初詣にイこう！
とある神社の、新年を迎えた朝。
町外れにあるとはいえ、水神が祀られていることで知られているためか、神社は初詣の客でごった返している。人間、魔物が入り混じる参拝客は狭い境内を押し合いへし合い、時には魔物が男を押し倒しながら、順々に進んでいた。
その中の一人、大学生の蒼井龍樹（あおい たつき）も例外ではなかった。
「はぁ、人混みがすごくて疲れたなぁ……」
初詣を終えた後、龍樹は人込みを避けているうちに順路から外れてしまう。言葉通り、顔に色濃く疲労が出ており、足取りも少しばかり重い。
しかし、順路から外れるということは、道に迷うという事態にもなりかねない。事実彼は、表参道から外れ、生垣に囲まれた池に出てしまっていた――
「あれ……ここ、どこ？」
彼の視線の先には、白装束を着たまま水浴びしている巫女。まるで色素が抜けたかのような白い髪、装束から覗く白い肌。そして、彼女の下半身は人ではなく、白い蛇のそれであった。人間でない彼女は妖しくも美しい。恐怖や畏怖よりも好奇心が先行し、そんな彼女に、彼は食い入るように見入っていた。
彼女を見るのに夢中になっていた龍樹は、思わず息を漏らす。その時、見入っているうちに前のめりになっていた彼は、生垣ごと前に倒れてしまう。当然、倒れた音が辺り一面に響き渡り、彼女の耳に捉えられたのは言うまでもない。
「誰です？」
――バレた！
龍樹は服に着いた土ぼこりを払う間も取らず、あわてふためいてその場から立ち去ろうとする。だが、それより先に、女の声が響いた。
「逃げないでくださいな」
その声を聴くと、龍樹は影を縫われたかのように足を止めてしまう。
「申し訳ありません。あなたの美しさに、つい見とれてしまいまして」
「あら、見られておりましたか……」
巫女は少し顔を赤らめて恥らう。そんな彼女の表情を見て、龍樹の心の臓が大きく脈を打った。
「申し遅れました。この社の巫女、翠（すい）と申します」
「白いのに、翠？ 変わった名前ですね。僕は蒼井龍樹。よろしくお願いいたします」
互いに名前を明かし、丁寧に頭を下げた後、二人はただただ見つめあう。
――これって、もしかして？
胸の中に何か熱いものを感じた龍樹だが、これ以上迷惑をかけるわけにはいかぬと、すぐさま立ち去ろうとした。
「覗いてしまったうえ、邪魔をして申し訳ありませんでした。僕はこれで」
「いえいえ。また、お越しくださいませ」
龍樹は柔和な微笑をたたえた翠に見送られる。しかし、背後では熱い視線を送っていることなど、彼は知る由もなかった。
あっという間の冬休みが終わり、授業が始まった一週間後。
「うぅ、寒い……。くそっ、なんでみんな僕に押し付けるんだよ……おかげでもうこんな時間だっ」
どうやら龍樹は、班員から課題を体よく押し付けられてしまったようだ。そして一人でキリのいいところまで終わらせて学校を出た時には、二十時を回っていた。そしてすぐに電車に乗り込めたものの、最寄駅に着いた頃には夜二十一時を過ぎていたのだった。
――寒い。早く帰って、部屋で暖を取らねば。
冷たい風が吹き荒ぶ中を、ぶつくさ愚痴をたれながら走っている間に、下宿に到着。鍵を取り出し、開けようとする――が、扉の前に着いて鍵を見ると、壊された形跡があった。耳を澄ませると、室内からくぐもった喘ぎ声が聴こえてくる。
誰かがいる。この部屋の主である自分以外の何者か、それも女が。
龍樹は震える手で、ドアを開ける。その先に人影が見えた。
思い切って部屋に突入すると、そこには見覚えのある純白の後姿。そして部屋中に漂う甘い香り――
「あなたは……翠さん！？」
一心不乱にほとに手を添え、自らを慰めている翠がいた。どうして？ いったいどうやって鍵を？ 何のために？ 龍樹の頭の中でいくつもの疑問がぐるぐると駆け巡る。
