妹ですが、兄が私とおまんこしてくれません
「これで、あなたは人間の倫理から解き放たれた」
お姉様は、私にそう仰った。サキュバスは、魔物娘は、人間によって作られたルールに縛られない存在。
「だから、あなたの大好きな人のことを、堂々と『大好き』って言える」
そう言って、お姉様は自分の目の前にいる男を抱きしめた。私と同じクラスの男子だった。
「九郎、大好きだよ。愛してる」
お姉様は、両腕で実の弟をガラス細工を扱うように包み、腰を前後に動かした。
「うっ、お姉ちゃん……っ!」
お姉様の下にいる彼は、そう一言漏らすと、全身を一度、二度と大きく震わせた。サキュバスになった今ならば分かる。彼は今、射精しているのだ。血を分けた姉に、膣内射精をしているのだ。
「私も、お兄ちゃんと……」
世界で一番大好きな存在を、脳裏に浮かべた。
◆ ◆ ◆
それから一週間。
「ああー、もうー!」
放課後、教室に橙の光が差し込む。
ここは一年二組と三組の間にある、通称『2.5組』。存在しないはずの教室。人間は知覚すらできない教室。
私のような人間をやめた魔物娘たち専用の教室だ。
私は机に突っ伏し、うめきながら足をじたばたさせた。
「どうしたの、杏里ちゃん」
心配そうに声をかけてきたのは、新島舞だ。私と同じクラスで、私より一日後にサキュバスになった子だ。
「どうしたもこうしたもないよー!何で一週間も経ったのに、私はまだ処女なのよー!」
そう、せっかくお兄ちゃんと結ばれるために人間をやめたのに、私はいまだにお兄ちゃんとセックスできていないのだ。
理由がさっぱり分からない。お姉様は、サキュバスになっただけで、好きな人を誘惑する魔力が自然と発せられると言っていたのに。普通だったら、お兄ちゃんの方から襲ってきてもいいはずなのに。
「それに比べて、舞ちゃんはいいよなー。サキュバスになってすぐにお兄ちゃんに中出ししてもらえるなんて」
嫉妬のこもった目線で、舞を上目に見る。
先ほどから、セックスや中出しといった、中学生女子が声に出してはいけない単語を口にしているが、全く問題はない。この教室には、他にも何人かの女子生徒がいるが、全員魔物娘なのだ。出てくる会話はエッチなものばかり。
「ねーねー、どうして同じお姉様を持つ同士なのに、こんなに差があるんだろうねー。ねー……」
舞も、私と同じお姉様によって魔物化し、同じく実兄のことが世界で一番大好き。なのに、彼女は毎日子宮がたぷたぷ音が鳴るまで膣内射精してもらえて、私はいまだ処女。納得がいかなかった。
「え、そんな……私、何も、特別なこと……」
そう言って、彼女は赤面しつつ、頭を垂れた。つやつやのおかっぱが、彼女の目元を隠す。彼女は、女の私から見ても綺麗だと思う。日本人形のような、まさに大和撫子といった風貌。男だったら、守ってあげたいし、誘惑されたら襲いたくなるのだろう。
対して私は、髪はショートで色素が生まれつきやや薄い。キレのある目だと言われる。男女と言われたことも何度かある。全くの正反対だ。
――だから、お兄ちゃんは私のことを襲ってくれないのかな。
「何か、コツってないの?」
「えー、杏里ちゃんに教えられることなんて、何も……」
「でもでも」
食い下がる。
「舞ちゃんは、サキュバスになってすぐにお兄ちゃんとエッチできたんでしょ?だから、私とは違う何か特別なことをしているんじゃないかって……」
そう言うと、彼女はうつむいたまましばらく考え込み、私の方を見た。
「あの、その……私とお兄ちゃん、ずっとエッチ、してたから……」
もじもじと彼女が身悶えする。
「サキュバスになる前から……私が小学生のときから、毎日お兄ちゃんとエッチしてたから、何も、特別なことなんて……」
顔どころか、全身真っ赤にさせ、彼女はうつむいてしまった。
一方の私は、彼女の告白に口を半開きにしたまま、呆然とするしかなかった。
別のグループの誰かが、喉をごくりとならしつつ言った、『羨ましい』というつぶやきが、いつまでも私の頭の中で響き続けた。
◆ ◆ ◆
――今日から本気出す!
舞の告白の後、私を憐れんでくれた教室内の仲間から、様々なアドバイスを受けた。お兄ちゃんを旦那様にするべく、それらを実行に移すことにした。
今まではサキュバスのフェロモン頼りで、自発的に行動をしなかったのだ。だが、今日からは違う。
――やっぱり、スキンシップは大事だと思うよ。魔物娘の肌って人間と触り心地が段違いで気持ちいいから、きっとお兄さんも喜んでくれるよ。
二年生のホルスタウロス、雨宮先輩のアドバイス。抱き付いて上目づかいで見つめると、すぐに彼氏は理性を失ってしまうらしい。
「お兄ちゃんっ!」
家に帰ると、居間のソファにお兄ちゃんが座っていた。早速アドバイスを実践するために、飛び込んで抱き付く。
熱い空気を無理矢理クーラーで冷やしている中、私たちは二人とも夏服だ。お兄ちゃんの素肌の腕に私の腕を絡みつかせる。その間、こっそりとズボンの裾を足でまくり、私のスカートから覗く足をそこに密着させる。
「おいおい、暑苦しいだろ……」
私の頭をなで、やんわりと私をたしなめる。口では嫌そうにしながらも、いつもお兄ちゃんは本気で私を振り払おうとはしない。
ぽかぽかと、頭の中が温かくなる。お兄ちゃんの匂いが鼻の奥をくすぐり、脳がとろけてしまいそうになる。
「あっ……」
気が付いたら、お兄ちゃんは私から離れ、台所でお茶を飲んでいた。
――スキンシップはダメだ。頭がぼーっとして、誘惑どころじゃなくなっちゃう。
身じろぎするたびに、私の股間からはくちゅくちゅといやらしい水音が鳴った。
――殿方は、女性の手料理が大好きだと聞きました。杏里さんも、お兄様に手料理を振舞って差し上げればよろしいかと。
隣のクラスの由美香のアドバイス。彼女は稲荷だけあって、いつも旦那様に美味しい料理を作ってあげている。
「うっ」
下校途中に買ったレシピ本。その通りに作ったはずなのに。
「なにこれ……」
出来上がったのは、焦げ臭さと煙を上げる黒い異物だった。
急いで換気をしたが、しばらく後に帰ってきたお兄ちゃんに、台所から変な臭いがすると言われてしまった。
――彼が入浴している最中に、うっかりを装って浴室に入ってみるのはどうだろうか。私もその手で弟を……。
そう言って不敵に笑ったのは、生徒会長である三年の奥之院先輩。不敵な笑みの直後、小学六年の弟のことを頭に浮かべたからか、蛇体をくねくねさせて身悶えしていた。
「あ、お兄ちゃん……?」
お兄ちゃんが入浴してから数分、タイミングを見計らい、湯船に体を沈めたのを確認してから、私は浴室に入った。
さも自然に入ったかのように思わせるために、全裸であり、何も隠していない状態だ。
――お兄ちゃんに、初めて裸見せちゃった。
顔が真っ赤になるのを、何とか抑える。
――そう、何も恥ずかしがることはない!
