いたいのとんでけ
「うーむ……ううーむ……」
女王蜂は悩んでいた。
人里離れた森の奥、そこにひっそりと存在する、ハニービーの巣。
その最奥に位置する女王の部屋で、彼女は玉座に座りながら、頬杖をつき、足を組んで唸っていた。
「やはり、どの男も我が妹が連れて来ただけあって、わしの好みの男ばかりじゃのぅ……」
彼女の視線の先には、彼女を取り囲むように、十人の男が半円状に正座している。
更に彼らの後ろには、それぞれ一人ずつ、女王蜂の妹である働き蜂が立っていた。
彼女達は、巣の外に出かけ、花の蜜や女王蜂の餌となるアルラウネの蜜を集めるのが主な仕事である。
しかし、彼女達にはもう一つ大事な仕事がある。それは、女王蜂の夫候補を連れて来る事である。
働き蜂は、好みの男性を見付けるとその場でその男を犯し、女王の夫になる素質があるか。つまり、精力が高いかどうかを判定する。
夫として相応しいと判断された男は、そのまま巣へと持ち帰るのだ。
そして、夫候補がある程度集まると、今度は女王蜂が直々に彼ら全員と性交し、夫にする男を決める。
十人の男は全員、前日の晩に女王と性交し、今まさにその中から、女王の夫となる男が一人選ばれようとしていた。
「うーむ。どうしようかのぅ……」
だが、女王蜂はまだ悩んでいた。
働き蜂は、神妙な面持ちで待っている。
夫候補は、目隠しをされ両手を後ろ側で縛られている。何故なら、拘束していないと、性欲が爆発して女王蜂を襲ってしまうからだ。
女王蜂は、強大な魔力を持った魔物であるため、全裸の男十人に襲われようが、百人に襲われようが、決して負けはしないのだが、念のための処置である。
昨日の最終選考も、この拘束をされたまま行われた。
事実、夫候補の男達は皆、女王蜂の部屋に近付き、彼女の気配を感じるだけで動悸が治まらず。
部屋の扉の隙間から女王蜂の香りが漂ってきただけで、ペニスが腹を打つ程反り返り。
悩ましげな女王蜂の声を聞くだけで、我慢汁をご馳走を目の前にした時の涎のごとく垂れ流した。
「はぁ……」
女王蜂は、何度目か分からないため息を漏らし、足を組み替えた。
フェロモンが辺りに漂い、男達のペニスがビクッと震えた。
彼女は、一番左の男を見た。
「ハニーが連れて来た男は、先っぽがわしのスイートスポットに当たって気持ち良かったのぅ……」
右隣の男を見る。
「コスモスが連れて来た男の精は、大層美味かったのぅ……濃厚な甘みが広がって、こってりしていて……」
視線を更に隣の男に移す。
「ジャムが連れて来た男は、いい声で鳴いてくれたのぅ……鼓膜がジンジン痺れるような……」
次の男を見る。
「メープルのは……」
働き蜂の一人、メープルはビクリと震えた。
その後も一人ずつ男を見比べながら、ぶつぶつと呟き、そして悩み、何度も何度も足を組み替えた。
そんな彼女の一挙手一投足に、夫候補達は律儀に反応した。
更に数分後、女王蜂は意を決したように立ち上がった。
そして、モデルを思わせるような足取りで右端の男に近付くと、目隠しを外した。
右手の人差し指で、軽く彼の顎に触れると、それを持ち上げ至近距離で女王蜂と視線を合わせる。
「そなたが、わしの夫じゃ」
そう言うと、彼女は自分の唇を、男の唇と重ねた。
「んん……ちゅ……ちゅぱ……」
最初は、軽くついばむようなキス。
「ふふっ」
女王蜂は小さく笑うと、男の口内に舌を侵入させた。
男の唇に、彼女の舌が触れた瞬間、男の体はビクッと震える。
「ん、どうした?緊張しておるのか。そんなに固くならなくてもいいぞ。わしとそなたは夫婦の仲ではないか。硬くするのは……ふふっ、ここだけでよいのだぞ」
男の耳元で淫らに囁き、人差し指でそっと彼の反り返った男性器の裏側をなぞる。
「ううっ」
男は電流が背筋を走ったかのように上体を仰け反らせ、勢い良く射精した。
「なんだ、もう漏らしてしまったのか。元気なのはいいことじゃが……うーむ、もったいないではないか。次からはちゃんと、わしの中に出すのじゃぞ。ふふふ……」
女王蜂は呆れながらも、どこか嬉しそうに呟いた。
だが、そんな笑顔はすぐに最初の事務的なものに戻り、女王蜂は妹である働き蜂の方を見渡した。
「妹達よ。今回はご苦労であったぞ。どの候補もわし好みの男ばかりじゃった。正直選ぶのに相当苦労したぞ。そして、特に彼を連れて来たシュガー、素晴らしい男を連れて来たな。礼を言うぞ」
女王蜂の労いの言葉に、末っ子のシュガーは、目を潤ませて感激した。
「何ともったいないお言葉!」
「では、わしはこれから夫と子作りをするから、もう帰ってよいぞ」
「はぁ……」
バンブルは椅子に座り、ため息を漏らした。
「どうしたの?なにか悩み事?」
働き蜂の一人、メープルがそんな彼を心配そうに見つめる。
バンブルは、メープルが連れて来た女王蜂の元夫候補である。
彼は候補から漏れたので、所有権は連れて来たメープルに移っている。
二人は、女王蜂の部屋から帰り、メープルの部屋でのんびりとしている。
働き蜂の今日の仕事は、午前に行われた女王蜂の夫選びだけだったため、午後からは丸々オフである。
「いや、そういうわけじゃ……はぁ……」
バンブルがまたため息をついた。
「じゃあ、お姉ちゃんに選ばれなかったのがそんなに残念だったの?」
メープルはすこし悲しそうに呟いた。お姉ちゃんとは、女王蜂のことである。彼女達働き蜂は、プライベートな場では彼女をそう呼ぶ。
「そういうわけでもないんだけど……」
「じゃあ、何でそんなにため息つくの?隠さないで教えて?今日からは私はバンブルのものだし、バンブルは私のものなんだよ?特別な関係なの。だから、隠さないで、教えて?ね?」
愛しい彼の、不安そうな顔を覗き込むメープル。その名の通り、メープルシロップのような色をした、綺麗な光沢のあるショートヘアから甘い蜜の香りが漂い、バンブルの鼻腔をくすぐる。
「いや、その……俺って、女王蜂の夫候補から漏れたわけだよな。だから、これからどうなるんだろうなと思ってさ。もしかしたら、女王蜂の餌として、肉団子に加工されるんじゃないかと不安でさ……」
意を決したように、バンブルはぽつりぽつりと呟いた。
「ふふっ、ふふふふふ……」
メープルはつい我慢できずに笑ってしまった。
――もう、バンブルったら、なんて可愛いの!
