かつて神に裏切られた聖職者
「ん…はぁ!?」
私たちは愛し合う
かつての苦しみを埋めるように
「サエナ…サエナ!?」
「あぁん!?いつでも!?きて!?」
彼は私の中で果てる
それが堪らなく愛おしい
―――本当なら、このあたたかすら、二度と味わえなかっただろうに
「…サエナ」
「ヴェルグ…すきぃ」
・・・
私の夜の食事の後、私は彼に甘える
「…サエナ、大丈夫か?」
「まぁ、一応はね…」
私は彼の胸に抱かれながら答える
彼は優しい
昔の、私のトラウマをいつも気づかってくれる
「…いまでも思っちまうよ。あの時、俺がしっかりしてれば」
「それは言わない約束よ?…あれがなかったら、私達一緒になれなかったかもしれないじゃない。そっちのほうが私は」
私は言葉に詰まる
彼に私の震えが伝わってしまう
「…心配すんな。俺は二度とお前を離さない」
彼が私を抱きしめてくれる
―――あぁ、このあたたかさだ
私が私でいられる場所
ここにいられる、それだけで私は―――
「ありがとう♪」
私は、かつての悪夢と向き合える
・・・
私達は、元々教団の信者だった
教団で、聖書について学んでいた
もっとも、学んでいたのは私だけで、ヴェルグは騎士として戦っていたが
私は聖書について学びながら、ある疑問が沸き始めていた
教団では、魔物は悪で敵としているが、聖書にはそんな考え全くない
一体、この考え自体どこから来たのだろうか…
そう思い、私は司教様にその事を相談しに行った
それが、間違いだなんて、思わなかったから…
「司教様、失礼します」
「…どうしました?シスターサエナ」
司教様はいつも通り、優しい微笑を浮かべながら、私の疑問を聞いてくれていた
だが、聞いてくうちにどんどん険しい顔になっていくのが解ってしまった
「貴女は…残念です、シスターサエナ」
そう言うと、司教様は突然何人かの騎士を呼び出し、彼らに言った
「シスターをあの部屋へ」
そう告げられ、私は突然拘束された
「イヤ!司教様、これはどういうことですか!?」
「貴女は知ってはいけないところまで来てしまったのですよ…」
そうして、私はあの部屋に連れて行かれた…
・・・
「サエナ、また思い出していたのか…」
ふと、彼の声がした
「…やっぱり、思い出してしまうのよね」
そう告げると、彼の顔が曇ってしまう
本当に、なぜあんな事を思い出さないといけないのだろう
司教達に、輪姦された記憶なんか
〜〜〜〜〜〜
そう、真実に近づいた私に待っていたのは、司教含む一部の教団騎士や貴族からの輪姦だった
真実に近づいたから、処刑してしまわないといけない
だけど、その前に少しでも鬱憤を晴らしておきたい
そんな、最低な考えによって、私は何日も汚され続けていた
そんな日が続いた中、突然処刑の日程を言われた
私にとって、それは救いだった
彼、ヴェルグに捧げるつもりだった純潔も、この汚らしい男どもに汚され、挙句二度と彼に会えないのだ
私には、どうでもよかった
〜〜〜〜〜〜
「いつも思っちまうよ。あの時俺がいたら、ってよ…」
「確かに、ヴェルグがいたら違ったかもしれないわね」
ベットで横になりながら、彼に抱きつき私は告げる
「でも、今みたいに結ばれなかったかもしれない。私は、その方が怖いわ」
そう言いながら、彼に口付けをする
「貴方は、今のこの状態後悔してる?」
「…お前を魔物にしちまったせいで息子が生まれない事以外後悔はねぇ、な」
「息子と娘の子供二人、が私達の理想だったものね…」
私達の間に、心地よい沈黙が流れる
私は、また記憶の渦の中に思考を移した
・・・
私が処刑される前日位だっただろうか
その頃には私は公には魔物のスパイということで処刑されることになっていた
それから牢屋に移されたが、ここの方がまだマシだった
ここなら汚されることもない
ここなら、ヴェルグの話が聞ける
