没落少年貴族の冒険 その2.5(濡れ場)
その夜、サラは約束通り二人に場所を提供した。決して広くはない隠れ家であるが、三人とも小柄であったことが幸いした。サラは積み上げられたガラクタ(本人曰くベッド)の上で、ミーファとエミール少年は床に敷いた毛布の上で、眠りについた。
深夜、エミール少年はふと目を覚ました。後の二人は既に眠ってしまっているようだ。遠くで下水の流れる水音だけが、狭い水路内で反響を繰り返して微かに響く。
彼は思い出したように懐から鏡を取り出した。鏡の中の母は、変わらず眠り続けている。
瞳の閉じられた顔をじっと眺めていると、ふと涙が溢れそうになった。誰かが少年の栗色の髪を撫でた。
「眠れませんか?」
ミーファである。いつの間にやら、少年の毛布の中に潜り込んでいたようだ。ふかふかの手が、頬を撫でる感触が心地よい。
「ご安心ください。今は、ミーファがここにおります」
そういうと彼女は、もちゃもちゃとからだを動かし、少年の腕の中にすっぽりと収まった。
「坊ちゃま……。アリーシャの件、申し訳ございませんでした」
ミーファがふと、そんなことを呟いた。アリーシャとは、シェルドン家とサバトの関係を外部に漏らした、若いメイドの名前である。まだ雇って半年程度であったが、献身的に働き、仕事の覚えも良かったので、すぐに屋敷の人々から信用を得た。そして、飼い猫であったミーファの世話も、彼女の仕事であった。
ミーファはだいぶ彼女になついていた。それ故に、彼女の密告がそうとうショックだったのだろう。ファミリアになったばかりのミーファにも、同じことを言われたのを覚えている。
「大丈夫だよ、ミーファ」
エミール少年はそういうと、彼女の背をポンポンと叩いた。
不安そうに視線を伏せるミーファに、優しげな声で続ける。
「アリーシャの件は、仕方なかったんだ。きっと彼女も、突然屋敷にバフォメットさんが訪ねてきたから、びっくりしちゃったんだよ。せめて一年は、サバトのことは内緒にしとくべきだったんだ。アリーシャ、本当に仕事を頑張ってたから、みんな信用しすぎちゃったんだよね。屋敷の人間、全員の失敗だよ」
そこまで言うと、少年はおどけた声で言った。
「それに、あの頃のミーファはただの猫じゃないか!」
エミール少年につられて、ミーファがフフっと笑いを漏らす。彼女は毛布に顔を埋め、少年の薄い胸板にぐりぐりと額を押し当てた。
「……こうしてますと、ただの猫だったころを思い出します」
ミーファは、よくエミール少年のベッドに潜り込んできた。猫は体温が高いので、冬はまさに大歓迎なのだが、夏に同じことをされると寝苦しくてかなわない。
と、ここで少年の脳裏にある疑問が浮かんだ。そして、それはそのまま口に出る。
「あれ? ところでミーファ、なんで僕の毛布の中にいるの?」
☆
「坊ちゃま、明日は決戦でございます」
ミーファの声音が変わった。
「波風立たずに計画が完遂されることはないでしょう。必ずどこかで、手荒な真似が必要となります」
エミール少年が少し引き気味に驚く。彼とてそのような未来が予想できない訳ではない。だが心で思っているのと、誰かに声に出して言われるのでは、その重みが違うのだ。
毛布の中で、ミーファの背に回した手にぎゅっと力が入る。
「ですから」
少年の胸に当てられていた彼女の手が、するりと腰のあたりまで滑る。
「魔力の補給をさせて頂きます」
ミーファの頭が毛布の中に引っ込み、彼女は少年の下半身へと向かった。
☆
「ミ、ミーファ!? 何を!?」
「あら坊ちゃま、もしかしてご存じないのですか? 魔物はその殆どが、男性の精から直接魔力を摂取することができるのです」
慌てるエミール少年に対し、ミーファは冷静そのものだ。
「まあ、ファミリアとしては主人の魔女から魔力を頂くのが本来の姿ではありますが、今は奥様があのようなお姿になられていますし、緊急事態にございます」
そういって少年の下半身を服の上からまさぐる。ズボンを結ぶ紐を解こうと、彼の腰に手を回す。
「精って! だめっ、駄目だよ!」
少年は思い通りにさせまいと、真っ赤になってミーファの手を払おうともがく。
「あら、駄目なことありますか。知ってるんですよ。坊ちゃま、一ヶ月前くらいから夜になると、布団の中でこっそり自分で自分のおちんちんを弄られてますよね?」
