連載小説
[TOP][目次]
第二回 「遊園サバト」
 前回の企画の反響が大きく、執筆の励みとなっている。読者と全ての魔道探求者、人魔問わずに感謝を申し上げる。

 さて、第二回となる紹介は、「モモニカ・サバト」だ。あなたが小さな女の子の場合、女児向けアパレル「ティーンズチャーム」の名前を聞いたことはなかろうか?あるいは、人間の親御さんでも子どもにせがまれて知っているだろう。はたまた、幼女によからぬ気持ちを寄せる諸兄も、あの健康的な衣装が、気になっているのではないか?

 実は、あのブランド立ち上げには、創設者の「遊園の色山羊」モモニカさまが関わっている。実際はサバトの"制服"だが、あそこに参画している「おに〜さん」には組織運営や経営に携わる者も多い。制服のデザイン性が人気と知るや、宣伝と新人獲得に商工ギルドに売り込んだようだ。

概要:モモニカさまが立ち上げたサバトであり、彼女のプライベートの友人とそのおに〜さんにより設立された。コンセプトは、「遊ぶこと」である。彼女らの拠点は、明らかに外観より内部が異様に広くなっている。人工的な草花と樹木、偽りの太陽と青空、遊び狂う少女とおに〜さんの声にならぬ歓声と言葉に表せぬ絶叫、そして嬌声の混じる
「愉しい世界」が広がる。

 私の説明より、実際に所属している魔女と使い魔(おに〜さん)の言葉の方が伝わると思うので、抜粋する。

魔女ルディア(以下ルディ)「あ〜しとおに〜さんは、道で歌ってるとこで出会ったの!」青年の腕に抱きつく。

魔女コレクトラ(以下コレ)「"道で歌っている"とは、具体的には?」メモを取る姿すら、知的でかわいらしい。

ルディ「えっとね〜?なんで、歌ってたん?」青年に顔を向ける。

アキュヒュロスおに〜さん(以下アキュ)「それは、僕が吟遊詩人(うたのおにいさん)だったからだよ」白い歯を見せて笑う。

コレ「うたのおにいさん?どういう?」困惑した顔すら、その美貌は翳ることすらない。

アキュ「そのままの意味さ。僕は、かつてこのリュートと歌声一本で大陸の各地で公演したのさ」どこからともなく、楽器を取り出す。転移魔法の一種か。

ルディ「アキュに〜は、おうたがうまいから、色んな王様やエライ人にお金もらえたんだって〜ね〜?」自慢気にアキュヒュロスの胸に頬を擦り付ける。

アキュ「ね〜。歌は良いものさ〜♪ちっちゃい子〜も〜、僕にいちこ〜ろ〜さ〜♪」リュートを掻き鳴らし、歌を歌い始める。(計測したところ、7分超の大作であった)

コレ「…一旦、中断しましょうか」呆れた顔もかわいいが、その後興が乗って全力で聞き入る姿には感動すら覚えた。

追記:歌唱時に喉仏のあたりには、魔法刻印が浮かんでいた。察するに、歌声を詠唱代わりに魔法を発動する「詩歌魔法」の使い手か。

追記2:吟遊詩人崩れや、引退した肉体競技者は、実際に遊園サバトに勧誘されやすい様だ。前者は、歌唱による発生訓練と単純な娯楽のため。後者は、体操や体力作りのコーチング並びに無限とも言える魔女達の遊び相手だろう。
25/06/10 20:31更新 / ズオテン
戻る 次へ

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33