01.ゴーレム(魔物娘になって)大地に立つ
「ふふっ...、ついにこの時が来たんだね...。」
改造を済ませたゴーレムは手足を含む特徴的になった部分以外はまるでのっぺらぼうなデッサン人形のような姿をしている、彼女はそれに核となる素材を入れ、ゴーレムに関するいろはの記された魔術書を片手に起動の呪文を唱える。
「どうしようついに起動までさせちゃった、起きたら何しようか...。そうだ!まず初めに機能のチェックをしなきゃ、もし不具合が出てきたらキミに申し訳ないし..そう言えばどんな顔をしてキミに向き合えばいいのかな...鏡!鏡見てこよう、あれは拭けばまた使えるだろうし....。」
リッチはウキウキしながらもパタパタとあわただしく動いたのちに、廃棄された倉庫の中へと消えていった。
しばらくするとゴーレムが微振動をし始めるバイザーの取りつけられた頭には繊維の様なものが形作られ髪が、正面に彫が刻まれ人間の顔が出来上がる、
「危ない危ない、あと少しで見逃すとこだった。」
本格的に形を形成し始めたゴーレムに気づいて慌てて戻ってきたのだ、右手には拭きかけの鏡のカケラが握られている
「さてと....、どこまで進んで.....」
彼女の言葉は途中で止まり今はただ一点に集中した、ゴーレムの胸部が隆起し始めているのだ現在の魔物はみな娘になる、ゴーレムが女性型になり乳房が形成されることは何らおかしなことではない、だがこのリッチ、リーベルにとっては驚愕の事実が目の前に突きつけられていた。
「なんということだ...噂には聞いていたがこれほどとは....。」
彼女は今、自分の胸をさすっている、べつに世間でまな板といわれるほどの小ささなのではない、人並みには大きさを持っている、そう人並みには。
新しい魔王はサキュバス、根っからの女性のみの魔物であるその魔王の影響により、全ての魔物は女性になりサキュバス特有の、淫魔の特性を受け継いだのだ、ただ、リーベルは元から女性かつ誰もいない廃墟に一人住んでいた身、あまり変化に実感を持てず外からの情報も乏しかったゆえ知りえなかった。
「でかい..、これ以上のものが世界には溢れているのか...。」
大半の魔物が大きな乳房を持ち合わせていることを、外へ資材集めに行った際風のうわさに聞いたことがある、さらにミノタウロスの亜種に乳牛のようなものがいると、リーベルはそれを思いだしただけでも、身ぶるいをした。
「ああ恐ろしい.....っと、そろそろかな?」
ゴーレムの微振動がようやく治まる、体の形成が終わったようだ彼女は今か今かとゴーレムが目覚めるのを待っていた。
―体の形成を完了、主要思考回路を起動するよ―
―主要思考回路の起動を確認、不具合のチェックをするよ―
―人格兼記憶触媒に二十....%の損失を確認、記憶の欠損を確認、修復はできないね―
―現在出来る限りの環境を準備、起動するよ―
―おはよう―
ゴーレムのまぶたが上がり青紫の瞳が顔を覗く、
「おおおおお...!て、おかしいな確か瞳は青のはずだったんだけど...?まあいいや。」
「問おう。汝が私のマスターか?」
「おっと初期設定からだったね、そうだねわたしがキミのマスター、リーベルだよ、そうだ初めに言っておくけどお堅い上下関係は気にしなくていいから、友達のようにいてほしいな。」
「ふぅ、それじゃあ遠慮なく、今のあたしは名前がない、よかったら名づけてくれないか?」
「さっきと雰囲気違うんだねぇ、」
「これが素だ。」
「ふふ....知ってるさ。」「?」
「それよりも、まずはキミの名前を付けるところからだよね、そうだな....グロリア、なんてどうかな、栄光の意味を持ついい名前だよ。」
