呪いの屋敷ハウス
東小野夏樹は悪霊に取り憑かれている。
科学の発達した現代ではにわかには信じがたい事だが、紛れもない事実であった。
補足しておくと、夏樹はただの大学生である。特別な能力や霊感どころか、幽霊すら見たこともないし、そもそもオカルトにもさほど興味もない。
そんな彼が、不可解な怪異に頭を悩まされ始めたのは大学春休み明けのこと。音信不通となった友人を探して、地元でも有名な幽霊屋敷を訪れてからだ。どうやら件の幽霊屋敷を見に行くと某SNSに呟いたっきり行方が分からなくなっているらしい。大学どころか、友人の実家を訪ねても詳細は不明。逆に友人の両親から「何か分かったら教えてくれ」と頼まれる始末で、友人というよりかは友人の両親のため、夏樹はついにその幽霊屋敷へ行くことに決めたのだ。
当然、そこに本人がいるとは思ってない。精々外からちょっと覗く程度で、何か見つかれば、いや見つからなくとも友人の両親に知らせるべきだろうと。そう考えていた。
が、最寄りの駅から歩いて、静かな住宅街。その一角にひっそりと佇む屋敷を見たとき、夏樹は後悔した。
外見はただの洋風な一軒家である。白い外壁とは対象的に庭は荒れ放題で、長らく人の住んでいない場所だと分かる。だが、それでも言葉に出来ない不気味さが、その屋敷にはあった。まるで壁一枚向こうに、正体不明の何かが潜んでいるような気がして知らず知らずのうちに鳥肌の立った腕を抱える。
もう帰ろう
中に入るどころか遠目で見ただけで、夏樹はそう考えた。
頭の隅で友人のことが浮かぶが、余計な考えを振り払う。普通の人間なら、あんな気味の悪い場所には近づかない。
だからいるはずもない。
そう頭の中で言い訳して踵を返そうと、
「……………っ!?」
まるで蛇に睨まれた蛙のように、夏樹の身体が硬直した。
遠く向こうに見える屋敷。
そのニ階にある窓に、人の背格好によく似た白い影を見た気がした。ぼんやりと狭い枠の中に見える何か。遠くてはっきり見えないのに、まるでこっちをじっと見つめている気がして、
確かに、すぅ、と窓から家の中へと消えていった。
「ーーーーー〜〜っっ!!!」
気がつけば、夏樹は一人暮らししているアパートの玄関で蹲っていた。
身体中が汗だらけで、脚と胸が苦しい。どうやら全速力で帰ってきたらしいが、その間の記憶はなく、思い返すのはあの無気味な白い影だけ。
「はっ、はっ、はっ、は、はは、はっ、ははは…」
荒い息に混じって、乾いた笑いが止まらない。
あれは何だったのだろうかと思う反面、考えれば考えるほど頭の中が真っ黒な暗闇に沈んでいく気がする。運動と興奮のせいで身体は暑いのに、体の芯から震えが止まらない。自分ではどうしようもない感覚に、夏樹は玄関で暫く蹲ったまま動けなかった。
そしてその日から、夏樹は悪霊に取り憑かれた。
信じられないが、そうとしか考えられない。夏樹に特別な能力や霊感等はない。幽霊を見たこともないし、そもそもオカルトにもさほど興味もなかった。
だがあの屋敷の影を見てからというもの、得体のしれない何かが、確かに夏樹の傍にいて離れないのだ。
ーーーまもなく、……電車が到着します…
「………?」
最初は、頭の後ろを何かが触れた程度の違和感だった。
場所は大学帰りの駅のホーム。恐らく気の所為だろうが、虫だったら嫌だなと手ぐしで髪の毛を整える。
本当にそれだけのことだ。数秒後には忘れる些細な出来事。だがそれが二度、三度と続いた。
それからハッキリと『触られている』と気付いたのは数日後だった。
「…………っ」
ガタガタガタガタガタガタ
身体中が震える。外は春の陽気で暖かいぐらいなのに、夏樹は真っ暗な部屋の中で、隠れるように布団をかぶっていた。端から見れば滑稽な事この上ないが、本人は至って真剣である。
なんせ、幽霊から隠れる方法なんて知らないのだから。
初めは頭や肩、手、指、足。生活でもよく使う場所が殆どで、さほど気にしていなかった。友人が行方不明となったこともあるし、無意識に神経を張り詰めていたのかもしれないのだろうと。それがいつからか、背中や首、腰、太腿、果ては尻や股間にまで。普段なら触られないであろう部分に、確かな感触があるのだ。振り向いても見えず、腕を伸ばしても触れないのに、まるで蛇のように首や身体に纏わりついてくる。
それが日毎に回数が増え、場所も選ばなくなっていく。
いや、それだけならまだしも、
「………っ、ぅっ……くっ……」
日中にも関わらず灯りのないアパートの一室。全ての出入り口は施錠され、更に外界との繋がりを絶とうと夏樹は頭から布団を被っている。
が、足りない。いくら鍵をかけようと、どこに隠れようと、じっとこっちを見ている誰かの視線を感じるのだ。
それも、目と鼻の先ほどの近くで。
ぎし
「…ひっ……」
床板が軋む。
ぎし、ぎし
規則正しく、まるで誰か歩いているように。
「………っ、…っ!!」
夏樹は咄嗟に漏れそうになる悲鳴を押し殺した。
なんせ布団の中とはいえ部屋の中にいるのだ。逃げるなんて上等な事は考えてない。ただどうしていいか分からないまま、心の底から来ないでくれと願い続けて、
ーーーふうぅ
「ひぃぁっ…!」
突如、生温い風が夏樹の耳の奥まで入り込んだ。
緊張から弛緩した喉奥から、短い悲鳴が布団のなかに吸い込まれていく。
ーーーくすくすくす
目に見えず、触れられない何か。
『それ』は震える夏樹を抱き締めるように、布団の上から覆い被さる。押さえつけるような強引さはない。
何故なら『それ』の目的は唯一つ。
盲目的にタカシの身体を愛撫することだけだからだ。
「……ひっ、…ぃ…うぅ……」
つぃ、と首から鎖骨をなぞられた感覚に、顔が跳ね上がった。続いて細い指で内腿を撫でられ、胸をくすぐられたかと思えば、耳の中をぬるりとした何かが這い回る。
ねっとりとした、相手の反応を楽しむような悪戯。まるで幾人に囲まれて身体を好き放題される感覚に、必死で身を捩るしかない。
「ぐ、…っ、……だ、ぁ……やめっ……ぃっ!」
無駄だと分かっていても、静止の声は抑えきれない。
『それ』が時間と場所を問わなくなってから、夏樹は部屋から出ることが出来なくなった。例えば通学途中の電車の中や、大学の講義中。そういった公衆の面前でも、『それ』には関係ない。むしろ積極的に夏樹の反応を楽しんでいる節すらある。
なら、まだ部屋に引き籠もるほうがましだ。
だが、あくまでましなだけ。『それ』は部屋の中でも変わらず夏樹の全身を嫐り続ける。
「…ぁ、がっ!…ひ、ぃぃ」
コロコロと転がされていた乳首を急に抓まれて、優しく四つん這いに起こされる。手を振り払おうにも、見えもしなければ触れもしない。理解を超えた存在に、夏樹は耐えるしかなかった。
……気休めにもならないが、今の所、『それ』は危害を加えるつもりはないらしい。もはや外出すらままならないほど日常的に悪戯されているのに、これまで痛めつけるとか、傷つくようなことは一切無かった。害意というより、むしろ子供のような無邪気さすら感じられる。
なら下手に抵抗するより、早く諦めてもらったほうがいいのではないか。子供らしさを逆手に、自分は取るに足らない獲物だと飽きてもらうほうがいいのではないか。
寺や神社に相談しようにも、身体をまさぐられて困ってるとも言えず、夏樹はひたすら嵐が過ぎ去るのを待った。部屋に籠城する考えも、数日で終わるに済むだろうと。
最も、そんな甘い考えは『それ』を増長させるだけだったが。
