから何でもかんでも奪う様なヤツじゃないんだよ」
「…あー!!!
やっぱり!やっぱりサキちゃんの魔力が混じってる!
こういうことする!!だからイヤなの!!!」
???
「あのー…お取り込み中悪いんだけど、魔力が混ざるって何?」
「魔物の女の子は、好きな人に自分の魔力を注ぐ事で、例えばアロスさんが海中で生きていられる様にしたり、一時的に魔物と同じ体質にするんです。
そうして、完全に男性が自分の魔力で満たして、それを自身の伴侶の証とするんです。
もっと正式な方法があるんですけど、それはシービショップという魔物の力を借りないといけないので、その機会が来るまで、意中の男性を自身の魔力で満たす事が、2人の関係性の証になるんです。
なのに…なのに…サキちゃんは勝手にアロスさんに自分の魔力を注いだんです!
私が好きだって言ってるのに、私が1番最初にアロスさんを捕まえたのに!」
なるほどなぁ。そういう仕組みなのか。気になって、つい、2人の間に口を挟んでしまった。
僕は少し黙っていよう。
「落ち着けよ、カリ。
注いだって言ってもほんの少しじゃねえか。
カリの魔力の方がコイツの中に入ってる。
そんなに怒んなって。
それによぉ、カリはコイツの事を好きなんだろうが、コイツの気持ちはどうか分かんねぇぞ。
コイツよぉ、オレの中ですげぇ出してよ。
溢れるんじゃねえかと思ったぜ。
なぁ?凄く良かったって、確かに言ってたよな?」
ッ!失言だったか…つーかこっちに振るな。
うーん、どう答えたものか。
…まぁ、僕の気持ちはもう決まっているんだけど…
この問題は、それをハッキリ告げるだけじゃ解決しないと思うんだよな…
「…まぁ、言った。」
「……………………………え?」
「どうして?どうして?どうして?
私じゃ物足りなかったですか?気持ち良いって、そう言ってくれたのに。
どうして。どうして。
何でもします。どうすれば良いですか?
どうして?どうして?」
!?
カリオペちゃんの瞳が闇に深く深く沈んでいく。
ヤバい!こうなるとは想定外だった。
「ち、違うよ!そうじゃ無くて!続きがあるんだよ。
僕が言いたいのは、僕がどちらと付き合うのか、それはどちらが性的に気持ち良くなれるか、なんてのはあまり関係無いって事だよ。
僕からすれば、カリオペちゃんサキちゃんどちらも初めて会ったばかりの女性だ。
それは君達にとっても同じだ。
だから、お互いもっとよく知り合った方が良いよね?
君達も、僕がどんな人間かなんて分からないだろう?
話し合おうよ」
「…あぁ、良いぜ。オレはそれで良い。
お前がオレに決める様にオレの魅力を分からせてやる」
「…私じゃダメなんですか!?
今の私に不満があるなら、私変わりますから!
何でも、何でもしますよ!?
私を捨てないで下さい!
私の初めてだって捧げました!他にも何だってあげます!だから!」
「ち、違うよ、カリオペちゃん。
そう言う事じゃ無いんだ、ダメとかじゃなくて、赤の他人から親密な関係になるには、互いを知り合う必要があるって言ってるだけなんだ。
分かってくれるよね?
カリオペちゃんの事もっと教えてほしいんだ。」
「…はい。分かりました…。」
「じゃあ、先ずはカリオペちゃんと話し合いをしようかな。
サキちゃん、悪いんだけど2人きりにしてくれないかな?
