前後
レスカティエの、二つの一日。
デルエラによる陥落前日と、陥落二日後の話。
◆ 前 5:30
レスカティエ王立騎士団の朝は、太陽よりも早い。
地平線の下に沈んでいる時間から、団員の勤めは始まる。
「点呼！」
廊下の最奥の部屋から、小隊長が顔を出す頃には、すでに全員が自室の前に整列していた。
「いち！」
「に！」
「さん！」
団員の中に、いまだ少年の面影を残す者がいた。名はグレゴリオ、歳は十五。
「し！」
自分の番に、グレゴリオは団員の中で一際大きな声を放つ。声変わり直後の、やや高い声が、騎士団寮の天井の高い廊下に響いた。
◆ 後 5:30
窓の外では、鳥が鳴いている。
「うーん……」
グレゴリオは、もぞもぞとベッドの中でうごめく。
彼はすっぽりと布団に覆われており、外からは彼の様子を見ることはできない。
「あっ、んっ、んんぅ……」
動物のように膨らんだり縮んだりを繰り返すその中からは、彼のものではない、少女の艶かしい声が漏れ出ていた。
◆ 前 6:00
騎士団寮の食堂は、大勢の人間がいるにもかからわず、静かであった。
節制と規律を重んじる騎士団において、必要以上に騒ぐのは厳禁であった。自分たちは、常に主神様に見られていることを忘れては行けない。それが彼らの心に深く刻み込まれていた。
「ごちそうさまでした」
パンとスープ、そしてサラダ。質素で新鮮な朝食を終え、グレゴリオは小さく、食材に感謝の言葉を述べた。
器を厨房へ持っていく。食堂の従業員にそれを渡すと、彼は静かに修練場へと向かった。
◆ 後 6:00
朝の日差しが、分厚いカーテンの隙間から部屋へ漏れ入る。
しかし、布団に全身を覆われた彼の目には、それは届かない。
「んっ、うぅっ……！」
彼が小さく呻くと、布団が一度、二度、大きく震えた。
「はにゃぁ……っ」
とろけきった少女の声が、布団から聞こえる。
震えた拍子に、布団が一部めくれた。
そこから現れたのは、瞳が潤み、口をだらしなく広げ、声と同様にとろけきった表情を浮かべる、青肌の魔物娘の顔であった。
◆ 前 8:00
「セイッ！ハッ！」
騎士団寮の中庭に作られた修練場。団員のハツラツとした声が、街にまで響いていた。どんなに寝覚めが悪い人間であっても、皆この声で起きる。
団員は修練場に目いっぱいに広がり、等間隔に並んで槍を振るう。
「動きが遅いぞ！訓練だとは思うな！目の前に敵がいると思え！」
眼帯をした女教官が、団員に檄を飛ばす。
「セイィ！ハイィ！」
そのおかげか、彼らの掛け声も、鬼気迫ったものになっていった。
グレゴリオもその中の一人で、槍を突き出し、大きく振り回す。飛び散った汗が、朝の日差しにきらめいた。
◆ 後 8:00
グレゴリオは、その日三回目の射精をした。
抱き枕のように後ろから抱きかかえている少女の蜜壷の中に、全て放たれる。そのたびに、少女が快楽に満ちた声を漏らす。
「あっ……あぁ……」
彼のまぶたが開いた。吐息に覚醒の意思がこもり、少女のうなじを熱くする。
「ふゃぁ……ぐれごりおおきたぁ……」
とろとろの声で、少女がつぶやく。
彼女は青肌だけではなく、他にも人外の特徴を持っていた。
尖った耳。赤い瞳の周りに、黒い淵の目。頭からは角が一対生えている。腰からは翼と尻尾が生え、歓喜に揺れる。
彼女の名はベリア。魔界からレスカティエに攻め入った尖兵、デビルである。
「あっ、お、おはよう……」
小さく、グレゴリオが言う。しかし、言葉に反して、彼はまだ起きようとはしなかった。
腕の中にいる、世界一気持ちいい枕が手放せず、強く抱きしめてしまった。
「んんっ、そうだよぉ……まだ起きなくて、いいからね……」
グレゴリオの鼻先にうなじをくすぐられながら、ベリアは安心しきった声を上げた。
◆ 前 10:00
座学。
槍の修練が終わった後は、講堂で講師の教育を受ける。
内容は主に神学と兵法で、ありがたい神の御言葉と、適切な戦闘のやり方を学ぶ。
運動の直後であり、ありきたりでつまらない内容であるが、眠る者は一人もいない。
居眠りが講師に見つかったら昼食抜きという罰が与えられるせいもあるが、団員は皆、授業の内容が自分に必要なものであると信じきっているのだ。
当然、グレゴリオもその一人であり、将来、この授業の内容が、絶対に魔物討伐に役に立つと思って疑わなかった。
◆ 後 10:00
グレゴリオとベリアは上半身を起こし、ベッドの上に座っていた。
「はい、あーん」
にやけた笑みを浮かべる彼女の手には、一口大に切られた虜の果実がある。それを彼の口元に寄せると、グレゴリオは寝ぼけた眼を瞬かせながら、ゆっくりとかぶりつく。
「やんっ」
果実と一緒に、ベリアの指まで口の中に入ってしまう。
