プロローグ〜Q
エストは孤児だった。
出産時に母を亡くし、父は彼が十四の時に戦死した。
身寄りもなく、金がないので孤児院にも入れない。
物乞いをしても、手に入れられるのは雀の涙ほどのお金と欠片ほどの食料のみ。
そんな彼は自然と、悪事に手を染めるようになった。
金と食料を得るために、ひったくり、スリ、空き巣、窃盗を繰り返した。
何度も兵士に追いかけられ、街を転々としながら、これまでずっとあがくように生きてきた。
しかし、十七のある日、つまらないミスで兵士に捕らえられてしまう。
「W・エスト、窃盗の容疑により『投棄刑』に処す」
投棄刑とは、その街独特の刑罰である。
街の南に、地元の住人が誰も近づかない大きな森がある。
そこの最深部まで、目隠しをした受刑者を連れて行き、その場に放り出すというものである。
森に捨てるのが刑罰であるので、森から抜け出せれば無罪放免である。
しかし、彼は自分を投棄場に連れて行く騎士達が語る、恐ろしい事実を聞いてしまう。
かつて投棄刑を言い渡された受刑者が、この森を抜けてきたという例は一度もないということを。
この森は、地元の住人に「魔界の森」と呼ばれている。
「なぁスノー、本当に人間のオスの匂いがするのかよ」
「私の嗅覚に間違いはないわよ。もう少しだから我慢しなさい」
森の中を、二人の女性が並んで歩いている。
一人はミノタウロス、もう一人はスノーと呼ばれたサキュバスである。
「一週間前も同じこと言っていたけどさぁ。その時は人間じゃなくてサルのオスだったじゃないか」
「うっ。ま、まぁ誰だって間違いってものが……」
「二週間前は鹿のオスだったよな」
「ううっ……ミミナぁ……それ以上言わないでぇ……」
スノーは肩を落としシクシクと泣き出した。ミミナと呼ばれたミノタウロスがそれを見て豪快に笑う。
「はっはっは。そう気を落とすな!次はどんな動物のオスが来るか、私は結構楽しみにしてるんだから」
「慰めになってないわよバカぁ!」
スノーがミミナの肩をぽかぽかと叩く。ミミナはまだ笑い続けていた。
「わはははは。いじけるスノーも可愛いなぁ!あれ、向こうに何かいるぞ」
ミミナが正面を指差した。スノーが目を凝らしてそちらを見つめる。
「本当だ。確かに何かが……ああ!人よ人!それもオス!」
スノーが歓声を上げて走り出した。
「おぉい、スノー、待てよぉ!」
力が……入らない……
何なんだ、この森は……
呼吸をすればするほど……体がだるくなる……
頭が、重い……
もう……歩けない……立てない……
……
足音がする……誰?……あの街の人間か?
あれは……翼? それに……尻尾……
ははは……ついに……地獄から、お出迎えが来たか……
もう、眠い……意識が、遠の……く……
「スイートぉ!ただいまぁ!」
森の奥の更に奥にある集落。その中の一軒の家に、スノーとミミナが元気よく入ってきた。
木の板を組み合わせただけのような、非常に簡素な家である。
壁は素人が組んだかのように隙間だらけであり、隙間風が入り放題である。
更に、集落は小さく、家が密集しているので、隣の家の声などは丸聞こえとなり、プライバシーというものがまるでない。
「おかえり」
台所に一人のエルフであるスイートが立っており、振り返りもせずに返事をした。
彼女はまな板の上の野菜を切っており、その左隣には、炎の魔法石に乗せられた大きな鍋が煮えている。
「もう、スイートったら冷たいわねぇ。こっちを見もしないなんて」
スノーが抗議する。
「そうだそうだ、今私達はとっても気分がいいのに、それに水を差すなんてひどいじゃないか」
ミミナが続ける。
「へぇ、何でそんなに機嫌がいいのかしら。ついに動物園開園の目処がついたのかしら」
スイートは涼しい顔で答えた。やはり振り向かない。
「うぅ……スイートもそんなこと言うのね。しくしく」
「犬、猫、兎、狐、狼、熊、鹿、猿ときて、次はなにかしらねぇ……」
悲しむスノーにかまうことなく、スイートは続けて言った。
「うぅーん……」
その時、ミミナの背中に背負われていたエストが、うめき声を上げた。
スイートが慌てて振り向く。
「え、まさか……」
「へっへっへ!そのまさかよ!苦労したかいがあったわ!ついに、ついに!人間のオスを見つける事に成功したのよ!」
両手を腰にあて、胸を張るスノー。
「と、いうわけで、料理なんて作ってる暇ないぞスイート!早速、アレやるぞ!ナニするぞ!」
隣にいたミミナが嬉しそうに声を上げた。
「うぅん……うぅ……ん?」
エストは、不思議な感覚で目を覚ました。
股間が温かい。滑りのある感触もする。そして……
「あれ……何か……気持ちいい」
「おはよう」
エストが目を開けると、目の前に自分の顔を覗き込む女性がいた。
「え、あ、あなたは……」
彼は戸惑いながら尋ねた。森で倒れたはずなのに、何故小屋の中にいるのか。目の前にいる美女は誰なのか。
そして、頭の下の柔らかい感触……これは、膝枕?
