黒犬様の愛の手を
「すまんなあ、すまんなあ。本当は、こんなことしたくなかったんだ……」
「いいんだよ、お父さん。みんなが助かるためには、こうするしかないもの」
「ううっ、ごめんなぁ。ごめんな、リム」
反魔物領のどこか、山のふもとにある小さな村。その村は今、近年まれに見る飢餓に苦しんでいた。四方を山に囲まれ、都市部からの援助はすぐに来ない。
村人たちは数少ない備蓄食糧で飢えを凌いでいたが、それにもいつか限界はくる。その限界を先延ばしするために、村人たちはとある決断をした。
口減らしのため、村人を間引くことを決めたのだ。不運にも、最初の一人に選ばれてしまったのがこの少年、リムであった。
「恨むなら、俺を恨んでくれ。お前を守れないダメな父親でごめんな」
「気にしないで、お父さん。僕がいなくなれば、弟や妹も僕の分のご飯を食べられるもの」
山の中にて、大きなかごに入れられたリムは涙を流し謝る父にそう声をかける。飢えによって理性が消えた村人たちは、リムの両足の腱を切った。
空腹に耐えかねた彼が、村に戻ってくることがないようにと。リムの両親は止めさせたかったが、止めに入れば一家ごと殺されかねない。
そんな凶行に走ってしまうほど、村人たちは飢えに苦しめられていたのだ。それを知っているからこそ、リムは彼らを責めない。
「……幸い、この山には肉食の獣はいない。生きたまま獣に食われることはないだろう。うう……本当に、本当にごめんな」
そう言い残し、少年の父はリムを残してその場を去っていった。一人残されたリムは、かごの中でジッとうずくまる。
何度も腹の虫が鳴り、空腹を訴えるがリムにはどうすることも出来ない。ここで一人、飢え死にするのを待つことしか出来ないのだ。
「……これで、よかったんだ。これで、お父さんもお母さんも、弟も妹も。僕の分まで生きられる。僕の、分まで……」
そう呟くリムの頬を、ポロポロと涙が伝って落ちる。聞き分けがいいとはいえ、リムもまだ十になったばかりの子ども。
理不尽すぎる現実に、心が押し潰されてしまっていた。何度もしゃくりあげながら、少年は小さな声で本音を呟く。
「まだ、しにたくないよぉ……」
「そっか、ならよ。アタシと一緒に来るか?」
「え……?」
リムの呟きに、誰もいないはずなのに返事が返ってきた。上を見ると、木の枝の上に誰かがいた。黒い身体と体毛、燃える炎のような真っ赤な瞳。
人間の女性と犬を合わせたような、半人半獣の魔物。ヘルハウンドが木の上からリムを見下ろしていたのだ。
「魔物、さん……?」
「おう、そうだせ。アタシはエミラってんだ。話は聞いてたよ、ヘルハウンドは耳がいいからな」
エミラは木の枝から飛び降り、リムの目の前に着地する。真っ赤な瞳に見つめられ、リムの涙が自然と止まる。
「捨てられちまったんだな、可哀想に。あんた、死にたくねえってんならさ、アタイと一緒に来いよ。一人ぼっちでいるより、ずっと楽しいぜ」
「……いいん、ですか? 僕みたいな、役立たずが一緒に居ても」
「おうよ。ちょうど、ツガイが欲しいなーって思ってたトコなんだ。ボウズ……えっと」
「リム、です」
「おう、リムってんだな。いい名まえじゃねえの。こうして出会ったんだ、見捨てるなんて真似はしねえ。寂しい思いもさせねえし、飢えさせもしねえ。どうだ、悪い話じゃないだろ?」
エミラの言葉に、リムは考え込む。村にいた時は、たまに説法にやって来る主神教団の神父から魔物について聞かされていた。
人間を襲って苦しめ、食べてしまう邪悪で危険な存在だと。だが、目の前にいるエミラは違う。口減らしのために捨てられた自分に、救いの手を差し伸べてくれた。
「……はい! 僕を、連れていってください!」
「よし、決まりだな! ここら辺は食いモンがほとんどねえからな、新天地に出発だ!」
リムに迷いはなかった。エミラの言葉に頷き、涙を拭う。そんなリムを見ながら、エミラは満面の笑みを浮かべて手を伸ばす。
「よし、そんじゃあ早速行こうぜ。ほら、手ぇ貸してやるから立ちな」
「あ……僕、その……」