柔らかく熟した果肉を舌でつぶしながら、彼は彼女の指を舐めしゃぶった。
「やっ、あっ……」
始めはくすぐったそうに嬌声を上げていた彼女だったが、徐々に艶が入ってくる。
「んっ、んぅぅ……」
瞳がとろりと潤み、頬が湧き上がった性欲で染まる。
彼女のそんな様子に気付いたのか、彼は彼女の腰に回していた腕の力を強くした。
「はっ……んっ……。したいの？」
彼の耳元に唇を寄せ、ベリアが艶めかしく囁く。彼は小さく、しかし彼女に分かるようにうなずいた。
「いいよ。セックス、もっとしようね」
わずか二日ですっかり欲望に素直になった彼の様子を感じ、ベリアは嬉しさをにじませ微笑んだ。
◆ 前 12:00
昼食の時間。食堂に再び人が集まり、静かながらも、濃密な気配が満ちる。
朝食とは違い、昼は肉が出る。動物の命を食すことに、神に感謝と謝罪を述べる。
グレゴリオも、両手の指を絡ませ、小さく俯いて聖句を唱えた。
「我々に食事と命を与えられしことを、深く神に感謝致します」
長机に整然と座る団員たちの声が、さざ波のようにこだました。
◆ 後 12:00
「はっ♥んっ♥そこっ、奥こつこつ♥いいっ！」
グレゴリオに覆い被せられ、ベリアは淫らに声を上げる。
彼は彼女の顔の両側に手をつき、互いに視線を交わらせる。性交の快楽に歪む顔を、一瞬でも見逃さないため。
「はぁぁ、にゅるにゅるすごいぃ……デビルまんこいぃぃ……」
グレゴリオが表情を緩ませる。だらしなく開いた口からは、唾液が糸を引いて垂れる。ベリアは、頬に落ちた雫を、舌で舐めとった。
「ん゛っ！」
彼が全身を震わせた。睾丸が上下にひくひくと動き、中に溜まった精液を子宮の奥へ放つ。
「んぁっ、あぁ……」
貪欲に、子宮が精液を嚥下する。
「んっ、んぅ……！」
グレゴリオは、射精の最中も腰を止めることはできなかった。精液を一度尿道から放つたびに、弱々しく腰が前へ突き出される。
魔物膣に溺れ、本能で快楽を貪ろうとする夫を見て、妻は彼への愛しさをさらに強くした。
「こっちおいで」
激しい運動によって、汗に濡れた彼の後頭部に、そっと彼女の手が触れる。
彼女の手に促され、彼の顔が下がる。そっと目を閉じた彼女を見て、彼は彼女の行動の意図を理解した。
「れるっ」
寄せられた彼の口内に、ベリアの舌が侵入した。
満たされた性欲によってそれは温かく湿っており、二人の舌が触れるたびに、脳内にぴりぴりと心地のよい刺激が生まれた。
夫婦の体はぴったりと密着し、暖かな幸せに包まれながら、夫は精液を放ち続け、妻は膣肉で搾り続けた。
◆ 前 15:00
午後の座学が終わると、トレーニングの時間となる。魔物たちの領地に攻めるためには、体力が必要であるからだ。
団員は小隊ごとに別れ、パトロールも兼ねて城壁の外を走る。
「次！第六班！」
上官の号令に合わせ、グレゴリオが走る。
鎧を纏い、腰に剣を掛け、背中には槍と盾を背負う。かなりの重労働である。
「おお……」
彼が一歩踏み出したとき、背後で感嘆の声が上がった。匂い立つ花のような香り。
「ウィルマリナ・ノースクリム、ただいま戻りました」
どんなに脚の速い人間であっても、この重装備ではまだ城壁の半周を回るので精一杯であろう。
しかし、彼女は汗を幾筋か垂らすのみで、笑顔さえ浮かべていた。
――これが、勇者……。
グレゴリオは、いつか自分も彼女のような勇者になりたい、という憧れを胸に秘めていた。
◆ 後 15:00
「ご飯の時間だよ」
掛け布団のように、グレゴリオの上で密着していたベリアが、体を起こそうとする。
「あっ……」
包み込んでいた温もりが消え、外気が流れこんでくる。彼はそれを阻止しようと、反射的に彼女の背中に両腕を回した。
「行っちゃやだ」
力強く抱き寄せ、彼は彼女の首もとへ鼻先を寄せる。
彼の行動に、ベリアは胸を締め付けるようなときめきを覚えた。同時に、軽く絶頂を迎えた。ひくひくと、いまだ彼の陰茎を受け入れている膣が収縮をする。
「大丈夫だよ。離れないから」
でも、と彼女は言葉を続け、体を何とか起こす。
「体勢は変えさせてね」
ひんやりとした空気が、二人の汗で濡れた彼の腹と胸を冷やす。彼の全身が寒さと寂しさに震える。
「よいしょ」
掛け声とともに、彼女の体が、彼に背中を向けるよう回転する。
「んっ♥」
カリが膣壁をこすり、ベリアの尻がひくりと一瞬だけ持ち上がる。
「ほら、こっちこっち」
後ろ手に、彼女が手招きをする。グレゴリオは、微睡みと魔膣による快感でぼんやりとした思考の中で、何とか彼女の意図を察する。
彼も、彼女の後を追い、体を起こす。そして、背中から覆いかぶさるように彼女を抱きしめた。
「うん、そうそう」
期待通りの行動をしてくれたことに、彼女は嬉しそうに微笑む。