「私はスノーって言うの。森の中で倒れているあなたを見つけたから、私の家まで運んできたのよ」
彼女は微笑んだ。彼の視界に、重力に逆らうように漂う尻尾と、ゆっくりと動く羽が映った。
「ああ、あなたは……あの時の……うっ」
エストは喘いだ。股間に走る快楽が強くなったのだ。
彼は視線をそちらへ移す。
「はむっ……じゅるる……じゅっじゅっじゅっ……れろぉ……スノー、この子の、美味いよ」
彼のペニスを、ミミナがくわえ込んでいた。
味わうように、ゆっくりと亀頭に舌を這わせ、裏側を根元から舐め上げ、尿道口に優しくキスをする。
一度口を離すと、今度は横からペニスをくわえ込んだ。頬にペニスが当たり、外にぷっくりと膨らむ。
「え、な、何やってるんですか……」
「起き上がっちゃだめよ。森の瘴気に中てられてたから、まだ頭がぼーっとするでしょ?」
スノーがエストの額に軽く指を当て、起き上がろうとする彼を抑える。
「今はただ、気持ちいいのに身を任せればいいのよ」
彼女はそのまま、エストの左の頬、顎、右の頬とゆっくり撫でた。
ふふっとスノーが笑う。
「ねぇ、スイート。この子とっても可愛いわよ。頑張って気持ちいいの我慢してる……」
スノー達から少し離れた位置に座っているスイートは、彼女達の方を一瞥すると、ぷいとそっぽを向いた。
「あらあら、男アレルギーまだ治ってないのね……我慢しても苦しいだけなのに」
エストの頭を撫でながら、スノーは呟いた。
「はぁ……はぁ……うぅっ」
エストはミミナの舌遣いに身を震わせる。
「じゅるっ……ふふっ、よく頑張ったな。もう我慢しなくていいんだぞ……もっと気持ちよくしてやるから、出してすっきりしような」
そう言うと、ミミナはペニスを喉奥までくわえ込み、思い切り吸い始めた。
「ご、ごめんなさい……もうっ……出ますっ」
今までとは打って変わった激しい刺激に、腰をがくがく痙攣させながら喘ぐエスト。
彼の視線が宙をさまよう。横目で様子を見ていたスイートの目線と交わる。
眉をひそめ、これまでの人生で味わったことのない快楽に戸惑いを隠せない表情。
目は虚ろで涙を浮かべ、助けを求めるように首を小さく振る彼の顔をスイートは見た。
その瞬間、彼女の心の中に、今まで味わったことのない感情が芽生えた。
――ああ、なんて可愛い顔……今すぐ駆け寄って、ぎゅっと抱きしめてあげたい……!