浴室に入る直前、鏡を見て何度も確認した。私の体は、自分が見ても綺麗だった。
髪型こそショートで女性的ではないが、首から下はサキュバスの魔力によって立派な女の体となっていた。胸は二次性徴に入った年齢にしては膨らみが足りないだろうが、綺麗な桃色の乳首。垂れず張りのある乳房。余計な肉のついていないおなか。欲情を誘うたっぷりなお尻。無毛のおまんこ。
ばっちりである。これを見て勃起しない男はいないのではないだろうか。
――もっとも、お兄ちゃん以外にこの体を見せるつもりは全くないけど。
「えっ、あっ……杏里?」
一瞬、戸惑いの声が上がったが、それほど慌てた様子が声色からはうかがえない。
「ダメじゃないか、今俺が入ってるんだから。もうちょっとしたら上がるから、さ」
そう言ってお兄ちゃんは、苦笑いを浮かべる。
「あ、あれ……?」
大慌てで湯船から上がって、でも私の裸に視線が釘付けになって、勃起おちんちんが止められない。そんなことを予想していたのに。
「あ……」
しばらくして、ようやくその理由に気付いた。
――そうか、お風呂だと眼鏡外すからね……。
お兄ちゃんは極度の近眼で、眼鏡を外すと自分の指先すら分からなくなると言っていた。今の私は、きっと肌色の何か程度にしか見えていないのだろう。
◆ ◆ ◆
「はぁ……」
アドバイスを受けてから三日経った。
放課後、2.5組。
「杏里ちゃん……」
舞が心配そうに声をかける。彼女が、私のことを心の底から案じているのはよく分かる。
――でも……。
「舞ちゃん、昼休みにお兄ちゃんとセックスしたでしょ」
「はぅっ!?」
びくりと全身を震わせ、目を見開く。
「何で、それを……」
「匂いでバレバレなのよ……」
彼女の体の至るところから、精液の匂いが漂っているのだ。
教室にいる他の魔物娘たちも、彼女の方を向いて赤面したり、羨望の眼差しを送ったりしている。今にも発情しそうな者すらいる。
溜息をつく。様子を見るに、彼女は教室内の全員にばれていることに本当に気付いていなかったようだ。
「それで、今日は何回したの?」
処女であるが、魔物娘であるからか、他の人がどんな性行為をしているかについては興味がある。
「今日は……」
舞が、天井を見上げしばらく考える。
「キスしながら手コキして、おちんちんを口でお掃除して、正常位二回とバック三回、最後に一緒に寝転がりながら二回出してもらったから……九回かな」
ざわ……と周りがどよめいた。彼女と兄のセックスは、そのあまりの回数の多さから、学校の七不思議として数えられている。あと六つは未定である。
「休み時間短いのに、よくそんな回数できるね……」
半ば羨望、半ばあきれからそういうと、みんなそうなのではないかと首を傾げられた。
「それで、杏里ちゃんの話に戻るけど」
机から身を乗り出し、舞が私の瞳を覗く。その眼差しは、いつになく真剣である。
「今までのアドバイスは、全部、受け身だったんじゃないかな」
鼻息荒く彼女が言う。
「誘惑はするけれど、最後はお兄ちゃんが襲い掛かってくるのを待っている。魔物娘として、その受け身はあまりよくないんじゃないかな」
彼女の言葉には、経験者だからこその説得力があった。彼女は人間だった頃に、自分からお兄ちゃんを誘惑して恋仲になったのだ。
「サキュバスの魔力もすごい武器だけど、やっぱり結局最後に物を言うのは、押しの強さだと思うよっ!」
「う……うんっ!ありがとう舞ちゃん!」
セックスの先輩である彼女の手をつかみ、何度も上下に振った。
「ありがとう、ありがとう!やってみるよ、絶対にお兄ちゃんを旦那様にする!」
「がんばれー」
「ファイトー!」
周りの魔物娘たちも立ち上がり、応援と共に拍手をした。
――みんなも味方してくれている、もう、何も怖くない!
確かな自信と想いを胸に、私は意気揚々と家に帰った。
◆ ◆ ◆
今日は木曜日だ。お兄ちゃんは、部活で遅くなる。
ソファに座り、心を落ち着かせる。
「すぅ……はぁ……」
深呼吸。服も下着も全て脱ぎ、サキュバスの証である尻尾、羽、角、全てをさらす。お兄ちゃんにも見せたことがない姿。
――お姉様は、何て言っていたっけ?
サキュバスにされるとき、お姉様に言われたことを思い出す。
――確か……。
「したい、されたいことを想像する」
サキュバスになって、人間を超越した存在になって、何がしたいか。お姉様に言われた瞬間には、性の知識の乏しさによって考えられなかったことだ。
だが、今は違う。仲間、そして舞から見聞きすることによって、私は知識を得た。今は考えられる。
――まずはキスだ。
私がどれほどお兄ちゃんのことが好きなのか、伝える。言葉だけでは絶対に無理だ。行動で示す。
――でも、そこで拒否されたら……。
不安が一瞬浮かぶが、すぐに振り払う。そんなことは絶対にないと、自信を持って否定できる。
――確かに感じた、お兄ちゃんの鼓動。あれは……。
抱き付いたとき、心地よい心臓の音が聞こえた。あれは歓喜。私と肌を触れ合ったことを、お兄ちゃんは快く思っていた。
お兄ちゃんは、私のことが好き。
この事実すら、人間だった頃は認められなかったことだ。
――あとはもう、押し倒そう。私の体を、妹という禁断の味を、虜になって骨抜きになるまでしゃぶりつくしてもらおう。
「ただいま」
お兄ちゃんが帰ってきた。
不思議と、私の心拍数は上がらなかった。落ち着き、乱れることなく続いている。
――だって、もう絶対に私たちは夫婦になるんだから。
「あれ、杏里?」
いつもあるはずの返事がないことを訝しんだお兄ちゃんが、居間へ姿を現した。
ソファから立ち上がり、振り返る。
「えっ、あっ……ご、ごめっ……」
私の裸体を見て、視覚情報がお兄ちゃんの脳内に届く瞬間、私は手のひらをお兄ちゃんに向けた。
時がわずかな瞬間、止まる。
廊下を隔てる居間の扉、白い壁。こげ茶色のフローリング。家具も何もかもが裏返り、細切れになり、新たな部屋が形作られる。
それは、お姉様がいた部屋によく似ていた。
白いレンガの壁。天井も白くペンキで塗られた板。お兄ちゃんの後ろには薄青く炎が燃える暖炉があり、その前には巨大なベッドが置いてあった。白いシーツ、黒紫のかけ布団。
それ以外の家具は全くなかった。まさに、愛し合う二人がセックスするためだけの部屋。
「お兄ちゃん、大好きだよ」
掲げていた手のひらを下ろすと、直立していたお兄ちゃんの体が宙に浮かび、背後のベッドの上へゆっくりと仰向けに横たえられた。
「だから、セックスしようね」
予想通り、その言葉を聞いたお兄ちゃんは、目を見開き驚いた。
「ちょっと待って、そんな、いきなり……」
声を震わせながら、戸惑いの声を上げる。
「じゃあ、いきなりじゃなかったら、いいの?」
揚げ足を取るようなことを言い、私は笑いかける。
その顔は、お兄ちゃんを欲情させるのに十分なものだったのだろう。言葉が消え、赤面し、喉を鳴らした。
「いや、そういう、わけじゃ、なくて……」
兄妹だから、とか、血がつながっているから、とか、しどろもどろで言葉を続けている。
「んっ」
口と目を閉じ、お兄ちゃんの唇に口付けた。
「ん!?ん、んんー!?」
ファーストキス。目の前のお兄ちゃんが、顔を真っ赤にさせてもがく。
――分かる。お兄ちゃんも、初めてなんだ。
混じりけのない、純粋なお兄ちゃんの精と匂い。私以外の女が、先に手を付けているということはない。