それに、私はどうやっても彼に顔を向けられないのだから
そんな時だった
『ここで死んでしまって、いいのですか?』
ふと、誰かの声がした
『貴方は、死んでしまっていいのですか?』
「…死にたくない。でも!」
私は、汚れてしまったのだ
彼に、ヴェルグに捧げる純潔も…
『私は、貴女が望むなら助けられます』
「え?」
『私は…貴女達風に言うなら、堕落神の一柱です』
その声は、優しく、私に語りかけてくれた
そして、真実を教えてくれた
魔物は人間を食べない事
人間との共存を考えてること
しかし魔物からはメスしか生まれないので、それをどうにかしようとする魔王の頑張り
様々な事実を教えてくれた
『そして、貴女の身の潔白を知り、憤怒して戦っている勇敢な騎士もいるのですよ?』
私は驚愕した
そんな人は、一人しか浮かばない
「ヴェルグ…」
『彼は真実を知り、貴方を取り戻そうと、命が消えかかってます』
「そんな…堕落神様!ヴェルグを、ヴェルグを助けることは出来ませんか!?」
堕落神は押し黙り、一つだけ、と言った
『一つだけ、あります。…ですが、その為に貴女は魔物にならなければならない』
堕落神が言うには、現在奇跡を起こす為の力が足りないので、眷属を増やさないといけないらしい
だが、それは同時に人間をやめなければならない
『どうします?それでも、彼を助けたいですか?』
彼は本当に私の事を案じているのだろう
それが嬉しいのと同時に―――
「ヴェルグを、私の愛する彼を助けたい!」
―――彼を助けるのに、迷いなんてなかった
・・・
「サエナがスパイ!?そんな訳あるか!!」
任務から戻った俺がたった今聞いた報告が信じられなかった
「それが…明日処刑との事で…」
部下も困惑している、当然だ
サエナの信仰心の高さは、ここを治める司教の何十倍もあるのだ
それに、あんなに真面目で裏表ないサエナがスパイな訳がない
「司教に聞いてくる!」
「た、隊長!まってください!」
部下が止めるが、知ったことではない
将来を誓った女が処刑されるんだ
と、司教の部屋に近づくにつれ、声が聞こえてきた
「にしても、シスターサエナは残念でしたな」
「本当、真実に近づかなければ無事結婚も出来たでしょうに」
「に、しても…あれは中々の名器でしたなぁ」
「あれなら、秘密裏に生かして私達の玩具にしてもいいでしょう」
俺に聞こえてきたのは、下卑た下話
そして―――
「キサマラァァァァァァ!!」
俺の愛する人を、愚弄する、許しがたい会話
「っ!貴様、ヴェルグ!」
「サエナを、俺の女をぉぉぉぉ!」
俺は持っていたハルバートでこいつらに斬りかかる
この後処刑されようが関係ない
俺は脳みそをぶちまけてやるつもりで振り下ろした
「脳筋が!」
が、俺は拘束魔法を使われ、動きを封じられた
「全く…一介の騎士如きが、我々に歯向かうな!」
俺は殴られるが構わない
「あぁ…そういえばシスターサエナの婚約者だったなぁ」
「貴様ら…」
「あれは中々…気持ちよかったぞ」
ハッハッハッハッ、と下卑た笑みを浮かべる司教ども
「貴様らだけは…」
俺は力を込める
こいつらだけは…
俺の命に代えてでも…
「絶対に!殺す!」
「な!魔法を筋力だけで解除だと!?」
俺は拘束魔法を振り千切り、ハルバートでこいつらを殺そうとす
「えぇい!反乱だ!反逆者がでたぞ!」
そう言いながら、奴らお抱えの騎士団を俺にぶつけて来る
「邪魔するなら…てめぇらも道連れだぁ!」
俺は武器を構え、こいつらと応戦した
・・・
「じゃま、だぁ!」
これで、八割を片付けただろう
体中が痛むし、毒も食らっているのだろう
だが、俺は歩みを止めない
止めるわけには、いかない
愛する人を、汚され、けなされ、貶められ
それで引いてしまったら、俺はどうすればいいのだ?
サエナの誇りは、どうなってしまうのだ?