「栄光・・ね、なんかこっ恥ずかしいな、まあオマエにもらった名前だ、大事に使わせてもらうよ、あとは何やればいいんだっけ?」
「登録自体はおしまい、だけど少しだけ性能の確認をしてもいいかな不具合があるといろいろ大変だからさ。」
「まずは記憶管理だ、新しくなった世界で必要だと考えた知識をあらかじめキミに記録しておいた、まずはそこの確認をしたい」
「新しい世界?必要な知識?」
「うむ、今はサキュバスが魔王を務める淫乱魔物のいる世界だ、変なものに近づいて即レイポゥなんてならないために絶対に必要な知識だよ。」
「鏡みなよ」
「さっき見た、それじゃあ手始めに魔物娘に関する知識は?」
「全ての個体が雌、それに加えて非常に性欲が強い、個体によるが見境なく人を襲い仲間の魔物娘や伴侶にしようとするケースがある、しかし大半は一途なのでつがい、伴侶、彼氏を手に入れた場合、人に襲いかかることはない。」
「オーケーオーケーそんな感じ、じゃあこれは?」
「タケリタケ、ピポミケス属、菌類に寄生する菌類、宿主には毒を持つ者がいるため食用には推奨できないが、地方によっては食べられている仲間が存在する」
「これは?」
「タケリタケ、魔界特有の菌類で食べることができるが食べると急激に性欲が暴走し始め、手がつけられなくなる、以下省略」
「なんで省略するんだよ、まあいいけど....。」
「運動性能はそのうちわかるし装備を確認しようか、ちょっと軽く浮いてみてよ。」
「いや、軽く浮くって」
「脚部パーツ、風精霊の衣片の解説、足に軽く気を込めてみよう思ったより簡単にできるよ」
言われた通りにやると足元から淡い緑の光と風のたなびく音が聞こえたと思った瞬間、体が宙に浮く感覚に襲われる、
「どわっ!あぶねぇとこだった。」
「あと少しで尻もちつくとこだったね。」
「・・・立てたんならべつにそれでいいだろ。」
「さあ、わたしは暗闇の中で何をしているでしょう、そのバイザーは、天鼠の耳、言わずもがな暗視ゴーグルさ。」
「読めるはずもないところで本を読もうとしている。」
「あくまで読むフリだよ。」
些細な会話を交えつつ検査をしているとけたたましい音が鳴り響きリーベルの鞄の中から球体の魔道具が飛び出す
「ケイコク!ケイコク!テキ、ハツケン!テキ、ハツケン!」
「んお!まさか見つかっちゃないよね、」
球体は手のひらに乗ると壁に映像を映し出す
「あっちゃー、完全にこっちを見てるよ、なんでこんな僻地まで来てるの?.....何あのダウジング、魔力検知する魔道具?まったく迷惑だからやめてほしいもんだよ。」
「おい、どうするんだ見たところ人数もいるしまともな対抗手段は・・・」
顔を突き出してきたグロシアを見た瞬間、リーベルの口元がにやりと吊りあがる、その顔は見た瞬間ため息が出るほどにこの後に起こる出来事を容易に把握できる表情をしていた。
「喜びなよ、土煙が舞う瓦礫でテストする必要がなくなったんだよ?」
俺は今緊張している、幸か不幸かあの少女に頂いた魔法の振り子がなければこの廃墟の中にいる魔物の存在を見過ごしていただろう、見つけてしまった以上戦わなければならない、見習い勇者である俺の初めての魔物は一体どんな奴だろうか。
・・・・なるべくスライムくらいだといいんだが。
「肩の力を抜けアンドレ、その間抜けっぷりじゃメアリ―にまた引っ叩かれるぞ?」
「うぐっ、あれの話はやめてくれ、あんな暴力二度と味わいたくない。」
「何が暴力ですって?制裁の平手打ちと言いなさい。」
