読切小説
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フェラるグール
「おはようございまーす……」
 寝起きの定番の言葉を囁きながら、私は目の前のベッド、その掛け布団にそっと潜り込んだ。
 そして、四つんばいになって、中で眠る彼に覆いかぶさるようににじり寄る。
 一人で眠るには少し広いベッド。それも当然で、さっきまで私も彼の隣で眠っていたのである。
 わざわざ一度外に出たのは、ただ寝起きドッキリのレポーターごっこがしたかっただけ。何故誰も見ていないのにあんなことをしたのだろうと、先ほどの行動をもう後悔し始めていた。
――でも、あれをやらないと気分が出ないのよねぇ……
 そう思いつつ、私は仰向けに眠った彼のズボンのウエスト部分に手をかけた。
「ご開帳ー」
 彼が起きないように、慎重にパジャマのズボンと下着を一緒に下ろす。
 すると、そこからぶるんと音を立て、勢いよく彼の大きく硬くなったペニスが顔を出した。
 ズボンと下着という拘束を失ったそれは、天を突くように、重力を無視するようにそびえ立っていた。
 口の中に、唾液が大量に分泌される。
――美味しそう……
 自然と舌が唇からこぼれ、息が荒くなる。
「ハッハッ……ハァッ」
 深くついた熱いため息が、ペニスに当たる。ぴくっと小さくそれが震えた。
 温められた亀頭から、濃い匂いが放たれる。
――はぁ……この香り、最高。
 すんすんと鼻を鳴らしながら、鼻先をそこに近づけ、私はペニスから漂う濃厚なオスの香りを吸い取った。
 彼のペニスの匂いはいつまで経っても私を飽きさせない。
 私は彼と結婚する前夜に死んだ(らしい)。何故(らしい)なのかというと、目の前にトラックが迫ってきて、ライトがまぶしいなと思っていたら、次の瞬間には失神している彼のペニスを舐めしゃぶっていたからである。
 その間の記憶が吹っ飛んでいて、いまだに一度死んだことが信じられないのだ。
――あれから二十年か……
 すんすんと匂いを嗅ぎつつ、しみじみと思う。
――ああ、やっぱり、この匂いは変わらない。
 二十年前と全く同じ、彼の濃厚な香りが脳まで響き、私の全身は幸せに満ち溢れる。
 この匂いが世界で一番好きだ。
――当然、匂いだけじゃあなくて、味もぉ……
 舌を伸ばし、ペニスを根元からゆっくりと舐め上げる。
 下面のぷっくりと膨らんだところを真っ直ぐ上へ舐め上げ、裏筋まで這わせる。
 裏筋に到着したら、今度はそこと尿道口を交互に何度も何度も、ちろちろと舐める。
 ぱくぱくと尿道口が何度も開いたり閉じたりし、そのたびにとろりとした匂いの濃い粘液が漏れ出るのが、舌に伝わる感触で分かった。
――あは、もう我慢汁があふれてる。
 彼はまだ眠りから覚めない。しかし、眠っているのにちゃんと私の舌を感じてくれているのが分かって、嬉しくなった。
――もっと気持ちよくしてあげるからね。
 心の中で囁くと、今度は舌を横移動させ、裏筋からカリへと這わせた。
 時計回りに、カリの溝に沿って舌先を押し付ける。
 つつつ……ペニスの中でも、特に神経が集まっているであろう箇所を、優しく、撫でるように舐める。
――この刺激、たまらないんじゃないかしら、ふふっ。
 小さく笑いながら、舌先奉仕を続けた。
 彼のペニスはいまだに硬さを保ち続けているため、手で支えなくても、楽に舌を這わせることができる。
――ああ、とっても硬くて素敵。
