sweet sweat
・・・ ｺﾞﾛﾝ ｺﾞﾛﾝ ｺﾞﾛﾝ
うんしょ、うんしょ。
ｺﾞﾛ ｺﾞﾛ ｺﾞﾛ ｺﾞﾛ
うん、しょ。 こら、しょ。
ｺﾞ ﾛ ・・・
どっ、こい、しょっ！
ﾄﾞ ｽ ﾝ ！
ぷはー、つっかれた！
ひとやすみすんべ！
「今日も精が出るね、レト」
やんだあ、王子様。
ずーっと見てただかぁ？ 恥んずかしい。
・・・だんめだよう！ だから、王子さまぁ。
おらあ、汚ったねえだよ。 いま寄っちゃだんめだあ！
「汚くないよ。 大地を創る神聖な仕事だ」
あいかわらずおおげさだんな、王子さまは。
おらあ、土やら枯草やらウンチやらいじくってるだけだあ。
「君が自分で言ってたんじゃないか。 生きた土を作っているんだって」
― うんだ、ここにいっぱい積み重ねておくだよ。
ごろごろ転がして持ってきて、乾いたのと湿ったのと、段々になあ。
― そうすっとよ、虫がいっぱい湧いてくるだよ。
うんだ、おらあの仲間だ。 はたらきもんの、めんこいやつらだあ。
― そんでなあ、そいつらがここに積んだもん、一生懸命ぱくぱく食べてなあ。
こんなかでおしっこやウンチしてなあ、それにカビがはえたりしてな。
そんなこんなをなんべんもなんべんもやっとると、これが土がなるっとよ。
― ほらあ、嗅いでみ？ もう臭くなかんべ？
ええ匂い？ そんだべ。 これ、山の匂いだあ。
こっからいろとりどりの草花が生えてくるんさあ。
「― そして、いつかこの砂漠を、緑でいっぱいにしたい。
君は余の前で、そう言っていた」
あんれえ、こっぱずかしい！ そんなこと言っちゃ、いやだようっ！
か、かわいい？！ だからやめてけろ！ 王子さまのいじわるっ！
んもう！ こんどそっただこといったらば、ウンチぶつけちゃる！
・・・ほら、いつものイモムシだあ。 釣りさするんだべ？
王子さまってのも意外にヒマなんだなや。
ほら、オマケの果物だあ。 暗くならんうちに帰るだよう！
はあ、きょうも一日おわっただあ。
もう、からだじゅうべっとべと。 きんもちわるぅ・・・
ｶﾁｬ ｶﾁｬ ｶﾊﾟ
ｼｭﾙ ｼｭﾙ
・・・うんわ、ぐっしょぐしょだあ。 やんなっちゃうだなあ。
こんなあせみずくで王子さまの前に出て、こっぱずかしいだよ・・・
ﾁ ｬ ﾌﾟ 。
・・・ ﾊﾟ ｼ ｬ ﾊﾟ ｼ ｬ
・・・あー 、きんもちええ。 とっととべとべと落としちまうべえ。
もたもたしとったら、日が沈んじまうだあよ。
うー、ここも。 ここも。 こっちも。
あっちこっちべっとべっとだあ・・
・・・ ・・・ ・・・
・・・こんな、とこも。
べっとべと、だあ。
・・・ ・・・ ・・・
おら、すけべえだなあ。 やんなっちまう。
・・・きれいに、せねば、なあ。
・・・ ﾁ ｭ ｸ 。
・・・ ん っ
ﾁ ｭ ｸ ﾁ ｭ ｸ
ん ・・・ ・・・
― 精が出るね、レト。
・・・王子さま。
― 土を作る、神聖な仕事だ。
いまごろ、どっかで、釣りしてんだろな。
この川の、どっかで・・・
ﾁ ｭ ﾁ ｭ ﾁ ｭ ﾁ ｭ ｯ ・・・
― ははは、レトは、ほんっとうに、かわいいなあ。
・・・かわいい？ おらあがか？
こんなくっさいくっさい、おらあがか。
・・・ ・・・ ・・・ ・・・
王子さまは、ほんっとに、いじわるだ。
悪いおとこだあ・・・
・・・ ｺ ﾘ ｯ 。
ん 、あ っ 。 あ ・・・
・・・ ｶﾞ ｻ ｯ 。
―――――――――
「レト、今日も頑張ってるね」
あんれ、王子さま。 また来ただかあ。
ここんとこよく来るだなあ、おヒマかねえ？
あっはっはっは、王子さまはヒマくらいがちょうどええだあ。
おらあみたいなんは動いてないと、どうかなっちまうだあよ。
そーれ、えっちら、おっちら。 えっちら、おっちら。
「僕も、やってみていいかな」
・・・はあ？？？
な、なにいってるだね王子さま！
・ ・
ぼくとか、やってみるとか・・・
い、いえいえいえいえ！
で、でも、汚いし重いし・・・
あっ！
「わあ、結構重いや」
あ、あんれまあ。 ふたついっぺんに・・・
やっぱ細っこくても男は力持ちだなや。
あ、でも、無理しちゃあ・・・
・・・ほんら、もう。 こけちまったでねか。
