蕎麦を喰う
「俺はお腹が好いているだけなんだ」
などと、謎の台詞を口にしながら空腹を宥めつつ歩いていると、
『超健康黒蕎麦』
という暖簾に気がついた。
なんだよ、その『超健康』って。
それ以前に、ここに蕎麦屋なんて有ったっけ?
と、戸惑いながらもその店に入ってみる事にした。
「いらっしゃいませ」
店中から元気の良い挨拶が出迎えてくれる。
店員多いな。和服に前掛けってのが良いなぁ。
ってまてまて。ミニスカート丈の着物なんて物は反則だろ! 生足が実にけしからん。もっとやれ。ファミレス系エプロンドレスも捨てがたいが、ミニ丈の和服に前掛けの破壊力は負けてないぞ。
それに、客も多い。大繁盛だ。
「こちらのカウンター席へどうぞ。こちらがメニューです」
どれどれ。いろいろあるなぁ。
妙に『ぶっかけ』とか『はらみ』とか書かれているお品書きが多い気がする。
はっと閃いて店内を見回すも、店員にぶっかけをしてい客はいないし、そんなハズもないよな。
「・・・当たり前だよな」
あれ、なんだろう。なんかガッカリしている自分が居るぞ?
ぐぅ。
ああ、鳴くな腹の虫よ。とりあえず、何を頼もうか。
再びメニューに目を落とすも、目移りするというか心を鷲掴みにするような物に欠けるというか。
青い力蕎麦、赤い力蕎麦。何が青と赤なんだろう? でも餅は遠慮しようかな。
ハチ蕎麦。八蕎麦? 四六蕎麦でなく? 二八蕎麦って事か?
蟷螂蕎麦。え? 瞬間。蕎麦のドンブリの中央で鎌を構え立ち尽くす蟷螂の姿が脳裏に浮かんだ。無いだろ、これは。昆虫を入れちゃ駄目だよ。まてよ、イナゴの佃煮のように蟷螂の佃煮とか?
何か店名とかイロイロ台無しな気がする。
ふと、背後で聞こえた注文が気になった。
キツネのダブルにブッカケだと? キツネのトリプル?!
それは一体何だ? と見回したのだが、先程の店員が駆け寄ってきた。
「お決まりですか」
どうやらオーダーが決まったと勘違いをさせてしまったようだ。
さっきは気が回らなかったけど、結構可愛い娘だな。ショートボブでマルポチャ系でちょいと小柄。胸は少しばかり残念な所が特にイイ。重要な所だからもう一度言おう。胸が残念な所が実にイイ。
所で、そんなに『期待してます』視線はやめてください。何か変なことを口走りそうになりますから。
ええい、周囲のおまえら! キツネキツネとそんなにキツネが好きなのか? そうなら俺はっ
「タヌキ蕎麦ください」
そう言うと彼女はパッと嬉しそうな表情になった。
「関東風と関西風が出来ますが」
「関東で」
「情熱的なのと冷たいのが出来ますが」
「情熱的? 暖かいので」
あ、名札着けてる。十真子って言うのか。十真子さ・・・十真子ちゃんは少しぎこちない手付きで入力機械を操作した。
「ちょっと待って、えーと。掻揚げと、お稲荷・・・はキツネか。他のご飯ものは何か無いか、太巻き。うん、太巻きを追加で」
「追加でカキあげに太巻きですね。カキあげは先乗せにしますか、別皿にしますか」
「先乗せで」
はい。と言ってオーダーを復唱すると、十真子ちゃんは小走りで厨房へ向かって、同僚に叱られていた。
よし。これで待っていれば空腹は満たされる。蕎麦だけだと心もとないかな? とも思っていたが、シャリも追加できたし問題ないだろう。
店内を見回した。壁にお勧めのメニューが貼り出されている。ああ、こういう所にぐっとくるメニューが有ったりするんだよなぁ。
あ、A3程の紙に手作りっぽい蟷螂蕎麦のPOPが貼られている。蟷螂を擬人化したのか手が鎌の女の子にキャッチコピーで『無口だけど美味しいよ』と。すみません。意味が解りません。無口と美味いが如何に繋がるのかがまったく解りません。
ああ、絵の達者な人が居るんだな。女の子二人で『キツネダブル』とか三人で『キツネトリプル』とか言うのまで張られている。
「キツネ3Pブッカケ出ます」
ぶっ。さ、3Pだと!?
