姉ちゃんが不機嫌になったら
私はミノタウロスだ。だから、男より早く起きて包丁を握り、朝食の匂いを家の中に漂わせるというような、妻の鑑のような行動をする女ではない。
――しかしなぁ……
「寝ている姉ちゃんを放っておいて仕事に行こうなんて、随分とまあ……薄情な男だねぇ」
いつもあるはずのぬくもりがなくなったせいで、ついさっき私は夢の世界から引き戻された。
まぶたにさえぎられていた朝の光が瞳に飛び込み、少しずつ焦点がはっきりとしてくる。
そして最初に目に飛び込んできたのは、私を起こすまいと、そろそろと音を立てずに玄関から出ようとする夫の姿であった。
今、彼は私の前に正座をし、しゅんとうなだれている。
「ごめん……」
ぽつりと、彼から謝罪の言葉が漏れる。
キッドという名前の通り、私の夫はまだ少年と言っていい年齢である。幼さの残る顔立ち。薄茶色の短髪。まだ冬には早い季節だが、朝は冷え込む。そのため、厚手の服装を着込んでいる。だが、私はその奥の華奢な、しかし日々の仕事で鍛えられた薄い筋肉がまとわれている体を知っている。
そんな少年が、目を伏せ、悲しそうに目を潤ませている。
――正直、かなり興奮する。
彼が言うことを信じれば、こっそり出かけようとしたのは、私を思っての行動だったらしい。確かに、私たちミノタウロスという種族は、何よりも睡眠を大事にする。時には、魔物娘の本能である性欲すらも押しのけて、睡眠欲が全身を支配することがあるほどだ。
「キッドが言うことにも一理あるんだけどなぁ。しかし、それにしても寂しい話じゃないか」
なぁ……と問いかけるように言葉を吐き出し、彼の頬をそっと手のひらでなでる。ビクッと彼の体が反応する。
うつむいたまま、彼がおびえながら上目遣いで私の顔を覗く。
――そんな目で私を見るなよ……子宮がうずくじゃないか。
彼と相対している間に、完全に目が覚めてしまっていた。つまり、今私の頭の中は、性欲に支配されているということだ。発情一歩手前のこの状態で、彼の可愛らしいおびえた顔である。これで興奮しないお姉さんはいないんじゃなかろうか。
キッドのビクビクが手に伝わるたび、私の背筋がゾクゾクと甘い刺激に震える。
「何も、そんなにおびえることはないじゃないかよぅ……」
――そんなに私、こいつにとって怖い存在なのか？
一抹の不安が私の頭の中を掠める。
「姉ちゃんが、お前に怒ったこと、今までにあったか？」
彼を怖がらせないように、優しく問いかける。
私たちは夫婦であるが、結婚する以前からの呼び方が抜けきれず、いまだに私が彼に自分のことを言うときも、彼が私のことを呼ぶときも、「姉ちゃん」という単語を使う。
「……何回か」
男にしては長いまつげを震わせながら、彼は答えた。
――ああ、そういえば……
彼に言われて思い出したが、確かに何回か怒ったことがあったな。今思い返せば、取るに足らないくだらないことばかりだが。
「うっ、んん……ま、まあ、たまにムッとするときは、あるけどさ……」
彼を刺激しないように、声色は優しいままだ。図星をつかれたからといって、不機嫌になっては全くこの話が進展しない。
――それに、もう子宮のうずきを我慢するのは無理なんだよ。
性欲がもはや水を入れすぎた水袋のようにぱんぱんに膨れ上がっていて、いつ破裂してもおかしくない状態だ。早く、一刻も早く、彼とセックスしたい。
「そういうときはな……こうやって」
彼の二の腕を下から両手で支え、私の背中まで回す。
「抱きしめて」
その状態のまま、私が足元にある布団に背中から倒れこむ。彼が上から私の体に乗りかかり、両腕で抱きしめている状態になった。さらに、今度は私から、彼の首に両腕を巻き、そっと抱き寄せる。
「ちゅっ……ちゅぅ……軽くキスをすれば」
