MAGMA MAGUS
あたし? あたしがだれかって?
そんなん見りゃわかるだろ、絶対に。
わからねえなんて、寝ぼけてるんじゃねえか。
だからふざけんなよ。 このでかい体。
まだ煮えたぎってる溶岩でできたからだ。
こんなやつがほかにいるもんか。 ラーヴァゴーレムだよ。
・・・知らない? ほんとにか。 ああ、そういうやつもいるんだ。
そういや、あたしたちはあんまり有名な魔物じゃないっけ。
いや、悪かったな。 ちゃんと教えるよ。
あたしはラーヴァゴーレムのビーディ。よろしくな。
ゴーレムってのは知ってるだろ? さすがにそれは知ってるか。
岩や粘土に魔力をこめて、意志を持たせて動かすあれ。
岩ならロックゴーレム、粘土ならクレイゴーレム。
あたしは溶岩だからラーヴァゴーレムさ。
はじめて聞いたってかい。 まあ、そうかもしれないねえ。
自慢になっちまうけどさ、溶岩でゴーレムをつくるなんて
並大抵のことじゃないからな。
普通に作ったってすぐ冷えて固まってただのロックゴーレムになっちまう。
なんだかすごい技術らしいよ。 あたしにはよくわからないけど。
ロックゴーレムのパワーと硬さ、クレイゴーレムの柔軟性をあわせ持ち、
さらに熱と炎をあやつるってね。
まあ、魔物が造ったのと違って、あたしの体は溶岩のまんまだけどさ。
触られればやけどさせちまうから、うかつに近づくんじゃないよ。
うん? ああ、あたしは違う。
まあゴーレムっていったら、魔物が造ったり、
勝手にできたりするのも多いけどね。
でも野良ゴーレムじゃ、人間の言うことなんて聞きゃしないだろ。
あたしは人間に造られた。 そいつの役に立つためにね。
ほら、あそこにいるだろ。 やせっぽちでなよっとしたやつ。
えらそうに高いところに立っちゃって、もっともらしい口きいてるあれ。
・・・すごい? あいつが? あたしのこと知らないくせに、
あいつのことは知ってるのかよ。
メイガス ラビ
ああそうだよ 、魔術師。 あたしらゴーレムを造るのは、学者か魔術師って
相場が決まってる。
あいつが得意なのは土の魔法、マグマを操る魔法。
大魔術? そんなことないよ。 派手にマグマを噴かせるなんてしないさ。
危ないだろ。
ちょっと地面を持ちあげたり、逆にへこませたり。
温泉やガスを出したり、逆に止めたり。 地味な魔法さ。
・・・崩落した土砂を水際で食い止めた?
竜巻の被害を受けた町の復興で大活躍?
そんなこともあったみたいだねえ。 ま、あたしもちょっとは手伝ったけどさ。
ほんとに、そんなたいしたやつじゃないんだよ。
かわいい女の子の前だとすぐデレデレしちゃうしさ。
自分だって女みたいになよなよしてるくせにさ。
趣味なんて料理と裁縫だぜ? まったくよ・・・
はあ? ・・・うれしそうだって? あたしが?
こっ、この! ローストチキンにしてやるっ!!
《こちら西地区! 住民の避難誘導、完了しました!》
「西南地区にまだ人が残ってる! 急行してくれ!」
《堰が崩れそうです! もうもちません!!》
「5分もたせてくれ! いま、応援が向かってる!」
くっそ、冗談じゃねえ! なんだこれ!?
300年に一度の大雨だって? ふざけんなよ!!
「メイヴ、亀裂の修復は?!」
「あと5分ください!」
「3分で頼む!」
夜中だってのに、ああ、こんちくしょう!
・・・ほら、土のう積んだよ、あんたの番だ!
魔法で溶かして固めちまってくれ!
「ビーディ、あと三段!」
わかってるよ! いまやってる・・・
ド バ ッ !!
わっ?! く、くそ!! 水が乗り越えて・・・
ゴ ゴ ゴ ・・・
や、やばい、決壊するっ!!