彼の子供っぽい不安に、メープルは微笑ましい気分になった。蜜しか食さない彼女にとっては、文字通りの杞憂である。
「もう、そんなわけないじゃない。まあ、あの野蛮で肉食のホーネット達だったら分からないけどね」
彼女はまたくすくすと笑った。
「ねえ、それより……」
メープルは顔を彼にさらに寄せ、耳元で囁いた。
「せっかく私の所に帰って来たんだし……だから……しよ?」
彼女の桃色の舌が、バンブルの耳たぶを掬い、唇で挟み、吸い付く。
「ちゅぱ……ちゅるる……ふふっ可愛いね。耳が真っ赤で……熱いよ」
興奮により、メープルから漂う蜜の香りが濃くなる。耳への優しい刺激と香りによって、むくむくとペニスの頭が持ち上がる。
「あはっ、大きくなった。嬉しい……もう準備万端なんだね」
メープルは、目を細めて顔を赤らめる。
対照的に、バンブルは眉をひそめ、苦痛のあえぎを漏らす。
「うぐっ、痛っ」
「えっ、あっ、ごめん!どうしたの?怪我?」
メープルは我に返ると、愛撫をやめ尋ねた。
「あ、ああ……昨日女王蜂にたくさん搾られたから……勃つとあそこの付け根がどうも痛くて……ははは……」
恥ずかしそうに笑いながら、バンブルは頭を掻いた。
「あっ!ごめん、ごめんね……気付かなくて……本当に、ごめん……」
目に涙をため、何度も謝るメープル。
目を潤ませ、過剰ともいえる心配をするメープルを見て、バンブルはドキッとした。
一月ほど前に彼女に連れて来られてから、彼は彼女の様々な顔を見た。
メープルは子供っぽく、すぐ笑う、すぐ泣く、すぐ怒る。とにかく感情が表に出る。
しかしそのどれもが可愛らしく、時に美しく、Hの時は魔物特有の好色な面が表れて、淫らで……
表情を変えるたびに、彼はそんな彼女にどぎまぎした。
「いや、この程度でへこたれる俺の方が悪いんだ。ははは……魔族の夫失格だな、俺」
バンブルはまた強がって笑ってみせた。
「ううん、そうだよね。昨日お姉ちゃんとたくさんしたんだから、痛いのは当たり前だよね……今日は我慢する……あっ、そうだ!」
メープルは何かを思いついたらしく、くるりと彼に背を向けると、床に置いてある箱から瓶を取り出した。
それは手のひらに収まるほどの大きさで、透明なため、中に粘性の高い蜜のようなものが見えた。
「これで、あなたの痛いの、治してあげるからねっ」
そう言うと、メープルは瓶から垂れる液体を手のひらにまぶし、両手をこすり合わせた。
ぬちゃ……と粘着質な音が部屋に響く。
「私たちはね、いろんな花の蜜とか植物とかを混ぜて、薬を作ることができるんだよ。すごいでしょ。これはね、アルラウネの蜜に、スライムの粘液とマンドラゴラの根っこのエキス、それからホルスタウロスのミルクを混ぜて作ったんだよ。精力増強と麻酔の作用があるから、痛いのが飛んで行っちゃうし、お姉ちゃんに吸い取られちゃった精も回復させられるからね」
石鹸で手を洗うかのように、特製の蜜を泡立てるメープル。
片方の手のひらを下に向け、もう一方を受け皿のようにして、粘度を確かめる。
「よしっ」
と呟くと、彼女はバンブルの目の前にひざまずいた。
「それじゃあ、塗ってあげるからね、あ・な・た」
『あなた』というフレーズが気に入ったのか、メープルはふふっと含み笑いをした。
バンブルのそそり立った肉棒を、彼女の両手で優しく包む。
「いたいのいたいの、すぐに飛ばしてあげるからね」
そう言うと、祈るように指を組み合わせた両手を、ゆっくりと上下に動かした。
じゅっじゅっじゅぽっずちゅっ。
「くっ……うっ」
この上なく優しい刺激にも関わらず、バンブルの口からは、苦痛のあえぎが漏れる。
何せ、昨夜は女王蜂直々の最終面接と称して、彼女に十数発も射精させられたのだ。
口に二発、胸で一発、アナルで二発。膣内に関しては、数えられないほど、大量に放出させられた。
まさに、搾るという言葉に相応しい、壮絶な性交だった。
「まだ痛い?大丈夫?でも、すぐに楽になるからね」
メープルはストロークを少し遅くした。
「これくらいゆっくりなら大丈夫かな?もうちょっとで蜜が染み込んでくれるはずだから……」
「あ、ああ……少し楽になってきたよ」
麻酔成分が吸収されたのか、バンブルの息遣いがすこしずつ落ち着いてきた。
「本当?良かった……じゃあ、ちょっと速く動かすねっ」
手首のスナップを利かせ、徐々に両手の動きを速めていく。粘着質な音がそれにつられて大きくなっていく。
じゅぽっずにゅっじゅっじゅっ。
「くっ……メープル、マッサージ、上手だな……」
十分に麻酔が染み渡り、バンブルの声に快楽の色が混じり始めた。
「えへへっ、大好きなあなたのためだから。私がんばるよ!」
そうして更にストロークを速くしていく。
そのままのスピードでしばらくこすり続けると、動きを止めた。
「大まかなところは染み渡ったみたいだね。じゃあ、次は……」
メープルは蜜の入った瓶を持つと、中身を口に含んだ。
そして、うがいをするように、口内で蜜をぶくぶくと弄び、
「ほれじゃあ、ふぎは、おふひでひへあげふね」
そう言うと、彼女はバンブルの陰茎をゆっくりと口内に入れた。
ちゅるん、と抵抗なく口内に滑り込んでいく肉棒。
「ううっ、メープルの中、あったかい……」
彼は思わずため息を漏らした。
彼女達は、主にホーネットなどの敵に対し、「蜂団子」と呼ばれる対抗策をとる。
