単ノ縁
今日もあの男が来た
あの男はいつも私の住処であるこの洞窟で鉱石だったり薬草だったりを探しながら、この洞窟を調査している
今日こそは…
「―――おどろけ！」
「だから効かねぇって言ってんだろ」
「はぅ！」
邪眼を使ってイタズラをしようとするも、全く効果がない
そしてまたおでこにチョップをくらった
「うぅ〜…」
「だーかーらよぉ、俺にはお前の魔力効かねぇって言ってんだろーが」
「いたっ！またチョップしたぁ！」
「良いから手伝え、今日はクッキー持ってきたから」
そう言いながら持っていた小さい袋を取り出して私に渡す
悔しいが、クッキーの美味しそうな匂いに勝てず…
「うぅ〜…次こそは驚かせてやるぅ」
「いややめろって」
「はぅ！」
またチョップをもらう事になった
・・・
私がこの男に初めて会ったのは一ヶ月前だった
始めは何人かの調査員と一緒に来て、ここの洞窟を調査しているみたいだった
なんの調査かはその時にはわからなかったけど、後で聞いたらここの地盤とかが大丈夫かを調べようとしていたらしい
けど、その時の私にはそんな事関係なかった
長年暮らしてきた洞窟に勝手に入ってきた彼らが気に入らないので、少しイタズラしてやろうと思ったのだ
私はゲイザー、幻覚とかそう言ったものはお手の物
しかも調査に来た連中には魔物の嫁もいるみたいだ
―――チクッ、と胸が痛んだ
私には出来ないだろうツガイ、一つ目で挙句いくつも目がある化物を好きになる物好きはそうそういない
ここは反魔、親魔の中間地点にある山だ
だが、親魔物領も行く気が起きなかった
―――化物！
―――目玉のオバケ！
そんな心無い言葉が頭をよぎる
小さい頃に言われた、私のトラウマだ
―――どうして私ばっかり
言っても仕方ないけれど、出てきてしまうそんな言葉
彼らには悪いが、腹いせに発情して嫁の所にでも帰ってもらったりしよう
そう思いながら彼らの後ろに近付き…
「こっちをみろ！」
そう言って彼らに魔眼を見せる
これで―――
「あぶねーだろ」
「ふぎゅっ！」
いきなりチョップをされた
一番後ろにいたその男は気だるそうにしながらそう告げる
「いきなり大声とか出したらみんなびっくりするだろーが」
「ふぎゅっ！い、痛いから！何発もチョップしないでよ！」
そこまで痛いわけではないが、何回もチョップをされているのはあまり気分も良くない
「あー…大丈夫すか？」
「って、私無視！？」
チョップはしなくなった代わりに、周りの人達に話しかける
「あぁ…彼女の温もりが…」
「ご主人様…ハァハァ…」
「よぉーし、お兄ちゃんすぐ帰ってミルクを飲ませちゃうぞー…」
結果は…もろにかかってました
「あちゃー…やっぱダメかぁ」
そう言いながら、男は手に何かを持って連れの人達に貼り付ける
「家でしっぽりしてくださーい…」
どうやら転送符のようだ
「…さて」
と、男が私に向き直った
右目に眼帯を付けて、少し古ぼけたような長いコートを少しダボつかせながら私を見る
「お前どうしてくれるんだ？」
面倒そうにしながら私に言う
「こんな事して…おかげで仕事増えるじゃん」
私は何も言わない
少し気まずい雰囲気が流れているが、それでも私は謝らなかった
「…とりあえず、お前手伝え」
「は？なんで私が手伝うのよ！？」
「お前のおかげでここの地盤調査員減ったんだから手伝え」
「…地盤調査？」
その時にはまだ知らなかった単語を私は聞かされた
「ここの地盤…ようは洞窟とかが安全か調べようと思ったんだよ」
「え…？」
「それをお前が発情させちまったから人員が減ったんだよ」
「うっ…」
「だから手伝え」
そう言いながら、私の首根っこを掴んで奥まで進んでいった
「いだいいだいいだい！わ、わかったから放してよぉ！」
・・・
この男に関してこの一ヶ月でわかった事
まず魔眼とか幻覚、魅了等の魔力干渉を受けない
それは私の魔眼が効かない事からよぉくわかった
次にどんなに暑くても、汗をかいてもコートを脱がない
暑そうにしてるから脱いだらと言っても全く聞かない
最後に…
「ん？なんかついてるか？」
「…べっつに〜」
異常なまでに愛想がない
ついでに言えばクッキーを買ってきても、自分では食べないのだ
代わりに少し変な匂いのする飲み物を飲んでいる
「…それ、なんなの？」
「薬湯」
ずずぅ〜、と音を立てながら飲んでいる様は、なんだかおじいさんみたいでもある
「暑くないの？」
「別に」
「汗かいてるよ？」
「脱ぐのが面倒なんだよ」
「…汗臭いよ？」
「毎日干してるから大丈夫…だよな？」
「いや、私に聞かないでよ！」
そんな事をしながら、彼は書類とかをまとめてる
その横顔を見ながら思う
―――いつまで来てくれるんだろう
彼は確かに愛想はないが、私の一つ目に偏見を持たないでもくれている
それがどれだけ嬉しいか、彼にはわからないだろう
「今日はこのくらいで良いかな？おっかれさん」
気だるそうにしながら書類をまとめ終わると、彼は言った
「…」
「…？おーい」
が、私は彼を見入っていた
気怠そうにしてるけど、優しい彼
顔は半分位が眼帯で隠れてるけど、かっこいい部類だろうか
何より、なんだかんだで気を使ってくれていて―――
「そぉい」
「ふぎゅっ！」
と、見入っていたらチョップをされた
「そんなに疲れてんなら早く言え、少しは休むから」
「ふぇっ！？いや、そういうんじゃ…」
「ほれ、少しは疲れとれっから飲め、んでゆっくり寝れ」
そう言いながら渡してきたのは、彼が飲んでいた薬湯の残りだった
「えっ！？で、でも…」
「明日も頑張んねーと期日までに終われねーし、お前の住処の安全が確保できねーだろ」
そう言って立ち上がり―――
「んじゃまた明日〜」
去りながら、彼は手を振っていた
「…これ、間接キス」
そう呟きながら、顔を赤くしているのが自覚できていた