嬉しそうにしっぽを振るエミラに、リムは村人たちに足の腱を切られて歩けないことを伝える。痛みはもうないが、足首に巻かれた包帯は血で汚れていた。
「なんだと……! とんでもねぇ奴らだな、リムの村の連中は。こんなちっさい子どもを捨てるだけじゃなく、足までダメにしやがるのか!」
「……仕方なかったんです。悪いのは、飢餓ですから。みんな、生きるために必死に」
「おめぇもおめぇだ、リム! そうやって我慢するのはもう禁止だ! これからは好きなだけアタシに甘えろ! わがままも言え! アタイが全部叶えてやるから!」
リムの言葉を遮り、エミラはそう叫ぶ。少年の受けた仕打ちに、心の底から怒り狂っていた。とはいえ、村人たちを襲いに行くような真似はしない。
そんなことをしてもリムが悲しむだけだし、そもそもエミラたち魔物娘は人間を殺せない。なので、さっさとこの忌まわしい土地を離れることにした。
「歩けねぇんなら、アタシがおんぶしてやるよ。あ、それとも抱っこの方がいいか?」
「あの、エミラさん。一つ聞いてもいいですか」
「ン? なんだ、リム」
「どうして、僕を助けてくれるんですか? たった今、ここで出会ったばかりなのに」
自分を抱え上げようとするエミラを見上げ、リムは疑問を投げ掛ける。すると、エミラは自信満々といった笑みを浮かべ答えた。
「話をしてるのが聞こえた、ってのもあるけどよ。リムを見た時にビビッて感じたんだ。あんたがアタシのツガイになる男だってな。ま、分かりやすく言うと気に入ったんだよ。リムのことをな」
そう言いながら、ひょいとリムを抱き上げる。結局、お姫様だっこすることにしたようだ。痩せこけたリムの頬をペロッと舐め、ニッコリ笑う。
「ここを出たら、まずは腹ごしらえだな! たくさん肉食えば、足もすぐ治るさ。行こうぜ、二人の新天地に!」
「……はい!」
リムもまた満面の笑みを浮かべ、頷く。捨てられた少年は、ヘルハウンドに連れられ親魔物領へ渡るのだった。
・
それからのリムの生活は、これまでと一変したものになった。エミラと共に気の向くまま、あちこちを旅して回る。
リムは手先が器用だったため、路銀稼ぎに小さな木彫りのヘルハウンド像を作る。それが意外と親魔物領の人々とその妻の魔物たちに好評で、町に訪れるたび飛ぶように売れていた。
そんなわけで、ロギンに困らなくなった二人は小さな宿場町を訪れていた。
「わあ、人がいっぱいですねエミラお姉ちゃん」
「だろ? こういうトコで食うメシが、結構うめぇんだよな。とりあえず、宿に行こうぜ。メシは一休みしてからだな」
旅に出てから三ヶ月、すっかりリムとエミラは打ち解けていた。まだリムの足が回復していないため、ずっとエミラに抱っこされたままだ。
二人は目についた宿に入り、受け付けに向かう。宿の主人が、朗らかな笑みを浮かべ声をかけてくる。
「いらっしゃい。お泊まりかな?」
「ああ、二人で一泊させてもらいてぇ。リムは足が悪くてよ、出来ればいい部屋に泊めてほしいんだけど」
「ああ、それはお可哀想に。分かりました、一番いい部屋をお取りしましょう。事情も事情ですし、通常料金でけっこうですよ」
「そんな、悪いですよ」
「いいんだよ、リム。相手の厚意だ、素直に受け取っとけ」
そんなこんなで、二人は宿で一番いい部屋に通常の部屋の料金で泊めてもらえることになった。部屋に入ったエミラは、リムをそっとベッドに下ろす。
「今日もまた……な? いいだろ、リム」
「ま、待ってください。せめてお風呂に入ってから……」
「いんだよ、そんなのは後で。リムの濃結い匂いをさ、楽しみたいんだよアタシは」
リム野の隣に寝転がり、エミラはくんくん鼻を鳴らしはじめた。リムの服を脱がし、裸にしてしまう。首筋に顔をくっつけ、愛する伴侶の匂いを鼻いっぱいに吸い込む。
「んー、いい匂いだ。リムの香りがするよ」
「は、恥ずかしいですぅ……」
「へへ、汗の臭いも合わさって頭がクラクラしそうだぜ。ホント、いつまでも嗅いでたい匂いだよ」
「あうぅ……」
この旅の中で、リムはエミラの意外な一面を知った。彼女は――匂いフェチだったのだ。一日じゅうリムを抱っこして歩き回るのも、彼の匂いを常に嗅ぐためでもあるのだ。