べべ汚れちまうだよ、王子さまったら。
「あははっ、やっぱりレトはすごいんだな」
なに言うてるだか、もう。
ほら、つかまって。 うんしょ・・・
「・・・ ・・・ ・・・」
王子さま？
「・・・ あ、ご、ごめん。 ありがとう」
・・・どうしちまっただか？ 顔真っ赤にして。
なんかこっち、じっと見てたような・・・
――――・・・。
・・・王子さま。 あなた、まさか。 おらあの、乳っぺた。
じーっと、見てた、だか？
それで、顔、真っ赤にしてるだか・・・？
あっ！
「・・・レトの汗だ」
す、すんまへん。 おらあの汗、べっとり、つけちまっただ。
おべべさ、よごしちまったよう・・・
え？
― すん、すん、すん。
お、おうじ・・・ さま。
「レトの、においが、する」
そんな・・・
「いいにおいだ」
― すん、すん、すん・・・
・・・王子さま。
ﾁ ｬ ﾌﾟ ・・・
あれから、ひとっことも、お話しせんで。
とっとと、帰っられちまった。
・・・おらあの、気のせいか？
王子さまが、おらのことなんか、そんなふうに見るはずなんか・・・
・・・でも。
― ・・・ ・・・ ・・・
あんときの、王子さまの、目。
あの、目つき、あのお顔。
おらのここさ、じーっと、見て。
おらの汗さ、ふんふん、嗅いで。
じーっと。 ふんふん。 ・・・・・・・・・
・・・ ﾄ ﾛ ｯ 。
やんだ、なあ。 おらあ、ほんと、どすけべだ。
せっかく洗ったのに・・・
洗いなおさねば。 さっさと。
・・・んっ
ﾁ ｭ ﾌﾟ 。
・・・ ・・・ ・・・
く、ふ、はっ。
王子さま、王子さまっ。
ﾁｭ ﾁｭ ﾁｭｸ ﾁｭｸ
ｺﾘｯ ｺﾘ ｺﾘ
やんだ、おら・・・
おめこ、壊れちゃってるぅ・・・
・・・ ・・・ ・・・
こんな、こんな、びりびりして・・・
すごっ、すんげ・・・
ｺﾘ ｺﾘ ｺﾘ ｺﾘ
や、やんだ。 こんなかっこ。
恥んずかしい、でも、やめらんね。
やめらんねえよう、とまんねえよぅ！
ｺﾘｺﾘﾁｭﾌﾟﾁｭﾌﾟｺﾘｺﾘ・・・
こんなの、だれかに、見られたら・・・
― ﾁ ｭ ﾎﾟ ｯ ！！
ん あ あ っ ！！
・・・ ｶﾞ ｻ ｶﾞ ｻ ｯ ・・・
―――――――――
はあ、今日もいちにち、頑張った。
ほんっと、いっつもよりも、頑張ったぞお。
うっわあ。 こりゃあすんげ。 汗まみれだあ。
水ん中に飛びこんだみたいだあよ。
ちゃっちゃっと、きれいに、せんばな。
よっ、よっ。
・・・ ・・・ ・・・ ・・・
あんれ、濡れちゃってて、なかなか、脱げない・・・
わっ。
・・・ ｶﾞ ｻ
やんだ。 こけちまった。
おまた、おっぴろげちまっただよ。
・・・だれかに見られてたら、えらいこっちゃだあ。
・・・ ・・・ ・・・ ・・・
ﾁ ｬ ﾌﾟ 。
はあ、ようやっとひといきついただよ。
こんなに汗だらけじゃ、畑のうえでおぼれっちまう。
ひっでえなあ。 頭も、顔も、首も。
腕も手も足も、翅のうらっかわも。
おなかもせなかも、汗まみれだあ。
乳っぺたも、尻っぺたも、べっとべと。
ああ、むれちゃって、かゆいだあよ。
かゆい、ああ、かゆい。
うんしょ、うんしょ。
この、おにくの、あいだんとこ・・・
そんで、うらっかわのとこ・・・
こっちの、さきっぽんとこ・・・ おくんとこ・・・
ああ、かゆいな。かゆいなあー。
こんなとこ、こんなふうに、かいてるとこさ、
だれかに見られたら、えらいこっちゃだなー。
ﾎﾟ ﾁ ｬ ﾝ 。
あ、いけね。 たわしさ落としてしもうた。
おらったらドジだなあ。 うんしょっと。
・・・ ・・・ ・・・ ｶﾞｻ
うんしょ、うんしょ。 どこだべな。
ど、こ、だ、べ、なー。
・・・おんや、いっけねえ。
おめこもけつめども、まるだしだあ。
・・・ひんでえかっこだな、こりゃ。
だ、れ、か、に 。
見、ら、れ、て、た、ら 。
えらい、こっちゃ、だなあ。
・・・・・・・・・・・・・・・・
くすくす。 王子さま。
きょうも、おらあのこと。 じーっと、見てただな。
近くに来るたび、ふんふん、嗅いでたな。
もう、間違いねんべ。 ありゃ、ぜったい見とる。 嗅いどる。
