｢こら、ミッチ起きんか。もう朝じゃぞ｣
　大きな藁の山の上に、大の字で寝そべる男。
　幸せそうによだれを垂らしている彼を、一人のハニービーが揺り動かした。
｢え、あ……うーん……んん？｣
　睡眠を中断させられた男は、うめき声を上げながらゆっくりとまぶたを開けた。
｢ほれ、シャキっとせんか。朝ごはんじゃぞ｣
　ハニービーは、そう言って男の両頬を両平手でぱちぱちと叩いた。
｢んっ、おお、アンナか。おはよう｣
　眠い目をこすり、ミッチがようやく意味のある言葉を口にする。
｢まったく、おぬしはいつもそんなじゃの。朝に弱すぎるぞ｣
　思わず溜息をつくアンナ。
　彼女の夫であるミッチは、いままで一度も自力で起きたことがない。
　毎日毎日、彼女に両頬をぴちぴちと叩かれ、時には頭をおもちゃみたいに乱暴に振られて、ようやく起きるのだ。
｢小さい頃から、どうも朝は苦手でなぁ｣
　ミッチは恥ずかしそうに頬を掻く。
｢でも、最近はアンナのおかげで規則正しい生活ができてるよ。ありがとう｣
　微笑む彼を見て、アンナの心臓は高鳴った。
　ミッチが起き上がると、軽く朝勃ちしたペニスがぶるんと揺れる。ミッチを含め、この巣に住んでいる男たちは、巣の中では常に全裸である。
　彼の日に日に大きくなっていく股間を見て、アンナの恥部も熱を帯び始めてきた。
｢むむ……改めてそう言われると恥ずかしいぞ……とにかく、早く朝ごはんを食べるぞ！｣
　だが、今襲い掛かると、せっかくの朝食が冷めてしまう。彼女は後ろ髪を引かれる思いで、脳内のピンクの靄を振り払った。
　アンナはこのハニービーの巣を統率する女王蜂である。
　そんな彼女が、毎日夫の朝の面倒を見てあげていて、その上毎朝夫の顔を見ただけで顔がとろけ、欲情するとは。部下であり妹でもある働き蜂に見られたら、顔を真っ赤にして穴に埋まってしまいたくなるであろう。
　彼女は普段、女王の間で王座に姿勢良く座り、働き蜂の報告を真面目な顔で聞いているのである。
　頬が緩み、目を細め甘える表情やしぐさなど、夫であるミッチにしか見せた事がないのである。

｢いただきます｣
　巣の最奥に位置する、女王の間。
　その裏にあるプライベート空間で、アンナとミッチは声をそろえて食事の挨拶をした。
　二人は切り株のテーブルを挟んで、切り株の椅子に座って対面している。
　ミッチの前にあるのは、水に溶いた粉を薄く延ばして焼いたナンを思わせる食べ物と、それに乗る獣肉のスライスを焼いたもの。そして、近くで取れる果実の盛り合わせ。
　アンナの前にあるのは、木のカップになみなみと注がれた花の蜜。
　彼女たちが住む森は食物が豊富なため、保存食に頼ることなく、採りたてを頂くことができるのである。
　もぐもぐ、むしゃむしゃ……
　ごくっ……ごくっ……
　二人の食べ方は対照的であった。
　ミッチはナンを手づかみで口に運び、大きく口を開けて食べる。
　アンナは蜜を一口含むと、しばらくそれを口内で揉み解してから喉を鳴らす。
　ハニービーは、蜜のみで十分生きていくことができる。
｢……｣
　アンナは、自分の料理を美味しそうに頬張る夫を見て、顔を緩ませた。
｢何か、じろじろと見つめられると、食べ辛いな……｣
｢お、すまんのう、おぬしがあまりに美味しそうに食べるものじゃから、見蕩れてしまったわい｣
　そう言って、アンナは少し気恥ずかしそうに目線を下に向け、蜜をまた一口含んだ。

｢ふあぁ……おはよう｣
　アンナとミッチが朝食を食べ終えた直後、二人によろよろと近付く者がいた。
｢おお、コハナ、今日は早起きできたの｣
　それを見て、アンナが笑みを浮かべて迎える。
　コハナと呼ばれたハニービー。彼女はアンナとミッチの子供であり、長女である。つまり、次期女王である。
｢コハナ、おはよう。ママに起こされずに自力で起きるなんて、偉いなぁ｣
　ミッチも思わず顔を緩め、彼女の前にしゃがみ、頭を優しく撫でる。
｢パパとは大違いじゃの｣
　アンナの言葉に、彼は乾いた笑いをした。
｢パパ、ママ、朝ごはんもう食べ終わったの？｣
｢うむ、ついさっき食べ終わったところじゃ｣
　アンナがそう言うと、コハナは嬉しそうに笑顔を浮かべた。
｢じゃあ、次はコハナのごはんだね！｣