「…あううぅぅっ………」
足首と土踏まず、それから指の間にも、湿った感触。
普通なら忌避される場所にも、丹念に。くすぐったさ一歩手前の肌が粟立つ快感に、夏樹は発狂しそうだった。
「……ぉ」
くぐもった夏樹の声。
カクカクと揺れる腰の動きに四苦八苦しながら、両手を頭の横につく。そして嗚咽交じりに悲鳴ではない、確かに意味のある言葉を伝えようとしていた。
「ぉ、ぇ……おぇが……ひぃっ」
ーーーくすくすくす
『それ』の責めが激しくなる。明らかに夏樹の言いたいことを分かった上で、あえて邪魔をするという嗜虐心だった。
「…ひ、ぃ、おぇ、…がはぁっ」
肋骨と臍を撫で回され、睾丸と菊門を舌が優しくねぶる。
「ぉ…ぃう、…ぉえ、おねが…じま…ううぅぅ……!」
額が床につくほど夏樹は頭を下げる。そして一心不乱に、心の底から乞い願う。
「いかへぇて、くださいいぃぃ……おぇがい、ひまううぅぅ…っ!」
汗と涙と鼻水で顔をベタベタにしながら、夏樹は幽霊に催促を願った。何も無い空間に頭を下げ続けて絶叫する。正気を疑うような光景だが、事実、夏樹は半分発狂していた。
『それ』に害意が無いのは嫌というほど分かっていた。傷つけるつもりも、痛めつけるつもりもない。
ただ、極限まで性的に焦らして、楽しんでいるだけなのだと。
触り、撫でり、つまみ、舐めて、しゃぶる。散々身体を弄ばれ、今の夏樹は全身が性感帯となるほど開発され尽くした。しかしどんなに望んでも、『それ』は射精を許さなかった。身体の表層だけで、夏樹の陰茎にも触れようとしない。一人で処理しようにも、その度に『それ』の苛烈な愛撫で邪魔をされる。
決して解放させて貰えない寸止め地獄。すでに睾丸はマグマのような衝動で一回り大きくなって、陰茎も血管が浮き出したままが普通となってしまった。
もう夏樹は我慢の限界だった。
これ以上は本当に狂ってしまう。
人の尊厳もかなぐり捨てて、射精させてくれとだけ上位者に希った。
くすくすくす………
それが通じたのか否か。夏樹以外は誰もいないはずの部屋に、笑い声が響く。水晶のような若い女の声。なのに何故かその中は狂気じみた執着で満たされているのがはっきりと分かって、
ーーーやくそく、できる?
「…えっ?」
気づけば、夏樹は仰向きで天井を見ていた。先程まで床に額をこすりつけるほど頭を下げていたのに。
まるで合気の達人に投げられたと思うほど、自然に体勢を変えられた。
その上で、一人の少女が馬乗りになって顔を覗き込んでいる。まだ年端も行かない、蕾から咲く途中の可愛らしい女の子。平均より背の高い夏樹とは比べるのも馬鹿らしい程の身長差で、人形のようなドレスが良く似合っていた。
ーーーおりこうさんにするって
いや、本当に少女だろうか?
ドレスにしては身体が透けて雌を強調させる煽情的なデザイン。そこから溢れる肢体は年不相応に肉感的で、少女の純真さと娼婦の妖艶さが矛盾して同居している。
何より、その瞳。光すら逃さないとばかりの闇色は明らかに狂喜と情欲に濡れていて、目の前の夏樹しか映していなかった。
ーーーずっと、わたしだけをみて
そっ、と夏樹の両頬に手が添えられる。
ーーーずっと、わたしのそばにいてくれる
少女の顔が降りる。
あるいは獲物を狙う亡霊か、はたまた男を誘う娼婦か。
ーーーわたしだけのだんなさまに、なるって
視界が見目麗しい少女に支配され、目が離せなくなる。
「…ぁ、…ぅ……おれ、は……」
あまりの出来事に言葉が出てこない。
魚のように口をパクパクしながら、意味の無い音だけが出てくる夏樹を見て、少女は微笑みながら耳元に顔を寄せた。
そして。
れろぉ♥
「ひっ」
耳を一舐めされた。
間違いなく、それは何度も夏樹の身体を嬲ったあの感覚で、
「…っ、な、ぁ、なるっ……なります、なりますっ…!」
餌を貰う犬のように、夏樹は反射的に叫んでいた。
叫んでしまった。
くす……
耳元にくすぐったい風を感じる。
くすくす…………
くすくすくす………
少女が笑う。それが夏樹にとって正しい答えだったのかは分からない。だが少女は待っていたのだろう。
ーーーくすくす……
ーーーくふ、くふふ
ーーーくふふひひひひひひひひ
暗い水底から漏れ出るような音。
それは笑い声と呼ぶには、あまりにもドロドロとした感情が込められていて、
ガシャンっ!
「…っ、ひ!」
顔を俯かせたまま肩を震わす少女の後ろから、鎖が伸びる。それが生き物のように夏樹に纏わりつき、雁字搦めとなって身動きを封じた。
突然の出来事に、夏樹の喉が引き攣る。それが悲鳴に変わる寸前で、
んぅちゅ♥
「!?」
少女の唇が夏樹の口を塞いだ。
瑞々しいプルリとした柔らかい感触。
まだ固さの残るそれは熟れる前の果実を連想させ、咄嗟に顔を背けようとしたが、
ぢゅる、んじゅ♥ぐちゅぢゅる、じゅるるるっ♥
ぷるりとした唇から割り込んできた軟体が、夏樹を蹂躙した。甘い蜜を纏った熱いそれ。少女の舌が口腔内に侵入して、びちゃびちゃと淫らな音を立てながら暴れまわる。それは子供のお遊びのような幼稚なものでなく、剥き出しの情欲のまま快楽を貪る獣のキスだ。
「んはぁっ…んぁ♥」
ようやく少女の唇が離れる。
その間に夏樹は酸素を取り込もうと息をつくが、すぐにまた唇を塞がれ、更に舌が奥まで入り込んでくる。
舌裏や内頬に溜まっていた唾液を舐めとられ、代わりとばかりに少女の甘い唾液を送り込まれる。
ぶちゅぶちゅと口筋から透明な液を溢しながら、果実ともミルクともつかない甘い香りに肺を満たされ、夏樹の目が空中を彷徨う。
「んんんっ!?」
だが、少女は止まらない。
するりと弛緩した夏樹の胸に手を滑らせて、固く主張する突起を摘み、引っ張る。
それだけで夏樹は電流を浴びたように跳ね上がる。
ーーーくふ♥
「まっ、…あっ!あ!、あっ!?あぃっ!!」
続けて、緩急をつけながら二度、三度。
気が狂うほど焦らされ続けた日々で、夏樹の乳首は敏感な性感帯となってしまった。胸から始まり、乳輪から乳首へと。弱火でじっくりと煮込むように。時間をかけて、快楽を生む場所だと刷り込まれてしまった。
そこを、無慈悲に責められる。痛みスレスレの強い快楽が頭と腰に貯まり、また悲鳴を上げそうになるが、
「ぅあんんぶ…っ!」
はぁんむ♥ぐちゅじゅる♥ちゅ♥れるれるんふぅ♥
少女のキス地獄が再開した。
時に固く尖らせた舌が歯茎をなぞり、時に柔らかく舌ベラに絡みつく。互いの唾液を交換する度に頭の中が卑猥な水音が反響して、何も考えられない。
「んん!んんぅ、ん!ん!んうぅ!!」
勿論、乳首責めも同時である。
今度は弦楽器のようにクリクリと指先で弾かれ、鋭い快感が連続して夏樹を追い込み、
「んんんんぅうあああっっ!!」
絶叫とともに夏樹の身体が震えた。
目の前が明滅し、身体が浮いたような感覚。
少女を振り落とさんばかりに身体が仰け反り、足の指にまで力が入る。
それは一週間以上、寸止め地獄から開放されて味わう絶頂だった。
ーーーくふ、くふふひひひひひ
それを、少女は喜ぶ。
魔物娘にしか分からないが、今の夏樹の部屋には濃厚な精の気配が満ちていた。だが肝心の精は見当たらない。
視線を下げれば、凶悪なまでに屹立した夏樹の陰茎が、ビクビクと痙攣して透明な先走り汁を流しているだけ。
所謂、脳イキともドライオーガズムとも呼ばれる絶頂だ。射精を伴わない、擬似的な絶頂。その気持ち良さは通常の射精と変わらないと言われているが、
ーーーきもちいい?