敵一体を多くの働き蜂が取り囲み、中心にいる敵を強烈な熱気でのぼせさせる。
そして、同時に手や舌で愛撫することにより、戦意を喪失させる。
蜂団子を効率よく行うために、ハニービーの体温は、とても高くなっている。
メープルの口内は、さながら肉棒を溶かす煮えたぎった溶鉱炉のようであった。
舌が蛇のようにうごめき、裏筋やカリを優しく刺激する。亀頭を飴玉のように転がし、尿道口を尖らせた舌が突く。
「ぬるぉ……れるぅ……ちゅるる……ふふっ」
愛しい夫の体が、自分の舌の動きに合わせ、まるで電流が走るように震え、痺れるのを見て、メープルは笑みを漏らした。
「うっ……はあ、はあ……くぅっ」
一方のバンブルは、快楽をこらえるので精一杯であった。
麻酔が効いていなかったら、すでに何発も射精してしまっていたであろう。
「んっ、そろそろいい感じに薬が染み込んだかな……じゃあ、仕上げだね」
彼女がそう呟くと、頬をすぼませ、勢いよくペニスにまとわり付いている蜜を吸い込んだ。
ずずずっじゅるっずっずっずっ。
麺をすするような下品な音が響き渡る。
バンブルは激しく、しかし甘い刺激に、今まで以上に体を大きく震わせた。
麻酔で刺激が薄まっているとはいえ、彼女のバキュームの快楽は生半可なものではない。
まるで、魂が尿道を通じてゆっくりと吸い取られていくような、そんな感覚。
吸引に合わせ、彼の腰は自然に椅子から浮き上がった。
じゅるるるるる……ちゅぽんっ。
最後の吸引が終わり、ペニスがメープルの口から勢いよく抜けた。同時に支えを失ったバンブルの腰が、椅子に落ちる。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
快楽で脳内が桃色に染まった彼は、何度も荒い息を吐く。
「これでおしまい。どうかな?だいぶ楽になったと思うけど」
「はぁ、はぁ……あ、ああ、痛みは完全に消えたよ……ありがとう」
バンブルの言葉に、メープルはパッと顔を輝かせた。
「うんっ、よかったよかった。でも、一回も射精してないから、勃起収まらないね」
そう言いながら、彼女はいまだ固さを保っているペニスをつんつんと指先で突いた。
「ふふふっ、まだ全然元気だね……ぴくぴく……震えて……」
彼女の目がとろんと熱を帯び、頬が紅潮し始めた。
「ねぇ……やっぱり我慢できなくなっちゃった……いれていいかな?これ……」
息を荒げながら言う。
「え、ああ、うーん……だいぶ楽にはなったけど……昨日の疲れがまだ残ってるし……」
バンブルは目線を泳がせながら、しどろもどろで答える。
目を潤ませ、頬を桜色に染めて、上目遣いにおねだりする彼女を見ると、とても断る気が起きない。
しかし、とても性交をできる体力が無いのも事実である。
「大丈夫、本当に、入れるだけ……だから。だから……お願い……」
目尻に涙を浮かべ、メープルは自分の腰を彼のモノに近付け、体面座位のような体勢になった。
彼女の右手の親指と人差し指で輪っかを作り、優しくペニスを上下にしごく。
「いい?いい?いれるよ……」
二人の鼻が触れ合うほどの距離まで顔を近付け、疲れた犬のように短く荒く息を吐くメープル。
ちろちろと彼女の綺麗な桃色の舌が見え隠れし、口から漂う濃厚な蜜の香りが、バンブルの思考を蕩かす。
彼は潤む彼女の瞳を見つめ、小さく頷いた。
彼女は満面の笑顔で、小さく頷き返す。
そして重力にまかせるまま、バンブルの肉棒が勢いよく肉壷を貫いた。
「ふぐっ、ううぅ、あ、ああぁぁぁっ!」
ペニスは一気に膣の最奥を突き、メープルは脳の神経が焼き切れるほどの快楽に襲われた。
「あん、ううっ、くふっ、あ、あ、あっ」
両腕でバンブルの首にぎゅっとしがみ付く。足先から腰が痙攣し、その震えが上半身に感染していく。
二日ぶりの性交で、彼女はたった一突きで絶頂を迎えた。
「うぐっ……」
一方のバンブルも、愛しの彼女との久しぶりの性交に、快楽のあえぎを漏らした。
しかし、こちらは肉体的なものより、二日ぶりに愛する妻と繋がる事の出来たという、精神的なものによる快楽の方がより強かった。
メープルの絶頂と同時に、膣肉がぎゅぅっと彼のペニスを締め付ける。
そして、絶頂が終わると同時に、締め付けが緩くなった。
「あぁ……あたたかい……」
バンブルが呟いた。彼女の膣内は、口内よりも更に温度が高かった。
締め付けが緩まった壷は、彼のペニスに風呂に漬かっているような感覚を与えた。
「うぅ、いい……いいよぉ……ひぐっ、気持ちいいよぉ……うっ、ひっく……」
快楽と嬉しさで、メープルは彼の耳元で嗚咽を漏らした。抱きしめる両腕の力は緩まない。
彼はそんな彼女の姿に、より一層の愛しさを感じ、両腕を背中に回して抱きしめ返した。
彼女はもう一度、彼の顔の正面に向き直った。
「ねぇ、キス……いい?キスぅ……キスっいい?いい?」
快楽漬けで頭がぐちゃぐちゃになり、彼女から発せられる言葉が単純なものになる。
そして、彼女は彼の返事を聞く事も無く、彼の唇にむしゃぶりついた。
「んっ、んむっ、じゅるるっ、ちゅぅっ」
彼女の舌が強引にバンブルの歯をこじ開け、蛇のように彼の舌に絡みつく。
バンブルが応えるように舌を突き出すと、彼女は唇でそれに吸い付いた。
「ちゅるるっちゅるっ……おいひぃ、おいひぃよぉ……」
彼の唾液を、メープルは花の蜜のように、味わいながら飲み干していく。
