くりすます!
朝―――
私、高月魔理沙(たかつきまりさ)は眼を覚ました
いつも通りの朝、いつも通りの生活…
だが、今日はいつもと違う
今日だけは特別なのだ
そう―――
「今日はクリスマスだぁ!」
正確には、イブなのだが
・・・
「おかーさんおはよっ!」
「おはよう魔理沙…朝から元気だねぇ〜」
「だって今日はクリスマスなんだよ!」
そう言いながら、私は朝食の準備の手伝いをする
「あ〜…そんな日もあったっけ」
「コウ…おまえ子供の前でそれは駄目だろ」
そう言いながら後ろからスーツで出てくる男性
「おとーさん!おはよっ!」
「おはよう魔理沙、今日も朝から元気だな!」
おとーさんはそう言いながら新聞を読み始める
なにが面白いのかわからない
「マサ〜新聞は飯の最中はご法度、だったよな?」
「まだご飯の前だから許してくれよ…」
「だが断る、魔理沙を見習って手伝いなさい」
いつも通りの掛け合いをしながら、おかーさんの尻に敷かれているおとーさん
…おかーさんがよく言うけど、こういうことを言うらしい
「魔理沙は偉いなぁ!これは今夜来てくれるかもな」
「ホント!?おとーさん!」
「魔理沙?油断は駄目だぞ?」
「うんおかーさん!」
今夜はそう…ついにあの人が来てくれるんだ!
「サンタさん…来るんだ!」
・・・
朝食を食べ終わって、宿題をして―――
私は出かける準備をした
「魔理沙、人前では「羽と尻尾と角は出さない、だよね?」
おかーさんから何度も言われている言葉
―――私は、人間じゃない
おかーさんも昔は人間だったが、気がついたら人間じゃなくなっていたらしい
そこから生まれた私も当然人間じゃない
御伽噺に出てくる悪魔のような見た目だった
人前に出るときには、人化の術を使わないといけない
「じゃあ、いってきまーす!」
だけど、人化の術さえ使っていれば問題ない
…本当の姿を友達に見せられないのは辛いけど、それでもそれを守っていれば友達ともいられるのだ
私は友達と待ち合わせている場所まで向かった
・・・
「あ、まりさだー!」
「待たせてごめんね!」
友達はもう集まっていた
最初に気付いてくれた亜里沙(ありさ)ちゃんと横にいる哲也(てつや)くん、それに―――
「おそいぞまりさ!」
「むぅー!まだ時間ぴったりじゃん!」
幼馴染の鈴太(りんた)、いつものメンバーがいてくれた
「まりさはギリギリすぎるぞ!」
「りんたがいっつもはやすぎるの!」
鈴太と私はいつもこんな感じでけんかになりそうになるが―――
「二人ともけんかはダメだぞ〜」
「そうだよ、今日はもりのおくのタンケンでしょ」
亜里沙ちゃんと哲也くんが私達を止めてくれる
「もりのおくに何があるのかな?」
「きっと面白いものがるんだ!みんないくぞ!」
「なんでりんたが仕切ってるの!」
「たのしみだなぁ〜」
そんな感じで、森の中に入っていった私達
―――森の中は、雪が積もっていて、中々進めない
それでも、私達は何とか進んでいこうとするが…
「これ以上はあぶないよ〜」
亜里沙ちゃんが言う
「これくらいへっちゃらだよ!」
「でもこれ以上はいってそうなんしたら…」
「テツ!こわがるなよ!」
哲也くんもこれ以上は危険だと思っている
「りんた…私も疲れてきてるから…」
「まりさもかよ…なら続きはあしたにするか」
正直いうと、私もそろそろ危ないと思ってきていた
疲れてきたし、なにより―――森の奥が見えてこないのだ
その事に恐怖心を抱き始めていた
「あしたこそこのもりをせーはしてみせるぞ!」
「そうだねりんくん〜」
そう言いながら歩いていた時だった
―――亜里沙ちゃんの方に車が突っ込もうとしているのが見えたのは
「ありさちゃん!」
「え?」