エミラは少しずつ身体を下にズラしていき、リムのあらゆる場所の匂いを嗅いで回る。うなじ、脇の下、脇腹と降りていき、やがて……。
「ひゃあっ!? お、おまたに顔を埋めないでくださいぃぃ!!」
「いーじゃねーか、嗅がせろよ。リムのおちんちんをさ。んー、今日もいい匂いだな。アタシのアソコも、疼いてきちまうぜ♥️」
とうとう、メインディッシュをいただく時間がやって来た。リムの股ぐらに顔を埋め、エミラは夢中になって彼のペニスの匂いを嗅ぐ。
逃げられないように腰に腕を回し、鼻を押し付けて愛しい伴侶のペニスを顔全体で堪能する。顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしているリムだが、まんざらでもなさそうだ。
「お? ふふ、かわいいおちんちんが固くなったきたぞ。そっかそっか、アタシに嗅がれて嬉しくなったんだな。かわいいヤツめ」
「ひうっ! い、いきなり舐めな……ふああっ!」
「ん、じゅぷ。へへ、たっぷり匂いを嗅いだから……次は、クチで味わわせてもらおうかな。はぷっ!」
まだ皮も剥けていない小ぶりなソレを、エミラは口いっぱいに頬張る。竿全体に舌を這わせ、刺激と快感を与えていく。
「ん〜、美味いな。リムのおちんちんはいつしゃぶっても最高の味だぜ。皮の中も味わわせてくれよな。ちゅる、ずずっ!」
「ふあっ♥️ やぁっ、吸っちゃだめぇぇ♥️」
柔らかな舌で皮を剥き、敏感な亀頭を責めるエミラ。執拗に亀頭を舐められ、早くもリムは限界を迎える。
「あっ、だめ……もう、でちゃ……ふああっ!」
「むうっ!? ん……ゴクッ、ぷはっ! 相変わらずソーローだなぁ、リムは。ま、そんなトコも可愛いんだけどな♥️」
ペニスから吐き出された精液を飲み干し、一旦口から出してエミラは笑う。愛しげにペニスに頬擦りした後、胸を留めていたバンドを外す。
黒い肌に生える桜色の乳首があらわになり、それを見たリムのペニスはたちまち元気を取り戻していく。嬉しそうにしっぽを振りながら、エミラは胸でペニスを挟む。
「よっと。次はアタシの胸で気持ちよくしてやるよ。いっつもアタシの胸見てるもんな〜、リムはよ」
「う、そ、それは……」
エミラにからかわれ、リムは顔を赤くして目を反らす。ぱたぱたしっぽを振りながら、エミラはたっぷりと唾液をペニスにまぶし……自慢の巨乳を上下に揺らしはじめる。
「だからよ、そんなおっぱい大好きなリムを……たっぷり気持ちよくしてやるからな、覚悟しとけよ♥️」
「あっ、ふああっ! お姉ちゃんのおっぱい、柔らかくて気持ちいいよぉ……」
「そうか? なら……それ、もっと激しくしてやる♥️」
ぱちゅ、ずちゅ、と卑猥な水音が部屋の中に響き渡る。アソコから愛液を垂らしながら、エミラは夢中になってペニスに柔らかな肉の愛撫を行う。
リムはあまりの快感に、あえぎ声を漏らすことしか出来ない。愛しい伴侶の悶える姿が、よりエミラを欲情させ、愛撫を強く過激にさせる。
「ほら、どうだ? アタシのおっぱいで、おちんちんぐちゅぐちゅにされるのは♥️ もっともっと、気持ちよくしてやるぜ♥️」
「ふあっ、あっあっ♥️ だめ、おちんちん壊れちゃう♥️ 変になっちゃうぅ♥️」
「また射精るのか? いいぜ、アタシにぶっかけてくれ! 顔も胸も、全部リムで染めてくれ!」
「で、る……あっ、ふあああ!!」
激しい責めに耐えきれず、再びリムのペニスから精液が吹き出る。噴水のような激しさで飛び出した白濁が、エミラの顔と胸を汚していく。
黒い肌が精液の白に染まり、より淫猥な見た目になる。エミラは恍惚の表情を浮かべ、胸にかかった精液を手で掬い口に運ぶ。
「ん……二回目だってのに、これまたずいぶん濃いな。それじゃ……三発目は、アタシのナカに……」
「待ってください、お姉ちゃん。なんだか、足が……変な感じなんです」
「え!? わりぃ、変に負荷かけちまったか?」
「いえ、違うんです。今まであったじんわりした痛みが、なくなったんです。もしかしたら、歩けるようになったのかも……」