・・・
「…それ、好きなんじゃない？」
「やっぱりそうなのかなぁ？」
彼と別れてすぐ、山に住んでいる友人―――私にとって、数少ない理解者―――の所に行った
「大体、その男性の事を考えると胸がキュンとなるとかただの恋愛感情」
その言葉を聞いて自分の顔が熱くなるのを感じた
「まぁよかったと思う」
「あ、ありがとう」
淡々と語る彼女
彼女のしっぽには、彼女がどんな種族かを表す象徴がある
「でも…ホントサラってサラマンダーっぽくないよね」
「別に…私は私」
…ここまで淡々としているサラマンダーもいるだろうか
そんな事を思っていたら、サラは言葉を続けた
「そういえば…レイ、多分両思い」
「ふぇっ！？」
その言葉にまた私は顔が熱くなる
「そもそも薬湯しか飲まない輩がなにゆえ毎回食べないケーキやクッキーを買うのか？しかも全部1日10食の限定品」
「えぇ！？そうだったの！？」
「たまに街で見かけるから間違いない」
表情も変えず、淡々と続ける
「そもそも薬湯の匂いを嗅いだけど、これお菓子と合わない。つまりお菓子を食べない人の飲み物。なのになんでお菓子を買うのか？…これ以上の言葉必要？」
その言葉に私は口をパクつかせるしか出来なくなり、顔も湯気が出そうなくらい熱い
「結果、両想いの可能性が高い」
「で、でも…私目玉いっぱいだし…」
にやけそうな位嬉しいのに、どこか不安になる
昔言われた、暴言が頭の中をよぎるのだ
「…ウジウジしない、レイは十分可愛いんだから」
「ひゃうっ！」
いきなり頬擦りをしてこられ、私は情けない声を上げる
「こんな可愛いんだ、自信をもて」
「…うん！」
サラの言葉に勇気付けられ、私は―――
・・・
「よっ」
翌日、いつも通り彼は来た
「そろそろ調査も大詰めだs「ねぇ」
彼の言葉を遮って、私は言う
「そういえば私たち名前知らないよね？」
「ん？あぁそうだったな」
「今更だけど名前教えてよ」
じっと見ながら彼に言う
「…まずお前の名前から言えよ」
「…レイ、ゲイザーのレイ」
気だるそうに言う彼に向かって、自分の名前を言う
―――彼はなんとなく興味深そうにしたと思う
「さっ！次はあなたの番だよ！」
そう言いながら彼に言い寄る
「ってもなぁ…」
「私からって言ったのはあなただよ、教えてよ」
「つーか、なんで今更知りてぇんだよ」
「良いから言ってよ！」
なぜか渋る彼を見て、不安になる
―――親友の言ってたのと違い、嫌われてる？
焦りと不安が積もっていく中、彼の口からそれは聞こえた
「…俺、名前とかねーし」
「…は？」
「なんつーか…養父さんからもらった名前とかあるけどしっくりこないんだよ。だから養父さんには悪いけど俺は名無しみたいなもんだ」
その言葉に、時間が止まる
「え、でも…お父さんからもらった名前なんでしょ？」
「まぁ…」
「血が繋がってるのに？」
「ん？…あぁそうか…俺、拾われたんだわ」
次から次へと出てくる衝撃の事実
私は頭が追いつかなくなりそうだった
・・・
「要約すると…あなたは孤児で今のお父さんに拾われた、それからチシツガク？を学んで今に至るのね」
「だいたいあってる」
彼の事を聞きながら、また彼が買ってきてくれたケーキを食べている
彼はまた薬湯だ
「後、地質学な」
「ん、わかった」
なんだかゆったりしながら聞いたが、壮絶な事を聞いていた
―――元々どこかの村で暮らしていたけど、村が色々あって滅んで、なんとか生き延びて色々あって今の両親に引き取られて、そこから勉強とかをして今は学者見習いらしい
「…色々って、何があったの？」
「色々」
こうまでして話さないのだから、思い出したくないのだろう
無理には聞けない
「あぁ〜…茶がうめぇ」
「薬湯じゃないの？」
「薬湯も茶も同じだ」
そう言いながら薬湯を飲み干す彼
「…ケーキ食べないの？」
「…別に」
なんとなく気まずい雰囲気が流れるが、嫌じゃない
このままの流れに身を任せそうになる
(…うぅん、ダメ)
けど、それじゃあダメだ
「あ、あのね…」
「ん？」
「えっと…その…」
彼を見ていると言葉が出なくなる
胸がドキドキして、言葉がまとまらなくなる
「だから…あの…」
彼は首をかしげている
―――チャンスは今しかない！？
「た、単眼を好きになれ！」
私の顔の一つ目、それには強力な幻覚効果がある
―――私たち一つ目を好きになるものだ
告白しようとして、これをかけてしまった
「…」
「あ…」
その時の彼の顔は―――
「…はぁ？」
怒っていた
「お前さぁ…ふざけてんの？」
普段の彼からは想像もできない怒気
それが私に向けられていた
肩を掴まれ、私は逃げられなくなる
「なんで？」
「え？」
泣きそうになるけどなんとか答える
「なんでそうなるんだよ！？」
「ひぃっ！」
彼が何に対して怒っているかわからないが、これでわかってしまった
―――彼は私のことが…好きじゃ…
「そこまでだ！」
と、そこに第三者の声が聞こえてきた
彼がそっちを見ると、そこには立派な鎧を着た騎士のような人がたっていた
「そこの男性！今すぐその一つ目の化物から離れなさい！」
その声で分かった
彼は教団の勇者か聖騎士だ
過去に何回か私を退治しに来たことがある
その度に幻覚でやり過ごしていたが…
「…今、なんつった？」
と、彼から漏れた
―――今まで聞いた事も無い位、冷たい声
「ん？」
「今、なんつったんだお前？」
「その一つ目の化物から―――」
教団の男性の言葉が続くことはなかった
―――ドゴォ！メキィ！
気がついたら、彼は私から離れて、教団の男性を―――蹴り飛ばしていた
「―――ゴハァ」
いや、ただ蹴り飛ばしたんじゃない
蹴り飛ばして、岩に思い切り叩きつけていた
「お前、マジ何言ってんの？アレか？ヴァカなのな？」