唇が触れ合う程度の軽いキスを二度。離れた瞬間、彼の唇のぬくもりが消え、強烈な喪失感と寂しさが襲ってくる。今、私がどんな顔をしているのか、私は痛いほどよく分かる。ミノタウロスは全員単純だ。心と体が嘘を付き合うなんて器用なことはできない。
だから、彼の目に映る私の顔は、とろとろにとろけているはずだ。
「ほら、分かるだろ？これだけで、もう、嫌なことなんておさらばさ……姉ちゃんはもう、お前のことしか考えられない」
彼の喉が、ごくりと鳴るのが分かった。今、キッドは私に欲情している。それだけで、私の負の感情は一気に晴れ上がるのだ。
「キスして、姉ちゃんの顔を見ただけで、もうこんなになっちまって……かわいいよ」
彼の仕事を手伝うために鍛え上げられた腹筋に、彼の欲情の証が熱々になって触れている。彼の方も完全に戦闘態勢に入っているようだ。
「さぁて、今、他に誰もいないところに、愛し合って欲情しあっている番が一組。どうする？」
いくら私が我慢できないほど欲情しているからって、無理矢理襲ってしまったら水の泡だ。彼は私に無理矢理やられたという恐怖心を覚えてしまう。だから、彼から襲ってくる形にもって行きたかった。決して意地悪をしているわけではない。
すっかりできあがってしまった彼は、その言葉に答えるかのように、自らの下半身をあらわにした。
脱がされた下着から、跳ね上がるかのように露出するペニス。少年らしく、まだ幼さが残り、亀頭に皮がかぶっているそれ。しかし、私にはそれで十分だった。私の気持ちいいところを徹底的に叩いてくれるそれを見て、膣の奥からじゅんと粘液が漏れるのを感じた。
欲情したせいで汗をかいたからなのか、まだ朝だというのに、彼のそこからは蒸れたいい香りが漂ってくる。
「ん、はぁ……見せるだけか？勃起ちんちんを見せるだけで終わりなのか？」
まだまだそれだと三角だぞ、と教師になったつもりで言うと、彼は息を荒げ、乱暴な手つきで私のビキニパンツを引き下ろした。
「んくっ」
敏感な部分が外気にさらされ、空気の冷たさに思わず声を上げてしまう。
まだ本格的な冬を迎えていないというのに、蒸れ蒸れになったそこからは、ほかほかの湯気がたっていた。
「ふぅっ、そうだ……もう少しだぞ。さあ、次にやることは？」
期待に満ちた目で、彼の表情を見る。全体的に色素の薄いキッドの白い肌が、興奮と欲情で桃色に染まっていた。
「はぁーっ！はぁーっ！」
目の前のオスが、深く強く息を吐き、牛の特徴を持つ茶色の毛に覆われた大陰唇を押し広げる。
「くぅ、あはぁ……」
大事な部分が、彼の目にさらされている。そう思うだけで、精神的な快楽で心が満たされる。
彼に覆いかぶされていてその部分を見ることができないが、どんな状態であるかは簡単に想像できる。
押し広げられた肉の間に、ねっとりとした愛液が橋をかけている。ぽっかりと開いた桃色の穴からは、濃厚なメスの香りと、人間よりも高めの体温で暖められた空気が、ほくほくと湯気を立てて、実にいい食べごろなのだろう。
「はぁぁ……」
思考を中断するように、膣内よりも温かいペニスが、入り口に触れた。まだ皮が触れているだけなのに、彼の熱が私に確実に伝わっている。
「そうだ、いいぞ、その調子……」
ずず、ずずっとゆっくりペニスが挿入されていく。それだけなのに、女性器は悦び、きゅっと肉を締め付ける。それによって、彼の余り皮が押し戻され、ずるりと亀頭の粘膜が露出した。
「ふぅっ、くぅぅ！」
ビリリと電流のように快楽が駆け巡ったのだろう、彼の表情がゆがみ、息が小さく吐き出される。
「はぁぁ、あぁぁ！」
彼は一声そう叫ぶと、さっきまでのゆっくりとした全身から一変して一気に腰を奥まで突き入れた。
「あぁあ！」
一気に肉ひだが反り返られて、脳内で気持ちよさがスパークした。小さくもたくましいペニスの先端が、私の一番気持ちいいところを叩いた。
「はぁぁ、あぁ……そうだ、正解……よくできました」