「はっ、はっ、おかえりなさいませ、龍樹様……はぁっ」
龍樹が名を呼んだ瞬間、彼女は振り返り、うやうやしく頭を下げる。彼女がもう一度龍樹の顔を見ると、戦慄の表情を浮かべていることに気付いた。
「龍樹様、どうなさったのです？」
「まさか、翠さんが鍵を！？」
「ええ、そうですわ」
とびっきりの笑顔を浮かべ、あっさりと自身の行動を認める翠。
「どうして、僕の部屋に？」
「あなたに、一目惚れしたのです」
「どうやって、鍵を……？」
「それは……よろしいではないですか」
動転している龍樹は頭に浮かんだ質問を矢継ぎ早に投げかけるが、翠はのらりくらりとかわしていく。この間にもほとを指でいじくり回し、甘い香りを振りまきながら。
「わたくしが、何かいけないことでも？」
今まで快楽にとろけていた彼女が豹変。一瞬にして、赤い目、そしてその奥に覗く蛇のような縦長の瞳が、龍樹を睨みつける。文字通り蛇に睨まれた蛙となった龍樹は、物理的に拘束されているわけではないのに、動く事すらかなわなくなる。
形容できない恐怖心から、龍樹は首を振らざるを得なくなった。
「わかってくだされば、よろしいのです」
その瞬間、翠の険しい表情が、初対面の時のような柔和な微笑に戻った。しばらくすると、それを通り越して、彼女は頬を赤らめ、艶っぽいそれへと変わっていく。
「三日三晩、あなたのことを想って、自らを慰めておりました」
衝撃の事実を聞かされた龍樹は、言葉を失い、ただただ立ち尽くす。そんな様子を見た翠は、追い打ちをかけた。
「龍樹様。いえ、お前様……」
股間――上半身と蛇体の境目――をもじもじしながら、上目づかいで問いかける翠。
「わたくしを、愛して……」
頬を紅潮させながらも、小袖を肌蹴て胸を寄せ、畳み掛けるように劣情を誘う翠。誘われている龍樹の方は必死にかわそうとするも、身体が熱くなっているようだ。
想いを寄せる女性が、目の前であられもない姿をさらしている。その状況下で、龍樹の中で理性と欲望の葛藤が続く。
「お前様、わたくしのことがお嫌いですか……？」
先ほどとは打って変わって瞳を潤ませ、上目づかいで懇願してくる翠。さらには人差し指をちょびっとだけくわえて誘う。これには龍樹もたじろぐ。
「はい……」
羨望、好意、恐怖。いろいろな感情に圧される形で、翠の告白を受け入れる龍樹。両の乳房に両手を添わせる。
「翠さん……、ごめんなさいっ！」
直視できないながらも、翠の胸を揉みしだく。
「ひゃぁんっ！」
声を上げて、淫らに喘ぐ翠。歓喜のあまり、股間からも勢いよく間欠泉を噴き出す。
「お前様。その手が……翠を、ふしだらに……させる……のですよ！」
しかし、翠も負けてなどいない。胸を揉みしだかれて絶頂を何度も迎えるも、震える手で股間を掴んでくる。いきなりの攻撃に、龍樹は驚いて胸から手を放してしまった。
「うふ。お前様、お次は翠の番ですよ」
この時点で、主導権は完全に翠に移った。龍樹のまらはひたすら手でしごかれ、勃起を促される。
「あわっ、す、翠さん！？」
「お前様、翠の禊を垣間見た。この翠の目に見えたのが運の尽きです」
しかし、股間に血が集まり始めた瞬間、手を止められる。生殺しにされ、龍樹は息が止まるような思いをした。
「さて、お前様。もし翠と交わりたくば、跪き乞うてください。その喉を潰すくらいに」
「交わりたくば……？ どういう意味ですか？」
龍樹は視線をそらし、言葉を濁す。
「正直ですよ、お身体は」
「なっ！？」
翠はズボンとパンツを脱がす。翠に指摘されたように、龍樹のまらは少しばかりそびえ立っている。あたかも、これから起こることを期待しているかのように。
しばらく額に手を当て、翠が思案し始める。
「『節操なしのこのまらを、どうかお鎮め願います』と仰るなら、気持ちよくして差し上げます」