彼女の頬に赤みが差し、息が少し荒くなる。
母性、そして彼を愛してあげたい、愛してもらいたいという欲求。彼女は初めての感覚に戸惑った。
スノーは、そんな彼女の戸惑いと恋の表情を見て、淫らに微笑んだ。
「ああっ……もう、だめ、です……」
エストは腰を持ち上げ、ミミナの喉の最奥に怒張を突き出した。
どくっどくどくどく……
「んん!ん……ん……ごくっ……ごくっ……」
ミミナは一度びくりと震えると、何の苦もなく彼から発射された精液を飲み干した。
「ミミナ、この子の、どう?」
「すごいよスノー……どろっどろで、いっぱいで、濃くて、美味しい……」
一滴も残さず飲み干すと、ミミナはうっとりとして呟いた。
「はぁ……はぁ……」
エストは射精の余韻に浸り、だらしなく表情を緩ませている。
「お疲れ様。気持ちよかったんだね。そんなに可愛い顔しちゃって……ふふっ」
スノーの人差し指が、彼の口から垂れた涎をふき取る。
「そういえば、まだ君の名前を聞いてなかったわね」
「あ……え……えっと、エスト……です」
エストの上半身が、スノーに抱き起こされる。
「私はスノー。これはさっき言ったかしらね。それで、今あなたを気持ちよくしてくれたのが、ミミナ」
ミミナが白い歯を見せ笑う。
「それで、あっちの子がスイート。ご存知のとおり、私達は人間じゃないわ」
いつの間にか、スイートは体をエストの方に向けていた。しかし、目線は違う所を向いている。
「私はサキュバス。ミミナはミノタウロス。スイートはエルフね。この集落にいる女はみんな魔物よ」
彼女は続ける。
「それでね、君にお願いがあるんだけど……助けてあげたお礼ってことで、聞いてもらえないかしら?」
「は、はぁ……」
エストは戸惑いながらもうなずいた。
「私達魔物はね、動物の肉とか、果物とかも食べられるんだけどね……どうも効率が悪くて、すぐおなかが空いちゃうのよ」
「それに、栄養がうまく吸収できないから、すぐ眠くなるしな」
ミミナが横から言う。
「そう。それで、私達にとって最も効率のいい食べ物は、人間の男の精液なのよ」
「え、せ、精液って、その……」
「そう、さっきミミナの口にいっぱいだした、あれよ。あれをね、膣内に思いっきり発射してくれると、私達おなかいっぱいになれて幸せなのよ」
そう言うと、スノーはエストの尿道口と裏筋に指を這わせた。彼は小さく呻く。
「今、この集落で男がいないの、私達三人だけなのよ。みんながやっているのを見てて、もう我慢ができなくなっちゃって……」
彼女は目を潤ませた。
「大丈夫。どうしても嫌なら仕方ないし。でも、ここはとっても暮らしやすいわよ。食べ物はたくさんあるし。年中暖かいわよ」
それに……とスノーは微笑む。
「魔物の膣内(なか)はとっても気持ちいいから、きっと気に入ると思うわ。だから、どうかしら……私達と一緒に暮らさない?」
彼女はエストにずいっと顔を寄せた。二人の鼻が触れ合いそうな距離。彼女の目が、まっすぐ彼の目を見つめる。
「え、あ……はい」
見詰め合うのが恥ずかしくなり、彼は目線をそらしながらうなずいた。
――どうせ、俺には帰る場所なんてないし……
彼は、人の目を盗み、追われ、人々から蔑まれる日々に疲れていた。
それに、美女三人に囲まれる生活はとても良いものだろうと考えた。断る理由がない。
「本当?嬉しい!」
スノーは彼に抱きついた。
「え、あ、あのっ……スノーさん!?」
彼は顔を真っ赤にする。
「ああ、そうだわ。もうひとつ聞きたいことがあるの」
抱きついたまま、彼女は耳元で囁く。
「あなた……童貞?」
「えっ……」
エストの顔が更に赤くなり、スノーを引き剥がそうとした。
「あわわわわ……そ、そんな……俺は……」
「ねえ、どうなの?童貞なの?そうじゃないの?」
彼女は続けて囁き、耳に息を吹きかける。
「あひゃっ、くす、くすぐったいっ。あ、あ、は、はいっ、そうっですっ!」
耳元から伝わるくすぐったさと恥ずかしさで、彼は途切れ途切れで言った。
スノーは大きく目を見開いた。
そして、ぱっと彼から離れ、ミミナとスイートを呼び寄せる。
「聞いた?」「聞いた聞いた」「ど、童貞だって!」「どうするのよ!誰がエストの童貞奪うの!?」
「そりゃあ、あいつを見つけた私だろ」「ミミナはさっき口に出してもらったじゃない!」