――もう、私だけのものだから。誰にも渡さない。
そのことを示すために、まずは唇でマーキング。
「ちゅっ、ちゅぅっ」
お兄ちゃんの下唇を、私の唇で挟む。舌を伸ばし、挟んだものを唾液でぬらす。
「え、あっ、うぅっ」
お兄ちゃんが唇の隙間からうめく。私の唾液に触れた部分が、熱と疼きに変わっているからだ。
少しだけ、唇を離す。
「お兄ちゃん、もっと、いっぱい、キスしようよ」
お兄ちゃんの脇の下から背中へ、腕を回す。至近距離で見つめ合う。銀フレームの眼鏡の奥で、お兄ちゃんの瞳が揺れる。
「それは、だから……」
「私がしたいっていう理由じゃ、ダメ?」
瞳の動きが止まる。ゆっくりと、お兄ちゃんが私の瞳を覗いてくる。
「ずっと、ずっと、好きだったんだ。物心がついたときからずっと、他の男子なんて全く何も、興味を持てなかった。好きで好きで好きで、いつもいつもお兄ちゃんばかり見てた。お兄ちゃんを見ていると、胸がドキドキして、恋人同士になりたいと思ってた」
だから、と一息つき、言葉を続ける。
「人間をやめたんだよ、私」
尻尾と羽根を動かし、お兄ちゃんの手を取る。
「ほら、これ」
私の頭、角へ導く。
「これ、ひょっとして……」
「うん、本物だよ。私、サキュバスになったんだ」
お兄ちゃんの部屋に、こっそり入ったことを思い出す。まだ人間だった頃、布団や枕に染み込んでいるお兄ちゃんの匂いを嗅ぎながら初めてのオナニーをしたとき、敷布団の下の異物に気付いた。それは、サキュバスの描かれたエッチな漫画だった。当時はサキュバスの存在を知らなかったけど、それが人間ではなく、男を愛し、男に愛されるための存在だということは分かった。
私の、魔物というものへの原体験。
「本当に、杏里は、人間をやめたんだね」
目を伏せ、お兄ちゃんは重く言葉を紡ぐ。ひょっとして、私が人間をやめてしまったことを、自分の責任と感じているのだろうか。
「私は、自分の意思で、人間をやめた。だから、お兄ちゃんは何も悪くないんだよ」
でも、と言う。
「お兄ちゃんがまだ、責任を感じているのならば……。私を愛して、私に愛されて」
手を後ろにやり、お兄ちゃんの制服のチャックに手をかける。
「私の体に、溺れてほしいな」
下ろし切ると、勢いよく飛び出したものが、私の手のひらに触れた。
この熱さ、形。見なくても分かる。お兄ちゃんのおちんちんだ。
「すごく、硬くなってるね」
嬉しさが、声からあふれ出る。
「あの、いや、それは……」
額から汗をかき、頑張って弁解するお兄ちゃん。ついさっき、倫理を盾に何とか私から逃れようとしていたのに、妹の裸に欲情しているのが見つかって焦っているのだろう。
「別に、何も恥ずかしいことないんだよ。これから私たち、セックスするんだから。オスが勃起するのは当たり前だよ」
それに、と私は続け、体を起こす。お兄ちゃんが少し残念そうな顔をしたのがすごく嬉しい。
「メスがおまんこを濡らすのも、当たり前」
両手の人差し指で、おまんこのぷっくりと膨らんだ肉を押し広げる。くぱぁと粘液が割り開かれる音がして、お兄ちゃんの視界に、膣の中がさらされた。
――ああっ、見てる、お兄ちゃんが、私のおまんこの中、食い入るように見てる!
今まで左右に泳いでいた視線が、私の開かれた場所に注いでいるのが感覚で分かる。視線の当たる場所が、チリチリと心地の良い刺激を受ける。
「はぁ、はぁ……」
お兄ちゃんが、犬のように息を荒げる。
「もう、我慢できないんだね」
尻尾が無意識の内に、左右に揺れる。私の言葉を聞き、お兄ちゃんはかすかにうなずいた。
「うん、私も、もう我慢できないよ」
だから、と腰を移動させる。おまんこの入口を、そそり立ったおちんちんの真上に持ち上げる。
「いっぱいいっぱい、しようね」
腰を下ろす。最初に感じたのは熱だった。まだ何も受け入れたことのない膣を、熱が押し広げる。
「くっ、うぅっ」
お兄ちゃんが、呻き声を上げる。亀頭が柔らかいひだでなめられて、気持ちいいのだろう。
亀頭全てがおまんこ肉で包まれる。さらに腰が下りていく。
――ああ、これは。
膣道がすぼまった部分に、おちんちんの先端が触れた。
――私の処女の証。
「ねえ、お兄ちゃん」
問いかける。
「今なら、まだ引き返せるよ」
膣肉を締めたり緩めたり。亀頭と竿の一部を弄びながら言う。
「分かるよね、今お兄ちゃんが当たってる場所。私の処女膜」
はっと、お兄ちゃんの表情に現実が戻る。
「お兄ちゃんが望むなら、このまま終わらせることもできるよ。腰を抜いて、部屋を戻して、私は人間の姿に戻る。いつも通りの日常に戻る」
でも、と続ける。
「今引き返したら、絶対に一生後悔するよ?」
腰を前後に動かす。そこだけが動いていて、自分でもひどく淫らだと思う。
「サキュバスのおまんこは、大好きな人を気持ちよくさせるためだけに作られたものなんだから、絶対に気持ちいいんだよ。何百枚何千枚とあるひだが、ねっとり愛液を絡めながら、おちんちんをたくさんたくさん、ごしごしするんだよ。ごしごししながら、きゅっきゅって、何度も締めたり緩めたり。熱々のお肉と粘液に包まれながら、頭が真っ白になって、おちんちんがひくんひくんってなって、精液がどぷどぷってあふれちゃうんだよ。どう?妹と、そういうことしたくない?」
私は悪魔だ。だから、お兄ちゃんに引き返させるつもりは微塵もない。それならば、なぜわざわざそんな選択肢を与えたのか。
――それは……。
「きゃひんっ!?」
私の思考は、下半身から広がる衝撃によって中断させられた。
一瞬後、理解する。
――お兄ちゃん、私の腰をつかんで……。
一気に自分の腰へ引っ張り込んだのだ。ぱちんと私たちの皮膚がぶつかり、お兄ちゃんの体温をお尻で感じた。
「おっ、あ、あぁぁ……」
口の端からよだれを垂らし、彼がとろけた表情を浮かべた。それは、生きながらにして天国を見ていた。
――そう、やめさせるという選択肢を見せたのは、彼に選ばせることによって、二度と引き返せないところまで堕落させるため。
「お兄ちゃん、ダメだよぉ……」
自分でも驚くほど、その声は甘ったるいものだった。
「そんなエッチな顔しちゃ、ダメだよ。今のお兄ちゃん、すごくだらしないよ?」
だが彼は、そんなことおかまいなしに、ベッドの弾力を利用して腰を私に打ち付けた。
一回腰がお尻に当たるたびに、子宮口におちんちんの先端がぶつかり、電流に似た快楽が全身を流れる。
「あはっ、はんっ……!もう、私、処女膜破られたばかりなのにぃっ、そんなに腰をぱんぱんさせたらぁ……!」
「ぐっ、おっ、おおっ……」
彼はもう聞いていなかった。それはそうだ。童貞がサキュバスのおまんこにおちんちんを入れたら、理性がショートして獣になるに決まっている。
でも、それでは私は満足できなかった。初めてのセックスが、ただ腰を打ち付け合うだけの、精神の交流がないものでは、淫魔としてのプライドが許さなかった。
彼の耳元に、口を寄せる。
「ねえ、お兄ちゃん」
囁く。
「初めてのおまんこ、気持ちいい?」
喉から声にならない声を漏らしながら、彼は何度もうなずく。素直で可愛い。
「サキュバスまんこ、気持ちいい?」
またもうなずく。
「妹の、近親相姦まんこ、気持ちいい?」
「あぁ、うぅぅ……!」
歯を食いしばり、顔を強張らせる。薄皮一枚で、倫理観が最後の抵抗をしているようだ。
――でも、そんなの、無駄だよ?
