第六話 主の正体
ウォルヴィン盗賊団による襲撃から、一夜が明けた。
エリンとイーサンをはじめとするエリンホームの住人の活躍によって、ウォルヴィン盗賊団は壊滅。街に平和は戻ったものの、捕物の舞台となったエリンホームには傷跡が残っている。そのため、エリンホームに住む面々が朝早くから修繕作業に追われていた。
スゥが陣頭指揮を執っている中、イーサンは破られた玄関扉を金槌片手に修繕し、ノッコはのこぎりで木材を切り出している。ミリアとメイセは資材を運搬していた。
「ふう……こんなもんか」
片側の修理が終わり、玄関扉の立てつけを確認するイーサン。彼が扉を押すと、地面や鴨居につかえることなく開いた。
一方のノッコは、木材をある程度切り出したところで、スゥのチェックを受けている。
「ノコねえ、もうこれだけあれば大丈夫、かな?」
「……ああ、どうすればいい?」
「イーサンを手伝ってあげられる、かな?」
「わかった」
スゥからの指示により、ノッコはのこぎりを金槌に持ち替え、イーサンの手伝いに向かう。
一方、ミリアとナーシャはエリンの指示のもと、窓の張替えをしている。
「姉さん、こっちもはまったよ」
「わかったわ」
ナーシャが窓を張った後、エリンが何かしらの術式を施していく。割られた窓が少なかったこともあり、窓の修復は終わりが見えるのが早かった。
陽が高く昇り始めたころに一同は修繕を終える。破壊された窓や扉はほぼ完全に復旧しており、本来の姿を取り戻していた。
「くっそ、まだ傷が痛むなぁ……」
昼食をとった後、めいめい休憩し始める面々。盗賊襲撃の傷が未だ癒えないイーサンは自室に戻る前に、エリンに治療を受けるため、エリンの部屋に寄ろうとしていた。
「えーっと、エリン姉の部屋は……」
食堂を出て廊下をまっすぐ行くと、エリンの部屋にはたどり着く。しかし、扉は二階に上がる階段のすぐ手前にあるので、食堂からだと更に左に曲がらなければならない。
彼は食堂を出て左に曲がるルートを選択。まずは廊下を突き当り、左に曲がる。其処は当然のことながら、普段は使わない廊下だった。
「あれ? こんなところに扉あったっけ?」
曲がり角で左を向くと、エリンの部屋に通ずる扉より手前の左手に、扉が見えている。彼はその扉へ近づき、興味本位で開けてみる。
「うおあっ! なんだ、ここは?」
その先には、緑の絨毯と白い壁。ところどころに白い彫像がいくつか立っており、中心部には噴水の池が鎮座していた。見上げれば、青い空が彼の前に映し出される。どうやら、彼は中庭に迷い込んでしまったようだ。
「ふんふんふーん♪ あっ、あはっ♪ あはん……♪」
中庭の中心の方から、女の歌声が聞こえる。それに混じって、短い嬌声が聞こえてきた。イーサンは引き寄せられるように、歩いていった。ある程度近づいたところで人影が見えたので、見つからないように一旦彫像に身を隠す。
「気付かれてないかな……?」
彼はもう一度、彫像の間から人影の方を覗き見た。そこには、見せつけるように裸体をさらして池で水浴びをする女の姿が。肢体は細くくびれており、胸はさほど大きくないながらも、その形は整っている。その形が整った胸を、右手でいじくりまわしていた。それに伴って、時折長い緑色の髪が揺れている。
ただし、肌は青白く、時折緑色のうねっているものが見える。さらには揺れている髪の束と思しきものが、あたかも意志を持っているかのように動いている。
「うわっ!?」
女の裸を見て、動揺するイーサン。これには痛みも吹っ飛んでしまう。
「あん……もう、我慢できない……」
女はイーサンに気づいていないのか、右手はそのままで、左手の指とうねりの先端を股間にあて、擦り始めた。
「あ、あぁん……」
(うおっ、何なんだ!?)