少年の肩が、びくんと跳ねた。その隙を見逃さず、ミーファがズボンを引きずり下す。
少年の、皮を被った小さなペニスが顔を出す。まだ縮こまっているせいか、先端で少し皮が余ってしまっている。
「あら可愛い」とミーファが感想を漏らす。エミール少年はなんとか彼女を引き離そうとするも、突如四方から細い影の蔦が伸びてきて、少年の四肢を絡め捕った。
「可愛いのはいいですが、先端で皮が余ってしまってるのは良くないですわね。坊ちゃま、お年頃ですし、覚えたてでおちんちんが気持ちいいのは分かります。ですが、皮の上から先っぽばっかりいじいじしていては、大人になった時に女性の前で恥をかいてしまいますよ? いい機会ですし、ここはこのミーファが、坊ちゃまに正しい自慰の作法を指導して差し上げましょう」
ミーファの声に、若干の甘い響きが混じった。
☆
暗く静かな下水道に、少年のはぁはぁという荒い息遣いだけが響く。
「坊ちゃま、もう少し静かにしてくださいまし。サラさんが起きたら面倒ですわ」
無意識に荒げていた声をミーファに指摘され、少年は慌てて口を紡ぐ。
ミーファは少年を毛布の上に座らせ、その肩にもたれるようにして左手で上半身を、右手で下半身を弄り回していた。無論、少年の手足は蔦で縛られたままである。
ファミリアの手は人間よりは獣に近い。そのふわふわの毛並みが背中や肩、脇腹を滑る度、こそばゆさと共に、今まで感じたことのないようなゾクゾクとした感覚が体を走った。
ミーファの右手は少年の股間にあてがわれ、足の付け根や蟻の門渡りをさわさわと撫でまわす。
どういうわけか、ミーファは魔力補給といって少年を襲った割に、射精に直結するような行動、即ちペニスを扱くということを一切しなかった。
故に、少年の性器は満たされぬ欲求に駆り立てられ、小さいながらに既にはち切れんほどに屹立し、少年が身悶えるたびに反り返った先端が揺れて生白い下腹にちょんちょんと接触する。たらたらと流れ出る我慢汁が、腹と亀頭の間で糸を引く。そして、その刺激すらも快感となるほど、彼の感覚は鋭敏に、快楽を求め始めていた。
「ミーファぁ……」
自然と口から漏れた声に懇願の色が混ざっていたことに驚いた少年は、ハッとして口を閉じる。そうして、恥ずかしさと情けなさのあまり顔を真っ赤に染め上げる。
「坊ちゃま、まだ駄目ですわよ」
そう言って、ミーファは少年の陰嚢を優しく撫でる。少年の喉から、くぐもった声が漏れる。
「おちんちんはまだまだ子供サイズですが、タマタマはそこそこ成長しているようですね。これは将来、子宝が期待できますわ。将来も安泰ですわね」
少年の性器はまだまだ未発達であり、限界まで勃起した状態で先端こそ僅かに剥けて赤い粘膜が顔をのぞかせているものの、くびれのほとんどない真っ白なツクシの様な性器だ。当然陰毛など生えていない子供のおちんちんであるが、陰嚢だけは、既に大人のそれと同じほどの大きさまで成長していた。
ミーファが少年の陰嚢をころころと柔らかな手の上で転がす度に、身悶えしたくなる快感が腰を上ってくる。少年にとって、そこが快感を産むこと自体が新しい発見であった。先走りがいっそうたらたらと溢れ出し、僅かに露出した亀頭が温かな潤みに包まれる。
「ふふ、大きさはそこそこでも、やはりまだまだお子様ですねぇ。しかしまあ、誰かに触られた経験などありませんでしょうし、敏感であるのも仕方なしですわね」
少年の肩に顎を乗せたミーファが、耳たぶに触れるか触れないかという位置で甘くつぶやいた。寒気と紙一重のゾクゾクとした快感が耳から入り、体内に波紋のように広がっていく。全身の産毛が逆立つ。
「ふふふふ、どうしました?」
ミーファがまた耳元で、今度は少し意地悪そうに呟いた。唇は触れていなないのに、空気の振動で口の動きが手に取る様に分かる。それほど、少年の耳は刺激に敏感になっていた。
「坊ちゃまは耳が弱いようですねぇ💛」
そう言うや否や、耳の中に今まで感じたことのない生暖かく柔らかな感触が侵入してくる。ミーファが自分の耳に舌を突っ込んだのだ。
「んんーーーー!!」
強烈な未知の快感に、少年は跳ねるように身を仰け反らした。だが、ミーファはまるで少年の耳にかぶりつく様にして、耳を舐めるのを止めない。両手で少年の頭を押さえつけ、その耳に吸い付く。