おらあの乳っぺた、尻っぺた、じろじろ見とる。
おらのからだのにおい、あせのにおい、こっそり吸いこんどる。
そんで、こっちが気づいたら、真っ赤になってしらんぷりする。
なーにが王子だ。 あんのどすけべめ。
ちょくちょく来てたのも、おらあのこと、見て、嗅ぎたかったからでねか。
釣りって、いうのも。 うそ、かも。 しれんなあ。
くす、くす、くす、くす。
あんな、目ぎらぎらして、見られちまったらよ。
あんなに、鼻息ふんふんして、嗅がれちまったらよ。
おらあも、どすけべなきもちに、なっちまうだあよ。
・・・おめこさ、じんじんしちまう。 とろとろして、きちまうだ。
ち ゅ く 。
うわあ、すっげ。 こんなんなっちゃって。
栓が抜けちまったかな。 びっしょびっしょだあ。
「・・・ ・・・ ・・・」
ふさいじまわないと、な。
ん、う。 んっく、ふ。 くう・・・
「・・・は、はっ、はあ」
ああ、王子さま、王子さま。
こんな、汗まみれ、泥まみれ、ウンチまみれの、
きたないおらあのこと、そんなに、見たいだか。 嗅ぎたいだか。
「は、は、は、はっ」
見てほしい。 嗅いでほしいだよ。
おらの乳っぺたも、尻っぺたも、おめこも、けつめども。
いっぱい、いっぱい、すぐそばで。
ふんふんした鼻息かかるくらい、すぐそばで・・・
「く、く、く。 いく―」
おら、どうにかなっちゃう。 どうにかなっちゃう。
どうにか ―
はあ、はあ、はあ、はあ・・・
「はあ、はあ、はあ、はあ・・・」
―――――――――
おんや、王子さま。 また来たかね。
ほんら、いつものイモムシ。きょうは弁当つけただよ。
お口にあうかわからんけど、たんと食べてくんろ。
ああ、おらあ、きょうはもうおしまいにすんだ。
今日のぶん、けっこう早く終わっちまったから。
もう水浴びして寝るだけだあ。
こんな日の高いうちからごろごろすんのも、たまにはよかんべな。
ああ、眠くなってきた。 はよういかんば。
・・・さあ、つかまえたぞ。 こおの悪ガキ。
おめさ、ここんとこ、ずーっと、おらのはだか、覗いとったろ。
なんちゅうどすけべえなガキじゃあ。
なんじゃおめ、こんな顔して。 こんな服着て。
王子さまそっくりでねか。
からだつきも、においも、そっくりだあ。
・・・ほら、ここ、こんななって、こんなに、におっとる。
王子さまのとにおいも、かたちも、そっくりじゃあ。
こんなんおったてて、いいにおいさせて、このこのふとどきもんめ。
そうじゃ。おらあ、王子さまのこと、じーっと見とった。 嗅いどった。
だからわかるんじゃ。王子さまのにおいも、おちんぽのことも。
おらあのことじーっと見てると、王子さまからいいにおいがしてきよる。
こっそり、ばれんように見たんじゃ。 おまたがつっぱっておるのをな。
だからいっかい、わざとひっくりかえしてみたんじゃ。転んだふりしてな。
見えたぞ、すその奥に、いきっとるのが。
下帯な、ぐーっと、持ち上げててな。 なかまで見えた。
王子さまのおちんぽ、かわいかった、りっぱだっだぁ。
そんで昨日、うしろでがさがさしとっとこ、のぞいてみたらば。
おめえがおって、この王子さまみたいなもん、さわってんでねえか。
はあはあ言っとったの、王子さまのにおいさせてたの。
ぜーんぶ、見させてもらったからな。
おまえなんかが、王子さまとそっくりなんて。
おまえみたいなどすけべえには、もったいない。
おしおきして、やらんばなあ。
ほら、どうじゃ、どうじゃ。
乳っぺたにうずめちゃる。 汗におぼれっちまえ。
臭いじゃろ。 息、つまっちまえ。
んあ、なに、なめとるんじゃ。
こんのヘンタイが。 こんなくっさいもん。
・・・いいにおい？ 甘い？ うっそじゃあ！
くっさいじゃろ、塩っからいじゃろ・・・ あっ、あ。
こ、この、調子さのんなあ！ うりゃっ！
こっちはどうじゃ。 尻っぺたでおさえちゃる。
臭くて息ができんじゃろ。 死んじまえ。
こんのニセ王子さま。
んあっ、また、なに、やっとるんじゃ。
嗅いじゃ、なめちゃ、だめじゃあ。
そんなとこ、汚いとこ。 洗ってないとこ。
そんなにしゃぶったら、腹こわす・・・
んあああ、だめじゃあぁ、ちから、ぬけちまう・・・
