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1day night The"Lovers"
1day night The"Lovers"(ワンデイナイトザ"ラヴァーズ")―――

そこは人生に疲れた人々が集う、一晩限りの癒しの場
今日もそこに招かれ、誘われ、人々が集う

・・・

ようこそいらっしゃいました
ここは1day night The"Lovers"
一晩限りの恋に溺れ、疲れを癒して頂く場でございます

え?ただのキャバクラとかと変わらないだろ?

そうですね…変わらない方もいらっしゃるでしょう
勿論、どう受け取られるかはお客様次第としか私には言えません

が、一度はご経験されてもよろしいではありませんか
人生、多少のリスクや娯楽がなければ枯れてしまいます

…では、こういうのはどうでしょうか?

代金ですが、帰る時に提示いたします
ですが、お客様には拒否権もありますし、場合によっては代金を支払わずに出て頂いても構いません

嘘ではありません
こちら、その旨が書かれた契約書でございます

こちらにサイン頂けるなら、私どもはその契約で構いません
きちんと弁護士にも鑑定頂いて、法的効力を持っている物です

決して、偽物などではありませんよ?

…ありがとうございます
それでは、当店はコイビト――スタッフになりますが――そちらがついてから料金や時間発生となっております

それまでは好きにお酒を楽しんでいただいても、ゲームなどを楽しんで頂いて構いません

コイビトがつきましたら、個室での会話などを楽しんで頂ければと思います
ただ…殆どありませんが、お客様がコイビトへの暴力などを振るわれた場合、当店スタッフが仲介に入る場合がございます
その点はご了承ください

それでは、どうぞ―――

〜〜〜

case.1

店員が奇妙なことを言っていたが、まぁいい
契約書とやらは書いたし、文句があったら金を払わなければいいだけだ

さて、なんの酒でも飲もうかな…

「いらっしゃいませ」

そこには、すごい美人がそこにいた

「あなた…コイビトは決まった?」

「あ、いえ…酒飲みに来ただけなんで…」

「そう…よかったら一緒にいかがかなって思ったんだけど…」

こんな美人が悲しそうに言うなら、大抵の男は堕ちるだろう
が、俺は生憎そうはならない

「すみませんが…一人で飲みたいんで…」

どうせこの人も商売で言ってるだけだし、惨めな思いはしたくない

「…あなた、なにか辛いことがあったんじゃないの?」

「え?」

「余計なお世話でごめんなさい…なんだか、辛そうだったから」

その言葉に、ドキッとした

「もしよかったら、私が愚痴を聞くわよ?…お金とかのことが気になるなら、この場でもいいし…」

「え?」

「個室に行かないと時間カウントされないから、ね」

そう言いながら茶目っ気を出したかのようにウィンクしてきたのに対して俺は…

「なら…聞いてもらいますね」

そう言って、俺は心の中にある愚痴をぶちまけ始めた
始めは小さいことから、そこから気が付いたら、自分がなんで苦しいのか、生きていて疲れるのか、もう何もかも考えたくないのかをぶちまけ始めた
仕事の事も、プライベートの事も、友人たちへの妬みも―――

全部全部ぶちまけた

「―――って、まぁこんな感じですよ」

気が付いたら、結構な時間が過ぎていた

「ハハッ…すみません、こんなどうしようもない事を聞かせてしまって」

彼女は俯いたまま何も答えない
はたから見たら、俺の我儘にしか見えないだろう

「こんなしょうもない話聞かせてしまってすみまs「辛かったでしょ?」

突然の言葉、そして、彼女は泣いていた

「それだけあなたは自分を我慢して、周りに迷惑をかけないようにしてきた、それは立派なことだと思う」

そう言って、彼女は俺を抱きしめてくれた

「好きなだけ、泣いても良いんだよ?疲れたって言うのは…苦しいって言うのは…恥ずかしい事じゃないんだよ」

その言葉に俺は、気が付いたら涙を流し始めていた

「もし誰かに見られるのが恥ずかしいなら、二人だけで泣ける場所にいこ?
大丈夫だから…あなたは、私が守るから」

そう言ってくれたこの人に連れられて、気が付いたら二人部屋に来ていた
そして、俺は声をあげて泣いていた

子供のように泣きじゃくり、今までのいろんな悔しさを涙と一緒に流していた
そして、気が付いてしまった

彼女が、人間じゃないことに
明らかに、人外のパーツがある彼女に抱きしめられていた
でも―――

「怖がらないで…」

そう言いながら懇願する彼女を見て、俺は気付いた
―――この人は、俺を癒すためにここまでしてくれた人なんだって
そう気付いたら、怖くなくなった

そして―――

case.2

「もう一回なのじゃー!」

入店してすぐ、気が付いたら幼女みたいな見た目の店員とじゃれあっていた
気が付いたら意気投合して、いろんなゲームをやっていた
そして、気が付いたらコイビトとして二人の個室に入っていた

「まだやるのか?…言っとくが、簡単には負けないぞ?」

「むー!今度こそ勝ってみせるのじゃ!」

妹がいたらこんな感じだろうかとか思いながら、二人で只管ゲームをやっている
ゲームをして、ジュースを飲んで、お菓子を食べて―――
こんな風に楽しいと思える時間を過ごした事があっただろうか?

「こんな時間、いつまでも続けばいいのにな…」

有り得ない事をボソッと言ってしまったが―――

「いつまでもできるのじゃ」

俺のコイビトが突然真剣な顔で言い始めた

「そんなに疲れるまで、苦しくなるまで頑張らなくてもいいのじゃ」

俺に抱き付きながら続ける

「じゃから、わしに任せてほしいのじゃ」

そんな自信いっぱいの声をして


〜〜〜

いかがでしたか?
それで代金なのですが…

おや、もはやお客様はお支払いが済んでおりますね
は?いえ…すでに頂いておりますよ?

ですから、他のお客様のご迷惑になりますのでご帰宅いただけませんか?

…えぇ、もう二度とお会いすることはないでしょうが
いえ、こちらでの謳い文句のような物です

それでは、いつまでもお幸せに…

もう二度と迷われない事をお祈り致しておりますので

・・・

ここに紹介されたのは、あくまで一例に過ぎないし、真偽の程も定かではない
ネットの噂かもしれないし、だれかの作り話かもしれない
先輩からの実話かもしれないし、仲間たちがあなたをからかう為にねつ造した話かもしれない
しかし、一度きりの人生、少しの冒険で、何かが開けるかもしれない
勿論確証はないし、確約も出来ない

だが、ほら?見えてこないか
あの、珍しいロゴが
1day night The"Lovers"と書かれた、看板が―――

14/11/11 03:39更新 / ネームレス

■作者メッセージ
さてさて、皆様にはどんな魔物娘がきたのか?

おひさしぶりです、ネームレスです
現在キマイラちゃんを書いていたのですが、なんとなく浮かんだこのネタを書きたくて、ついつい書いてしまいました
人間、ほんとにいろんなことで壊れそうになったりします
でも、弱音も吐く事も許されてない事も多いです

実際弱音の中にはその人の我儘もあります
でも、我儘だって言いたいじゃないか
そんな時、我儘が言わせてくれるのって、魔物娘さんみたいな愛情あふれた存在以外難しいよなぁ…

なんて願望ダダ漏れで書きました
また、私が浮かんだケースが2つしかありませんが、もっと沢山あるはずです
皆さんにはご負担をおかけしますが、そんな妄想の手助けをできたらとも思っています
それでは次回はキマイラの物語でお会いしましょう
今回はここまで、次回も楽しみにしていてくださいね!

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