そう言って、車に気付いたときには、亜里沙ちゃんは動けず―――
「まにあえぇ!」
気がついたら私は―――
「大丈夫か!?…え?」
「ま、りさちゃ、ん?」
羽と角を―――
「ば、ばけものだぁ!」
出してしまっていた
・・・
亜里沙ちゃんを抱えて、なんとか助けたけれど、その時に人化の術が解けたらしい
角と羽が出てしまっている
その姿を見て、亜里沙ちゃんを撥ねそうになった人は私を化け物と呼んでいた
「ば、化け物め!」
そう言いながら私に怖い視線を向けてくる
「女の子を襲おうってんだな!?」
そう言って、他の大人も次々に来そうになるが―――
「こっちだまりさ!」
そう言って、私の手を引いてくれる鈴太
「テツ!」
「僕にまかせろ!」
そう言って、亜里沙ちゃんを立たせて私達に続く哲也くん
「まてぇ!」
そう言いながら私達を追いかけようとする、私を化け物と呼んだ人
けど、小さい道に入ってこれなくて―――
私は鈴太に手を引っ張られて、公園の遊具場まで来た
ここには、人が入って隠れる場所もある
「はぁ…はぁ…なんとか逃げ切れたな」
そう言いながら、私の手を握ってくれる鈴太
―――亜里沙ちゃん達は別のとこにいったようだ
「でもびっくりした…まりさに羽がはえてんだもん」
その言葉に私は心臓を鷲掴みされた気分だった
―――人前で羽を出したらいけない
おかーさんの言付けを守れなかったのだ
サンタさんも来てくれないし―――
なによりここから離れないといけなくなるかもしれない
前におかーさんとおとーさんが言っていたのだ
「お、おい?まりさ?」
気がついたら私は泣いていた
―――もうみんなと学校に行けないかもしれない
―――もう亜里沙ちゃんと一緒にお絵かきできない
―――もう哲也くんとも遊べない
―――もう、鈴太と会えない
そう思うと、気がついたら涙が止まらなくなっていた
「泣くなよまりさ…」
「ひっぐ…えぐ…」
「お、おれがなんとかするから!まりさの羽のこともだれにも言わないし…なんかあったらおれがまもってやるから!」
その言葉に、私は―――
「…ホント?」
泣きながら安心していた
「ホントだ!やくそくする!まりさはおれがまもるから!」
テレビのヒーローの真似だったか、親指を立てて私を安心させようとする鈴太に私は―――
「ありがとう…」
手を握り返すしか出来なかった
・・・
「じゃあ、まりさはホントは羽がはえてるの?」
「うん…おかーさんがじんかのじゅつって言うのを使って人に見えるようにって…」
私は鈴太に本当のことを話した
鈴太は驚きながらも私の事を聞いてくれていた
「つの、ほんものなんだ…」
「ひゃん!」
いきなり角を撫でてくる鈴太
―――なぜか鈴太に撫でられると、ドキドキする
「あ、ごめん!」
そう言って角を撫でるのをやめる鈴太
「あっ…ううん、だうじょうぶ…」
そう言って、鈴太を見る
―――いつもと違って、ドキドキしている
「そろそろ外が大丈夫か見てくるな」
そう言って、手を放そうする鈴太
「…やだ」
そう言って、私は鈴太の手を放さない
「でも、外のじょうきょうわからないだろ?」
「でもやだ…こわい…」
恐怖が私を支配する
私が我慢できるのは―――鈴太の手の暖かさのおかげだ
「わかった…いっしょにいくぞ、まりさ!」
「うん!」
そう言って、一緒に出た時だった
「見付けたぞ、化け物!」
またあの大人がいた
しかも―――
手には、刃物が握られていた
「やめろ!まりさになにもさせないからな!」
そう言いながら、私の前に立ってくれる鈴太
でも、鈴太も震えてる
「それは化け物だ!そんなのを守るなんてなんて恐ろしい子供なんだ!」
そう言って私達に刃物を向けながら向かってきて―――