リムは知らなかったが、何度もエミラと身体を重ね彼女の魔力を得たことでインキュバスに近付いていた。そして今、彼は完全にインキュバスと化した。
その結果腱を切られて以来歩くことが叶わなくなっていた足が、ついに回復したのだ。エミラは立ち上がろうとするリムをそっと抱き、肩を貸しながら床に立たせる。
「リム、無理はするなよ? 怪我したら大変だからな、無理だと思ったらすぐアタシに掴まれ」
「は、はい。それじゃあ……歩いて、みますね」
エミラから離れ、リムは数ヵ月ぶりに一人で立った。足に痛みはない。おそるおそる一歩を踏み出すと……普通に、歩くことが出来た。
また一歩、さらに一歩。部屋の中をぐるっと一周した後……リムの目から涙がポロポロ落ちる。もしかしたら、もう二度と歩けないかもしれない。
心の奥底に抱いていた不安が消え、希望を取り戻した喜びの涙だ。
「お姉ちゃん、僕、ぼく……歩け、ました。一人で、自分の……足、で……」
「ああ! そうだリム、お前の足は治ったんだ! ははっ、よかったなぁ!」
エミラもまた、リムの足が完治したことを喜び涙を流す。リムを抱き締め……そのままベッドに戻り、押し倒した。
「え? あの、何でベッドに?」
「なんでって、決まってるだろ? 足が治ったお祝いに、一発ヤろうぜ? これまで以上に本気出して……天国に連れてってやるからな♥️」
「ま、まって……ああっ!」
リムの制止など聞く耳持たず、エミラは勢いよく腰を下ろしペニスを自分の肉壺に招き入れる。激しく腰を上下させ、貪欲に精を搾り取る。
「ほら、ほら♥️ アタシのマンコ、最高だろ? 今までもこれからも、ずーっと……リムを気持ちよくしてやるぜ」
「あっ、やぁっ♥️ ひだひだがぎゅーってして……おちんちん絞られちゃう♥️」
パン、パンと互いの腰がぶつかる音が部屋に響き渡る。次第に音は早くなっていき、エミラの肉壺が射精似導かんとペニスを強く締め付ける。
「んっ、ふっ♥️ 分かるか? リムのちんぽ、アタシの一番気持ちいいトコに当たってルンだぜ? んあっ♥️」
「ひゃいぃ♥️ お姉ちゃん、僕もう……」
「いいぜ、アタシのナカに精液一杯射精せ! 全部受け止めてやるから!」
「ふあっ……んああっ!」
三度目だというのに、精液の勢いは衰えずエミラの子宮を満たしていく。自分の下腹部が満たされていくのを感じながら、エミラは恍惚の表情を浮かべる。
「へへ……今日もたくさん射精してくれてありがとな。リム」
「僕の方こそ……。大好きです、エミラお姉ちゃん。これからもずっと……僕のそばにいてくれますか?」
「ああ、当たり前だ! 嫌だっつっても、ぜってー離さねえ。リムが世界で一番、大好きだからな!」
満面の笑みを浮かべ、エミラはそう答える。そして、愛しい少年の額に優しく口付けをするのだった。
・
それから、二人の旅は少し変わった。自分の足で歩けるようになったリムの興味の向くところへ、気ままに旅するようになったのだ。
今ではもう、エミラに抱っこしてもらう必要はないのだが……時々、彼女に甘えたくなったリムがねだることもある。
「あの、エミラお姉ちゃん……また、いいですか?」
「いいぜ、リムが飽きるまでずっと抱っこしてやるよ。あ、それともアレか? 繋がったまま外を歩くっていうのもいいなぁ。よし、いっちょヤってみるか!」
「えぇっ!? さ、流石に外で裸になるのは恥ずかしいですよぉ!」
「気にすんなって。そりゃ、脱がしてやる!」
「ひゃああああ!!」
エミラに服を剥ぎ取られながらも、リムは楽しそうに笑う。もう、山の中で一人寂しく死を待っていた少年の姿はそこにはない。
幸せな日々を、これからもずっと……二人は共に歩むのだ。――黄金の鱗を持つドラゴンと、その伴侶である少年によってリムの故郷が魔界へと変わったという話を、後に二人は知ることになる。
だが、それは――今の二人には、関係のないことだ。
「ねぇ、エミラお姉ちゃん」
「ん? なんだ、リム」
「お姉ちゃんのこと、世界で一番大好きです!」
「ああ、アタシもだ!」
青空の下、二人は互いを見つめ合い、笑いあった。