地面に倒れる教団の男性に追い討ちをかけるかのようにまた蹴りを入れ始めた
「グッ…やめ…ゲフッ…」
「ふざけんなよ？お前俺が惚れた女になに言ってくれちゃってんの？あいつ傷ついたじゃん？バカなの？死ぬの？」
彼が蹴りながら言った言葉に、私は反応する
「ほ、れた？」
彼は私の言葉が聞こえていないようで、まだ続ける
「あいつがせっかくさぁ告白してくれたっぽいのに、変なセリフだったしさ、お前のせいだろ？お前が悪なんだろ？むしろお前の存在が悪だろ？」
「へ、変じゃないもん！」
「うっせー！なんで今更お前以外の単眼好きにならにゃならねーんだよ！？」
「もぅ…やめ…」
「てめぇは黙ってろ糞が！」
最後と言わんばかりに、教団の男性を踏みつける
その後、動かなくなった…
「…たく、イラつかせやがって…」
そう言いながら、私に近づく彼
「なんで…」
彼は何も喋らない
「ねぇ…なんで？ホントに私のこと好きなの？」
彼は喋らない
けど、顔を赤くしながら私を見る
「なんで？なんでさっき怒ったの！？」
涙が止まらなくなる
彼の言葉を信じたい
けど…さっきの怒った態度が怖くもある
「…一目惚れだった」
彼がポツリと言う
「最初の時に一目見て、彼女にしたかった。でも女の子との接し方とかわかんなくて…俺には菓子を買ってくるしか出来なかった」
彼の言葉に耳を傾ける
「お前が…単眼を好きになれって言った時、なんかやだった。お前以外なんてどうでもいいのに、お前以外の単眼も好きにならねーといけないかと思うと、マジで嫌だった」
「え…あ…」
「お前以外の女なんていらねー、お前しか欲しくない、お前が…レイが欲しいんだよ」
彼は深呼吸して、言う
「レイ以外、俺の横にいる可能性すらほしくないし、レイ以外いて欲しくないんだよ！だから俺に言ってくれ！『私のことだけを好きになれ！』って！レイ以外見えないんだよ！」
眼帯をつけてる右目からも、彼は涙を流して言う
顔を真っ赤にして、懇願するように…
「背信者め…死ねぇ!」
その言葉と共に、倒れていたはずの男が彼に突っ込もうとする
手にはナイフを持って
「！？あぶな―――」
言葉より先に彼が動く
かわしきれなかった為、腕を切らてれるが、それでも関係なく男に蹴りを入れる
「てめぇ…レイになんかあったらどうしてくれんだクソムシがぁ！」
「―――っ」
声にならない呻きをあげ、男はまた倒される
彼の腕からはポタポタと血が流れてた
「ち、血が！？直ぐに治療しないと！」
「あー…大丈夫だろ」
「大丈夫じゃないから！むしろ危ないからね！？」
「ほっときゃなお「治らないよ！」
彼を連れて、治療用の薬草とか包帯があるところまで行こうとするも、彼は行きたがらない
彼は何かを言おうとしているが、もどかしそうにしている
「怪我してるんだよ！？血もいっぱい流れてるんだよ！？」
「…くない」
彼がボソっと言ったのは…
「レイに見られたくないし、嫌われたくない」
「…どういうこと？」
彼の言葉に疑問と引っかかりを覚えた
―――暑いのに脱がない上着
―――眼帯をしている目からの涙
―――隠すため？何を？
その時、何かが頭をよぎった
「…腕、見るよ」
私は自分の触手を使って、彼の体の動きを止める
そして―――
「…これって」
彼は目を背けた
―――そこには、おびただしい量の、魔術や呪いの術式が彫り込まれていた
・・・
「…村が滅ぼされて、教団に捕まったんだ」
包帯がある場所まで連れて行き、治療をしていると、彼が突然言い始めた
「元々俺がいた村は土着信仰だかがあったから、それで滅ぼされたんだろうって、養父さんが言ってた」
彼はどこか遠い目をして続ける
「教団に捕まってからはいろんなもん彫られた。上半身びっしりと…全部、こいつを使えるようにするためだったんだと」
そう言いながら、右眼を抑える
「…もしかして」
「魔眼、しかも旧魔王時代の魔物のなんだと」
そう言いながら体が震え始めた彼は、話を続ける
「どうやらこいつは体に影響があるらしくよ…それを中和する為に色々体中に彫り込んで…結果、俺は魅了とかが効きにくくなったんだ…んで、その施設で俺みたいに実験されたのが何人もいたんだけど…俺は失敗して死んだと思われて外に捨てられて、養父さんに拾われたんだ」
「…その…大変だったんだね」
―――こんな言葉しか言えない自分が嫌だった
彼がこんなにも苦しんでるのに、何も言えない…
「まぁ…養父さんには良くしてもらったし、わざわざ名前までもらった、それを受け入れれない事も受け入れてくれてるしそんなダメな息子を信頼して仕事をくれたり勉強を教えてくれたりって、多分幸せなんだと思う…でも、お前にだけは嫌われたくなかった…」
「…？」
「こんな刺青まみれで、もしかしたらレイの同族の眼を入れてるんだ…嫌いになっただろ？」
彼が何を言ってるかわからなかった
が、わかると段々―――
「…は？」
「え？いやだから…」
「そんな訳ないでしょ？」
ムカついてきた
「大体そんな事程度でなんで好きになった人を嫌いにならなきゃならないの！？ヴァッカじゃないの！」
「はぁ！？おま！俺がどんだけこわいと思って…」
「私だって貴方に嫌われてるんじゃないかってずっと怖かったんだよ！しかも告白したらいきなり怒るし！たかだか刺青じゃん！眼がちょっと違うだけじゃん！」
そう言いながら、彼に抱きついて、告げた
「その程度で…嫌いになるわけないよ…わたしなんか眼が顔には一つだけだし、触手にも眼が付いてるし…私のほうが怖かったんだよ…」
「…わりぃ…でも、レイ以外の単眼も好きにならないといけないのかと思って…」
「…改めて聞くとすっごく複雑だけど嬉しい、かな」
抱きついてて、ふと腰付近に硬いものが当たった
「…あ」
見上げると、彼がなんだか顔を背けた
…なんとなく可愛いと感じ、ふとイタズラをしたくなった