体の中に、ミーファが耳を舐める水音が響く。少年は脳を侵すような快感に身の危険を感じ、何とか逃れようと暴れもがくが、ミーファを振りほどけない。
「あーーー! あーーーー!!」
腰を地面に打ち付けるようにして、のたうち回るエミール少年。口を閉じるのを忘れているせいで、端から涎がこぼれているが、それすら気が付けない。
そして、その瞬間は突然やってきた。耳から今までにない暴力的な快楽の高波が、全身向けて広がっていく。快楽の波はまず最初に少年の脳を犯し、その思考を奪った。次に視覚が侵され、目の前が真っ白になる。そして胴と腰、足の筋肉が張り詰め、少年は腰を浮かせるようにして体を弓なりに逸らす。行き場を無くした波は出口を探して少年の睾丸のなかをぐるぐると巡回し、そしていよいよ尿道を発見し、待ち望んでいた瞬間の為にその道を一気に駆け上る。
「あっいけません! 坊ちゃま堪えて!」
少年の異常に気が付いたミーファが耳から舌を引き抜き叫んだ。しかし、舌を引き抜く時の耳穴をずるりと舐めあげられるような感覚が少年にとって追い打ちとなった。弓なりに逸った幼い体躯が、痙攣する。
「ーーーー!!」
痙攣に合わせて、熱いほとばしりが勢いよく打ち出された。それは腹をこえて少年の顔まで届き、桃色に染まった頬に白い点を落とした。
ミーファが、脈動するペニスにかぶりつき、喉で青い情欲を受け止める。青臭いカルキ臭が、喉から鼻に喉ってミーファの嗅覚を満たした。
精液は次から次へとドクドクと溢れ出し、飲み込めきれなかったものがミーファの柔らかな唇を伝って少年のへそに落ちた。
☆
長い長い射精が終わり、ミーファが未だ固さを失わないペニスを加えたままふぅと鼻で息をつく。亀頭を包む過保護な包皮の隙間に舌を突っ込み、そこに溜まってしまった精液まで綺麗に舐めとってから、ようやく「ちゅぽん」と音を立ててペニスを放す。
顔を上げて振り返れば、少年は虚ろな目でぐったりと倒れ込んでおり、全身が汗でしっとりと濡れている。ミーファは少年の頬に精液が一滴残っていることに気が付き、それも舌で舐めとった。
「まさかここまで弱いとは……」
正しい自慰の仕方を教えるはずが、興奮を高めるための前戯でここまで派手にイってしまうとは、完全に予想外だった。
そもそも、まだペニスに触ってすらいないのに、射精までしてしまうとは。
「坊ちゃまー。起きてくださいよー」
無防備な乳首をぺろぺろ舐めてみる。身体が若干痙攣するが、反応が鈍い。意識が遠くに行ったまま帰ってこないようだ。
「……坊ちゃま!!」
足首に絡ませた影の蔦をシュルシュルと伸ばし、少年のふとももまでを拘束する。
そして、その足をがばと大きく開かせると、少年の股の間から細い蔦を一本召喚し、少年の睾丸の裏、即ち肛門の辺りに潜り込ませた。
……つぷ!
「んあ!」
少年が飛び起きた。
自分は意識を失っていたのかと驚く前に、肛門に感じる強烈な不快感と排泄欲求に驚く。
「坊ちゃま! 情けないですわよ!」
だがミーファはそんなことはお構いなしに、少年の前で腕を組んでぷりぷりと怒り出す。
「まだ前戯の段階だというのに、お一人であんなに激しくイかれるなんて! 先ほどの、将来も安泰という言葉は取り消します! あたくし、シェルドン家の将来が俄然不安になってきましたわ!」
「で、でもそれはミーファが……」
「黙らっしゃい!」
肛門に突っ込まれた細い蔦が、ぐっと動いた。
「うぅ!」
腹痛を伴う、強烈な便意。しかしどういうことだろう? そんな状態でも、少年の幼いペニスはギンギンに勃起している。さらには先ほど蔦が動いた時、ペニスの根元のさらに奥の辺りから、何か温かい感覚がじんわりと広がる感じがした。それは睾丸や耳から得たものと同じく、少年にとって全く未知の感覚であった。
「そのうち悪い女に騙されるのではないかと、あたくしもう心配で心配で……って、聞いてますの! 坊ちゃま!」
少年が未知の感覚に気を取られている間も喋り続けていたミーファだが、少年が何か別のことに気を取られていることに気が付き、またもや肛門の蔦をうねうねと動かす。
「んぅ!」
まただ。また、何か熱い感覚がペニスの根元で生じた。少年に、ある予感が走った。
これも、先ほどの未知の感覚と同じ類のものなのではないか?