こ、こら！ この！ なにすっか、はなせ！
なに、ぬがせとるんじゃ！ なにぬいどるんじゃ！
はだかになって、はだかにさせて、おらんこと、どうする気じゃ！
・・・だ、だめじゃ。 そのおべべ、そんなきれいなおべべ。
おらの下にひいちまったら、おら、よごしちまうだあよ・・・
ああ、あああ、だから、やめれ。 やめてけろ。
おら、出ちまう。出しちまう。 おめさのこと、よごしちまうだよ。
あ、で、でる、でちゃう。 見ないでえ、見ないでけろ・・・
あんなに、やめてけろって、いうたのに。
きれいなおべべも、きれいなおかおも。
そんなにびしょびしょになって、なんでうれしそうなんじゃ・・・
あ、やめてけろ。 やめて。
そんな王子さまのみたいなおちんぽ、入れらんとって・・・
おらあ、どうにかなっちゃう。 どうにかなっちゃうよう。
ああ、ああ。 やめてけろって、いうたのに。
ああ、ほんものじゃ。 ほんものの王子さまじゃ。
きかんぼうで、いじわるで、悪いおとこの王子さまじゃ。
ほんものの王子さまが、おらあのこと、好いとっとか。
うれしい。うれしいだよ・・・
王子さま、ああ、王子さま・・・
「王子じゃない」
え？
「僕は王子じゃない、テオだ。 悪ガキのテオだ」
テ、テオさま。 テオさま・・・
「テオさまなんかじゃないっ！ すけべえで、悪ガキで、
レトのことが大好きな、ただのテオだっ！！」
・・・テ、テオ。 テオ！
悪ガキのテオ！ きかんぼうのテオ！
すけべえでなまいきなテオ！
おらのことが大好きなテオ！
― おらあの、テオっ！！
「ああ、レト！ 僕のレトっ！ いく、僕、いくよっ！」
テオ、来てけろ！ いっぱい、いっぱいっ！
あ！・・・ あ、あっー・・・・
よかったか。 王子さま・・・ テオ。
おらあは、とっても、よかっただよ。
テオのおちんぽ、すっごくよかっただあ。 ・・・えへへ、恥んずかしい。
テオは、どうだっただか？ おらあのおめこ、よかったか？
あはは、なに照れてるんさ。 ふふふっ。
ふふ、やっぱり、王子さま、悪い人だよう。
な、王子さま。 よかったら、よかったら、だけど。
おらあのこと、王子さまの、おめかけさんにしてくんろ。
そんで、ときどきでいいから、こっそりここにきてくんろ。
こっただいなかもんといっしょだと、迷惑だんべ？
だから・・・
ﾍﾟ ﾁ ﾝ ！
な、なんでひっぱたくだか、テオ！
―――――――――
「このものは、神話の時代までさかのぼる、古き血筋を持つ者。
地より太陽を産む、夜明けをつかさどるもの」
「このたび祖王の陵墓より発掘された石板の記述と
彼女の家に代々伝わる古文書の記述が一致。
彼女は真に祖王につながる高貴な血の持ち主である」
「余は王に即位するにあたり、この高貴な女性を。
ケプリ族のレトをわが妃とすることを、偉大なる祖王の前で誓う」
あんれ王さま、また釣りかい。 のんきなもんだねえ。
先王さまがおらっしゃるからって、そんなんでいいのかね。
「父さんが言ってたんだ。王があまりこまごましたことをすべきじゃないって」
そっただもんだかねえ。 まあ、おらあもひとのこと言えんだが。
おきさきさまになったのに、こっただ畑仕事なんかしててええのか？
「それは神事だよ。 太陽の神にささげる大事な神事だ。
君の家にもそう伝わっているんだろう？」
たしかに、そうだけんどな、王子さま。 あ、いや王さま。
うちに伝わってる古文書って、なんなんじゃ？
そんなのうちの父ちゃん母ちゃん、じいちゃんばあちゃんも知らんかったぞ。
・・・いまはもうみんな知ってる？ 神さまのおぼしめし？
もう、ほんっとに王子さまは、悪いおとこじゃあ。
王子じゃない？ かんべんしてけろ、テオ。 口ぐせじゃ。
ほれ、いつもの釣りのエサ。あとお弁当。
暗くなる前に帰ってきてな。
はっは、いっぺんも釣れたことなんてないでねか。
楽しみに待っとるよ、王子さまぁー！
・・・あ、また間違えてしもた。 恥んずかしい。
― でもな。 テオ、おめさは、やっぱり王子さまだよ。
王様になってもな。 すけべえな悪ガキでもな。
― いつでも、いつまでも。
テオはおらの、おらあだけの、王子さまだあ。