事もあろうに、翠は龍樹に恥ずかしい台詞を言わせようとする。
「節操なしのこのまらを、どうかお鎮め願います……」
龍樹はぼそぼそと、絞り出すような声で呟く。しかし、
「聞こえませぬよ、お前様。翠に聞かせてくださいな」
翠は無情にも、聴こえないと突っぱね、もう一度要求する。
「生殺しは嫌です！ 『節操なしのこのまらを、どうかお鎮め願います』！」
恥を忍んで、張り裂けそうな声で泣き叫ぶ龍樹。もはや我慢の限界が来ている。精神的にも、肉体的にも、性的興奮という意味でも。
「よくできました、お前様」
翠は一度微笑みかけると、着衣をすべて脱ぎ捨て、龍樹のまらを自らの乳房で挟む。
「翠の乳房で、そのまらをおっきさせます」
左右互い違いにまらを擦られるたび、まらが揺れる。そして
「おっきしました、お前様」
翠が胸を離すと、美しいことこの上ない角度で反り返った肉の塔が完成していた。彼女は大きく育ったまらを見て、頬を赤く染め、うっとりと舌なめずりをしている。
「綺麗なまらを、じゅくじゅくの翠のほとへとぶちこんでくださいますか？」
翠の方も、先ほどの自慰、そして一連の愛撫で完全に濡れている。いきり立つまらを力の限り突き立てた。すると、何かを貫く感触がした。
自身と翠の結合部を見ると、真紅に染まっている。それをみた龍樹は、おぼろげにではあるが事態を把握した。
「翠さん……血がっ！」
「初物は、お前様へと捧げると。こちらに参る以前より心に決めておりました」
涙目になりながらも、翠は変わらぬ微笑を浮かべている。処女を想い人に捧げることがかなったことにより、満足している様子だ。
「僕の、ために……」
「ええ……」
龍樹と一つになった翠の膣は、やわやわと揉むように龍樹のまらを絞めていく。目を細めながら、彼女は蛇の体を巻きつけ、優しく抱きしめた。
「愛おしい……離したくない」
「翠さ……っ！？」
蛇体に巻かれて蒼ざめる龍樹の気を逸らすため、不意に彼女が唇を奪い、舌を入れて貪るように口内を蹂躙してくる。口内から全身に電流が流れるかのような感覚を覚え、龍樹はそれに応えるかのように舌を絡めた。
「翠の唇、味わってくださいました？」
「ええ……とても、甘かったです……」
数分間に及んだ甘い甘い接吻。翠の甘い唇を食んだことにより、龍樹はさらに酔わされる。甘い静の時間がしばらく続いた後、翠が再び動き出す。
「腰づかい……見せてください、お前様」
繋がっただけでは、更なる快感は得られない。翠は龍樹に腰の動きを要求する。
「こう……ですか？」
言われるがままに、龍樹はゆっくりと腰を突き出していく。亀頭が膣壁に擦れることにより快感が生まれ、ただでさえ鈍い動きがさらに鈍くなる。
「あんっ……」
翠の唇から、一瞬喘ぎ声が漏れ出す。しかし、それだけでは物足りない様子で、再び求めてくる。
「もっと激しく……してほしい」
何度やっても、龍樹の腰の速度は落ちていくばかり。快楽に片足をどっぷりと突っ込んでいる彼には、この速度が限界であった。
「……この翠が、手解きをして差し上げます」
弱まっていく快楽にしびれを切らした翠。やや不満げな顔をして、小刻みに腰を振り始める。
「あっ……あっ……あっ……」
翠の激しくも細やかな腰使い、艶を帯びた声、そして百面相のように変わりつつも艶やかさを失わない表情により、一気に上り詰めさせられた龍樹。まらに子種汁が充填されていき、射精感がこみあげてくる。
その様子を見て、翠は嗜虐的な笑みを浮かべた。
「翠さん、やばい……」
「お前……様ぁっ！ 翠の畑を……耕して、子種……たくさん……植えつけて……くださいましぃ！」
龍樹に下から荒々しく腰を打ちつけられ、息も絶え絶えの翠が、龍樹の全身と逸物を激しく絞め上げたその瞬間。
「翠さんっ、だめ！ 抜いてっ！ 出るっ！」