「でも、本当に私魅力あるのかなぁ？もしかしたらただ単に一つ目が好きなだけだったりして〜♥」
あえて言ってみたが、彼はむすっとしながら私の手を掴み―――
「これでも信じねーか？」
自分の履いていたズボンの中に入れて、彼の半身を私に握らせた
瞬間―――
「！？」
「え！？」
彼の半身から、何かが私の手にかけられた
―――アツイ、とても甘いいい匂いの…彼の精
「…そうだよ！お前に触られただけで達してしまうほどにお前に欲情してんの！レイ以外にむしろたった事ねーの！」
そう言いながらズボンから私の手を取り出し、私の前に持ってくる
「むしろこんな経験初めてでどうしたら良いのかわかんなかったんだよ！つーか知識として知ってても実践はねーんだよ！わりぃか！」
彼が顔を赤くしながら何かを言っていたが…私には届かなかった
「…これが…あなたの精…」
彼の精の匂いで、私は惚けていた
そして…
「あむっ…んく…」
気がついたら口に含んでいた
―――今までもらっていたどんなお菓子よりも、甘く、口の中でとろけている
手についていた残りの精液も舐めとり―――
「おいしぃ…」
その味の虜になっていた
瞬間―――
彼は豹変したように私を手で押さえつけながら言った
「お前さぁ！もう我慢なんかしねーからな！」
「へっ！？あっ！」
彼は私を壁に押し付けるようにしながら―――とは言っても痛くはない―――空いた方の手を私の下着の中にいれた
「んぅ…！」
口からその快楽によってもたらされた喘ぎ声が漏れてくる
その声を聞いて彼は益々盛り始め―――
「ん…あぁ！」
「うわぁ…手がグチョグチョだ…」
彼にイカされ、フラフラだったが、彼は私をさせてくれた
「…お前の、甘いな」
「恥ずかしぃ…」
それどころか、手についた私の愛液を舐めとり、私に見せつけるように舐め始める
「…いいのか？」
彼が舐めながら、私の秘部に彼の半身を合わせていう
「…うん♥」
できるだけ彼に笑いかけるように心がけた
初めてで不安だし、怖いけど…彼が少しでもわたしを安心して抱く事ができるようにしたかったのだ
瞬間―――彼の半身が私の中に入ってきた
ぷつつっ、と中の膜を掻き分け、私の中に入ってくる
「―――あぁん！」
声を堪えられず、漏らしてしまう
それにさらに興奮した彼は、私の中へさらに入ってくる
一旦引いて―――また入れる
単純な動きだけど、彼を感じられて、私は胸の中から何かがこみ上げてきていた
「くっ！」
彼が声を漏らした瞬間、彼から放たれた精液が私の子宮の中にドクドク、と、入ってきた
声も出せないくらいの気持ちよさで、私はそのまま彼にもたれかかった
・・・
「…ん」
「あ、起きたか」
気がついた時には、彼が来ていたコートと彼に包まれていた
「…ぁ」
彼とした事を思い出し、私は恥ずかしくなる
「…可愛いからもっかいしていいか？」
「や、やめてよ！まだ顔恥ずかしいのと嬉しいのがごっちゃになってニヤけちゃうから！」
彼の胸板に顔を埋め、私は言う
上目遣いになりながら、彼を見る
「ねぇ…それ、とってくれない？」
「…」
彼の眼帯はまだ取られていない
―――彼の眼を見てみたい
そう思い、その思いを口にする
「あなたの全部がみたい…あなたの事を全部知りたいの」
「…嫌わないでくれるか？」
「もう嫌えないよ」
彼の精の味を知ってしまったのだ
もう、彼無しでは生きていたくない
「…わかった」
そう言って、眼帯を外すと―――
「…」
「怖いか？」
禍々しい金色をした、見ているだけで不安になるような邪眼が私を見る
「怖いけど…怖くない」
だが、不思議だ
彼の眼だと思うと―――怖くなくなる
むしろ愛しさすら覚えているのだ
「なんか…怖いはずなのに落ち着く」
「…ありがとう」
彼が抱きしめてくれたのが嬉しくて
彼の眼が綺麗なのが嬉しくて
「『私を好きになれ！』」
「もうなっとるわ」
「ふあぁん！」
彼に暗示をかけようとしたら、挿入されました♥
〜〜〜〜〜〜
幼い頃、彼女は心無い言葉によって傷ついた
幼い頃、彼は理不尽に自分のものを奪われた
それが辛くて、誰かといるのが怖くなった
それが憎くて、自分の今の体を嫌悪した
そんな彼女も、恋をした
そんな彼も、一目惚れをした
そんな彼女だから、怖かった
そんな彼だから、恐れていた
そんな二人だから、お互いの事を癒しあった
そんな二人だから、今でもお互いを支えあっている
〜〜〜〜〜〜
「レイー、もうすぐいくぞー」
「ん〜…あと5時間だけ…」
「ねーよ」
「ふぎゅっ！」
彼にチョップをされ、起こされる
「むぅ！昨日も激しく私をあんなに犯しておいて！それはひどい！」
「なら俺に暗示をかけるなって、つーかお前の暗示マジ効き目ありすぎて笑えねー」
そんな風に笑いながら彼がいうと、ドアの向こうから声がした
「おーい、二人共！朝食を早く食べるんだ！」
彼の養父、私の義父の声だ
「あ、はーいお義父さん！」
「養父さん、レイは後5時間寝るってよ」
「寝ないもん！」
―――あれから、彼と街に移ることにした
山で暮らすのも良いけど、友達のサラも街に住むことになったし、何より彼と暮らしたかったからだ
だが、昔の事があり怖くもあった
そんな私に彼とお義父さんは言ったのだ
『化物呼ばわりされたら言いなさい、直ぐにソイツを家系単位で根絶やしにするから』
彼だけならわかるが、まさかお義父さんまで言うとは思わなかった
冗談で言った街の人が思いっきりお義父さんに殴られたのは今でも覚えている
…彼も含めて、止めるのが大変だった
それから街でいろんな魔物と友達になれた
みんな、私の表情がコロコロ変わって、一つ目とか気にせず可愛いのだからと言ってくれた時には泣いてしまった
そんな事を考えながら、服を着替え、最愛の人の名前を呼ぶ
「じゃあご飯を食べに行こ！バロル！」