唇は彼の舌を包み込み、何度も前後させ、卑猥な水音を響かせる。
舌が唇から抜けると、今度は自分の舌を彼の口内に差し入れ、歯茎をなぞり、彼の舌に巻きつかせる。
その間、彼女の緩まった膣からは愛液が滴り落ち、バンブルの股間を、その下の椅子を濡らしていく。
風呂のような感覚は変わらず、彼女の心臓の鼓動に合わせ、とくんとくんと肉がうごめく。
長い長いキスが終わり、メープルはようやくバンブルの唇から離れた。
「好き……大好き……ずっと、ずっと、一緒にいようね……」
彼女は耳元で囁いた。
バンブルはその言葉を聞くと、疲れと薬の効果でゆっくりと眠りに落ちていった。
バンブルが目を覚ますと、天井が視界に映った。自分の全身を、柔らかい藁が包み込んでいる。
いつの間にか、ベッドに連れて来られていたようだ。
右腕に重みを感じた。視線をそちらへ移すと、メープルがいた。
彼の腕を枕にし、腕は彼の胴体を抱き、両足を彼の右足に絡ませている。
彼は、そんな彼女の子供のような可愛い寝顔をしばらく眺めていた。
彼女の髪の毛を、右腕でそっと撫でる。触覚がぴくりと動き、彼女の目が開いた。
「あ……おはよう……」
まどろんだ目で、気だるそうな声を上げるメープル。
「あ、ごめん、起こして」
「ん、いいよ。それより、頭、もっと撫でて……」
彼女の頭が彼の胸に擦り寄る。バンブルの右手が、くしゃくしゃと髪の毛をかき混ぜた。
「ふふふっ、気持ちいぃ」
触覚をひくひく動かして、喜びを表現するメープル。
「なあ、メープル」
「何?」
「その、昨日はしてあげられなくてごめん。よければ……その……今から……ああ、まだ寝たいならいいけど……」
遠慮がちにバンブルが呟くと、メープルの耳がびくりと動き、ばね仕掛けのおもちゃのように勢いよく飛び起きた。
その勢いのまま彼の腰にまたがり、馬乗りになった。
彼を見つめる瞳は、キラキラと輝いている。
「うんっ!する!する!」
お尻から生えた蜂の部分が、喜んだ犬の尻尾のように左右に揺れる。
「あなたは動かなくていいからね。今日は私が上で動いてあげるっ!」
そう言うと、脱ぐ間も惜しいのか、下着を指で横にずらし、一気に挿入した。
「んくぅぅぅぅんっっ!」
「うぐあぁぁぁっ!」
二人は同時に声を漏らした。
「あんっ、あっ、昨日は……んんっ、私だけイっちゃって……ごめんね……あふっ、今日は、二人で、あんっ……一緒にイこうねっ」
言うや否や、彼女は腰を上下に揺らした。
二人の接合部から、卑猥な水音が鳴り響く。
中はぐにぐにとうごめき、波うち、締め付け、時に緩める。
腰の動きも時に速く、時に遅く。緩急を付ける。
昨日の優しいものとは違う、ただただ射精させるためだけの動き。
「いいよっ!いいよぉ!一番奥の、あんっ、気持ちいいところに当たってるよぉ!」
腰をグラインドさせ、子宮口に亀頭をこすりつける。
締め付けがますます強くなる。
「ぐっ、もう、出そうっ」
バンブルが小さく声を漏らす。
「うんっ、いいよっ!私も、もうすぐ、イき、そうっ!」
そう言うとメープルは体を前に倒し、強く彼を抱きしめた。
そのまま、二人の唇が重なる。
「ちゅっ、ちゅっ、ちゅぱ……一緒に……うふぅ……一緒に、イこうね……くふっ」
彼女の腰の動きが更に激しくなった。彼を射精に導くため、そして、自分が 絶頂するための、とどめのストローク。
「もぅ、だめっ、出っ……るっ」
「あふっ、あぁぁぁっ、イっ……ちゃっ……」
一際強く腰を打ち付けると、二人は同時に絶頂を迎えた。
「んんんんんんーっ!奥に、一番奥に熱いのがっ、注がれて……」
彼は彼女の腰に、彼女は彼の背中に両腕を回し、精液を一滴も漏らすまいと強く抱きしめあった。
はぁっはぁっはぁっ……
二人の荒い息が部屋中に響く。
はぁっ……はぁっ……はぁ……
絶頂の余韻に浸っている内に、徐々に呼吸が落ち着いていく。
二人は両腕をほどき、メープルはバンブルの胸板に頭を乗せた。
「すごいね……今までで一番、量が多かった……」
彼女はうっとりしながら呟いた。
「ああ……何か、今日はすごいたくさん出た気がする……」
左手で彼女の頭を撫でながら、彼は言った。
「ふふっ、薬のおかげだね……だから、今日は、多分もっといっぱい出ると思うから……だから、抜かないで……ね?」
彼女はそう言って頬を赤らめた。
バンブルはため息をつく。
「分かった分かった。昨日は我慢させちゃったからな……今日はその分たくさんやってやる」
彼は彼女の顔を寄せ、口付けた。
その日の二人の営みは、真夜中まで終わることが無かった。
女王蜂は悩んでいた。
人里離れた森の奥、そこにひっそりと存在する、ハニービーの巣。
その最奥に位置する女王の部屋で、彼女は玉座に座りながら、頬杖をつき、足を組んで唸っていた。
「やはり、どの男も我が妹が連れて来ただけあって、わしの好みの男ばかりじゃのぅ……」
彼女の視線の先には、彼女を取り囲むように、十人の男が半円状に正座している。
更に彼らの後ろには、それぞれ一人ずつ、女王蜂の妹である働き蜂が立っていた。
彼女達は、巣の外に出かけ、花の蜜や女王蜂の餌となるアルラウネの蜜を集めるのが主な仕事である。
しかし、彼女達にはもう一つ大事な仕事がある。それは、女王蜂の夫候補を連れて来る事である。
働き蜂は、好みの男性を見付けるとその場でその男を犯し、女王の夫になる素質があるか。つまり、精力が高いかどうかを判定する。