「続いてキツネ4P出ます」
4Pだと!?
うわ、でけえ。ドンブリからはみ出す程に大きなアゲが三枚とか四枚とか並べられているのが見えた。突き出ているアゲの角がキツネの耳の様だ。旨そうだ。肉厚で濃い色が付くほどに味の染みたアゲが三枚とか四枚とか。食いてぇ。めっさ食いてぇ。キツネオーダーが聞こえたから、ついつい天邪鬼にタヌキに逝ってしまったが、あれはあれで旨そうだなぁ。
「お客様? 温狸蕎麦のお客様?」
ん、わぁ、はい。十真子ちゃんがいつの間にか傍にいた。
「用意が出来ましたので、こちらへどうぞ」
え? タヌキ蕎麦ってカウンターで食えないものだっけ?
十真子ちゃんに連れられて奥に向かった。
「えーと。一人蕎麦?」
小さな部屋に一人分位のカウンターが設えてあり、椅子も一つだけがあった。あ、カウンターも椅子も店のものよりも上等だ。
で、カウンターにドンブリが一つ。
椅子に腰を下ろす。目の前には実に旨そうに湯気を昇らせる蕎麦の入ったドンブリ。濃い色合いの汁に十割蕎麦の黒蕎麦。揚げ玉にかまぼこが添えられ葱が散らしてある。手前には箸置があり、箸が一膳置かれている。それも、値の張りそうな塗り箸が。
小皿に厚切りの太巻きが二切れ。卵焼きやら干瓢、胡瓜などの具も旨そうだ。
あれ?
「すみません。掻揚げ・・・」
「いまお載せいたしますね」
頭の上から声がしたと思うと、にゅっと目の前に足が現れた。
目の前に突然現れた生足に呆然としていると、エプロンを取り去り足元を肌蹴て・・・って穿いてないよこの娘、おまけにつるつるだよ。
て、天国だ!!!
いや、これは地獄だ。
なんという責め苦! 手は出せないよな絶対。人として終わるよな、社会的に。一生日陰の人生になっちまうよな。
等と悶絶していると、なんてこった。十真子ちゃん始めちゃいましたよ。目の前で。
左手の爪を軽くかむようにしながら、右手は一本筋を上から下へ下から上へと動かして。水音が響き始めたら、ゆっくりと指を立てて前後に動かし始めちゃいましたよ。
たらり、たらり、と雫が蕎麦の上に。
「カキ・・あげ・・・です。ど、どうぞお召し上がりくっ、ください」
そっちのカキかよっ!!!
食えないよ! つうか食ってられないよ。顔の横にはむっちりと美味しそうな太ももだし、視線を前に向ければ、半開きの蕾がしどしどに濡れてあまつさえ滴っているし。蕎麦よりそっちを食べたいんですけど!
はぁはぁ。心の中でひとしきり叫びまわると、なんとか落ち着く事ができた。
「うっ、なんだこりゃ。すっげえ旨い」
蕎麦はコシが非常に強い。手打ちなのか。喉越しがたまらなく旨い。だがそれに輪をかけて汁が旨い。だしの他に返しの甘みがあるが、それとは別に他の味を殺さない深い甘みが口の中に広がる。
耳は水音を聞き漏らすまいと欹てながら、両目は今正に咲き誇らんとする蜜を湛えた半開きの蕾を見つめ続けていた。そして手と口は蕎麦を啜り続けた。
「ふぅ。旨かった」
手を出してしまう事もなく、完食。汁もおいしく頂きました。最後の方は蜜が濃くて、理性がぶっ飛びそうで本当に危険でしたが。
「そんなに急がなくても、もっとゆっくり食べて良いのにぃ」
いや、一気に掻き込まないと色々とヤバイから。保身的事情で!
