吸い出して
｢すいませーん、たすけてくださーい｣
とても助けを求めているとは思えない、のんきな声が聞こえてきた。
ロックは首を傾げる。彼が今いる場所は、彼の自宅の裏にある山の中である。彼は人里離れたこの場所で自給自足で生活しているため、この山には彼以外に入ってくる人がいないはずなのだが。
｢こっちですー。あなたの後ろですよー｣
ロックがきょろきょろと見回していると、更に声が聞こえた。どうやら女性のようである。
言われた通りに彼が振り返る。木が生い茂った更に奥に、崖がある。
その崖から、顔が生えていた。
｢なるほど、で、罠にかかってサキュバス化した上に、瓦礫に埋もれて動けないと｣
ロックは、状況の割りにのんきな彼女、シーンの言葉に耳を傾けた。
話を聞きながら、彼は彼女の整った顔に見惚れる。
きれいに真っ直ぐな鼻筋。大きな瞳はキラキラと輝き、宝石のよう。見事な曲線美を誇る肌。木漏れ日に照らされ、艶かしく光る角。頬を赤く染め、時折漏れる熱い吐息が、ロックを性的に興奮させた。
この裏山を庭のようにしていた彼も知らなかったのだが、盗賊ギルドの間では、ここには宝が眠っているという噂で持ちきりだったらしい。
ギルドに所属していたシーンは、その噂を聞きつけると、早速この山に向かった。
そして事実、この山には財宝が隠されていた。
草木で巧妙に隠蔽された遺跡を発見し、侵入者から守るためのトラップをいくつも越え、ついに両手に抱えるほどの黄金の装飾品を発見したのだ。
しかし、最後の最後でミスを犯した。装飾品を台座からはずした瞬間、桃色の霧に包まれ、サキュバス化してしまったのだ。溢れんばかりの性欲に押しつぶされそうになりながら、何とか出口までたどり着いた彼女だったが、寸前で最終トラップ、崩れ落ちる瓦礫の下に埋もれてしまったのである。
うつ伏せのまま、首だけをロックの方へ向けて彼女は言う。
｢はい、ですから、ここから出してくれませんかねー｣
抜け出そうともがいているが、彼女からは焦っている様子が感じられない。
｢シーンさん、あんまりピンチって感じがしませんね｣
｢いえ……もがくたびにこすれる瓦礫が、何だか気持ちよくて……｣
顔を赤らめてそう言うと、またもじもじとし始めた。
――さて、どうしたものか……
ロックは思案した。見た所、生きているのが不思議なくらい、彼女の体はがっちりと瓦礫の隙間に挟まれている。肩や腕が露出しているならば、そこを掴んで引っ張れば、もしかしたら出す事が出来るかもしれないのだが。生憎、首しか出ていない。頭を掴んで引っ張ったら、首がさぞかし痛いだろう。
そして、彼女はサキュバス化している。よくは知らないが、魔物化した直後は、全身が性感帯になっている上に、頭の中がエッチな事でいっぱいで、まともに動けないと彼は聞いた事がある。
――魔物……魔力を操る生物……魔力？
その時、彼の頭にある策が浮かんだ。
｢シーンさん。魔物化したって事は、強力な魔法が使えるんじゃないですか？｣
彼は思い出したのだ。魔物はその名の通り、強大な魔力を持っており、それを用いて強力な魔法を繰り出すことが出来る。本気になれば、この程度の瓦礫など、溶かすなり粉砕するなり消失させるなり難なくこなせるはずなのだ。
｢ああ、なるほどー。ロックさん頭いいですねー。じゃあ、ちょっと待ってくださいね｣
その後しばらく、彼女の｢んっ｣やら｢ふんっ！｣やらの気合を入れる声が続いた。
頬をぷくっと膨らませ、顔を赤く染めてぷるぷると震えている。顔面に力を入れているのだろう。
しばらく顔を膨らませていると、瓦礫が少しずつ、砂になって外に漏れ出してきた。
｢お、おお！すごいですよ！ちょっとずつ瓦礫が粉砕されてますよ！｣
ロックは喜び、シーンを励ました。
だが、その後すぐに｢ぷはっ｣と言って彼女は息を吐き、ぐったりとしてしまった。
｢ああ、惜しい！もうちょっとですから、頑張ってください！｣
｢これ以上は無理っぽいですー。お腹が空いて……｣
そう言って彼女はがっくりとうな垂れた。
だがしばらくすると、何かに気付いたかのように顔を上げ、すんすんと匂いを嗅ぎ始めた。