「私のこと好きだって、愛してるって、言ってくれたら……、中に出していいよ」
言外で彼の行動を縛る。言わなければ、出せないようになったのだ。
「あう、ぐぅっ」
彼は戸惑っているようだ。快楽は続いているのに、いくら腰を打ち付けても射精しないのだから。
「私のこと、好き?」
一瞬考えていたようだが、すぐに彼はうなずいた。
「愛してる?」
二度、うなずく。
「だったら、ちゃんと口に出して言って。妹のことが好きだって、世界一大好きだって。大好きな妹のおまんこに中出ししたいって」
時折耳たぶにキスをしながら囁く。
「お、おれ、は……」
久しぶりに、彼の口から意味のある言葉が漏れた。
「ずっとずっと、杏里のことが、好きだった」
「他の女子には一切興味が持てなくて、頭に浮かぶのは杏里のことだけだった」
「何度も杏里でオナニーして……。そんなの、絶対おかしいって思ってた」
「最近、急に可愛くなって、色っぽくなって……。もっともっと、杏里のことが好きになった」
「ごめん、ごめん……。こんなダメな兄でごめん」
ぽつぽつと、喘ぎ声を混ぜながら、彼は独白した。
「でも、これだけははっきりと言える」
彼が息を吸う。
「俺は、杏里のことが、世界のどんな人間よりも、大好きだ。愛してる」
ぞくり、と全身が快楽に包まれた。
「ふっ、ううぅっ、うっ、ふぅぅっ……!」
私の体の、全細胞が震える。ぱちぱちと、脳の神経が焼き切れるような感覚を受ける。
おまんこの肉が、ひくんひくんと痙攣する。
自分の体を、両腕でかき抱く。そうしないと、バラバラになってどこかへ飛んで行ってしまいそうだった。
彼の言葉だけで、私は快楽の頂に登り詰めてしまったのだ。
「あぁっ、出るっ……!」
絶頂にとろける思考の中、彼の言葉を聞いた。直後、入口を叩き、直接子宮内に入ってくる熱。今までに味わったことのない、濃厚な精の味と共に放たれたそれは、彼の精液だった。
その味と正体を理解した瞬間、私の人間としての理性は、完全に消失した。
「お兄ちゃん、好き、好きぃ!」
気が付いたら、彼と両手指を絡め、騎乗位で腰を振っていた。
上下に振り、前後に動かし、時には円を描き、膣全てで彼のペニスを堪能する。
――あぁぁ、カリが、ひだに引っかかって……。
えらを張って膨らんだ亀頭が、腰を動かすたびに膣肉を伸ばす。
――お兄ちゃん好きぃ、気持ちいいぃ……。
頭の中に浮かぶのは、セックスの気持ちよさと、彼への愛しさだけ。
「うぐっ、ひぐっ……。好きだよぉ、気持ちいいよぉ、イっちゃうぅ……」
うわごとのようにつぶやき、絶頂した。ぎゅっぎゅっと、ペニスを強く締める。観念したように、ペニスも精液を力強く放った。
「おおお……おぉ……きへりゅ、しぇええひ、きへりゅ……」
一発目よりも強く飛ばされた精液は、子宮の奥の壁を叩き、その刺激は私の視界と思考を真っ白にさせた。
舌がだらしなく口からこぼれる。
「あー……あー……」
舌先からよだれが糸を引いて垂れ、彼の胸を濡らした。
「杏里、その顔、すごくエロい……」
欲情でギラギラと瞳を輝かせた彼は、そう言いながら、私の頭を自分の方へと寄せた。
「じゅるっ」
露出していた私の舌先を、彼が唇で挟む。吸い込むように口内へ誘い、彼は自分の唾液に濡れた舌先を絡めた。
――ばちん。
彼の方からキスを迫られたという嬉しさと伴い、その瞬間に、視界はブラックアウトした。
◆ ◆ ◆
翌日の放課後。2.5組。
教室に入ると、中にいた仲間たちが、拍手と共に私を迎えた。
「おめでとう!」
「めでたい!」
今までアドバイスをくれた同級生や先輩。そして……。
「ついに、やったんだね」
「舞ちゃん!」
両腕を広げ彼女のもとへ向かい、力いっぱい抱きしめた。
「ちょっとー、杏里ちゃん苦しいよー」
そう言いながらも笑顔である舞を、私は抱きながら揺さぶった。
「舞ちゃんのアドバイスのおかげだよー!ありがとー!」
それから、私たち兄妹の生活は変わった。
「あむっ、じゅるっ、れるっ……あ、お兄ちゃん、おはよう。ちゅっ」
朝は彼をフェラチオで起こすのが日課となった。
「あうっ、で、るっ……」
「んっ、でたでた。ちゅぅぅ、ごくっごくっ」
「しぃーっ。声出したら、下の人たちに聞かれちゃうよ?」
「お兄ちゃんも、静かにしててね」
お昼休みは、舞ちゃんとそのお兄ちゃん、四人で屋上前の踊場に集まるようになった。二組の兄妹で、互いのセックスを見せ合う。
舞のお兄ちゃんはすごかった。何度も何度も射精をして、それでもなお衰えを知らない。
舞によると、舞のお兄ちゃんはインキュバスであるらしい。サキュバスと何度もエッチをしていると、男は人間を超越した存在となり、いくら射精をしても疲れ知らずになるとのこと。
私のお兄ちゃんもいずれインキュバスになれるらしく、その日を楽しみにしている。
「杏里、今日も一日お疲れ様」
「うん、お兄ちゃんも……。ちゅっ」
夜は、私が作った部屋で二人きり。この部屋の中は時間の流れが外よりも緩やかになるらしく、私たちはゆったりとした時間を過ごす。
「今日は、後ろから?」
「うん……。乱暴にされたい気分だから」
彼にお尻を向け四つん這いになり、右手でおまんこを開いて見せ、誘う。もう、そこからは自分でも分かるくらいに愛液があふれている。
「じゃあ、いくよ」
くちりと水音を鳴らしながら、心地よい異物が挿入される。
一ミリメートル進むたびに、背筋を駆け上がるぞくぞくが強くなる。
「うっ」
彼が呻き声と共に腰を最後まで突き入れると、ぴったりとサイズの一致した膣が、子宮口でペニスをお出迎えした。
「ふぅっ、くっ、ふぅぅ……!」
それだけで、いつも通り私は絶頂した。喜びで、翼がばさりと一度、大きく羽ばたく。
セックスの回数が増えるたびに、私のおまんこは刺激に弱くなっている。今は一突きごとに絶頂するだけで済んでいるが、このままいくと、ペニスが少し動くだけで、常にイきっぱなしになってしまうのではないだろうか。楽しみだ。
ぱちんぱちんと、私の要望通りに乱暴に、彼は腰を前後させる。私の腰のくびれを両手で強くつかみ、まるでオナホールのようだ。
「ぐぅ、そんなに締めたら、すぐ、出るっ」
言葉と同時に、彼は射精する。
――これ、この感触、好きぃ。
「おぉ、あぁぁ、あー……」
ベッドに頭をうずめ、唾液でシーツを濡らしながら喘ぐ。それは、獣の咆哮のようであった。
だが、彼は強くイっている私にお構いなしに、ペニスの硬さが収まらないまま、しかも射精したまま腰をつき始める。
――これ、もうすぐ、お兄ちゃん、インキュバスに……!
