Hunting
―――それは月夜に輝く、一筋の雷光
幼かった私は、その光に魅入られていた
本来は魔物が発する恐ろしいその光も、私には美しく…しかし怖くもあった
だから私は―――
・・・
「はぁ…はぁ…」
私は森の中を走る
暗い夜の森を、ひた走る
空には―――青い雷光
―――サンダーバード
雷を操り、人を惑わす魔物
かつてはその雷光で人々を焼き、村々を滅ぼしていたらしい
だが、今の魔物はそんな事をしない
男を惑わせ、堕落させると教団は言う
そして、最後は魔物だらけにし、世界を滅ぼそうとしているのだとも
そんな魔物に、私は追われている
「あっははー!待て待てー!」
可愛らしく言おうとも、その眼は気配は猛禽類の物で
私は彼女に捕食されそうになっている
止まって手に持つ武器―――教団で新しく支給されている最新鋭の武器―――ライフルで撃とうとするもそんな暇もない
腰には教団支給のミドルソードがあるが届くはずもない
何より、私は剣術よりライフルの腕のほうが優秀だったのだ
「そんな遅くて良いのかなぁ!?あっははー!」
そう言いながら私に雷を落としてくる
―――あたれば即快感に打ちのめされ、その場で交尾を始めてしまうだろう
私は何とか避けながら彼女が入って来辛い枝が多いゾーンに入る
「おっと!また森の中に逃げるのかい!良いねぇ!そうやって逃げ回ったところを捕まえてほしいんだね!!」
そう言いながら彼女は空から降りてこない
空は彼女の領域
その領域にいれば、彼女の勝利はほぼ絶対なのだ
だから、地上に来ない
枝が多く、入ってこないここなら落ち着いて彼女を狙撃できる
その筈が、枝の多さに彼女を捉える事も出来ない
「やはり…最初の計画通り…」
彼女が私を空から補足し、森を出る所が勝負だ!
・・・
森から出ようとする、少し開けた場所
その場所から少し上を見ると彼女が滞空していた
獲物をまだかまだかと待ち構えながら、力を―――雷を溜めている
私はその持っていたライフルで彼女に威嚇射撃を行う
「これが怖いか!怖いなら今すぐここから去るんだ!」
ライフルは今彼女がいる所を狙える
そして、威力も強いのを彼女に教えた
が、それでも彼女は…
「へん!だったら当ててみなよ!」
そう言いながら雷を落とす
「それを撃つ時には止まらないといけないのはわかってるんだ!だったらその隙を見て私は雷を撃つ!」
その言葉に偽りはない
「だったら全力で私に雷を当ててみろ!お前のそんな弱い電撃なんて私には効かないぞ!」
木に隠れながら私は言う
この挑発に乗ってくれれば―――
「へぇ…いうじゃんか」
かかった!
「何度でも言ってやる!お前の電撃なんて全く効かない、弱弱しいものだ!よくそれでこの辺りを縄張りに出来たものだ!」
「もうあったまきた!」
そう言うと、彼女は今まで以上に帯電し―――
「これ食らったら快感で動けなくなるだろうし!さらには服も吹っ飛んじゃうかもしれないけど!許してやんないんだから!」
そう言いながら、最大出力の雷が私目掛けて降って来る!