｢何かいい匂いがしますね。美味しそうな匂い……｣
なおすんすんと匂いを嗅ぎ続け、彼女は匂いの元をたどろうとする。
｢ロックさん……ちょっと近づいてもらえますか？｣
上目遣いで彼を見て、彼女は言う。
彼は素直に彼女の言う通りにした。
｢やっぱり……ロックさんからいい匂いがします……もっと、もっと近づいてください｣
更に一歩、彼は歩を進める。
｢もっと……｣
また一歩。
｢もっと……｣
もう一歩。そして、後一歩で彼の体が彼女の顔に触れる所まで、ロックは近づいた。
｢あぁ……美味しそうな、濃い匂い……ロックさん、もう一歩、もう一歩だけこっちに来てください……｣
｢え、でも……｣
ロックは躊躇した。何故なら、彼女の首が生えている位置は、ちょうど彼の股間の高さなのである。もしこれ以上近づいたら、彼の股間が彼女の鼻先に触れてしまう。それはまずいと彼は思った。
｢お願いです……もう一歩だけ、近づいてください。その匂いをずっと嗅いでいると、どきどきして、頭がおかしくなりそうなんです……！｣
懇願の眼差しを向けられ、彼は決心した。
ぎゅっと目をつぶり、彼は足を前に踏み出す。
｢あんっ｣
彼の股間部が顔に触れ、彼女は嬉しそうな声を上げた。
｢くんくん……あぁ……すごくいい匂い……何だか、頭がじんじんして、ふわふわしそうな……｣
鼻先動かし、ズボン越しに彼のペニスを撫でながら、うっとりとした表情で匂いを嗅ぎ続ける。
彼女の蕩けた表情、そして股間を這い回る刺激に、彼のペニスは少しずつ硬さを増してきた。
｢あ、硬くなってきましたね。それに、熱い……匂いも濃くなってきましたね……あぁ、もう、もう我慢できません……！｣
快楽に押しつぶされた声を上げると、彼女は潤んだ目で彼の顔を上目遣いで見つめ、大きく口を開けた。
舌を少し突き出し｢あーん……｣と声を出す。
彼には、それだけで彼女が何をしたいのか理解した。理解したら、もうその事だけしか考えられなくなった。
いても立ってもいられなくなったロックは、一気にズボンを引き下ろした。
ばね仕掛けのように勢いよく跳ね上がるペニス。
元気良く、重力に逆らってそびえ立つ棒を見て、シーンは嬉しそうに微笑んだ。
｢あっ、皮かむりさんですねー｣
彼の包茎のペニスを見て、ふふっ、と声が漏れる。
｢あ……う……ごめんなさい……｣
ロックが目を潤ませる。
｢いえ、嬉しいんです……皮かむりさんの方が、匂いが濃くて……ちゅっ｣
先ほどまで鼻先に乗せて、匂いを堪能していた彼女は、そのペニスの先を唇まで移動させ、余った皮の部分にキスをした。
｢ちゅっ……ちゅっ……あむっ……それに、余った皮をむくの、私好きですよ？｣
唇で余り皮を挟み、少し伸ばす。目を細め、嬉しそうな声。
｢舌と、唇で……ロックさんのほーけーさん、むいてあげますからね｣
唇で先端の余った皮をくわえると、うっとりとした表情でそれを少し伸ばした。
｢はぁ……はぁ……｣
こんなきれいなお姉さんが、自分の恥ずかしい部分を嬉しそうに食んでいる。そう思うだけで、ロックの性的興奮は最高潮に達した。自然と荒い息が漏れる。
｢でも、むいちゃう前に、口の中でもごもごしてあげますね……口の中で、おちんちんをふやかしてあげまふからね｣
唇や歯ではむはむと皮を甘噛みしながら、彼女は言った。
｢ほら、腰をもっと突き出して……｣
未知の快楽に期待しきっているロックは、彼女に言われるままに腰を突き出した。
血行がよくなって柔らかくなった陰嚢が、彼女の頬に触れる。
｢ああ、あったかい……このたまたまでいっぱい泳いでいるせーしさん、どろどろのせーえきさん、全部飲んであげますからね……あむぅ｣
大きく口を開け、ペニスを口内に招き入れた。舌をその下に添えて、蠢かしながら、少しずつ差し入れていく。
｢あも、あも……ちゅるん……ふふふ、はいっひゃいまひたね｣
ペニスを口に含んだまま、ロックに語りかける。不規則な舌の動きに、彼は全身を震わせて悦んだ。
｢あむ、はむ……じゅる、れるぅ……ちゅぽ、じゅっじゅっ……｣