「おっと、いかんいかん。太巻きを忘れる所だったぜ」
「あっ、太巻きですね!」
俺が太巻きを一切れを口に入れた瞬間。カウンターの下から十真子ちゃんが顔を出して、ズボンのジッパーを下げて俺の太巻きを引っ張り出した。
「ちょ・・・」
ぺろり。
背筋から脳天まで電気が走ったっ。い、今のは舌? それも一回に留まらず、先の頭の部分をペロペロ嘗め回されて、た、たまりません。
何が起きたのか、と思わず見下ろしちゃいましたよ。
見なきゃ良かったかもしれない。
丁度、十真子ちゃんが大きく口を開けて太巻きに齧り付こうとしている所だった。
まってくれ、そんなことされたら、俺は・・・
かぷっ。くちゅ。
こ、これが口の中かっっっ。これが口の中なのかっっっ! 熱くてぬめる様で、硬い口蓋と柔らかく自在に刺激を変える舌が太巻きを責め上げてくる。更に唇が輪にした指以上に太巻きを締め付けながら、前後にって。フェラですか? これがフェラなんですね!? うはキモチイイ。
やべえ、出る。そう思った瞬間に、唇が離れようとしたのを感じて反射的に十真子ちゃんの後頭部を引き寄せてしまった。そして、今まで以上に奥に太巻きを突き入れて、大噴火した。
どくん、どくん、どくん。何度も何度もくぐもった律動を、口の中というか喉へというか解き放った。
噴火も収まり口という名の甘い牢獄から解き放たれると、椅子を下げるようにして座り込んだ。目の前を見れば、十真子ちゃんは半ば腰砕けの膝立ちの状態で、息も甘くとろとろに呆けた表情をしていて、彼女の右手はいまだに自分の蕾を慰めている最中、床には蜜溜りが出来ていた。
「んなもん見せられて、我慢出来るわけ無いだろ!」
俺は比較的小柄な十真子ちゃんの脇に手を突っ込むと、引き上げてカウンターの上に載せた。両腿の間に腰を割りいれて閉じられないようにして、未だに硬いままの盛大に噴火したばかりの太巻き、いやマイサンをしどしどに濡れた蕾に押し当てた。
だが悲しいかな、頭では位置を把握しているつもりでいても、上手く入らない。上手く入れられずに焦っていると、急に先っぽが十真子ちゃんに入り込んだ。彼女の指に誘導されて。
はっとして顔を見上げると、快感と期待にトロンとした顔がそこに有った。
「頂きます」
「はい」
腰を押し出すと、火傷しそうに熱くヌルリとした肉に銜え込まれた。口も大概気持ちイイと思ったけど、これは別世界だった。
そして、少しでも深く突き入ればその方が強い快感が得られると気が付いてしまったら歯止めなんて掛かる筈も無く、快感を求めるサルに等しく、少しでも奥へ、一ミリでも奥へ奥へと、ただただ、快感を求めて腰を打ちつけ続けた。
不意に十真子ちゃんと目が合った。途端に、腰振りサルが落ちた。
だってそうだろう。顔を真っ赤にして、涙ぼろぼろの状態だったんだから。
「ご、ごめん」
「はぁはぁ。ひいえ。ひもちいいれす」
嘘だ。
俺は十真子ちゃんの事なんて何も考えずに、ただただ快感を求めて腰を打ち続けていただけだ。現にこんなに泣き顔じゃないか。
俺は、小振りの体を抱きしめた。
「ごめん」
そして、抱きしめたまま後ろの椅子に腰を下ろした。瞬間、一層深く刺さり、こつんとした感触。
「はぅん♪」
十真子ちゃんと繋がったまま、腿の上に座らせて椅子に座った状態での対面座位の格好だ。両手両足と蜜壷で、しかと抱き絞められた。ああ、なんて可愛いのだろう。負けじと両腕で抱きしめる。
あれ、目の前には、十真子ちゃんのつむじが見えるのだけど、その左右にぴょこんと丸っこいものが突き出ていて、これはネコミミ? いや猫ぢゃないな。