まずい用を足しに行ったんじゃ・・・オルタの話に乗るんじゃなかったいつ聞かれているか分かったもんじゃない、まさしく壁に耳あり障子にメアリーだ
「いま、失礼なこと考えてなかった?一発いっとく?」
「いやいやいやいや、そんなわけないだろ?なあオルタ!」
「さぁてどうだろうなぁ、勇者だって人間だ、いろいろ考えるさ。」
「オルタアアァァ!!」
「大体、この振り子なんて本当に信用できるの?そう!あの女ぜっっったいに怪しいわ!」
この振り子は元々先ほどであった冒険者の女性からもらったものだ、なんでも魔物を感知する魔道具だそうで魔物に会わぬように持ち歩いていた物らしい、といっても勇者のためならといって半場押しつけられたものなのだが。
ちなみにその時なぜかメアリーに引っ叩かれたまったく俺が一体何をしたというのだ。
「大体あの女「勇者のにいちゃん気いつけな、女ってのはあたいや娘ちゃん含めてコワイいきものなんやで?壁に耳あり障子に目あり、どこで何聞かれとるかわかったもんやないで?ほんじゃさいなら〜。」て何よ!わたしは勇者の幼馴染系女の子よ!失礼しちゃう!」
「メアリーなんでそんなに機嫌悪いの!?というか幼馴染系ってなにさ!」
「うるさいうるさいうるさいのよ!!」
「五月蝿いからそろそろ痴話喧嘩をやめてくれないかな。」
「あ、すみませんでした。」
「よろしい」
その場の空気が凍りつく、?、一体何が起きた、顔を恐る恐るあげるとそこには廃墟の扉を開けて出てきた二人の女性、いや、アンデットとゴーレムだった
・・・・俺は何をしているんだ!唐突だったとはいえ何普通に返事をしているんだ!やめろオルタ、メアリー!俺をそんな目で見るな!あとそこのゴーレムもだ!
「いああああぁ!」
「オ、落ち着けっあたしは何も見なかった、なっ、なっ?」
「俺の剣を抑えながら同情すんなぁー!」
「まったく!これだから新人は!」
メアリーが手を振り上げると辺りの物陰から兵士が現れる、教団兵だ、
「用意に越したことはないでしょ?」
「幼馴染系とはいかに。」
「オルタは黙って。」
「おっと、これは予想外、だけど昔ほど兵士の質はいいのかな?」
「魔物め!なめくさりおって、その腐った脳にワシら教団の団結力を刻み込んで・・・ぶふぉお!ゆ、勇者様!!」
「あたしのこと、忘れてねぇか?」
グロリアが団長と思われる男に勇者を投げつける、念のため怪我をしないように投げたが、うまくいったようだ。
「大丈夫か坊主、」
「うるさい!投げた本人が何言ってんだ!だいたいお前が馬鹿力の魔物なら俺が勇者である以上心配されるつもりはないし、負けるつもりもない!」
「そう頭ごなしに言われてもなぁ、あたしは見逃してくれればそれでいいだけであって・・」
―左腕パーツ、火蜥蜴の刀身について、対象にに向かって―
「たしかこう・・・・。」
―拳を突き付ける―
ドゴン
「かっこいいでしょー、高熱を纏った射突型ブレードさ、射出したままならなぎ払いにもなるよ!」
「風穴が空いているんだが。」
「そっそれで警告のつもりか魔物ぉぉお!」
「おっさん足震えてるぞ。」
「うおおおおお!」
「!」
アンドレは怯まずゴーレムに斬りかかるが右手ではじかれる
「お前の武器は全て魔界銀製、俺がどんなに弱くても生き物を傷つけれないお前に勝機はない!」
「おお、そういうことは詳しいんだな。」
「うちの兄貴が鉱夫でね、身近にいたら自然と知識が入るのさ、武器の材質とかで意外と役に立つのさ。」
「自慢したいのは分かったが身内の事を敵に話すのは得策じゃないな、人質に取られかねない、それに今のままでは坊主にも勝機はない、今のお前はただのチャンバラをしているだけだからな。」