まずは舌と口内の粘膜で全体を包み込む。その後、余った皮越しに裏筋、カリと弱点を舌先で重点的に責める。更に、口内上部と舌で皮を挟み、尿道口まで舌先をねじ入れる。
｢ピストン出来ませんから、その分舌と口のお肉でいっふぁいおひんひん、愛ひへあげまふからね……｣
｢あぅぅ……あぁ、あぐぅ……｣
ロックは崖の土を掴み、何とか体を支えている。腰はがくがくと振るえ、すでに力が入っていない。
｢んふふ……だいぶ柔らかくなりまひはね。それじゃあ、むいひゃいまふねー｣
そう言って、彼女は包茎の皮と亀頭の間に舌をねじ入れた。
｢あっ、うぐぅ！……っ、うっ……！｣
敏感な部分に触れた、温かい刺激。それだけで、彼は彼女の口内に勢いよく射精してしまった。
｢んっ、ちゅぅ……美味しいの、いっふぁいでまひはね……まだむいてないのにー｣
尿道口で舌先を突くと、その刺激で更に精液が溢れる。彼女は、それらを全て舌の上に乗せていく。
｢あ……あぁ……｣
崖から両手が離れ、へなへなと腰を落とすロック。彼の視界が、彼女の頭と同じ高さになった。
｢んふふ。こんなにいっふぁい出ましたよ……あーん｣
舌を軽く突き出し、その上に乗った大量の白濁を、彼に見せ付ける。
｢んっ……こってりしてて……くちゅ、ぷるぷるしてて……ちゅる、くちゃ……とっても美味しいれふ……ごくん｣
欲望の証を何度も何度も口内で転がし、咀嚼し、大きく喉を鳴らして飲み干した。
すると、彼女の角が、めりめりと音を立て少し伸びた。
｢あぁ……頭が、何か気持ちいい……｣
頬を赤く染め、シーンがぷるっぷるっと快感で体を震わせる。
｢あ……また瓦礫が、砂に……｣
ロックがつぶやいた。彼女の周りにあった瓦礫が、また少しずつ粉砕されていったのだ。
｢あ、本当だ。ひょっとして、せーし飲んだからですかねー。……という事は、もっといっぱい飲めば……！｣
シーンはロックの顔を見上げ、にっと目を細めた。
｢ロックさんの美味しいの、もっと飲ませてくださいね。美味しいの、もっとしゃぶらせてくださいね……｣
彼女の舌なめずりを見て、ロックはごくりと喉を鳴らした。
｢今度は、ちゃんとむいてあげますからね……あーん｣
彼女が口を広げると、彼はためらう事なくペニスを差し出した。
｢ん……ちゅ……れるぅ｣
先ほどの続きとばかりに、彼女はいきなり皮と亀頭の間に舌先を入れる。
｢くっ……！うっ！｣
絶頂の直後で、前回よりも強い快感が与えられるが、彼は何とか耐え抜いた。
亀頭をなめ上げる要領で、徐々に皮をむき上げていく。
｢んふ、うふふ……カリ周り、汚れがありまふねー｣
更に奥まで舌を侵入させた時、彼女は嬉しそうに微笑んだ。
｢あぅぅ……すいません……｣
強烈な快楽にぶるぶると震えながら、同じく震えた声で謝る。
｢だぁいじょうぶでふよぉ。はむ、れろっ、こってりしてて、好きでふよぉ……｣
くるんくるん、と舌先を回転させ、カリを甘く刺激する。そこに溜まった汚れをかき出すと、大きく音を立てて飲み込んでいく。
その動作を繰り返している内に、つるりと皮がむけ、ピンク色の亀頭が露出した。
｢あは、むけちゃいましたねー。ぷるんとしてて、可愛いですねー。いい匂い……あ、でも汚れがまだ残ってますねー。れろっ、なめ取っちゃいますねー、れろろ｣
シーンの舌が、なめ残した汚れを丁寧にそぎ落としていく。
｢はむ……ちゅ、ちゅ、ちゅぅ……れろれろ、あむ、れろぉ……｣
カリに唇を合わせ、舌全体を使って飴玉のように亀頭を可愛がる。
ねっとりとした彼女の責めに、ロックの射精感は限界に達した。
｢ごめ、んっ、なさい……また、出ますっ……｣
崖の土をぎゅっと掴み、全身をがくがくと震わせ、ロックは二度目の絶頂に達した。
｢ふぁむ……ごくっ、ごくっ……おいひいの、またきた……ごくごく｣
亀頭を吸引し、嬉しそうに飲精をするシーン。
一回目よりも長く、量も多い射精。
｢ふあ……さっきよりもいっぱい……嬉しいですー｣
うっとりと目を細め、快楽にとろけた表情で精液を飲み干した。
｢もっと、もっと、ロックさんのせーえき、飲みたいです……｣
｢す、すいません……気持ちよすぎて、もう立てないです……｣