はむ。
口が届きそうだったので、甘噛みしてみる。
「ひゃん。らめですよ。耳を噛まないでくらさい」
きゅんと締まった。気持ちいいなぁ。耳が弱いのかな。軽く歯で捕らえた耳を舌先でくりくりしてみる。舌に獣毛が絡むけど気にしない。
「らめでふぅ。みみは弱いのぉ。らめぇ」
十真子ちゃんはくすぐったいのか体をまでくねくねと捩り、蜜壷も一緒に捩れてたまりません。
耳を離すと、見上げるようにして甘く睨んできた。可愛らしく尖った口に口を寄せた。こんな事までしていると言うのに、今まで口付けをしていなかった。
ちゅ。ちゅぱ。ちゅぱ。ちゅ・・・・。
お互い、唇を重ねるだけで気が収まるはずも無く、昂ぶるままに唇を絡ませ、甘噛みし、舌を絡ませ合った。キスというのはこんなにも気持ちのイイものだったのだな。
ふと気が付くと、ふくらはぎに何かが当たっている。もふもふと。十真子ちゃんの肩越しに膝の辺りを見下ろしてみた。
「え、あ、らめらめ、みないでくらさいっ」
尻尾だ。太めでぷらんとしてもふもふの尻尾が左右に激しく揺られてふくらはぎに当たってたのだ。
「もふもふだ、もふもふ!」
「みないれ・・・ふぇ、らに? はぅっ大きくなったぁ」
左手で十真子ちゃんを支えながら、右手を尻尾に伸ばす。
「ひゃん」
もふもふの尻尾を捕まえた。両手でわきゃわきゃとしたい所だけど、ムリっぽいので、右手と左手で交互に根元から先っぽに向かって毛並みを確かめる様にしてしごいた。
「らめらめ、らめれすぅ」
そんな事言われても、手触りがもふもふが最高です堪りません。
尻尾に触られるのがよほど弱いのか、暴れるように体を捻り捩り跳ね回らせて、更にきゅうきゅう絞められるとなっては堪ったものではない。
「やばいっ」
やばいのだけど、尻尾ごと十真子ちゃんを抱き締めて腰を下から突き上げている。気持ちよくて動かずには居られないっ!
「やばいっ」
出るっ。最後の意思を振り絞ってヌこうとしたのだけど、十真子ちゃんが両手で、両足手で、膣で離すまいとしがみついてきた。
「あ、こら」
そのまま、決壊した。
「あふぅん。来たぁ。来た来た来た。奥に来たぁ」
ああ、十真子ちゃんの最奥にくっ付けるようにして盛大に射精した。いまっまで何度となく右手としてきたことに比べたら、快感も出る量も桁違いだ。ああ。まだびゅっびゅっと噴出している。お口の中に出させて貰ったときよりも断然気持ちいい。そうだよ出したばかりだってのに、さっきの倍以上出ていないか? それにしてもきもちぃぃ。
やっちまった。
合意を得たような気もするし、得なかったような気もする。なにより中出しは不味いよな。
とろんとして幸せそうな顔を見ていると、この幸せそうな顔を得られるのならばどんな負債だって背負ってみせよう。等と考えている俺が居た。
ふと十真子ちゃんが顔をあげた。俺が何か口にする前に、
「お持ち帰りはサービスになりますが、お持ち帰りいたしますか?」
ごくり、と喉がなった。
「ぜひ。お持ち帰りで」
「クーリングオフは有りませんよ?」
それからと言うもの。
毎日朝晩の食事には、カキあげと太巻きが出ることになりました。
------------------------------------------
余談ですが。
狸蕎麦を心行くまで堪能できたのですが、狐蕎麦トリプルの誘惑には勝てずに足を運んでみたのですが。
何度記憶を頼りに歩いても、バフォ・コインパークという時間貸しの駐車場にしか辿り着く事が出来ませんでした。
超健康黒蕎麦って店を見かけた人は居ませんか?