「しねぇ!…ブファア!」
その大人は吹き飛んでいた
しかもそこにいたのは―――
「ほーほほぅ」
赤い服を着た、大人
後姿からでもわかる、その姿は―――
「「サンタクロース!」」
・・・
「ほーほほぅ!鈴太君はよくがんばったね」
そう言いながら私達に近づくサンタさん
「なんでおれのなまえ…」
「私はサンタクロースだよ?魔理沙ちゃんも知っているし、君も知っているさ」
そう言って私達を交互に見た
「魔理沙ちゃん…よくやったね」
「え…?」
「亜里沙ちゃんのためによくがんばったね」
そう言って私を撫でてくれるサンタさん
「鈴太君も、女の子を守って偉かった」
鈴太も撫でているサンタさん
「そして…そんな子供を傷つけようとする貴様は…」
そう言って、立ち上がった大人に物凄く冷たく言った
「許されると、思ってるのか?」
「う、うるせぇ!化け物は悪にきまっt「黙らんか貴様ぁ!」
物凄く怒っているサンタさん
「羽が生えてるから化け物?自分が子供を引きかけたのを擦り付けようとしてるのが眼に見えとるわ!」
そう言いながら、構えをとる
その構えに、私は違和感を覚える
「あれ、どこかで見た気が…」
大人がサンタさんに刃物で刺しにいき―――
そのままカウンターをされ、さらに追い討ちに二発パンチ、決めのハイキック―――
間違いなく、私は見た事があった
「りんた…」
「うん…あのサンタって…」
鈴太の方が先に気付いてた様だ
まぁ、鈴太は気付くだろう…だって…
「あれ、マイケルさんだよね?」
「うん…先生だ…」
鈴太やおとーさんが通っている総合格闘技のジムにいる、子供に教えている大人のマイケルさんだった
「そういえば先生…教会で働いてたっけ」
決定的なことを教えてくれた
・・・
「大丈夫だったかい?」
私と鈴太とマイケルさんは、教会に来ている
そこには亜里沙ちゃんと哲也くんもいた
「さっきの輩は警察にきちんと届けておいたから、安心してね魔理沙ちゃん」
そう言って、私にホットミルクを渡してくれる
「まりさちゃんぶじでよかっだぁ〜!」
泣きながら、私に抱きつく亜里沙ちゃん
「僕らだけだとむりだと思って…先生にはなしたんだ」
「テツ…ありがとうな!」
哲也くんと鈴太ははしゃいでいる
「さて…君達には話さないと、ね…」
そう言って、マイケルさんは私達を集める
「魔理沙ちゃんを見てわかる通り…彼女は人間じゃない」
マイケルさんがそう言うと、鈴太は怒って言う
「先生でもそんなこと言うな!まりさはおれたちの友だちでにんげんだ!」
「そうです!まりさちゃんはわたしをたすけてくれたもん!」
「鈴太君、亜里沙ちゃん…落ち着きなさい」
そう言って、二人を落ち着かせる
「君達が良い考えを持っているのがわかって嬉しいよ…声に出さなかったけど、私を思いっきり睨んだ哲也くんもね」
そう言って、コーヒーを一口飲む
「見た目や実際の事では…魔理沙ちゃんは少し違う人間みたいなものだ」
その言葉に私たちは頷く
「みんながみんな、君達みたいな考えを持っていればいいんだが…そうもいかない。魔理沙ちゃんや魔理沙ちゃんのお母さんのような人を怖がる人もいるんだ」
その事は、おかーさんから聞いた事があった
―――おかーさんも、昔それで住んでいた場所からいなくなったって言っていた
「だから、そんな人たちは人化の術を使って姿を変えなきゃいけないんだ…だから、魔理沙ちゃんのこと、他の人に言ってはいけないよ?」
哲也君以外頷く
「先生…まりさちゃんみたいな人はどのくらいいるんですか?」
「哲也君、なぜ聞くんだい?」
「なんか…先生がくわしいから…」
それを聞いて、私たちはハッとした
なぜマイケルさんは知っているんだろう?