あまりの気持ちよさに、ロックの腰に力が入らなくなってしまった。彼は座り込んだまま謝る。
｢そうなんですか……残念です。もっともっと飲みたいのに……｣
そう言って、彼女はしょんぼりと目を伏せた。
｢飲みたい、飲みたい……もっと、もっとぉ……｣
サキュバス化による性欲と、ロックへの愛情、そして精液への中毒症状で、ぷるぷると体を震わせた。
魔力を帯びた魔物の振動。それが瓦礫の固有振動数と運良く合致し、一気に瓦礫が砂と化し、彼女はところてんのようにずるりと外へ抜け出した。
外に溢れた砂の山の中から、彼女がぼこりと音を立て起き上がる。
水を浴びた後の犬のように、全身をぶるぶると震わせて、付着した砂を払い落とした。
｢あ……｣
ロックは思わず感嘆の声を上げた。
腰の後部から薄桃色の柔らかそうな羽と尻尾が生えており、胸と足が羽と同じ色の毛で覆われている。体の所々には、サキュバス化する前に着ていたのであろう無残に破れた黒い服が、汗ばんだ肌に密着している。性的興奮により薄赤く染まった肌からは、玉のような汗が滲んで垂れる。
｢あ、ロックさん。ひょっとして私の姿に見蕩れてるんですか？ふふふ、いいですよー。思う存分見蕩れてくださいねー｣
そう言って、彼女は座った状態で全身をくねくねさせ、セクシーなポーズを惜しげもなく披露した。
小脇に抱えていた黄金の王冠をかぶったりもした。
｢何か、見られるっていいですねー。体が中から熱くなる気がしますー……あぅ！｣
突然、シーンが体を丸め大きく震えた。
｢あっ、どうしたんですか！？｣
ようやく動けるようになったロックが、彼女の元に駆け寄る。
｢あぅぅ……はぅぅ……あんっ、ふぅぅ！｣
ぶるっぶるっと断続的に大きく震えていると、徐々に角が大きくなっていった。それと共に、薄桃色の羽と尻尾は黒く染まり、体毛は抜け落ちていった。大量の精液を吸った彼女は、レッサーサキュバスからサキュバスへと変化したのだ。
｢うんっ……ふぅっ……あふぅん……｣
体の変化が止まると共に、体の震えも止まった。
｢……｣
あまりの出来事に絶句するロック。
シーンがゆっくりと顔を上げる。潤んだ瞳。上気した顔。わなわなと震える唇。
生まれたばかりのひよこが、初めて見る動く物体を親と認識するように、正式なサキュバスになったばかりのシーンが初めて見る男、ロックに、彼女は一目で恋をした。
｢好き……｣
一言つぶやくと、彼女は彼に飛び掛って押し倒し、荒々しくキスをした。
｢はむ……ちゅっ……れろぉ……｣
朝の日差しが差し込む部屋の中に、ねちっこい水音が響く。
｢ちゅるっ、じゅるぅ……あ、おはようございますー｣
ロックが目覚めた事に気付き、シーンが微笑んで挨拶をした。
｢シーンさん……おはよう……｣
目覚めたロックは、そう言って彼女の頭を優しくなでた。彼女は嬉しそうに目を細める。
あれから二人は一緒にロックの家で生活する事になった。完全にロック依存症になったシーンが、絶対に離れたくないと言い出したからである。彼女の口技にすっかり虜になった彼は、二つ返事で了承した。
そして、それから毎日、どちらから言い出すわけでもなく、シーンがロックを朝フェラで起こすという習慣が出来た。夜にはセックスもするのだが、彼女は彼のペニスをしゃぶるのを好み、彼もまた、彼女にしゃぶられるのを特に好んだ。
｢れる……じゅるるるぅ……あ、亀さんがひくひくしてきましたねー。朝の美味しいせーえき、ごくごく飲ませてくださいねー。じゅぅ、ちゅぅ……｣
起き抜けの甘い快楽に、彼は早くも限界を迎える。
｢うっ……出る……｣
｢んふっ……ちゅぅ……ごく、ごく、ごく……｣
射精に合わせてペニスを喉奥までくわえ込むと、射精を喉の最奥で受け止め、大きく喉を鳴らして精液を飲み干した。
｢ふふふ、今日もとっても美味しいです……だから、もっと、飲ませてくれますよね？｣
いまだに硬いままのペニスをしゅこしゅこと手でしごきながら、彼女はおねだりをする。
目を潤ませ、上目遣いのおねだり。それを見て、彼はこくこくと何度もうなずいた。
人里離れたこの場所で、二人はいつまでも質素で甘い生活を送っていく。