｢パァパ！早く早くぅ｣
　コハナがミッチの腰に手を回し、早く早くとごはんをせがむ。
　蜂は、女王蜂候補とそれ以外では、小さい頃に与えられる餌が大きく異なる。
　働き蜂は、小さい頃から蜜を与えられて育つが、女王蜂はローヤルゼリーと呼ばれる、遥かに栄養価の高い食事を与えられて育つ。
　ハニービーも同様である。次女以降は花の蜜やアルラウネの蜜を食べて育つが、長女は女王蜂の夫の精液を飲んで育つのである。
　女王蜂の強大な魔力と、部下を引き付けるカリスマ性の秘密はここにある。
｢早くっ早くっ、勃たせて早くっ｣
　歌うような声を出すコハナ。
　コハナの頭は、ちょうどミッチの股間に当たる位置にある。なので、ぎゅっと強く抱きつくと、コハナの頬がミッチのペニスにすりすりと擦れるのだ。
　小さい子供特有のぷにぷにとしたほっぺたが、柔らかく優しく亀頭と竿をこする。
｢ううっ｣
　ミッチは小さく声を漏らした。頬肉の感触と、時折亀頭を撫でる彼女の綺麗な金髪の触感が、彼に快楽をもたらしたのだ。
｢あっ、パパのおちんちん、むくむく大きくなってきた！｣
　右頬ですりすりと撫でていたコハナが、歓声を上げた。
　彼女は目で見てはいなかったが、頬から伝わる熱と感触で判断したのだ。
｢ふむ……これしきのことで勃起するとは、女王の夫失格じゃのう。よしコハナ、思いっきりザーメンを吸いだしてやるのじゃぞ｣
｢はーい！｣
　母親の言葉を聞き、コハナは右手を真っ直ぐ上に伸ばして元気良く返事をした。
｢お、おい！アンナっ、お前仕事行かなくていいのかよっ｣
　テーブルの上に両肘を置いて、顎を両手で支えているアンナを見て、ミッチは声を荒げた。
　普段なら、もう王座に座って妹たちと朝礼を行っている時間である。
｢今日は休みじゃ。知らなかったのか？｣
｢あっ……｣
　ミッチはようやく思い出した。確かに、今日は月に一度の｢完全休養日｣である。この日は、普段ローテーションで勤務している働き蜂が、全員揃って休む日であり、彼女たちをまとめる女王蜂も仕事を休むのだ。
｢そんな大事な日を忘れるなんてのう……これはますますコハナに吸い取ってもらう必要があるようじゃな……｣
　じっと夫を見つめるアンナ。彼女の口元は笑っていたが、目は獲物を捕らえるかのように、一切笑っていなかった。
｢ひぃ……すまなかった……｣
｢問答無用じゃ！それコハナ、ご飯の時間じゃぞ！｣
｢いただきまーす！｣
　次の瞬間、コハナはミッチのいきり立ったペニスを口いっぱいに頬張った。
｢くぅっ｣
　口に含まれただけで、ミッチはうめき声を上げた。
　コハナの口内は粘度の高い唾液で満たされており、それとハニービー特有の体温の高さが相まって、猛烈な快感をもたらすのである。
　それに加え、毎日何度も彼のペニスから精液を搾り取っているという経験もある。
　日に日に上手になっていくコハナの口技を体験し、彼は恐れおののいた。
｢れるれる……ぬろぉ……｣
　唾液をたっぷり乗せた舌で、亀頭の周りをぐるぐると舐める。
｢じゅぽぉ、ぢゅぢゅぽっ、じゅっじゅっじゅっ｣
　同時に唇をすぼめ、首を前後に動かし、竿を唇のリングで愛撫する。
　息を大きく吸い込み、吸引刺激を与えることも忘れない。
｢うっ、くっ……ふぅぅっ｣
　娘の舌が裏筋やカリ首などの弱点に当たるたび、律儀に声を上げてミッチは反応する。
｢コハナいいぞ！もうすぐじゃっ、もうすぐでぴゅっぴゅくるぞ！｣
　彼の表情を見て、アンナは限界が近いことを悟った。
　以前見たときよりも、大きくテクニックが向上している娘を見て、母は大きく喜んだ。
――さすがわしの娘じゃな！
　母の言葉に合わせ、コハナはペニスを喉奥に招き入れた。
｢おぉう！コ、ハナっ、どこでそんなテクニックをっ！｣
　娘から受ける初ディープスロートに、ミッチは身を震わせた。
｢じゅぽぉっ、ごぽぉっ、じゅるっ……ママのをぉ、こっそり見て勉強したのぉ……ぱくっ、ちゅるぅ｣
　喉肉をすぼめ、亀頭を揉み解す。敏感な先っぽをぎゅっと締め、強烈な刺激を与える。
｢あっ……が……っ！ぐっ……うぅっ｣
　あまりの快感に、もはや声にならない声を上げるミッチ。
｢パパぁ、出るぅ？出ちゃう？ご飯出ちゃう？れろぉ……じゅぽっ……じゃあ、いただきます｣
　とどめの刺激。下の犬歯で裏筋をカリッと引っかいた。
｢あ、あぁ……｣
　どぷっ、どぷっ……
　ごぽごぽとこぼれるように、大量の精液が漏れた。
　尿道に唇で吸い付き、コハナはそれを飲み干していく。
｢ごくっ……ごくっ……｣
　喉を大きく動かし、粘り気のある精液を綺麗に飲み干した。
｢れるっ、れろっ……｣
　更に、出し終わった亀頭に舌をはわせ、綺麗に掃除をする。
｢ちゅるっ、ごくっ……ごちそうさまでしたっ！｣
｢おお、挨拶もきちんとできるとは、さすがわしの娘じゃのっ｣
　コハナが固く結んでいた腕を離すと、力がすっかり抜けたミッチは、腰から崩れ落ちた。
｢うーむ、それにしてもこのテクニック、わが娘ながら末恐ろしいのぅ……｣
　それに……と言って、アンナは舌なめずりをした。
｢コハナのご飯を見てたら、わしもおなかが空いてきたぞ……じゅるり｣
　彼女の肉食獣のような視線に、ミッチは力なく笑った。

