読切小説
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妻の耳
早朝、ベッドの上で寝ていた私が窓より射し込む光を受け薄く目を開けると、艶やかな黒色を魅せる二つの二等辺三角形が視界の端に入って来る。
 私の胸の中、体に抱き着き安心しきった表情で眠る我が妻アヌビスが持つ、ウルフ種が見せる魅力溢れる尖った耳である。私はその魅惑の耳を見つめ彼女の温かさを感じながら、布団の中で微睡み思考を始めた。

我が妻の狼耳は数多く見てきた獣耳持つ魔物娘達の中でも、特に素晴らしい形と魅力を放つと私は思うのだよ。
 友人達との酒宴でお互いの妻の素晴らしさを語り合う時に耳の話題が始まったら、キキーモラの奥方を持つ垂れ耳至上主義の親友と本気の拳で語り合う程度には。

そんな私の熱い想いを二日前の朝食時、久しぶりに妻へと伝えたら。

「私なんて、まだまだ…」

という、奥ゆかしい返事と共に耳を若干倒して紅い瞳を潤ませつつ、褐色の頬を仄かに赤らめた表情をくれるのが私の妻なのだ。
 それを見た時、私は愛が心の奥底より溢れ出てしまい、つい襲い掛かかり全力でよがらせてしまった。尚、朝からハッスルしたせいで前日から彼女が決めていた予定が大いに狂い、叱られたのもよく覚えている。妻の怒った顔も実に愛らしかったのだよ。

いや、それよりも今は視界に広がる彼女の耳である。
 まず毛並みが素晴らしいと私は思うのだ、健康的な彼女の毛は陽の光を受けると輝く白き線を浮かべるし、偶然指先が掠った時感じたのは絹など話にならない程きめ細やかで優しい肌触り、綺麗だとか見事な物だと思った女性の耳は沢山見てきたが、触れたい愛でたいと切に願ったのは妻くらいである。

なので私と彼女が居間にあるソファで安穏と過ごしている時などに、思わず触りたくなる事が多々あるのだが。

「耳は、敏感なんだ」

と、妻の優しい笑顔と共に素早くしかし丁寧に彼女の暖かい手により私の手は握りこまれ、やんわりと断られてしまう。
 その時の悔しさたるや、彼女を左手で抱き寄せ、右手で顎を優しく掴み、私の口で薄桃色をした彼女の唇を奪ってしまうほどだった。
 いやまあ、ただ単に笑顔を見たら愛おしさが爆発してしまうだけであるが。

普段妻が起きている時は触れないし、情事の最中は耳を触って弄る暇や余裕など無い、その後は心地よい満足感と疲労感を覚えながら二人一緒に寝てしまう……つまりだ。早朝、私が先に起きた今、この時、くらいしか耳に触れ愛でる機会はあり得ないのである。

さて。

まず、私は目を細めて神経を集中する、次に彼女の素晴らしい形と弾力を持つ尻掴む左手を優しく離し、彼女の背に回していく。右手は腕も使い彼女をしっかりと抱いているので動かせない。

なので起こさぬように起こさぬように、静かに腰から背中、背中から肩まで布団の中ゆっくりと時間を掛けて、左手を上昇させる。
 途中、妻のみずみずしい褐色肌に指先が触れてそのまま撫で回したい衝動に駆られるが耐える。右手はしっかりと肌に触れているのだから、深緑の色混じる美しい黒髪の頂を今は目指すのだ。

妻の頭頂部に到達する為に左手を登らせること暫く、ようやく頭に手を回す事に成功する。さて、すぐに耳へと行きたい所だが、いきなり触れると起こしてしまうやもしれん。なので妻の美しい髪を優しく撫でる所から始めた。私が撫でたくなっただけとも言う。

妻の後頭部に左掌を合わせて撫でる、丁寧に思いやりを込めて優しく撫でるのだ、力を込めてはならない、だが安らぎを与えるように。じわじわと撫でつつ掌を狼の耳に近づける。そうして後少しという、その時。

「ん…」

瞬間、妻が身じろいだ。私に緊張が走る。

「んぅー。……ん」

もぞもぞと私の胸の中で彼女は動き続け、やがて良い具合に収まったのか身じろぎを止め微かな寝息と共に睡眠を再開した。
 私は安堵して溜め息を吐きそうになるが、妻の耳に掛かかったら起こしてしまうかもしれないので、それを飲み込む。

妻の可愛いすやすやとした寝息を聴いて、身悶えそうになる体を気合で抑えて三分程だろうか、私は彼女の耳攻略を開始した。

先ず私から見て、左耳生える根元に人差し指で触れる。そうしたら髪の質感毛の質感両方が味わえる境目にそって指の腹を這わせて行く、さらさらな髪としっとりとした耳の感触が指から伝わり私の心に深い感銘を与えてくる。