 辛抱できなくなってきた。早く、このそそり立ったこれを、口の中に頬張りたい。
 口内全てで、彼のおちんちんを味わいたい。喉奥をこつんこつんと亀頭で叩かれたい。食道に直接、熱い精液を注がれたい。
「いただきまぁす」
 そう言うと、大きく口を広げて舌をだらしなく垂らし、ペニスを口内に招き入れた。
 何百、何千、何万、いや、何億回と慣れ親しんだ感触が口内に広がる。
 暖かいというより、熱いという形容が合っているのではないかというほどの、体温の高いペニス。
 私の口内の形にすっぽり収まるように、オーダーメイドされたのではないかというほど、それはぴったりと粘膜に貼りついた。
「もご、もご……」
――それじゃあ最初は、あいさつ代わりにいつもあれから……
 舌の腹の部分を、幹にぎゅっと押し付ける。そして、べとりと舌全体をペニスの下半分を覆うようにみっちりと包み込む。
 さながらペニスがウインナーのホットドッグみたいな状態になった。
 それで、その強く押し付けた舌を、前後に動かすのだ。
 これがまだ皮をかぶっていたころは、『あいさつ』といえば皮と亀頭の間に舌を入れてねじねじすることであった。
 しかし、インキュバス化してからしばらく経つと、すっかり皮がむけた大人ちんちんになってしまった。
 ねじねじが好きだったので、始めは少し寂しかったのだが、最初からカリをたくさん刺激して彼を喜ばせることができるようになったのは大きいと感じている。
 じゅっじゅっ……唾液が舌とペニスに絡み、大きな音がする。
 裏筋とカリの一部が強く舌にこすられるから、彼はこれをとても気に入っている。もっとも、私のフェラチオで彼が気に入っていないものなどないのだが。
 尿道も圧迫されるため、舌を奥に引っ込めるたびに濃い我慢汁が舌の上に漏れ出される。
 舌を前に突き出すと、その出された粘液がペニスに絡みつき、奏でる音がさらに大きく、エッチになる。
――あったかいのがぁ、攪拌されてぇ……味が広がるぅ……
 苦しょっぱいような、我慢汁独特の味が、口内全体に広がる。
 嫌いではない、むしろ好きな味なのだが。
――これじゃないよ。これも好きだけどぉ……物足りない。
 そう、本当に好きなのはこれじゃないのだ。我慢汁がたっぷりこってりと出切って、最後の最後に出る精液。早くそれが飲みたかった。
 さっき起きたばかりで、とても喉が渇いているのだ。
 だから、舌の動きを変え、口の動きを変え、一刻も早くザーメンをごくごくしようとした。
 舌主体の攻撃をやめ、ピストン攻撃に移行する。
「じゅぷっ、じゅぷっ、ぬちゅっ」
 カリが唇に引っかかるたびに、空気の抜けたような音がする。
 近所の主婦たちが集まって、喫茶店なんかに行く機会がある。当然、そこで話される内容は夫との営みのことばかりなのであるが、そこで特に盛り上がる話題が『夫の弱点』である。
 どの奥さんの相手も、カリの溝と裏筋が弱点と語っていた。一人、尿道の奥の奥なんて言っているエキドナさんがいたが、あれは特殊である。ノーカウント。
 だから、顔を引き唇がカリと引っかかるとき、同時に舌先で裏筋をこするから、とても気持ちがいいのではないだろうか。
 だが、夫は起きない。
 普通の人間、彼のようなインキュバスではなく、魔物娘を知らない真っさらな人間だったら、すでに何度射精しているのか分からない刺激である。しかし、毎日のように朝眠っている間にフェラチオをされているせいで、彼は私の舌や口の刺激に慣れきってしまっていた。
――だったら、射精させて起こしてやる!