「スノーは、あの子の顔いいこいいこしてたでしょ?私は触れてすらいないんだから」
「え、あんた男アレルギーじゃなかったのかよ?」「それとこれとは別!」
「このままじゃあ、いつまでたっても決まらないわよ?」
「じゃあ、彼に選んでもらったらいいじゃない」「ああ、それでいいな。誰が選ばれても恨みっこなしだからな!」「当然」
エストは、突然ひそひそ話を始めた彼女達を見て不安になった。
――童貞が、そんなにいけなかったのだろうか……
――まさか、このまま帰らされることになるんじゃあ……
「エスト……」
そんな彼の思考は、スノーの言葉に遮られた。
「よく聞いてほしいの。私達魔物にとってはね、男の童貞を奪うのが一種のステータスなの。だから、三人共君の最初の女になりたいの。でも、私達ではそれを決められない」
だから……と彼女は言う。
「君が誰と初めての相手になりたいか、決めてほしいのよ」
「え、お、俺が?」
エストが自分を指差した。目が大きく見開かれ、驚きを隠せない様子だ。
スノーがうなずく。
「そう、誰を選んでも、文句は言わないからな」
ミミナがずいっと彼の方に身を乗り出す。
「その……ゆっくり考えていいからね」
何故か正座のスイートも負けじと彼に近づく。唇をきゅっと結び、真面目な顔をしているのに、顔は真っ赤である。
「どうしよう……」
エストは小さく呟いた。
――まさか、こんなことになるなんて思わなかった。
いきなり三人もの美女に囲まれ、しかもその中から一人を初エッチの相手に選べと言われた。
「うぅーむ……」
悩み唸る。
優しく微笑み、甘えたくなるスノーさん。
元気があり、笑顔が素敵なミミナさん。
思いつめた顔をして、思わず抱きしめたくなるスイートさん。
長い間悩み続け、エストはようやく口を開いた。
出産時に母を亡くし、父は彼が十四の時に戦死した。
身寄りもなく、金がないので孤児院にも入れない。
物乞いをしても、手に入れられるのは雀の涙ほどのお金と欠片ほどの食料のみ。
そんな彼は自然と、悪事に手を染めるようになった。
金と食料を得るために、ひったくり、スリ、空き巣、窃盗を繰り返した。
何度も兵士に追いかけられ、街を転々としながら、これまでずっとあがくように生きてきた。
しかし、十七のある日、つまらないミスで兵士に捕らえられてしまう。
「W・エスト、窃盗の容疑により『投棄刑』に処す」
投棄刑とは、その街独特の刑罰である。
街の南に、地元の住人が誰も近づかない大きな森がある。
そこの最深部まで、目隠しをした受刑者を連れて行き、その場に放り出すというものである。
森に捨てるのが刑罰であるので、森から抜け出せれば無罪放免である。
しかし、彼は自分を投棄場に連れて行く騎士達が語る、恐ろしい事実を聞いてしまう。
かつて投棄刑を言い渡された受刑者が、この森を抜けてきたという例は一度もないということを。
この森は、地元の住人に「魔界の森」と呼ばれている。
「なぁスノー、本当に人間のオスの匂いがするのかよ」
「私の嗅覚に間違いはないわよ。もう少しだから我慢しなさい」
森の中を、二人の女性が並んで歩いている。
一人はミノタウロス、もう一人はスノーと呼ばれたサキュバスである。
「一週間前も同じこと言っていたけどさぁ。その時は人間じゃなくてサルのオスだったじゃないか」
「うっ。ま、まぁ誰だって間違いってものが……」
「二週間前は鹿のオスだったよな」
「ううっ……ミミナぁ……それ以上言わないでぇ……」
スノーは肩を落としシクシクと泣き出した。ミミナと呼ばれたミノタウロスがそれを見て豪快に笑う。
「はっはっは。そう気を落とすな!次はどんな動物のオスが来るか、私は結構楽しみにしてるんだから」
「慰めになってないわよバカぁ!」
スノーがミミナの肩をぽかぽかと叩く。ミミナはまだ笑い続けていた。
「わはははは。いじけるスノーも可愛いなぁ!あれ、向こうに何かいるぞ」
ミミナが正面を指差した。スノーが目を凝らしてそちらを見つめる。
「本当だ。確かに何かが……ああ!人よ人!それもオス!」
スノーが歓声を上げて走り出した。
「おぉい、スノー、待てよぉ!」
力が……入らない……
何なんだ、この森は……
呼吸をすればするほど……体がだるくなる……
頭が、重い……
もう……歩けない……立てない……
……
足音がする……誰?……あの街の人間か?