「…それはね、私の妻もそうだからだよ」
「「「「えぇ!?」」」」
私たちは驚いた
「私の妻は魔理沙ちゃんとは違うが…ダークプリーストと言ってね、神に仕えているんだ」
コーヒーを飲みながら、答えるマイケルさん
「それに、実は意外と近くにいるんだよ?…例えば近くの川にはサハギンという魚みたいに泳げる人もいたしね」
「そうなんだ!よかったねまりさちゃん!」
哲也君は私に言う
「他にもいっぱいいるってことはおかしくないんだ!あの大人がへんだったんだ!」
彼は私のことを心配してくれていたのだ
「…うん!」
嬉しくて泣きそうになる
「よかったなまりさ!」
鈴太も手を繋いでくれながら喜んでくれる
「でもまりさちゃんのしんゆーはわたしだからね!」
そう言って抱きついてくれる亜里沙ちゃん
「ありがとうみんな!」
私は思わず泣いてしまった
「…さて、みんなのお母さんが来るまで、ここでゆっくりしているんだよ?」
そう言って、マイケルさんは私達にホットミルクとケーキを出してくれた
「…しんぱいすんなよ、おれがまもってやるからな!」
鈴太がそう言ってくれる
それがうれしくて―――
「ありがとう、りんた!」
ほっぺにちゅーをしてあげた
―――それでまた鈴太と少し喧嘩になったけど、鈴太が顔を真っ赤にしているがうれしかった
私、高月魔理沙(たかつきまりさ)は眼を覚ました
いつも通りの朝、いつも通りの生活…
だが、今日はいつもと違う
今日だけは特別なのだ
そう―――
「今日はクリスマスだぁ!」
正確には、イブなのだが
・・・
「おかーさんおはよっ!」
「おはよう魔理沙…朝から元気だねぇ〜」
「だって今日はクリスマスなんだよ!」
そう言いながら、私は朝食の準備の手伝いをする
「あ〜…そんな日もあったっけ」
「コウ…おまえ子供の前でそれは駄目だろ」
そう言いながら後ろからスーツで出てくる男性
「おとーさん!おはよっ!」
「おはよう魔理沙、今日も朝から元気だな!」
おとーさんはそう言いながら新聞を読み始める
なにが面白いのかわからない
「マサ〜新聞は飯の最中はご法度、だったよな?」
「まだご飯の前だから許してくれよ…」
「だが断る、魔理沙を見習って手伝いなさい」
いつも通りの掛け合いをしながら、おかーさんの尻に敷かれているおとーさん
…おかーさんがよく言うけど、こういうことを言うらしい
「魔理沙は偉いなぁ!これは今夜来てくれるかもな」
「ホント!?おとーさん!」
「魔理沙?油断は駄目だぞ?」
「うんおかーさん!」
今夜はそう…ついにあの人が来てくれるんだ!