すぐ目の前にちらつく、幸せな未来に思いをはせ、私はさらに強く絶頂した。
お姉様は、私にそう仰った。サキュバスは、魔物娘は、人間によって作られたルールに縛られない存在。
「だから、あなたの大好きな人のことを、堂々と『大好き』って言える」
そう言って、お姉様は自分の目の前にいる男を抱きしめた。私と同じクラスの男子だった。
「九郎、大好きだよ。愛してる」
お姉様は、両腕で実の弟をガラス細工を扱うように包み、腰を前後に動かした。
「うっ、お姉ちゃん……っ!」
お姉様の下にいる彼は、そう一言漏らすと、全身を一度、二度と大きく震わせた。サキュバスになった今ならば分かる。彼は今、射精しているのだ。血を分けた姉に、膣内射精をしているのだ。
「私も、お兄ちゃんと……」
世界で一番大好きな存在を、脳裏に浮かべた。
◆ ◆ ◆
それから一週間。
「ああー、もうー!」
放課後、教室に橙の光が差し込む。
ここは一年二組と三組の間にある、通称『2.5組』。存在しないはずの教室。人間は知覚すらできない教室。
私のような人間をやめた魔物娘たち専用の教室だ。
私は机に突っ伏し、うめきながら足をじたばたさせた。
「どうしたの、杏里ちゃん」
心配そうに声をかけてきたのは、新島舞だ。私と同じクラスで、私より一日後にサキュバスになった子だ。
「どうしたもこうしたもないよー!何で一週間も経ったのに、私はまだ処女なのよー!」
そう、せっかくお兄ちゃんと結ばれるために人間をやめたのに、私はいまだにお兄ちゃんとセックスできていないのだ。
理由がさっぱり分からない。お姉様は、サキュバスになっただけで、好きな人を誘惑する魔力が自然と発せられると言っていたのに。普通だったら、お兄ちゃんの方から襲ってきてもいいはずなのに。
「それに比べて、舞ちゃんはいいよなー。サキュバスになってすぐにお兄ちゃんに中出ししてもらえるなんて」
嫉妬のこもった目線で、舞を上目に見る。
先ほどから、セックスや中出しといった、中学生女子が声に出してはいけない単語を口にしているが、全く問題はない。この教室には、他にも何人かの女子生徒がいるが、全員魔物娘なのだ。出てくる会話はエッチなものばかり。
「ねーねー、どうして同じお姉様を持つ同士なのに、こんなに差があるんだろうねー。ねー……」
舞も、私と同じお姉様によって魔物化し、同じく実兄のことが世界で一番大好き。なのに、彼女は毎日子宮がたぷたぷ音が鳴るまで膣内射精してもらえて、私はいまだ処女。納得がいかなかった。
「え、そんな……私、何も、特別なこと……」
そう言って、彼女は赤面しつつ、頭を垂れた。つやつやのおかっぱが、彼女の目元を隠す。彼女は、女の私から見ても綺麗だと思う。日本人形のような、まさに大和撫子といった風貌。男だったら、守ってあげたいし、誘惑されたら襲いたくなるのだろう。
対して私は、髪はショートで色素が生まれつきやや薄い。キレのある目だと言われる。男女と言われたことも何度かある。全くの正反対だ。
――だから、お兄ちゃんは私のことを襲ってくれないのかな。
「何か、コツってないの?」
「えー、杏里ちゃんに教えられることなんて、何も……」
「でもでも」
食い下がる。
「舞ちゃんは、サキュバスになってすぐにお兄ちゃんとエッチできたんでしょ?だから、私とは違う何か特別なことをしているんじゃないかって……」
そう言うと、彼女はうつむいたまましばらく考え込み、私の方を見た。
「あの、その……私とお兄ちゃん、ずっとエッチ、してたから……」
もじもじと彼女が身悶えする。
「サキュバスになる前から……私が小学生のときから、毎日お兄ちゃんとエッチしてたから、何も、特別なことなんて……」
顔どころか、全身真っ赤にさせ、彼女はうつむいてしまった。
一方の私は、彼女の告白に口を半開きにしたまま、呆然とするしかなかった。
別のグループの誰かが、喉をごくりとならしつつ言った、『羨ましい』というつぶやきが、いつまでも私の頭の中で響き続けた。
◆ ◆ ◆
――今日から本気出す!
舞の告白の後、私を憐れんでくれた教室内の仲間から、様々なアドバイスを受けた。お兄ちゃんを旦那様にするべく、それらを実行に移すことにした。
今まではサキュバスのフェロモン頼りで、自発的に行動をしなかったのだ。だが、今日からは違う。
――やっぱり、スキンシップは大事だと思うよ。魔物娘の肌って人間と触り心地が段違いで気持ちいいから、きっとお兄さんも喜んでくれるよ。
二年生のホルスタウロス、雨宮先輩のアドバイス。抱き付いて上目づかいで見つめると、すぐに彼氏は理性を失ってしまうらしい。
「お兄ちゃんっ!」
家に帰ると、居間のソファにお兄ちゃんが座っていた。早速アドバイスを実践するために、飛び込んで抱き付く。
熱い空気を無理矢理クーラーで冷やしている中、私たちは二人とも夏服だ。お兄ちゃんの素肌の腕に私の腕を絡みつかせる。その間、こっそりとズボンの裾を足でまくり、私のスカートから覗く足をそこに密着させる。
「おいおい、暑苦しいだろ……」
私の頭をなで、やんわりと私をたしなめる。口では嫌そうにしながらも、いつもお兄ちゃんは本気で私を振り払おうとはしない。
ぽかぽかと、頭の中が温かくなる。お兄ちゃんの匂いが鼻の奥をくすぐり、脳がとろけてしまいそうになる。
「あっ……」
気が付いたら、お兄ちゃんは私から離れ、台所でお茶を飲んでいた。
――スキンシップはダメだ。頭がぼーっとして、誘惑どころじゃなくなっちゃう。
身じろぎするたびに、私の股間からはくちゅくちゅといやらしい水音が鳴った。
――殿方は、女性の手料理が大好きだと聞きました。杏里さんも、お兄様に手料理を振舞って差し上げればよろしいかと。
隣のクラスの由美香のアドバイス。彼女は稲荷だけあって、いつも旦那様に美味しい料理を作ってあげている。
「うっ」
下校途中に買ったレシピ本。その通りに作ったはずなのに。
「なにこれ……」
出来上がったのは、焦げ臭さと煙を上げる黒い異物だった。
急いで換気をしたが、しばらく後に帰ってきたお兄ちゃんに、台所から変な臭いがすると言われてしまった。
――彼が入浴している最中に、うっかりを装って浴室に入ってみるのはどうだろうか。私もその手で弟を……。
そう言って不敵に笑ったのは、生徒会長である三年の奥之院先輩。不敵な笑みの直後、小学六年の弟のことを頭に浮かべたからか、蛇体をくねくねさせて身悶えしていた。
「あ、お兄ちゃん……?」
お兄ちゃんが入浴してから数分、タイミングを見計らい、湯船に体を沈めたのを確認してから、私は浴室に入った。
さも自然に入ったかのように思わせるために、全裸であり、何も隠していない状態だ。
――お兄ちゃんに、初めて裸見せちゃった。
顔が真っ赤になるのを、何とか抑える。
――そう、何も恥ずかしがることはない!