などと、謎の台詞を口にしながら空腹を宥めつつ歩いていると、
『超健康黒蕎麦』
という暖簾に気がついた。
なんだよ、その『超健康』って。
それ以前に、ここに蕎麦屋なんて有ったっけ?
と、戸惑いながらもその店に入ってみる事にした。
「いらっしゃいませ」
店中から元気の良い挨拶が出迎えてくれる。
店員多いな。和服に前掛けってのが良いなぁ。
ってまてまて。ミニスカート丈の着物なんて物は反則だろ! 生足が実にけしからん。もっとやれ。ファミレス系エプロンドレスも捨てがたいが、ミニ丈の和服に前掛けの破壊力は負けてないぞ。
それに、客も多い。大繁盛だ。
「こちらのカウンター席へどうぞ。こちらがメニューです」
どれどれ。いろいろあるなぁ。
妙に『ぶっかけ』とか『はらみ』とか書かれているお品書きが多い気がする。
はっと閃いて店内を見回すも、店員にぶっかけをしてい客はいないし、そんなハズもないよな。
「・・・当たり前だよな」
あれ、なんだろう。なんかガッカリしている自分が居るぞ?
ぐぅ。
ああ、鳴くな腹の虫よ。とりあえず、何を頼もうか。
再びメニューに目を落とすも、目移りするというか心を鷲掴みにするような物に欠けるというか。
青い力蕎麦、赤い力蕎麦。何が青と赤なんだろう? でも餅は遠慮しようかな。
ハチ蕎麦。八蕎麦? 四六蕎麦でなく? 二八蕎麦って事か?
蟷螂蕎麦。え? 瞬間。蕎麦のドンブリの中央で鎌を構え立ち尽くす蟷螂の姿が脳裏に浮かんだ。無いだろ、これは。昆虫を入れちゃ駄目だよ。まてよ、イナゴの佃煮のように蟷螂の佃煮とか?
何か店名とかイロイロ台無しな気がする。
ふと、背後で聞こえた注文が気になった。
キツネのダブルにブッカケだと? キツネのトリプル?!
それは一体何だ? と見回したのだが、先程の店員が駆け寄ってきた。
「お決まりですか」
どうやらオーダーが決まったと勘違いをさせてしまったようだ。
さっきは気が回らなかったけど、結構可愛い娘だな。ショートボブでマルポチャ系でちょいと小柄。胸は少しばかり残念な所が特にイイ。重要な所だからもう一度言おう。胸が残念な所が実にイイ。
所で、そんなに『期待してます』視線はやめてください。何か変なことを口走りそうになりますから。
ええい、周囲のおまえら! キツネキツネとそんなにキツネが好きなのか? そうなら俺はっ
「タヌキ蕎麦ください」
そう言うと彼女はパッと嬉しそうな表情になった。
「関東風と関西風が出来ますが」
「関東で」
「情熱的なのと冷たいのが出来ますが」
「情熱的? 暖かいので」
あ、名札着けてる。十真子って言うのか。十真子さ・・・十真子ちゃんは少しぎこちない手付きで入力機械を操作した。
「ちょっと待って、えーと。掻揚げと、お稲荷・・・はキツネか。他のご飯ものは何か無いか、太巻き。うん、太巻きを追加で」
「追加でカキあげに太巻きですね。カキあげは先乗せにしますか、別皿にしますか」
「先乗せで」
はい。と言ってオーダーを復唱すると、十真子ちゃんは小走りで厨房へ向かって、同僚に叱られていた。
よし。これで待っていれば空腹は満たされる。蕎麦だけだと心もとないかな? とも思っていたが、シャリも追加できたし問題ないだろう。
店内を見回した。壁にお勧めのメニューが貼り出されている。ああ、こういう所にぐっとくるメニューが有ったりするんだよなぁ。
あ、A3程の紙に手作りっぽい蟷螂蕎麦のPOPが貼られている。蟷螂を擬人化したのか手が鎌の女の子にキャッチコピーで『無口だけど美味しいよ』と。すみません。意味が解りません。無口と美味いが如何に繋がるのかがまったく解りません。
ああ、絵の達者な人が居るんだな。女の子二人で『キツネダブル』とか三人で『キツネトリプル』とか言うのまで張られている。
「キツネ3Pブッカケ出ます」
ぶっ。さ、3Pだと!?