夫として相応しいと判断された男は、そのまま巣へと持ち帰るのだ。
そして、夫候補がある程度集まると、今度は女王蜂が直々に彼ら全員と性交し、夫にする男を決める。
十人の男は全員、前日の晩に女王と性交し、今まさにその中から、女王の夫となる男が一人選ばれようとしていた。
「うーむ。どうしようかのぅ……」
だが、女王蜂はまだ悩んでいた。
働き蜂は、神妙な面持ちで待っている。
夫候補は、目隠しをされ両手を後ろ側で縛られている。何故なら、拘束していないと、性欲が爆発して女王蜂を襲ってしまうからだ。
女王蜂は、強大な魔力を持った魔物であるため、全裸の男十人に襲われようが、百人に襲われようが、決して負けはしないのだが、念のための処置である。
昨日の最終選考も、この拘束をされたまま行われた。
事実、夫候補の男達は皆、女王蜂の部屋に近付き、彼女の気配を感じるだけで動悸が治まらず。
部屋の扉の隙間から女王蜂の香りが漂ってきただけで、ペニスが腹を打つ程反り返り。
悩ましげな女王蜂の声を聞くだけで、我慢汁をご馳走を目の前にした時の涎のごとく垂れ流した。
「はぁ……」
女王蜂は、何度目か分からないため息を漏らし、足を組み替えた。
フェロモンが辺りに漂い、男達のペニスがビクッと震えた。
彼女は、一番左の男を見た。
「ハニーが連れて来た男は、先っぽがわしのスイートスポットに当たって気持ち良かったのぅ……」
右隣の男を見る。
「コスモスが連れて来た男の精は、大層美味かったのぅ……濃厚な甘みが広がって、こってりしていて……」
視線を更に隣の男に移す。
「ジャムが連れて来た男は、いい声で鳴いてくれたのぅ……鼓膜がジンジン痺れるような……」
次の男を見る。
「メープルのは……」
働き蜂の一人、メープルはビクリと震えた。
その後も一人ずつ男を見比べながら、ぶつぶつと呟き、そして悩み、何度も何度も足を組み替えた。
そんな彼女の一挙手一投足に、夫候補達は律儀に反応した。
更に数分後、女王蜂は意を決したように立ち上がった。
そして、モデルを思わせるような足取りで右端の男に近付くと、目隠しを外した。
右手の人差し指で、軽く彼の顎に触れると、それを持ち上げ至近距離で女王蜂と視線を合わせる。
「そなたが、わしの夫じゃ」
そう言うと、彼女は自分の唇を、男の唇と重ねた。
「んん……ちゅ……ちゅぱ……」
最初は、軽くついばむようなキス。
「ふふっ」
女王蜂は小さく笑うと、男の口内に舌を侵入させた。
男の唇に、彼女の舌が触れた瞬間、男の体はビクッと震える。
「ん、どうした?緊張しておるのか。そんなに固くならなくてもいいぞ。わしとそなたは夫婦の仲ではないか。硬くするのは……ふふっ、ここだけでよいのだぞ」
男の耳元で淫らに囁き、人差し指でそっと彼の反り返った男性器の裏側をなぞる。
「ううっ」
男は電流が背筋を走ったかのように上体を仰け反らせ、勢い良く射精した。
「なんだ、もう漏らしてしまったのか。元気なのはいいことじゃが……うーむ、もったいないではないか。次からはちゃんと、わしの中に出すのじゃぞ。ふふふ……」
女王蜂は呆れながらも、どこか嬉しそうに呟いた。
だが、そんな笑顔はすぐに最初の事務的なものに戻り、女王蜂は妹である働き蜂の方を見渡した。
「妹達よ。今回はご苦労であったぞ。どの候補もわし好みの男ばかりじゃった。正直選ぶのに相当苦労したぞ。そして、特に彼を連れて来たシュガー、素晴らしい男を連れて来たな。礼を言うぞ」
女王蜂の労いの言葉に、末っ子のシュガーは、目を潤ませて感激した。
「何ともったいないお言葉!」
「では、わしはこれから夫と子作りをするから、もう帰ってよいぞ」
「はぁ……」
バンブルは椅子に座り、ため息を漏らした。
「どうしたの?なにか悩み事?」
働き蜂の一人、メープルがそんな彼を心配そうに見つめる。
バンブルは、メープルが連れて来た女王蜂の元夫候補である。
彼は候補から漏れたので、所有権は連れて来たメープルに移っている。
二人は、女王蜂の部屋から帰り、メープルの部屋でのんびりとしている。
働き蜂の今日の仕事は、午前に行われた女王蜂の夫選びだけだったため、午後からは丸々オフである。
「いや、そういうわけじゃ……はぁ……」
バンブルがまたため息をついた。
「じゃあ、お姉ちゃんに選ばれなかったのがそんなに残念だったの?」
メープルはすこし悲しそうに呟いた。お姉ちゃんとは、女王蜂のことである。彼女達働き蜂は、プライベートな場では彼女をそう呼ぶ。
「そういうわけでもないんだけど……」
「じゃあ、何でそんなにため息つくの?隠さないで教えて?今日からは私はバンブルのものだし、バンブルは私のものなんだよ?特別な関係なの。だから、隠さないで、教えて?ね?」
愛しい彼の、不安そうな顔を覗き込むメープル。その名の通り、メープルシロップのような色をした、綺麗な光沢のあるショートヘアから甘い蜜の香りが漂い、バンブルの鼻腔をくすぐる。
「いや、その……俺って、女王蜂の夫候補から漏れたわけだよな。だから、これからどうなるんだろうなと思ってさ。もしかしたら、女王蜂の餌として、肉団子に加工されるんじゃないかと不安でさ……」
意を決したように、バンブルはぽつりぽつりと呟いた。
「ふふっ、ふふふふふ……」
メープルはつい我慢できずに笑ってしまった。
――もう、バンブルったら、なんて可愛いの!