「いいんだよ、お父さん。みんなが助かるためには、こうするしかないもの」
「ううっ、ごめんなぁ。ごめんな、リム」
反魔物領のどこか、山のふもとにある小さな村。その村は今、近年まれに見る飢餓に苦しんでいた。四方を山に囲まれ、都市部からの援助はすぐに来ない。
村人たちは数少ない備蓄食糧で飢えを凌いでいたが、それにもいつか限界はくる。その限界を先延ばしするために、村人たちはとある決断をした。
口減らしのため、村人を間引くことを決めたのだ。不運にも、最初の一人に選ばれてしまったのがこの少年、リムであった。
「恨むなら、俺を恨んでくれ。お前を守れないダメな父親でごめんな」
「気にしないで、お父さん。僕がいなくなれば、弟や妹も僕の分のご飯を食べられるもの」
山の中にて、大きなかごに入れられたリムは涙を流し謝る父にそう声をかける。飢えによって理性が消えた村人たちは、リムの両足の腱を切った。
空腹に耐えかねた彼が、村に戻ってくることがないようにと。リムの両親は止めさせたかったが、止めに入れば一家ごと殺されかねない。
そんな凶行に走ってしまうほど、村人たちは飢えに苦しめられていたのだ。それを知っているからこそ、リムは彼らを責めない。
「……幸い、この山には肉食の獣はいない。生きたまま獣に食われることはないだろう。うう……本当に、本当にごめんな」
そう言い残し、少年の父はリムを残してその場を去っていった。一人残されたリムは、かごの中でジッとうずくまる。
何度も腹の虫が鳴り、空腹を訴えるがリムにはどうすることも出来ない。ここで一人、飢え死にするのを待つことしか出来ないのだ。
「……これで、よかったんだ。これで、お父さんもお母さんも、弟も妹も。僕の分まで生きられる。僕の、分まで……」
そう呟くリムの頬を、ポロポロと涙が伝って落ちる。聞き分けがいいとはいえ、リムもまだ十になったばかりの子ども。
理不尽すぎる現実に、心が押し潰されてしまっていた。何度もしゃくりあげながら、少年は小さな声で本音を呟く。
「まだ、しにたくないよぉ……」
「そっか、ならよ。アタシと一緒に来るか?」
「え……?」
リムの呟きに、誰もいないはずなのに返事が返ってきた。上を見ると、木の枝の上に誰かがいた。黒い身体と体毛、燃える炎のような真っ赤な瞳。
人間の女性と犬を合わせたような、半人半獣の魔物。ヘルハウンドが木の上からリムを見下ろしていたのだ。
「魔物、さん……?」
「おう、そうだせ。アタシはエミラってんだ。話は聞いてたよ、ヘルハウンドは耳がいいからな」
エミラは木の枝から飛び降り、リムの目の前に着地する。真っ赤な瞳に見つめられ、リムの涙が自然と止まる。
「捨てられちまったんだな、可哀想に。あんた、死にたくねえってんならさ、アタイと一緒に来いよ。一人ぼっちでいるより、ずっと楽しいぜ」
「……いいん、ですか? 僕みたいな、役立たずが一緒に居ても」
「おうよ。ちょうど、ツガイが欲しいなーって思ってたトコなんだ。ボウズ……えっと」
「リム、です」
「おう、リムってんだな。いい名まえじゃねえの。こうして出会ったんだ、見捨てるなんて真似はしねえ。寂しい思いもさせねえし、飢えさせもしねえ。どうだ、悪い話じゃないだろ?」
エミラの言葉に、リムは考え込む。村にいた時は、たまに説法にやって来る主神教団の神父から魔物について聞かされていた。
人間を襲って苦しめ、食べてしまう邪悪で危険な存在だと。だが、目の前にいるエミラは違う。口減らしのために捨てられた自分に、救いの手を差し伸べてくれた。
「……はい! 僕を、連れていってください!」
「よし、決まりだな! ここら辺は食いモンがほとんどねえからな、新天地に出発だ!」
リムに迷いはなかった。エミラの言葉に頷き、涙を拭う。そんなリムを見ながら、エミラは満面の笑みを浮かべて手を伸ばす。
「よし、そんじゃあ早速行こうぜ。ほら、手ぇ貸してやるから立ちな」
「あ……僕、その……」
嬉しそうにしっぽを振るエミラに、リムは村人たちに足の腱を切られて歩けないことを伝える。痛みはもうないが、足首に巻かれた包帯は血で汚れていた。