その様子を見て、ミーファも何か悟ったらしい。やれやれと溜息を吐く。
「全く、勉強熱心なのは結構ですが、もっとこう、受け身ではなく積極的な、女性を責める側に興味を持って欲しいものなのですが……まあいいでしょう」
そういうと、彼女は少年のアナルから蔦を引き抜いた。少年は、ひゃん、と情けない声を上げる。
「このミーファ、教鞭をとったからには手加減は致しません。正しい自慰の仕方の前に、まずはおちんちんへの刺激に強くなっていただきます。坊ちゃま、お覚悟はよろしいですか?」
そう言うとミーファは少年の足をがばっと左右に開き、その間に潜り込んだ。彼女のふわふわとした手が、少年の玉と竿を包み込む。
「うぅ!」
「ふむ、先程は随分とあっさりと、しかも大量に射精されていましたが、まだまだ元気なようですわね」
ふにふにと、強弱をつけて性器全体をマッサージでもするかのように揉みしだく。
「ドクドク脈を打ってて、とても熱いです。スタミナは十分……。やはり問題は刺激に対する耐性ですか」
優しく性器全体を撫でまわしていたミーファの手が、突然きゅっと少年の白い竿をつかんだ。
そして、一息にその皮を根元まで引きずり下す。
「いたい!」
少年が叫んだ。何事かと下半身に目をやれば、見慣れていたはずの自分のペニスが全く違う姿に変貌している。具体的には、分厚い皮に乳飲み子のように抱かれていたはずの先端が、真っ赤でぷりぷりと湿った矢印の様な形状に変化している。
「やはり、日頃から剥く努力を怠っていたのですね。いけませんよ坊ちゃま。あまりおちんちんを甘やかし過ぎますと、女の人に簡単にイかされる、情けない男性になってしまいます。ちょうど先程の坊ちゃまのように、です」
だが、エミール少年はそれどころではなかった。幼い亀頭が、敏感な亀頭が、今初めて外気にさらされている。ヒリヒリ、ひんやりとした感覚が先っぽを包む。
今の少年にとって、ミーファが喋るときの空気の振動ですら、亀頭にふわっと快感の波紋を広げる刺激であった。
少年は、慣れない刺激に内ももを擦り合わせ、腰をひねる。すると、屹立したペニスがぷるんっと頭を振り、敏感な亀頭が左右に揺れる。
少年の脆弱な亀頭は、大気との摩擦でさえ刺激として受けとり、快感の信号を脳へ送ってしまう。
そしてその刺激に少年はまた身悶えし、快楽のループが始まる。
うーうーとうなりながら、歯を食いしばって身悶え続ける少年を見て、ミーファは溜息を吐いた。
「まったく、仕方ないですわね」
少年のペニスの根元を押さえ、快楽の無限信号を遮断する。
身悶えるのを止め、荒い息をつくエミール少年。
「坊ちゃま、あまりの醜態に、あたくし少々幻滅いたしました。少し、荒療治といかせていただきます」
そうして、少年のペニスを、ぺろりと舐めた。
「ひゃあぁ!?」
少年が情けない声を上げる。
「静かに! この体たらくでは手での刺激では痛いだけでしょうからね。同じ粘膜どうし、口で刺激いたしますので、少しは刺激に慣れてください」
そういうとミーファは、少年のペニスをぱっくりと咥え込む。
「〜〜〜〜〜〜!!!!」
少年は、声にならない悲鳴を上げた。
ミーファは、ペニスを咥えただけだ。舌を動かしたりはしていない。
だが、彼女の温かい口内が、息遣いが、脈動が、生命活動をする以上は発生してしまう微かな振動が、今の少年には十分すぎる刺激だった。
「ああ、だめぇ! でちゃうよお!」
少年は腰を弾ませた。敏感すぎる亀頭が、ミーファのぬるりとした口内の粘膜に触れる。
少年の目の奥で、星が弾けた。
小さなペニスからは考えられないほどの量の精液が、ミーファの口内に向けて発射される。
「んう!?」
ミーファにとっても、二回目だというのにここまで早い射精は予想外だったようだ。
幼いはずのペニスは壊れた蛇口のように精液を吐き出し続け、ミーファはそれを零さないように飲み続ける。
ミーファが精液を嚥下するその刺激が少年のペニスに伝わり、また射精の勢いが強くなる。
結局、少年が射精を終えるまでに数分はかかった。
ミーファが荒い息をつき、顔を上げる。
目の前には、恍惚の表情と共に、気を失って倒れているエミール少年。
ミーファは慌てて少年の上半身に駆け寄り、口に耳を寄せて呼吸を確認する。
……よかった、ちゃんと呼吸している。脈を確認しても、普通の速さ、平時のリズムに戻っている。
