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偶像☆十二生肖
 霧の大陸は、峻厳なる山岳と雄大な河川、豊穣たる平野から荒涼とした高原まで様々な姿を見せる。当然、そこには数々の魔物や神仙が潜んでいるのだ。

 特に歴史を書に残すことが盛んなこの地では、書物にそれらの記録が多く残っている。「山海経」は、その中でも名の知れた名著である。

 OP後、深山幽谷の中に、ぽつんと庵があり、その前には2人の人物がいた。片方は、小さな童女のようで、もう片方は、成人しているようだった。

李老師(幼女師匠:ナビゲーター)(以下、リー):◯◯(プレイヤー)よ。おぬし、道士として修業を収めたと認めよう…わしに勝てたらの!

 師匠と新人道士のチュートリアルバトルが開始する。師匠は、山羊のような角を見せる。イベントで勝利する。

リー:おおっ!こりゃ、老骨にはかなわんて…いつつ。「麒麟もおいては、馬にも劣る」か…よくやったぞい、◯◯!」

 師匠が、妖仙だったことに驚く。

リー:なんじゃい?わしのことじろじろ見おってからに…まあ、昔から「仙姿玉質:仙女は宝石のような美貌を持つ、美魔女」と言うからの!

 主人公、師匠の頭に指を向ける。李老師の目線が、そちらに向く。

リー:あっ!バレてはしょうがないのお!そうじゃ、わしは妖仙だったのじゃ。カン(バフォメット:羊偏に患)と言っての、まあよいわ」

 説明パートに入る。霧の大陸には、三つの国が割拠し、更には仙人や妖怪が介入しているという内容。

リー:わしは、人界に平和をもたらしたいと、かねてから考えておっての。おぬし、一人前と認めるから、わしの頼みを聞いとくれんか?

 仙界は、人界にあまり介入できない。しかし、ある例外が存在する。

リー:我らは、只人の前に出るために、化身を取る。直接出れば、彼らに強い影響を与えすぎるからじゃ。わしも、ほれ!

バフォメットから、老人の姿へと変身する。

リー:太上老君と巷では呼ばれとる。わしのように、権現(アバター)で人界で活動する者は多いんじゃ。三皇五帝とかいう偶像(アイドル)や、太公望を筆頭とした崑侖(コンロン)公社、妲己や十天君(箱推し系)もかつて所属した金鰲(キンゴウ)唱片(レコード)会とか聞いたことあろ?

 なんと、彼らもまた、妖怪や神仙の類いだったのだ!コンロンとキンゴウは、人間史上主義の「四霊国」と魔界国家「四凶国」に肩入れしていたのだ!しかし、一般には彼らもアイドルやアバターとして認知されている。

リー:ここからが、肝心要。わしがかつて、三清(トリオ)を組んどった連中が、コンロンの社長『元初天尊(ゲン君)』とキンゴウの取締役の『通天教主(ツーちゃん)』なんじゃ。あやつらよりも、信仰(ファン)を集めねば、いかんのじゃ

 主人公の前に、十人の男女の幻影が現れる。彼らは、「四神国」独自のアイドルである「天干10」である。人魔の共存を目指す国なので、彼らは「人と妖怪のコンビ」で構成されている。

リー:偶像の癖して、男女(なんにょ)で売り出して、うらやま…けしからん連中よ!まずは、こやつらを負かすことを目標に、おぬしは天干(十干:五行を兄{陽}と弟{陰}で分けたもの)に対抗して、地支(十二支)の集団を作るのじゃ!それにしても、兄か…  おぬしがグーグ(おにいちゃん)になっとくれてもよいんじゃぞ…

第一章 新人道士と十二娘々!!

第一話「子:義の火鼠」
報酬:特訓と依頼(デイリークエスト)の開放

ストーリー:主人公が、始めに降りた人里は、ゴロツキに悩まされていた。ゴロツキに難癖をつけられるも、道士は俗世に無暗に手を出せない。しかし、村人の危機に、道場主の娘、「単火焰(カエンチャン)」が立ち上がる!