「続いてキツネ4P出ます」
4Pだと!?
うわ、でけえ。ドンブリからはみ出す程に大きなアゲが三枚とか四枚とか並べられているのが見えた。突き出ているアゲの角がキツネの耳の様だ。旨そうだ。肉厚で濃い色が付くほどに味の染みたアゲが三枚とか四枚とか。食いてぇ。めっさ食いてぇ。キツネオーダーが聞こえたから、ついつい天邪鬼にタヌキに逝ってしまったが、あれはあれで旨そうだなぁ。
「お客様? 温狸蕎麦のお客様?」
ん、わぁ、はい。十真子ちゃんがいつの間にか傍にいた。
「用意が出来ましたので、こちらへどうぞ」
え? タヌキ蕎麦ってカウンターで食えないものだっけ?
十真子ちゃんに連れられて奥に向かった。
「えーと。一人蕎麦?」
小さな部屋に一人分位のカウンターが設えてあり、椅子も一つだけがあった。あ、カウンターも椅子も店のものよりも上等だ。
で、カウンターにドンブリが一つ。
椅子に腰を下ろす。目の前には実に旨そうに湯気を昇らせる蕎麦の入ったドンブリ。濃い色合いの汁に十割蕎麦の黒蕎麦。揚げ玉にかまぼこが添えられ葱が散らしてある。手前には箸置があり、箸が一膳置かれている。それも、値の張りそうな塗り箸が。
小皿に厚切りの太巻きが二切れ。卵焼きやら干瓢、胡瓜などの具も旨そうだ。
あれ?
「すみません。掻揚げ・・・」
「いまお載せいたしますね」
頭の上から声がしたと思うと、にゅっと目の前に足が現れた。
目の前に突然現れた生足に呆然としていると、エプロンを取り去り足元を肌蹴て・・・って穿いてないよこの娘、おまけにつるつるだよ。
て、天国だ!!!
いや、これは地獄だ。
なんという責め苦! 手は出せないよな絶対。人として終わるよな、社会的に。一生日陰の人生になっちまうよな。
等と悶絶していると、なんてこった。十真子ちゃん始めちゃいましたよ。目の前で。
左手の爪を軽くかむようにしながら、右手は一本筋を上から下へ下から上へと動かして。水音が響き始めたら、ゆっくりと指を立てて前後に動かし始めちゃいましたよ。
たらり、たらり、と雫が蕎麦の上に。
「カキ・・あげ・・・です。ど、どうぞお召し上がりくっ、ください」
そっちのカキかよっ!!!
食えないよ! つうか食ってられないよ。顔の横にはむっちりと美味しそうな太ももだし、視線を前に向ければ、半開きの蕾がしどしどに濡れてあまつさえ滴っているし。蕎麦よりそっちを食べたいんですけど!
はぁはぁ。心の中でひとしきり叫びまわると、なんとか落ち着く事ができた。
「うっ、なんだこりゃ。すっげえ旨い」
蕎麦はコシが非常に強い。手打ちなのか。喉越しがたまらなく旨い。だがそれに輪をかけて汁が旨い。だしの他に返しの甘みがあるが、それとは別に他の味を殺さない深い甘みが口の中に広がる。
耳は水音を聞き漏らすまいと欹てながら、両目は今正に咲き誇らんとする蜜を湛えた半開きの蕾を見つめ続けていた。そして手と口は蕎麦を啜り続けた。
「ふぅ。旨かった」
手を出してしまう事もなく、完食。汁もおいしく頂きました。最後の方は蜜が濃くて、理性がぶっ飛びそうで本当に危険でしたが。
「そんなに急がなくても、もっとゆっくり食べて良いのにぃ」
いや、一気に掻き込まないと色々とヤバイから。保身的事情で!