「……まさか、あんなに可愛らしいお顔をされて、これほどの絶倫でしたとは」
ミーファは、安心と疲労から大きなため息をついた。
魔力補給に始まって、自慰の作法を指導すると、建前がつぎつぎと入れ替わり、もはや何が何だか分からない。
「まあ、魔力は十分すぎるほど頂きましたし、今日はこれくらいにしておきますか……」
彼女はエミール少年の服装を整え、毛布を掛けてやった。
「明日は必ず、必ずお守りいたします。坊ちゃま」
そういって少年の寝顔に小さくキスをすると、ミーファも眠りについたのだった。
深夜、エミール少年はふと目を覚ました。後の二人は既に眠ってしまっているようだ。遠くで下水の流れる水音だけが、狭い水路内で反響を繰り返して微かに響く。
彼は思い出したように懐から鏡を取り出した。鏡の中の母は、変わらず眠り続けている。
瞳の閉じられた顔をじっと眺めていると、ふと涙が溢れそうになった。誰かが少年の栗色の髪を撫でた。
「眠れませんか?」
ミーファである。いつの間にやら、少年の毛布の中に潜り込んでいたようだ。ふかふかの手が、頬を撫でる感触が心地よい。
「ご安心ください。今は、ミーファがここにおります」
そういうと彼女は、もちゃもちゃとからだを動かし、少年の腕の中にすっぽりと収まった。
「坊ちゃま……。アリーシャの件、申し訳ございませんでした」
ミーファがふと、そんなことを呟いた。アリーシャとは、シェルドン家とサバトの関係を外部に漏らした、若いメイドの名前である。まだ雇って半年程度であったが、献身的に働き、仕事の覚えも良かったので、すぐに屋敷の人々から信用を得た。そして、飼い猫であったミーファの世話も、彼女の仕事であった。
ミーファはだいぶ彼女になついていた。それ故に、彼女の密告がそうとうショックだったのだろう。ファミリアになったばかりのミーファにも、同じことを言われたのを覚えている。
「大丈夫だよ、ミーファ」
エミール少年はそういうと、彼女の背をポンポンと叩いた。
不安そうに視線を伏せるミーファに、優しげな声で続ける。
「アリーシャの件は、仕方なかったんだ。きっと彼女も、突然屋敷にバフォメットさんが訪ねてきたから、びっくりしちゃったんだよ。せめて一年は、サバトのことは内緒にしとくべきだったんだ。アリーシャ、本当に仕事を頑張ってたから、みんな信用しすぎちゃったんだよね。屋敷の人間、全員の失敗だよ」
そこまで言うと、少年はおどけた声で言った。
「それに、あの頃のミーファはただの猫じゃないか!」
エミール少年につられて、ミーファがフフっと笑いを漏らす。彼女は毛布に顔を埋め、少年の薄い胸板にぐりぐりと額を押し当てた。
「……こうしてますと、ただの猫だったころを思い出します」
ミーファは、よくエミール少年のベッドに潜り込んできた。猫は体温が高いので、冬はまさに大歓迎なのだが、夏に同じことをされると寝苦しくてかなわない。
と、ここで少年の脳裏にある疑問が浮かんだ。そして、それはそのまま口に出る。
「あれ? ところでミーファ、なんで僕の毛布の中にいるの?」
☆
「坊ちゃま、明日は決戦でございます」
ミーファの声音が変わった。
「波風立たずに計画が完遂されることはないでしょう。必ずどこかで、手荒な真似が必要となります」
エミール少年が少し引き気味に驚く。彼とてそのような未来が予想できない訳ではない。だが心で思っているのと、誰かに声に出して言われるのでは、その重みが違うのだ。
毛布の中で、ミーファの背に回した手にぎゅっと力が入る。
「ですから」
少年の胸に当てられていた彼女の手が、するりと腰のあたりまで滑る。
「魔力の補給をさせて頂きます」
ミーファの頭が毛布の中に引っ込み、彼女は少年の下半身へと向かった。
☆
「ミ、ミーファ!? 何を!?」
「あら坊ちゃま、もしかしてご存じないのですか? 魔物はその殆どが、男性の精から直接魔力を摂取することができるのです」
慌てるエミール少年に対し、ミーファは冷静そのものだ。
「まあ、ファミリアとしては主人の魔女から魔力を頂くのが本来の姿ではありますが、今は奥様があのようなお姿になられていますし、緊急事態にございます」
そういって少年の下半身を服の上からまさぐる。ズボンを結ぶ紐を解こうと、彼の腰に手を回す。
「精って! だめっ、駄目だよ!」
少年は思い通りにさせまいと、真っ赤になってミーファの手を払おうともがく。