カリオペちゃん、その足元の穴に僕も入れてくれるかな?」
「はい!!!どうぞ!!!」
「チッ。次はオレの番だぞ。早くしろよ。」
一先ず、この場はおさまった。
カリオペちゃんが、あんなに病み闇オーラを出すのは想定外だった。焦った。
それにしても、サキちゃんは、やっぱり…
カリオペちゃんと良く話し合った結果
この子は、好きになったらぞっこんになるタイプで、大人しい性格で、引っ込み思案、だが、意外と頑固なのがわかった。
そして、サキちゃんとは幼い頃からの仲で、仲良くして貰って感謝もあるがサキちゃんの自分だけが良い所を奪っていく所に常日頃から不満を持っている、みたいだ。
そして、次にサキちゃんと良く話し合った。
分かった事は、今まで色んな男性と出会ったがどれも本気にはなれなかったそうだ。
性格面は、勝ち気で強気な性格で、目的の為にクレバーになる狡猾さも持っている様だ、それはカリオペちゃんとのやり取りで大体分かってはいた。
カリオペちゃんは頑張ってガードしていたが、僕が連れ去られた事と言い、元はカリオペちゃんが僕を捕まえたのに今ではどちらかを選ぶという話に変わっていたりと、何やかんやサキちゃんの望み通りになっている。
そして、これが重要なのだが、サキちゃんは本心を話していない。
それから僕は一ヶ月程、この海で生活する。
その間、カリオペちゃんともサキちゃんとも何回も性行した。
けれど今はその話は飛ばす。
そしてついに選ぶ時が来た。
「どっちを選ぶんですか………?私…ですよね…?」
「どっちにすんだ!?オレだよなぁ?」
僕の選択は、最初から決まっていた。
「サキちゃん…」
カリオペちゃんの表情から、感情が全て抜け落ちる。
絶望だけを残して。
サキちゃんはと言えば、戸惑っていた。
何故だ?と言わんばかりだ。
「お、おう。そうかよ。まぁ結局はオレを選ぶか!
カリ、コイツはまぁ、お前の運命の相手じゃなかったって事だ。
あんま気落ちすんなよ!…ハハ!」
「……………………………………………」
「しょうがねぇだろ?
こうなったって事は、カリにお似合いの男は他にいるんだ。
違う男を探せって!きっと良い男が見つかるだろうよ!
こうなっちまって悪いな!コイツはオレが貰ってくぜ!ははは!」
「そうじゃないだろ?サキちゃん。
もう良いだろ。
サキちゃん、「君」は「僕」の事を好きじゃない。」
「…あん?何言ってんだ?好きだって言ってんだろ?
お前、意味わかんねぇ事言ってケムに巻こうとしてねえか?
今更、やっぱりカリが良いだなんて言うんじゃねえだろうな?」
「…それで良いのか?
僕を取って、カリオペちゃんを捨てるのか?
今本心を話さなきゃ、ダメだ。」
「…おめぇ、本当に何言ってんだ。
オレはお前がほしい。お前はオレを選んだ。
それで良いだろうが。」
「僕の事が本当に欲しかったなら、君はこんなに悠長に、選択を待ってはいない筈だ。
僕の選択なんか待たずに自分の物にしたがる筈だよ。
サキちゃん、君はそんなに待つ時間に耐えられる程強く無いだろう。
臆病だろ、本当の君は。
だから、中途半端な方法で僕にちょっかいをかけている。」
「………あ?何が言いてえのよ?」
「最初から違和感はあった。
僕をどうにかしたいなら、最初に連れ出した時に自身の魔力で僕を満たして返さなければ良かったんだ。実際、本当に欲しいものには、君はそうするタイプだろ?
カリオペちゃんとの約束を守ったんだとしても、友達との約束と、本当に好きな人、2つを天秤にかけて、「約束」に傾いた時点で君は僕よりもカリオペちゃんの事が好きなんだよ。
僕に注いだ魔力の量もおかしい、本当に好きならもっと注ぐべきだったんだ。
多分、僕に、カリオペちゃんを渡したくなかったんだろう。
カリオペちゃんは好きになった人に全身全霊を尽くすタイプだから、僕が現れてカリオペちゃんが自分を忘れて僕に取られると思ったんじゃ無いのか?
だから、自身の魔力を僕に少し加えたんだ。
カリオペちゃんが僕の事だけしか見なくならない様に。
違うか?」
「サキちゃん…そうなの?」
「はぁ?ちげえよ!違う!そんなんじゃねえ!何知った気になってやがる!名探偵みたいに語ってんじゃねえよ!」
「強情だよね。サキちゃんは。
だからだよ。
今の選択で僕が「サキちゃん…」と答えたのは。
今、僕が、この選択で、カリオペちゃんを選んでいたら、この先君がカリオペちゃんに本心を打ち明ける機会は絶対に無いと思ったから、僕の本当の気持ちを押し殺して、君を選んだんだ。
これが最後のチャンスだ。」
「…………うっせぇ!!! 「そうやって、怒りの感情でカモフラージュして本心を隠すな!
今言わなきゃいつ言うんだ!
全てが済んで、互いの関係が変わってからか!?」
「……………………」
「……………………」
「…………………………………………………分かったよ…あのよ、カリ。
最初に出会った時の事覚えてるか?