「おっと、いかんいかん。太巻きを忘れる所だったぜ」
「あっ、太巻きですね!」
俺が太巻きを一切れを口に入れた瞬間。カウンターの下から十真子ちゃんが顔を出して、ズボンのジッパーを下げて俺の太巻きを引っ張り出した。
「ちょ・・・」
ぺろり。
背筋から脳天まで電気が走ったっ。い、今のは舌? それも一回に留まらず、先の頭の部分をペロペロ嘗め回されて、た、たまりません。
何が起きたのか、と思わず見下ろしちゃいましたよ。
見なきゃ良かったかもしれない。
丁度、十真子ちゃんが大きく口を開けて太巻きに齧り付こうとしている所だった。
まってくれ、そんなことされたら、俺は・・・
かぷっ。くちゅ。
こ、これが口の中かっっっ。これが口の中なのかっっっ! 熱くてぬめる様で、硬い口蓋と柔らかく自在に刺激を変える舌が太巻きを責め上げてくる。更に唇が輪にした指以上に太巻きを締め付けながら、前後にって。フェラですか? これがフェラなんですね!? うはキモチイイ。
やべえ、出る。そう思った瞬間に、唇が離れようとしたのを感じて反射的に十真子ちゃんの後頭部を引き寄せてしまった。そして、今まで以上に奥に太巻きを突き入れて、大噴火した。
どくん、どくん、どくん。何度も何度もくぐもった律動を、口の中というか喉へというか解き放った。
噴火も収まり口という名の甘い牢獄から解き放たれると、椅子を下げるようにして座り込んだ。目の前を見れば、十真子ちゃんは半ば腰砕けの膝立ちの状態で、息も甘くとろとろに呆けた表情をしていて、彼女の右手はいまだに自分の蕾を慰めている最中、床には蜜溜りが出来ていた。
「んなもん見せられて、我慢出来るわけ無いだろ!」
俺は比較的小柄な十真子ちゃんの脇に手を突っ込むと、引き上げてカウンターの上に載せた。両腿の間に腰を割りいれて閉じられないようにして、未だに硬いままの盛大に噴火したばかりの太巻き、いやマイサンをしどしどに濡れた蕾に押し当てた。
だが悲しいかな、頭では位置を把握しているつもりでいても、上手く入らない。上手く入れられずに焦っていると、急に先っぽが十真子ちゃんに入り込んだ。彼女の指に誘導されて。
はっとして顔を見上げると、快感と期待にトロンとした顔がそこに有った。
「頂きます」
「はい」
腰を押し出すと、火傷しそうに熱くヌルリとした肉に銜え込まれた。口も大概気持ちイイと思ったけど、これは別世界だった。
そして、少しでも深く突き入ればその方が強い快感が得られると気が付いてしまったら歯止めなんて掛かる筈も無く、快感を求めるサルに等しく、少しでも奥へ、一ミリでも奥へ奥へと、ただただ、快感を求めて腰を打ちつけ続けた。
不意に十真子ちゃんと目が合った。途端に、腰振りサルが落ちた。
だってそうだろう。顔を真っ赤にして、涙ぼろぼろの状態だったんだから。
「ご、ごめん」
「はぁはぁ。ひいえ。ひもちいいれす」
嘘だ。
俺は十真子ちゃんの事なんて何も考えずに、ただただ快感を求めて腰を打ち続けていただけだ。現にこんなに泣き顔じゃないか。
俺は、小振りの体を抱きしめた。
「ごめん」
そして、抱きしめたまま後ろの椅子に腰を下ろした。瞬間、一層深く刺さり、こつんとした感触。
「はぅん♪」
十真子ちゃんと繋がったまま、腿の上に座らせて椅子に座った状態での対面座位の格好だ。両手両足と蜜壷で、しかと抱き絞められた。ああ、なんて可愛いのだろう。負けじと両腕で抱きしめる。
あれ、目の前には、十真子ちゃんのつむじが見えるのだけど、その左右にぴょこんと丸っこいものが突き出ていて、これはネコミミ? いや猫ぢゃないな。