「なんだと……! とんでもねぇ奴らだな、リムの村の連中は。こんなちっさい子どもを捨てるだけじゃなく、足までダメにしやがるのか!」
「……仕方なかったんです。悪いのは、飢餓ですから。みんな、生きるために必死に」
「おめぇもおめぇだ、リム! そうやって我慢するのはもう禁止だ! これからは好きなだけアタシに甘えろ! わがままも言え! アタイが全部叶えてやるから!」
リムの言葉を遮り、エミラはそう叫ぶ。少年の受けた仕打ちに、心の底から怒り狂っていた。とはいえ、村人たちを襲いに行くような真似はしない。
そんなことをしてもリムが悲しむだけだし、そもそもエミラたち魔物娘は人間を殺せない。なので、さっさとこの忌まわしい土地を離れることにした。
「歩けねぇんなら、アタシがおんぶしてやるよ。あ、それとも抱っこの方がいいか?」
「あの、エミラさん。一つ聞いてもいいですか」
「ン? なんだ、リム」
「どうして、僕を助けてくれるんですか? たった今、ここで出会ったばかりなのに」
自分を抱え上げようとするエミラを見上げ、リムは疑問を投げ掛ける。すると、エミラは自信満々といった笑みを浮かべ答えた。
「話をしてるのが聞こえた、ってのもあるけどよ。リムを見た時にビビッて感じたんだ。あんたがアタシのツガイになる男だってな。ま、分かりやすく言うと気に入ったんだよ。リムのことをな」
そう言いながら、ひょいとリムを抱き上げる。結局、お姫様だっこすることにしたようだ。痩せこけたリムの頬をペロッと舐め、ニッコリ笑う。
「ここを出たら、まずは腹ごしらえだな! たくさん肉食えば、足もすぐ治るさ。行こうぜ、二人の新天地に!」
「……はい!」
リムもまた満面の笑みを浮かべ、頷く。捨てられた少年は、ヘルハウンドに連れられ親魔物領へ渡るのだった。
・
それからのリムの生活は、これまでと一変したものになった。エミラと共に気の向くまま、あちこちを旅して回る。
リムは手先が器用だったため、路銀稼ぎに小さな木彫りのヘルハウンド像を作る。それが意外と親魔物領の人々とその妻の魔物たちに好評で、町に訪れるたび飛ぶように売れていた。
そんなわけで、ロギンに困らなくなった二人は小さな宿場町を訪れていた。
「わあ、人がいっぱいですねエミラお姉ちゃん」
「だろ? こういうトコで食うメシが、結構うめぇんだよな。とりあえず、宿に行こうぜ。メシは一休みしてからだな」
旅に出てから三ヶ月、すっかりリムとエミラは打ち解けていた。まだリムの足が回復していないため、ずっとエミラに抱っこされたままだ。
二人は目についた宿に入り、受け付けに向かう。宿の主人が、朗らかな笑みを浮かべ声をかけてくる。
「いらっしゃい。お泊まりかな?」
「ああ、二人で一泊させてもらいてぇ。リムは足が悪くてよ、出来ればいい部屋に泊めてほしいんだけど」
「ああ、それはお可哀想に。分かりました、一番いい部屋をお取りしましょう。事情も事情ですし、通常料金でけっこうですよ」
「そんな、悪いですよ」
「いいんだよ、リム。相手の厚意だ、素直に受け取っとけ」
そんなこんなで、二人は宿で一番いい部屋に通常の部屋の料金で泊めてもらえることになった。部屋に入ったエミラは、リムをそっとベッドに下ろす。
「今日もまた……な? いいだろ、リム」
「ま、待ってください。せめてお風呂に入ってから……」
「いんだよ、そんなのは後で。リムの濃結い匂いをさ、楽しみたいんだよアタシは」
リム野の隣に寝転がり、エミラはくんくん鼻を鳴らしはじめた。リムの服を脱がし、裸にしてしまう。首筋に顔をくっつけ、愛する伴侶の匂いを鼻いっぱいに吸い込む。
「んー、いい匂いだ。リムの香りがするよ」
「は、恥ずかしいですぅ……」
「へへ、汗の臭いも合わさって頭がクラクラしそうだぜ。ホント、いつまでも嗅いでたい匂いだよ」
「あうぅ……」
この旅の中で、リムはエミラの意外な一面を知った。彼女は――匂いフェチだったのだ。一日じゅうリムを抱っこして歩き回るのも、彼の匂いを常に嗅ぐためでもあるのだ。