「翠の卵を、真っ白な子種で染めてっ！ お前様ああああぁぁぁぁぁっ！」
龍樹は翠からまらを抜こうとするも、遅かった。まらは爆発し、子種を多分に含んだ白濁が翠の胎を満たしていく。子種が注がれるたび、翠は頬を緩ませていく。
一方、半ば搾り取られるように白濁をぶちまけた龍樹は、茫然とするほかなかった。逃げられなかったとはいえ、膣内に出してしまった後悔と、不甲斐なさが、彼の重くのしかかる。
「翠の卵を追い求め、種が子宮をさまよって……種と卵が結びつき、翠の真っ赤な胎に着く！」
そんな龍樹の様子などお構いなしに、呪文のようにつぶやき始める翠。満ち足りたか、妄想を膨らませ、頬を緩ませていく。龍樹に対する蛇体での抱擁を解き、精で膨れた腹を龍樹の耳に押し付けた。
「お前様、命の歌が聴こえます？」
「さあ……」
この交わりで妊娠したなどとは考えたくない。龍樹は逃げようとする。だが、残った蛇体で縛りつけられ、翠は邪悪な微笑を浮かべる。
「それならば、子ができるまでその子種、いただきましょう♪」
「えっ！？ ちょ、翠さん！ 僕はまだアッー！？」
再び、下の口でまらを食べ始める翠。どうやら、妊娠するまで本気で搾り取るようだ。そして――
「ん、ん〜……」
うめきながら、体を揺り起こす龍樹。彼が目を覚ますと、空は既に白んでいた。
「おはようございます、お前様」
「おはようございます、翠さん。……もう陽が高い。巫女の仕事は？」
「朱様に、お休みをいただいておりますのでご心配なく」
心配している龍樹をよそに、腹黒く微笑みかける翠。
「これからもよろしくお願いいたします。ねえ、お前様？」
「待って、翠さん！ 僕は今日も授業がアッー！？」
龍樹はどす黒い微笑を浮かべる翠にベッドへと押し倒され、このまま第二幕が始まった。
その後、彼は激しい腰痛と倦怠感に襲われ、数日間大学を休まざるを得なくなったのはいうまでもない――
町外れにあるとはいえ、水神が祀られていることで知られているためか、神社は初詣の客でごった返している。人間、魔物が入り混じる参拝客は狭い境内を押し合いへし合い、時には魔物が男を押し倒しながら、順々に進んでいた。
その中の一人、大学生の蒼井龍樹（あおい たつき）も例外ではなかった。
「はぁ、人混みがすごくて疲れたなぁ……」
初詣を終えた後、龍樹は人込みを避けているうちに順路から外れてしまう。言葉通り、顔に色濃く疲労が出ており、足取りも少しばかり重い。
しかし、順路から外れるということは、道に迷うという事態にもなりかねない。事実彼は、表参道から外れ、生垣に囲まれた池に出てしまっていた――
「あれ……ここ、どこ？」
彼の視線の先には、白装束を着たまま水浴びしている巫女。まるで色素が抜けたかのような白い髪、装束から覗く白い肌。そして、彼女の下半身は人ではなく、白い蛇のそれであった。人間でない彼女は妖しくも美しい。恐怖や畏怖よりも好奇心が先行し、そんな彼女に、彼は食い入るように見入っていた。
彼女を見るのに夢中になっていた龍樹は、思わず息を漏らす。その時、見入っているうちに前のめりになっていた彼は、生垣ごと前に倒れてしまう。当然、倒れた音が辺り一面に響き渡り、彼女の耳に捉えられたのは言うまでもない。
「誰です？」
――バレた！
龍樹は服に着いた土ぼこりを払う間も取らず、あわてふためいてその場から立ち去ろうとする。だが、それより先に、女の声が響いた。
「逃げないでくださいな」
その声を聴くと、龍樹は影を縫われたかのように足を止めてしまう。
「申し訳ありません。あなたの美しさに、つい見とれてしまいまして」
「あら、見られておりましたか……」
巫女は少し顔を赤らめて恥らう。そんな彼女の表情を見て、龍樹の心の臓が大きく脈を打った。
「申し遅れました。この社の巫女、翠（すい）と申します」