私は―――
・・・
「はぁ…はぁ…やっと仕留めたよ…」
彼女は近づいてくる
息も絶え絶えだが、その顔には勝利を確信している
「全力の雷を受けたんだ…もう動けないだろう…」
事実、動けないだろう
「さぁて、ここまで私から逃げれたのは褒めたけるけど、わたしの…「そうだな、私の勝ちだ」
そう言いながら、彼女の後ろから私は声を掛ける
当然ライフルを構えたまま、だ
「な、んで…」
「金属は電気を吸収する…君が雷を撃った瞬間に私は自分の剣を投げたんだ」
彼女は私がいると思ったほうを見やる
そこにあったのは、焦げた剣とコートだけ
「後はその衝撃を凌いで君が降りてくるのを待っただけだ」
「は、はは…」
乾いた笑いを零しながら彼女はその場にへたり込む
「全く…さっきの威嚇射撃も、挑発も…これのためなの?」
「こうでもしないと、君を捕まえられないからな」
そう言いながら、私はライフルを彼女に向け続ける
「捕まえる、か…教団お抱えの魔物ハンターかなにか?」
「そうだ」
「そう…ここで死ぬか、教団のお偉いさんの慰み者にする訳だろ…」
私は答えない
「あーぁ…そっか…早く殺しちまいなよ」
彼女は私を見やる
「ゲームはあんたの勝ちだ」
その言葉に私は―――
「そうか…ようやく…」
ライフルを投げ、彼女の元に駆け寄り―――
「へっ?」
彼女を抱きしめた
・・・
「ずっと…こうしたかった」
彼女は顔を真っ赤にしているだろうか、わからない
「あの日…5年前に君を見たあの日から…君を捕まえたかった」
「えっ、あ、ちょ…」
彼女も混乱しているだろう
殺されそうになったと思ったら、告白されているのだから
「5年前…君が始めてこの地に来た時、私は君に心奪われた」
彼女をより強く抱きしめる
「君が高く飛び、その雷光を煌かせる瞬間…私は至福の時だった」
私は言葉を続ける
「君にただ捕まり、君と交わるのでは嫌だった…君を護れ、そしてその美しさに相応しい者になりたかった」
彼女の顔を見る
「君と…添い遂げたい」
「あ、え、あ…」
彼女は顔を赤くしながら、口をパクパクさせている
「君を侮辱した事や怖がらせたことは謝る…言い訳が許されるなら、私は君を自分の手で捕まえて、君に伝えたかったんだ」
その言葉を最後に、彼女の言葉をまつ
―――少しして、彼女は言葉を紡ぐ
「わたしを捕まえたくて、その為だけに教団に入ったの?」
「その為に教団に入って、技術を学んだ」
「その為に同胞を…」
「手を掛けた振りをして逃がすのなんて簡単だったよ…奴等は君たち魔物を嫌悪しすぎてくれたからね」
「じゃあ、魔物は殺してないんだ…」
その言葉に安堵したようだ
「殺してないし、魔物を逃がす為に色々尽くしてきた…君を単独で狩る許可を得るための信頼も得るのに時間がかかってしまっていたけどね」
彼女は顔を赤くしながら、少しずつ眼がとろん、と、し始めた
「おかしいな…身体に電気が流れてきてる…嬉しすぎたからかな?」
「私なんかで…良いかい?」
その言葉への返事は―――彼女からの口付けだった
〜〜〜〜〜〜
その青年は幼い日の憧れを忘れなかった
あの美しい光の中にいた、可憐な彼女を―――
彼女を見たときに感じたのは、初恋
だが、青年は教団の教えを護ろうとした
護ろうとして、護ろうとして―――
それでも、彼女への思いの方が信仰心より勝っていた
いつか彼女と添い遂げたい
でも、ただ添い遂げたのでは彼女と自分は討伐されるかもしれない
そんな思いが、思いだけが…
彼をただ、只管に強くするきっかけだった
〜〜〜〜〜〜
