読切小説
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片割れのノワールの悩み
「なるほど…」

私は水晶から流れるラジオを聴きながらふと漏らす
―――彼の良さを広めるなら、私がアピールすれば良いのか

と、納得すると同時にふと思ってしまう

―――でもなぁ、あの無愛想がなぁ…

と、今山地の警備のバイトをしている彼の事を思う

「ナナイ、ほんっと昔から変わらないなぁ…」

と、私はこれまでのことを思い出しながら、ステラのラジオ キラキラ☆星を聴いていた

・・・

あの日

私たちが再び歩み始めたあの日
―――あれから私たちは教団の過ちを正し続けている


再会した私たちは近くの親魔物領まで向かうことにした

そこで保護してもらう為だ
だが、最初は保護してもらえなくなりかけた

理由は単純

彼、ナナイが元教団騎士だからだった

元々彼は『黒衣の影騎士』と恐れられる位強い騎士だった為、裏切ると思えないと言われ、保護してもらえない状態になりかけたのだ
しかも、彼は…

「ゲヘナさえ無事ならどうでもいいから、早く彼女を保護しろ」

と、しれっと言ってしまったのだ
―――おかげで離れ離れになりかけたのは言うまでもない
が、それをみて街の人たちも信用してくれたから、結果オーライだった、の、だろう…