エミラは少しずつ身体を下にズラしていき、リムのあらゆる場所の匂いを嗅いで回る。うなじ、脇の下、脇腹と降りていき、やがて……。
「ひゃあっ!? お、おまたに顔を埋めないでくださいぃぃ!!」
「いーじゃねーか、嗅がせろよ。リムのおちんちんをさ。んー、今日もいい匂いだな。アタシのアソコも、疼いてきちまうぜ♥️」
とうとう、メインディッシュをいただく時間がやって来た。リムの股ぐらに顔を埋め、エミラは夢中になって彼のペニスの匂いを嗅ぐ。
逃げられないように腰に腕を回し、鼻を押し付けて愛しい伴侶のペニスを顔全体で堪能する。顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしているリムだが、まんざらでもなさそうだ。
「お? ふふ、かわいいおちんちんが固くなったきたぞ。そっかそっか、アタシに嗅がれて嬉しくなったんだな。かわいいヤツめ」
「ひうっ! い、いきなり舐めな……ふああっ!」
「ん、じゅぷ。へへ、たっぷり匂いを嗅いだから……次は、クチで味わわせてもらおうかな。はぷっ!」
まだ皮も剥けていない小ぶりなソレを、エミラは口いっぱいに頬張る。竿全体に舌を這わせ、刺激と快感を与えていく。
「ん〜、美味いな。リムのおちんちんはいつしゃぶっても最高の味だぜ。皮の中も味わわせてくれよな。ちゅる、ずずっ!」
「ふあっ♥️ やぁっ、吸っちゃだめぇぇ♥️」
柔らかな舌で皮を剥き、敏感な亀頭を責めるエミラ。執拗に亀頭を舐められ、早くもリムは限界を迎える。
「あっ、だめ……もう、でちゃ……ふああっ!」
「むうっ!? ん……ゴクッ、ぷはっ! 相変わらずソーローだなぁ、リムは。ま、そんなトコも可愛いんだけどな♥️」
ペニスから吐き出された精液を飲み干し、一旦口から出してエミラは笑う。愛しげにペニスに頬擦りした後、胸を留めていたバンドを外す。
黒い肌に生える桜色の乳首があらわになり、それを見たリムのペニスはたちまち元気を取り戻していく。嬉しそうにしっぽを振りながら、エミラは胸でペニスを挟む。
「よっと。次はアタシの胸で気持ちよくしてやるよ。いっつもアタシの胸見てるもんな〜、リムはよ」
「う、そ、それは……」
エミラにからかわれ、リムは顔を赤くして目を反らす。ぱたぱたしっぽを振りながら、エミラはたっぷりと唾液をペニスにまぶし……自慢の巨乳を上下に揺らしはじめる。
「だからよ、そんなおっぱい大好きなリムを……たっぷり気持ちよくしてやるからな、覚悟しとけよ♥️」
「あっ、ふああっ! お姉ちゃんのおっぱい、柔らかくて気持ちいいよぉ……」
「そうか? なら……それ、もっと激しくしてやる♥️」
ぱちゅ、ずちゅ、と卑猥な水音が部屋の中に響き渡る。アソコから愛液を垂らしながら、エミラは夢中になってペニスに柔らかな肉の愛撫を行う。
リムはあまりの快感に、あえぎ声を漏らすことしか出来ない。愛しい伴侶の悶える姿が、よりエミラを欲情させ、愛撫を強く過激にさせる。
「ほら、どうだ? アタシのおっぱいで、おちんちんぐちゅぐちゅにされるのは♥️ もっともっと、気持ちよくしてやるぜ♥️」
「ふあっ、あっあっ♥️ だめ、おちんちん壊れちゃう♥️ 変になっちゃうぅ♥️」
「また射精るのか? いいぜ、アタシにぶっかけてくれ! 顔も胸も、全部リムで染めてくれ!」
「で、る……あっ、ふあああ!!」
激しい責めに耐えきれず、再びリムのペニスから精液が吹き出る。噴水のような激しさで飛び出した白濁が、エミラの顔と胸を汚していく。
黒い肌が精液の白に染まり、より淫猥な見た目になる。エミラは恍惚の表情を浮かべ、胸にかかった精液を手で掬い口に運ぶ。
「ん……二回目だってのに、これまたずいぶん濃いな。それじゃ……三発目は、アタシのナカに……」
「待ってください、お姉ちゃん。なんだか、足が……変な感じなんです」
「え!? わりぃ、変に負荷かけちまったか?」
「いえ、違うんです。今まであったじんわりした痛みが、なくなったんです。もしかしたら、歩けるようになったのかも……」