「…………ぁ……」
布団の上で、口をだらしなく開いたまま宙を見る夏樹。半分意識の飛んだ状態で、返事どころか、もしかしたら自分が射精出来ぬまま絶頂したと気づいていないのかもしれない。
ーーーきもちいい?
「………ぁ……、……」
それでも少女は聞き続ける。
夏樹が経験した感覚が、確かに快楽であると刷り込むように。
ーーーきもちいい?
「…ぁ……ぅ……」
ゆっくりと、夏樹の顔が上下した。
まだ意識は戻っていない。耳から入る言葉に、反射的に答えただけ。
ーーーじゃあ、もっときもちよくなりたい?
「……ぅ……っ、ぁ……」
続く質問に、夏樹は応えなかった。頷けばどうなるか、無意識に感じ取っていたのかもしれない。
ーーーもっともっと、ずぅっときもちよくなりたいよね?
再度、少女からの質問。
タカシは応えない。それがどういう意味なのかさえ、分かっていないのだろう。
ーーーきもちよくなりたいって、いって
「…ぁ…っ」
耳元で囁く上位者の命令に、また軽い空絶頂に達しながらタカシは首を縦に振った。
ーーーじゃあ、きもちよくしてあげる
ふっ、と少女の体温が離れた。
ほんの一瞬の自由。見逃されたのか、あるいは更に自分という檻の深くに閉じ込めるためか。
ぐちゅ♥
それは騎乗位で、口づけのようにタカシの陰茎の先端に当たる熱く蕩けた少女の股間を見れば一目瞭然だろう。
ーーーんふぁああああ♥♥♥
「…っ、んぐぅああああ!?」
そのあまりの快感で、少女と夏樹の悲鳴が重なった。
迷う素振りすら無く腰を落とした少女。ただでさえ小柄な体躯が、信じ難いことに異常なほど張りつめた夏樹の怒張を飲み込んでしまう。
こつん
ーーーきゃふ♥
先端が、肉の壁を小突いた。
膣奥、子宮口。少女の行き止まりに当たりながら、
ーーーっ♥♥
ぐちゃり、と少女が変質した。
そうとしかいえない。外観は何も変わっていない。ただ、初めはキツく締め付けるだけだった少女の秘所。しこしことした固さの残る膣が、唐突に、粘液を潤滑油に、媚肉として怒張に絡みついてきたのだ。
だが、最も深刻だったのは夏樹では無い。
っ!?♥♥っっ!?!?♥♥♥
腰を下ろしたはずの少女は、必死に手で口を塞いでいる。そうしなければあまりの快楽で悲鳴を上げてしまいそうだからだ。
な、なに♥これぇ♥
ブルブルと腰の震えが止まらない。破瓜の痛みはほんの一瞬で、圧迫感や異物感はそのまま濁流のような快感に流されてしまった。
はっ、ぐ♥き、ぎもぢ♥♥
想定外の快楽に叫びそうなるのを必死に押し止めた。
だって、ここまで全部上手く行っていたんだから。親切な皆の力を借りて、好みの男性を見つけて。でも実体化するだけの魔力がないから、いきなり押し倒すんじゃなく、ゆっくりとゆっくりと責めて身も心も堕とし尽くす。これが正しかったはずだ。
待ってても白馬の王子様は来なかった。先に病気の方が悪くなってしまった。だから今度こそ、絶対に私だけの王子様を見つける。ううん、捕まえてみせる。
ぅっぐ♥だ、め♥ぉっ♥ほぶっ♥お、おぢづい…♥♥
落ち着いて。落ち着いて。
とりあえず、今の体勢を変えないとダメ。
じっとしてるのに、頭がチカチカしてる。
おちんちんがぴったり気持ち良すぎるところにハマっちゃってる。
このままだと、わたしが先に堕ちちゃう。
…ゆっくり♥…ゆっ♥ぉぅ♥ぐり♥
十秒で一ミリ。
亀のような、少女はそれぐらいのペースで動こうとして、
「っ、あぐ…っあっ!!」
それが結果的にギリギリで耐えていた夏樹の背中を押してしまった。
そもそも今まで耐えようとして耐えていた訳では無い。散々寸止めされ続けて、偽りの絶頂のあとに、少女の魔壺をおみまいされた。
これまで射精しなかったのは、単に許容外の快楽に身体が反応出来なかっただけで、奇跡的に糸屑一本でバランスを保っていた。それが、少女の不用意な身動ぎと、腹筋を通した膣の動きで崩壊しただけだった。
だが、その結果は途轍もない。己の欲望を、未発達の少女の最奥に流し込む。一般的な性観念を持っていた夏樹の頭の中で、何かが壊れる音がした。それは限界寸前だった堤防が壊された音か。あるいは人ではありえない快楽に価値観が壊れたのか。
いずれにせよ、これまでの東小野夏樹という人物に、致命的な傷が入ったのは確かだった。
最も、壊れたのは夏樹だけではないが。
ーーー!?♥♥♥!?!♥♥
溶けた鉄を流し込まれた。
そう錯覚するほど下腹部の奥から衝撃が走る。
それが徐々に股関節から背骨を伝って首まで上り、
ーーーぴ♥♥♥
ぷつん、と少女の頭を焼き切った。
「おっ♥んおおおおおおお!!!♥♥♥」
顎が跳ね上がる少女の口から、悲鳴があがる。それは可憐な見た目にはそぐわない腹底から押し出された低いもので、その間もガクガクと身体が痙攣し続ける。
「はがっ♥がっ♥あがぁ!?♥♥ああお!!♥あおおおおお!!??♥♥♥」
少女にとって不運だったのか、あるいは幸運だったのか。
我を忘れるほどの大きく深い絶頂。
その間も震え続ける身体のせいで、新しい快楽が生まれ、絶頂が終わる前に次の絶頂が訪れる。
(ぉご♥な、に♥ごれっ♥いぎ、できなーーっ♥♥)
また絶頂。その度に股間から透明な液体を吹き出る。ぷちぷちと頭の中で弾ける光に、白目をむいてだらしなく顔を蕩かせてしまう。
それほど、寸止めされ続けて熟成された濃縮精液は、初めて陰茎を受け入れたばかりの魔物娘にとってあまりにも強すぎた。
「ほっ♥ほっ♥おおおおあああ♥♥♥」
おまけに雄の本能なのか、より深い所で射精しようと下から夏樹は腰をカクつかせる。元々奥まで届いていた怒張は、ごじゅごじゅと子宮口を細かく小突いた。
勿論、その間も射精は止まらない。
絶頂の最中に、より強い快楽を与えられ少女は絶叫した。
「ああー!♥ああー!ああああああーー!!♥♥」
気持ち良すぎる。いや、もうそんな話ではない。
全身の感覚が快楽神経に置き換わり、それが全て最大出力のままになった。それだけならまだいい。
(いひっ♥あっ♥あだま、おがじぐ♥♥)
だって、ただ気持ち良いだけで存在意義が変わるなんて、あり得ない。
染み込んでいるのか、あるいは侵食しているのか。下腹からじんわりと熱が広がるたびに、真っ黒な自分がどんどん白く変わるようで。
「ーーーお"っ♥♥♥♥」
図らずも夏樹に似た恐怖を抱きながら、少女は意識を失った。
「……っ、はぁっ!…はぁっ、はぁっ、っはぁ…」
それからどのくらいたったのだろうか。
魂まで吸い出すような射精を終えて、夏樹は荒く息をついていた。倦怠感で、全身が重い。見れば少女の小さな蜜壺に収まりきれなかった夥しい白濁液が、むせ返るほどの精臭とともに布団の上で水溜りとなっている。
「はぁっ、はぁっ、…はぁ、…はぁ…はぁ…」
少女はその水溜りの中で、蛙のように大きく足を開いたまま気絶していた。時折痙攣してるので、死んではいないようだ。最も、幽霊に生死を考えるのもおかしな話ではあるが。
(本当に…幽霊、なのか…?)