彼の子供っぽい不安に、メープルは微笑ましい気分になった。蜜しか食さない彼女にとっては、文字通りの杞憂である。
「もう、そんなわけないじゃない。まあ、あの野蛮で肉食のホーネット達だったら分からないけどね」
彼女はまたくすくすと笑った。
「ねえ、それより……」
メープルは顔を彼にさらに寄せ、耳元で囁いた。
「せっかく私の所に帰って来たんだし……だから……しよ?」
彼女の桃色の舌が、バンブルの耳たぶを掬い、唇で挟み、吸い付く。
「ちゅぱ……ちゅるる……ふふっ可愛いね。耳が真っ赤で……熱いよ」
興奮により、メープルから漂う蜜の香りが濃くなる。耳への優しい刺激と香りによって、むくむくとペニスの頭が持ち上がる。
「あはっ、大きくなった。嬉しい……もう準備万端なんだね」
メープルは、目を細めて顔を赤らめる。
対照的に、バンブルは眉をひそめ、苦痛のあえぎを漏らす。
「うぐっ、痛っ」
「えっ、あっ、ごめん!どうしたの?怪我?」
メープルは我に返ると、愛撫をやめ尋ねた。
「あ、ああ……昨日女王蜂にたくさん搾られたから……勃つとあそこの付け根がどうも痛くて……ははは……」
恥ずかしそうに笑いながら、バンブルは頭を掻いた。
「あっ!ごめん、ごめんね……気付かなくて……本当に、ごめん……」
目に涙をため、何度も謝るメープル。
目を潤ませ、過剰ともいえる心配をするメープルを見て、バンブルはドキッとした。
一月ほど前に彼女に連れて来られてから、彼は彼女の様々な顔を見た。
メープルは子供っぽく、すぐ笑う、すぐ泣く、すぐ怒る。とにかく感情が表に出る。
しかしそのどれもが可愛らしく、時に美しく、Hの時は魔物特有の好色な面が表れて、淫らで……
表情を変えるたびに、彼はそんな彼女にどぎまぎした。
「いや、この程度でへこたれる俺の方が悪いんだ。ははは……魔族の夫失格だな、俺」
バンブルはまた強がって笑ってみせた。
「ううん、そうだよね。昨日お姉ちゃんとたくさんしたんだから、痛いのは当たり前だよね……今日は我慢する……あっ、そうだ!」
メープルは何かを思いついたらしく、くるりと彼に背を向けると、床に置いてある箱から瓶を取り出した。
それは手のひらに収まるほどの大きさで、透明なため、中に粘性の高い蜜のようなものが見えた。
「これで、あなたの痛いの、治してあげるからねっ」
そう言うと、メープルは瓶から垂れる液体を手のひらにまぶし、両手をこすり合わせた。
ぬちゃ……と粘着質な音が部屋に響く。
「私たちはね、いろんな花の蜜とか植物とかを混ぜて、薬を作ることができるんだよ。すごいでしょ。これはね、アルラウネの蜜に、スライムの粘液とマンドラゴラの根っこのエキス、それからホルスタウロスのミルクを混ぜて作ったんだよ。精力増強と麻酔の作用があるから、痛いのが飛んで行っちゃうし、お姉ちゃんに吸い取られちゃった精も回復させられるからね」
石鹸で手を洗うかのように、特製の蜜を泡立てるメープル。
片方の手のひらを下に向け、もう一方を受け皿のようにして、粘度を確かめる。
「よしっ」
と呟くと、彼女はバンブルの目の前にひざまずいた。
「それじゃあ、塗ってあげるからね、あ・な・た」
『あなた』というフレーズが気に入ったのか、メープルはふふっと含み笑いをした。
バンブルのそそり立った肉棒を、彼女の両手で優しく包む。
「いたいのいたいの、すぐに飛ばしてあげるからね」
そう言うと、祈るように指を組み合わせた両手を、ゆっくりと上下に動かした。
じゅっじゅっじゅぽっずちゅっ。
「くっ……うっ」
この上なく優しい刺激にも関わらず、バンブルの口からは、苦痛のあえぎが漏れる。
何せ、昨夜は女王蜂直々の最終面接と称して、彼女に十数発も射精させられたのだ。
口に二発、胸で一発、アナルで二発。膣内に関しては、数えられないほど、大量に放出させられた。
まさに、搾るという言葉に相応しい、壮絶な性交だった。
「まだ痛い?大丈夫?でも、すぐに楽になるからね」
メープルはストロークを少し遅くした。
「これくらいゆっくりなら大丈夫かな?もうちょっとで蜜が染み込んでくれるはずだから……」
「あ、ああ……少し楽になってきたよ」
麻酔成分が吸収されたのか、バンブルの息遣いがすこしずつ落ち着いてきた。
「本当?良かった……じゃあ、ちょっと速く動かすねっ」
手首のスナップを利かせ、徐々に両手の動きを速めていく。粘着質な音がそれにつられて大きくなっていく。
じゅぽっずにゅっじゅっじゅっ。
「くっ……メープル、マッサージ、上手だな……」
十分に麻酔が染み渡り、バンブルの声に快楽の色が混じり始めた。
「えへへっ、大好きなあなたのためだから。私がんばるよ!」
そうして更にストロークを速くしていく。
そのままのスピードでしばらくこすり続けると、動きを止めた。
「大まかなところは染み渡ったみたいだね。じゃあ、次は……」
メープルは蜜の入った瓶を持つと、中身を口に含んだ。
そして、うがいをするように、口内で蜜をぶくぶくと弄び、
「ほれじゃあ、ふぎは、おふひでひへあげふね」
そう言うと、彼女はバンブルの陰茎をゆっくりと口内に入れた。