「白いのに、翠？ 変わった名前ですね。僕は蒼井龍樹。よろしくお願いいたします」
互いに名前を明かし、丁寧に頭を下げた後、二人はただただ見つめあう。
――これって、もしかして？
胸の中に何か熱いものを感じた龍樹だが、これ以上迷惑をかけるわけにはいかぬと、すぐさま立ち去ろうとした。
「覗いてしまったうえ、邪魔をして申し訳ありませんでした。僕はこれで」
「いえいえ。また、お越しくださいませ」
龍樹は柔和な微笑をたたえた翠に見送られる。しかし、背後では熱い視線を送っていることなど、彼は知る由もなかった。
あっという間の冬休みが終わり、授業が始まった一週間後。
「うぅ、寒い……。くそっ、なんでみんな僕に押し付けるんだよ……おかげでもうこんな時間だっ」
どうやら龍樹は、班員から課題を体よく押し付けられてしまったようだ。そして一人でキリのいいところまで終わらせて学校を出た時には、二十時を回っていた。そしてすぐに電車に乗り込めたものの、最寄駅に着いた頃には夜二十一時を過ぎていたのだった。
――寒い。早く帰って、部屋で暖を取らねば。
冷たい風が吹き荒ぶ中を、ぶつくさ愚痴をたれながら走っている間に、下宿に到着。鍵を取り出し、開けようとする――が、扉の前に着いて鍵を見ると、壊された形跡があった。耳を澄ませると、室内からくぐもった喘ぎ声が聴こえてくる。
誰かがいる。この部屋の主である自分以外の何者か、それも女が。
龍樹は震える手で、ドアを開ける。その先に人影が見えた。
思い切って部屋に突入すると、そこには見覚えのある純白の後姿。そして部屋中に漂う甘い香り――
「あなたは……翠さん！？」
一心不乱にほとに手を添え、自らを慰めている翠がいた。どうして？ いったいどうやって鍵を？ 何のために？ 龍樹の頭の中でいくつもの疑問がぐるぐると駆け巡る。
「はっ、はっ、おかえりなさいませ、龍樹様……はぁっ」
龍樹が名を呼んだ瞬間、彼女は振り返り、うやうやしく頭を下げる。彼女がもう一度龍樹の顔を見ると、戦慄の表情を浮かべていることに気付いた。
「龍樹様、どうなさったのです？」
「まさか、翠さんが鍵を！？」
「ええ、そうですわ」
とびっきりの笑顔を浮かべ、あっさりと自身の行動を認める翠。
「どうして、僕の部屋に？」
「あなたに、一目惚れしたのです」
「どうやって、鍵を……？」
「それは……よろしいではないですか」
動転している龍樹は頭に浮かんだ質問を矢継ぎ早に投げかけるが、翠はのらりくらりとかわしていく。この間にもほとを指でいじくり回し、甘い香りを振りまきながら。
「わたくしが、何かいけないことでも？」
今まで快楽にとろけていた彼女が豹変。一瞬にして、赤い目、そしてその奥に覗く蛇のような縦長の瞳が、龍樹を睨みつける。文字通り蛇に睨まれた蛙となった龍樹は、物理的に拘束されているわけではないのに、動く事すらかなわなくなる。
形容できない恐怖心から、龍樹は首を振らざるを得なくなった。
「わかってくだされば、よろしいのです」
その瞬間、翠の険しい表情が、初対面の時のような柔和な微笑に戻った。しばらくすると、それを通り越して、彼女は頬を赤らめ、艶っぽいそれへと変わっていく。
「三日三晩、あなたのことを想って、自らを慰めておりました」
衝撃の事実を聞かされた龍樹は、言葉を失い、ただただ立ち尽くす。そんな様子を見た翠は、追い打ちをかけた。
「龍樹様。いえ、お前様……」
股間――上半身と蛇体の境目――をもじもじしながら、上目づかいで問いかける翠。
「わたくしを、愛して……」
頬を紅潮させながらも、小袖を肌蹴て胸を寄せ、畳み掛けるように劣情を誘う翠。誘われている龍樹の方は必死にかわそうとするも、身体が熱くなっているようだ。
想いを寄せる女性が、目の前であられもない姿をさらしている。その状況下で、龍樹の中で理性と欲望の葛藤が続く。