信じられない思いで夏樹は少女を見下ろしていた。
どう見ても普通の華奢な女の子にしか見えない。あの異常な経験や汚濁まみれの身体から伸びる鎖が無ければ、とても信じられない。
ジャララララ……
「…ぁ」
身体を起き上がらせると、纏わりついていた鎖が力無く垂れ下がった。あれ程強固だったのに、簡単に手で解けてしまう。
(この子が弱ったから…なのか?)
鎖は少女から伸びている。
少女が鎖の源なら、有り得そうな話だ。
聞こうにも、当の本人はまだ夢の中だが。
(……今なら…もしかして……)
じっと、少女を見下ろしたまま夏樹の脳裏に浮かんだ考え。
鎖のせいでも、金縛りでもない。
(………………………………)
人の限界を超えて出したというのに、未だ股間の怒張は少しも衰えず、ジリジリと鈍痛を伴っている。
「……………っ」
気づけば、夏樹は少女の腰を抱えていた。
軽い。触れれば折れてしまいそうな身体は、驚くほど滑らかに吸い付いてくる。
あれほど気になった饐えた臭いも、少女の全身から出るミルクのような香りと混ざり気にならない。むしろ鼻腔奥の脳髄を刺激する。
「………んぁ……ふぇ…?」
ようやく気づいたのか。
その小さな身体に覆いかぶされ、怒張を白濁まみれの割れ目をトロンとした目で追いながら、
ぐじゅん♥
「んぇあああああああ♥♥」
勢い良く突き上げられた怒張に、再び少女はむせび泣いた。
「んあああ♥なんで♥なんでぇああああああ♥」
目覚めた少女が混乱するのも無理はない。
遥かに大柄に成人男性にの下で押し潰される。
しかもまだイッたばかりで敏感な膣内を穿り返されながら。
「くそっ……くそ、…君がっ…」
一方で、夏樹は一心不乱に腰を叩き付けていた。
パンパンと肉のぶつかる度に、精液が泡立って掻き出される音と雌の嬌声が響く。
「君が…っ、き、お、お前がっ、悪いんだからな…!」
血走った目で独り言のように犯している相手を攻める。
その様子には、遠慮も何も無い。
「んぉ♥おっ♥ごべ、んな♥ぉっ♥ごべんな、さい♥わるいごで♥ごべんなざ♥」
荒々しい雄のピストンを受け入れながら、謝り続ける少女の顔には笑みが浮かんでいた。
思い返せば、生前は人形のように扱われただけで、叱られたことも、真剣に向き合ったことも、これほど激しく求められた経験もない。
謝りたい気持ちは本当なのに、求められて嬉しい気持ちと、それ以上に大好きという気持ちが溢れて口元がニヤけてしまうのを抑えきれなくて。
「こ、のっ…!」
「んお"お"お"おおおお♥♥♥♥」
ごちゅん、と最奥に亀頭がぶつかり、悲鳴のような嬌声が上がった。あるいは産声か。念願の恋人を手に入れた喜び、雌としての本能、股間から一直線に脳天まで走る快楽の電流。それらが少女を、亡霊から一匹の魔物娘へと変えていた。
「おっ♥ごべんな、ざ♥おっ♥」
最奥に中出しされて、うわ言のように謝り続ける。
もう絶対に離れたりしたいと手と、足まで絡ませたまま、少女は幸せそうに受け止め続けた。
「ぅ、…あ…」
あれからどれほど経っただろうか。
軽い頭痛と酷い倦怠感と共に、夏樹は目覚めた。
隣には件の少女が、抱きつくように寝ている。
その寝顔はまさに天使のようだ。気絶する前の、尻を叩くだけでイったり、オナホのように乱暴に扱われて潮を吹く姿など誰が想像できようか。
(なんていうか……信じられないよな)
ぽりぽりと夏樹は頭を掻いた。
友人のために幽霊屋敷に行ったはずが、心霊現象に悩まされ、挙げ句こんな美少女と一夜を共にしてしまった。
あの時は調子に乗って全面屈服謝罪させたり、奴隷宣言させたりしまったが、よく考えればとんでもないことをしたのではないか。
(…取り敢えず、水でも飲むか)
今更慌てても仕方がない。
そう開き直るほど落ち着けるのは、もう自分もこの子にどっぷり嵌まったと認識があるからだが、
ガチャン
「……え?」
立ち上がろうとした夏樹を、鉄格子が阻んだ。
「なんだ……これ」
見慣れない、分厚い鉄の檻。
良く見れば、それは青白い鬼火を纏いながら、夏樹と少女を取り囲むように広がっている。
「んぁ、……おにぃさま?」
ガチャガチャと檻を揺らす音に、少女も起きてきた。目を擦り、昨夜の名残で兄と呼ぶことになった夏樹を不思議そうに見つめている。
「え、いや、気付いたら閉じ込められてて、出られないみたいなんだ」
手では一向に緩む気配がない。
仕方なく少女に出してもらうようお願いしようとして、
「? どうして出なくちゃいけないの?」
本気で分からないと、少女は首を傾げた。
「どうしてって……」
「おにぃさま、約束してくれたよね?ずっと一緒にいてくれるって、ずっと私だけを見てくれるって」
少女は笑う。
「じゃあ、もうお外なんかに出なくてもいいよね?」
「………っ」
夏樹は絶句した。
天使のように可憐で、一途で、淫乱な少女。
その瞳が闇色に塗りつぶされていたことに。
「昨日はすっごく気持ちよかったら、またしよ?それともおにぃさまが虐められる方がいい?どっちでもいいよ?また上手に虐めてあげるし、今度は道具も使ってあげる。泣き叫んでも止めてあげないから。それとも他の服でする?色んな洋服もあるから、お着替えするのも楽しそう。他にもね、色んな玩具もらったんだ!これなんてほら、気持ちよくなる魔法の玩具だって!全部おにぃさまのために揃えたんだよ?