ちゅるん、と抵抗なく口内に滑り込んでいく肉棒。
「ううっ、メープルの中、あったかい……」
彼は思わずため息を漏らした。
彼女達は、主にホーネットなどの敵に対し、「蜂団子」と呼ばれる対抗策をとる。
敵一体を多くの働き蜂が取り囲み、中心にいる敵を強烈な熱気でのぼせさせる。
そして、同時に手や舌で愛撫することにより、戦意を喪失させる。
蜂団子を効率よく行うために、ハニービーの体温は、とても高くなっている。
メープルの口内は、さながら肉棒を溶かす煮えたぎった溶鉱炉のようであった。
舌が蛇のようにうごめき、裏筋やカリを優しく刺激する。亀頭を飴玉のように転がし、尿道口を尖らせた舌が突く。
「ぬるぉ……れるぅ……ちゅるる……ふふっ」
愛しい夫の体が、自分の舌の動きに合わせ、まるで電流が走るように震え、痺れるのを見て、メープルは笑みを漏らした。
「うっ……はあ、はあ……くぅっ」
一方のバンブルは、快楽をこらえるので精一杯であった。
麻酔が効いていなかったら、すでに何発も射精してしまっていたであろう。
「んっ、そろそろいい感じに薬が染み込んだかな……じゃあ、仕上げだね」
彼女がそう呟くと、頬をすぼませ、勢いよくペニスにまとわり付いている蜜を吸い込んだ。
ずずずっじゅるっずっずっずっ。
麺をすするような下品な音が響き渡る。
バンブルは激しく、しかし甘い刺激に、今まで以上に体を大きく震わせた。
麻酔で刺激が薄まっているとはいえ、彼女のバキュームの快楽は生半可なものではない。
まるで、魂が尿道を通じてゆっくりと吸い取られていくような、そんな感覚。
吸引に合わせ、彼の腰は自然に椅子から浮き上がった。
じゅるるるるる……ちゅぽんっ。
最後の吸引が終わり、ペニスがメープルの口から勢いよく抜けた。同時に支えを失ったバンブルの腰が、椅子に落ちる。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
快楽で脳内が桃色に染まった彼は、何度も荒い息を吐く。
「これでおしまい。どうかな?だいぶ楽になったと思うけど」
「はぁ、はぁ……あ、ああ、痛みは完全に消えたよ……ありがとう」
バンブルの言葉に、メープルはパッと顔を輝かせた。
「うんっ、よかったよかった。でも、一回も射精してないから、勃起収まらないね」
そう言いながら、彼女はいまだ固さを保っているペニスをつんつんと指先で突いた。
「ふふふっ、まだ全然元気だね……ぴくぴく……震えて……」
彼女の目がとろんと熱を帯び、頬が紅潮し始めた。
「ねぇ……やっぱり我慢できなくなっちゃった……いれていいかな?これ……」
息を荒げながら言う。
「え、ああ、うーん……だいぶ楽にはなったけど……昨日の疲れがまだ残ってるし……」
バンブルは目線を泳がせながら、しどろもどろで答える。
目を潤ませ、頬を桜色に染めて、上目遣いにおねだりする彼女を見ると、とても断る気が起きない。
しかし、とても性交をできる体力が無いのも事実である。
「大丈夫、本当に、入れるだけ……だから。だから……お願い……」
目尻に涙を浮かべ、メープルは自分の腰を彼のモノに近付け、体面座位のような体勢になった。
彼女の右手の親指と人差し指で輪っかを作り、優しくペニスを上下にしごく。
「いい?いい?いれるよ……」
二人の鼻が触れ合うほどの距離まで顔を近付け、疲れた犬のように短く荒く息を吐くメープル。
ちろちろと彼女の綺麗な桃色の舌が見え隠れし、口から漂う濃厚な蜜の香りが、バンブルの思考を蕩かす。
彼は潤む彼女の瞳を見つめ、小さく頷いた。
彼女は満面の笑顔で、小さく頷き返す。
そして重力にまかせるまま、バンブルの肉棒が勢いよく肉壷を貫いた。
「ふぐっ、ううぅ、あ、ああぁぁぁっ!」
ペニスは一気に膣の最奥を突き、メープルは脳の神経が焼き切れるほどの快楽に襲われた。
「あん、ううっ、くふっ、あ、あ、あっ」
両腕でバンブルの首にぎゅっとしがみ付く。足先から腰が痙攣し、その震えが上半身に感染していく。
二日ぶりの性交で、彼女はたった一突きで絶頂を迎えた。
「うぐっ……」
一方のバンブルも、愛しの彼女との久しぶりの性交に、快楽のあえぎを漏らした。
しかし、こちらは肉体的なものより、二日ぶりに愛する妻と繋がる事の出来たという、精神的なものによる快楽の方がより強かった。
メープルの絶頂と同時に、膣肉がぎゅぅっと彼のペニスを締め付ける。
そして、絶頂が終わると同時に、締め付けが緩くなった。
「あぁ……あたたかい……」
バンブルが呟いた。彼女の膣内は、口内よりも更に温度が高かった。
締め付けが緩まった壷は、彼のペニスに風呂に漬かっているような感覚を与えた。
「うぅ、いい……いいよぉ……ひぐっ、気持ちいいよぉ……うっ、ひっく……」
快楽と嬉しさで、メープルは彼の耳元で嗚咽を漏らした。抱きしめる両腕の力は緩まない。
彼はそんな彼女の姿に、より一層の愛しさを感じ、両腕を背中に回して抱きしめ返した。
彼女はもう一度、彼の顔の正面に向き直った。
「ねぇ、キス……いい?キスぅ……キスっいい?いい?」