だから俺は歩みを止めない
周りからどう見えようが知らない
俺には、サエナが、あいつの笑顔が全てだから
「あ、悪鬼だぁ!」
向こうの一人がそう言い始めた
他の連中も、そう思っているだろう
「えぇい!怯むな!?もう虫の息だろうが!」
が後ろで見ていた司教には俺の状態がわかっていたようだ
その声に、騎士たちもまた剣を向けてくる
「まだ、そんな事をしているのですか?」
と、後ろから俺が誰よりも聞きたい声が聞こえてきた
・・・
私は目の前を見る
前には私の無実の為に戦ってくれた、私の大切な人が立っている
「ヴェルグ…」
不意にこぼれてしまう、愛しい人の名前
「シ、シスターサエナ!?ば、バカな!」
「司教様、お久しぶりですね…」
司教や、ヴェルグに敵対する騎士たちを睨み付けながら私は言う
ここに居る、全員が私を…
「サエナ…」
「ヴェルグ」
私を呼んでくれる、愛しい人の声
「ここに居る全員か?」
何のことか、最初はわからなかった
だが、気付いてしまった
彼に知られてしまったことを
「…ここにいる奴ら、なんだな」
私は声が出せずにいた
「…わかった」
と、彼は武器を構えなおし、敵に告げる
「てめぇら全員…地獄すら生ぬるい!!」
彼がそう言うと、再び戦おうとしていた
「ま、まぁいい!二人とも処刑してしまえ!」
と、司教が命令をだした時だった
「全員、隊長たちを守れぇ!」
「「「「「うおぉぉぉぉぉ!!!」」」」」
後ろから聞こえてくる、物凄い足音たち
彼の、ヴェルグの部下達だった
「シスターサエナの誇りと、隊長の名誉の為に、いっくぞぉ!」
「「「「「うおぉぉぉぉぉ!!!」」」」」
と、司教の部下達が蹂躙されていく
それはまるで、大人と子供の差のようだった
もはや勝負などではなく、蹂躙
戦闘ではなく、一方的な攻撃
この街が誇る最強の騎士団の、圧勝だった
「隊長!司教を確保しました!」
「お前ら、一体…」
「サエナさんに言ってくださいよ。俺らサエナさんの指示通り突入しただけですし」
と、彼らが私をみる
―――そう
私が、彼らに頼んだのだ
ダークプリーストになって、私は先ずヴェルグの部下の人達に会って助けを求めた
彼らは私の事を信じてくれて、更にはヴェルグを助ける為に協力してくれたのだ
「流石に私だけだと、ヴェルグ助けられるかわからなかったし、ね」
と、彼に近づき、彼の怪我を治す
私が得意だった、神聖魔法で
「サエナ、お前…」
「魔物だから悪、って言う事はこれで無くなるでしょうね」
と、神聖魔法を彼にかけ続ける
「なにが、悪ではないだ!貴様は私達に腰をふってい…」
と司教が私を罵ろうとしたが、それは続かなかった
彼の部下が、気絶させたのだ
「お前ら…どけ。殺せん」
「ヴェルグ、司教にはまだ利用価値があるわ。…あと少しだけ」
そう彼に告げて、私は作戦を彼に利用方法を話した
〜〜〜
さて、ご存知だろうか
教団のある司教が職権乱用をしていた事実
あるシスターが勇気をだして、その街でその事を告白してくれた
彼女はとても人望があった為だろう
その司教は罪に問われ、その街は反魔物領から一転、新魔物領に変わったのだ
そのシスターの名誉を守る為、その街一番の騎士団も一役買っていたとの事だ
〜〜〜
「さて、と…」
と、私は彼の胸の中で言う
「そういえば新しくきた二人いたでしょ?」
ヴェルグに私は聞く
「あぁ…皆が影騎士って怖がってたあの坊主とその連れだろ?」
「何で、あの子たちを信用してあげたの?」
解っていても聞きたくなるのが乙女心
私はあえてヴェルグに聞いてみた
「あの坊主、俺と同じ目をしてたと思ってな」
と、遠くを見るように彼は呟く
「お前が居なくなるとわかった時、俺は命なんざいらない、お前が必要だってわかってよ。…あいつも同じような気がして、な」
と、私を見つめる
それが恥ずかしくなって、私は彼にキスをする
「…誤魔化すなよ」
「貴方が魅力的なのが悪いんでしょ///」
と、彼が私を抱き締めてくれる
このあたたかささえあれば、私は生きていられる
「っと、後一つ」