絶対絶対、外なんかより気持ち良くていい事ばかりだから、だから」
ーーーねぇ
「次は何して遊ぶ?」
科学の発達した現代ではにわかには信じがたい事だが、紛れもない事実であった。
補足しておくと、夏樹はただの大学生である。特別な能力や霊感どころか、幽霊すら見たこともないし、そもそもオカルトにもさほど興味もない。
そんな彼が、不可解な怪異に頭を悩まされ始めたのは大学春休み明けのこと。音信不通となった友人を探して、地元でも有名な幽霊屋敷を訪れてからだ。どうやら件の幽霊屋敷を見に行くと某SNSに呟いたっきり行方が分からなくなっているらしい。大学どころか、友人の実家を訪ねても詳細は不明。逆に友人の両親から「何か分かったら教えてくれ」と頼まれる始末で、友人というよりかは友人の両親のため、夏樹はついにその幽霊屋敷へ行くことに決めたのだ。
当然、そこに本人がいるとは思ってない。精々外からちょっと覗く程度で、何か見つかれば、いや見つからなくとも友人の両親に知らせるべきだろうと。そう考えていた。
が、最寄りの駅から歩いて、静かな住宅街。その一角にひっそりと佇む屋敷を見たとき、夏樹は後悔した。
外見はただの洋風な一軒家である。白い外壁とは対象的に庭は荒れ放題で、長らく人の住んでいない場所だと分かる。だが、それでも言葉に出来ない不気味さが、その屋敷にはあった。まるで壁一枚向こうに、正体不明の何かが潜んでいるような気がして知らず知らずのうちに鳥肌の立った腕を抱える。
もう帰ろう
中に入るどころか遠目で見ただけで、夏樹はそう考えた。
頭の隅で友人のことが浮かぶが、余計な考えを振り払う。普通の人間なら、あんな気味の悪い場所には近づかない。
だからいるはずもない。
そう頭の中で言い訳して踵を返そうと、
「……………っ!?」
まるで蛇に睨まれた蛙のように、夏樹の身体が硬直した。
遠く向こうに見える屋敷。
そのニ階にある窓に、人の背格好によく似た白い影を見た気がした。ぼんやりと狭い枠の中に見える何か。遠くてはっきり見えないのに、まるでこっちをじっと見つめている気がして、
確かに、すぅ、と窓から家の中へと消えていった。
「ーーーーー〜〜っっ!!!」
気がつけば、夏樹は一人暮らししているアパートの玄関で蹲っていた。
身体中が汗だらけで、脚と胸が苦しい。どうやら全速力で帰ってきたらしいが、その間の記憶はなく、思い返すのはあの無気味な白い影だけ。
「はっ、はっ、はっ、は、はは、はっ、ははは…」
荒い息に混じって、乾いた笑いが止まらない。
あれは何だったのだろうかと思う反面、考えれば考えるほど頭の中が真っ黒な暗闇に沈んでいく気がする。運動と興奮のせいで身体は暑いのに、体の芯から震えが止まらない。自分ではどうしようもない感覚に、夏樹は玄関で暫く蹲ったまま動けなかった。
そしてその日から、夏樹は悪霊に取り憑かれた。
信じられないが、そうとしか考えられない。夏樹に特別な能力や霊感等はない。幽霊を見たこともないし、そもそもオカルトにもさほど興味もなかった。
だがあの屋敷の影を見てからというもの、得体のしれない何かが、確かに夏樹の傍にいて離れないのだ。
ーーーまもなく、……電車が到着します…
「………?」
最初は、頭の後ろを何かが触れた程度の違和感だった。
場所は大学帰りの駅のホーム。恐らく気の所為だろうが、虫だったら嫌だなと手ぐしで髪の毛を整える。
本当にそれだけのことだ。数秒後には忘れる些細な出来事。だがそれが二度、三度と続いた。
それからハッキリと『触られている』と気付いたのは数日後だった。
「…………っ」
ガタガタガタガタガタガタ
身体中が震える。外は春の陽気で暖かいぐらいなのに、夏樹は真っ暗な部屋の中で、隠れるように布団をかぶっていた。端から見れば滑稽な事この上ないが、本人は至って真剣である。
なんせ、幽霊から隠れる方法なんて知らないのだから。
初めは頭や肩、手、指、足。生活でもよく使う場所が殆どで、さほど気にしていなかった。友人が行方不明となったこともあるし、無意識に神経を張り詰めていたのかもしれないのだろうと。それがいつからか、背中や首、腰、太腿、果ては尻や股間にまで。普段なら触られないであろう部分に、確かな感触があるのだ。振り向いても見えず、腕を伸ばしても触れないのに、まるで蛇のように首や身体に纏わりついてくる。
それが日毎に回数が増え、場所も選ばなくなっていく。
いや、それだけならまだしも、
「………っ、ぅっ……くっ……」
日中にも関わらず灯りのないアパートの一室。全ての出入り口は施錠され、更に外界との繋がりを絶とうと夏樹は頭から布団を被っている。
が、足りない。いくら鍵をかけようと、どこに隠れようと、じっとこっちを見ている誰かの視線を感じるのだ。
それも、目と鼻の先ほどの近くで。
ぎし
「…ひっ……」
床板が軋む。
ぎし、ぎし
規則正しく、まるで誰か歩いているように。
「………っ、…っ!!」
夏樹は咄嗟に漏れそうになる悲鳴を押し殺した。
なんせ布団の中とはいえ部屋の中にいるのだ。逃げるなんて上等な事は考えてない。ただどうしていいか分からないまま、心の底から来ないでくれと願い続けて、
ーーーふうぅ
「ひぃぁっ…!」
突如、生温い風が夏樹の耳の奥まで入り込んだ。
緊張から弛緩した喉奥から、短い悲鳴が布団のなかに吸い込まれていく。
ーーーくすくすくす
目に見えず、触れられない何か。
『それ』は震える夏樹を抱き締めるように、布団の上から覆い被さる。押さえつけるような強引さはない。
何故なら『それ』の目的は唯一つ。
盲目的にタカシの身体を愛撫することだけだからだ。
「……ひっ、…ぃ…うぅ……」
つぃ、と首から鎖骨をなぞられた感覚に、顔が跳ね上がった。続いて細い指で内腿を撫でられ、胸をくすぐられたかと思えば、耳の中をぬるりとした何かが這い回る。
ねっとりとした、相手の反応を楽しむような悪戯。まるで幾人に囲まれて身体を好き放題される感覚に、必死で身を捩るしかない。
「ぐ、…っ、……だ、ぁ……やめっ……ぃっ!」
無駄だと分かっていても、静止の声は抑えきれない。
『それ』が時間と場所を問わなくなってから、夏樹は部屋から出ることが出来なくなった。例えば通学途中の電車の中や、大学の講義中。そういった公衆の面前でも、『それ』には関係ない。むしろ積極的に夏樹の反応を楽しんでいる節すらある。
なら、まだ部屋に引き籠もるほうがましだ。
だが、あくまでましなだけ。『それ』は部屋の中でも変わらず夏樹の全身を嫐り続ける。
「…ぁ、がっ!…ひ、ぃぃ」
コロコロと転がされていた乳首を急に抓まれて、優しく四つん這いに起こされる。手を振り払おうにも、見えもしなければ触れもしない。理解を超えた存在に、夏樹は耐えるしかなかった。
……気休めにもならないが、今の所、『それ』は危害を加えるつもりはないらしい。もはや外出すらままならないほど日常的に悪戯されているのに、これまで痛めつけるとか、傷つくようなことは一切無かった。害意というより、むしろ子供のような無邪気さすら感じられる。
なら下手に抵抗するより、早く諦めてもらったほうがいいのではないか。子供らしさを逆手に、自分は取るに足らない獲物だと飽きてもらうほうがいいのではないか。
寺や神社に相談しようにも、身体をまさぐられて困ってるとも言えず、夏樹はひたすら嵐が過ぎ去るのを待った。部屋に籠城する考えも、数日で終わるに済むだろうと。
最も、そんな甘い考えは『それ』を増長させるだけだったが。