あれは……翼? それに……尻尾……
ははは……ついに……地獄から、お出迎えが来たか……
もう、眠い……意識が、遠の……く……
「スイートぉ!ただいまぁ!」
森の奥の更に奥にある集落。その中の一軒の家に、スノーとミミナが元気よく入ってきた。
木の板を組み合わせただけのような、非常に簡素な家である。
壁は素人が組んだかのように隙間だらけであり、隙間風が入り放題である。
更に、集落は小さく、家が密集しているので、隣の家の声などは丸聞こえとなり、プライバシーというものがまるでない。
「おかえり」
台所に一人のエルフであるスイートが立っており、振り返りもせずに返事をした。
彼女はまな板の上の野菜を切っており、その左隣には、炎の魔法石に乗せられた大きな鍋が煮えている。
「もう、スイートったら冷たいわねぇ。こっちを見もしないなんて」
スノーが抗議する。
「そうだそうだ、今私達はとっても気分がいいのに、それに水を差すなんてひどいじゃないか」
ミミナが続ける。
「へぇ、何でそんなに機嫌がいいのかしら。ついに動物園開園の目処がついたのかしら」
スイートは涼しい顔で答えた。やはり振り向かない。
「うぅ……スイートもそんなこと言うのね。しくしく」
「犬、猫、兎、狐、狼、熊、鹿、猿ときて、次はなにかしらねぇ……」
悲しむスノーにかまうことなく、スイートは続けて言った。
「うぅーん……」
その時、ミミナの背中に背負われていたエストが、うめき声を上げた。
スイートが慌てて振り向く。
「え、まさか……」
「へっへっへ!そのまさかよ!苦労したかいがあったわ!ついに、ついに!人間のオスを見つける事に成功したのよ!」
両手を腰にあて、胸を張るスノー。
「と、いうわけで、料理なんて作ってる暇ないぞスイート!早速、アレやるぞ!ナニするぞ!」
隣にいたミミナが嬉しそうに声を上げた。
「うぅん……うぅ……ん?」
エストは、不思議な感覚で目を覚ました。
股間が温かい。滑りのある感触もする。そして……
「あれ……何か……気持ちいい」
「おはよう」
エストが目を開けると、目の前に自分の顔を覗き込む女性がいた。
「え、あ、あなたは……」
彼は戸惑いながら尋ねた。森で倒れたはずなのに、何故小屋の中にいるのか。目の前にいる美女は誰なのか。
そして、頭の下の柔らかい感触……これは、膝枕?