「サンタさん…来るんだ!」
・・・
朝食を食べ終わって、宿題をして―――
私は出かける準備をした
「魔理沙、人前では「羽と尻尾と角は出さない、だよね?」
おかーさんから何度も言われている言葉
―――私は、人間じゃない
おかーさんも昔は人間だったが、気がついたら人間じゃなくなっていたらしい
そこから生まれた私も当然人間じゃない
御伽噺に出てくる悪魔のような見た目だった
人前に出るときには、人化の術を使わないといけない
「じゃあ、いってきまーす!」
だけど、人化の術さえ使っていれば問題ない
…本当の姿を友達に見せられないのは辛いけど、それでもそれを守っていれば友達ともいられるのだ
私は友達と待ち合わせている場所まで向かった
・・・
「あ、まりさだー!」
「待たせてごめんね!」
友達はもう集まっていた
最初に気付いてくれた亜里沙(ありさ)ちゃんと横にいる哲也(てつや)くん、それに―――
「おそいぞまりさ!」
「むぅー!まだ時間ぴったりじゃん!」
幼馴染の鈴太(りんた)、いつものメンバーがいてくれた
「まりさはギリギリすぎるぞ!」
「りんたがいっつもはやすぎるの!」
鈴太と私はいつもこんな感じでけんかになりそうになるが―――
「二人ともけんかはダメだぞ〜」
「そうだよ、今日はもりのおくのタンケンでしょ」
亜里沙ちゃんと哲也くんが私達を止めてくれる
「もりのおくに何があるのかな?」
「きっと面白いものがるんだ!みんないくぞ!」
「なんでりんたが仕切ってるの!」
「たのしみだなぁ〜」
そんな感じで、森の中に入っていった私達
―――森の中は、雪が積もっていて、中々進めない
それでも、私達は何とか進んでいこうとするが…
「これ以上はあぶないよ〜」
亜里沙ちゃんが言う
「これくらいへっちゃらだよ!」
「でもこれ以上はいってそうなんしたら…」
「テツ!こわがるなよ!」
哲也くんもこれ以上は危険だと思っている
「りんた…私も疲れてきてるから…」
「まりさもかよ…なら続きはあしたにするか」
正直いうと、私もそろそろ危ないと思ってきていた
疲れてきたし、なにより―――森の奥が見えてこないのだ
その事に恐怖心を抱き始めていた
「あしたこそこのもりをせーはしてみせるぞ!」
「そうだねりんくん〜」
そう言いながら歩いていた時だった
―――亜里沙ちゃんの方に車が突っ込もうとしているのが見えたのは
「ありさちゃん!」
「え?」
そう言って、車に気付いたときには、亜里沙ちゃんは動けず―――
「まにあえぇ!」
気がついたら私は―――
「大丈夫か!?…え?」
「ま、りさちゃ、ん?」
羽と角を―――
「ば、ばけものだぁ!」
出してしまっていた
・・・
亜里沙ちゃんを抱えて、なんとか助けたけれど、その時に人化の術が解けたらしい
角と羽が出てしまっている
その姿を見て、亜里沙ちゃんを撥ねそうになった人は私を化け物と呼んでいた
「ば、化け物め!」
そう言いながら私に怖い視線を向けてくる
「女の子を襲おうってんだな!?」
そう言って、他の大人も次々に来そうになるが―――
「こっちだまりさ!」
そう言って、私の手を引いてくれる鈴太
「テツ!」
「僕にまかせろ!」
そう言って、亜里沙ちゃんを立たせて私達に続く哲也くん
「まてぇ!」
そう言いながら私達を追いかけようとする、私を化け物と呼んだ人
けど、小さい道に入ってこれなくて―――
私は鈴太に手を引っ張られて、公園の遊具場まで来た
ここには、人が入って隠れる場所もある
「はぁ…はぁ…なんとか逃げ切れたな」
そう言いながら、私の手を握ってくれる鈴太
―――亜里沙ちゃん達は別のとこにいったようだ
「でもびっくりした…まりさに羽がはえてんだもん」
その言葉に私は心臓を鷲掴みされた気分だった