「ほら、もっとぎゅーってしていいんだよ？ね、あったかいでしょ？」
寮での訓練により、しっかりと筋肉の乗った彼の腕を優しくなでながら、ベリアが問う。
「うん、あったかくて、気持ちいい」
彼女の髪と角の境目に鼻先をこすりつけながら、彼が答えた。
「じゃあ、ちょっと待っててね。お昼ごはん、作るからね」
そう言うと、彼女は小さくつぶやくように、この世界のどこでもない言語を詠唱した。
すると、部屋の真反対にある台所から、包丁、鍋、お玉、食材と、料理に必要なものが次々と浮遊しながら彼女の手元へやってきた。
「これで、準備オッケー」
まな板と鍋を温めるための炎の魔法石が、重そうにゆったりとした速さで飛んでくると、彼女はいつの間にかエプロンを身にまとっていた。ぱんぱんと、気合を入れるために両手を叩く。
「あなたのために、美味しい料理、作るからね！」
◆ 前 17:00
「神は聖なる御手により、魔物と戦うための武器と鎧、そして勇者をお作りになられたのです」
日が傾き、空が橙に染まる頃。団員は寮に併設された聖堂へ行き、礼拝を行う。
神父の言葉を聞き、神に祈りを捧げる。
皆、手に宗教書を持っているが、開くものはいない。レスカティエに住むものは皆、幼き頃から神父が語る、神の言葉を聞いて育つ。よって、全員、全て暗記している。
夕日が聖堂奥の窓から差し込まれ、聖像の影が伸びる。
両手を広げた聖人の影は、さながら子供を抱きしめ、包み込むように、団員たちに覆いかぶさっていた。
◆ 後 17:00
「やっ、あっ、あぅっ♥そんなに、こちゅこちゅって奥叩いたらっ、お昼ごはんできにゃいぃ♥」
「また、でるっ……！」
グレゴリオは、ベリアの体を強く抱き、射精の快楽に浸った。
「ん゛っ、んんっ……！あふぅ♥」
彼女はいまだ、昼食を作れないでいた。張り切って料理を作ろうとする新妻の裸エプロンを見て、夫が興奮してしまったからだ。
二時間、彼は自分の内から湧いてくる肉食獣めいた本能に任せ、妻の体を後ろから貪った。
彼女の腹に両腕を回し、ただひたすらに腰を打ち付ける。射精欲が限界まで達すると、我慢することなく射精する。睾丸の脈動が収まると、また腰を前後させる。彼は二時間の間に、十二回の射精をしていた。
「んぁっ、はぁっ、あぁ……。もぅ、ごはん、つくれにゃいぃ……。しぇっくしゅきもひいぃ……。グレゴリオのおひんひん、だいしゅきぃ……♥」
全身を弛緩させ、ベリアは体を丸めて絶頂を続ける。ひくひくと全身が細かく痙攣し、湿った髪が俯いた彼女の顔に筋を描き貼り付く。彼女の体は、自分のものと、延々と密着していた彼の汗で、雨に降られたかのようにずぶ濡れであった。
◆ 前 20:00
夕食。燭台の薄明かりの中、団員たちは静かに食事をとる。
毎日、疲れを癒やすためにぶどう酒が振る舞われる。神聖な意味も持つそれは、グレゴリオにも飲む権利がある。現代日本とは違い、この世界に飲酒の年齢を制限する決まりがないためである。
全体的に味気のない料理だが、それに文句を言う団員はいない。彼らは、毎日三食保証されているのは、自分たちが騎士団の一員であるからだと自覚しているからだ。彼らにここを辞めるという選択肢は存在しない。帰っても、元の貧しい生活に戻るだけだ。それどころか、騎士団から逃げ出した恥として、さらに酷い生活になってしまうのが目に見えていた。
グレゴリオも、その中の一人だった。
食事をするたびに、彼は家族を思い出す。
――僕の居場所は、あそこにはない。
農家の次男として生まれた彼に、農業従事者としての居場所はなかった。金は無く、騎士団に入団する際に国からもらえる僅かな謝礼金のためだけに、グレゴリオは無理やりここに入れられたのだ。
――だから、僕は、立派な騎士になって、いつか家族を見返してやる。
黒い反骨心が、彼をここに繋ぎ止めていた。
――いつか、絶対に。
いつかは騎士として、魔物と戦わなければいけない日が来るだろう。しかしそれは、もうしばらく後である。その日が来るまでは、ここでひたすら己を鍛えるしかない。彼はそう考えていた。
そのいつかが、今日であるとは、彼はまだ露とも思ってなかった。
◆ 後 20:00
「はーい、それじゃあ洗いまーす」
うきうきと表情を弾ませ、ベリアがとろけた笑顔を浮かべる。
二人は、汗でべとついた体を、風呂場で洗い流していた。
彼女は、手に持っていた石鹸を、まずは自分の腹と胸に当ててこする。見る間に彼女の体は泡にまみれ、可愛らしい乳首や、無毛の恥部を覆い隠した。
「では、失礼致しますね」
先ほどとは逆に、今度は彼女が、グレゴリオの背中に抱きつく。
「にゅーる、にゅーる」
可愛らしい声を上げながら、彼女は夫の背中を上下する。平らだが柔らかい乳房と、硬くしこり立った乳首が、彼の背中をくすぐる。