「あら、駄目なことありますか。知ってるんですよ。坊ちゃま、一ヶ月前くらいから夜になると、布団の中でこっそり自分で自分のおちんちんを弄られてますよね?」
少年の肩が、びくんと跳ねた。その隙を見逃さず、ミーファがズボンを引きずり下す。
少年の、皮を被った小さなペニスが顔を出す。まだ縮こまっているせいか、先端で少し皮が余ってしまっている。
「あら可愛い」とミーファが感想を漏らす。エミール少年はなんとか彼女を引き離そうとするも、突如四方から細い影の蔦が伸びてきて、少年の四肢を絡め捕った。
「可愛いのはいいですが、先端で皮が余ってしまってるのは良くないですわね。坊ちゃま、お年頃ですし、覚えたてでおちんちんが気持ちいいのは分かります。ですが、皮の上から先っぽばっかりいじいじしていては、大人になった時に女性の前で恥をかいてしまいますよ? いい機会ですし、ここはこのミーファが、坊ちゃまに正しい自慰の作法を指導して差し上げましょう」
ミーファの声に、若干の甘い響きが混じった。
☆
暗く静かな下水道に、少年のはぁはぁという荒い息遣いだけが響く。
「坊ちゃま、もう少し静かにしてくださいまし。サラさんが起きたら面倒ですわ」
無意識に荒げていた声をミーファに指摘され、少年は慌てて口を紡ぐ。
ミーファは少年を毛布の上に座らせ、その肩にもたれるようにして左手で上半身を、右手で下半身を弄り回していた。無論、少年の手足は蔦で縛られたままである。
ファミリアの手は人間よりは獣に近い。そのふわふわの毛並みが背中や肩、脇腹を滑る度、こそばゆさと共に、今まで感じたことのないようなゾクゾクとした感覚が体を走った。
ミーファの右手は少年の股間にあてがわれ、足の付け根や蟻の門渡りをさわさわと撫でまわす。
どういうわけか、ミーファは魔力補給といって少年を襲った割に、射精に直結するような行動、即ちペニスを扱くということを一切しなかった。
故に、少年の性器は満たされぬ欲求に駆り立てられ、小さいながらに既にはち切れんほどに屹立し、少年が身悶えるたびに反り返った先端が揺れて生白い下腹にちょんちょんと接触する。たらたらと流れ出る我慢汁が、腹と亀頭の間で糸を引く。そして、その刺激すらも快感となるほど、彼の感覚は鋭敏に、快楽を求め始めていた。
「ミーファぁ……」
自然と口から漏れた声に懇願の色が混ざっていたことに驚いた少年は、ハッとして口を閉じる。そうして、恥ずかしさと情けなさのあまり顔を真っ赤に染め上げる。
「坊ちゃま、まだ駄目ですわよ」
そう言って、ミーファは少年の陰嚢を優しく撫でる。少年の喉から、くぐもった声が漏れる。
「おちんちんはまだまだ子供サイズですが、タマタマはそこそこ成長しているようですね。これは将来、子宝が期待できますわ。将来も安泰ですわね」
少年の性器はまだまだ未発達であり、限界まで勃起した状態で先端こそ僅かに剥けて赤い粘膜が顔をのぞかせているものの、くびれのほとんどない真っ白なツクシの様な性器だ。当然陰毛など生えていない子供のおちんちんであるが、陰嚢だけは、既に大人のそれと同じほどの大きさまで成長していた。
ミーファが少年の陰嚢をころころと柔らかな手の上で転がす度に、身悶えしたくなる快感が腰を上ってくる。少年にとって、そこが快感を産むこと自体が新しい発見であった。先走りがいっそうたらたらと溢れ出し、僅かに露出した亀頭が温かな潤みに包まれる。
「ふふ、大きさはそこそこでも、やはりまだまだお子様ですねぇ。しかしまあ、誰かに触られた経験などありませんでしょうし、敏感であるのも仕方なしですわね」
少年の肩に顎を乗せたミーファが、耳たぶに触れるか触れないかという位置で甘くつぶやいた。寒気と紙一重のゾクゾクとした快感が耳から入り、体内に波紋のように広がっていく。全身の産毛が逆立つ。
「ふふふふ、どうしました?」
ミーファがまた耳元で、今度は少し意地悪そうに呟いた。唇は触れていなないのに、空気の振動で口の動きが手に取る様に分かる。それほど、少年の耳は刺激に敏感になっていた。
「坊ちゃまは耳が弱いようですねぇ💛」
そう言うや否や、耳の中に今まで感じたことのない生暖かく柔らかな感触が侵入してくる。ミーファが自分の耳に舌を突っ込んだのだ。
「んんーーーー!!」
強烈な未知の快感に、少年は跳ねるように身を仰け反らした。だが、ミーファはまるで少年の耳にかぶりつく様にして、耳を舐めるのを止めない。両手で少年の頭を押さえつけ、その耳に吸い付く。