「ん?」
「なーんーで、他の女の人に声をかけるのかしらねぇ…」
「それは、その…」
と、彼はバツが悪そうな顔をしながら言う
「…お前のその嫉妬した顔が見たくて…」
「でもダメだっていってるでしょ!!明日から万魔殿にヒキるわよ!」
そう彼に告げると彼は狼狽する
「ま、待て!確かにそれはある意味嬉しいが仕事が…」
「問答無用!」
これからも彼と、こんな幸せな日々が続くことを願って
「行くわよ、ヴェルグ♪」
私たちは愛し合う
かつての苦しみを埋めるように
「サエナ…サエナ!?」
「あぁん!?いつでも!?きて!?」
彼は私の中で果てる
それが堪らなく愛おしい
―――本当なら、このあたたかすら、二度と味わえなかっただろうに
「…サエナ」
「ヴェルグ…すきぃ」
・・・
私の夜の食事の後、私は彼に甘える
「…サエナ、大丈夫か?」
「まぁ、一応はね…」
私は彼の胸に抱かれながら答える
彼は優しい
昔の、私のトラウマをいつも気づかってくれる
「…いまでも思っちまうよ。あの時、俺がしっかりしてれば」
「それは言わない約束よ?…あれがなかったら、私達一緒になれなかったかもしれないじゃない。そっちのほうが私は」
私は言葉に詰まる
彼に私の震えが伝わってしまう
「…心配すんな。俺は二度とお前を離さない」
彼が私を抱きしめてくれる
―――あぁ、このあたたかさだ
私が私でいられる場所
ここにいられる、それだけで私は―――
「ありがとう♪」
私は、かつての悪夢と向き合える
・・・
私達は、元々教団の信者だった
教団で、聖書について学んでいた
もっとも、学んでいたのは私だけで、ヴェルグは騎士として戦っていたが
私は聖書について学びながら、ある疑問が沸き始めていた
教団では、魔物は悪で敵としているが、聖書にはそんな考え全くない
一体、この考え自体どこから来たのだろうか…
そう思い、私は司教様にその事を相談しに行った
それが、間違いだなんて、思わなかったから…
「司教様、失礼します」
「…どうしました?シスターサエナ」
司教様はいつも通り、優しい微笑を浮かべながら、私の疑問を聞いてくれていた
だが、聞いてくうちにどんどん険しい顔になっていくのが解ってしまった
「貴女は…残念です、シスターサエナ」
そう言うと、司教様は突然何人かの騎士を呼び出し、彼らに言った
「シスターをあの部屋へ」
そう告げられ、私は突然拘束された
「イヤ!司教様、これはどういうことですか!?」
「貴女は知ってはいけないところまで来てしまったのですよ…」
そうして、私はあの部屋に連れて行かれた…
・・・
「サエナ、また思い出していたのか…」
ふと、彼の声がした
「…やっぱり、思い出してしまうのよね」
そう告げると、彼の顔が曇ってしまう
本当に、なぜあんな事を思い出さないといけないのだろう
司教達に、輪姦された記憶なんか
〜〜〜〜〜〜
そう、真実に近づいた私に待っていたのは、司教含む一部の教団騎士や貴族からの輪姦だった
真実に近づいたから、処刑してしまわないといけない
だけど、その前に少しでも鬱憤を晴らしておきたい
そんな、最低な考えによって、私は何日も汚され続けていた
そんな日が続いた中、突然処刑の日程を言われた
私にとって、それは救いだった
彼、ヴェルグに捧げるつもりだった純潔も、この汚らしい男どもに汚され、挙句二度と彼に会えないのだ
私には、どうでもよかった
〜〜〜〜〜〜
「いつも思っちまうよ。あの時俺がいたら、ってよ…」
「確かに、ヴェルグがいたら違ったかもしれないわね」
ベットで横になりながら、彼に抱きつき私は告げる
「でも、今みたいに結ばれなかったかもしれない。私は、その方が怖いわ」
そう言いながら、彼に口付けをする
「貴方は、今のこの状態後悔してる?」
「…お前を魔物にしちまったせいで息子が生まれない事以外後悔はねぇ、な」
「息子と娘の子供二人、が私達の理想だったものね…」
私達の間に、心地よい沈黙が流れる
私は、また記憶の渦の中に思考を移した
・・・
私が処刑される前日位だっただろうか