斬撃をいなし続けていると悲鳴が聞こえてくるリーベルの方だ
「「なんだありゃ!?」」
「ひいいぃぃ!ちょっとオルタぁこの触手どうにかしなさいよ!」
「んなこと言ったって!この、離しやがれっ!」
「君達さあ、仮にも勇者の御守りだよね?魔法使いでもナイフくらい持ってるんじゃないかな。」
オルタは魔物の言葉に癪になりつつも自分に巻き付いた触手を斬り落とし、魔法でメアリーに巻き付いた分も弾き飛ばす。
「うわっぷ、血がかかっちまった、それにしてもこんな能力を持つ魔物、テンタクルやローパーくらいなもんだと思ったよ、気味が悪いったらありゃしない。」
「それはわたしに対する悪口かな?、望んで手に入れた力じゃないんだけどね...勇者のお供は顔に火傷を負ったり指が六本の状態で生まれた人間に同じように「気味が悪い」というのかな?」
二人をとらえていた触手はリーベルの肩から二対生えている、だがその触手はテンタクルのような植物製でなければローパーのようなものではない、それは先ほどまで彼女自身の腕の筋肉だったもので出来ており今の彼女の腕はスケルトンのように、骨がむき出しになっている
「知ったこっちゃない!魔物に慈悲はないからな!」
「わたしだって元々人間なのにな、」
「ふんっ悪魔に魂を売って魔物になったものはみな罪人だ!」
「いいかげん疲れただろ、もうやめようぜ?これ以上やったら身体壊しちまうぞ。」
「う・・っるさ・・・い。」
アンドレは満身創痍、勇者なりたての元一般市民である彼が魔物に勝てる見込みはどこにもない、それでも彼は諦めない、いずれこの魔物がどこかの町を、民を、子供たちを襲うかもしれない
「かた・・な・・・きゃ、いけ・・ないんだ。」
「仕方ないな」
―右腕装備、雷鳥の爪はその特徴的な二枚の金属板から電撃を発生できる、―
「があああああ!!」
「勇気と無謀を穿きちがえるな、しばらく眠ってろ。」
「し、しまった、アンドレ!!」
「よそ見厳禁だよ?」
オルタの首にボウガンが突き立てられる
「お前もだリーベル。」
「へ?」
「ちぃっ!」
彼女の後ろには今にも剣を振り下ろそうとするメアリーの姿があった
「あわ、ああああわあわ。」
「周りの兵士は逃げ出した、コイツら縛り上げるぞ。」
「!!、あ、うん!」
勇者御一行は三人仲よく瓦礫の柱にくくりつけた魔物がその場を離れればそのうち先ほどの教団兵たちが解放するだろう、魔物たちは勇者から拝借した地図と水晶の振り子をまじまじと眺めている
「で、これが例の品物か。」
「うん、すごくビンビンに反応してるよ。」
「やれやれ、面倒なもん持ってくれるぜ、起動していきなりこれだ、運が悪いったらありゃしない。」
「そうでもないよ?」
「はあ?」
「この魔道具わたしたち以外の魔物の強い魔力を感じる」
「それで?」
「これは魔物がこしらえたものさ、」
「じゃあなんで勇者御一行が持ってるんだ、しかも魔物側にメリットがない。」
「大方内気な魔物がむこうからやってくるように宝物とかに紛れさせたり、タヌキが押し付けるんだろうね、結界で簡単に防げるみたいだし。」
「そして何より」
振り子の水晶を掴むとグロリアに見せつける
「メイドオブ・ラムオブヒル?」
「そう、これはいわゆるメーカー品さ、これは幸先がいいよ。」
「そうか!魔物の町!」
「わたし達にとって安全な町を見つけられたわけだ。」
「うし!それじゃあ早速!」
「まって!」
「ど、どうした。」
「あのさ、わたしさっき不意を突かれたよね...。」
「・・・・・ああぁなるほど。」
「替えも忘れるなよ。」