 妻がこんなに奉仕をしているのに、夫はまだ夢の中。そんな事態に少し悔しくなったので、徹底的に責めて起こしてやろうと決心した。
「んぐっ、ぐぐっ、んぐぐぅっ」
 まずは喉の奥までペニスを挿入させる。
 先っぽが食道の手前にまで到達した。人間だったら、むせたり呼吸できなくなったりする危険な状態である。
 しかし、私は魔物だ。天国に行くことを拒否し、遺灰から肉体を復活させた執念を持つグールだ。フェラチオに関しては魔物一と呼ばれる種族だ。だから、ちっとも苦しくない。
 むしろ、喉の奥がさながら膣の奥みたいな性感帯になっており、気持ちいい。
 ぞく、ぞく、と快感が首筋を伝って脳まで届く。
「んじゅる、れるっ」
 喉奥まで到達したら、喉の肉で亀頭を揉み解し、舌全体を使って裏筋から根元まで、下半分を余すところなく刺激する。
「んっ、んんんぅ……」
 口に空気を入れず、ゆっくりとペニスを口から抜いていく。口内の空気が薄くなり、亀頭やその下に吸引刺激を与える。
「んぐっ!」
 首の力を抜き、吸引力に任せてペニスを再び喉奥に招く。
 こつんと喉奥を叩き、ぞくっと気持ちよさが流れる。
 ぽろぽろと涙が流れるが、苦しいからではない。ぎゅっと涙をためる部分が押され、自然と瞳からこぼれるのだ。
 むしろ、今の気分は悲しみや苦しみとは真逆。嬉しくて気持ちいい。
――ああ、本当に、魔物って素晴らしい。
 人間とは違い、愛するものを精一杯愛して、それが偽りなく幸福や喜びとして受け入れられる。人間とは大違いだ。魔物は正直だ。
 次は、喉奥のもみもみを長くする。
 亀頭が縦に横にもまれ、形を変えるのが感触として伝わる。相当の刺激のはずだ。
――我慢汁の量が増えてきたぁ……
 唾液とは明らかに違う粘度の液体が、喉を伝って胃に落ちていく。
 ねちねちと、喉奥が音を鳴らす。
――これ、出るね。うん、出る。精液、ごくごく飲める……
 頭の中に、もうすぐ出るであろう精液の感触が浮かんできた。
 我慢汁よりもさらに粘度の高い液体が、遠慮なく喉奥を通り、体内の粘膜を刺激する感触。
 口内や鼻腔内に広がる、濃厚な味と香り。
 射精の快楽で、幸せそうにびくびくと震えるペニス。
 想像しただけで、子宮と喉がきゅんきゅんとうずく。
――もう、だめ。早く射精欲しいよ。
 舌をペニスに添え、じゅぷじゅぷと下品な音を立てて高速ピストンをした。
「んっ、じゅるっ、じゅぷっ、ぐちゅぅっ」
 吸引、圧迫、吸引、圧迫。何度も何度も、素早く二つの異なる刺激を繰り返す。
 ぶるっ。ペニスの硬度がさらに高まった。ぷっくりとカリの傘が開く。
――発射三秒前ぇ……だね?
 本当に最後。もう直後に精液が来る。
「ぐじゅっ、じゅぅる、じゅぅるるるるるぅっ!」
 喉奥まで使い、根元から先っぽまでみっちりと口内粘膜に包み込み、息を吸い込みながら徐々に口内からペニスを引き抜いていった。
 口内が広がることによる真空吸引刺激と、掃除機のように息を吸い込むことで生まれる違った吸引刺激。
 ダブルバキューム刺激で止めを刺す。
――腰が跳ねたぁっ
 彼の腰が一度、無意識の内に跳ね上がった。
 喉奥をもう一度勢いよく叩き、ついに待望の射精が始まった。
――これこれこれぇ……
 きゅっと目を閉じ、体内を蹂躙しようとする精液の勢いに意識を集中させる。
 チューブで直接流し込まれるように、精液が食道を伝って落ちる。ぷりぷりの感触が、体内を楽しませる。食道の周りの筋肉で、はむはむと噛んでしまえそうなほど、弾力があった。
 それに、とても熱い。カッカと喉を焼くような熱さがする。夜通し睾丸の中で放出されるのを待っていた精液の、生命の源を感じ取った。
「んくっ、ごくっ、ごくっ……」
 少しずつ引き抜いていく。