あの男はいつも私の住処であるこの洞窟で鉱石だったり薬草だったりを探しながら、この洞窟を調査している
今日こそは…
「―――おどろけ！」
「だから効かねぇって言ってんだろ」
「はぅ！」
邪眼を使ってイタズラをしようとするも、全く効果がない
そしてまたおでこにチョップをくらった
「うぅ〜…」
「だーかーらよぉ、俺にはお前の魔力効かねぇって言ってんだろーが」
「いたっ！またチョップしたぁ！」
「良いから手伝え、今日はクッキー持ってきたから」
そう言いながら持っていた小さい袋を取り出して私に渡す
悔しいが、クッキーの美味しそうな匂いに勝てず…
「うぅ〜…次こそは驚かせてやるぅ」
「いややめろって」
「はぅ！」
またチョップをもらう事になった
・・・
私がこの男に初めて会ったのは一ヶ月前だった
始めは何人かの調査員と一緒に来て、ここの洞窟を調査しているみたいだった
なんの調査かはその時にはわからなかったけど、後で聞いたらここの地盤とかが大丈夫かを調べようとしていたらしい
けど、その時の私にはそんな事関係なかった
長年暮らしてきた洞窟に勝手に入ってきた彼らが気に入らないので、少しイタズラしてやろうと思ったのだ
私はゲイザー、幻覚とかそう言ったものはお手の物
しかも調査に来た連中には魔物の嫁もいるみたいだ
―――チクッ、と胸が痛んだ
私には出来ないだろうツガイ、一つ目で挙句いくつも目がある化物を好きになる物好きはそうそういない
ここは反魔、親魔の中間地点にある山だ
だが、親魔物領も行く気が起きなかった
―――化物！
―――目玉のオバケ！
そんな心無い言葉が頭をよぎる
小さい頃に言われた、私のトラウマだ
―――どうして私ばっかり
言っても仕方ないけれど、出てきてしまうそんな言葉
彼らには悪いが、腹いせに発情して嫁の所にでも帰ってもらったりしよう
そう思いながら彼らの後ろに近付き…
「こっちをみろ！」
そう言って彼らに魔眼を見せる
これで―――
「あぶねーだろ」
「ふぎゅっ！」
いきなりチョップをされた
一番後ろにいたその男は気だるそうにしながらそう告げる
「いきなり大声とか出したらみんなびっくりするだろーが」
「ふぎゅっ！い、痛いから！何発もチョップしないでよ！」
そこまで痛いわけではないが、何回もチョップをされているのはあまり気分も良くない
「あー…大丈夫すか？」
「って、私無視！？」
チョップはしなくなった代わりに、周りの人達に話しかける
「あぁ…彼女の温もりが…」
「ご主人様…ハァハァ…」
「よぉーし、お兄ちゃんすぐ帰ってミルクを飲ませちゃうぞー…」
結果は…もろにかかってました
「あちゃー…やっぱダメかぁ」
そう言いながら、男は手に何かを持って連れの人達に貼り付ける
「家でしっぽりしてくださーい…」
どうやら転送符のようだ
「…さて」
と、男が私に向き直った
右目に眼帯を付けて、少し古ぼけたような長いコートを少しダボつかせながら私を見る
「お前どうしてくれるんだ？」
面倒そうにしながら私に言う
「こんな事して…おかげで仕事増えるじゃん」
私は何も言わない
少し気まずい雰囲気が流れているが、それでも私は謝らなかった
「…とりあえず、お前手伝え」
「は？なんで私が手伝うのよ！？」
「お前のおかげでここの地盤調査員減ったんだから手伝え」
「…地盤調査？」
その時にはまだ知らなかった単語を私は聞かされた
「ここの地盤…ようは洞窟とかが安全か調べようと思ったんだよ」
「え…？」
「それをお前が発情させちまったから人員が減ったんだよ」
「うっ…」
「だから手伝え」
そう言いながら、私の首根っこを掴んで奥まで進んでいった
「いだいいだいいだい！わ、わかったから放してよぉ！」
・・・
この男に関してこの一ヶ月でわかった事
まず魔眼とか幻覚、魅了等の魔力干渉を受けない
それは私の魔眼が効かない事からよぉくわかった
次にどんなに暑くても、汗をかいてもコートを脱がない
暑そうにしてるから脱いだらと言っても全く聞かない
最後に…
「ん？なんかついてるか？」
「…べっつに〜」
異常なまでに愛想がない
ついでに言えばクッキーを買ってきても、自分では食べないのだ
代わりに少し変な匂いのする飲み物を飲んでいる
「…それ、なんなの？」
「薬湯」
ずずぅ〜、と音を立てながら飲んでいる様は、なんだかおじいさんみたいでもある
「暑くないの？」
「別に」
「汗かいてるよ？」
「脱ぐのが面倒なんだよ」
「…汗臭いよ？」
「毎日干してるから大丈夫…だよな？」
「いや、私に聞かないでよ！」
そんな事をしながら、彼は書類とかをまとめてる
その横顔を見ながら思う
―――いつまで来てくれるんだろう
彼は確かに愛想はないが、私の一つ目に偏見を持たないでもくれている
それがどれだけ嬉しいか、彼にはわからないだろう
「今日はこのくらいで良いかな？おっかれさん」
気だるそうにしながら書類をまとめ終わると、彼は言った
「…」
「…？おーい」
が、私は彼を見入っていた
気怠そうにしてるけど、優しい彼
顔は半分位が眼帯で隠れてるけど、かっこいい部類だろうか
何より、なんだかんだで気を使ってくれていて―――
「そぉい」
「ふぎゅっ！」
と、見入っていたらチョップをされた
「そんなに疲れてんなら早く言え、少しは休むから」
「ふぇっ！？いや、そういうんじゃ…」
「ほれ、少しは疲れとれっから飲め、んでゆっくり寝れ」
そう言いながら渡してきたのは、彼が飲んでいた薬湯の残りだった
「えっ！？で、でも…」
「明日も頑張んねーと期日までに終われねーし、お前の住処の安全が確保できねーだろ」
そう言って立ち上がり―――
「んじゃまた明日〜」
去りながら、彼は手を振っていた
「…これ、間接キス」
そう呟きながら、顔を赤くしているのが自覚できていた
・・・