体の中に、ミーファが耳を舐める水音が響く。少年は脳を侵すような快感に身の危険を感じ、何とか逃れようと暴れもがくが、ミーファを振りほどけない。
「あーーー! あーーーー!!」
腰を地面に打ち付けるようにして、のたうち回るエミール少年。口を閉じるのを忘れているせいで、端から涎がこぼれているが、それすら気が付けない。
そして、その瞬間は突然やってきた。耳から今までにない暴力的な快楽の高波が、全身向けて広がっていく。快楽の波はまず最初に少年の脳を犯し、その思考を奪った。次に視覚が侵され、目の前が真っ白になる。そして胴と腰、足の筋肉が張り詰め、少年は腰を浮かせるようにして体を弓なりに逸らす。行き場を無くした波は出口を探して少年の睾丸のなかをぐるぐると巡回し、そしていよいよ尿道を発見し、待ち望んでいた瞬間の為にその道を一気に駆け上る。
「あっいけません! 坊ちゃま堪えて!」
少年の異常に気が付いたミーファが耳から舌を引き抜き叫んだ。しかし、舌を引き抜く時の耳穴をずるりと舐めあげられるような感覚が少年にとって追い打ちとなった。弓なりに逸った幼い体躯が、痙攣する。
「ーーーー!!」
痙攣に合わせて、熱いほとばしりが勢いよく打ち出された。それは腹をこえて少年の顔まで届き、桃色に染まった頬に白い点を落とした。
ミーファが、脈動するペニスにかぶりつき、喉で青い情欲を受け止める。青臭いカルキ臭が、喉から鼻に喉ってミーファの嗅覚を満たした。
精液は次から次へとドクドクと溢れ出し、飲み込めきれなかったものがミーファの柔らかな唇を伝って少年のへそに落ちた。
☆
長い長い射精が終わり、ミーファが未だ固さを失わないペニスを加えたままふぅと鼻で息をつく。亀頭を包む過保護な包皮の隙間に舌を突っ込み、そこに溜まってしまった精液まで綺麗に舐めとってから、ようやく「ちゅぽん」と音を立ててペニスを放す。
顔を上げて振り返れば、少年は虚ろな目でぐったりと倒れ込んでおり、全身が汗でしっとりと濡れている。ミーファは少年の頬に精液が一滴残っていることに気が付き、それも舌で舐めとった。
「まさかここまで弱いとは……」
正しい自慰の仕方を教えるはずが、興奮を高めるための前戯でここまで派手にイってしまうとは、完全に予想外だった。
そもそも、まだペニスに触ってすらいないのに、射精までしてしまうとは。
「坊ちゃまー。起きてくださいよー」
無防備な乳首をぺろぺろ舐めてみる。身体が若干痙攣するが、反応が鈍い。意識が遠くに行ったまま帰ってこないようだ。
「……坊ちゃま!!」
足首に絡ませた影の蔦をシュルシュルと伸ばし、少年のふとももまでを拘束する。
そして、その足をがばと大きく開かせると、少年の股の間から細い蔦を一本召喚し、少年の睾丸の裏、即ち肛門の辺りに潜り込ませた。
……つぷ!
「んあ!」
少年が飛び起きた。
自分は意識を失っていたのかと驚く前に、肛門に感じる強烈な不快感と排泄欲求に驚く。
「坊ちゃま! 情けないですわよ!」
だがミーファはそんなことはお構いなしに、少年の前で腕を組んでぷりぷりと怒り出す。
「まだ前戯の段階だというのに、お一人であんなに激しくイかれるなんて! 先ほどの、将来も安泰という言葉は取り消します! あたくし、シェルドン家の将来が俄然不安になってきましたわ!」
「で、でもそれはミーファが……」
「黙らっしゃい!」
肛門に突っ込まれた細い蔦が、ぐっと動いた。
「うぅ!」
腹痛を伴う、強烈な便意。しかしどういうことだろう? そんな状態でも、少年の幼いペニスはギンギンに勃起している。さらには先ほど蔦が動いた時、ペニスの根元のさらに奥の辺りから、何か温かい感覚がじんわりと広がる感じがした。それは睾丸や耳から得たものと同じく、少年にとって全く未知の感覚であった。
「そのうち悪い女に騙されるのではないかと、あたくしもう心配で心配で……って、聞いてますの! 坊ちゃま!」
少年が未知の感覚に気を取られている間も喋り続けていたミーファだが、少年が何か別のことに気を取られていることに気が付き、またもや肛門の蔦をうねうねと動かす。
「んぅ!」
まただ。また、何か熱い感覚がペニスの根元で生じた。少年に、ある予感が走った。
これも、先ほどの未知の感覚と同じ類のものなのではないか?
