その1
時の流れっていうのは、人によって様々だと思う。
毎日仕事や用事に追われているとあっという間に日が沈む。
それら全てを失った俺は空を眺めるだけで、ゆったり流れる雲のように時が流れていた。
同じ時、同じ場所に居ても、時の流れには個人差があるようだ。
彼女のように……。
「あの〜何かしたいこと、とか思いつきませんか?」
「って何度も聞かれてもすぐに出てこないって」
あれからそんなに時間も経ってないのに何度も「お役に立てませんか?」と迫られている。正直無くて困ってるところだ。
怪我で出来ることは限られてくるだろうし、何かを得ても時間がくれば捨てなければならない。
そんな中で何かを欲するのは、とても難しかった。
だけどそんな悲観的な考えよりも、彼女の暗い顔が晴れてくれたのが嬉しく感じている。
美人に涙は似合わない、なんてキザなセリフを考えただけでも恥ずかしい。ましてや口になんて出せるわけもない。だけど、やっぱり彼女は明るい顔のほうがらしいと思うわけで。
それならもう少しくらい困ってもいいかな。
なんて、そう思ってしまう。
その後も彼女のお役に立てませんかコールは止まらなかった。
「えっと……じゃあ、食べたい物はどうです?」
「ごめん、全然食欲無いんだ」
「それじゃあ、欲しいものとか」
「ごめん、特に思いつかない」
ずっとこの調子だ。
でも、嫌なわけじゃなく、この問いかけをどこか楽しんでいる自分がいる。
けど、このままだと永久ループだ。
何か考えないと……。
彼女の方もネタ切れのようで、あれこれと頭を悩ませている。
「えっと、じゃあ、じゃあ……」
あぁ、何かに似てると思ったらあれだ。
欲しい物をねだる子供だ。
しかし、外見でいえば俺と歳は大差ないに見える彼女、さらに大人びた顔つきに丁寧な言葉遣い、どこを捉えても幼いイメージはない。だからこそ、その子供のような行動はとてもギャップがあってとても可愛らしい映るのだろう。
って何考えてんだろ俺……。
気が付くと辺りが静かになっていた。
さっきまで騒いでいた彼女は、心配そうに俺の顔を覗いていた。
顔が近い……。
「あの〜、やっぱり……迷惑でしたか?」
「いや、そんなことは全然ないって、居てくれるだけで十分心の支えになってくれてるって。まぁ、ちょっと怪我の影響で欲求が吹っ飛んだってか、そんなんだから」
「えっと、蘇生の影響で回復能力が異常に活性化してるはずなので怪我の方はしばらくしたら完治しますから、それまでの辛抱です」
子供っぽいかと思えば、まるで看護婦のような大人らしさで現状を丁寧に説明してくれた。
言われてみれば、不思議と頭痛も気持ち悪さも消えている。
あんなに頭がガンガンしてたのに嘘みたいだ……吐き気もしない。
「それで最初に比べてだいぶ楽になってるわけだ」
「こういう時に回復魔法唱えれたらぱぱっと直せるんですけど、蘇生は得意なんですけど回復は苦手で……まぁ、得意な蘇生もろくに出来ないんですけどね」
あぁ、また落ち込んだ。
彼女はお約束のように、縮こまってイジイジと水中の砂で丸を書き始める。
「でも結構良くなってるって。ほら、もう体起こしても大丈夫だし――痛っ」
「大丈夫ですか! 安静にしてないと――」
「これくらい大丈夫だって、えっと、君のおかげで……」
ふと、今更ながら不便さを感じた。
そういえば、まだお互いの名前もまだ知らないんだっけ。
「そうだ! したいこと。自己紹介なんてのは?」
「自己紹介ですか?」
「そう、お互い名前も知らないわけだし。な、どうだ?」
「はい! 私はシー・ビショップのリクエラです」
「んじゃ、俺は元行商人のタウラだ。よろしくな」
「はい、よろしくお願いしますねタウラさん」
そう言って、彼女は初めて笑った。
その笑顔を見た俺は、残りの時間、彼女の笑顔を見るために生きよう。
そう思った。
「ところでタウラさん、次のお願いごとは何ですか?」
「えっ……ちょっと待ってくれよ、リクエラ。今考えるから」
「早くしてくださいね」
冗談混じりに彼女はもう一度笑った。
俺の寿命が残り18時間頃のこと……。
毎日仕事や用事に追われているとあっという間に日が沈む。