あれから、彼女を討伐したと報告書を書き、直ぐに教団を辞めた
辞めてすぐに、彼女と旅を始めた
彼女とあそこで暮らすのも良いが、それだと偽の報告書がバレてしまう
だから、彼女と旅をする
「月夜の晩は…君と初めて出会った日を思い出すよ」
「へぇ〜…だったらわたし達が結ばれた日も運命だったのかもね!」
そう言いながら、私に寄り添いつつも私に電気を少しずつ流し始める彼女
「…全く、君はここでしても良いのかい?」
「貴方がいてくれるならどこでもおっけーなの!」
嬉しそうに微笑む彼女を抱きしめ…夜は更けていく
幼かった私は、その光に魅入られていた
本来は魔物が発する恐ろしいその光も、私には美しく…しかし怖くもあった
だから私は―――
・・・
「はぁ…はぁ…」
私は森の中を走る
暗い夜の森を、ひた走る
空には―――青い雷光
―――サンダーバード
雷を操り、人を惑わす魔物
かつてはその雷光で人々を焼き、村々を滅ぼしていたらしい
だが、今の魔物はそんな事をしない
男を惑わせ、堕落させると教団は言う
そして、最後は魔物だらけにし、世界を滅ぼそうとしているのだとも
そんな魔物に、私は追われている
「あっははー!待て待てー!」
可愛らしく言おうとも、その眼は気配は猛禽類の物で
私は彼女に捕食されそうになっている
止まって手に持つ武器―――教団で新しく支給されている最新鋭の武器―――ライフルで撃とうとするもそんな暇もない
腰には教団支給のミドルソードがあるが届くはずもない
何より、私は剣術よりライフルの腕のほうが優秀だったのだ
「そんな遅くて良いのかなぁ!?あっははー!」
そう言いながら私に雷を落としてくる
―――あたれば即快感に打ちのめされ、その場で交尾を始めてしまうだろう
私は何とか避けながら彼女が入って来辛い枝が多いゾーンに入る
「おっと!また森の中に逃げるのかい!良いねぇ!そうやって逃げ回ったところを捕まえてほしいんだね!!」
そう言いながら彼女は空から降りてこない
空は彼女の領域
その領域にいれば、彼女の勝利はほぼ絶対なのだ
だから、地上に来ない
枝が多く、入ってこないここなら落ち着いて彼女を狙撃できる
その筈が、枝の多さに彼女を捉える事も出来ない
「やはり…最初の計画通り…」
彼女が私を空から補足し、森を出る所が勝負だ!
・・・
森から出ようとする、少し開けた場所
その場所から少し上を見ると彼女が滞空していた
獲物をまだかまだかと待ち構えながら、力を―――雷を溜めている
私はその持っていたライフルで彼女に威嚇射撃を行う
「これが怖いか!怖いなら今すぐここから去るんだ!」
ライフルは今彼女がいる所を狙える
そして、威力も強いのを彼女に教えた
が、それでも彼女は…
「へん!だったら当ててみなよ!」
そう言いながら雷を落とす
「それを撃つ時には止まらないといけないのはわかってるんだ!だったらその隙を見て私は雷を撃つ!」
その言葉に偽りはない
「だったら全力で私に雷を当ててみろ!お前のそんな弱い電撃なんて私には効かないぞ!」
木に隠れながら私は言う
この挑発に乗ってくれれば―――
「へぇ…いうじゃんか」
かかった!
「何度でも言ってやる!お前の電撃なんて全く効かない、弱弱しいものだ!よくそれでこの辺りを縄張りに出来たものだ!」
「もうあったまきた!」
そう言うと、彼女は今まで以上に帯電し―――
「これ食らったら快感で動けなくなるだろうし!さらには服も吹っ飛んじゃうかもしれないけど!許してやんないんだから!」
そう言いながら、最大出力の雷が私目掛けて降って来る!