とても助けを求めているとは思えない、のんきな声が聞こえてきた。
ロックは首を傾げる。彼が今いる場所は、彼の自宅の裏にある山の中である。彼は人里離れたこの場所で自給自足で生活しているため、この山には彼以外に入ってくる人がいないはずなのだが。
｢こっちですー。あなたの後ろですよー｣
ロックがきょろきょろと見回していると、更に声が聞こえた。どうやら女性のようである。
言われた通りに彼が振り返る。木が生い茂った更に奥に、崖がある。
その崖から、顔が生えていた。
｢なるほど、で、罠にかかってサキュバス化した上に、瓦礫に埋もれて動けないと｣
ロックは、状況の割りにのんきな彼女、シーンの言葉に耳を傾けた。
話を聞きながら、彼は彼女の整った顔に見惚れる。
きれいに真っ直ぐな鼻筋。大きな瞳はキラキラと輝き、宝石のよう。見事な曲線美を誇る肌。木漏れ日に照らされ、艶かしく光る角。頬を赤く染め、時折漏れる熱い吐息が、ロックを性的に興奮させた。
この裏山を庭のようにしていた彼も知らなかったのだが、盗賊ギルドの間では、ここには宝が眠っているという噂で持ちきりだったらしい。
ギルドに所属していたシーンは、その噂を聞きつけると、早速この山に向かった。
そして事実、この山には財宝が隠されていた。
草木で巧妙に隠蔽された遺跡を発見し、侵入者から守るためのトラップをいくつも越え、ついに両手に抱えるほどの黄金の装飾品を発見したのだ。
しかし、最後の最後でミスを犯した。装飾品を台座からはずした瞬間、桃色の霧に包まれ、サキュバス化してしまったのだ。溢れんばかりの性欲に押しつぶされそうになりながら、何とか出口までたどり着いた彼女だったが、寸前で最終トラップ、崩れ落ちる瓦礫の下に埋もれてしまったのである。
うつ伏せのまま、首だけをロックの方へ向けて彼女は言う。
｢はい、ですから、ここから出してくれませんかねー｣
抜け出そうともがいているが、彼女からは焦っている様子が感じられない。
｢シーンさん、あんまりピンチって感じがしませんね｣
｢いえ……もがくたびにこすれる瓦礫が、何だか気持ちよくて……｣
顔を赤らめてそう言うと、またもじもじとし始めた。
――さて、どうしたものか……
ロックは思案した。見た所、生きているのが不思議なくらい、彼女の体はがっちりと瓦礫の隙間に挟まれている。肩や腕が露出しているならば、そこを掴んで引っ張れば、もしかしたら出す事が出来るかもしれないのだが。生憎、首しか出ていない。頭を掴んで引っ張ったら、首がさぞかし痛いだろう。
そして、彼女はサキュバス化している。よくは知らないが、魔物化した直後は、全身が性感帯になっている上に、頭の中がエッチな事でいっぱいで、まともに動けないと彼は聞いた事がある。
――魔物……魔力を操る生物……魔力？
その時、彼の頭にある策が浮かんだ。
｢シーンさん。魔物化したって事は、強力な魔法が使えるんじゃないですか？｣
彼は思い出したのだ。魔物はその名の通り、強大な魔力を持っており、それを用いて強力な魔法を繰り出すことが出来る。本気になれば、この程度の瓦礫など、溶かすなり粉砕するなり消失させるなり難なくこなせるはずなのだ。
｢ああ、なるほどー。ロックさん頭いいですねー。じゃあ、ちょっと待ってくださいね｣
その後しばらく、彼女の｢んっ｣やら｢ふんっ！｣やらの気合を入れる声が続いた。
頬をぷくっと膨らませ、顔を赤く染めてぷるぷると震えている。顔面に力を入れているのだろう。
しばらく顔を膨らませていると、瓦礫が少しずつ、砂になって外に漏れ出してきた。
｢お、おお！すごいですよ！ちょっとずつ瓦礫が粉砕されてますよ！｣
ロックは喜び、シーンを励ました。
だが、その後すぐに｢ぷはっ｣と言って彼女は息を吐き、ぐったりとしてしまった。
｢ああ、惜しい！もうちょっとですから、頑張ってください！｣
｢これ以上は無理っぽいですー。お腹が空いて……｣
そう言って彼女はがっくりとうな垂れた。
だがしばらくすると、何かに気付いたかのように顔を上げ、すんすんと匂いを嗅ぎ始めた。
｢何かいい匂いがしますね。美味しそうな匂い……｣