―――人前で羽を出したらいけない
おかーさんの言付けを守れなかったのだ
サンタさんも来てくれないし―――
なによりここから離れないといけなくなるかもしれない
前におかーさんとおとーさんが言っていたのだ
「お、おい?まりさ?」
気がついたら私は泣いていた
―――もうみんなと学校に行けないかもしれない
―――もう亜里沙ちゃんと一緒にお絵かきできない
―――もう哲也くんとも遊べない
―――もう、鈴太と会えない
そう思うと、気がついたら涙が止まらなくなっていた
「泣くなよまりさ…」
「ひっぐ…えぐ…」
「お、おれがなんとかするから!まりさの羽のこともだれにも言わないし…なんかあったらおれがまもってやるから!」
その言葉に、私は―――
「…ホント?」
泣きながら安心していた
「ホントだ!やくそくする!まりさはおれがまもるから!」
テレビのヒーローの真似だったか、親指を立てて私を安心させようとする鈴太に私は―――
「ありがとう…」
手を握り返すしか出来なかった
・・・
「じゃあ、まりさはホントは羽がはえてるの?」
「うん…おかーさんがじんかのじゅつって言うのを使って人に見えるようにって…」
私は鈴太に本当のことを話した
鈴太は驚きながらも私の事を聞いてくれていた
「つの、ほんものなんだ…」
「ひゃん!」
いきなり角を撫でてくる鈴太
―――なぜか鈴太に撫でられると、ドキドキする
「あ、ごめん!」
そう言って角を撫でるのをやめる鈴太
「あっ…ううん、だうじょうぶ…」
そう言って、鈴太を見る
―――いつもと違って、ドキドキしている
「そろそろ外が大丈夫か見てくるな」
そう言って、手を放そうする鈴太
「…やだ」
そう言って、私は鈴太の手を放さない
「でも、外のじょうきょうわからないだろ?」
「でもやだ…こわい…」
恐怖が私を支配する
私が我慢できるのは―――鈴太の手の暖かさのおかげだ
「わかった…いっしょにいくぞ、まりさ!」
「うん!」
そう言って、一緒に出た時だった
「見付けたぞ、化け物!」
またあの大人がいた
しかも―――
手には、刃物が握られていた
「やめろ!まりさになにもさせないからな!」
そう言いながら、私の前に立ってくれる鈴太
でも、鈴太も震えてる
「それは化け物だ!そんなのを守るなんてなんて恐ろしい子供なんだ!」
そう言って私達に刃物を向けながら向かってきて―――
「しねぇ!…ブファア!」
その大人は吹き飛んでいた
しかもそこにいたのは―――
「ほーほほぅ」
赤い服を着た、大人
後姿からでもわかる、その姿は―――
「「サンタクロース!」」
・・・
「ほーほほぅ!鈴太君はよくがんばったね」
そう言いながら私達に近づくサンタさん
「なんでおれのなまえ…」
「私はサンタクロースだよ?魔理沙ちゃんも知っているし、君も知っているさ」
そう言って私達を交互に見た
「魔理沙ちゃん…よくやったね」
「え…?」
「亜里沙ちゃんのためによくがんばったね」
そう言って私を撫でてくれるサンタさん
「鈴太君も、女の子を守って偉かった」
鈴太も撫でているサンタさん
「そして…そんな子供を傷つけようとする貴様は…」
そう言って、立ち上がった大人に物凄く冷たく言った
「許されると、思ってるのか?」
「う、うるせぇ!化け物は悪にきまっt「黙らんか貴様ぁ!」
物凄く怒っているサンタさん
「羽が生えてるから化け物?自分が子供を引きかけたのを擦り付けようとしてるのが眼に見えとるわ!」
そう言いながら、構えをとる
その構えに、私は違和感を覚える
「あれ、どこかで見た気が…」
大人がサンタさんに刃物で刺しにいき―――
そのままカウンターをされ、さらに追い討ちに二発パンチ、決めのハイキック―――