「グレゴリオって、思っている以上に筋肉がついてるんだね」
うっとりと、彼女が囁く。
「うん、ずっと、鍛えてたから」
全部無駄になったけどね、と彼は続ける。
「ううん。そんなことないよ。だって……」
彼女が背中から離れ、彼の全面へ回る。
「ここで、この騎士団寮で鍛えていたから、私に会えたんだよ。だから、無駄じゃないよ」
泡まみれのベリアの腹と、湯に濡れたグレゴリオの腹がひたりと合わせる。その間には、幼い青肌裸体を見て、重力に逆らってそそり立つ陰茎が挟まれていた。
「はぁ……はぁ……」
彼はつやつやの腹に裏筋をこすられたせいで、彼女は子宮に届くほどの熱い熱を腹に受けたせいで、荒い呼吸をする。
二人の吐息が交錯する。
互いの視線が交差し、共に、相手が耐え切れないほどの性欲に脳内が支配されつつあることを理解した。
「んくっ」
太ももを伝ってこぼれ落ちるほどの愛液に満たされた蜜壺が、勃起によって皮の下が露出した亀頭を優しく包み込む。
「あっ」
腰を下ろした瞬間、彼女が濡れたタイルで足を滑らせる。
「んっ、はぁっ、あぁぁ！」
じゅぷり、ととろとろの液体に満たされた膣道を、肉棒がかき分けるように進む。
亀頭の先端が子宮口を叩いた瞬間、彼は本日二十数回目の射精をした。
◆ 前 24:00
鐘の音が、城壁の中に響く。
「敵襲ー！」
上官の叫ぶような号令が、グレゴリオの部屋にまで届いた。
「えっ、えっ？」
無理やり覚醒状態にされた彼の脳内は、正常に働かなかった。
――あっ、そうだ、まずは装備を……！
訓練を思い出す。鉄壁の結界に守られたレスカティエに、なぜ敵が侵入できたのか。それを考えるのは後だ。
彼は、ベッドの横に立ててある、武器の保管棚に手を伸ばした。
「こんばんは」
あまりにも場違いな声は、彼の混乱と興奮に満ちた心を冷静にさせた。
声のした方を向く。
「どーも、はじめまして」
彼は、目の前の存在を目にした瞬間、一枚の絵画を思い出した。
それは、実家のリビングに掛けられた宗教画だった。
薄布一枚を身に纏った、幼い子供の姿をした、天使の姿が描かれている絵。顔は天を向き、斜めに腕を突き出している。その方向からは、暖かな光が差し込んでいる。姿の見えない母、つまり主神に甘える、見ているだけで癒される絵だった。
満月の光が漏れ入る窓の前に立つ彼女は、彼にその天使を思い起こさせた。
幼い体型。小さな翼。露出した肌。
しかし、それ以外は何もかもが違った。
天使ならば、青い肌はしていないだろう。こんなに淫らな笑顔は浮かべないだろう。股間から液体は垂らさない。嗅いでいるだけで思考がぼやける香りなんて放たないだろう。禍々しい角は生やしていないだろう。
――うっ、くっ……え、何で……？
そして、見ただけで痛いほど勃起することはないはずだ。
「あなたを、幸せにするために来ましたー」
手を可愛らしくひらひらとさせつつ、デビル、ベリアは言った。
「えっ？」
彼女の言葉を脳で理解する前に、彼は背後のベッドに押し倒された。
◆ 後 24:00
結局、二人は何も食べず、ただただセックスを何度も繰り返した。
風呂に入ったばかりだというのに、入る前と同じくらい、汗で濡れてしまっていた。
「んふぅ……♥」
だが、二人にとって、それは嫌なことではなかった。むしろ、愛する相手の匂いに包まれ、幸せだった。ベリアは、満足気に鼻息を漏らす。
彼は、朝に虜の果実を食べたきりなのに、お腹が空かないのを不思議に思っていた。
「それはね、グレゴリオが、インキュバスになったからだよ」
自分の両手の指を、彼の指に絡ませながら彼女が言う。
「インキュバス？」
聞きなれない言葉を聞き、彼は首をかしげる。
「そう。私みたいな魔物といーっぱいエッチなことをすると、お腹が空かなくなるんだよ」
彼の耳に、彼女が唇を寄せて囁く。
「それだけじゃないの。どれだけエッチをしても、ずっと気持ちいいし、精液もたっぷり出るし、それに……」
ぺたんぺたんと、餅つきのように、彼女が腰を上下させ、ペニスを肉ひだで愛撫する。
「私とずっと、ずっと、一緒にいられるんだよ」
それは、二日間、ほぼずっとセックスを繰り返した彼にとっては、弱すぎる刺激だった。しかし、ずっと、目の前の愛妻と一緒にいられるという精神的充足感が、彼の射精欲を一気に引き上げた。
――ベリアと……この気持ちいい牝と、ずっと一緒。世界一大好きな相手と、永遠に愛し合える。
どろりと、彼の瞳が獣欲に濁った。神への信仰心が、全て、悪魔への愛で塗り替えられた。
「大好きだよ、あなた♥」
耳たぶへキス。その瞬間、彼は弱々しく、しかし、何分も何分も、長い間、彼女の膣内に精液を漏らし続けた。