満点だ。出来のいい生徒の顔を、そっと抱き寄せる。身長が足りないため、私の顔まで届かない彼の頭は、すっぽりと私の胸の谷間に納められた。
「一問目はバッチリだ。じゃあ次はぁ……二問目っ、だっ。お姉さんのおまんこに入ったおちんちんを、どうすればいいのかなぁ……くぅっ、そうだっ、またっ正解だぁっ」
私が言い終える前に、彼は腰だけを器用に前後に動かし始めた。ぎゅうっと両腕でしっかりと私にしがみつき、胸の谷間の匂いを肺いっぱいに吸い込みながら尻を前後させる。
「そんなに谷間の匂いをすーはーしちゃって、そんなに姉ちゃんの匂い、好きか？」
問いかけると、彼がこくこくと何度もうなずく。
「うん。姉ちゃんの匂い、全部好き……」
上目遣いでこちらを覗きながらそう言うと、彼はまた谷間に顔全体をうずめ、何度も深呼吸をした。その間も、腰の動きは止まらない。くねくねと、まるで下半身だけが別の生物であるかのように、尻が何度も前後、上下する。
「はぁっ、あうぅっ、そうか……くぅっ、じゃあ、思う存分、吸っていいからな……」
完全に性欲に支配された彼の行動に、母性本能が大いにくすぐられた。
――本当、キッド、お前、かわいいよ。
きゅんと胸が締め付けられる思いがして、自然と彼の頭に手を乗せ、なでなでと優しくなでる。
「くぅぅ……」
それが気持ちよかったのか、彼がため息のような喘ぎを一声上げ、腰の動きを速くした。
「きゅんっ、はぅっ、それ、いいぞ……！」
こつこつと、彼の腰が奥に突き入れられるたび、気持ちいいところが叩かれる。ビリビリと、強烈な刺激が脳に甘く満たされる。
「あはっ、そんなにぃ、一生懸命に腰を振っちゃって……姉ちゃんのまんこ、気持ちいいか？」
「うんっ！うんっ！」
彼の切羽詰った声が、谷間にさえぎられくぐもって聞こえる。
「姉ちゃんのおまんこぉ、ふぅっ！気持ちよくてぇ……はぅぅ、腰が、こひがとまりゃないぃ！」
ぱちゅんぱちゅんとねちっこい音が響き、それに合わせて我慢がきかなくなって壊れてしまったかのように、彼の腰が動く。
谷間から顔を離し、彼が私の顔を見つめる。
――……なんつー顔してんだ。そんな、とろとろになっちゃって……
彼の瞳は、欲情に潤んでいた。そして黒目が濁って見える。完全に、今つながっているメスをむさぼることしか考えていない目だ。口は半開きで、端から流れ出る唾液が、顎の先からねっとりと滴り落ちる。
「ほら、お前の大好きな姉ちゃんのおっぱいだぞ？」
右の乳房を下から持ち上げ、彼の眼前にさらす。
「はむっ、ちゅぅっ、ちゅぅぅ」
素直に乳首に吸い付く。赤ちゃんのようだ。
「んっ、くぅっ、ふぅぅ……あんっ、それ、いい、ぞっ……」
だが、見た目は赤ちゃんでも、見えない部分は全く違う。
舌の広い部分で先端を押さえ、ぞりぞりと削るように舐める。そうかと思ったら、次の瞬間には乳首の根元を舌先でくるくると回転させつつ刺激してくる。そして時折上下の前歯で甘噛みし、こしこしとしごきあげるのだ。
「はっ、うっ……おっぱいちゅうちゅう、どんどんっ、上手くなってるっ、なっ……姉ちゃん嬉しいぞっ！」
かわいい赤ちゃんにもう一度なでなで。
彼のまぶたが気持ちよさそうに下りた。
「ふぅぅー……」
喉を鳴らしつつ、彼が鼻から息を漏らす。
――赤ちゃんの次はペットみたいになっちゃったな。
きゅんきゅんと庇護欲が刺激されている間に、彼の鼻息がどんどん荒くなってきた。
「んっ、くっ、きゅぅっ、ふぅんっ！」
乳首に吸い付く唇を離さず、鼻から漏らすように声を出す。腰の動きも止まらない。
――もうすぐ、出ちゃうんだな。
「いいぞっ、んっ、その調子だ。最後の問題だぞ……」
膣の上部をこする刺激が、私にも絶頂への階段を登らせる。
「一晩かけて、金玉の中でじっくり溜めたその精液ぃ……どこに出せばいいかなぁっ、あんっ」
「ふんっ、うんっ、きゅぅぅっ！」
腰が力強く当たる音が、さらに大きくなった。