　同じ頃、バンブルとメープルの部屋では。
｢きゃー！可愛いー！｣
　メープルは、目の前にいる小さなハニービーを強く抱きしめた。
｢お、お姉ちゃん、痛いよーっ｣
　幼女ハニービーは、メープルの腕の中でじたばたともがいた。
｢おはよう……あれ、その子誰？｣
　のっそりと起きてきたバンブルは、初めて見る幼女を見つけて首をかしげた。
｢あ、あなたっおはよう。この子はね、お姉ちゃんの子供。私の姪だよ｣
｢ああ、お姉ちゃんって、女王様のことか｣
　へぇーとつぶやきながら、顎を指で撫でつつ女の子を眺める。
｢ほら、お兄ちゃんに挨拶してね｣
｢あ、え、えっと……タマコって言います……これから、よっ、よろしくお願いします｣
　タマコは緊張しながら頭を下げた。バンブルは強面のため、初対面の人間に必要以上に恐怖心や不安感を与えてしまう。
｢タマコちゃん、そんなに怖がらなくていいんだよ。あの人はすっごく優しいからね｣
　メープルがぽんぽんとタマコの頭を優しく叩くと、緊張の表情が少し緩んだ。それを見て、メープルは安心したように微笑む。
｢それじゃあ、朝ごはんにしましょうねー｣
　そう言うと、メープルは鼻歌を歌いながら、棚に置いてある蜜の入った壷を取り出す。
｢それじゃあ、食べさせてあげるからね……｣
　彼女は壷のフタを開け、中身を自らの口に含んだ。
　そうすると、今度はタマコの元に近寄り、彼女と頭の位置をそろえるためにしゃがみこむ。
　二人の顔が徐々に近付き、二人は目を閉じる。
｢あむ……れる……ちゅるるぅ｣
　二人は口付けを交わした。
　揃って舌を出し、絡める。メープルは蜜を送り出し、タマコがそれを飲み干す。
　あまりの淫靡な光景に、バンブルの心臓は高鳴った。
　あれはまさに、いつもバンブルとメープルが交わすキスそのものであった。
｢お、お前ら……何やってるんだよ……｣
　声を震わせて彼は言う。
｢じゅるぅ……何って、朝ごはんをあげてるんだよ？ハニービーはね、小さい頃はこうやってご飯をもらうの｣
　さも当然であるかのように、メープルは言った。
　そして、彼の勃起したペニスに視線を落とし、表情を蕩けさせた。
｢ひょっとして、私とキスしてるところ、想像しちゃったの？それとも……｣
　ぺろりと舌を出し、唇を舐める。
｢おちんちんにキスされるところ、妄想しちゃった？｣

｢コハナ、わしらのセックスを見て、勉強するんじゃぞ｣
｢タマコちゃん、私たちを見て、将来のお婿さんのために、いっぱい勉強してね｣
　この日、二つの部屋からあえぎ声が消えることはなかった。

■作者メッセージ
こんな感じのSSをまとめる、一話完結型の連載になります。