デルエラによる陥落前日と、陥落二日後の話。
◆ 前 5:30
レスカティエ王立騎士団の朝は、太陽よりも早い。
地平線の下に沈んでいる時間から、団員の勤めは始まる。
「点呼！」
廊下の最奥の部屋から、小隊長が顔を出す頃には、すでに全員が自室の前に整列していた。
「いち！」
「に！」
「さん！」
団員の中に、いまだ少年の面影を残す者がいた。名はグレゴリオ、歳は十五。
「し！」
自分の番に、グレゴリオは団員の中で一際大きな声を放つ。声変わり直後の、やや高い声が、騎士団寮の天井の高い廊下に響いた。
◆ 後 5:30
窓の外では、鳥が鳴いている。
「うーん……」
グレゴリオは、もぞもぞとベッドの中でうごめく。
彼はすっぽりと布団に覆われており、外からは彼の様子を見ることはできない。
「あっ、んっ、んんぅ……」
動物のように膨らんだり縮んだりを繰り返すその中からは、彼のものではない、少女の艶かしい声が漏れ出ていた。
◆ 前 6:00
騎士団寮の食堂は、大勢の人間がいるにもかからわず、静かであった。
節制と規律を重んじる騎士団において、必要以上に騒ぐのは厳禁であった。自分たちは、常に主神様に見られていることを忘れては行けない。それが彼らの心に深く刻み込まれていた。
「ごちそうさまでした」
パンとスープ、そしてサラダ。質素で新鮮な朝食を終え、グレゴリオは小さく、食材に感謝の言葉を述べた。
器を厨房へ持っていく。食堂の従業員にそれを渡すと、彼は静かに修練場へと向かった。
◆ 後 6:00
朝の日差しが、分厚いカーテンの隙間から部屋へ漏れ入る。
しかし、布団に全身を覆われた彼の目には、それは届かない。
「んっ、うぅっ……！」
彼が小さく呻くと、布団が一度、二度、大きく震えた。
「はにゃぁ……っ」
とろけきった少女の声が、布団から聞こえる。
震えた拍子に、布団が一部めくれた。
そこから現れたのは、瞳が潤み、口をだらしなく広げ、声と同様にとろけきった表情を浮かべる、青肌の魔物娘の顔であった。
◆ 前 8:00
「セイッ！ハッ！」
騎士団寮の中庭に作られた修練場。団員のハツラツとした声が、街にまで響いていた。どんなに寝覚めが悪い人間であっても、皆この声で起きる。
団員は修練場に目いっぱいに広がり、等間隔に並んで槍を振るう。
「動きが遅いぞ！訓練だとは思うな！目の前に敵がいると思え！」
眼帯をした女教官が、団員に檄を飛ばす。
「セイィ！ハイィ！」
そのおかげか、彼らの掛け声も、鬼気迫ったものになっていった。
グレゴリオもその中の一人で、槍を突き出し、大きく振り回す。飛び散った汗が、朝の日差しにきらめいた。
◆ 後 8:00
グレゴリオは、その日三回目の射精をした。
抱き枕のように後ろから抱きかかえている少女の蜜壷の中に、全て放たれる。そのたびに、少女が快楽に満ちた声を漏らす。
「あっ……あぁ……」
彼のまぶたが開いた。吐息に覚醒の意思がこもり、少女のうなじを熱くする。
「ふゃぁ……ぐれごりおおきたぁ……」
とろとろの声で、少女がつぶやく。
彼女は青肌だけではなく、他にも人外の特徴を持っていた。
尖った耳。赤い瞳の周りに、黒い淵の目。頭からは角が一対生えている。腰からは翼と尻尾が生え、歓喜に揺れる。
彼女の名はベリア。魔界からレスカティエに攻め入った尖兵、デビルである。
「あっ、お、おはよう……」
小さく、グレゴリオが言う。しかし、言葉に反して、彼はまだ起きようとはしなかった。
腕の中にいる、世界一気持ちいい枕が手放せず、強く抱きしめてしまった。
「んんっ、そうだよぉ……まだ起きなくて、いいからね……」
グレゴリオの鼻先にうなじをくすぐられながら、ベリアは安心しきった声を上げた。
◆ 前 10:00
座学。
槍の修練が終わった後は、講堂で講師の教育を受ける。
内容は主に神学と兵法で、ありがたい神の御言葉と、適切な戦闘のやり方を学ぶ。
運動の直後であり、ありきたりでつまらない内容であるが、眠る者は一人もいない。
居眠りが講師に見つかったら昼食抜きという罰が与えられるせいもあるが、団員は皆、授業の内容が自分に必要なものであると信じきっているのだ。
当然、グレゴリオもその一人であり、将来、この授業の内容が、絶対に魔物討伐に役に立つと思って疑わなかった。
◆ 後 10:00
グレゴリオとベリアは上半身を起こし、ベッドの上に座っていた。
「はい、あーん」
にやけた笑みを浮かべる彼女の手には、一口大に切られた虜の果実がある。それを彼の口元に寄せると、グレゴリオは寝ぼけた眼を瞬かせながら、ゆっくりとかぶりつく。
「やんっ」
果実と一緒に、ベリアの指まで口の中に入ってしまう。
柔らかく熟した果肉を舌でつぶしながら、彼は彼女の指を舐めしゃぶった。