「…あううぅぅっ………」
足首と土踏まず、それから指の間にも、湿った感触。
普通なら忌避される場所にも、丹念に。くすぐったさ一歩手前の肌が粟立つ快感に、夏樹は発狂しそうだった。
「……ぉ」
くぐもった夏樹の声。
カクカクと揺れる腰の動きに四苦八苦しながら、両手を頭の横につく。そして嗚咽交じりに悲鳴ではない、確かに意味のある言葉を伝えようとしていた。
「ぉ、ぇ……おぇが……ひぃっ」
ーーーくすくすくす
『それ』の責めが激しくなる。明らかに夏樹の言いたいことを分かった上で、あえて邪魔をするという嗜虐心だった。
「…ひ、ぃ、おぇ、…がはぁっ」
肋骨と臍を撫で回され、睾丸と菊門を舌が優しくねぶる。
「ぉ…ぃう、…ぉえ、おねが…じま…ううぅぅ……!」
額が床につくほど夏樹は頭を下げる。そして一心不乱に、心の底から乞い願う。
「いかへぇて、くださいいぃぃ……おぇがい、ひまううぅぅ…っ!」
汗と涙と鼻水で顔をベタベタにしながら、夏樹は幽霊に催促を願った。何も無い空間に頭を下げ続けて絶叫する。正気を疑うような光景だが、事実、夏樹は半分発狂していた。
『それ』に害意が無いのは嫌というほど分かっていた。傷つけるつもりも、痛めつけるつもりもない。
ただ、極限まで性的に焦らして、楽しんでいるだけなのだと。
触り、撫でり、つまみ、舐めて、しゃぶる。散々身体を弄ばれ、今の夏樹は全身が性感帯となるほど開発され尽くした。しかしどんなに望んでも、『それ』は射精を許さなかった。身体の表層だけで、夏樹の陰茎にも触れようとしない。一人で処理しようにも、その度に『それ』の苛烈な愛撫で邪魔をされる。
決して解放させて貰えない寸止め地獄。すでに睾丸はマグマのような衝動で一回り大きくなって、陰茎も血管が浮き出したままが普通となってしまった。
もう夏樹は我慢の限界だった。
これ以上は本当に狂ってしまう。
人の尊厳もかなぐり捨てて、射精させてくれとだけ上位者に希った。
くすくすくす………
それが通じたのか否か。夏樹以外は誰もいないはずの部屋に、笑い声が響く。水晶のような若い女の声。なのに何故かその中は狂気じみた執着で満たされているのがはっきりと分かって、
ーーーやくそく、できる?
「…えっ?」
気づけば、夏樹は仰向きで天井を見ていた。先程まで床に額をこすりつけるほど頭を下げていたのに。
まるで合気の達人に投げられたと思うほど、自然に体勢を変えられた。
その上で、一人の少女が馬乗りになって顔を覗き込んでいる。まだ年端も行かない、蕾から咲く途中の可愛らしい女の子。平均より背の高い夏樹とは比べるのも馬鹿らしい程の身長差で、人形のようなドレスが良く似合っていた。
ーーーおりこうさんにするって
いや、本当に少女だろうか?
ドレスにしては身体が透けて雌を強調させる煽情的なデザイン。そこから溢れる肢体は年不相応に肉感的で、少女の純真さと娼婦の妖艶さが矛盾して同居している。
何より、その瞳。光すら逃さないとばかりの闇色は明らかに狂喜と情欲に濡れていて、目の前の夏樹しか映していなかった。
ーーーずっと、わたしだけをみて
そっ、と夏樹の両頬に手が添えられる。
ーーーずっと、わたしのそばにいてくれる
少女の顔が降りる。
あるいは獲物を狙う亡霊か、はたまた男を誘う娼婦か。
ーーーわたしだけのだんなさまに、なるって
視界が見目麗しい少女に支配され、目が離せなくなる。
「…ぁ、…ぅ……おれ、は……」
あまりの出来事に言葉が出てこない。
魚のように口をパクパクしながら、意味の無い音だけが出てくる夏樹を見て、少女は微笑みながら耳元に顔を寄せた。
そして。
れろぉ♥
「ひっ」
耳を一舐めされた。
間違いなく、それは何度も夏樹の身体を嬲ったあの感覚で、
「…っ、な、ぁ、なるっ……なります、なりますっ…!」
餌を貰う犬のように、夏樹は反射的に叫んでいた。
叫んでしまった。
くす……
耳元にくすぐったい風を感じる。
くすくす…………
くすくすくす………
少女が笑う。それが夏樹にとって正しい答えだったのかは分からない。だが少女は待っていたのだろう。
ーーーくすくす……
ーーーくふ、くふふ
ーーーくふふひひひひひひひひ
暗い水底から漏れ出るような音。
それは笑い声と呼ぶには、あまりにもドロドロとした感情が込められていて、
ガシャンっ!
「…っ、ひ!」
顔を俯かせたまま肩を震わす少女の後ろから、鎖が伸びる。それが生き物のように夏樹に纏わりつき、雁字搦めとなって身動きを封じた。
突然の出来事に、夏樹の喉が引き攣る。それが悲鳴に変わる寸前で、
んぅちゅ♥
「!?」
少女の唇が夏樹の口を塞いだ。
瑞々しいプルリとした柔らかい感触。
まだ固さの残るそれは熟れる前の果実を連想させ、咄嗟に顔を背けようとしたが、
ぢゅる、んじゅ♥ぐちゅぢゅる、じゅるるるっ♥
ぷるりとした唇から割り込んできた軟体が、夏樹を蹂躙した。甘い蜜を纏った熱いそれ。少女の舌が口腔内に侵入して、びちゃびちゃと淫らな音を立てながら暴れまわる。それは子供のお遊びのような幼稚なものでなく、剥き出しの情欲のまま快楽を貪る獣のキスだ。
「んはぁっ…んぁ♥」
ようやく少女の唇が離れる。
その間に夏樹は酸素を取り込もうと息をつくが、すぐにまた唇を塞がれ、更に舌が奥まで入り込んでくる。
舌裏や内頬に溜まっていた唾液を舐めとられ、代わりとばかりに少女の甘い唾液を送り込まれる。
ぶちゅぶちゅと口筋から透明な液を溢しながら、果実ともミルクともつかない甘い香りに肺を満たされ、夏樹の目が空中を彷徨う。
「んんんっ!?」
だが、少女は止まらない。
するりと弛緩した夏樹の胸に手を滑らせて、固く主張する突起を摘み、引っ張る。
それだけで夏樹は電流を浴びたように跳ね上がる。
ーーーくふ♥
「まっ、…あっ!あ!、あっ!?あぃっ!!」
続けて、緩急をつけながら二度、三度。
気が狂うほど焦らされ続けた日々で、夏樹の乳首は敏感な性感帯となってしまった。胸から始まり、乳輪から乳首へと。弱火でじっくりと煮込むように。時間をかけて、快楽を生む場所だと刷り込まれてしまった。
そこを、無慈悲に責められる。痛みスレスレの強い快楽が頭と腰に貯まり、また悲鳴を上げそうになるが、
「ぅあんんぶ…っ!」
はぁんむ♥ぐちゅじゅる♥ちゅ♥れるれるんふぅ♥
少女のキス地獄が再開した。
時に固く尖らせた舌が歯茎をなぞり、時に柔らかく舌ベラに絡みつく。互いの唾液を交換する度に頭の中が卑猥な水音が反響して、何も考えられない。
「んん!んんぅ、ん!ん!んうぅ!!」
勿論、乳首責めも同時である。
今度は弦楽器のようにクリクリと指先で弾かれ、鋭い快感が連続して夏樹を追い込み、
「んんんんぅうあああっっ!!」
絶叫とともに夏樹の身体が震えた。
目の前が明滅し、身体が浮いたような感覚。
少女を振り落とさんばかりに身体が仰け反り、足の指にまで力が入る。
それは一週間以上、寸止め地獄から開放されて味わう絶頂だった。
ーーーくふ、くふふひひひひひ
それを、少女は喜ぶ。
魔物娘にしか分からないが、今の夏樹の部屋には濃厚な精の気配が満ちていた。だが肝心の精は見当たらない。
視線を下げれば、凶悪なまでに屹立した夏樹の陰茎が、ビクビクと痙攣して透明な先走り汁を流しているだけ。
所謂、脳イキともドライオーガズムとも呼ばれる絶頂だ。射精を伴わない、擬似的な絶頂。その気持ち良さは通常の射精と変わらないと言われているが、
ーーーきもちいい?