浴室に入る直前、鏡を見て何度も確認した。私の体は、自分が見ても綺麗だった。
髪型こそショートで女性的ではないが、首から下はサキュバスの魔力によって立派な女の体となっていた。胸は二次性徴に入った年齢にしては膨らみが足りないだろうが、綺麗な桃色の乳首。垂れず張りのある乳房。余計な肉のついていないおなか。欲情を誘うたっぷりなお尻。無毛のおまんこ。
ばっちりである。これを見て勃起しない男はいないのではないだろうか。
――もっとも、お兄ちゃん以外にこの体を見せるつもりは全くないけど。
「えっ、あっ……杏里?」
一瞬、戸惑いの声が上がったが、それほど慌てた様子が声色からはうかがえない。
「ダメじゃないか、今俺が入ってるんだから。もうちょっとしたら上がるから、さ」
そう言ってお兄ちゃんは、苦笑いを浮かべる。
「あ、あれ……?」
大慌てで湯船から上がって、でも私の裸に視線が釘付けになって、勃起おちんちんが止められない。そんなことを予想していたのに。
「あ……」
しばらくして、ようやくその理由に気付いた。
――そうか、お風呂だと眼鏡外すからね……。
お兄ちゃんは極度の近眼で、眼鏡を外すと自分の指先すら分からなくなると言っていた。今の私は、きっと肌色の何か程度にしか見えていないのだろう。
◆ ◆ ◆
「はぁ……」
アドバイスを受けてから三日経った。
放課後、2.5組。
「杏里ちゃん……」
舞が心配そうに声をかける。彼女が、私のことを心の底から案じているのはよく分かる。
――でも……。
「舞ちゃん、昼休みにお兄ちゃんとセックスしたでしょ」
「はぅっ!?」
びくりと全身を震わせ、目を見開く。
「何で、それを……」
「匂いでバレバレなのよ……」
彼女の体の至るところから、精液の匂いが漂っているのだ。
教室にいる他の魔物娘たちも、彼女の方を向いて赤面したり、羨望の眼差しを送ったりしている。今にも発情しそうな者すらいる。
溜息をつく。様子を見るに、彼女は教室内の全員にばれていることに本当に気付いていなかったようだ。
「それで、今日は何回したの?」
処女であるが、魔物娘であるからか、他の人がどんな性行為をしているかについては興味がある。
「今日は……」
舞が、天井を見上げしばらく考える。
「キスしながら手コキして、おちんちんを口でお掃除して、正常位二回とバック三回、最後に一緒に寝転がりながら二回出してもらったから……九回かな」
ざわ……と周りがどよめいた。彼女と兄のセックスは、そのあまりの回数の多さから、学校の七不思議として数えられている。あと六つは未定である。
「休み時間短いのに、よくそんな回数できるね……」
半ば羨望、半ばあきれからそういうと、みんなそうなのではないかと首を傾げられた。
「それで、杏里ちゃんの話に戻るけど」
机から身を乗り出し、舞が私の瞳を覗く。その眼差しは、いつになく真剣である。
「今までのアドバイスは、全部、受け身だったんじゃないかな」
鼻息荒く彼女が言う。
「誘惑はするけれど、最後はお兄ちゃんが襲い掛かってくるのを待っている。魔物娘として、その受け身はあまりよくないんじゃないかな」
彼女の言葉には、経験者だからこその説得力があった。彼女は人間だった頃に、自分からお兄ちゃんを誘惑して恋仲になったのだ。
「サキュバスの魔力もすごい武器だけど、やっぱり結局最後に物を言うのは、押しの強さだと思うよっ!」
「う……うんっ!ありがとう舞ちゃん!」
セックスの先輩である彼女の手をつかみ、何度も上下に振った。
「ありがとう、ありがとう!やってみるよ、絶対にお兄ちゃんを旦那様にする!」
「がんばれー」
「ファイトー!」
周りの魔物娘たちも立ち上がり、応援と共に拍手をした。
――みんなも味方してくれている、もう、何も怖くない!
確かな自信と想いを胸に、私は意気揚々と家に帰った。
◆ ◆ ◆
今日は木曜日だ。お兄ちゃんは、部活で遅くなる。
ソファに座り、心を落ち着かせる。
「すぅ……はぁ……」
深呼吸。服も下着も全て脱ぎ、サキュバスの証である尻尾、羽、角、全てをさらす。お兄ちゃんにも見せたことがない姿。
――お姉様は、何て言っていたっけ?
サキュバスにされるとき、お姉様に言われたことを思い出す。
――確か……。
「したい、されたいことを想像する」
サキュバスになって、人間を超越した存在になって、何がしたいか。お姉様に言われた瞬間には、性の知識の乏しさによって考えられなかったことだ。
だが、今は違う。仲間、そして舞から見聞きすることによって、私は知識を得た。今は考えられる。
――まずはキスだ。
私がどれほどお兄ちゃんのことが好きなのか、伝える。言葉だけでは絶対に無理だ。行動で示す。
――でも、そこで拒否されたら……。
不安が一瞬浮かぶが、すぐに振り払う。そんなことは絶対にないと、自信を持って否定できる。
――確かに感じた、お兄ちゃんの鼓動。あれは……。
抱き付いたとき、心地よい心臓の音が聞こえた。あれは歓喜。私と肌を触れ合ったことを、お兄ちゃんは快く思っていた。
お兄ちゃんは、私のことが好き。
この事実すら、人間だった頃は認められなかったことだ。
――あとはもう、押し倒そう。私の体を、妹という禁断の味を、虜になって骨抜きになるまでしゃぶりつくしてもらおう。
「ただいま」
お兄ちゃんが帰ってきた。
不思議と、私の心拍数は上がらなかった。落ち着き、乱れることなく続いている。
――だって、もう絶対に私たちは夫婦になるんだから。
「あれ、杏里?」
いつもあるはずの返事がないことを訝しんだお兄ちゃんが、居間へ姿を現した。
ソファから立ち上がり、振り返る。
「えっ、あっ……ご、ごめっ……」
私の裸体を見て、視覚情報がお兄ちゃんの脳内に届く瞬間、私は手のひらをお兄ちゃんに向けた。
時がわずかな瞬間、止まる。
廊下を隔てる居間の扉、白い壁。こげ茶色のフローリング。家具も何もかもが裏返り、細切れになり、新たな部屋が形作られる。
それは、お姉様がいた部屋によく似ていた。
白いレンガの壁。天井も白くペンキで塗られた板。お兄ちゃんの後ろには薄青く炎が燃える暖炉があり、その前には巨大なベッドが置いてあった。白いシーツ、黒紫のかけ布団。
それ以外の家具は全くなかった。まさに、愛し合う二人がセックスするためだけの部屋。
「お兄ちゃん、大好きだよ」
掲げていた手のひらを下ろすと、直立していたお兄ちゃんの体が宙に浮かび、背後のベッドの上へゆっくりと仰向けに横たえられた。
「だから、セックスしようね」
予想通り、その言葉を聞いたお兄ちゃんは、目を見開き驚いた。
「ちょっと待って、そんな、いきなり……」
声を震わせながら、戸惑いの声を上げる。
「じゃあ、いきなりじゃなかったら、いいの?」
揚げ足を取るようなことを言い、私は笑いかける。
その顔は、お兄ちゃんを欲情させるのに十分なものだったのだろう。言葉が消え、赤面し、喉を鳴らした。
「いや、そういう、わけじゃ、なくて……」
兄妹だから、とか、血がつながっているから、とか、しどろもどろで言葉を続けている。
「んっ」
口と目を閉じ、お兄ちゃんの唇に口付けた。
「ん!?ん、んんー!?」
ファーストキス。目の前のお兄ちゃんが、顔を真っ赤にさせてもがく。
――分かる。お兄ちゃんも、初めてなんだ。
混じりけのない、純粋なお兄ちゃんの精と匂い。私以外の女が、先に手を付けているということはない。