「やっ、あっ……」
始めはくすぐったそうに嬌声を上げていた彼女だったが、徐々に艶が入ってくる。
「んっ、んぅぅ……」
瞳がとろりと潤み、頬が湧き上がった性欲で染まる。
彼女のそんな様子に気付いたのか、彼は彼女の腰に回していた腕の力を強くした。
「はっ……んっ……。したいの？」
彼の耳元に唇を寄せ、ベリアが艶めかしく囁く。彼は小さく、しかし彼女に分かるようにうなずいた。
「いいよ。セックス、もっとしようね」
わずか二日ですっかり欲望に素直になった彼の様子を感じ、ベリアは嬉しさをにじませ微笑んだ。
◆ 前 12:00
昼食の時間。食堂に再び人が集まり、静かながらも、濃密な気配が満ちる。
朝食とは違い、昼は肉が出る。動物の命を食すことに、神に感謝と謝罪を述べる。
グレゴリオも、両手の指を絡ませ、小さく俯いて聖句を唱えた。
「我々に食事と命を与えられしことを、深く神に感謝致します」
長机に整然と座る団員たちの声が、さざ波のようにこだました。
◆ 後 12:00
「はっ♥んっ♥そこっ、奥こつこつ♥いいっ！」
グレゴリオに覆い被せられ、ベリアは淫らに声を上げる。
彼は彼女の顔の両側に手をつき、互いに視線を交わらせる。性交の快楽に歪む顔を、一瞬でも見逃さないため。
「はぁぁ、にゅるにゅるすごいぃ……デビルまんこいぃぃ……」
グレゴリオが表情を緩ませる。だらしなく開いた口からは、唾液が糸を引いて垂れる。ベリアは、頬に落ちた雫を、舌で舐めとった。
「ん゛っ！」
彼が全身を震わせた。睾丸が上下にひくひくと動き、中に溜まった精液を子宮の奥へ放つ。
「んぁっ、あぁ……」
貪欲に、子宮が精液を嚥下する。
「んっ、んぅ……！」
グレゴリオは、射精の最中も腰を止めることはできなかった。精液を一度尿道から放つたびに、弱々しく腰が前へ突き出される。
魔物膣に溺れ、本能で快楽を貪ろうとする夫を見て、妻は彼への愛しさをさらに強くした。
「こっちおいで」
激しい運動によって、汗に濡れた彼の後頭部に、そっと彼女の手が触れる。
彼女の手に促され、彼の顔が下がる。そっと目を閉じた彼女を見て、彼は彼女の行動の意図を理解した。
「れるっ」
寄せられた彼の口内に、ベリアの舌が侵入した。
満たされた性欲によってそれは温かく湿っており、二人の舌が触れるたびに、脳内にぴりぴりと心地のよい刺激が生まれた。
夫婦の体はぴったりと密着し、暖かな幸せに包まれながら、夫は精液を放ち続け、妻は膣肉で搾り続けた。
◆ 前 15:00
午後の座学が終わると、トレーニングの時間となる。魔物たちの領地に攻めるためには、体力が必要であるからだ。
団員は小隊ごとに別れ、パトロールも兼ねて城壁の外を走る。
「次！第六班！」
上官の号令に合わせ、グレゴリオが走る。
鎧を纏い、腰に剣を掛け、背中には槍と盾を背負う。かなりの重労働である。
「おお……」
彼が一歩踏み出したとき、背後で感嘆の声が上がった。匂い立つ花のような香り。
「ウィルマリナ・ノースクリム、ただいま戻りました」
どんなに脚の速い人間であっても、この重装備ではまだ城壁の半周を回るので精一杯であろう。
しかし、彼女は汗を幾筋か垂らすのみで、笑顔さえ浮かべていた。
――これが、勇者……。
グレゴリオは、いつか自分も彼女のような勇者になりたい、という憧れを胸に秘めていた。
◆ 後 15:00
「ご飯の時間だよ」
掛け布団のように、グレゴリオの上で密着していたベリアが、体を起こそうとする。
「あっ……」
包み込んでいた温もりが消え、外気が流れこんでくる。彼はそれを阻止しようと、反射的に彼女の背中に両腕を回した。
「行っちゃやだ」
力強く抱き寄せ、彼は彼女の首もとへ鼻先を寄せる。
彼の行動に、ベリアは胸を締め付けるようなときめきを覚えた。同時に、軽く絶頂を迎えた。ひくひくと、いまだ彼の陰茎を受け入れている膣が収縮をする。
「大丈夫だよ。離れないから」
でも、と彼女は言葉を続け、体を何とか起こす。
「体勢は変えさせてね」
ひんやりとした空気が、二人の汗で濡れた彼の腹と胸を冷やす。彼の全身が寒さと寂しさに震える。
「よいしょ」
掛け声とともに、彼女の体が、彼に背中を向けるよう回転する。
「んっ♥」
カリが膣壁をこすり、ベリアの尻がひくりと一瞬だけ持ち上がる。
「ほら、こっちこっち」
後ろ手に、彼女が手招きをする。グレゴリオは、微睡みと魔膣による快感でぼんやりとした思考の中で、何とか彼女の意図を察する。
彼も、彼女の後を追い、体を起こす。そして、背中から覆いかぶさるように彼女を抱きしめた。
「うん、そうそう」
期待通りの行動をしてくれたことに、彼女は嬉しそうに微笑む。
「ほら、もっとぎゅーってしていいんだよ？ね、あったかいでしょ？」