「ビーディ、下がるんだ!」
なにいってやがる! ここが決壊しちまったら・・・
避難所まで飲みこまれるんだろうがよ・・・!!
「きみの体は大量の水には耐えられない! 下がれ、命令だっ!!」
《第五地区浸水! 至急応援を!!》
うるせえ!! こんなときだけ、えらそうに命令してるんじゃねえ!!
ほら、あちこち漏っちゃってるっていってるだろ!
指揮官のあんたがしっかりしろよ!!
ビ ギ ィ ッ !!
「亀裂が! も、もう、押さえられない・・・っ・・・! 決壊します!!」
「総員退避!! ビーディ、逃げろっ!!」
だからふざけんなっ!! いまあたしが逃げちまったら・・・
だれがこの堤防をささえるんだよっ・・・!!
「ビーディ!! きみの体はっ!!」
・・・なにが体、からだだよ。 うっせえなあ。
こんなからだ、いやになっちまうことだってあるんだよ。
だれも抱きしめられない、だれからも抱きしめてもらえない、こんなからだ。
グ ジ ャ !
でもさ・・・ でもさあっ!
ボ ゴ ッ !!
このデカい体! この溶岩の体! あんたが造ってくれたこの体は!
この町を守るために!! あんたの役に立つために!!
ド バ ア ッ !!
きょう! ここ! このときのために!
あ・っ・た・ん・だ あ あ あ あ あ あ っ !!!
バ ジ ュ ウ ウ ウ ウ ウ ウ ウ ウ ッ !!!
「ビーーーーディーーーーーーッ!!!」
「・・・それで、こうなっちゃったの?」
「ああ。 なぜか、ね」
・・・ ・・・ ・・・ ・・・
「まあ、助かったんだからよかったんじゃない?
堤防の決壊だって防げたんだし」
「こうなるはずじゃなかったんだけどなあ」
・・・ ・・・ ・・・ ・・・
「助かったのがおかしいってこと?」
「いや違うよ。 でもなあ」
「あなたの技術が、魔物に追いついたってことでしょう」
「そうなのかなあ」
・・・あ、あれ?・・・
・・・あんた、おっきくなってないか?
「ビーディ、お疲れさま」
「あなたのおかげで、洪水は止められたわ」
・・・ あ た し ・・・
「ビーディ! ・・・わあ?!」
「・・・あっためてぇ・・・ ・・・あっためて、くれよお・・・」
「わ! や、やめろっ!! 脱がすなっ!!」
「・・・寒いんだよぅ・・・ 」
あたし、もう、ガマンできなぁい・・・
「メイヴ、助けてっ!!」
「ごゆっくり」
シュパッ!
「メイヴ!? わあっ!」
「ルウ、ルウ・・・」
「やめ、やめっ・・・」
やめらんないよ、もう。
いいじゃん、うちのなかだし、誰もいないし。
「・・・あ、うん・・・ ビ、ビーディ・・・」
いいよ、ほら。 あたし、ずーっと、待ってたんだから。
きてくれよ。 なあ。
・・・やっぱり、ゴーレムじゃだめかい?