「さぁっ、ちゃんとっ、姉ちゃんの一番好きなところにっ、だすんだぞっ！」
「はぁぁ、姉ちゃぁん……出るぅっ！」
――熱い。
最初に浮かんだ感想がそれだった。その後、ペニスの脈動を感じた。そして、膣道を駆け上がり、子宮口をこじ開け、たっぷりのぷりぷりした精液が私の子宮に満たされた。
「はぁぁ、あぁぁ……あぁ……はっ。せいかい……よくできましたっ……」
射精の余韻にひたり、くたりと力を抜いたキッドの体を、優しく抱きとめた。そして頭をなでなで。
「え、嘘？」
「ごめんなさい……」
起きたときと同じように、キッドが正座でしゅんとうなだれる。
「その……姉ちゃんのことを想って抜け出したっての、嘘なんだ」
どうやら、こっそり布団を抜けて仕事に出ようとしたのは、私との朝の一発を避けたかったかららしい。
「だって……ここ三日、ずっと仕事さぼっちゃってたからぁ……」
悲しそうな顔で、私を見る。
確かに。私たちは一度セックスをしてしまったら、くたくたになるまでやりきってしまう。その日は仕事どころではなくなってしまうのだ。
「だからって、何も言わずに出て行くってのはないじゃんかよぅ……」
唇を尖らせ抗議した。
「うん、ごめん……でも、姉ちゃんの寝起き顔を見たら、絶対ムラムラしちゃうし……」
――まあ、それならしょうがないが……
かわいらしい理由に、ちょっとだけ気が晴れた。だが、まだもやもやした気持ちが完全に晴れない。
「あ……ひょっとして、姉ちゃん今ムッとしてる？」
ちらりと、上目遣いで彼がこちらを見た。
「ん、まあ、ちょっとは……」
そう言った瞬間、私の鼻腔にふわりと彼の香りが届いた……と思った次の瞬間。
「わっ」
彼に抱きしめられていた。
「んっ、ちゅっ」
そして、彼に唇をふさがれた。
もう、嫌な気分はすっかり晴れてしまった。もう、目の前のかわいい夫のことしか考えられない。
――まったく、とんでもないものを教えてしまったな。
心の中で苦笑しつつ、彼のキスに身を任せた。
――しかしなぁ……
「寝ている姉ちゃんを放っておいて仕事に行こうなんて、随分とまあ……薄情な男だねぇ」
いつもあるはずのぬくもりがなくなったせいで、ついさっき私は夢の世界から引き戻された。
まぶたにさえぎられていた朝の光が瞳に飛び込み、少しずつ焦点がはっきりとしてくる。
そして最初に目に飛び込んできたのは、私を起こすまいと、そろそろと音を立てずに玄関から出ようとする夫の姿であった。
今、彼は私の前に正座をし、しゅんとうなだれている。
「ごめん……」
ぽつりと、彼から謝罪の言葉が漏れる。
キッドという名前の通り、私の夫はまだ少年と言っていい年齢である。幼さの残る顔立ち。薄茶色の短髪。まだ冬には早い季節だが、朝は冷え込む。そのため、厚手の服装を着込んでいる。だが、私はその奥の華奢な、しかし日々の仕事で鍛えられた薄い筋肉がまとわれている体を知っている。
そんな少年が、目を伏せ、悲しそうに目を潤ませている。
――正直、かなり興奮する。
彼が言うことを信じれば、こっそり出かけようとしたのは、私を思っての行動だったらしい。確かに、私たちミノタウロスという種族は、何よりも睡眠を大事にする。時には、魔物娘の本能である性欲すらも押しのけて、睡眠欲が全身を支配することがあるほどだ。
「キッドが言うことにも一理あるんだけどなぁ。しかし、それにしても寂しい話じゃないか」
なぁ……と問いかけるように言葉を吐き出し、彼の頬をそっと手のひらでなでる。ビクッと彼の体が反応する。
うつむいたまま、彼がおびえながら上目遣いで私の顔を覗く。
――そんな目で私を見るなよ……子宮がうずくじゃないか。
彼と相対している間に、完全に目が覚めてしまっていた。つまり、今私の頭の中は、性欲に支配されているということだ。発情一歩手前のこの状態で、彼の可愛らしいおびえた顔である。これで興奮しないお姉さんはいないんじゃなかろうか。