はむ。
口が届きそうだったので、甘噛みしてみる。
「ひゃん。らめですよ。耳を噛まないでくらさい」
きゅんと締まった。気持ちいいなぁ。耳が弱いのかな。軽く歯で捕らえた耳を舌先でくりくりしてみる。舌に獣毛が絡むけど気にしない。
「らめでふぅ。みみは弱いのぉ。らめぇ」
十真子ちゃんはくすぐったいのか体をまでくねくねと捩り、蜜壷も一緒に捩れてたまりません。
耳を離すと、見上げるようにして甘く睨んできた。可愛らしく尖った口に口を寄せた。こんな事までしていると言うのに、今まで口付けをしていなかった。
ちゅ。ちゅぱ。ちゅぱ。ちゅ・・・・。
お互い、唇を重ねるだけで気が収まるはずも無く、昂ぶるままに唇を絡ませ、甘噛みし、舌を絡ませ合った。キスというのはこんなにも気持ちのイイものだったのだな。
ふと気が付くと、ふくらはぎに何かが当たっている。もふもふと。十真子ちゃんの肩越しに膝の辺りを見下ろしてみた。
「え、あ、らめらめ、みないでくらさいっ」
尻尾だ。太めでぷらんとしてもふもふの尻尾が左右に激しく揺られてふくらはぎに当たってたのだ。
「もふもふだ、もふもふ!」
「みないれ・・・ふぇ、らに? はぅっ大きくなったぁ」
左手で十真子ちゃんを支えながら、右手を尻尾に伸ばす。
「ひゃん」
もふもふの尻尾を捕まえた。両手でわきゃわきゃとしたい所だけど、ムリっぽいので、右手と左手で交互に根元から先っぽに向かって毛並みを確かめる様にしてしごいた。
「らめらめ、らめれすぅ」
そんな事言われても、手触りがもふもふが最高です堪りません。
尻尾に触られるのがよほど弱いのか、暴れるように体を捻り捩り跳ね回らせて、更にきゅうきゅう絞められるとなっては堪ったものではない。
「やばいっ」
やばいのだけど、尻尾ごと十真子ちゃんを抱き締めて腰を下から突き上げている。気持ちよくて動かずには居られないっ!
「やばいっ」
出るっ。最後の意思を振り絞ってヌこうとしたのだけど、十真子ちゃんが両手で、両足手で、膣で離すまいとしがみついてきた。
「あ、こら」
そのまま、決壊した。
「あふぅん。来たぁ。来た来た来た。奥に来たぁ」
ああ、十真子ちゃんの最奥にくっ付けるようにして盛大に射精した。いまっまで何度となく右手としてきたことに比べたら、快感も出る量も桁違いだ。ああ。まだびゅっびゅっと噴出している。お口の中に出させて貰ったときよりも断然気持ちいい。そうだよ出したばかりだってのに、さっきの倍以上出ていないか? それにしてもきもちぃぃ。
やっちまった。
合意を得たような気もするし、得なかったような気もする。なにより中出しは不味いよな。
とろんとして幸せそうな顔を見ていると、この幸せそうな顔を得られるのならばどんな負債だって背負ってみせよう。等と考えている俺が居た。
ふと十真子ちゃんが顔をあげた。俺が何か口にする前に、
「お持ち帰りはサービスになりますが、お持ち帰りいたしますか?」
ごくり、と喉がなった。
「ぜひ。お持ち帰りで」
「クーリングオフは有りませんよ?」
それからと言うもの。
毎日朝晩の食事には、カキあげと太巻きが出ることになりました。
------------------------------------------
余談ですが。
狸蕎麦を心行くまで堪能できたのですが、狐蕎麦トリプルの誘惑には勝てずに足を運んでみたのですが。
何度記憶を頼りに歩いても、バフォ・コインパークという時間貸しの駐車場にしか辿り着く事が出来ませんでした。
超健康黒蕎麦って店を見かけた人は居ませんか?
12/03/17 18:21更新 / 夜蛇