突然痴態を見せつけられ、更に動転するイーサン。彼は素早く、再び彫像に身を隠した。その間も、女の嬌声は止まらない。
「あんっ、イーサン、イーサンっ……!」
(なんで、俺の名前を……)
イーサンはまたしても動揺する。自分の名前を叫びながら、痴態を盛大にさらしている女を目の前にして。
「あんっ……イクーっ!」
しばらくすると、女は体を弓なりに反らして、盛大に絶頂を迎えた。女の秘所からは愛液があふれ、脱力して背中から池へと落ちてしまった。
「おい、大丈夫か!?」
大きな水音で、イーサンは我に返る。彼は女の許へと駆け寄った。
「エリン姉……?」
目の前の女と思しき名前を、一部始終を見ていたイーサンが口にした。
「ん? あっ、イーサン!?」
女……エリンは慌てて肌を隠そうとした。しかし、当然のことながら青白い肌やうねっていたものは隠せておらず、イーサンには丸見えの状態であった。
「まさか……見ていたの?」
「ああ……ちょっとだけな……」
あられもない姿を見せつけられ、呆然としつつも答えるイーサン。エリンは顔を真っ赤にして、縮こまっていた。
「エリン姉、人間じゃなかったのか……?」
「ばれたらしょうがないわね。その通り、エキドナよ」
エキドナ。「魔物の母」と呼ばれ、魔物の中でも上位に位置する種族。しかし、イーサンはそのエキドナを目の前にしても、動じていない。
そんな中、イーサンは問いかけた。
「なんで人間の振りなんてしてたんだよ? 俺が来る前なんて魔物しかいないのに」
痛いところを衝かれたのか、息を大きく吐いて、エリンは答える。
「ミリアがね……ラミアが苦手なのよ。それに、あなたが来たから、余計な恐怖を与えないように、ってね……」
「無用な心配だよ。俺の育ての親も、ラミアだったし」
心配そうな声で理由を述べるエリンに対し、イーサンはフォローを入れる。しかし、イーサンにはもう一つ聞いておきたいことがあった。
「それにしてもエリン姉。なんで俺の名前を叫んであんなこと……」
「それは……」
イーサンの質問に、エリンの言葉に詰まる。その後、二人の間に沈黙が流れた。
その頃、レプティから少し離れた山にて。
「レンさん、シエルさん。お世話になりました」
二つに結ったダークブラウンの髪と、緑の瞳が特徴的な少女が、大小のブラックハーピーに礼を述べる。彼女は荷物をまとめて、旅の支度をしていた。
「もう少し厄介になってもいいんだよ?」
「そうですよ、レスリーさん」
少女に優しい言葉をかけるレンとシエル。しかし、レスリーと呼ばれた少女は手を止める気配がない。
「お気持ちはありがたいのですが、兄を探しているので……」
「探すにしても、あてはあるのかい?」
「う〜ん……」
レンに指摘され、レスリーが表情を曇らせると、シエルが提案する。
「お兄さんを探しますので、なにか特徴を教えていただけないでしょうか?」
「そうですねぇ……」
レスリーは兄の特徴を、思い出せる限り話していった。
エリンとイーサンをはじめとするエリンホームの住人の活躍によって、ウォルヴィン盗賊団は壊滅。街に平和は戻ったものの、捕物の舞台となったエリンホームには傷跡が残っている。そのため、エリンホームに住む面々が朝早くから修繕作業に追われていた。
スゥが陣頭指揮を執っている中、イーサンは破られた玄関扉を金槌片手に修繕し、ノッコはのこぎりで木材を切り出している。ミリアとメイセは資材を運搬していた。
「ふう……こんなもんか」
片側の修理が終わり、玄関扉の立てつけを確認するイーサン。彼が扉を押すと、地面や鴨居につかえることなく開いた。
一方のノッコは、木材をある程度切り出したところで、スゥのチェックを受けている。
「ノコねえ、もうこれだけあれば大丈夫、かな?」
「……ああ、どうすればいい?」
「イーサンを手伝ってあげられる、かな?」
「わかった」
スゥからの指示により、ノッコはのこぎりを金槌に持ち替え、イーサンの手伝いに向かう。
一方、ミリアとナーシャはエリンの指示のもと、窓の張替えをしている。
「姉さん、こっちもはまったよ」
「わかったわ」
ナーシャが窓を張った後、エリンが何かしらの術式を施していく。割られた窓が少なかったこともあり、窓の修復は終わりが見えるのが早かった。
陽が高く昇り始めたころに一同は修繕を終える。破壊された窓や扉はほぼ完全に復旧しており、本来の姿を取り戻していた。
「くっそ、まだ傷が痛むなぁ……」
昼食をとった後、めいめい休憩し始める面々。盗賊襲撃の傷が未だ癒えないイーサンは自室に戻る前に、エリンに治療を受けるため、エリンの部屋に寄ろうとしていた。
「えーっと、エリン姉の部屋は……」
食堂を出て廊下をまっすぐ行くと、エリンの部屋にはたどり着く。しかし、扉は二階に上がる階段のすぐ手前にあるので、食堂からだと更に左に曲がらなければならない。