――もう、私だけのものだから。誰にも渡さない。
そのことを示すために、まずは唇でマーキング。
「ちゅっ、ちゅぅっ」
お兄ちゃんの下唇を、私の唇で挟む。舌を伸ばし、挟んだものを唾液でぬらす。
「え、あっ、うぅっ」
お兄ちゃんが唇の隙間からうめく。私の唾液に触れた部分が、熱と疼きに変わっているからだ。
少しだけ、唇を離す。
「お兄ちゃん、もっと、いっぱい、キスしようよ」
お兄ちゃんの脇の下から背中へ、腕を回す。至近距離で見つめ合う。銀フレームの眼鏡の奥で、お兄ちゃんの瞳が揺れる。
「それは、だから……」
「私がしたいっていう理由じゃ、ダメ?」
瞳の動きが止まる。ゆっくりと、お兄ちゃんが私の瞳を覗いてくる。
「ずっと、ずっと、好きだったんだ。物心がついたときからずっと、他の男子なんて全く何も、興味を持てなかった。好きで好きで好きで、いつもいつもお兄ちゃんばかり見てた。お兄ちゃんを見ていると、胸がドキドキして、恋人同士になりたいと思ってた」
だから、と一息つき、言葉を続ける。
「人間をやめたんだよ、私」
尻尾と羽根を動かし、お兄ちゃんの手を取る。
「ほら、これ」
私の頭、角へ導く。
「これ、ひょっとして……」
「うん、本物だよ。私、サキュバスになったんだ」
お兄ちゃんの部屋に、こっそり入ったことを思い出す。まだ人間だった頃、布団や枕に染み込んでいるお兄ちゃんの匂いを嗅ぎながら初めてのオナニーをしたとき、敷布団の下の異物に気付いた。それは、サキュバスの描かれたエッチな漫画だった。当時はサキュバスの存在を知らなかったけど、それが人間ではなく、男を愛し、男に愛されるための存在だということは分かった。
私の、魔物というものへの原体験。
「本当に、杏里は、人間をやめたんだね」
目を伏せ、お兄ちゃんは重く言葉を紡ぐ。ひょっとして、私が人間をやめてしまったことを、自分の責任と感じているのだろうか。
「私は、自分の意思で、人間をやめた。だから、お兄ちゃんは何も悪くないんだよ」
でも、と言う。
「お兄ちゃんがまだ、責任を感じているのならば……。私を愛して、私に愛されて」
手を後ろにやり、お兄ちゃんの制服のチャックに手をかける。
「私の体に、溺れてほしいな」
下ろし切ると、勢いよく飛び出したものが、私の手のひらに触れた。
この熱さ、形。見なくても分かる。お兄ちゃんのおちんちんだ。
「すごく、硬くなってるね」
嬉しさが、声からあふれ出る。
「あの、いや、それは……」
額から汗をかき、頑張って弁解するお兄ちゃん。ついさっき、倫理を盾に何とか私から逃れようとしていたのに、妹の裸に欲情しているのが見つかって焦っているのだろう。
「別に、何も恥ずかしいことないんだよ。これから私たち、セックスするんだから。オスが勃起するのは当たり前だよ」
それに、と私は続け、体を起こす。お兄ちゃんが少し残念そうな顔をしたのがすごく嬉しい。
「メスがおまんこを濡らすのも、当たり前」
両手の人差し指で、おまんこのぷっくりと膨らんだ肉を押し広げる。くぱぁと粘液が割り開かれる音がして、お兄ちゃんの視界に、膣の中がさらされた。
――ああっ、見てる、お兄ちゃんが、私のおまんこの中、食い入るように見てる!
今まで左右に泳いでいた視線が、私の開かれた場所に注いでいるのが感覚で分かる。視線の当たる場所が、チリチリと心地の良い刺激を受ける。
「はぁ、はぁ……」
お兄ちゃんが、犬のように息を荒げる。
「もう、我慢できないんだね」
尻尾が無意識の内に、左右に揺れる。私の言葉を聞き、お兄ちゃんはかすかにうなずいた。
「うん、私も、もう我慢できないよ」
だから、と腰を移動させる。おまんこの入口を、そそり立ったおちんちんの真上に持ち上げる。
「いっぱいいっぱい、しようね」
腰を下ろす。最初に感じたのは熱だった。まだ何も受け入れたことのない膣を、熱が押し広げる。
「くっ、うぅっ」
お兄ちゃんが、呻き声を上げる。亀頭が柔らかいひだでなめられて、気持ちいいのだろう。
亀頭全てがおまんこ肉で包まれる。さらに腰が下りていく。
――ああ、これは。
膣道がすぼまった部分に、おちんちんの先端が触れた。
――私の処女の証。
「ねえ、お兄ちゃん」
問いかける。
「今なら、まだ引き返せるよ」
膣肉を締めたり緩めたり。亀頭と竿の一部を弄びながら言う。
「分かるよね、今お兄ちゃんが当たってる場所。私の処女膜」
はっと、お兄ちゃんの表情に現実が戻る。
「お兄ちゃんが望むなら、このまま終わらせることもできるよ。腰を抜いて、部屋を戻して、私は人間の姿に戻る。いつも通りの日常に戻る」
でも、と続ける。
「今引き返したら、絶対に一生後悔するよ?」
腰を前後に動かす。そこだけが動いていて、自分でもひどく淫らだと思う。
「サキュバスのおまんこは、大好きな人を気持ちよくさせるためだけに作られたものなんだから、絶対に気持ちいいんだよ。何百枚何千枚とあるひだが、ねっとり愛液を絡めながら、おちんちんをたくさんたくさん、ごしごしするんだよ。ごしごししながら、きゅっきゅって、何度も締めたり緩めたり。熱々のお肉と粘液に包まれながら、頭が真っ白になって、おちんちんがひくんひくんってなって、精液がどぷどぷってあふれちゃうんだよ。どう?妹と、そういうことしたくない?」
私は悪魔だ。だから、お兄ちゃんに引き返させるつもりは微塵もない。それならば、なぜわざわざそんな選択肢を与えたのか。
――それは……。
「きゃひんっ!?」
私の思考は、下半身から広がる衝撃によって中断させられた。
一瞬後、理解する。
――お兄ちゃん、私の腰をつかんで……。
一気に自分の腰へ引っ張り込んだのだ。ぱちんと私たちの皮膚がぶつかり、お兄ちゃんの体温をお尻で感じた。
「おっ、あ、あぁぁ……」
口の端からよだれを垂らし、彼がとろけた表情を浮かべた。それは、生きながらにして天国を見ていた。
――そう、やめさせるという選択肢を見せたのは、彼に選ばせることによって、二度と引き返せないところまで堕落させるため。
「お兄ちゃん、ダメだよぉ……」
自分でも驚くほど、その声は甘ったるいものだった。
「そんなエッチな顔しちゃ、ダメだよ。今のお兄ちゃん、すごくだらしないよ?」
だが彼は、そんなことおかまいなしに、ベッドの弾力を利用して腰を私に打ち付けた。
一回腰がお尻に当たるたびに、子宮口におちんちんの先端がぶつかり、電流に似た快楽が全身を流れる。
「あはっ、はんっ……!もう、私、処女膜破られたばかりなのにぃっ、そんなに腰をぱんぱんさせたらぁ……!」
「ぐっ、おっ、おおっ……」
彼はもう聞いていなかった。それはそうだ。童貞がサキュバスのおまんこにおちんちんを入れたら、理性がショートして獣になるに決まっている。
でも、それでは私は満足できなかった。初めてのセックスが、ただ腰を打ち付け合うだけの、精神の交流がないものでは、淫魔としてのプライドが許さなかった。
彼の耳元に、口を寄せる。
「ねえ、お兄ちゃん」
囁く。
「初めてのおまんこ、気持ちいい?」
喉から声にならない声を漏らしながら、彼は何度もうなずく。素直で可愛い。
「サキュバスまんこ、気持ちいい?」
またもうなずく。
「妹の、近親相姦まんこ、気持ちいい?」
「あぁ、うぅぅ……!」
歯を食いしばり、顔を強張らせる。薄皮一枚で、倫理観が最後の抵抗をしているようだ。
――でも、そんなの、無駄だよ?