その頃には私は公には魔物のスパイということで処刑されることになっていた
それから牢屋に移されたが、ここの方がまだマシだった
ここなら汚されることもない
ここなら、ヴェルグの話が聞ける
それに、私はどうやっても彼に顔を向けられないのだから
そんな時だった
『ここで死んでしまって、いいのですか?』
ふと、誰かの声がした
『貴方は、死んでしまっていいのですか?』
「…死にたくない。でも!」
私は、汚れてしまったのだ
彼に、ヴェルグに捧げる純潔も…
『私は、貴女が望むなら助けられます』
「え?」
『私は…貴女達風に言うなら、堕落神の一柱です』
その声は、優しく、私に語りかけてくれた
そして、真実を教えてくれた
魔物は人間を食べない事
人間との共存を考えてること
しかし魔物からはメスしか生まれないので、それをどうにかしようとする魔王の頑張り
様々な事実を教えてくれた
『そして、貴女の身の潔白を知り、憤怒して戦っている勇敢な騎士もいるのですよ?』
私は驚愕した
そんな人は、一人しか浮かばない
「ヴェルグ…」
『彼は真実を知り、貴方を取り戻そうと、命が消えかかってます』
「そんな…堕落神様!ヴェルグを、ヴェルグを助けることは出来ませんか!?」
堕落神は押し黙り、一つだけ、と言った
『一つだけ、あります。…ですが、その為に貴女は魔物にならなければならない』
堕落神が言うには、現在奇跡を起こす為の力が足りないので、眷属を増やさないといけないらしい
だが、それは同時に人間をやめなければならない
『どうします?それでも、彼を助けたいですか?』
彼は本当に私の事を案じているのだろう
それが嬉しいのと同時に―――
「ヴェルグを、私の愛する彼を助けたい!」
―――彼を助けるのに、迷いなんてなかった
・・・
「サエナがスパイ!?そんな訳あるか!!」
任務から戻った俺がたった今聞いた報告が信じられなかった
「それが…明日処刑との事で…」
部下も困惑している、当然だ
サエナの信仰心の高さは、ここを治める司教の何十倍もあるのだ
それに、あんなに真面目で裏表ないサエナがスパイな訳がない
「司教に聞いてくる!」
「た、隊長!まってください!」
部下が止めるが、知ったことではない
将来を誓った女が処刑されるんだ
と、司教の部屋に近づくにつれ、声が聞こえてきた
「にしても、シスターサエナは残念でしたな」
「本当、真実に近づかなければ無事結婚も出来たでしょうに」
「に、しても…あれは中々の名器でしたなぁ」
「あれなら、秘密裏に生かして私達の玩具にしてもいいでしょう」
俺に聞こえてきたのは、下卑た下話
そして―――
「キサマラァァァァァァ!!」
俺の愛する人を、愚弄する、許しがたい会話
「っ!貴様、ヴェルグ!」
「サエナを、俺の女をぉぉぉぉ!」
俺は持っていたハルバートでこいつらに斬りかかる
この後処刑されようが関係ない
俺は脳みそをぶちまけてやるつもりで振り下ろした
「脳筋が!」
が、俺は拘束魔法を使われ、動きを封じられた
「全く…一介の騎士如きが、我々に歯向かうな!」
俺は殴られるが構わない
「あぁ…そういえばシスターサエナの婚約者だったなぁ」
「貴様ら…」
「あれは中々…気持ちよかったぞ」
ハッハッハッハッ、と下卑た笑みを浮かべる司教ども
「貴様らだけは…」
俺は力を込める
こいつらだけは…
俺の命に代えてでも…
「絶対に!殺す!」
「な!魔法を筋力だけで解除だと!?」
俺は拘束魔法を振り千切り、ハルバートでこいつらを殺そうとす
「えぇい!反乱だ!反逆者がでたぞ!」
そう言いながら、奴らお抱えの騎士団を俺にぶつけて来る
「邪魔するなら…てめぇらも道連れだぁ!」
俺は武器を構え、こいつらと応戦した
・・・
「じゃま、だぁ!」
これで、八割を片付けただろう
体中が痛むし、毒も食らっているのだろう
だが、俺は歩みを止めない
止めるわけには、いかない
愛する人を、汚され、けなされ、貶められ
それで引いてしまったら、俺はどうすればいいのだ?
サエナの誇りは、どうなってしまうのだ?