「私はスノーって言うの。森の中で倒れているあなたを見つけたから、私の家まで運んできたのよ」
彼女は微笑んだ。彼の視界に、重力に逆らうように漂う尻尾と、ゆっくりと動く羽が映った。
「ああ、あなたは……あの時の……うっ」
エストは喘いだ。股間に走る快楽が強くなったのだ。
彼は視線をそちらへ移す。
「はむっ……じゅるる……じゅっじゅっじゅっ……れろぉ……スノー、この子の、美味いよ」
彼のペニスを、ミミナがくわえ込んでいた。
味わうように、ゆっくりと亀頭に舌を這わせ、裏側を根元から舐め上げ、尿道口に優しくキスをする。
一度口を離すと、今度は横からペニスをくわえ込んだ。頬にペニスが当たり、外にぷっくりと膨らむ。
「え、な、何やってるんですか……」
「起き上がっちゃだめよ。森の瘴気に中てられてたから、まだ頭がぼーっとするでしょ?」
スノーがエストの額に軽く指を当て、起き上がろうとする彼を抑える。
「今はただ、気持ちいいのに身を任せればいいのよ」
彼女はそのまま、エストの左の頬、顎、右の頬とゆっくり撫でた。
ふふっとスノーが笑う。
「ねぇ、スイート。この子とっても可愛いわよ。頑張って気持ちいいの我慢してる……」
スノー達から少し離れた位置に座っているスイートは、彼女達の方を一瞥すると、ぷいとそっぽを向いた。
「あらあら、男アレルギーまだ治ってないのね……我慢しても苦しいだけなのに」
エストの頭を撫でながら、スノーは呟いた。
「はぁ……はぁ……うぅっ」
エストはミミナの舌遣いに身を震わせる。
「じゅるっ……ふふっ、よく頑張ったな。もう我慢しなくていいんだぞ……もっと気持ちよくしてやるから、出してすっきりしような」
そう言うと、ミミナはペニスを喉奥までくわえ込み、思い切り吸い始めた。
「ご、ごめんなさい……もうっ……出ますっ」
今までとは打って変わった激しい刺激に、腰をがくがく痙攣させながら喘ぐエスト。
彼の視線が宙をさまよう。横目で様子を見ていたスイートの目線と交わる。
眉をひそめ、これまでの人生で味わったことのない快楽に戸惑いを隠せない表情。
目は虚ろで涙を浮かべ、助けを求めるように首を小さく振る彼の顔をスイートは見た。
その瞬間、彼女の心の中に、今まで味わったことのない感情が芽生えた。
――ああ、なんて可愛い顔……今すぐ駆け寄って、ぎゅっと抱きしめてあげたい……!
彼女の頬に赤みが差し、息が少し荒くなる。
母性、そして彼を愛してあげたい、愛してもらいたいという欲求。彼女は初めての感覚に戸惑った。
スノーは、そんな彼女の戸惑いと恋の表情を見て、淫らに微笑んだ。
「ああっ……もう、だめ、です……」
エストは腰を持ち上げ、ミミナの喉の最奥に怒張を突き出した。
どくっどくどくどく……
「んん!ん……ん……ごくっ……ごくっ……」
ミミナは一度びくりと震えると、何の苦もなく彼から発射された精液を飲み干した。
「ミミナ、この子の、どう?」
「すごいよスノー……どろっどろで、いっぱいで、濃くて、美味しい……」
一滴も残さず飲み干すと、ミミナはうっとりとして呟いた。
「はぁ……はぁ……」
エストは射精の余韻に浸り、だらしなく表情を緩ませている。
「お疲れ様。気持ちよかったんだね。そんなに可愛い顔しちゃって……ふふっ」
スノーの人差し指が、彼の口から垂れた涎をふき取る。
「そういえば、まだ君の名前を聞いてなかったわね」
「あ……え……えっと、エスト……です」
エストの上半身が、スノーに抱き起こされる。
「私はスノー。これはさっき言ったかしらね。それで、今あなたを気持ちよくしてくれたのが、ミミナ」
ミミナが白い歯を見せ笑う。
「それで、あっちの子がスイート。ご存知のとおり、私達は人間じゃないわ」
いつの間にか、スイートは体をエストの方に向けていた。しかし、目線は違う所を向いている。
「私はサキュバス。ミミナはミノタウロス。スイートはエルフね。この集落にいる女はみんな魔物よ」
彼女は続ける。
「それでね、君にお願いがあるんだけど……助けてあげたお礼ってことで、聞いてもらえないかしら?」
「は、はぁ……」
エストは戸惑いながらもうなずいた。
「私達魔物はね、動物の肉とか、果物とかも食べられるんだけどね……どうも効率が悪くて、すぐおなかが空いちゃうのよ」
「それに、栄養がうまく吸収できないから、すぐ眠くなるしな」