私は―――
・・・
「はぁ…はぁ…やっと仕留めたよ…」
彼女は近づいてくる
息も絶え絶えだが、その顔には勝利を確信している
「全力の雷を受けたんだ…もう動けないだろう…」
事実、動けないだろう
「さぁて、ここまで私から逃げれたのは褒めたけるけど、わたしの…「そうだな、私の勝ちだ」
そう言いながら、彼女の後ろから私は声を掛ける
当然ライフルを構えたまま、だ
「な、んで…」
「金属は電気を吸収する…君が雷を撃った瞬間に私は自分の剣を投げたんだ」
彼女は私がいると思ったほうを見やる
そこにあったのは、焦げた剣とコートだけ
「後はその衝撃を凌いで君が降りてくるのを待っただけだ」
「は、はは…」
乾いた笑いを零しながら彼女はその場にへたり込む
「全く…さっきの威嚇射撃も、挑発も…これのためなの?」
「こうでもしないと、君を捕まえられないからな」
そう言いながら、私はライフルを彼女に向け続ける
「捕まえる、か…教団お抱えの魔物ハンターかなにか?」
「そうだ」
「そう…ここで死ぬか、教団のお偉いさんの慰み者にする訳だろ…」
私は答えない
「あーぁ…そっか…早く殺しちまいなよ」
彼女は私を見やる
「ゲームはあんたの勝ちだ」
その言葉に私は―――
「そうか…ようやく…」
ライフルを投げ、彼女の元に駆け寄り―――
「へっ?」
彼女を抱きしめた
・・・
「ずっと…こうしたかった」
彼女は顔を真っ赤にしているだろうか、わからない
「あの日…5年前に君を見たあの日から…君を捕まえたかった」
「えっ、あ、ちょ…」
彼女も混乱しているだろう
殺されそうになったと思ったら、告白されているのだから
「5年前…君が始めてこの地に来た時、私は君に心奪われた」
彼女をより強く抱きしめる
「君が高く飛び、その雷光を煌かせる瞬間…私は至福の時だった」
私は言葉を続ける
「君にただ捕まり、君と交わるのでは嫌だった…君を護れ、そしてその美しさに相応しい者になりたかった」
彼女の顔を見る
「君と…添い遂げたい」
「あ、え、あ…」
彼女は顔を赤くしながら、口をパクパクさせている
「君を侮辱した事や怖がらせたことは謝る…言い訳が許されるなら、私は君を自分の手で捕まえて、君に伝えたかったんだ」
その言葉を最後に、彼女の言葉をまつ
―――少しして、彼女は言葉を紡ぐ
「わたしを捕まえたくて、その為だけに教団に入ったの?」
「その為に教団に入って、技術を学んだ」
「その為に同胞を…」
「手を掛けた振りをして逃がすのなんて簡単だったよ…奴等は君たち魔物を嫌悪しすぎてくれたからね」
「じゃあ、魔物は殺してないんだ…」
その言葉に安堵したようだ
「殺してないし、魔物を逃がす為に色々尽くしてきた…君を単独で狩る許可を得るための信頼も得るのに時間がかかってしまっていたけどね」
彼女は顔を赤くしながら、少しずつ眼がとろん、と、し始めた
「おかしいな…身体に電気が流れてきてる…嬉しすぎたからかな?」
「私なんかで…良いかい?」
その言葉への返事は―――彼女からの口付けだった
〜〜〜〜〜〜
その青年は幼い日の憧れを忘れなかった
あの美しい光の中にいた、可憐な彼女を―――
彼女を見たときに感じたのは、初恋
だが、青年は教団の教えを護ろうとした
護ろうとして、護ろうとして―――
それでも、彼女への思いの方が信仰心より勝っていた
いつか彼女と添い遂げたい
でも、ただ添い遂げたのでは彼女と自分は討伐されるかもしれない
そんな思いが、思いだけが…
彼をただ、只管に強くするきっかけだった
〜〜〜〜〜〜
あれから、彼女を討伐したと報告書を書き、直ぐに教団を辞めた
辞めてすぐに、彼女と旅を始めた
彼女とあそこで暮らすのも良いが、それだと偽の報告書がバレてしまう
だから、彼女と旅をする
「月夜の晩は…君と初めて出会った日を思い出すよ」
「へぇ〜…だったらわたし達が結ばれた日も運命だったのかもね!」
そう言いながら、私に寄り添いつつも私に電気を少しずつ流し始める彼女
「…全く、君はここでしても良いのかい?」
「貴方がいてくれるならどこでもおっけーなの!」
嬉しそうに微笑む彼女を抱きしめ…夜は更けていく
13/05/11 02:34更新 / ネームレス