「…それ、好きなんじゃない？」
「やっぱりそうなのかなぁ？」
彼と別れてすぐ、山に住んでいる友人―――私にとって、数少ない理解者―――の所に行った
「大体、その男性の事を考えると胸がキュンとなるとかただの恋愛感情」
その言葉を聞いて自分の顔が熱くなるのを感じた
「まぁよかったと思う」
「あ、ありがとう」
淡々と語る彼女
彼女のしっぽには、彼女がどんな種族かを表す象徴がある
「でも…ホントサラってサラマンダーっぽくないよね」
「別に…私は私」
…ここまで淡々としているサラマンダーもいるだろうか
そんな事を思っていたら、サラは言葉を続けた
「そういえば…レイ、多分両思い」
「ふぇっ！？」
その言葉にまた私は顔が熱くなる
「そもそも薬湯しか飲まない輩がなにゆえ毎回食べないケーキやクッキーを買うのか？しかも全部1日10食の限定品」
「えぇ！？そうだったの！？」
「たまに街で見かけるから間違いない」
表情も変えず、淡々と続ける
「そもそも薬湯の匂いを嗅いだけど、これお菓子と合わない。つまりお菓子を食べない人の飲み物。なのになんでお菓子を買うのか？…これ以上の言葉必要？」
その言葉に私は口をパクつかせるしか出来なくなり、顔も湯気が出そうなくらい熱い
「結果、両想いの可能性が高い」
「で、でも…私目玉いっぱいだし…」
にやけそうな位嬉しいのに、どこか不安になる
昔言われた、暴言が頭の中をよぎるのだ
「…ウジウジしない、レイは十分可愛いんだから」
「ひゃうっ！」
いきなり頬擦りをしてこられ、私は情けない声を上げる
「こんな可愛いんだ、自信をもて」
「…うん！」
サラの言葉に勇気付けられ、私は―――
・・・
「よっ」
翌日、いつも通り彼は来た
「そろそろ調査も大詰めだs「ねぇ」
彼の言葉を遮って、私は言う
「そういえば私たち名前知らないよね？」
「ん？あぁそうだったな」
「今更だけど名前教えてよ」
じっと見ながら彼に言う
「…まずお前の名前から言えよ」
「…レイ、ゲイザーのレイ」
気だるそうに言う彼に向かって、自分の名前を言う
―――彼はなんとなく興味深そうにしたと思う
「さっ！次はあなたの番だよ！」
そう言いながら彼に言い寄る
「ってもなぁ…」
「私からって言ったのはあなただよ、教えてよ」
「つーか、なんで今更知りてぇんだよ」
「良いから言ってよ！」
なぜか渋る彼を見て、不安になる
―――親友の言ってたのと違い、嫌われてる？
焦りと不安が積もっていく中、彼の口からそれは聞こえた
「…俺、名前とかねーし」
「…は？」
「なんつーか…養父さんからもらった名前とかあるけどしっくりこないんだよ。だから養父さんには悪いけど俺は名無しみたいなもんだ」
その言葉に、時間が止まる
「え、でも…お父さんからもらった名前なんでしょ？」
「まぁ…」
「血が繋がってるのに？」
「ん？…あぁそうか…俺、拾われたんだわ」
次から次へと出てくる衝撃の事実
私は頭が追いつかなくなりそうだった
・・・
「要約すると…あなたは孤児で今のお父さんに拾われた、それからチシツガク？を学んで今に至るのね」
「だいたいあってる」
彼の事を聞きながら、また彼が買ってきてくれたケーキを食べている
彼はまた薬湯だ
「後、地質学な」
「ん、わかった」
なんだかゆったりしながら聞いたが、壮絶な事を聞いていた
―――元々どこかの村で暮らしていたけど、村が色々あって滅んで、なんとか生き延びて色々あって今の両親に引き取られて、そこから勉強とかをして今は学者見習いらしい
「…色々って、何があったの？」
「色々」
こうまでして話さないのだから、思い出したくないのだろう
無理には聞けない
「あぁ〜…茶がうめぇ」
「薬湯じゃないの？」
「薬湯も茶も同じだ」
そう言いながら薬湯を飲み干す彼
「…ケーキ食べないの？」
「…別に」
なんとなく気まずい雰囲気が流れるが、嫌じゃない
このままの流れに身を任せそうになる
(…うぅん、ダメ)
けど、それじゃあダメだ
「あ、あのね…」
「ん？」
「えっと…その…」
彼を見ていると言葉が出なくなる
胸がドキドキして、言葉がまとまらなくなる
「だから…あの…」
彼は首をかしげている
―――チャンスは今しかない！？
「た、単眼を好きになれ！」
私の顔の一つ目、それには強力な幻覚効果がある
―――私たち一つ目を好きになるものだ
告白しようとして、これをかけてしまった
「…」
「あ…」
その時の彼の顔は―――
「…はぁ？」
怒っていた
「お前さぁ…ふざけてんの？」
普段の彼からは想像もできない怒気
それが私に向けられていた
肩を掴まれ、私は逃げられなくなる
「なんで？」
「え？」
泣きそうになるけどなんとか答える
「なんでそうなるんだよ！？」
「ひぃっ！」
彼が何に対して怒っているかわからないが、これでわかってしまった
―――彼は私のことが…好きじゃ…
「そこまでだ！」
と、そこに第三者の声が聞こえてきた
彼がそっちを見ると、そこには立派な鎧を着た騎士のような人がたっていた
「そこの男性！今すぐその一つ目の化物から離れなさい！」
その声で分かった
彼は教団の勇者か聖騎士だ
過去に何回か私を退治しに来たことがある
その度に幻覚でやり過ごしていたが…
「…今、なんつった？」
と、彼から漏れた
―――今まで聞いた事も無い位、冷たい声
「ん？」
「今、なんつったんだお前？」
「その一つ目の化物から―――」
教団の男性の言葉が続くことはなかった
―――ドゴォ！メキィ！
気がついたら、彼は私から離れて、教団の男性を―――蹴り飛ばしていた
「―――ゴハァ」
いや、ただ蹴り飛ばしたんじゃない
蹴り飛ばして、岩に思い切り叩きつけていた
「お前、マジ何言ってんの？アレか？ヴァカなのな？」
地面に倒れる教団の男性に追い討ちをかけるかのようにまた蹴りを入れ始めた