なおすんすんと匂いを嗅ぎ続け、彼女は匂いの元をたどろうとする。
｢ロックさん……ちょっと近づいてもらえますか？｣
上目遣いで彼を見て、彼女は言う。
彼は素直に彼女の言う通りにした。
｢やっぱり……ロックさんからいい匂いがします……もっと、もっと近づいてください｣
更に一歩、彼は歩を進める。
｢もっと……｣
また一歩。
｢もっと……｣
もう一歩。そして、後一歩で彼の体が彼女の顔に触れる所まで、ロックは近づいた。
｢あぁ……美味しそうな、濃い匂い……ロックさん、もう一歩、もう一歩だけこっちに来てください……｣
｢え、でも……｣
ロックは躊躇した。何故なら、彼女の首が生えている位置は、ちょうど彼の股間の高さなのである。もしこれ以上近づいたら、彼の股間が彼女の鼻先に触れてしまう。それはまずいと彼は思った。
｢お願いです……もう一歩だけ、近づいてください。その匂いをずっと嗅いでいると、どきどきして、頭がおかしくなりそうなんです……！｣
懇願の眼差しを向けられ、彼は決心した。
ぎゅっと目をつぶり、彼は足を前に踏み出す。
｢あんっ｣
彼の股間部が顔に触れ、彼女は嬉しそうな声を上げた。
｢くんくん……あぁ……すごくいい匂い……何だか、頭がじんじんして、ふわふわしそうな……｣
鼻先動かし、ズボン越しに彼のペニスを撫でながら、うっとりとした表情で匂いを嗅ぎ続ける。
彼女の蕩けた表情、そして股間を這い回る刺激に、彼のペニスは少しずつ硬さを増してきた。
｢あ、硬くなってきましたね。それに、熱い……匂いも濃くなってきましたね……あぁ、もう、もう我慢できません……！｣
快楽に押しつぶされた声を上げると、彼女は潤んだ目で彼の顔を上目遣いで見つめ、大きく口を開けた。
舌を少し突き出し｢あーん……｣と声を出す。
彼には、それだけで彼女が何をしたいのか理解した。理解したら、もうその事だけしか考えられなくなった。
いても立ってもいられなくなったロックは、一気にズボンを引き下ろした。
ばね仕掛けのように勢いよく跳ね上がるペニス。
元気良く、重力に逆らってそびえ立つ棒を見て、シーンは嬉しそうに微笑んだ。
｢あっ、皮かむりさんですねー｣
彼の包茎のペニスを見て、ふふっ、と声が漏れる。
｢あ……う……ごめんなさい……｣
ロックが目を潤ませる。
｢いえ、嬉しいんです……皮かむりさんの方が、匂いが濃くて……ちゅっ｣
先ほどまで鼻先に乗せて、匂いを堪能していた彼女は、そのペニスの先を唇まで移動させ、余った皮の部分にキスをした。
｢ちゅっ……ちゅっ……あむっ……それに、余った皮をむくの、私好きですよ？｣
唇で余り皮を挟み、少し伸ばす。目を細め、嬉しそうな声。
｢舌と、唇で……ロックさんのほーけーさん、むいてあげますからね｣
唇で先端の余った皮をくわえると、うっとりとした表情でそれを少し伸ばした。
｢はぁ……はぁ……｣
こんなきれいなお姉さんが、自分の恥ずかしい部分を嬉しそうに食んでいる。そう思うだけで、ロックの性的興奮は最高潮に達した。自然と荒い息が漏れる。
｢でも、むいちゃう前に、口の中でもごもごしてあげますね……口の中で、おちんちんをふやかしてあげまふからね｣
唇や歯ではむはむと皮を甘噛みしながら、彼女は言った。
｢ほら、腰をもっと突き出して……｣
未知の快楽に期待しきっているロックは、彼女に言われるままに腰を突き出した。
血行がよくなって柔らかくなった陰嚢が、彼女の頬に触れる。
｢ああ、あったかい……このたまたまでいっぱい泳いでいるせーしさん、どろどろのせーえきさん、全部飲んであげますからね……あむぅ｣
大きく口を開け、ペニスを口内に招き入れた。舌をその下に添えて、蠢かしながら、少しずつ差し入れていく。
｢あも、あも……ちゅるん……ふふふ、はいっひゃいまひたね｣
ペニスを口に含んだまま、ロックに語りかける。不規則な舌の動きに、彼は全身を震わせて悦んだ。
｢あむ、はむ……じゅる、れるぅ……ちゅぽ、じゅっじゅっ……｣
まずは舌と口内の粘膜で全体を包み込む。その後、余った皮越しに裏筋、カリと弱点を舌先で重点的に責める。更に、口内上部と舌で皮を挟み、尿道口まで舌先をねじ入れる。