うんしょ、うんしょ。
ｺﾞﾛ ｺﾞﾛ ｺﾞﾛ ｺﾞﾛ
うん、しょ。 こら、しょ。
ｺﾞ ﾛ ・・・
どっ、こい、しょっ！
ﾄﾞ ｽ ﾝ ！
ぷはー、つっかれた！
ひとやすみすんべ！
「今日も精が出るね、レト」
やんだあ、王子様。
ずーっと見てただかぁ？ 恥んずかしい。
・・・だんめだよう！ だから、王子さまぁ。
おらあ、汚ったねえだよ。 いま寄っちゃだんめだあ！
「汚くないよ。 大地を創る神聖な仕事だ」
あいかわらずおおげさだんな、王子さまは。
おらあ、土やら枯草やらウンチやらいじくってるだけだあ。
「君が自分で言ってたんじゃないか。 生きた土を作っているんだって」
― うんだ、ここにいっぱい積み重ねておくだよ。
ごろごろ転がして持ってきて、乾いたのと湿ったのと、段々になあ。
― そうすっとよ、虫がいっぱい湧いてくるだよ。
うんだ、おらあの仲間だ。 はたらきもんの、めんこいやつらだあ。
― そんでなあ、そいつらがここに積んだもん、一生懸命ぱくぱく食べてなあ。
こんなかでおしっこやウンチしてなあ、それにカビがはえたりしてな。
そんなこんなをなんべんもなんべんもやっとると、これが土がなるっとよ。
― ほらあ、嗅いでみ？ もう臭くなかんべ？
ええ匂い？ そんだべ。 これ、山の匂いだあ。
こっからいろとりどりの草花が生えてくるんさあ。
「― そして、いつかこの砂漠を、緑でいっぱいにしたい。
君は余の前で、そう言っていた」
あんれえ、こっぱずかしい！ そんなこと言っちゃ、いやだようっ！
か、かわいい？！ だからやめてけろ！ 王子さまのいじわるっ！
んもう！ こんどそっただこといったらば、ウンチぶつけちゃる！
・・・ほら、いつものイモムシだあ。 釣りさするんだべ？
王子さまってのも意外にヒマなんだなや。
ほら、オマケの果物だあ。 暗くならんうちに帰るだよう！
はあ、きょうも一日おわっただあ。
もう、からだじゅうべっとべと。 きんもちわるぅ・・・
ｶﾁｬ ｶﾁｬ ｶﾊﾟ
ｼｭﾙ ｼｭﾙ
・・・うんわ、ぐっしょぐしょだあ。 やんなっちゃうだなあ。
こんなあせみずくで王子さまの前に出て、こっぱずかしいだよ・・・
ﾁ ｬ ﾌﾟ 。
・・・ ﾊﾟ ｼ ｬ ﾊﾟ ｼ ｬ
・・・あー 、きんもちええ。 とっととべとべと落としちまうべえ。
もたもたしとったら、日が沈んじまうだあよ。
うー、ここも。 ここも。 こっちも。
あっちこっちべっとべっとだあ・・
・・・ ・・・ ・・・
・・・こんな、とこも。
べっとべと、だあ。
・・・ ・・・ ・・・
おら、すけべえだなあ。 やんなっちまう。
・・・きれいに、せねば、なあ。
・・・ ﾁ ｭ ｸ 。
・・・ ん っ
ﾁ ｭ ｸ ﾁ ｭ ｸ
ん ・・・ ・・・
― 精が出るね、レト。
・・・王子さま。
― 土を作る、神聖な仕事だ。
いまごろ、どっかで、釣りしてんだろな。
この川の、どっかで・・・
ﾁ ｭ ﾁ ｭ ﾁ ｭ ﾁ ｭ ｯ ・・・
― ははは、レトは、ほんっとうに、かわいいなあ。
・・・かわいい？ おらあがか？
こんなくっさいくっさい、おらあがか。
・・・ ・・・ ・・・ ・・・
王子さまは、ほんっとに、いじわるだ。
悪いおとこだあ・・・
・・・ ｺ ﾘ ｯ 。
ん 、あ っ 。 あ ・・・
・・・ ｶﾞ ｻ ｯ 。
―――――――――
「レト、今日も頑張ってるね」
あんれ、王子さま。 また来ただかあ。
ここんとこよく来るだなあ、おヒマかねえ？
あっはっはっは、王子さまはヒマくらいがちょうどええだあ。
おらあみたいなんは動いてないと、どうかなっちまうだあよ。
そーれ、えっちら、おっちら。 えっちら、おっちら。
「僕も、やってみていいかな」
・・・はあ？？？
な、なにいってるだね王子さま！
・ ・
ぼくとか、やってみるとか・・・
い、いえいえいえいえ！
で、でも、汚いし重いし・・・
あっ！
「わあ、結構重いや」
あ、あんれまあ。 ふたついっぺんに・・・
やっぱ細っこくても男は力持ちだなや。
あ、でも、無理しちゃあ・・・
・・・ほんら、もう。 こけちまったでねか。
べべ汚れちまうだよ、王子さまったら。