「グッ…やめ…ゲフッ…」
「ふざけんなよ？お前俺が惚れた女になに言ってくれちゃってんの？あいつ傷ついたじゃん？バカなの？死ぬの？」
彼が蹴りながら言った言葉に、私は反応する
「ほ、れた？」
彼は私の言葉が聞こえていないようで、まだ続ける
「あいつがせっかくさぁ告白してくれたっぽいのに、変なセリフだったしさ、お前のせいだろ？お前が悪なんだろ？むしろお前の存在が悪だろ？」
「へ、変じゃないもん！」
「うっせー！なんで今更お前以外の単眼好きにならにゃならねーんだよ！？」
「もぅ…やめ…」
「てめぇは黙ってろ糞が！」
最後と言わんばかりに、教団の男性を踏みつける
その後、動かなくなった…
「…たく、イラつかせやがって…」
そう言いながら、私に近づく彼
「なんで…」
彼は何も喋らない
「ねぇ…なんで？ホントに私のこと好きなの？」
彼は喋らない
けど、顔を赤くしながら私を見る
「なんで？なんでさっき怒ったの！？」
涙が止まらなくなる
彼の言葉を信じたい
けど…さっきの怒った態度が怖くもある
「…一目惚れだった」
彼がポツリと言う
「最初の時に一目見て、彼女にしたかった。でも女の子との接し方とかわかんなくて…俺には菓子を買ってくるしか出来なかった」
彼の言葉に耳を傾ける
「お前が…単眼を好きになれって言った時、なんかやだった。お前以外なんてどうでもいいのに、お前以外の単眼も好きにならねーといけないかと思うと、マジで嫌だった」
「え…あ…」
「お前以外の女なんていらねー、お前しか欲しくない、お前が…レイが欲しいんだよ」
彼は深呼吸して、言う
「レイ以外、俺の横にいる可能性すらほしくないし、レイ以外いて欲しくないんだよ！だから俺に言ってくれ！『私のことだけを好きになれ！』って！レイ以外見えないんだよ！」
眼帯をつけてる右目からも、彼は涙を流して言う
顔を真っ赤にして、懇願するように…
「背信者め…死ねぇ!」
その言葉と共に、倒れていたはずの男が彼に突っ込もうとする
手にはナイフを持って
「！？あぶな―――」
言葉より先に彼が動く
かわしきれなかった為、腕を切らてれるが、それでも関係なく男に蹴りを入れる
「てめぇ…レイになんかあったらどうしてくれんだクソムシがぁ！」
「―――っ」
声にならない呻きをあげ、男はまた倒される
彼の腕からはポタポタと血が流れてた
「ち、血が！？直ぐに治療しないと！」
「あー…大丈夫だろ」
「大丈夫じゃないから！むしろ危ないからね！？」
「ほっときゃなお「治らないよ！」
彼を連れて、治療用の薬草とか包帯があるところまで行こうとするも、彼は行きたがらない
彼は何かを言おうとしているが、もどかしそうにしている
「怪我してるんだよ！？血もいっぱい流れてるんだよ！？」
「…くない」
彼がボソっと言ったのは…
「レイに見られたくないし、嫌われたくない」
「…どういうこと？」
彼の言葉に疑問と引っかかりを覚えた
―――暑いのに脱がない上着
―――眼帯をしている目からの涙
―――隠すため？何を？
その時、何かが頭をよぎった
「…腕、見るよ」
私は自分の触手を使って、彼の体の動きを止める
そして―――
「…これって」
彼は目を背けた
―――そこには、おびただしい量の、魔術や呪いの術式が彫り込まれていた
・・・
「…村が滅ぼされて、教団に捕まったんだ」
包帯がある場所まで連れて行き、治療をしていると、彼が突然言い始めた
「元々俺がいた村は土着信仰だかがあったから、それで滅ぼされたんだろうって、養父さんが言ってた」
彼はどこか遠い目をして続ける
「教団に捕まってからはいろんなもん彫られた。上半身びっしりと…全部、こいつを使えるようにするためだったんだと」
そう言いながら、右眼を抑える
「…もしかして」
「魔眼、しかも旧魔王時代の魔物のなんだと」
そう言いながら体が震え始めた彼は、話を続ける
「どうやらこいつは体に影響があるらしくよ…それを中和する為に色々体中に彫り込んで…結果、俺は魅了とかが効きにくくなったんだ…んで、その施設で俺みたいに実験されたのが何人もいたんだけど…俺は失敗して死んだと思われて外に捨てられて、養父さんに拾われたんだ」
「…その…大変だったんだね」
―――こんな言葉しか言えない自分が嫌だった
彼がこんなにも苦しんでるのに、何も言えない…
「まぁ…養父さんには良くしてもらったし、わざわざ名前までもらった、それを受け入れれない事も受け入れてくれてるしそんなダメな息子を信頼して仕事をくれたり勉強を教えてくれたりって、多分幸せなんだと思う…でも、お前にだけは嫌われたくなかった…」
「…？」
「こんな刺青まみれで、もしかしたらレイの同族の眼を入れてるんだ…嫌いになっただろ？」
彼が何を言ってるかわからなかった
が、わかると段々―――
「…は？」
「え？いやだから…」
「そんな訳ないでしょ？」
ムカついてきた
「大体そんな事程度でなんで好きになった人を嫌いにならなきゃならないの！？ヴァッカじゃないの！」
「はぁ！？おま！俺がどんだけこわいと思って…」
「私だって貴方に嫌われてるんじゃないかってずっと怖かったんだよ！しかも告白したらいきなり怒るし！たかだか刺青じゃん！眼がちょっと違うだけじゃん！」
そう言いながら、彼に抱きついて、告げた
「その程度で…嫌いになるわけないよ…わたしなんか眼が顔には一つだけだし、触手にも眼が付いてるし…私のほうが怖かったんだよ…」
「…わりぃ…でも、レイ以外の単眼も好きにならないといけないのかと思って…」
「…改めて聞くとすっごく複雑だけど嬉しい、かな」
抱きついてて、ふと腰付近に硬いものが当たった
「…あ」
見上げると、彼がなんだか顔を背けた
…なんとなく可愛いと感じ、ふとイタズラをしたくなった
「でも、本当に私魅力あるのかなぁ？もしかしたらただ単に一つ目が好きなだけだったりして〜♥」