寮での訓練により、しっかりと筋肉の乗った彼の腕を優しくなでながら、ベリアが問う。
「うん、あったかくて、気持ちいい」
彼女の髪と角の境目に鼻先をこすりつけながら、彼が答えた。
「じゃあ、ちょっと待っててね。お昼ごはん、作るからね」
そう言うと、彼女は小さくつぶやくように、この世界のどこでもない言語を詠唱した。
すると、部屋の真反対にある台所から、包丁、鍋、お玉、食材と、料理に必要なものが次々と浮遊しながら彼女の手元へやってきた。
「これで、準備オッケー」
まな板と鍋を温めるための炎の魔法石が、重そうにゆったりとした速さで飛んでくると、彼女はいつの間にかエプロンを身にまとっていた。ぱんぱんと、気合を入れるために両手を叩く。
「あなたのために、美味しい料理、作るからね！」
◆ 前 17:00
「神は聖なる御手により、魔物と戦うための武器と鎧、そして勇者をお作りになられたのです」
日が傾き、空が橙に染まる頃。団員は寮に併設された聖堂へ行き、礼拝を行う。
神父の言葉を聞き、神に祈りを捧げる。
皆、手に宗教書を持っているが、開くものはいない。レスカティエに住むものは皆、幼き頃から神父が語る、神の言葉を聞いて育つ。よって、全員、全て暗記している。
夕日が聖堂奥の窓から差し込まれ、聖像の影が伸びる。
両手を広げた聖人の影は、さながら子供を抱きしめ、包み込むように、団員たちに覆いかぶさっていた。
◆ 後 17:00
「やっ、あっ、あぅっ♥そんなに、こちゅこちゅって奥叩いたらっ、お昼ごはんできにゃいぃ♥」
「また、でるっ……！」
グレゴリオは、ベリアの体を強く抱き、射精の快楽に浸った。
「ん゛っ、んんっ……！あふぅ♥」
彼女はいまだ、昼食を作れないでいた。張り切って料理を作ろうとする新妻の裸エプロンを見て、夫が興奮してしまったからだ。
二時間、彼は自分の内から湧いてくる肉食獣めいた本能に任せ、妻の体を後ろから貪った。
彼女の腹に両腕を回し、ただひたすらに腰を打ち付ける。射精欲が限界まで達すると、我慢することなく射精する。睾丸の脈動が収まると、また腰を前後させる。彼は二時間の間に、十二回の射精をしていた。
「んぁっ、はぁっ、あぁ……。もぅ、ごはん、つくれにゃいぃ……。しぇっくしゅきもひいぃ……。グレゴリオのおひんひん、だいしゅきぃ……♥」
全身を弛緩させ、ベリアは体を丸めて絶頂を続ける。ひくひくと全身が細かく痙攣し、湿った髪が俯いた彼女の顔に筋を描き貼り付く。彼女の体は、自分のものと、延々と密着していた彼の汗で、雨に降られたかのようにずぶ濡れであった。
◆ 前 20:00
夕食。燭台の薄明かりの中、団員たちは静かに食事をとる。
毎日、疲れを癒やすためにぶどう酒が振る舞われる。神聖な意味も持つそれは、グレゴリオにも飲む権利がある。現代日本とは違い、この世界に飲酒の年齢を制限する決まりがないためである。
全体的に味気のない料理だが、それに文句を言う団員はいない。彼らは、毎日三食保証されているのは、自分たちが騎士団の一員であるからだと自覚しているからだ。彼らにここを辞めるという選択肢は存在しない。帰っても、元の貧しい生活に戻るだけだ。それどころか、騎士団から逃げ出した恥として、さらに酷い生活になってしまうのが目に見えていた。
グレゴリオも、その中の一人だった。
食事をするたびに、彼は家族を思い出す。
――僕の居場所は、あそこにはない。
農家の次男として生まれた彼に、農業従事者としての居場所はなかった。金は無く、騎士団に入団する際に国からもらえる僅かな謝礼金のためだけに、グレゴリオは無理やりここに入れられたのだ。
――だから、僕は、立派な騎士になって、いつか家族を見返してやる。
黒い反骨心が、彼をここに繋ぎ止めていた。
――いつか、絶対に。
いつかは騎士として、魔物と戦わなければいけない日が来るだろう。しかしそれは、もうしばらく後である。その日が来るまでは、ここでひたすら己を鍛えるしかない。彼はそう考えていた。
そのいつかが、今日であるとは、彼はまだ露とも思ってなかった。
◆ 後 20:00
「はーい、それじゃあ洗いまーす」
うきうきと表情を弾ませ、ベリアがとろけた笑顔を浮かべる。
二人は、汗でべとついた体を、風呂場で洗い流していた。
彼女は、手に持っていた石鹸を、まずは自分の腹と胸に当ててこする。見る間に彼女の体は泡にまみれ、可愛らしい乳首や、無毛の恥部を覆い隠した。
「では、失礼致しますね」
先ほどとは逆に、今度は彼女が、グレゴリオの背中に抱きつく。
「にゅーる、にゅーる」
可愛らしい声を上げながら、彼女は夫の背中を上下する。平らだが柔らかい乳房と、硬くしこり立った乳首が、彼の背中をくすぐる。