「あははっ、やっぱりレトはすごいんだな」
なに言うてるだか、もう。
ほら、つかまって。 うんしょ・・・
「・・・ ・・・ ・・・」
王子さま？
「・・・ あ、ご、ごめん。 ありがとう」
・・・どうしちまっただか？ 顔真っ赤にして。
なんかこっち、じっと見てたような・・・
――――・・・。
・・・王子さま。 あなた、まさか。 おらあの、乳っぺた。
じーっと、見てた、だか？
それで、顔、真っ赤にしてるだか・・・？
あっ！
「・・・レトの汗だ」
す、すんまへん。 おらあの汗、べっとり、つけちまっただ。
おべべさ、よごしちまったよう・・・
え？
― すん、すん、すん。
お、おうじ・・・ さま。
「レトの、においが、する」
そんな・・・
「いいにおいだ」
― すん、すん、すん・・・
・・・王子さま。
ﾁ ｬ ﾌﾟ ・・・
あれから、ひとっことも、お話しせんで。
とっとと、帰っられちまった。
・・・おらあの、気のせいか？
王子さまが、おらのことなんか、そんなふうに見るはずなんか・・・
・・・でも。
― ・・・ ・・・ ・・・
あんときの、王子さまの、目。
あの、目つき、あのお顔。
おらのここさ、じーっと、見て。
おらの汗さ、ふんふん、嗅いで。
じーっと。 ふんふん。 ・・・・・・・・・
・・・ ﾄ ﾛ ｯ 。
やんだ、なあ。 おらあ、ほんと、どすけべだ。
せっかく洗ったのに・・・
洗いなおさねば。 さっさと。
・・・んっ
ﾁ ｭ ﾌﾟ 。
・・・ ・・・ ・・・
く、ふ、はっ。
王子さま、王子さまっ。
ﾁｭ ﾁｭ ﾁｭｸ ﾁｭｸ
ｺﾘｯ ｺﾘ ｺﾘ
やんだ、おら・・・
おめこ、壊れちゃってるぅ・・・
・・・ ・・・ ・・・
こんな、こんな、びりびりして・・・
すごっ、すんげ・・・
ｺﾘ ｺﾘ ｺﾘ ｺﾘ
や、やんだ。 こんなかっこ。
恥んずかしい、でも、やめらんね。
やめらんねえよう、とまんねえよぅ！
ｺﾘｺﾘﾁｭﾌﾟﾁｭﾌﾟｺﾘｺﾘ・・・
こんなの、だれかに、見られたら・・・
― ﾁ ｭ ﾎﾟ ｯ ！！
ん あ あ っ ！！
・・・ ｶﾞ ｻ ｶﾞ ｻ ｯ ・・・
―――――――――
はあ、今日もいちにち、頑張った。
ほんっと、いっつもよりも、頑張ったぞお。
うっわあ。 こりゃあすんげ。 汗まみれだあ。
水ん中に飛びこんだみたいだあよ。
ちゃっちゃっと、きれいに、せんばな。
よっ、よっ。
・・・ ・・・ ・・・ ・・・
あんれ、濡れちゃってて、なかなか、脱げない・・・
わっ。
・・・ ｶﾞ ｻ
やんだ。 こけちまった。
おまた、おっぴろげちまっただよ。
・・・だれかに見られてたら、えらいこっちゃだあ。
・・・ ・・・ ・・・ ・・・
ﾁ ｬ ﾌﾟ 。
はあ、ようやっとひといきついただよ。
こんなに汗だらけじゃ、畑のうえでおぼれっちまう。
ひっでえなあ。 頭も、顔も、首も。
腕も手も足も、翅のうらっかわも。
おなかもせなかも、汗まみれだあ。
乳っぺたも、尻っぺたも、べっとべと。
ああ、むれちゃって、かゆいだあよ。
かゆい、ああ、かゆい。
うんしょ、うんしょ。
この、おにくの、あいだんとこ・・・
そんで、うらっかわのとこ・・・
こっちの、さきっぽんとこ・・・ おくんとこ・・・
ああ、かゆいな。かゆいなあー。
こんなとこ、こんなふうに、かいてるとこさ、
だれかに見られたら、えらいこっちゃだなー。
ﾎﾟ ﾁ ｬ ﾝ 。
あ、いけね。 たわしさ落としてしもうた。
おらったらドジだなあ。 うんしょっと。
・・・ ・・・ ・・・ ｶﾞｻ
うんしょ、うんしょ。 どこだべな。
ど、こ、だ、べ、なー。
・・・おんや、いっけねえ。
おめこもけつめども、まるだしだあ。
・・・ひんでえかっこだな、こりゃ。
だ、れ、か、に 。
見、ら、れ、て、た、ら 。
えらい、こっちゃ、だなあ。
・・・・・・・・・・・・・・・・
くすくす。 王子さま。
きょうも、おらあのこと。 じーっと、見てただな。
近くに来るたび、ふんふん、嗅いでたな。
もう、間違いねんべ。 ありゃ、ぜったい見とる。 嗅いどる。
おらあの乳っぺた、尻っぺた、じろじろ見とる。