キッドのビクビクが手に伝わるたび、私の背筋がゾクゾクと甘い刺激に震える。
「何も、そんなにおびえることはないじゃないかよぅ……」
――そんなに私、こいつにとって怖い存在なのか？
一抹の不安が私の頭の中を掠める。
「姉ちゃんが、お前に怒ったこと、今までにあったか？」
彼を怖がらせないように、優しく問いかける。
私たちは夫婦であるが、結婚する以前からの呼び方が抜けきれず、いまだに私が彼に自分のことを言うときも、彼が私のことを呼ぶときも、「姉ちゃん」という単語を使う。
「……何回か」
男にしては長いまつげを震わせながら、彼は答えた。
――ああ、そういえば……
彼に言われて思い出したが、確かに何回か怒ったことがあったな。今思い返せば、取るに足らないくだらないことばかりだが。
「うっ、んん……ま、まあ、たまにムッとするときは、あるけどさ……」
彼を刺激しないように、声色は優しいままだ。図星をつかれたからといって、不機嫌になっては全くこの話が進展しない。
――それに、もう子宮のうずきを我慢するのは無理なんだよ。
性欲がもはや水を入れすぎた水袋のようにぱんぱんに膨れ上がっていて、いつ破裂してもおかしくない状態だ。早く、一刻も早く、彼とセックスしたい。
「そういうときはな……こうやって」
彼の二の腕を下から両手で支え、私の背中まで回す。
「抱きしめて」
その状態のまま、私が足元にある布団に背中から倒れこむ。彼が上から私の体に乗りかかり、両腕で抱きしめている状態になった。さらに、今度は私から、彼の首に両腕を巻き、そっと抱き寄せる。
「ちゅっ……ちゅぅ……軽くキスをすれば」
唇が触れ合う程度の軽いキスを二度。離れた瞬間、彼の唇のぬくもりが消え、強烈な喪失感と寂しさが襲ってくる。今、私がどんな顔をしているのか、私は痛いほどよく分かる。ミノタウロスは全員単純だ。心と体が嘘を付き合うなんて器用なことはできない。
だから、彼の目に映る私の顔は、とろとろにとろけているはずだ。
「ほら、分かるだろ？これだけで、もう、嫌なことなんておさらばさ……姉ちゃんはもう、お前のことしか考えられない」
彼の喉が、ごくりと鳴るのが分かった。今、キッドは私に欲情している。それだけで、私の負の感情は一気に晴れ上がるのだ。
「キスして、姉ちゃんの顔を見ただけで、もうこんなになっちまって……かわいいよ」
彼の仕事を手伝うために鍛え上げられた腹筋に、彼の欲情の証が熱々になって触れている。彼の方も完全に戦闘態勢に入っているようだ。
「さぁて、今、他に誰もいないところに、愛し合って欲情しあっている番が一組。どうする？」
いくら私が我慢できないほど欲情しているからって、無理矢理襲ってしまったら水の泡だ。彼は私に無理矢理やられたという恐怖心を覚えてしまう。だから、彼から襲ってくる形にもって行きたかった。決して意地悪をしているわけではない。
すっかりできあがってしまった彼は、その言葉に答えるかのように、自らの下半身をあらわにした。
脱がされた下着から、跳ね上がるかのように露出するペニス。少年らしく、まだ幼さが残り、亀頭に皮がかぶっているそれ。しかし、私にはそれで十分だった。私の気持ちいいところを徹底的に叩いてくれるそれを見て、膣の奥からじゅんと粘液が漏れるのを感じた。
欲情したせいで汗をかいたからなのか、まだ朝だというのに、彼のそこからは蒸れたいい香りが漂ってくる。
「ん、はぁ……見せるだけか？勃起ちんちんを見せるだけで終わりなのか？」
まだまだそれだと三角だぞ、と教師になったつもりで言うと、彼は息を荒げ、乱暴な手つきで私のビキニパンツを引き下ろした。
「んくっ」
敏感な部分が外気にさらされ、空気の冷たさに思わず声を上げてしまう。
まだ本格的な冬を迎えていないというのに、蒸れ蒸れになったそこからは、ほかほかの湯気がたっていた。