「ん、んん…」

妻が反応した。やはり耳は敏感らしい、だがここで止めたら次いつ触れれるか分からないので続行する。

私は人差し指と中指を曲げ、彼女の左耳のふちに合わせると、根元から頂点までをゆっくりと上下に撫でていく。上へ下へと動かす指には耳の厚みと温かさが代わる代わる得られて味わい深く、頂点たる毛先は人差し指で弄れば、柔らかい感触である。

「あっ、ふ。んん…」

私が指を上下させる度に妻の口から悩ましい声が漏れてきた、どうも耳の何処かに特に敏感な箇所があるようだ。実に興奮する。
 それを探し当てる為に、私は更に撫でを続行する。根元より全ての指を使い耳を優しく包み込むように撫でるのだ。中間より、やや下であろうか? 一番耳がヒクついている気がするので重点的に攻め立てた。

「んっ、んんっ。…あっ、やぁ」

妻の声色は僅かな不快感と、それに勝る色混じる如何ともしがたい物になる。私の愚息も勃ってきてしまう、続けるとまた朝から突入してしまいそうだがここで辞めるわけにも行くまい。

そうこうしている内に、ついにピクピクと妻の耳が動きだし私の掌から逃げようとしだした。だが私は耳の根元に左手を添えて、逃げようとすればする程当たる状態にして攻める。ついでに弱点らしき箇所を人差し指でいやらしく弄り続ける。指先で攻めて女性を喜ばせるは男の務めであるからに。

「ひぅ、やぁ…め。ぁあ…」

妻は半覚醒したのか、拙い言葉でイヤイヤと言っている。だが耳はもっと構えと、むしろ私の掌にくっ付いてきた。お安い御用である。
 左手で耳全体を軽くマッサージしながら、傷をつけない様に指を立てて刺激を与えていく。フリーな状態の右耳には私の鼻を近づけてその香りを楽しむ為に息を吸う。妻の汗の匂いが私の肺を満たした。ああ、しゃぶり付きたい。

「ひぁ…ひゃん…やぁあ。あ、あああ…あ…」

弄り過ぎたせいか、耳はビクビクと痙攣した後に静かになった。妻は身体を震わせた後に息を少し荒くして胸の中で寝……ていないよなあ、これ。

段々と私の背に回していた妻の左腕がしまって行くのを感じるし、我が愚息を獣の右手で弄りだしているし、鼻息荒く私の胸にピチャピチャと舌を這わせているし。
 これ不味い。と私が思うも最早手遅れである、私の胸より妻のくぐもった声が聞こえて来たのだ。何か怖い。

「おはよう? 貴方」

「おはようございます!」

あ、これ駄目だ。

「耳は敏感だって、私はいつも言っていたな?」

「し、知っていました」

「それでも、触ってしまったんだな?」

「た、耐えられませんでした」

「そうか」

「はい」

「なら、仕方ないな」

どうやら、お許しを頂けた様である助かっ。

「あの」

「何かな? あ な た」

「そろそろ私めの愚息を離して頂けますと…」

「触りたく、なったんだ」

今グッっとされたら我が息子が逝く!

「はい、分かります! ごめんなさい! でも収まりがつかなくなりますから、その辺でどうかお許しを!」

必死で懇願する私である情けなや。収まりと言うよりは、離して下さいと素直に言ったほうが良かったかもしれないと後悔していた時だ。

「私も、ここが、大変なんだ!」

そう告げた妻は掛け布団を飛ばし私を優しく押し退けるた後、腹にまたがり膝立ちをして褐色肌の股にある秘所を見せ付けてくる。ピンク色をした肉の割れ目からはダラダラと透明な蜜を滴らせ、口は今すぐにでも逸物を加えたいとヒクついていた。穴の奥にて蠢くヒダも良く見える。

「静めてくれるな?」

有無は言わせぬ、という紅い瞳を湛え魅惑的な表情を浮かべる妻。狼の耳を聳え立たせ尾を振りながら、私に覆いかぶさり両腕を獣の手で押さえてベッドに固定する我が細君。

「今日のよてっ」

両手を押さえ込まれ何事かを言おうとした私の口を、彼女は桜色の唇で塞ぎ舌を絡ませながら唾液を啜る。更には腰を落として下の口で愚息を貪りだした。これは耐えられぬ。
 この後、私も彼女に応えるように熱狂してしまい二時間程交り続ける事になった結果、やはりというか何というか。また一日の予定が大幅に狂った為に妻より怒られてしまう。
 その時の妻の表情はむっつりとした物ではあったが、我を忘れて私を襲った負い目からか狼耳は自信なさ気に垂れていたが見れた。

その姿が非常に可愛らしかったので、ほとぼり冷めたらまたやろうと私は心に誓う事にする。
14/07/07 23:46更新 /

■作者メッセージ
愛でたい…。

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