「グレゴリオって、思っている以上に筋肉がついてるんだね」
うっとりと、彼女が囁く。
「うん、ずっと、鍛えてたから」
全部無駄になったけどね、と彼は続ける。
「ううん。そんなことないよ。だって……」
彼女が背中から離れ、彼の全面へ回る。
「ここで、この騎士団寮で鍛えていたから、私に会えたんだよ。だから、無駄じゃないよ」
泡まみれのベリアの腹と、湯に濡れたグレゴリオの腹がひたりと合わせる。その間には、幼い青肌裸体を見て、重力に逆らってそそり立つ陰茎が挟まれていた。
「はぁ……はぁ……」
彼はつやつやの腹に裏筋をこすられたせいで、彼女は子宮に届くほどの熱い熱を腹に受けたせいで、荒い呼吸をする。
二人の吐息が交錯する。
互いの視線が交差し、共に、相手が耐え切れないほどの性欲に脳内が支配されつつあることを理解した。
「んくっ」
太ももを伝ってこぼれ落ちるほどの愛液に満たされた蜜壺が、勃起によって皮の下が露出した亀頭を優しく包み込む。
「あっ」
腰を下ろした瞬間、彼女が濡れたタイルで足を滑らせる。
「んっ、はぁっ、あぁぁ！」
じゅぷり、ととろとろの液体に満たされた膣道を、肉棒がかき分けるように進む。
亀頭の先端が子宮口を叩いた瞬間、彼は本日二十数回目の射精をした。
◆ 前 24:00
鐘の音が、城壁の中に響く。
「敵襲ー！」
上官の叫ぶような号令が、グレゴリオの部屋にまで届いた。
「えっ、えっ？」
無理やり覚醒状態にされた彼の脳内は、正常に働かなかった。
――あっ、そうだ、まずは装備を……！
訓練を思い出す。鉄壁の結界に守られたレスカティエに、なぜ敵が侵入できたのか。それを考えるのは後だ。
彼は、ベッドの横に立ててある、武器の保管棚に手を伸ばした。
「こんばんは」
あまりにも場違いな声は、彼の混乱と興奮に満ちた心を冷静にさせた。
声のした方を向く。
「どーも、はじめまして」
彼は、目の前の存在を目にした瞬間、一枚の絵画を思い出した。
それは、実家のリビングに掛けられた宗教画だった。
薄布一枚を身に纏った、幼い子供の姿をした、天使の姿が描かれている絵。顔は天を向き、斜めに腕を突き出している。その方向からは、暖かな光が差し込んでいる。姿の見えない母、つまり主神に甘える、見ているだけで癒される絵だった。
満月の光が漏れ入る窓の前に立つ彼女は、彼にその天使を思い起こさせた。
幼い体型。小さな翼。露出した肌。
しかし、それ以外は何もかもが違った。
天使ならば、青い肌はしていないだろう。こんなに淫らな笑顔は浮かべないだろう。股間から液体は垂らさない。嗅いでいるだけで思考がぼやける香りなんて放たないだろう。禍々しい角は生やしていないだろう。
――うっ、くっ……え、何で……？
そして、見ただけで痛いほど勃起することはないはずだ。
「あなたを、幸せにするために来ましたー」
手を可愛らしくひらひらとさせつつ、デビル、ベリアは言った。
「えっ？」
彼女の言葉を脳で理解する前に、彼は背後のベッドに押し倒された。
◆ 後 24:00
結局、二人は何も食べず、ただただセックスを何度も繰り返した。
風呂に入ったばかりだというのに、入る前と同じくらい、汗で濡れてしまっていた。
「んふぅ……♥」
だが、二人にとって、それは嫌なことではなかった。むしろ、愛する相手の匂いに包まれ、幸せだった。ベリアは、満足気に鼻息を漏らす。
彼は、朝に虜の果実を食べたきりなのに、お腹が空かないのを不思議に思っていた。
「それはね、グレゴリオが、インキュバスになったからだよ」
自分の両手の指を、彼の指に絡ませながら彼女が言う。
「インキュバス？」
聞きなれない言葉を聞き、彼は首をかしげる。
「そう。私みたいな魔物といーっぱいエッチなことをすると、お腹が空かなくなるんだよ」
彼の耳に、彼女が唇を寄せて囁く。
「それだけじゃないの。どれだけエッチをしても、ずっと気持ちいいし、精液もたっぷり出るし、それに……」
ぺたんぺたんと、餅つきのように、彼女が腰を上下させ、ペニスを肉ひだで愛撫する。
「私とずっと、ずっと、一緒にいられるんだよ」
それは、二日間、ほぼずっとセックスを繰り返した彼にとっては、弱すぎる刺激だった。しかし、ずっと、目の前の愛妻と一緒にいられるという精神的充足感が、彼の射精欲を一気に引き上げた。
――ベリアと……この気持ちいい牝と、ずっと一緒。世界一大好きな相手と、永遠に愛し合える。
どろりと、彼の瞳が獣欲に濁った。神への信仰心が、全て、悪魔への愛で塗り替えられた。
「大好きだよ、あなた♥」
耳たぶへキス。その瞬間、彼は弱々しく、しかし、何分も何分も、長い間、彼女の膣内に精液を漏らし続けた。
14/02/09 21:40更新 / 川村人志