「うん....。」
改造を済ませたゴーレムは手足を含む特徴的になった部分以外はまるでのっぺらぼうなデッサン人形のような姿をしている、彼女はそれに核となる素材を入れ、ゴーレムに関するいろはの記された魔術書を片手に起動の呪文を唱える。
「どうしようついに起動までさせちゃった、起きたら何しようか...。そうだ!まず初めに機能のチェックをしなきゃ、もし不具合が出てきたらキミに申し訳ないし..そう言えばどんな顔をしてキミに向き合えばいいのかな...鏡!鏡見てこよう、あれは拭けばまた使えるだろうし....。」
リッチはウキウキしながらもパタパタとあわただしく動いたのちに、廃棄された倉庫の中へと消えていった。
しばらくするとゴーレムが微振動をし始めるバイザーの取りつけられた頭には繊維の様なものが形作られ髪が、正面に彫が刻まれ人間の顔が出来上がる、
「危ない危ない、あと少しで見逃すとこだった。」
本格的に形を形成し始めたゴーレムに気づいて慌てて戻ってきたのだ、右手には拭きかけの鏡のカケラが握られている
「さてと....、どこまで進んで.....」
彼女の言葉は途中で止まり今はただ一点に集中した、ゴーレムの胸部が隆起し始めているのだ現在の魔物はみな娘になる、ゴーレムが女性型になり乳房が形成されることは何らおかしなことではない、だがこのリッチ、リーベルにとっては驚愕の事実が目の前に突きつけられていた。
「なんということだ...噂には聞いていたがこれほどとは....。」
彼女は今、自分の胸をさすっている、べつに世間でまな板といわれるほどの小ささなのではない、人並みには大きさを持っている、そう人並みには。
新しい魔王はサキュバス、根っからの女性のみの魔物であるその魔王の影響により、全ての魔物は女性になりサキュバス特有の、淫魔の特性を受け継いだのだ、ただ、リーベルは元から女性かつ誰もいない廃墟に一人住んでいた身、あまり変化に実感を持てず外からの情報も乏しかったゆえ知りえなかった。
「でかい..、これ以上のものが世界には溢れているのか...。」
大半の魔物が大きな乳房を持ち合わせていることを、外へ資材集めに行った際風のうわさに聞いたことがある、さらにミノタウロスの亜種に乳牛のようなものがいると、リーベルはそれを思いだしただけでも、身ぶるいをした。
「ああ恐ろしい.....っと、そろそろかな?」
ゴーレムの微振動がようやく治まる、体の形成が終わったようだ彼女は今か今かとゴーレムが目覚めるのを待っていた。
―体の形成を完了、主要思考回路を起動するよ―
―主要思考回路の起動を確認、不具合のチェックをするよ―
―人格兼記憶触媒に二十....%の損失を確認、記憶の欠損を確認、修復はできないね―
―現在出来る限りの環境を準備、起動するよ―
―おはよう―
ゴーレムのまぶたが上がり青紫の瞳が顔を覗く、
「おおおおお...!て、おかしいな確か瞳は青のはずだったんだけど...?まあいいや。」
「問おう。汝が私のマスターか?」
「おっと初期設定からだったね、そうだねわたしがキミのマスター、リーベルだよ、そうだ初めに言っておくけどお堅い上下関係は気にしなくていいから、友達のようにいてほしいな。」
「ふぅ、それじゃあ遠慮なく、今のあたしは名前がない、よかったら名づけてくれないか?」
「さっきと雰囲気違うんだねぇ、」
「これが素だ。」
「ふふ....知ってるさ。」「?」
「それよりも、まずはキミの名前を付けるところからだよね、そうだな....グロリア、なんてどうかな、栄光の意味を持ついい名前だよ。」