「…………ぁ……」
布団の上で、口をだらしなく開いたまま宙を見る夏樹。半分意識の飛んだ状態で、返事どころか、もしかしたら自分が射精出来ぬまま絶頂したと気づいていないのかもしれない。
ーーーきもちいい?
「………ぁ……、……」
それでも少女は聞き続ける。
夏樹が経験した感覚が、確かに快楽であると刷り込むように。
ーーーきもちいい?
「…ぁ……ぅ……」
ゆっくりと、夏樹の顔が上下した。
まだ意識は戻っていない。耳から入る言葉に、反射的に答えただけ。
ーーーじゃあ、もっときもちよくなりたい?
「……ぅ……っ、ぁ……」
続く質問に、夏樹は応えなかった。頷けばどうなるか、無意識に感じ取っていたのかもしれない。
ーーーもっともっと、ずぅっときもちよくなりたいよね?
再度、少女からの質問。
タカシは応えない。それがどういう意味なのかさえ、分かっていないのだろう。
ーーーきもちよくなりたいって、いって
「…ぁ…っ」
耳元で囁く上位者の命令に、また軽い空絶頂に達しながらタカシは首を縦に振った。
ーーーじゃあ、きもちよくしてあげる
ふっ、と少女の体温が離れた。
ほんの一瞬の自由。見逃されたのか、あるいは更に自分という檻の深くに閉じ込めるためか。
ぐちゅ♥
それは騎乗位で、口づけのようにタカシの陰茎の先端に当たる熱く蕩けた少女の股間を見れば一目瞭然だろう。
ーーーんふぁああああ♥♥♥
「…っ、んぐぅああああ!?」
そのあまりの快感で、少女と夏樹の悲鳴が重なった。
迷う素振りすら無く腰を落とした少女。ただでさえ小柄な体躯が、信じ難いことに異常なほど張りつめた夏樹の怒張を飲み込んでしまう。
こつん
ーーーきゃふ♥
先端が、肉の壁を小突いた。
膣奥、子宮口。少女の行き止まりに当たりながら、
ーーーっ♥♥
ぐちゃり、と少女が変質した。
そうとしかいえない。外観は何も変わっていない。ただ、初めはキツく締め付けるだけだった少女の秘所。しこしことした固さの残る膣が、唐突に、粘液を潤滑油に、媚肉として怒張に絡みついてきたのだ。
だが、最も深刻だったのは夏樹では無い。
っ!?♥♥っっ!?!?♥♥♥
腰を下ろしたはずの少女は、必死に手で口を塞いでいる。そうしなければあまりの快楽で悲鳴を上げてしまいそうだからだ。
な、なに♥これぇ♥
ブルブルと腰の震えが止まらない。破瓜の痛みはほんの一瞬で、圧迫感や異物感はそのまま濁流のような快感に流されてしまった。
はっ、ぐ♥き、ぎもぢ♥♥
想定外の快楽に叫びそうなるのを必死に押し止めた。
だって、ここまで全部上手く行っていたんだから。親切な皆の力を借りて、好みの男性を見つけて。でも実体化するだけの魔力がないから、いきなり押し倒すんじゃなく、ゆっくりとゆっくりと責めて身も心も堕とし尽くす。これが正しかったはずだ。
待ってても白馬の王子様は来なかった。先に病気の方が悪くなってしまった。だから今度こそ、絶対に私だけの王子様を見つける。ううん、捕まえてみせる。
ぅっぐ♥だ、め♥ぉっ♥ほぶっ♥お、おぢづい…♥♥
落ち着いて。落ち着いて。
とりあえず、今の体勢を変えないとダメ。
じっとしてるのに、頭がチカチカしてる。
おちんちんがぴったり気持ち良すぎるところにハマっちゃってる。
このままだと、わたしが先に堕ちちゃう。
…ゆっくり♥…ゆっ♥ぉぅ♥ぐり♥
十秒で一ミリ。
亀のような、少女はそれぐらいのペースで動こうとして、
「っ、あぐ…っあっ!!」
それが結果的にギリギリで耐えていた夏樹の背中を押してしまった。
そもそも今まで耐えようとして耐えていた訳では無い。散々寸止めされ続けて、偽りの絶頂のあとに、少女の魔壺をおみまいされた。
これまで射精しなかったのは、単に許容外の快楽に身体が反応出来なかっただけで、奇跡的に糸屑一本でバランスを保っていた。それが、少女の不用意な身動ぎと、腹筋を通した膣の動きで崩壊しただけだった。
だが、その結果は途轍もない。己の欲望を、未発達の少女の最奥に流し込む。一般的な性観念を持っていた夏樹の頭の中で、何かが壊れる音がした。それは限界寸前だった堤防が壊された音か。あるいは人ではありえない快楽に価値観が壊れたのか。
いずれにせよ、これまでの東小野夏樹という人物に、致命的な傷が入ったのは確かだった。
最も、壊れたのは夏樹だけではないが。
ーーー!?♥♥♥!?!♥♥
溶けた鉄を流し込まれた。
そう錯覚するほど下腹部の奥から衝撃が走る。
それが徐々に股関節から背骨を伝って首まで上り、
ーーーぴ♥♥♥
ぷつん、と少女の頭を焼き切った。
「おっ♥んおおおおおおお!!!♥♥♥」
顎が跳ね上がる少女の口から、悲鳴があがる。それは可憐な見た目にはそぐわない腹底から押し出された低いもので、その間もガクガクと身体が痙攣し続ける。
「はがっ♥がっ♥あがぁ!?♥♥ああお!!♥あおおおおお!!??♥♥♥」
少女にとって不運だったのか、あるいは幸運だったのか。
我を忘れるほどの大きく深い絶頂。
その間も震え続ける身体のせいで、新しい快楽が生まれ、絶頂が終わる前に次の絶頂が訪れる。
(ぉご♥な、に♥ごれっ♥いぎ、できなーーっ♥♥)
また絶頂。その度に股間から透明な液体を吹き出る。ぷちぷちと頭の中で弾ける光に、白目をむいてだらしなく顔を蕩かせてしまう。
それほど、寸止めされ続けて熟成された濃縮精液は、初めて陰茎を受け入れたばかりの魔物娘にとってあまりにも強すぎた。
「ほっ♥ほっ♥おおおおあああ♥♥♥」
おまけに雄の本能なのか、より深い所で射精しようと下から夏樹は腰をカクつかせる。元々奥まで届いていた怒張は、ごじゅごじゅと子宮口を細かく小突いた。
勿論、その間も射精は止まらない。
絶頂の最中に、より強い快楽を与えられ少女は絶叫した。
「ああー!♥ああー!ああああああーー!!♥♥」
気持ち良すぎる。いや、もうそんな話ではない。
全身の感覚が快楽神経に置き換わり、それが全て最大出力のままになった。それだけならまだいい。
(いひっ♥あっ♥あだま、おがじぐ♥♥)
だって、ただ気持ち良いだけで存在意義が変わるなんて、あり得ない。
染み込んでいるのか、あるいは侵食しているのか。下腹からじんわりと熱が広がるたびに、真っ黒な自分がどんどん白く変わるようで。
「ーーーお"っ♥♥♥♥」
図らずも夏樹に似た恐怖を抱きながら、少女は意識を失った。
「……っ、はぁっ!…はぁっ、はぁっ、っはぁ…」
それからどのくらいたったのだろうか。
魂まで吸い出すような射精を終えて、夏樹は荒く息をついていた。倦怠感で、全身が重い。見れば少女の小さな蜜壺に収まりきれなかった夥しい白濁液が、むせ返るほどの精臭とともに布団の上で水溜りとなっている。
「はぁっ、はぁっ、…はぁ、…はぁ…はぁ…」
少女はその水溜りの中で、蛙のように大きく足を開いたまま気絶していた。時折痙攣してるので、死んではいないようだ。最も、幽霊に生死を考えるのもおかしな話ではあるが。
(本当に…幽霊、なのか…?)