おらのからだのにおい、あせのにおい、こっそり吸いこんどる。
そんで、こっちが気づいたら、真っ赤になってしらんぷりする。
なーにが王子だ。 あんのどすけべめ。
ちょくちょく来てたのも、おらあのこと、見て、嗅ぎたかったからでねか。
釣りって、いうのも。 うそ、かも。 しれんなあ。
くす、くす、くす、くす。
あんな、目ぎらぎらして、見られちまったらよ。
あんなに、鼻息ふんふんして、嗅がれちまったらよ。
おらあも、どすけべなきもちに、なっちまうだあよ。
・・・おめこさ、じんじんしちまう。 とろとろして、きちまうだ。
ち ゅ く 。
うわあ、すっげ。 こんなんなっちゃって。
栓が抜けちまったかな。 びっしょびっしょだあ。
「・・・ ・・・ ・・・」
ふさいじまわないと、な。
ん、う。 んっく、ふ。 くう・・・
「・・・は、はっ、はあ」
ああ、王子さま、王子さま。
こんな、汗まみれ、泥まみれ、ウンチまみれの、
きたないおらあのこと、そんなに、見たいだか。 嗅ぎたいだか。
「は、は、は、はっ」
見てほしい。 嗅いでほしいだよ。
おらの乳っぺたも、尻っぺたも、おめこも、けつめども。
いっぱい、いっぱい、すぐそばで。
ふんふんした鼻息かかるくらい、すぐそばで・・・
「く、く、く。 いく―」
おら、どうにかなっちゃう。 どうにかなっちゃう。
どうにか ―
はあ、はあ、はあ、はあ・・・
「はあ、はあ、はあ、はあ・・・」
―――――――――
おんや、王子さま。 また来たかね。
ほんら、いつものイモムシ。きょうは弁当つけただよ。
お口にあうかわからんけど、たんと食べてくんろ。
ああ、おらあ、きょうはもうおしまいにすんだ。
今日のぶん、けっこう早く終わっちまったから。
もう水浴びして寝るだけだあ。
こんな日の高いうちからごろごろすんのも、たまにはよかんべな。
ああ、眠くなってきた。 はよういかんば。
・・・さあ、つかまえたぞ。 こおの悪ガキ。
おめさ、ここんとこ、ずーっと、おらのはだか、覗いとったろ。
なんちゅうどすけべえなガキじゃあ。
なんじゃおめ、こんな顔して。 こんな服着て。
王子さまそっくりでねか。
からだつきも、においも、そっくりだあ。
・・・ほら、ここ、こんななって、こんなに、におっとる。
王子さまのとにおいも、かたちも、そっくりじゃあ。
こんなんおったてて、いいにおいさせて、このこのふとどきもんめ。
そうじゃ。おらあ、王子さまのこと、じーっと見とった。 嗅いどった。
だからわかるんじゃ。王子さまのにおいも、おちんぽのことも。
おらあのことじーっと見てると、王子さまからいいにおいがしてきよる。
こっそり、ばれんように見たんじゃ。 おまたがつっぱっておるのをな。
だからいっかい、わざとひっくりかえしてみたんじゃ。転んだふりしてな。
見えたぞ、すその奥に、いきっとるのが。
下帯な、ぐーっと、持ち上げててな。 なかまで見えた。
王子さまのおちんぽ、かわいかった、りっぱだっだぁ。
そんで昨日、うしろでがさがさしとっとこ、のぞいてみたらば。
おめえがおって、この王子さまみたいなもん、さわってんでねえか。
はあはあ言っとったの、王子さまのにおいさせてたの。
ぜーんぶ、見させてもらったからな。
おまえなんかが、王子さまとそっくりなんて。
おまえみたいなどすけべえには、もったいない。
おしおきして、やらんばなあ。
ほら、どうじゃ、どうじゃ。
乳っぺたにうずめちゃる。 汗におぼれっちまえ。
臭いじゃろ。 息、つまっちまえ。
んあ、なに、なめとるんじゃ。
こんのヘンタイが。 こんなくっさいもん。
・・・いいにおい？ 甘い？ うっそじゃあ！
くっさいじゃろ、塩っからいじゃろ・・・ あっ、あ。
こ、この、調子さのんなあ！ うりゃっ！
こっちはどうじゃ。 尻っぺたでおさえちゃる。
臭くて息ができんじゃろ。 死んじまえ。
こんのニセ王子さま。
んあっ、また、なに、やっとるんじゃ。
嗅いじゃ、なめちゃ、だめじゃあ。
そんなとこ、汚いとこ。 洗ってないとこ。
そんなにしゃぶったら、腹こわす・・・
んあああ、だめじゃあぁ、ちから、ぬけちまう・・・
こ、こら！ この！ なにすっか、はなせ！