「私のこと好きだって、愛してるって、言ってくれたら……、中に出していいよ」
言外で彼の行動を縛る。言わなければ、出せないようになったのだ。
「あう、ぐぅっ」
彼は戸惑っているようだ。快楽は続いているのに、いくら腰を打ち付けても射精しないのだから。
「私のこと、好き?」
一瞬考えていたようだが、すぐに彼はうなずいた。
「愛してる?」
二度、うなずく。
「だったら、ちゃんと口に出して言って。妹のことが好きだって、世界一大好きだって。大好きな妹のおまんこに中出ししたいって」
時折耳たぶにキスをしながら囁く。
「お、おれ、は……」
久しぶりに、彼の口から意味のある言葉が漏れた。
「ずっとずっと、杏里のことが、好きだった」
「他の女子には一切興味が持てなくて、頭に浮かぶのは杏里のことだけだった」
「何度も杏里でオナニーして……。そんなの、絶対おかしいって思ってた」
「最近、急に可愛くなって、色っぽくなって……。もっともっと、杏里のことが好きになった」
「ごめん、ごめん……。こんなダメな兄でごめん」
ぽつぽつと、喘ぎ声を混ぜながら、彼は独白した。
「でも、これだけははっきりと言える」
彼が息を吸う。
「俺は、杏里のことが、世界のどんな人間よりも、大好きだ。愛してる」
ぞくり、と全身が快楽に包まれた。
「ふっ、ううぅっ、うっ、ふぅぅっ……!」
私の体の、全細胞が震える。ぱちぱちと、脳の神経が焼き切れるような感覚を受ける。
おまんこの肉が、ひくんひくんと痙攣する。
自分の体を、両腕でかき抱く。そうしないと、バラバラになってどこかへ飛んで行ってしまいそうだった。
彼の言葉だけで、私は快楽の頂に登り詰めてしまったのだ。
「あぁっ、出るっ……!」
絶頂にとろける思考の中、彼の言葉を聞いた。直後、入口を叩き、直接子宮内に入ってくる熱。今までに味わったことのない、濃厚な精の味と共に放たれたそれは、彼の精液だった。
その味と正体を理解した瞬間、私の人間としての理性は、完全に消失した。
「お兄ちゃん、好き、好きぃ!」
気が付いたら、彼と両手指を絡め、騎乗位で腰を振っていた。
上下に振り、前後に動かし、時には円を描き、膣全てで彼のペニスを堪能する。
――あぁぁ、カリが、ひだに引っかかって……。
えらを張って膨らんだ亀頭が、腰を動かすたびに膣肉を伸ばす。
――お兄ちゃん好きぃ、気持ちいいぃ……。
頭の中に浮かぶのは、セックスの気持ちよさと、彼への愛しさだけ。
「うぐっ、ひぐっ……。好きだよぉ、気持ちいいよぉ、イっちゃうぅ……」
うわごとのようにつぶやき、絶頂した。ぎゅっぎゅっと、ペニスを強く締める。観念したように、ペニスも精液を力強く放った。
「おおお……おぉ……きへりゅ、しぇええひ、きへりゅ……」
一発目よりも強く飛ばされた精液は、子宮の奥の壁を叩き、その刺激は私の視界と思考を真っ白にさせた。
舌がだらしなく口からこぼれる。
「あー……あー……」
舌先からよだれが糸を引いて垂れ、彼の胸を濡らした。
「杏里、その顔、すごくエロい……」
欲情でギラギラと瞳を輝かせた彼は、そう言いながら、私の頭を自分の方へと寄せた。
「じゅるっ」
露出していた私の舌先を、彼が唇で挟む。吸い込むように口内へ誘い、彼は自分の唾液に濡れた舌先を絡めた。
――ばちん。
彼の方からキスを迫られたという嬉しさと伴い、その瞬間に、視界はブラックアウトした。
◆ ◆ ◆
翌日の放課後。2.5組。
教室に入ると、中にいた仲間たちが、拍手と共に私を迎えた。
「おめでとう!」
「めでたい!」
今までアドバイスをくれた同級生や先輩。そして……。
「ついに、やったんだね」
「舞ちゃん!」
両腕を広げ彼女のもとへ向かい、力いっぱい抱きしめた。
「ちょっとー、杏里ちゃん苦しいよー」
そう言いながらも笑顔である舞を、私は抱きながら揺さぶった。
「舞ちゃんのアドバイスのおかげだよー!ありがとー!」
それから、私たち兄妹の生活は変わった。
「あむっ、じゅるっ、れるっ……あ、お兄ちゃん、おはよう。ちゅっ」
朝は彼をフェラチオで起こすのが日課となった。
「あうっ、で、るっ……」
「んっ、でたでた。ちゅぅぅ、ごくっごくっ」
「しぃーっ。声出したら、下の人たちに聞かれちゃうよ?」
「お兄ちゃんも、静かにしててね」
お昼休みは、舞ちゃんとそのお兄ちゃん、四人で屋上前の踊場に集まるようになった。二組の兄妹で、互いのセックスを見せ合う。
舞のお兄ちゃんはすごかった。何度も何度も射精をして、それでもなお衰えを知らない。
舞によると、舞のお兄ちゃんはインキュバスであるらしい。サキュバスと何度もエッチをしていると、男は人間を超越した存在となり、いくら射精をしても疲れ知らずになるとのこと。
私のお兄ちゃんもいずれインキュバスになれるらしく、その日を楽しみにしている。
「杏里、今日も一日お疲れ様」
「うん、お兄ちゃんも……。ちゅっ」
夜は、私が作った部屋で二人きり。この部屋の中は時間の流れが外よりも緩やかになるらしく、私たちはゆったりとした時間を過ごす。
「今日は、後ろから?」
「うん……。乱暴にされたい気分だから」
彼にお尻を向け四つん這いになり、右手でおまんこを開いて見せ、誘う。もう、そこからは自分でも分かるくらいに愛液があふれている。
「じゃあ、いくよ」
くちりと水音を鳴らしながら、心地よい異物が挿入される。
一ミリメートル進むたびに、背筋を駆け上がるぞくぞくが強くなる。
「うっ」
彼が呻き声と共に腰を最後まで突き入れると、ぴったりとサイズの一致した膣が、子宮口でペニスをお出迎えした。
「ふぅっ、くっ、ふぅぅ……!」
それだけで、いつも通り私は絶頂した。喜びで、翼がばさりと一度、大きく羽ばたく。
セックスの回数が増えるたびに、私のおまんこは刺激に弱くなっている。今は一突きごとに絶頂するだけで済んでいるが、このままいくと、ペニスが少し動くだけで、常にイきっぱなしになってしまうのではないだろうか。楽しみだ。
ぱちんぱちんと、私の要望通りに乱暴に、彼は腰を前後させる。私の腰のくびれを両手で強くつかみ、まるでオナホールのようだ。
「ぐぅ、そんなに締めたら、すぐ、出るっ」
言葉と同時に、彼は射精する。
――これ、この感触、好きぃ。
「おぉ、あぁぁ、あー……」
ベッドに頭をうずめ、唾液でシーツを濡らしながら喘ぐ。それは、獣の咆哮のようであった。
だが、彼は強くイっている私にお構いなしに、ペニスの硬さが収まらないまま、しかも射精したまま腰をつき始める。
――これ、もうすぐ、お兄ちゃん、インキュバスに……!
すぐ目の前にちらつく、幸せな未来に思いをはせ、私はさらに強く絶頂した。
13/07/13 12:48更新 / 川村人志