｢ピストン出来ませんから、その分舌と口のお肉でいっふぁいおひんひん、愛ひへあげまふからね……｣
｢あぅぅ……あぁ、あぐぅ……｣
ロックは崖の土を掴み、何とか体を支えている。腰はがくがくと振るえ、すでに力が入っていない。
｢んふふ……だいぶ柔らかくなりまひはね。それじゃあ、むいひゃいまふねー｣
そう言って、彼女は包茎の皮と亀頭の間に舌をねじ入れた。
｢あっ、うぐぅ！……っ、うっ……！｣
敏感な部分に触れた、温かい刺激。それだけで、彼は彼女の口内に勢いよく射精してしまった。
｢んっ、ちゅぅ……美味しいの、いっふぁいでまひはね……まだむいてないのにー｣
尿道口で舌先を突くと、その刺激で更に精液が溢れる。彼女は、それらを全て舌の上に乗せていく。
｢あ……あぁ……｣
崖から両手が離れ、へなへなと腰を落とすロック。彼の視界が、彼女の頭と同じ高さになった。
｢んふふ。こんなにいっふぁい出ましたよ……あーん｣
舌を軽く突き出し、その上に乗った大量の白濁を、彼に見せ付ける。
｢んっ……こってりしてて……くちゅ、ぷるぷるしてて……ちゅる、くちゃ……とっても美味しいれふ……ごくん｣
欲望の証を何度も何度も口内で転がし、咀嚼し、大きく喉を鳴らして飲み干した。
すると、彼女の角が、めりめりと音を立て少し伸びた。
｢あぁ……頭が、何か気持ちいい……｣
頬を赤く染め、シーンがぷるっぷるっと快感で体を震わせる。
｢あ……また瓦礫が、砂に……｣
ロックがつぶやいた。彼女の周りにあった瓦礫が、また少しずつ粉砕されていったのだ。
｢あ、本当だ。ひょっとして、せーし飲んだからですかねー。……という事は、もっといっぱい飲めば……！｣
シーンはロックの顔を見上げ、にっと目を細めた。
｢ロックさんの美味しいの、もっと飲ませてくださいね。美味しいの、もっとしゃぶらせてくださいね……｣
彼女の舌なめずりを見て、ロックはごくりと喉を鳴らした。
｢今度は、ちゃんとむいてあげますからね……あーん｣
彼女が口を広げると、彼はためらう事なくペニスを差し出した。
｢ん……ちゅ……れるぅ｣
先ほどの続きとばかりに、彼女はいきなり皮と亀頭の間に舌先を入れる。
｢くっ……！うっ！｣
絶頂の直後で、前回よりも強い快感が与えられるが、彼は何とか耐え抜いた。
亀頭をなめ上げる要領で、徐々に皮をむき上げていく。
｢んふ、うふふ……カリ周り、汚れがありまふねー｣
更に奥まで舌を侵入させた時、彼女は嬉しそうに微笑んだ。
｢あぅぅ……すいません……｣
強烈な快楽にぶるぶると震えながら、同じく震えた声で謝る。
｢だぁいじょうぶでふよぉ。はむ、れろっ、こってりしてて、好きでふよぉ……｣
くるんくるん、と舌先を回転させ、カリを甘く刺激する。そこに溜まった汚れをかき出すと、大きく音を立てて飲み込んでいく。
その動作を繰り返している内に、つるりと皮がむけ、ピンク色の亀頭が露出した。
｢あは、むけちゃいましたねー。ぷるんとしてて、可愛いですねー。いい匂い……あ、でも汚れがまだ残ってますねー。れろっ、なめ取っちゃいますねー、れろろ｣
シーンの舌が、なめ残した汚れを丁寧にそぎ落としていく。
｢はむ……ちゅ、ちゅ、ちゅぅ……れろれろ、あむ、れろぉ……｣
カリに唇を合わせ、舌全体を使って飴玉のように亀頭を可愛がる。
ねっとりとした彼女の責めに、ロックの射精感は限界に達した。
｢ごめ、んっ、なさい……また、出ますっ……｣
崖の土をぎゅっと掴み、全身をがくがくと震わせ、ロックは二度目の絶頂に達した。
｢ふぁむ……ごくっ、ごくっ……おいひいの、またきた……ごくごく｣
亀頭を吸引し、嬉しそうに飲精をするシーン。
一回目よりも長く、量も多い射精。
｢ふあ……さっきよりもいっぱい……嬉しいですー｣
うっとりと目を細め、快楽にとろけた表情で精液を飲み干した。
｢もっと、もっと、ロックさんのせーえき、飲みたいです……｣
｢す、すいません……気持ちよすぎて、もう立てないです……｣
あまりの気持ちよさに、ロックの腰に力が入らなくなってしまった。彼は座り込んだまま謝る。