ミミナが横から言う。
「そう。それで、私達にとって最も効率のいい食べ物は、人間の男の精液なのよ」
「え、せ、精液って、その……」
「そう、さっきミミナの口にいっぱいだした、あれよ。あれをね、膣内に思いっきり発射してくれると、私達おなかいっぱいになれて幸せなのよ」
そう言うと、スノーはエストの尿道口と裏筋に指を這わせた。彼は小さく呻く。
「今、この集落で男がいないの、私達三人だけなのよ。みんながやっているのを見てて、もう我慢ができなくなっちゃって……」
彼女は目を潤ませた。
「大丈夫。どうしても嫌なら仕方ないし。でも、ここはとっても暮らしやすいわよ。食べ物はたくさんあるし。年中暖かいわよ」
それに……とスノーは微笑む。
「魔物の膣内(なか)はとっても気持ちいいから、きっと気に入ると思うわ。だから、どうかしら……私達と一緒に暮らさない?」
彼女はエストにずいっと顔を寄せた。二人の鼻が触れ合いそうな距離。彼女の目が、まっすぐ彼の目を見つめる。
「え、あ……はい」
見詰め合うのが恥ずかしくなり、彼は目線をそらしながらうなずいた。
――どうせ、俺には帰る場所なんてないし……
彼は、人の目を盗み、追われ、人々から蔑まれる日々に疲れていた。
それに、美女三人に囲まれる生活はとても良いものだろうと考えた。断る理由がない。
「本当?嬉しい!」
スノーは彼に抱きついた。
「え、あ、あのっ……スノーさん!?」
彼は顔を真っ赤にする。
「ああ、そうだわ。もうひとつ聞きたいことがあるの」
抱きついたまま、彼女は耳元で囁く。
「あなた……童貞?」
「えっ……」
エストの顔が更に赤くなり、スノーを引き剥がそうとした。
「あわわわわ……そ、そんな……俺は……」
「ねえ、どうなの?童貞なの?そうじゃないの?」
彼女は続けて囁き、耳に息を吹きかける。
「あひゃっ、くす、くすぐったいっ。あ、あ、は、はいっ、そうっですっ!」
耳元から伝わるくすぐったさと恥ずかしさで、彼は途切れ途切れで言った。
スノーは大きく目を見開いた。
そして、ぱっと彼から離れ、ミミナとスイートを呼び寄せる。
「聞いた?」「聞いた聞いた」「ど、童貞だって!」「どうするのよ!誰がエストの童貞奪うの!?」
「そりゃあ、あいつを見つけた私だろ」「ミミナはさっき口に出してもらったじゃない!」
「スノーは、あの子の顔いいこいいこしてたでしょ?私は触れてすらいないんだから」
「え、あんた男アレルギーじゃなかったのかよ?」「それとこれとは別!」
「このままじゃあ、いつまでたっても決まらないわよ?」
「じゃあ、彼に選んでもらったらいいじゃない」「ああ、それでいいな。誰が選ばれても恨みっこなしだからな!」「当然」
エストは、突然ひそひそ話を始めた彼女達を見て不安になった。
――童貞が、そんなにいけなかったのだろうか……
――まさか、このまま帰らされることになるんじゃあ……
「エスト……」
そんな彼の思考は、スノーの言葉に遮られた。
「よく聞いてほしいの。私達魔物にとってはね、男の童貞を奪うのが一種のステータスなの。だから、三人共君の最初の女になりたいの。でも、私達ではそれを決められない」
だから……と彼女は言う。
「君が誰と初めての相手になりたいか、決めてほしいのよ」
「え、お、俺が?」
エストが自分を指差した。目が大きく見開かれ、驚きを隠せない様子だ。
スノーがうなずく。
「そう、誰を選んでも、文句は言わないからな」
ミミナがずいっと彼の方に身を乗り出す。
「その……ゆっくり考えていいからね」
何故か正座のスイートも負けじと彼に近づく。唇をきゅっと結び、真面目な顔をしているのに、顔は真っ赤である。
「どうしよう……」
エストは小さく呟いた。
――まさか、こんなことになるなんて思わなかった。
いきなり三人もの美女に囲まれ、しかもその中から一人を初エッチの相手に選べと言われた。
「うぅーむ……」
悩み唸る。
優しく微笑み、甘えたくなるスノーさん。
元気があり、笑顔が素敵なミミナさん。
思いつめた顔をして、思わず抱きしめたくなるスイートさん。
長い間悩み続け、エストはようやく口を開いた。
10/04/10 02:55更新 / 川村人志
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