お人形さんじゃ・・・ あっ。
「ビーディ。 こんなに、冷えて・・・
よかった。 きみが無事で、よかった」
あ、あ、あ。 あっ・・・ あ・・・
そ、そんなとこ、はずかしいって・・・ あ・・・
「ああ、ビーディ・・・ ブリジッド!」
そ、その名前はやめてくれよ。 照れるんだからさ・・・ あっ。
あ、あ。 あうっ・・・ ん・・・
「・・・中まで、こんなに冷えてしまってる」
だ、だめだよ・・・ やめてよ、あっ・・・
や、やめて。 そこ、こねないで。 かきまわさないで。
おかしくなっちゃう・・・
「よかった。 芯は、まだ、こんなにも熱い」
あぁ、熱い・・・ あんたも、こんなにも、熱いよ。
あう、はげしいよ。 乱暴だよう・・・
あたし、燃えるようだよ。 ああっ、壊されちゃうよ・・・
とけちゃう。 あたし、とけちゃうっ・・・
・・・ありがとな、メイヴ。
いつか借りは返すぜ。
そんなん見りゃわかるだろ、絶対に。
わからねえなんて、寝ぼけてるんじゃねえか。
だからふざけんなよ。 このでかい体。
まだ煮えたぎってる溶岩でできたからだ。
こんなやつがほかにいるもんか。 ラーヴァゴーレムだよ。
・・・知らない? ほんとにか。 ああ、そういうやつもいるんだ。
そういや、あたしたちはあんまり有名な魔物じゃないっけ。
いや、悪かったな。 ちゃんと教えるよ。
あたしはラーヴァゴーレムのビーディ。よろしくな。
ゴーレムってのは知ってるだろ? さすがにそれは知ってるか。
岩や粘土に魔力をこめて、意志を持たせて動かすあれ。
岩ならロックゴーレム、粘土ならクレイゴーレム。
あたしは溶岩だからラーヴァゴーレムさ。
はじめて聞いたってかい。 まあ、そうかもしれないねえ。
自慢になっちまうけどさ、溶岩でゴーレムをつくるなんて
並大抵のことじゃないからな。
普通に作ったってすぐ冷えて固まってただのロックゴーレムになっちまう。
なんだかすごい技術らしいよ。 あたしにはよくわからないけど。
ロックゴーレムのパワーと硬さ、クレイゴーレムの柔軟性をあわせ持ち、
さらに熱と炎をあやつるってね。
まあ、魔物が造ったのと違って、あたしの体は溶岩のまんまだけどさ。
触られればやけどさせちまうから、うかつに近づくんじゃないよ。
うん? ああ、あたしは違う。
まあゴーレムっていったら、魔物が造ったり、
勝手にできたりするのも多いけどね。
でも野良ゴーレムじゃ、人間の言うことなんて聞きゃしないだろ。
あたしは人間に造られた。 そいつの役に立つためにね。
ほら、あそこにいるだろ。 やせっぽちでなよっとしたやつ。
えらそうに高いところに立っちゃって、もっともらしい口きいてるあれ。
・・・すごい? あいつが? あたしのこと知らないくせに、
あいつのことは知ってるのかよ。
メイガス ラビ
ああそうだよ 、魔術師。 あたしらゴーレムを造るのは、学者か魔術師って
相場が決まってる。
あいつが得意なのは土の魔法、マグマを操る魔法。
大魔術? そんなことないよ。 派手にマグマを噴かせるなんてしないさ。
危ないだろ。
ちょっと地面を持ちあげたり、逆にへこませたり。
温泉やガスを出したり、逆に止めたり。 地味な魔法さ。
・・・崩落した土砂を水際で食い止めた?
竜巻の被害を受けた町の復興で大活躍?
そんなこともあったみたいだねえ。 ま、あたしもちょっとは手伝ったけどさ。
ほんとに、そんなたいしたやつじゃないんだよ。
かわいい女の子の前だとすぐデレデレしちゃうしさ。
自分だって女みたいになよなよしてるくせにさ。
趣味なんて料理と裁縫だぜ? まったくよ・・・
はあ? ・・・うれしそうだって? あたしが?
こっ、この! ローストチキンにしてやるっ!!
《こちら西地区! 住民の避難誘導、完了しました!》
「西南地区にまだ人が残ってる! 急行してくれ!」
《堰が崩れそうです! もうもちません!!》
「5分もたせてくれ! いま、応援が向かってる!」
くっそ、冗談じゃねえ! なんだこれ!?
300年に一度の大雨だって? ふざけんなよ!!
「メイヴ、亀裂の修復は?!」
「あと5分ください!」
「3分で頼む!」
夜中だってのに、ああ、こんちくしょう!
・・・ほら、土のう積んだよ、あんたの番だ!
魔法で溶かして固めちまってくれ!
「ビーディ、あと三段!」
わかってるよ! いまやってる・・・
ド バ ッ !!
わっ?! く、くそ!! 水が乗り越えて・・・
ゴ ゴ ゴ ・・・
や、やばい、決壊するっ!!
「ビーディ、下がるんだ!」
なにいってやがる! ここが決壊しちまったら・・・
避難所まで飲みこまれるんだろうがよ・・・!!