彼は食堂を出て左に曲がるルートを選択。まずは廊下を突き当り、左に曲がる。其処は当然のことながら、普段は使わない廊下だった。
「あれ? こんなところに扉あったっけ?」
曲がり角で左を向くと、エリンの部屋に通ずる扉より手前の左手に、扉が見えている。彼はその扉へ近づき、興味本位で開けてみる。
「うおあっ! なんだ、ここは?」
その先には、緑の絨毯と白い壁。ところどころに白い彫像がいくつか立っており、中心部には噴水の池が鎮座していた。見上げれば、青い空が彼の前に映し出される。どうやら、彼は中庭に迷い込んでしまったようだ。
「ふんふんふーん♪ あっ、あはっ♪ あはん……♪」
中庭の中心の方から、女の歌声が聞こえる。それに混じって、短い嬌声が聞こえてきた。イーサンは引き寄せられるように、歩いていった。ある程度近づいたところで人影が見えたので、見つからないように一旦彫像に身を隠す。
「気付かれてないかな……?」
彼はもう一度、彫像の間から人影の方を覗き見た。そこには、見せつけるように裸体をさらして池で水浴びをする女の姿が。肢体は細くくびれており、胸はさほど大きくないながらも、その形は整っている。その形が整った胸を、右手でいじくりまわしていた。それに伴って、時折長い緑色の髪が揺れている。
ただし、肌は青白く、時折緑色のうねっているものが見える。さらには揺れている髪の束と思しきものが、あたかも意志を持っているかのように動いている。
「うわっ!?」
女の裸を見て、動揺するイーサン。これには痛みも吹っ飛んでしまう。
「あん……もう、我慢できない……」
女はイーサンに気づいていないのか、右手はそのままで、左手の指とうねりの先端を股間にあて、擦り始めた。
「あ、あぁん……」
(うおっ、何なんだ!?)
突然痴態を見せつけられ、更に動転するイーサン。彼は素早く、再び彫像に身を隠した。その間も、女の嬌声は止まらない。
「あんっ、イーサン、イーサンっ……!」
(なんで、俺の名前を……)
イーサンはまたしても動揺する。自分の名前を叫びながら、痴態を盛大にさらしている女を目の前にして。
「あんっ……イクーっ!」
しばらくすると、女は体を弓なりに反らして、盛大に絶頂を迎えた。女の秘所からは愛液があふれ、脱力して背中から池へと落ちてしまった。
「おい、大丈夫か!?」
大きな水音で、イーサンは我に返る。彼は女の許へと駆け寄った。
「エリン姉……?」
目の前の女と思しき名前を、一部始終を見ていたイーサンが口にした。
「ん? あっ、イーサン!?」
女……エリンは慌てて肌を隠そうとした。しかし、当然のことながら青白い肌やうねっていたものは隠せておらず、イーサンには丸見えの状態であった。
「まさか……見ていたの?」
「ああ……ちょっとだけな……」
あられもない姿を見せつけられ、呆然としつつも答えるイーサン。エリンは顔を真っ赤にして、縮こまっていた。
「エリン姉、人間じゃなかったのか……?」
「ばれたらしょうがないわね。その通り、エキドナよ」
エキドナ。「魔物の母」と呼ばれ、魔物の中でも上位に位置する種族。しかし、イーサンはそのエキドナを目の前にしても、動じていない。
そんな中、イーサンは問いかけた。
「なんで人間の振りなんてしてたんだよ? 俺が来る前なんて魔物しかいないのに」
痛いところを衝かれたのか、息を大きく吐いて、エリンは答える。
「ミリアがね……ラミアが苦手なのよ。それに、あなたが来たから、余計な恐怖を与えないように、ってね……」
「無用な心配だよ。俺の育ての親も、ラミアだったし」
心配そうな声で理由を述べるエリンに対し、イーサンはフォローを入れる。しかし、イーサンにはもう一つ聞いておきたいことがあった。
「それにしてもエリン姉。なんで俺の名前を叫んであんなこと……」
「それは……」
イーサンの質問に、エリンの言葉に詰まる。その後、二人の間に沈黙が流れた。
その頃、レプティから少し離れた山にて。
「レンさん、シエルさん。お世話になりました」
二つに結ったダークブラウンの髪と、緑の瞳が特徴的な少女が、大小のブラックハーピーに礼を述べる。彼女は荷物をまとめて、旅の支度をしていた。
「もう少し厄介になってもいいんだよ?」
「そうですよ、レスリーさん」
少女に優しい言葉をかけるレンとシエル。しかし、レスリーと呼ばれた少女は手を止める気配がない。
「お気持ちはありがたいのですが、兄を探しているので……」
「探すにしても、あてはあるのかい?」
「う〜ん……」
レンに指摘され、レスリーが表情を曇らせると、シエルが提案する。
「お兄さんを探しますので、なにか特徴を教えていただけないでしょうか?」
「そうですねぇ……」
レスリーは兄の特徴を、思い出せる限り話していった。
13/03/07 03:05更新 / 緑の
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