「お前様、わたくしのことがお嫌いですか……？」
先ほどとは打って変わって瞳を潤ませ、上目づかいで懇願してくる翠。さらには人差し指をちょびっとだけくわえて誘う。これには龍樹もたじろぐ。
「はい……」
羨望、好意、恐怖。いろいろな感情に圧される形で、翠の告白を受け入れる龍樹。両の乳房に両手を添わせる。
「翠さん……、ごめんなさいっ！」
直視できないながらも、翠の胸を揉みしだく。
「ひゃぁんっ！」
声を上げて、淫らに喘ぐ翠。歓喜のあまり、股間からも勢いよく間欠泉を噴き出す。
「お前様。その手が……翠を、ふしだらに……させる……のですよ！」
しかし、翠も負けてなどいない。胸を揉みしだかれて絶頂を何度も迎えるも、震える手で股間を掴んでくる。いきなりの攻撃に、龍樹は驚いて胸から手を放してしまった。
「うふ。お前様、お次は翠の番ですよ」
この時点で、主導権は完全に翠に移った。龍樹のまらはひたすら手でしごかれ、勃起を促される。
「あわっ、す、翠さん！？」
「お前様、翠の禊を垣間見た。この翠の目に見えたのが運の尽きです」
しかし、股間に血が集まり始めた瞬間、手を止められる。生殺しにされ、龍樹は息が止まるような思いをした。
「さて、お前様。もし翠と交わりたくば、跪き乞うてください。その喉を潰すくらいに」
「交わりたくば……？ どういう意味ですか？」
龍樹は視線をそらし、言葉を濁す。
「正直ですよ、お身体は」
「なっ！？」
翠はズボンとパンツを脱がす。翠に指摘されたように、龍樹のまらは少しばかりそびえ立っている。あたかも、これから起こることを期待しているかのように。
しばらく額に手を当て、翠が思案し始める。
「『節操なしのこのまらを、どうかお鎮め願います』と仰るなら、気持ちよくして差し上げます」
事もあろうに、翠は龍樹に恥ずかしい台詞を言わせようとする。
「節操なしのこのまらを、どうかお鎮め願います……」
龍樹はぼそぼそと、絞り出すような声で呟く。しかし、
「聞こえませぬよ、お前様。翠に聞かせてくださいな」
翠は無情にも、聴こえないと突っぱね、もう一度要求する。
「生殺しは嫌です！ 『節操なしのこのまらを、どうかお鎮め願います』！」
恥を忍んで、張り裂けそうな声で泣き叫ぶ龍樹。もはや我慢の限界が来ている。精神的にも、肉体的にも、性的興奮という意味でも。
「よくできました、お前様」
翠は一度微笑みかけると、着衣をすべて脱ぎ捨て、龍樹のまらを自らの乳房で挟む。
「翠の乳房で、そのまらをおっきさせます」
左右互い違いにまらを擦られるたび、まらが揺れる。そして
「おっきしました、お前様」
翠が胸を離すと、美しいことこの上ない角度で反り返った肉の塔が完成していた。彼女は大きく育ったまらを見て、頬を赤く染め、うっとりと舌なめずりをしている。
「綺麗なまらを、じゅくじゅくの翠のほとへとぶちこんでくださいますか？」
翠の方も、先ほどの自慰、そして一連の愛撫で完全に濡れている。いきり立つまらを力の限り突き立てた。すると、何かを貫く感触がした。
自身と翠の結合部を見ると、真紅に染まっている。それをみた龍樹は、おぼろげにではあるが事態を把握した。
「翠さん……血がっ！」
「初物は、お前様へと捧げると。こちらに参る以前より心に決めておりました」
涙目になりながらも、翠は変わらぬ微笑を浮かべている。処女を想い人に捧げることがかなったことにより、満足している様子だ。
「僕の、ために……」
「ええ……」
龍樹と一つになった翠の膣は、やわやわと揉むように龍樹のまらを絞めていく。目を細めながら、彼女は蛇の体を巻きつけ、優しく抱きしめた。
「愛おしい……離したくない」
「翠さ……っ！？」