信じられない思いで夏樹は少女を見下ろしていた。
どう見ても普通の華奢な女の子にしか見えない。あの異常な経験や汚濁まみれの身体から伸びる鎖が無ければ、とても信じられない。
ジャララララ……
「…ぁ」
身体を起き上がらせると、纏わりついていた鎖が力無く垂れ下がった。あれ程強固だったのに、簡単に手で解けてしまう。
(この子が弱ったから…なのか?)
鎖は少女から伸びている。
少女が鎖の源なら、有り得そうな話だ。
聞こうにも、当の本人はまだ夢の中だが。
(……今なら…もしかして……)
じっと、少女を見下ろしたまま夏樹の脳裏に浮かんだ考え。
鎖のせいでも、金縛りでもない。
(………………………………)
人の限界を超えて出したというのに、未だ股間の怒張は少しも衰えず、ジリジリと鈍痛を伴っている。
「……………っ」
気づけば、夏樹は少女の腰を抱えていた。
軽い。触れれば折れてしまいそうな身体は、驚くほど滑らかに吸い付いてくる。
あれほど気になった饐えた臭いも、少女の全身から出るミルクのような香りと混ざり気にならない。むしろ鼻腔奥の脳髄を刺激する。
「………んぁ……ふぇ…?」
ようやく気づいたのか。
その小さな身体に覆いかぶされ、怒張を白濁まみれの割れ目をトロンとした目で追いながら、
ぐじゅん♥
「んぇあああああああ♥♥」
勢い良く突き上げられた怒張に、再び少女はむせび泣いた。
「んあああ♥なんで♥なんでぇああああああ♥」
目覚めた少女が混乱するのも無理はない。
遥かに大柄に成人男性にの下で押し潰される。
しかもまだイッたばかりで敏感な膣内を穿り返されながら。
「くそっ……くそ、…君がっ…」
一方で、夏樹は一心不乱に腰を叩き付けていた。
パンパンと肉のぶつかる度に、精液が泡立って掻き出される音と雌の嬌声が響く。
「君が…っ、き、お、お前がっ、悪いんだからな…!」
血走った目で独り言のように犯している相手を攻める。
その様子には、遠慮も何も無い。
「んぉ♥おっ♥ごべ、んな♥ぉっ♥ごべんな、さい♥わるいごで♥ごべんなざ♥」
荒々しい雄のピストンを受け入れながら、謝り続ける少女の顔には笑みが浮かんでいた。
思い返せば、生前は人形のように扱われただけで、叱られたことも、真剣に向き合ったことも、これほど激しく求められた経験もない。
謝りたい気持ちは本当なのに、求められて嬉しい気持ちと、それ以上に大好きという気持ちが溢れて口元がニヤけてしまうのを抑えきれなくて。
「こ、のっ…!」
「んお"お"お"おおおお♥♥♥♥」
ごちゅん、と最奥に亀頭がぶつかり、悲鳴のような嬌声が上がった。あるいは産声か。念願の恋人を手に入れた喜び、雌としての本能、股間から一直線に脳天まで走る快楽の電流。それらが少女を、亡霊から一匹の魔物娘へと変えていた。
「おっ♥ごべんな、ざ♥おっ♥」
最奥に中出しされて、うわ言のように謝り続ける。
もう絶対に離れたりしたいと手と、足まで絡ませたまま、少女は幸せそうに受け止め続けた。
「ぅ、…あ…」
あれからどれほど経っただろうか。
軽い頭痛と酷い倦怠感と共に、夏樹は目覚めた。
隣には件の少女が、抱きつくように寝ている。
その寝顔はまさに天使のようだ。気絶する前の、尻を叩くだけでイったり、オナホのように乱暴に扱われて潮を吹く姿など誰が想像できようか。
(なんていうか……信じられないよな)
ぽりぽりと夏樹は頭を掻いた。
友人のために幽霊屋敷に行ったはずが、心霊現象に悩まされ、挙げ句こんな美少女と一夜を共にしてしまった。
あの時は調子に乗って全面屈服謝罪させたり、奴隷宣言させたりしまったが、よく考えればとんでもないことをしたのではないか。
(…取り敢えず、水でも飲むか)
今更慌てても仕方がない。
そう開き直るほど落ち着けるのは、もう自分もこの子にどっぷり嵌まったと認識があるからだが、
ガチャン
「……え?」
立ち上がろうとした夏樹を、鉄格子が阻んだ。
「なんだ……これ」
見慣れない、分厚い鉄の檻。
良く見れば、それは青白い鬼火を纏いながら、夏樹と少女を取り囲むように広がっている。
「んぁ、……おにぃさま?」
ガチャガチャと檻を揺らす音に、少女も起きてきた。目を擦り、昨夜の名残で兄と呼ぶことになった夏樹を不思議そうに見つめている。
「え、いや、気付いたら閉じ込められてて、出られないみたいなんだ」
手では一向に緩む気配がない。
仕方なく少女に出してもらうようお願いしようとして、
「? どうして出なくちゃいけないの?」
本気で分からないと、少女は首を傾げた。
「どうしてって……」
「おにぃさま、約束してくれたよね?ずっと一緒にいてくれるって、ずっと私だけを見てくれるって」
少女は笑う。
「じゃあ、もうお外なんかに出なくてもいいよね?」
「………っ」
夏樹は絶句した。
天使のように可憐で、一途で、淫乱な少女。
その瞳が闇色に塗りつぶされていたことに。
「昨日はすっごく気持ちよかったら、またしよ?それともおにぃさまが虐められる方がいい?どっちでもいいよ?また上手に虐めてあげるし、今度は道具も使ってあげる。泣き叫んでも止めてあげないから。それとも他の服でする?色んな洋服もあるから、お着替えするのも楽しそう。他にもね、色んな玩具もらったんだ!これなんてほら、気持ちよくなる魔法の玩具だって!全部おにぃさまのために揃えたんだよ?
絶対絶対、外なんかより気持ち良くていい事ばかりだから、だから」
ーーーねぇ
「次は何して遊ぶ?」
24/12/02 14:59更新 / 迷える哺乳類