「栄光・・ね、なんかこっ恥ずかしいな、まあオマエにもらった名前だ、大事に使わせてもらうよ、あとは何やればいいんだっけ?」
「登録自体はおしまい、だけど少しだけ性能の確認をしてもいいかな不具合があるといろいろ大変だからさ。」
「まずは記憶管理だ、新しくなった世界で必要だと考えた知識をあらかじめキミに記録しておいた、まずはそこの確認をしたい」
「新しい世界?必要な知識?」
「うむ、今はサキュバスが魔王を務める淫乱魔物のいる世界だ、変なものに近づいて即レイポゥなんてならないために絶対に必要な知識だよ。」
「鏡みなよ」
「さっき見た、それじゃあ手始めに魔物娘に関する知識は?」
「全ての個体が雌、それに加えて非常に性欲が強い、個体によるが見境なく人を襲い仲間の魔物娘や伴侶にしようとするケースがある、しかし大半は一途なのでつがい、伴侶、彼氏を手に入れた場合、人に襲いかかることはない。」
「オーケーオーケーそんな感じ、じゃあこれは?」
「タケリタケ、ピポミケス属、菌類に寄生する菌類、宿主には毒を持つ者がいるため食用には推奨できないが、地方によっては食べられている仲間が存在する」
「これは?」
「タケリタケ、魔界特有の菌類で食べることができるが食べると急激に性欲が暴走し始め、手がつけられなくなる、以下省略」
「なんで省略するんだよ、まあいいけど....。」
「運動性能はそのうちわかるし装備を確認しようか、ちょっと軽く浮いてみてよ。」
「いや、軽く浮くって」
「脚部パーツ、風精霊の衣片の解説、足に軽く気を込めてみよう思ったより簡単にできるよ」
言われた通りにやると足元から淡い緑の光と風のたなびく音が聞こえたと思った瞬間、体が宙に浮く感覚に襲われる、
「どわっ!あぶねぇとこだった。」
「あと少しで尻もちつくとこだったね。」
「・・・立てたんならべつにそれでいいだろ。」
「さあ、わたしは暗闇の中で何をしているでしょう、そのバイザーは、天鼠の耳、言わずもがな暗視ゴーグルさ。」
「読めるはずもないところで本を読もうとしている。」
「あくまで読むフリだよ。」
些細な会話を交えつつ検査をしているとけたたましい音が鳴り響きリーベルの鞄の中から球体の魔道具が飛び出す
「ケイコク!ケイコク!テキ、ハツケン!テキ、ハツケン!」
「んお!まさか見つかっちゃないよね、」
球体は手のひらに乗ると壁に映像を映し出す
「あっちゃー、完全にこっちを見てるよ、なんでこんな僻地まで来てるの?.....何あのダウジング、魔力検知する魔道具?まったく迷惑だからやめてほしいもんだよ。」
「おい、どうするんだ見たところ人数もいるしまともな対抗手段は・・・」
顔を突き出してきたグロシアを見た瞬間、リーベルの口元がにやりと吊りあがる、その顔は見た瞬間ため息が出るほどにこの後に起こる出来事を容易に把握できる表情をしていた。
「喜びなよ、土煙が舞う瓦礫でテストする必要がなくなったんだよ?」
俺は今緊張している、幸か不幸かあの少女に頂いた魔法の振り子がなければこの廃墟の中にいる魔物の存在を見過ごしていただろう、見つけてしまった以上戦わなければならない、見習い勇者である俺の初めての魔物は一体どんな奴だろうか。
・・・・なるべくスライムくらいだといいんだが。
「肩の力を抜けアンドレ、その間抜けっぷりじゃメアリ―にまた引っ叩かれるぞ?」
「うぐっ、あれの話はやめてくれ、あんな暴力二度と味わいたくない。」
「何が暴力ですって?制裁の平手打ちと言いなさい。」
まずい用を足しに行ったんじゃ・・・オルタの話に乗るんじゃなかったいつ聞かれているか分かったもんじゃない、まさしく壁に耳あり障子にメアリーだ