それら全てを失った俺は空を眺めるだけで、ゆったり流れる雲のように時が流れていた。
同じ時、同じ場所に居ても、時の流れには個人差があるようだ。
彼女のように……。
「あの〜何かしたいこと、とか思いつきませんか?」
「って何度も聞かれてもすぐに出てこないって」
あれからそんなに時間も経ってないのに何度も「お役に立てませんか?」と迫られている。正直無くて困ってるところだ。
怪我で出来ることは限られてくるだろうし、何かを得ても時間がくれば捨てなければならない。
そんな中で何かを欲するのは、とても難しかった。
だけどそんな悲観的な考えよりも、彼女の暗い顔が晴れてくれたのが嬉しく感じている。
美人に涙は似合わない、なんてキザなセリフを考えただけでも恥ずかしい。ましてや口になんて出せるわけもない。だけど、やっぱり彼女は明るい顔のほうがらしいと思うわけで。
それならもう少しくらい困ってもいいかな。
なんて、そう思ってしまう。
その後も彼女のお役に立てませんかコールは止まらなかった。
「えっと……じゃあ、食べたい物はどうです?」
「ごめん、全然食欲無いんだ」
「それじゃあ、欲しいものとか」
「ごめん、特に思いつかない」
ずっとこの調子だ。
でも、嫌なわけじゃなく、この問いかけをどこか楽しんでいる自分がいる。
けど、このままだと永久ループだ。
何か考えないと……。
彼女の方もネタ切れのようで、あれこれと頭を悩ませている。
「えっと、じゃあ、じゃあ……」
あぁ、何かに似てると思ったらあれだ。
欲しい物をねだる子供だ。
しかし、外見でいえば俺と歳は大差ないに見える彼女、さらに大人びた顔つきに丁寧な言葉遣い、どこを捉えても幼いイメージはない。だからこそ、その子供のような行動はとてもギャップがあってとても可愛らしい映るのだろう。
って何考えてんだろ俺……。
気が付くと辺りが静かになっていた。
さっきまで騒いでいた彼女は、心配そうに俺の顔を覗いていた。
顔が近い……。
「あの〜、やっぱり……迷惑でしたか?」
「いや、そんなことは全然ないって、居てくれるだけで十分心の支えになってくれてるって。まぁ、ちょっと怪我の影響で欲求が吹っ飛んだってか、そんなんだから」
「えっと、蘇生の影響で回復能力が異常に活性化してるはずなので怪我の方はしばらくしたら完治しますから、それまでの辛抱です」
子供っぽいかと思えば、まるで看護婦のような大人らしさで現状を丁寧に説明してくれた。
言われてみれば、不思議と頭痛も気持ち悪さも消えている。
あんなに頭がガンガンしてたのに嘘みたいだ……吐き気もしない。
「それで最初に比べてだいぶ楽になってるわけだ」
「こういう時に回復魔法唱えれたらぱぱっと直せるんですけど、蘇生は得意なんですけど回復は苦手で……まぁ、得意な蘇生もろくに出来ないんですけどね」
あぁ、また落ち込んだ。
彼女はお約束のように、縮こまってイジイジと水中の砂で丸を書き始める。
「でも結構良くなってるって。ほら、もう体起こしても大丈夫だし――痛っ」
「大丈夫ですか! 安静にしてないと――」
「これくらい大丈夫だって、えっと、君のおかげで……」
ふと、今更ながら不便さを感じた。
そういえば、まだお互いの名前もまだ知らないんだっけ。
「そうだ! したいこと。自己紹介なんてのは?」
「自己紹介ですか?」
「そう、お互い名前も知らないわけだし。な、どうだ?」
「はい! 私はシー・ビショップのリクエラです」
「んじゃ、俺は元行商人のタウラだ。よろしくな」
「はい、よろしくお願いしますねタウラさん」
そう言って、彼女は初めて笑った。
その笑顔を見た俺は、残りの時間、彼女の笑顔を見るために生きよう。
そう思った。
「ところでタウラさん、次のお願いごとは何ですか?」
「えっ……ちょっと待ってくれよ、リクエラ。今考えるから」
「早くしてくださいね」
冗談混じりに彼女はもう一度笑った。
俺の寿命が残り18時間頃のこと……。
10/08/05 04:54更新 / nagisa82_s
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