間違いなく、私は見た事があった
「りんた…」
「うん…あのサンタって…」
鈴太の方が先に気付いてた様だ
まぁ、鈴太は気付くだろう…だって…
「あれ、マイケルさんだよね?」
「うん…先生だ…」
鈴太やおとーさんが通っている総合格闘技のジムにいる、子供に教えている大人のマイケルさんだった
「そういえば先生…教会で働いてたっけ」
決定的なことを教えてくれた
・・・
「大丈夫だったかい?」
私と鈴太とマイケルさんは、教会に来ている
そこには亜里沙ちゃんと哲也くんもいた
「さっきの輩は警察にきちんと届けておいたから、安心してね魔理沙ちゃん」
そう言って、私にホットミルクを渡してくれる
「まりさちゃんぶじでよかっだぁ〜!」
泣きながら、私に抱きつく亜里沙ちゃん
「僕らだけだとむりだと思って…先生にはなしたんだ」
「テツ…ありがとうな!」
哲也くんと鈴太ははしゃいでいる
「さて…君達には話さないと、ね…」
そう言って、マイケルさんは私達を集める
「魔理沙ちゃんを見てわかる通り…彼女は人間じゃない」
マイケルさんがそう言うと、鈴太は怒って言う
「先生でもそんなこと言うな!まりさはおれたちの友だちでにんげんだ!」
「そうです!まりさちゃんはわたしをたすけてくれたもん!」
「鈴太君、亜里沙ちゃん…落ち着きなさい」
そう言って、二人を落ち着かせる
「君達が良い考えを持っているのがわかって嬉しいよ…声に出さなかったけど、私を思いっきり睨んだ哲也くんもね」
そう言って、コーヒーを一口飲む
「見た目や実際の事では…魔理沙ちゃんは少し違う人間みたいなものだ」
その言葉に私たちは頷く
「みんながみんな、君達みたいな考えを持っていればいいんだが…そうもいかない。魔理沙ちゃんや魔理沙ちゃんのお母さんのような人を怖がる人もいるんだ」
その事は、おかーさんから聞いた事があった
―――おかーさんも、昔それで住んでいた場所からいなくなったって言っていた
「だから、そんな人たちは人化の術を使って姿を変えなきゃいけないんだ…だから、魔理沙ちゃんのこと、他の人に言ってはいけないよ?」
哲也君以外頷く
「先生…まりさちゃんみたいな人はどのくらいいるんですか?」
「哲也君、なぜ聞くんだい?」
「なんか…先生がくわしいから…」
それを聞いて、私たちはハッとした
なぜマイケルさんは知っているんだろう?
「…それはね、私の妻もそうだからだよ」
「「「「えぇ!?」」」」
私たちは驚いた
「私の妻は魔理沙ちゃんとは違うが…ダークプリーストと言ってね、神に仕えているんだ」
コーヒーを飲みながら、答えるマイケルさん
「それに、実は意外と近くにいるんだよ?…例えば近くの川にはサハギンという魚みたいに泳げる人もいたしね」
「そうなんだ!よかったねまりさちゃん!」
哲也君は私に言う
「他にもいっぱいいるってことはおかしくないんだ!あの大人がへんだったんだ!」
彼は私のことを心配してくれていたのだ
「…うん!」
嬉しくて泣きそうになる
「よかったなまりさ!」
鈴太も手を繋いでくれながら喜んでくれる
「でもまりさちゃんのしんゆーはわたしだからね!」
そう言って抱きついてくれる亜里沙ちゃん
「ありがとうみんな!」
私は思わず泣いてしまった
「…さて、みんなのお母さんが来るまで、ここでゆっくりしているんだよ?」
そう言って、マイケルさんは私達にホットミルクとケーキを出してくれた
「…しんぱいすんなよ、おれがまもってやるからな!」
鈴太がそう言ってくれる
それがうれしくて―――
「ありがとう、りんた!」
ほっぺにちゅーをしてあげた
―――それでまた鈴太と少し喧嘩になったけど、鈴太が顔を真っ赤にしているがうれしかった
12/12/25 00:47更新 / ネームレス