リムは知らなかったが、何度もエミラと身体を重ね彼女の魔力を得たことでインキュバスに近付いていた。そして今、彼は完全にインキュバスと化した。
その結果腱を切られて以来歩くことが叶わなくなっていた足が、ついに回復したのだ。エミラは立ち上がろうとするリムをそっと抱き、肩を貸しながら床に立たせる。
「リム、無理はするなよ? 怪我したら大変だからな、無理だと思ったらすぐアタシに掴まれ」
「は、はい。それじゃあ……歩いて、みますね」
エミラから離れ、リムは数ヵ月ぶりに一人で立った。足に痛みはない。おそるおそる一歩を踏み出すと……普通に、歩くことが出来た。
また一歩、さらに一歩。部屋の中をぐるっと一周した後……リムの目から涙がポロポロ落ちる。もしかしたら、もう二度と歩けないかもしれない。
心の奥底に抱いていた不安が消え、希望を取り戻した喜びの涙だ。
「お姉ちゃん、僕、ぼく……歩け、ました。一人で、自分の……足、で……」
「ああ! そうだリム、お前の足は治ったんだ! ははっ、よかったなぁ!」
エミラもまた、リムの足が完治したことを喜び涙を流す。リムを抱き締め……そのままベッドに戻り、押し倒した。
「え? あの、何でベッドに?」
「なんでって、決まってるだろ? 足が治ったお祝いに、一発ヤろうぜ? これまで以上に本気出して……天国に連れてってやるからな♥️」
「ま、まって……ああっ!」
リムの制止など聞く耳持たず、エミラは勢いよく腰を下ろしペニスを自分の肉壺に招き入れる。激しく腰を上下させ、貪欲に精を搾り取る。
「ほら、ほら♥️ アタシのマンコ、最高だろ? 今までもこれからも、ずーっと……リムを気持ちよくしてやるぜ」
「あっ、やぁっ♥️ ひだひだがぎゅーってして……おちんちん絞られちゃう♥️」
パン、パンと互いの腰がぶつかる音が部屋に響き渡る。次第に音は早くなっていき、エミラの肉壺が射精似導かんとペニスを強く締め付ける。
「んっ、ふっ♥️ 分かるか? リムのちんぽ、アタシの一番気持ちいいトコに当たってルンだぜ? んあっ♥️」
「ひゃいぃ♥️ お姉ちゃん、僕もう……」
「いいぜ、アタシのナカに精液一杯射精せ! 全部受け止めてやるから!」
「ふあっ……んああっ!」
三度目だというのに、精液の勢いは衰えずエミラの子宮を満たしていく。自分の下腹部が満たされていくのを感じながら、エミラは恍惚の表情を浮かべる。
「へへ……今日もたくさん射精してくれてありがとな。リム」
「僕の方こそ……。大好きです、エミラお姉ちゃん。これからもずっと……僕のそばにいてくれますか?」
「ああ、当たり前だ! 嫌だっつっても、ぜってー離さねえ。リムが世界で一番、大好きだからな!」
満面の笑みを浮かべ、エミラはそう答える。そして、愛しい少年の額に優しく口付けをするのだった。
・
それから、二人の旅は少し変わった。自分の足で歩けるようになったリムの興味の向くところへ、気ままに旅するようになったのだ。
今ではもう、エミラに抱っこしてもらう必要はないのだが……時々、彼女に甘えたくなったリムがねだることもある。
「あの、エミラお姉ちゃん……また、いいですか?」
「いいぜ、リムが飽きるまでずっと抱っこしてやるよ。あ、それともアレか? 繋がったまま外を歩くっていうのもいいなぁ。よし、いっちょヤってみるか!」
「えぇっ!? さ、流石に外で裸になるのは恥ずかしいですよぉ!」
「気にすんなって。そりゃ、脱がしてやる!」
「ひゃああああ!!」
エミラに服を剥ぎ取られながらも、リムは楽しそうに笑う。もう、山の中で一人寂しく死を待っていた少年の姿はそこにはない。
幸せな日々を、これからもずっと……二人は共に歩むのだ。――黄金の鱗を持つドラゴンと、その伴侶である少年によってリムの故郷が魔界へと変わったという話を、後に二人は知ることになる。
だが、それは――今の二人には、関係のないことだ。
「ねぇ、エミラお姉ちゃん」
「ん? なんだ、リム」
「お姉ちゃんのこと、世界で一番大好きです!」
「ああ、アタシもだ!」
青空の下、二人は互いを見つめ合い、笑いあった。
21/12/21 00:27更新 / 青い盾の人