なに、ぬがせとるんじゃ！ なにぬいどるんじゃ！
はだかになって、はだかにさせて、おらんこと、どうする気じゃ！
・・・だ、だめじゃ。 そのおべべ、そんなきれいなおべべ。
おらの下にひいちまったら、おら、よごしちまうだあよ・・・
ああ、あああ、だから、やめれ。 やめてけろ。
おら、出ちまう。出しちまう。 おめさのこと、よごしちまうだよ。
あ、で、でる、でちゃう。 見ないでえ、見ないでけろ・・・
あんなに、やめてけろって、いうたのに。
きれいなおべべも、きれいなおかおも。
そんなにびしょびしょになって、なんでうれしそうなんじゃ・・・
あ、やめてけろ。 やめて。
そんな王子さまのみたいなおちんぽ、入れらんとって・・・
おらあ、どうにかなっちゃう。 どうにかなっちゃうよう。
ああ、ああ。 やめてけろって、いうたのに。
ああ、ほんものじゃ。 ほんものの王子さまじゃ。
きかんぼうで、いじわるで、悪いおとこの王子さまじゃ。
ほんものの王子さまが、おらあのこと、好いとっとか。
うれしい。うれしいだよ・・・
王子さま、ああ、王子さま・・・
「王子じゃない」
え？
「僕は王子じゃない、テオだ。 悪ガキのテオだ」
テ、テオさま。 テオさま・・・
「テオさまなんかじゃないっ！ すけべえで、悪ガキで、
レトのことが大好きな、ただのテオだっ！！」
・・・テ、テオ。 テオ！
悪ガキのテオ！ きかんぼうのテオ！
すけべえでなまいきなテオ！
おらのことが大好きなテオ！
― おらあの、テオっ！！
「ああ、レト！ 僕のレトっ！ いく、僕、いくよっ！」
テオ、来てけろ！ いっぱい、いっぱいっ！
あ！・・・ あ、あっー・・・・
よかったか。 王子さま・・・ テオ。
おらあは、とっても、よかっただよ。
テオのおちんぽ、すっごくよかっただあ。 ・・・えへへ、恥んずかしい。
テオは、どうだっただか？ おらあのおめこ、よかったか？
あはは、なに照れてるんさ。 ふふふっ。
ふふ、やっぱり、王子さま、悪い人だよう。
な、王子さま。 よかったら、よかったら、だけど。
おらあのこと、王子さまの、おめかけさんにしてくんろ。
そんで、ときどきでいいから、こっそりここにきてくんろ。
こっただいなかもんといっしょだと、迷惑だんべ？
だから・・・
ﾍﾟ ﾁ ﾝ ！
な、なんでひっぱたくだか、テオ！
―――――――――
「このものは、神話の時代までさかのぼる、古き血筋を持つ者。
地より太陽を産む、夜明けをつかさどるもの」
「このたび祖王の陵墓より発掘された石板の記述と
彼女の家に代々伝わる古文書の記述が一致。
彼女は真に祖王につながる高貴な血の持ち主である」
「余は王に即位するにあたり、この高貴な女性を。
ケプリ族のレトをわが妃とすることを、偉大なる祖王の前で誓う」
あんれ王さま、また釣りかい。 のんきなもんだねえ。
先王さまがおらっしゃるからって、そんなんでいいのかね。
「父さんが言ってたんだ。王があまりこまごましたことをすべきじゃないって」
そっただもんだかねえ。 まあ、おらあもひとのこと言えんだが。
おきさきさまになったのに、こっただ畑仕事なんかしててええのか？
「それは神事だよ。 太陽の神にささげる大事な神事だ。
君の家にもそう伝わっているんだろう？」
たしかに、そうだけんどな、王子さま。 あ、いや王さま。
うちに伝わってる古文書って、なんなんじゃ？
そんなのうちの父ちゃん母ちゃん、じいちゃんばあちゃんも知らんかったぞ。
・・・いまはもうみんな知ってる？ 神さまのおぼしめし？
もう、ほんっとに王子さまは、悪いおとこじゃあ。
王子じゃない？ かんべんしてけろ、テオ。 口ぐせじゃ。
ほれ、いつもの釣りのエサ。あとお弁当。
暗くなる前に帰ってきてな。
はっは、いっぺんも釣れたことなんてないでねか。
楽しみに待っとるよ、王子さまぁー！
・・・あ、また間違えてしもた。 恥んずかしい。
― でもな。 テオ、おめさは、やっぱり王子さまだよ。
王様になってもな。 すけべえな悪ガキでもな。
― いつでも、いつまでも。
テオはおらの、おらあだけの、王子さまだあ。
17/10/15 16:44更新 / 一太郎