それ以来、彼は山地にいる盗賊退治や見回りの仕事
私は教会のお手伝い

これらをしながら、近くの村や街を回り、本当の聖書の教えを説いている

また、教団騎士がきて私たちを捕らえようとすると、ナナイが瞬きもする間もなく、気がついたら全員気絶させている

お陰で、私たちは賞金を掛けられているらしいが、関係ない

私は、それでも説き続けなければならないのだ
かつて、私に真実を教えてくれた、父のために

そして、彼の隣で、胸をはっていられるように

・・・

「って、その惚気何回目よ…」

「そんなに惚気てませんよ…」

私は教会でお茶をしている
目の前には、ここのシスターをしているサエナさんがいる

彼女はダークプリーストだ

ここは堕落した神を信仰している
ある意味、私の教えは彼女の教義に反する筈なのだ

が、彼女は気にせず、寧ろ教えに興味を持ってくれた

元聖職者だからこそなのだろう
そんな縁で、彼女とはよくお茶をしている

「でもさゲヘナ。あんた彼の話すると決まってその無愛想なのと昔から一緒にいる話、最後に彼のために胸を張れるようにしたいっていってるよ…」

「う…」

「おまけに彼、無愛想であんた以外と話さないだけならまだしも、基本なに考えてるかわかんないんだもん」

「流石にサエナさんでもそれは怒りますよ!大体、それ言ったらサエナさんの彼だっていっつも色んな女の人に声掛けてるじゃないですか!」

「…それ、詳しく教えて」

と、彼女の後ろから黒いオーラが出ている
それこそ、まるで悪意そのものしかないかのように

「ちなみに昨日、私が声掛けられてました」

「オッケー、ちょっと万魔殿にヒキってくる」

と、お決まりのやり取りをしながら私たちのお茶は続く

「っと、真面目な話。ナナイ君も仕事とあんた以外の趣味でも作ればいいのにねぇ〜」

と、サエナさんは気だるそうにお茶を飲みながらいう

「ナナイ、昔からですからね…」

そう、ナナイは昔っからそうだった


孤児院に居た頃、ナナイは一人で素振りをずっとしていた
他の子が声を掛けても、皆が遊んでいても

最初は一人が好きなのかと思った

だが、それが違うと知ったのは、ある事件からだった



それこそ私がまだ人間だった頃、まだ私が10歳位の頃だろうか
私は、誘拐されかけた

孤児院から子供を盗んで奴隷にする話はよく聞いていた
が、それを自分が体験するなんて思っていなかった私はとても怖かった
他の子も連れて行かれそうなその時だった

「やめろぉ!」

そう叫びながら、ナナイは誘拐しようとした奴らに向かっていった
その手には、いつも素振りに使っていた木剣が

が、ナナイも子供なのだ
その剣を払われ、彼も捕まりそうになってしまった

―――結果から言うと、ナナイの声で気付いた騎士たちに助けられた

ナナイも、無茶をするなと怒られていた

が、私には、その騎士達よりも、ナナイのほうが何十倍も格好よく見えた




「…いい話じゃない〜」

と、目を潤ませているサエナさん

「それからだと思うんです…私が、ナナイを好きになったのって」

私の顔がにやける

変なニヤケではなく、微笑んでるのかもしれない

「でも、なんでそこまで一人でいたがったの、ナナイ君?」

「自分が周りと違って見えたからじゃないかなと思います。実際彼以外ジパング人いなかったですから」

と、お茶がなくなってしまったので、新しいお茶を入れようしたらサエナさんが先に立っていた

「あたしが入れるから、ゲヘナ座ってなよ」

と、私は会釈で答える
彼女の好意に甘えるとしよう

―――彼女のお茶は、ナナイのご飯と同じくらい美味しいのだ

と、ふと思い出す

「そういえばサエナさんって、ナナイのご飯食べたことあります?」

「あたし、ヴェルグとしかしないから」

「その食事じゃないです!?」

ヴェルグさんは、サエナさんの彼で、この町の警備隊長をしている
ナナイの上司に当たる人になるだろう人だ

「あ、夜じゃなくて普通のか。…ないけど、どうしたの?」

「いえ、ふと思い出したんです。ナナイ、意外と料理上手いんですよ〜」


・・・

それは、ここに来てまもない時の話だった

新しい場所で緊張したりしたせいか、私は体調を崩してしまったのだ

「ゲヘナ、大丈夫?」

「だい…じょう…ゲホゲホッ!」

元々私自身も生前は体が弱いところもあったので、それもあったのだろう

「まってて、今ご飯作るから」

と、彼が台所で何かを作っている

「はい、簡単な物だけど…」

と、果実を潰してお湯で薄めた簡単なスープみたいな物のようだ

「ありがとぅ…」

私は少しずつだが飲んでみる

「美味しい…」

恐らくハチミツとかも少し入れたのだろう
それはとても温かく、甘く、安心できる味だったのだ

「よかった…」

彼の安堵した顔
その安心した彼の微笑みは、何よりも私を元気付けてくれていた

・・・

「って結局はそこにいくんだね…」

「ですね…」

ハハハ、と私は苦笑いをする
ナナイのことを話すと、どうしても彼の優しい微笑みの事を最後に言うのは、もはや治せない私の癖だ

「でも意外だな。ナナイ君、料理も出来るのか〜」

と、言いながらもお茶を入れるサエナさん

「サエナさんのお茶も美味しいですけど、ナナイのご飯も美味しいんですよ」

「…そりゃ、あんたの為ならなんでもするんだろうさナナイ君は」

ポツリと言うサエナさん

「あんたがナナイ君の話してる時の笑顔、悔しいけどあたしもドキッとくるしね」

「え?」

そうなんだろうか?
ナナイはよく私のことを可愛い、とか言ってくれる
が、正直私は言うほど可愛いか自信はない

地味な、黒い女の子

それが今の私だと思ってしまうからだ

「それに、あんたのその頭のベール、ナナイ君が買ってくれたんだろ?」

「はい…」

「あんたによく似合ってるよ」

と、サエナさんは褒めてくれる
が、やっぱり自信がない

「それに、あんたが笑ってるのをみて、この街の連中はみんなナナイ君はいい奴だってわかってるよ」

そう言いながら、彼女は笑ってくれた

―――あぁ、この人はやっぱりシスターなんだな

この人の慈愛には、正直私も勝てない
それ位、この人は優しい
…言ったらなぜか怒るから言わないけど

「さってと、そろそろ男連中も帰ってくるだろうさ」

「もうそんな時間でしたか」

と、時計をみる

そろそろ夕飯の時間だ
夕飯の後はステラのラジオ キラキラ☆星をナナイと聴いてから、それから…

「…あんた、本当に魔物なのかわっかんないなぁ〜」

「え///」

「そんなに解りやすい初心な魔物、そうはいないよ」

と彼女も教会から出ようとする

「さて、晩御飯のおかず買いに行きますか!」

「あ、私も行きます」

私たちは教会からでた

…今日はナナイの良さを再認識できて、いい日だったな

主よ、感謝します

私はそっとそう思いながらサエナさんと一緒に買い物に行った

11/07/28 09:32更新 / ネームレス

■作者メッセージ
どうも、ネームレスです

さて、とりあえず宣伝しようか…

と、言う訳で、沈黙の天使様作『ステラのラジオ キラキラ☆星』にてお便り投稿をさせて頂いた事で生まれたアフターストーリーです!

許可を下さった沈黙の天使様、ありがとうございます!

もし読んだ事ない方がいらっしゃいましたら、是非とも読んでみてください!


さて、ゲヘナと一緒にいたサエナさん

実はこのネタもだいぶ前から書きたかったんですが…
中々書く機会がなくお蔵入り寸前でした

ゲヘナ自体の設定上、ダークプリーストさんと絡ませたかったですからね


それでは最後に、ここまで読んで頂き、ありがとうございます!

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