だから俺は歩みを止めない
周りからどう見えようが知らない
俺には、サエナが、あいつの笑顔が全てだから
「あ、悪鬼だぁ!」
向こうの一人がそう言い始めた
他の連中も、そう思っているだろう
「えぇい!怯むな!?もう虫の息だろうが!」
が後ろで見ていた司教には俺の状態がわかっていたようだ
その声に、騎士たちもまた剣を向けてくる
「まだ、そんな事をしているのですか?」
と、後ろから俺が誰よりも聞きたい声が聞こえてきた
・・・
私は目の前を見る
前には私の無実の為に戦ってくれた、私の大切な人が立っている
「ヴェルグ…」
不意にこぼれてしまう、愛しい人の名前
「シ、シスターサエナ!?ば、バカな!」
「司教様、お久しぶりですね…」
司教や、ヴェルグに敵対する騎士たちを睨み付けながら私は言う
ここに居る、全員が私を…
「サエナ…」
「ヴェルグ」
私を呼んでくれる、愛しい人の声
「ここに居る全員か?」
何のことか、最初はわからなかった
だが、気付いてしまった
彼に知られてしまったことを
「…ここにいる奴ら、なんだな」
私は声が出せずにいた
「…わかった」
と、彼は武器を構えなおし、敵に告げる
「てめぇら全員…地獄すら生ぬるい!!」
彼がそう言うと、再び戦おうとしていた
「ま、まぁいい!二人とも処刑してしまえ!」
と、司教が命令をだした時だった
「全員、隊長たちを守れぇ!」
「「「「「うおぉぉぉぉぉ!!!」」」」」
後ろから聞こえてくる、物凄い足音たち
彼の、ヴェルグの部下達だった
「シスターサエナの誇りと、隊長の名誉の為に、いっくぞぉ!」
「「「「「うおぉぉぉぉぉ!!!」」」」」
と、司教の部下達が蹂躙されていく
それはまるで、大人と子供の差のようだった
もはや勝負などではなく、蹂躙
戦闘ではなく、一方的な攻撃
この街が誇る最強の騎士団の、圧勝だった
「隊長!司教を確保しました!」
「お前ら、一体…」
「サエナさんに言ってくださいよ。俺らサエナさんの指示通り突入しただけですし」
と、彼らが私をみる
―――そう
私が、彼らに頼んだのだ
ダークプリーストになって、私は先ずヴェルグの部下の人達に会って助けを求めた
彼らは私の事を信じてくれて、更にはヴェルグを助ける為に協力してくれたのだ
「流石に私だけだと、ヴェルグ助けられるかわからなかったし、ね」
と、彼に近づき、彼の怪我を治す
私が得意だった、神聖魔法で
「サエナ、お前…」
「魔物だから悪、って言う事はこれで無くなるでしょうね」
と、神聖魔法を彼にかけ続ける
「なにが、悪ではないだ!貴様は私達に腰をふってい…」
と司教が私を罵ろうとしたが、それは続かなかった
彼の部下が、気絶させたのだ
「お前ら…どけ。殺せん」
「ヴェルグ、司教にはまだ利用価値があるわ。…あと少しだけ」
そう彼に告げて、私は作戦を彼に利用方法を話した
〜〜〜
さて、ご存知だろうか
教団のある司教が職権乱用をしていた事実
あるシスターが勇気をだして、その街でその事を告白してくれた
彼女はとても人望があった為だろう
その司教は罪に問われ、その街は反魔物領から一転、新魔物領に変わったのだ
そのシスターの名誉を守る為、その街一番の騎士団も一役買っていたとの事だ
〜〜〜
「さて、と…」
と、私は彼の胸の中で言う
「そういえば新しくきた二人いたでしょ?」
ヴェルグに私は聞く
「あぁ…皆が影騎士って怖がってたあの坊主とその連れだろ?」
「何で、あの子たちを信用してあげたの?」
解っていても聞きたくなるのが乙女心
私はあえてヴェルグに聞いてみた
「あの坊主、俺と同じ目をしてたと思ってな」
と、遠くを見るように彼は呟く
「お前が居なくなるとわかった時、俺は命なんざいらない、お前が必要だってわかってよ。…あいつも同じような気がして、な」
と、私を見つめる
それが恥ずかしくなって、私は彼にキスをする
「…誤魔化すなよ」
「貴方が魅力的なのが悪いんでしょ///」
と、彼が私を抱き締めてくれる
このあたたかささえあれば、私は生きていられる
「っと、後一つ」
「ん?」
「なーんーで、他の女の人に声をかけるのかしらねぇ…」
「それは、その…」
と、彼はバツが悪そうな顔をしながら言う
「…お前のその嫉妬した顔が見たくて…」
「でもダメだっていってるでしょ!!明日から万魔殿にヒキるわよ!」
そう彼に告げると彼は狼狽する
「ま、待て!確かにそれはある意味嬉しいが仕事が…」
「問答無用!」
これからも彼と、こんな幸せな日々が続くことを願って
「行くわよ、ヴェルグ♪」
11/07/13 19:04更新 / ネームレス