「いま、失礼なこと考えてなかった?一発いっとく?」
「いやいやいやいや、そんなわけないだろ?なあオルタ!」
「さぁてどうだろうなぁ、勇者だって人間だ、いろいろ考えるさ。」
「オルタアアァァ!!」
「大体、この振り子なんて本当に信用できるの?そう!あの女ぜっっったいに怪しいわ!」
この振り子は元々先ほどであった冒険者の女性からもらったものだ、なんでも魔物を感知する魔道具だそうで魔物に会わぬように持ち歩いていた物らしい、といっても勇者のためならといって半場押しつけられたものなのだが。
ちなみにその時なぜかメアリーに引っ叩かれたまったく俺が一体何をしたというのだ。
「大体あの女「勇者のにいちゃん気いつけな、女ってのはあたいや娘ちゃん含めてコワイいきものなんやで?壁に耳あり障子に目あり、どこで何聞かれとるかわかったもんやないで?ほんじゃさいなら〜。」て何よ!わたしは勇者の幼馴染系女の子よ!失礼しちゃう!」
「メアリーなんでそんなに機嫌悪いの!?というか幼馴染系ってなにさ!」
「うるさいうるさいうるさいのよ!!」
「五月蝿いからそろそろ痴話喧嘩をやめてくれないかな。」
「あ、すみませんでした。」
「よろしい」
その場の空気が凍りつく、?、一体何が起きた、顔を恐る恐るあげるとそこには廃墟の扉を開けて出てきた二人の女性、いや、アンデットとゴーレムだった
・・・・俺は何をしているんだ!唐突だったとはいえ何普通に返事をしているんだ!やめろオルタ、メアリー!俺をそんな目で見るな!あとそこのゴーレムもだ!
「いああああぁ!」
「オ、落ち着けっあたしは何も見なかった、なっ、なっ?」
「俺の剣を抑えながら同情すんなぁー!」
「まったく!これだから新人は!」
メアリーが手を振り上げると辺りの物陰から兵士が現れる、教団兵だ、
「用意に越したことはないでしょ?」
「幼馴染系とはいかに。」
「オルタは黙って。」
「おっと、これは予想外、だけど昔ほど兵士の質はいいのかな?」
「魔物め!なめくさりおって、その腐った脳にワシら教団の団結力を刻み込んで・・・ぶふぉお!ゆ、勇者様!!」
「あたしのこと、忘れてねぇか?」
グロリアが団長と思われる男に勇者を投げつける、念のため怪我をしないように投げたが、うまくいったようだ。
「大丈夫か坊主、」
「うるさい!投げた本人が何言ってんだ!だいたいお前が馬鹿力の魔物なら俺が勇者である以上心配されるつもりはないし、負けるつもりもない!」
「そう頭ごなしに言われてもなぁ、あたしは見逃してくれればそれでいいだけであって・・」
―左腕パーツ、火蜥蜴の刀身について、対象にに向かって―
「たしかこう・・・・。」
―拳を突き付ける―
ドゴン
「かっこいいでしょー、高熱を纏った射突型ブレードさ、射出したままならなぎ払いにもなるよ!」
「風穴が空いているんだが。」
「そっそれで警告のつもりか魔物ぉぉお!」
「おっさん足震えてるぞ。」
「うおおおおお!」
「!」
アンドレは怯まずゴーレムに斬りかかるが右手ではじかれる
「お前の武器は全て魔界銀製、俺がどんなに弱くても生き物を傷つけれないお前に勝機はない!」
「おお、そういうことは詳しいんだな。」
「うちの兄貴が鉱夫でね、身近にいたら自然と知識が入るのさ、武器の材質とかで意外と役に立つのさ。」
「自慢したいのは分かったが身内の事を敵に話すのは得策じゃないな、人質に取られかねない、それに今のままでは坊主にも勝機はない、今のお前はただのチャンバラをしているだけだからな。」
斬撃をいなし続けていると悲鳴が聞こえてくるリーベルの方だ