「きみの体は大量の水には耐えられない! 下がれ、命令だっ!!」
《第五地区浸水! 至急応援を!!》
うるせえ!! こんなときだけ、えらそうに命令してるんじゃねえ!!
ほら、あちこち漏っちゃってるっていってるだろ!
指揮官のあんたがしっかりしろよ!!
ビ ギ ィ ッ !!
「亀裂が! も、もう、押さえられない・・・っ・・・! 決壊します!!」
「総員退避!! ビーディ、逃げろっ!!」
だからふざけんなっ!! いまあたしが逃げちまったら・・・
だれがこの堤防をささえるんだよっ・・・!!
「ビーディ!! きみの体はっ!!」
・・・なにが体、からだだよ。 うっせえなあ。
こんなからだ、いやになっちまうことだってあるんだよ。
だれも抱きしめられない、だれからも抱きしめてもらえない、こんなからだ。
グ ジ ャ !
でもさ・・・ でもさあっ!
ボ ゴ ッ !!
このデカい体! この溶岩の体! あんたが造ってくれたこの体は!
この町を守るために!! あんたの役に立つために!!
ド バ ア ッ !!
きょう! ここ! このときのために!
あ・っ・た・ん・だ あ あ あ あ あ あ っ !!!
バ ジ ュ ウ ウ ウ ウ ウ ウ ウ ウ ッ !!!
「ビーーーーディーーーーーーッ!!!」
「・・・それで、こうなっちゃったの?」
「ああ。 なぜか、ね」
・・・ ・・・ ・・・ ・・・
「まあ、助かったんだからよかったんじゃない?
堤防の決壊だって防げたんだし」
「こうなるはずじゃなかったんだけどなあ」
・・・ ・・・ ・・・ ・・・
「助かったのがおかしいってこと?」
「いや違うよ。 でもなあ」
「あなたの技術が、魔物に追いついたってことでしょう」
「そうなのかなあ」
・・・あ、あれ?・・・
・・・あんた、おっきくなってないか?
「ビーディ、お疲れさま」
「あなたのおかげで、洪水は止められたわ」
・・・ あ た し ・・・
「ビーディ! ・・・わあ?!」
「・・・あっためてぇ・・・ ・・・あっためて、くれよお・・・」
「わ! や、やめろっ!! 脱がすなっ!!」
「・・・寒いんだよぅ・・・ 」
あたし、もう、ガマンできなぁい・・・
「メイヴ、助けてっ!!」
「ごゆっくり」
シュパッ!
「メイヴ!? わあっ!」
「ルウ、ルウ・・・」
「やめ、やめっ・・・」
やめらんないよ、もう。
いいじゃん、うちのなかだし、誰もいないし。
「・・・あ、うん・・・ ビ、ビーディ・・・」
いいよ、ほら。 あたし、ずーっと、待ってたんだから。
きてくれよ。 なあ。
・・・やっぱり、ゴーレムじゃだめかい?
お人形さんじゃ・・・ あっ。
「ビーディ。 こんなに、冷えて・・・
よかった。 きみが無事で、よかった」
あ、あ、あ。 あっ・・・ あ・・・
そ、そんなとこ、はずかしいって・・・ あ・・・
「ああ、ビーディ・・・ ブリジッド!」
そ、その名前はやめてくれよ。 照れるんだからさ・・・ あっ。
あ、あ。 あうっ・・・ ん・・・
「・・・中まで、こんなに冷えてしまってる」
だ、だめだよ・・・ やめてよ、あっ・・・
や、やめて。 そこ、こねないで。 かきまわさないで。
おかしくなっちゃう・・・
「よかった。 芯は、まだ、こんなにも熱い」
あぁ、熱い・・・ あんたも、こんなにも、熱いよ。
あう、はげしいよ。 乱暴だよう・・・
あたし、燃えるようだよ。 ああっ、壊されちゃうよ・・・
とけちゃう。 あたし、とけちゃうっ・・・
・・・ありがとな、メイヴ。
いつか借りは返すぜ。
17/10/05 22:32更新 / 一太郎