「ふぅっ、そうだ……もう少しだぞ。さあ、次にやることは？」
期待に満ちた目で、彼の表情を見る。全体的に色素の薄いキッドの白い肌が、興奮と欲情で桃色に染まっていた。
「はぁーっ！はぁーっ！」
目の前のオスが、深く強く息を吐き、牛の特徴を持つ茶色の毛に覆われた大陰唇を押し広げる。
「くぅ、あはぁ……」
大事な部分が、彼の目にさらされている。そう思うだけで、精神的な快楽で心が満たされる。
彼に覆いかぶされていてその部分を見ることができないが、どんな状態であるかは簡単に想像できる。
押し広げられた肉の間に、ねっとりとした愛液が橋をかけている。ぽっかりと開いた桃色の穴からは、濃厚なメスの香りと、人間よりも高めの体温で暖められた空気が、ほくほくと湯気を立てて、実にいい食べごろなのだろう。
「はぁぁ……」
思考を中断するように、膣内よりも温かいペニスが、入り口に触れた。まだ皮が触れているだけなのに、彼の熱が私に確実に伝わっている。
「そうだ、いいぞ、その調子……」
ずず、ずずっとゆっくりペニスが挿入されていく。それだけなのに、女性器は悦び、きゅっと肉を締め付ける。それによって、彼の余り皮が押し戻され、ずるりと亀頭の粘膜が露出した。
「ふぅっ、くぅぅ！」
ビリリと電流のように快楽が駆け巡ったのだろう、彼の表情がゆがみ、息が小さく吐き出される。
「はぁぁ、あぁぁ！」
彼は一声そう叫ぶと、さっきまでのゆっくりとした全身から一変して一気に腰を奥まで突き入れた。
「あぁあ！」
一気に肉ひだが反り返られて、脳内で気持ちよさがスパークした。小さくもたくましいペニスの先端が、私の一番気持ちいいところを叩いた。
「はぁぁ、あぁ……そうだ、正解……よくできました」
満点だ。出来のいい生徒の顔を、そっと抱き寄せる。身長が足りないため、私の顔まで届かない彼の頭は、すっぽりと私の胸の谷間に納められた。
「一問目はバッチリだ。じゃあ次はぁ……二問目っ、だっ。お姉さんのおまんこに入ったおちんちんを、どうすればいいのかなぁ……くぅっ、そうだっ、またっ正解だぁっ」
私が言い終える前に、彼は腰だけを器用に前後に動かし始めた。ぎゅうっと両腕でしっかりと私にしがみつき、胸の谷間の匂いを肺いっぱいに吸い込みながら尻を前後させる。
「そんなに谷間の匂いをすーはーしちゃって、そんなに姉ちゃんの匂い、好きか？」
問いかけると、彼がこくこくと何度もうなずく。
「うん。姉ちゃんの匂い、全部好き……」
上目遣いでこちらを覗きながらそう言うと、彼はまた谷間に顔全体をうずめ、何度も深呼吸をした。その間も、腰の動きは止まらない。くねくねと、まるで下半身だけが別の生物であるかのように、尻が何度も前後、上下する。
「はぁっ、あうぅっ、そうか……くぅっ、じゃあ、思う存分、吸っていいからな……」
完全に性欲に支配された彼の行動に、母性本能が大いにくすぐられた。
――本当、キッド、お前、かわいいよ。
きゅんと胸が締め付けられる思いがして、自然と彼の頭に手を乗せ、なでなでと優しくなでる。
「くぅぅ……」
それが気持ちよかったのか、彼がため息のような喘ぎを一声上げ、腰の動きを速くした。
「きゅんっ、はぅっ、それ、いいぞ……！」
こつこつと、彼の腰が奥に突き入れられるたび、気持ちいいところが叩かれる。ビリビリと、強烈な刺激が脳に甘く満たされる。
「あはっ、そんなにぃ、一生懸命に腰を振っちゃって……姉ちゃんのまんこ、気持ちいいか？」
「うんっ！うんっ！」
彼の切羽詰った声が、谷間にさえぎられくぐもって聞こえる。
「姉ちゃんのおまんこぉ、ふぅっ！気持ちよくてぇ……はぅぅ、腰が、こひがとまりゃないぃ！」
ぱちゅんぱちゅんとねちっこい音が響き、それに合わせて我慢がきかなくなって壊れてしまったかのように、彼の腰が動く。
谷間から顔を離し、彼が私の顔を見つめる。