「「なんだありゃ!?」」
「ひいいぃぃ!ちょっとオルタぁこの触手どうにかしなさいよ!」
「んなこと言ったって!この、離しやがれっ!」
「君達さあ、仮にも勇者の御守りだよね?魔法使いでもナイフくらい持ってるんじゃないかな。」
オルタは魔物の言葉に癪になりつつも自分に巻き付いた触手を斬り落とし、魔法でメアリーに巻き付いた分も弾き飛ばす。
「うわっぷ、血がかかっちまった、それにしてもこんな能力を持つ魔物、テンタクルやローパーくらいなもんだと思ったよ、気味が悪いったらありゃしない。」
「それはわたしに対する悪口かな?、望んで手に入れた力じゃないんだけどね...勇者のお供は顔に火傷を負ったり指が六本の状態で生まれた人間に同じように「気味が悪い」というのかな?」
二人をとらえていた触手はリーベルの肩から二対生えている、だがその触手はテンタクルのような植物製でなければローパーのようなものではない、それは先ほどまで彼女自身の腕の筋肉だったもので出来ており今の彼女の腕はスケルトンのように、骨がむき出しになっている
「知ったこっちゃない!魔物に慈悲はないからな!」
「わたしだって元々人間なのにな、」
「ふんっ悪魔に魂を売って魔物になったものはみな罪人だ!」
「いいかげん疲れただろ、もうやめようぜ?これ以上やったら身体壊しちまうぞ。」
「う・・っるさ・・・い。」
アンドレは満身創痍、勇者なりたての元一般市民である彼が魔物に勝てる見込みはどこにもない、それでも彼は諦めない、いずれこの魔物がどこかの町を、民を、子供たちを襲うかもしれない
「かた・・な・・・きゃ、いけ・・ないんだ。」
「仕方ないな」
―右腕装備、雷鳥の爪はその特徴的な二枚の金属板から電撃を発生できる、―
「があああああ!!」
「勇気と無謀を穿きちがえるな、しばらく眠ってろ。」
「し、しまった、アンドレ!!」
「よそ見厳禁だよ?」
オルタの首にボウガンが突き立てられる
「お前もだリーベル。」
「へ?」
「ちぃっ!」
彼女の後ろには今にも剣を振り下ろそうとするメアリーの姿があった
「あわ、ああああわあわ。」
「周りの兵士は逃げ出した、コイツら縛り上げるぞ。」
「!!、あ、うん!」
勇者御一行は三人仲よく瓦礫の柱にくくりつけた魔物がその場を離れればそのうち先ほどの教団兵たちが解放するだろう、魔物たちは勇者から拝借した地図と水晶の振り子をまじまじと眺めている
「で、これが例の品物か。」
「うん、すごくビンビンに反応してるよ。」
「やれやれ、面倒なもん持ってくれるぜ、起動していきなりこれだ、運が悪いったらありゃしない。」
「そうでもないよ?」
「はあ?」
「この魔道具わたしたち以外の魔物の強い魔力を感じる」
「それで?」
「これは魔物がこしらえたものさ、」
「じゃあなんで勇者御一行が持ってるんだ、しかも魔物側にメリットがない。」
「大方内気な魔物がむこうからやってくるように宝物とかに紛れさせたり、タヌキが押し付けるんだろうね、結界で簡単に防げるみたいだし。」
「そして何より」
振り子の水晶を掴むとグロリアに見せつける
「メイドオブ・ラムオブヒル?」
「そう、これはいわゆるメーカー品さ、これは幸先がいいよ。」
「そうか!魔物の町!」
「わたし達にとって安全な町を見つけられたわけだ。」
「うし!それじゃあ早速!」
「まって!」
「ど、どうした。」
「あのさ、わたしさっき不意を突かれたよね...。」
「・・・・・ああぁなるほど。」
「替えも忘れるなよ。」
「うん....。」
15/05/09 12:03更新 / B,バス
戻る
次へ