｢そうなんですか……残念です。もっともっと飲みたいのに……｣
そう言って、彼女はしょんぼりと目を伏せた。
｢飲みたい、飲みたい……もっと、もっとぉ……｣
サキュバス化による性欲と、ロックへの愛情、そして精液への中毒症状で、ぷるぷると体を震わせた。
魔力を帯びた魔物の振動。それが瓦礫の固有振動数と運良く合致し、一気に瓦礫が砂と化し、彼女はところてんのようにずるりと外へ抜け出した。
外に溢れた砂の山の中から、彼女がぼこりと音を立て起き上がる。
水を浴びた後の犬のように、全身をぶるぶると震わせて、付着した砂を払い落とした。
｢あ……｣
ロックは思わず感嘆の声を上げた。
腰の後部から薄桃色の柔らかそうな羽と尻尾が生えており、胸と足が羽と同じ色の毛で覆われている。体の所々には、サキュバス化する前に着ていたのであろう無残に破れた黒い服が、汗ばんだ肌に密着している。性的興奮により薄赤く染まった肌からは、玉のような汗が滲んで垂れる。
｢あ、ロックさん。ひょっとして私の姿に見蕩れてるんですか？ふふふ、いいですよー。思う存分見蕩れてくださいねー｣
そう言って、彼女は座った状態で全身をくねくねさせ、セクシーなポーズを惜しげもなく披露した。
小脇に抱えていた黄金の王冠をかぶったりもした。
｢何か、見られるっていいですねー。体が中から熱くなる気がしますー……あぅ！｣
突然、シーンが体を丸め大きく震えた。
｢あっ、どうしたんですか！？｣
ようやく動けるようになったロックが、彼女の元に駆け寄る。
｢あぅぅ……はぅぅ……あんっ、ふぅぅ！｣
ぶるっぶるっと断続的に大きく震えていると、徐々に角が大きくなっていった。それと共に、薄桃色の羽と尻尾は黒く染まり、体毛は抜け落ちていった。大量の精液を吸った彼女は、レッサーサキュバスからサキュバスへと変化したのだ。
｢うんっ……ふぅっ……あふぅん……｣
体の変化が止まると共に、体の震えも止まった。
｢……｣
あまりの出来事に絶句するロック。
シーンがゆっくりと顔を上げる。潤んだ瞳。上気した顔。わなわなと震える唇。
生まれたばかりのひよこが、初めて見る動く物体を親と認識するように、正式なサキュバスになったばかりのシーンが初めて見る男、ロックに、彼女は一目で恋をした。
｢好き……｣
一言つぶやくと、彼女は彼に飛び掛って押し倒し、荒々しくキスをした。
｢はむ……ちゅっ……れろぉ……｣
朝の日差しが差し込む部屋の中に、ねちっこい水音が響く。
｢ちゅるっ、じゅるぅ……あ、おはようございますー｣
ロックが目覚めた事に気付き、シーンが微笑んで挨拶をした。
｢シーンさん……おはよう……｣
目覚めたロックは、そう言って彼女の頭を優しくなでた。彼女は嬉しそうに目を細める。
あれから二人は一緒にロックの家で生活する事になった。完全にロック依存症になったシーンが、絶対に離れたくないと言い出したからである。彼女の口技にすっかり虜になった彼は、二つ返事で了承した。
そして、それから毎日、どちらから言い出すわけでもなく、シーンがロックを朝フェラで起こすという習慣が出来た。夜にはセックスもするのだが、彼女は彼のペニスをしゃぶるのを好み、彼もまた、彼女にしゃぶられるのを特に好んだ。
｢れる……じゅるるるぅ……あ、亀さんがひくひくしてきましたねー。朝の美味しいせーえき、ごくごく飲ませてくださいねー。じゅぅ、ちゅぅ……｣
起き抜けの甘い快楽に、彼は早くも限界を迎える。
｢うっ……出る……｣
｢んふっ……ちゅぅ……ごく、ごく、ごく……｣
射精に合わせてペニスを喉奥までくわえ込むと、射精を喉の最奥で受け止め、大きく喉を鳴らして精液を飲み干した。
｢ふふふ、今日もとっても美味しいです……だから、もっと、飲ませてくれますよね？｣
いまだに硬いままのペニスをしゅこしゅこと手でしごきながら、彼女はおねだりをする。
目を潤ませ、上目遣いのおねだり。それを見て、彼はこくこくと何度もうなずいた。
人里離れたこの場所で、二人はいつまでも質素で甘い生活を送っていく。
10/08/05 02:29更新 / 川村人志