 舌の付け根、腹、先と、満遍なく精液を乗せていく。
 とく、とく、とく。ペニスの脈動に合わせ、第二波、第三波、第四波と、徐々に勢いを弱めつつ、精液が尿道口から垂れて流れた。
「ちゅぽっ」
 ペニスが口から完全に解き放たれた。
 射精直前よりは力が抜けているが、まだ勃起は収まらず、重力に逆らって天を突いている。
「えぇろっ、れろぉ、ちゅるっ、くちゅっくちゅっ」
 舌に乗った精液を、歯に乗せ噛み潰す。
 歯を跳ね返すような強い弾力。それが破られると、中からじゅるりと濃厚な味と香りが口内いっぱいに広がった。
 苦くてえぐくて、でも甘みもある私の大好きな味を堪能しつつ、噛み砕いたザーメンを飲み干した。
 胃が膨れそうになるほどの量。さすがインキュバス。
 そう思っていると、先っぽからまだ薄く白い液体が漏れていた。
――まだ残ってる。
 精液の残りと我慢汁が混ざった、薄味のシロップを、ちろちろと舌で舐め取った。
――この味も、なかなか……
 くどくなりそうなほど濃い味を堪能したあとに、この薄い味はちょうどいい。
 舐めるたびに少量漏れるそれを、何度もぬぐい取って口内に運んだ。
「んっ、ふぁあぁぁー」
 布団の外から音がした。そして、もぞもぞと私の下にあるものがうごめく。
 世界一大好きな、愛する旦那様のお目覚めだ。
「おはよー」
 前へ四つんばいのままにじり寄り、布団から顔を出してあいさつをした。
 空気がこもっていた部分から開放され、顔に涼しげな朝の風が舞い込む。
 朝日に照らされた室内。私の虹彩がぎゅっと縮まり、目の前にある彼の顔に少しずつピントが合っていった。
 眠い目をこすり、しばしばと目を瞬かせる夫。
「ああ、おはよう」
 うっすらと目を開くと、彼はあいさつを返し、笑顔を向けてくれた。
――まったく、いつまで経っても子供みたいな笑顔なんだから。
 インキュバスになって、欲望に対しておおらかになっているからだろうか、彼の笑顔は少年のように屈託がなかった。
 その顔が、いつまでも私の心をときめかせる。
「それにしても、本当にあなたって鈍感なんだね。射精し終わるまで起きないだなんて……」
 そう言って笑顔を返した。
 彼の頬を優しくなでる。じょりっと伸びかけの髭の感触がする。
「えっ、ああ……ごめん」
 突然、彼はバツの悪そうな顔をして誤った。
「どうしたの?急に」
 彼に謝られる理由は何もない。
「実はさ、起きてたんだ。ちょっと前から」
「いつから……?」
 全然気づかなかった。
「バキュームしながらしごかれてたところから……かな」
 私が本気を出したところだ。さすがに、あれだけ強い刺激を与えたら起きるものなのか。
「えー、だったらちゃんとリアクションしてくれればよかったのに」
 そう言うと、彼はごめんごめんと何度も謝った。
――本当、ちゃんと言ってくれればよかったのに。
 言ってくれれば、彼の大好きなしゃぶりながら喋るのもしてあげたのに。
「じゃあ、次はどうする?さっきできなかったから、ちゅぱちゅぱしゃぶりながら、もごもご喋ってあげるけど」
 私の言葉に、彼の顔がぱっと輝いた。非常に分かりやすい。
「んふっ、じゃあ……」
 ぱくりといきなり亀頭をくわえ込む。
「うっ」
 彼が気持ちよさそうにうめいた。
「ふぉれじゃあ、いっふぁい もごもご ひまひょうねぇ……」
 くわえながら喋ってあげると、彼は奇妙な甲高い声を出して悦んだ。

 ああ、今週も、日曜の朝が過ぎていく。
 ゆったりと、幸せに包まれて……
11/06/11 20:56更新 / 川村人志

■作者メッセージ
100%エロのみ。
タイトルが思いついたから書いた。

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