あえて言ってみたが、彼はむすっとしながら私の手を掴み―――
「これでも信じねーか？」
自分の履いていたズボンの中に入れて、彼の半身を私に握らせた
瞬間―――
「！？」
「え！？」
彼の半身から、何かが私の手にかけられた
―――アツイ、とても甘いいい匂いの…彼の精
「…そうだよ！お前に触られただけで達してしまうほどにお前に欲情してんの！レイ以外にむしろたった事ねーの！」
そう言いながらズボンから私の手を取り出し、私の前に持ってくる
「むしろこんな経験初めてでどうしたら良いのかわかんなかったんだよ！つーか知識として知ってても実践はねーんだよ！わりぃか！」
彼が顔を赤くしながら何かを言っていたが…私には届かなかった
「…これが…あなたの精…」
彼の精の匂いで、私は惚けていた
そして…
「あむっ…んく…」
気がついたら口に含んでいた
―――今までもらっていたどんなお菓子よりも、甘く、口の中でとろけている
手についていた残りの精液も舐めとり―――
「おいしぃ…」
その味の虜になっていた
瞬間―――
彼は豹変したように私を手で押さえつけながら言った
「お前さぁ！もう我慢なんかしねーからな！」
「へっ！？あっ！」
彼は私を壁に押し付けるようにしながら―――とは言っても痛くはない―――空いた方の手を私の下着の中にいれた
「んぅ…！」
口からその快楽によってもたらされた喘ぎ声が漏れてくる
その声を聞いて彼は益々盛り始め―――
「ん…あぁ！」
「うわぁ…手がグチョグチョだ…」
彼にイカされ、フラフラだったが、彼は私をさせてくれた
「…お前の、甘いな」
「恥ずかしぃ…」
それどころか、手についた私の愛液を舐めとり、私に見せつけるように舐め始める
「…いいのか？」
彼が舐めながら、私の秘部に彼の半身を合わせていう
「…うん♥」
できるだけ彼に笑いかけるように心がけた
初めてで不安だし、怖いけど…彼が少しでもわたしを安心して抱く事ができるようにしたかったのだ
瞬間―――彼の半身が私の中に入ってきた
ぷつつっ、と中の膜を掻き分け、私の中に入ってくる
「―――あぁん！」
声を堪えられず、漏らしてしまう
それにさらに興奮した彼は、私の中へさらに入ってくる
一旦引いて―――また入れる
単純な動きだけど、彼を感じられて、私は胸の中から何かがこみ上げてきていた
「くっ！」
彼が声を漏らした瞬間、彼から放たれた精液が私の子宮の中にドクドク、と、入ってきた
声も出せないくらいの気持ちよさで、私はそのまま彼にもたれかかった
・・・
「…ん」
「あ、起きたか」
気がついた時には、彼が来ていたコートと彼に包まれていた
「…ぁ」
彼とした事を思い出し、私は恥ずかしくなる
「…可愛いからもっかいしていいか？」
「や、やめてよ！まだ顔恥ずかしいのと嬉しいのがごっちゃになってニヤけちゃうから！」
彼の胸板に顔を埋め、私は言う
上目遣いになりながら、彼を見る
「ねぇ…それ、とってくれない？」
「…」
彼の眼帯はまだ取られていない
―――彼の眼を見てみたい
そう思い、その思いを口にする
「あなたの全部がみたい…あなたの事を全部知りたいの」
「…嫌わないでくれるか？」
「もう嫌えないよ」
彼の精の味を知ってしまったのだ
もう、彼無しでは生きていたくない
「…わかった」
そう言って、眼帯を外すと―――
「…」
「怖いか？」
禍々しい金色をした、見ているだけで不安になるような邪眼が私を見る
「怖いけど…怖くない」
だが、不思議だ
彼の眼だと思うと―――怖くなくなる
むしろ愛しさすら覚えているのだ
「なんか…怖いはずなのに落ち着く」
「…ありがとう」
彼が抱きしめてくれたのが嬉しくて
彼の眼が綺麗なのが嬉しくて
「『私を好きになれ！』」
「もうなっとるわ」
「ふあぁん！」
彼に暗示をかけようとしたら、挿入されました♥
〜〜〜〜〜〜
幼い頃、彼女は心無い言葉によって傷ついた
幼い頃、彼は理不尽に自分のものを奪われた
それが辛くて、誰かといるのが怖くなった
それが憎くて、自分の今の体を嫌悪した
そんな彼女も、恋をした
そんな彼も、一目惚れをした
そんな彼女だから、怖かった
そんな彼だから、恐れていた
そんな二人だから、お互いの事を癒しあった
そんな二人だから、今でもお互いを支えあっている
〜〜〜〜〜〜
「レイー、もうすぐいくぞー」
「ん〜…あと5時間だけ…」
「ねーよ」
「ふぎゅっ！」
彼にチョップをされ、起こされる
「むぅ！昨日も激しく私をあんなに犯しておいて！それはひどい！」
「なら俺に暗示をかけるなって、つーかお前の暗示マジ効き目ありすぎて笑えねー」
そんな風に笑いながら彼がいうと、ドアの向こうから声がした
「おーい、二人共！朝食を早く食べるんだ！」
彼の養父、私の義父の声だ
「あ、はーいお義父さん！」
「養父さん、レイは後5時間寝るってよ」
「寝ないもん！」
―――あれから、彼と街に移ることにした
山で暮らすのも良いけど、友達のサラも街に住むことになったし、何より彼と暮らしたかったからだ
だが、昔の事があり怖くもあった
そんな私に彼とお義父さんは言ったのだ
『化物呼ばわりされたら言いなさい、直ぐにソイツを家系単位で根絶やしにするから』
彼だけならわかるが、まさかお義父さんまで言うとは思わなかった
冗談で言った街の人が思いっきりお義父さんに殴られたのは今でも覚えている
…彼も含めて、止めるのが大変だった
それから街でいろんな魔物と友達になれた
みんな、私の表情がコロコロ変わって、一つ目とか気にせず可愛いのだからと言ってくれた時には泣いてしまった
そんな事を考えながら、服を着替え、最愛の人の名前を呼ぶ
「じゃあご飯を食べに行こ！バロル！」
13/09/25 15:20更新 / ネームレス