あの時のカリはさ、ずっとずっと海面を見上げてたよな、いつまでもいつまでもそうやってジッとしてるお前の姿を見て、オレは何であの船もあの船も落とさないんだって不思議だったんだ、あの頃のオレは手当たり次第に男に手を出してその度にこの男はなんか違うなってイマイチピンと来なくて、そんな事ばかり繰り返してたんだよ、だけどお前は本当に好きな男見つける為にずっとずっと待ってよ、その一途さがオレには眩しかったんだ。
羨ましかった。
オレは人をそんなに好きになろうとした事無かったから。
オレさ、お前に憧れてたんだ。
だから、お前が好きになりそうな男に手出してよ、一途なカリが好きになる男なんだからソイツに手を出せば、オレも本当の好きが分かるのかなって。
だから、カリが本当の好きを見つけて、オレから離れそうになって焦ってたんだ。
カリがいなかったら、オレはこれからどう生きていけば良いのか、分からなくなりそうで。
コイツのいう通り、本当はコイツの事もそんなに好きって訳じゃないんだ、只お前がコイツの事しか見なくなるのが怖かっただけでよ。オレは辞退するよ。
だからよ、オレとずっと友達でいて欲しいんだよ。
悪い所は変えるよ。
だからよ」
「そうだったんだ…でもね、私に本当に好きな人が出来ても、サキちゃんと友達辞めたりしないよ。
私、サキちゃんの事、本当に好きだから。」
「カリ…」
「サキちゃん」
一件落着…だな。
…と、これで終わりじゃない。
2人の友情の為とは言え、嘘をついてしまった。
「それから、ゴメン。カリオペちゃん。サキちゃん。
さっきの2人への返答は嘘だったんだ。
本当にゴメン。
もう一度、本当の答えを出させてくれないか?」
「…はっ!もう答えは出ている様なもんだけどな…いいぜ、やれよ。幸せにしなかったら殺すからな。
…あと、お前には感謝してる…ありがとう…。」
「…はい。私もいいです。
でも、絶対に私を…選んで欲しい…です…。」
分かった。
「…カリオペちゃん。
僕もサキちゃんと同じなんだよ。
一途で頑固な、大人しそうなのに本当は凄く強い純心を根に持ってる、可愛らしい女の子。
そんなカリオペちゃんが眩しくって羨ましいんだ。
僕も今まで生きてきて、本当に好きになった人はいないんだ。
多分これからも出来ないと思ってた。
適当に出会った適当な女性と適当に結婚して、流されて生きていくんだろうなと思ってた。
何に対しても、斜に構えてしまうというかね、大事な感情を抱える強さが無かった。
僕はこの1ヶ月、カリオペちゃんを見ていて、肌で感じて、1人の人間に全賭けする執念情熱、そこまで出来る強さに、惹かれていった。
僕に無いものだったから。欲しいものだったから。
だから、サキちゃんの本当の気持ちが分かったのかもね。似ていたから。
僕は君と一緒にいたい。
君の望みを叶えてあげたい。
僕も君と同じ様に人を好きになりたい、それは、君といれば君を愛せば叶うと思う。
結婚しよう。」
そうして僕とカリオペちゃんは結ばれた。
新婚生活は穏やかで、だけど色々な事があって楽しい。
僕が出かけようとするとカリオペちゃんの瞳孔が漆黒に染まるのが少し怖いけど、自分は此処から動けないから不安なんだろう、そういう時は早く帰る事を心掛けている。
僕も段々とこの子の元から離れられなくなっている。
それは依存じゃなくて、「本当に好き」が分かって来たからだろう。
後日談
カリオペちゃんとサキちゃんの友情は続いている。
元からちょいちょい来てはいたんだけど、先日なんと、サキちゃんが彼氏を連れて来た。
小柄で少しオタクっぽい人間で、イチャイチャベタベタして熱愛している様だった。
オタクとギャルの組み合わせか。
正反対に見えるけど、案外上手くいきそうに見えた。
ただ、僕がサキちゃんに話しかけると、彼氏の目が据わって、暗黒の灯火を宿した。
怖えよ。
まぁサキちゃんは、かなり愛されている様だ。
ゆくゆくはサキちゃんペアも結婚して、この夫婦との付き合いも出来ていくんだろう。
何だろうか、とても幸せな気持ちだ。
21/01/02 14:12更新 / 七虎