――……なんつー顔してんだ。そんな、とろとろになっちゃって……
彼の瞳は、欲情に潤んでいた。そして黒目が濁って見える。完全に、今つながっているメスをむさぼることしか考えていない目だ。口は半開きで、端から流れ出る唾液が、顎の先からねっとりと滴り落ちる。
「ほら、お前の大好きな姉ちゃんのおっぱいだぞ？」
右の乳房を下から持ち上げ、彼の眼前にさらす。
「はむっ、ちゅぅっ、ちゅぅぅ」
素直に乳首に吸い付く。赤ちゃんのようだ。
「んっ、くぅっ、ふぅぅ……あんっ、それ、いい、ぞっ……」
だが、見た目は赤ちゃんでも、見えない部分は全く違う。
舌の広い部分で先端を押さえ、ぞりぞりと削るように舐める。そうかと思ったら、次の瞬間には乳首の根元を舌先でくるくると回転させつつ刺激してくる。そして時折上下の前歯で甘噛みし、こしこしとしごきあげるのだ。
「はっ、うっ……おっぱいちゅうちゅう、どんどんっ、上手くなってるっ、なっ……姉ちゃん嬉しいぞっ！」
かわいい赤ちゃんにもう一度なでなで。
彼のまぶたが気持ちよさそうに下りた。
「ふぅぅー……」
喉を鳴らしつつ、彼が鼻から息を漏らす。
――赤ちゃんの次はペットみたいになっちゃったな。
きゅんきゅんと庇護欲が刺激されている間に、彼の鼻息がどんどん荒くなってきた。
「んっ、くっ、きゅぅっ、ふぅんっ！」
乳首に吸い付く唇を離さず、鼻から漏らすように声を出す。腰の動きも止まらない。
――もうすぐ、出ちゃうんだな。
「いいぞっ、んっ、その調子だ。最後の問題だぞ……」
膣の上部をこする刺激が、私にも絶頂への階段を登らせる。
「一晩かけて、金玉の中でじっくり溜めたその精液ぃ……どこに出せばいいかなぁっ、あんっ」
「ふんっ、うんっ、きゅぅぅっ！」
腰が力強く当たる音が、さらに大きくなった。
「さぁっ、ちゃんとっ、姉ちゃんの一番好きなところにっ、だすんだぞっ！」
「はぁぁ、姉ちゃぁん……出るぅっ！」
――熱い。
最初に浮かんだ感想がそれだった。その後、ペニスの脈動を感じた。そして、膣道を駆け上がり、子宮口をこじ開け、たっぷりのぷりぷりした精液が私の子宮に満たされた。
「はぁぁ、あぁぁ……あぁ……はっ。せいかい……よくできましたっ……」
射精の余韻にひたり、くたりと力を抜いたキッドの体を、優しく抱きとめた。そして頭をなでなで。
「え、嘘？」
「ごめんなさい……」
起きたときと同じように、キッドが正座でしゅんとうなだれる。
「その……姉ちゃんのことを想って抜け出したっての、嘘なんだ」
どうやら、こっそり布団を抜けて仕事に出ようとしたのは、私との朝の一発を避けたかったかららしい。
「だって……ここ三日、ずっと仕事さぼっちゃってたからぁ……」
悲しそうな顔で、私を見る。
確かに。私たちは一度セックスをしてしまったら、くたくたになるまでやりきってしまう。その日は仕事どころではなくなってしまうのだ。
「だからって、何も言わずに出て行くってのはないじゃんかよぅ……」
唇を尖らせ抗議した。
「うん、ごめん……でも、姉ちゃんの寝起き顔を見たら、絶対ムラムラしちゃうし……」
――まあ、それならしょうがないが……
かわいらしい理由に、ちょっとだけ気が晴れた。だが、まだもやもやした気持ちが完全に晴れない。
「あ……ひょっとして、姉ちゃん今ムッとしてる？」
ちらりと、上目遣いで彼がこちらを見た。
「ん、まあ、ちょっとは……」
そう言った瞬間、私の鼻腔にふわりと彼の香りが届いた……と思った次の瞬間。
「わっ」
彼に抱きしめられていた。
「んっ、ちゅっ」
そして、彼に唇をふさがれた。
もう、嫌な気分はすっかり晴れてしまった。もう、目の前のかわいい夫のことしか考えられない。
――まったく、とんでもないものを教えてしまったな。
心の中で苦笑しつつ、彼のキスに身を任せた。
11/12/04 01:52更新 / 川村人志