快楽漬けで頭がぐちゃぐちゃになり、彼女から発せられる言葉が単純なものになる。
そして、彼女は彼の返事を聞く事も無く、彼の唇にむしゃぶりついた。
「んっ、んむっ、じゅるるっ、ちゅぅっ」
彼女の舌が強引にバンブルの歯をこじ開け、蛇のように彼の舌に絡みつく。
バンブルが応えるように舌を突き出すと、彼女は唇でそれに吸い付いた。
「ちゅるるっちゅるっ……おいひぃ、おいひぃよぉ……」
彼の唾液を、メープルは花の蜜のように、味わいながら飲み干していく。
唇は彼の舌を包み込み、何度も前後させ、卑猥な水音を響かせる。
舌が唇から抜けると、今度は自分の舌を彼の口内に差し入れ、歯茎をなぞり、彼の舌に巻きつかせる。
その間、彼女の緩まった膣からは愛液が滴り落ち、バンブルの股間を、その下の椅子を濡らしていく。
風呂のような感覚は変わらず、彼女の心臓の鼓動に合わせ、とくんとくんと肉がうごめく。
長い長いキスが終わり、メープルはようやくバンブルの唇から離れた。
「好き……大好き……ずっと、ずっと、一緒にいようね……」
彼女は耳元で囁いた。
バンブルはその言葉を聞くと、疲れと薬の効果でゆっくりと眠りに落ちていった。
バンブルが目を覚ますと、天井が視界に映った。自分の全身を、柔らかい藁が包み込んでいる。
いつの間にか、ベッドに連れて来られていたようだ。
右腕に重みを感じた。視線をそちらへ移すと、メープルがいた。
彼の腕を枕にし、腕は彼の胴体を抱き、両足を彼の右足に絡ませている。
彼は、そんな彼女の子供のような可愛い寝顔をしばらく眺めていた。
彼女の髪の毛を、右腕でそっと撫でる。触覚がぴくりと動き、彼女の目が開いた。
「あ……おはよう……」
まどろんだ目で、気だるそうな声を上げるメープル。
「あ、ごめん、起こして」
「ん、いいよ。それより、頭、もっと撫でて……」
彼女の頭が彼の胸に擦り寄る。バンブルの右手が、くしゃくしゃと髪の毛をかき混ぜた。
「ふふふっ、気持ちいぃ」
触覚をひくひく動かして、喜びを表現するメープル。
「なあ、メープル」
「何?」
「その、昨日はしてあげられなくてごめん。よければ……その……今から……ああ、まだ寝たいならいいけど……」
遠慮がちにバンブルが呟くと、メープルの耳がびくりと動き、ばね仕掛けのおもちゃのように勢いよく飛び起きた。
その勢いのまま彼の腰にまたがり、馬乗りになった。
彼を見つめる瞳は、キラキラと輝いている。
「うんっ!する!する!」
お尻から生えた蜂の部分が、喜んだ犬の尻尾のように左右に揺れる。
「あなたは動かなくていいからね。今日は私が上で動いてあげるっ!」
そう言うと、脱ぐ間も惜しいのか、下着を指で横にずらし、一気に挿入した。
「んくぅぅぅぅんっっ!」
「うぐあぁぁぁっ!」
二人は同時に声を漏らした。
「あんっ、あっ、昨日は……んんっ、私だけイっちゃって……ごめんね……あふっ、今日は、二人で、あんっ……一緒にイこうねっ」
言うや否や、彼女は腰を上下に揺らした。
二人の接合部から、卑猥な水音が鳴り響く。
中はぐにぐにとうごめき、波うち、締め付け、時に緩める。
腰の動きも時に速く、時に遅く。緩急を付ける。
昨日の優しいものとは違う、ただただ射精させるためだけの動き。
「いいよっ!いいよぉ!一番奥の、あんっ、気持ちいいところに当たってるよぉ!」
腰をグラインドさせ、子宮口に亀頭をこすりつける。
締め付けがますます強くなる。
「ぐっ、もう、出そうっ」
バンブルが小さく声を漏らす。
「うんっ、いいよっ!私も、もうすぐ、イき、そうっ!」
そう言うとメープルは体を前に倒し、強く彼を抱きしめた。
そのまま、二人の唇が重なる。
「ちゅっ、ちゅっ、ちゅぱ……一緒に……うふぅ……一緒に、イこうね……くふっ」
彼女の腰の動きが更に激しくなった。彼を射精に導くため、そして、自分が 絶頂するための、とどめのストローク。
「もぅ、だめっ、出っ……るっ」
「あふっ、あぁぁぁっ、イっ……ちゃっ……」
一際強く腰を打ち付けると、二人は同時に絶頂を迎えた。
「んんんんんんーっ!奥に、一番奥に熱いのがっ、注がれて……」
彼は彼女の腰に、彼女は彼の背中に両腕を回し、精液を一滴も漏らすまいと強く抱きしめあった。
はぁっはぁっはぁっ……
二人の荒い息が部屋中に響く。
はぁっ……はぁっ……はぁ……
絶頂の余韻に浸っている内に、徐々に呼吸が落ち着いていく。
二人は両腕をほどき、メープルはバンブルの胸板に頭を乗せた。
「すごいね……今までで一番、量が多かった……」
彼女はうっとりしながら呟いた。
「ああ……何か、今日はすごいたくさん出た気がする……」
左手で彼女の頭を撫でながら、彼は言った。
「ふふっ、薬のおかげだね……だから、今日は、多分もっといっぱい出ると思うから……だから、抜かないで……ね?」
彼女はそう言って頬を赤らめた。
バンブルはため息をつく。
「分かった分かった。昨日は我慢させちゃったからな……今日はその分たくさんやってやる」
彼は彼女の顔を寄せ、口付けた。
その日の二人の営みは、真夜中まで終わることが無かった。
11/06/26 00:54更新 / 川村人志