その様子を見て、ミーファも何か悟ったらしい。やれやれと溜息を吐く。
「全く、勉強熱心なのは結構ですが、もっとこう、受け身ではなく積極的な、女性を責める側に興味を持って欲しいものなのですが……まあいいでしょう」
そういうと、彼女は少年のアナルから蔦を引き抜いた。少年は、ひゃん、と情けない声を上げる。
「このミーファ、教鞭をとったからには手加減は致しません。正しい自慰の仕方の前に、まずはおちんちんへの刺激に強くなっていただきます。坊ちゃま、お覚悟はよろしいですか?」
そう言うとミーファは少年の足をがばっと左右に開き、その間に潜り込んだ。彼女のふわふわとした手が、少年の玉と竿を包み込む。
「うぅ!」
「ふむ、先程は随分とあっさりと、しかも大量に射精されていましたが、まだまだ元気なようですわね」
ふにふにと、強弱をつけて性器全体をマッサージでもするかのように揉みしだく。
「ドクドク脈を打ってて、とても熱いです。スタミナは十分……。やはり問題は刺激に対する耐性ですか」
優しく性器全体を撫でまわしていたミーファの手が、突然きゅっと少年の白い竿をつかんだ。
そして、一息にその皮を根元まで引きずり下す。
「いたい!」
少年が叫んだ。何事かと下半身に目をやれば、見慣れていたはずの自分のペニスが全く違う姿に変貌している。具体的には、分厚い皮に乳飲み子のように抱かれていたはずの先端が、真っ赤でぷりぷりと湿った矢印の様な形状に変化している。
「やはり、日頃から剥く努力を怠っていたのですね。いけませんよ坊ちゃま。あまりおちんちんを甘やかし過ぎますと、女の人に簡単にイかされる、情けない男性になってしまいます。ちょうど先程の坊ちゃまのように、です」
だが、エミール少年はそれどころではなかった。幼い亀頭が、敏感な亀頭が、今初めて外気にさらされている。ヒリヒリ、ひんやりとした感覚が先っぽを包む。
今の少年にとって、ミーファが喋るときの空気の振動ですら、亀頭にふわっと快感の波紋を広げる刺激であった。
少年は、慣れない刺激に内ももを擦り合わせ、腰をひねる。すると、屹立したペニスがぷるんっと頭を振り、敏感な亀頭が左右に揺れる。
少年の脆弱な亀頭は、大気との摩擦でさえ刺激として受けとり、快感の信号を脳へ送ってしまう。
そしてその刺激に少年はまた身悶えし、快楽のループが始まる。
うーうーとうなりながら、歯を食いしばって身悶え続ける少年を見て、ミーファは溜息を吐いた。
「まったく、仕方ないですわね」
少年のペニスの根元を押さえ、快楽の無限信号を遮断する。
身悶えるのを止め、荒い息をつくエミール少年。
「坊ちゃま、あまりの醜態に、あたくし少々幻滅いたしました。少し、荒療治といかせていただきます」
そうして、少年のペニスを、ぺろりと舐めた。
「ひゃあぁ!?」
少年が情けない声を上げる。
「静かに! この体たらくでは手での刺激では痛いだけでしょうからね。同じ粘膜どうし、口で刺激いたしますので、少しは刺激に慣れてください」
そういうとミーファは、少年のペニスをぱっくりと咥え込む。
「〜〜〜〜〜〜!!!!」
少年は、声にならない悲鳴を上げた。
ミーファは、ペニスを咥えただけだ。舌を動かしたりはしていない。
だが、彼女の温かい口内が、息遣いが、脈動が、生命活動をする以上は発生してしまう微かな振動が、今の少年には十分すぎる刺激だった。
「ああ、だめぇ! でちゃうよお!」
少年は腰を弾ませた。敏感すぎる亀頭が、ミーファのぬるりとした口内の粘膜に触れる。
少年の目の奥で、星が弾けた。
小さなペニスからは考えられないほどの量の精液が、ミーファの口内に向けて発射される。
「んう!?」
ミーファにとっても、二回目だというのにここまで早い射精は予想外だったようだ。
幼いはずのペニスは壊れた蛇口のように精液を吐き出し続け、ミーファはそれを零さないように飲み続ける。
ミーファが精液を嚥下するその刺激が少年のペニスに伝わり、また射精の勢いが強くなる。
結局、少年が射精を終えるまでに数分はかかった。
ミーファが荒い息をつき、顔を上げる。
目の前には、恍惚の表情と共に、気を失って倒れているエミール少年。
ミーファは慌てて少年の上半身に駆け寄り、口に耳を寄せて呼吸を確認する。
……よかった、ちゃんと呼吸している。脈を確認しても、普通の速さ、平時のリズムに戻っている。
「……まさか、あんなに可愛らしいお顔をされて、これほどの絶倫でしたとは」
ミーファは、安心と疲労から大きなため息をついた。
魔力補給に始まって、自慰の作法を指導すると、建前がつぎつぎと入れ替わり、もはや何が何だか分からない。
「まあ、魔力は十分すぎるほど頂きましたし、今日はこれくらいにしておきますか……」
彼女はエミール少年の服装を整え、毛布を掛けてやった。
「明日は必ず、必ずお守りいたします。坊ちゃま」
そういって少年の寝顔に小さくキスをすると、ミーファも眠りについたのだった。
15/03/15 01:49更新 / 万事休ス
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