蛇体に巻かれて蒼ざめる龍樹の気を逸らすため、不意に彼女が唇を奪い、舌を入れて貪るように口内を蹂躙してくる。口内から全身に電流が流れるかのような感覚を覚え、龍樹はそれに応えるかのように舌を絡めた。
「翠の唇、味わってくださいました？」
「ええ……とても、甘かったです……」
数分間に及んだ甘い甘い接吻。翠の甘い唇を食んだことにより、龍樹はさらに酔わされる。甘い静の時間がしばらく続いた後、翠が再び動き出す。
「腰づかい……見せてください、お前様」
繋がっただけでは、更なる快感は得られない。翠は龍樹に腰の動きを要求する。
「こう……ですか？」
言われるがままに、龍樹はゆっくりと腰を突き出していく。亀頭が膣壁に擦れることにより快感が生まれ、ただでさえ鈍い動きがさらに鈍くなる。
「あんっ……」
翠の唇から、一瞬喘ぎ声が漏れ出す。しかし、それだけでは物足りない様子で、再び求めてくる。
「もっと激しく……してほしい」
何度やっても、龍樹の腰の速度は落ちていくばかり。快楽に片足をどっぷりと突っ込んでいる彼には、この速度が限界であった。
「……この翠が、手解きをして差し上げます」
弱まっていく快楽にしびれを切らした翠。やや不満げな顔をして、小刻みに腰を振り始める。
「あっ……あっ……あっ……」
翠の激しくも細やかな腰使い、艶を帯びた声、そして百面相のように変わりつつも艶やかさを失わない表情により、一気に上り詰めさせられた龍樹。まらに子種汁が充填されていき、射精感がこみあげてくる。
その様子を見て、翠は嗜虐的な笑みを浮かべた。
「翠さん、やばい……」
「お前……様ぁっ！ 翠の畑を……耕して、子種……たくさん……植えつけて……くださいましぃ！」
龍樹に下から荒々しく腰を打ちつけられ、息も絶え絶えの翠が、龍樹の全身と逸物を激しく絞め上げたその瞬間。
「翠さんっ、だめ！ 抜いてっ！ 出るっ！」
「翠の卵を、真っ白な子種で染めてっ！ お前様ああああぁぁぁぁぁっ！」
龍樹は翠からまらを抜こうとするも、遅かった。まらは爆発し、子種を多分に含んだ白濁が翠の胎を満たしていく。子種が注がれるたび、翠は頬を緩ませていく。
一方、半ば搾り取られるように白濁をぶちまけた龍樹は、茫然とするほかなかった。逃げられなかったとはいえ、膣内に出してしまった後悔と、不甲斐なさが、彼の重くのしかかる。
「翠の卵を追い求め、種が子宮をさまよって……種と卵が結びつき、翠の真っ赤な胎に着く！」
そんな龍樹の様子などお構いなしに、呪文のようにつぶやき始める翠。満ち足りたか、妄想を膨らませ、頬を緩ませていく。龍樹に対する蛇体での抱擁を解き、精で膨れた腹を龍樹の耳に押し付けた。
「お前様、命の歌が聴こえます？」
「さあ……」
この交わりで妊娠したなどとは考えたくない。龍樹は逃げようとする。だが、残った蛇体で縛りつけられ、翠は邪悪な微笑を浮かべる。
「それならば、子ができるまでその子種、いただきましょう♪」
「えっ！？ ちょ、翠さん！ 僕はまだアッー！？」
再び、下の口でまらを食べ始める翠。どうやら、妊娠するまで本気で搾り取るようだ。そして――
「ん、ん〜……」
うめきながら、体を揺り起こす龍樹。彼が目を覚ますと、空は既に白んでいた。
「おはようございます、お前様」
「おはようございます、翠さん。……もう陽が高い。巫女の仕事は？」
「朱様に、お休みをいただいておりますのでご心配なく」
心配している龍樹をよそに、腹黒く微笑みかける翠。
「これからもよろしくお願いいたします。ねえ、お前様？」
「待って、翠さん！ 僕は今日も授業がアッー！？」
龍樹はどす黒い微笑を浮かべる翠にベッドへと押し倒され、このまま第二幕が始まった。
その後、彼は激しい腰痛と倦怠感に襲われ、数日間大学を休まざるを得なくなったのはいうまでもない――
12/01/13 01:28更新 / 緑の