カエンチャン「私が来たからには、大丈夫ですよ!」「悪漢共に御仏の慈悲は無用!」「義を見てせざるは勇なきなり…道士様、私も御供します!」「ク、クーアイ(可愛)!?…へんなこといわないでください!」

 燃え上がるような、真っ赤な髪。主人公より小柄だが、正義感と武術の腕は、ピカイチ。そのしなやかな身のこなしで、舞踊も戦闘も一線級。だけど、人前で歌うのは恥ずかしくて、顔から火(文字通り)が出てしまう。

第二話「丑:智の白澤」
報酬:「山海経」(キャラクター図鑑)とストーリーログ機能開放

ストーリー:道場に間借りし、カエンチャンと共に、振り付け等の修行を行う主人公。そこに、一人の訪問者が現れる。彼女は、「山海経」の写本を持つ、白澤であったのだ。主人公に、一つの問答を行う。その名を「歳刑(サイケイ)」。

サイケイ「わたくしの智恵、お役に立てれば幸いです」「わたくし、実は八人姉妹なんです」「富は一生の宝、智は万代の宝とも申します」「貴僧は書を焚きますか…天下万民の秩序安寧と引き換えならば」

 「東望山に多く獣あり、その内の一つを白澤と言い、言葉を話すことができる」。彼女は、自分について詳細に語る。妖怪について、あらゆる知識を主人公に教授する。普段はおっとりしているが、書物と徳に関しては厳格である。

第三話「寅:勇の人虎」
報酬:武器庫の開放

ストーリー:サイケイによれば、東の山にて人虎が独り修行しているという。主人公らが向かうと、確かに人虎が一人で黙々と槍を振るっている姿を見つけた。一行を発見するや否や、咆哮を浴びせ、槍を向ける。一筋縄ではいかない!やあやあ、我こそは「銀完杏(ギンカンキョウ)」なり!

ギン「くっ、殺せ…いや、敗者が勝者に命令なぞ」「御坊の露払い仕まつる!」「大勇は怯なるもの…下衆といちいち争うことはない」「私は、かつてこの地の遥か東にいた。人間になろうと、熊(グリズリー)の友と誓ったが…私はついぞ果たせなんだ」

 勇猛果敢な女武将。人を避け、山中で修養と演武に明け暮れていた。しかし、道士らの実力と人格に、彼らの天下泰平(アイドルの頂点)という目標に協力を申し出る。その身体能力はもちろん、咆哮で鍛えた発声も強力。更に、類い稀な判断力から、チームのまとめ役も努める。

第四話「卯:仁の玉兎」
報酬:脱兎(一日数回だけ戦闘から即時撤退できる)と秘薬調合(素材の錬金)

ストーリー:満月の夜、竹林に光る何者かを発見。チームで捜索することで、その正体は玉兎(ワーラビット)の「綾弦(リョウゲン)」であると判明した。彼女曰く、天に、月に還りたいと。一行は、還る方法が見つかるまで行き場がないなら、「十二生肖」に参加しないかと打診するが…

リョウ「偶像(アイドル)ねえ?ぼく、急いでるんだけど?」「お坊さんは、良いよね。ぼくらと違って、ゆったりできてさ…」「仁者は山を好むんだってさ?ぼくは、川のように早く還りたいけどね」「お坊さんのさ、何て言うか…ふわふわした感じ?ゆったりしすぎてると思うけど、嫌いじゃないか…な」

 月から来た兎。せっかちな性格で、皮肉屋だが、行動は優しいものだったりする。霊薬作りが得意で、チームの回復役を務める。また、発達した脚力からの大ジャンプ、スピーディーな振り付けで、小柄ながらとても躍動感がある演技を行う。

第五話「辰:礼の龍」
報酬:衣装部屋開放

ストーリー:龍が空を舞っているという噂を聞いた一行。最近、雨がよく降るようになったことと関係があるのか、実際に調査に向かう。彼らが見つけたのは、みすぼらしい身なりながら、気品のある龍であった。彼女の名前は、「敖嬌姫(ゴウキョウキ)」、北海竜王が娘であった!勘当された彼女は、十二生肖に喜んで参加することに…

キョウ「お父様を絶対に見返してやりましてよ!」「まあ、道人さんたら!わたしが美しいだなんて、言うまでもないことでございましょ!ありがとうございますわ!」「衣食足りて礼節を知ると申しましょ?だから、あの服を着てもよろしくて?」「…それが貴人の役目なれば、わたしは道人さんの守り手となりましょう」

 北海竜王「広沢王」の娘。実家での厳格な生活に嫌気がさして、抜け出してきた。しかし、勇み足で下界に降りたは良いものを、悪徳宗教団体に騙されて、広告塔(教壇は天に認められている)のパフォーマンスを行っていた。下半身の構造から、舞踊は行わないが、その分飛行能力や天候操作で演出担当する。美声も天下一品。

第六話「巳:信の酸與」
報酬:コンセプトアート開放

ストーリー:メンバー揃って歌や舞踊の練習と仙人修行の日々。しかし、何者かの視線を最近感じる一同。ついには、物陰に隠れる曲者を探し回ることに。練習を覗いていたのは、なんと羽の生えた蛇人(バジリスク)ではないか!「山海経」によれば、名前は「酸與(サンヨ)」という。恥ずかしながらも、彼女も仲間に加わりたいと申し出る。

サンヨ「…ふひひ、頑張ります」「道士殿…なかなかお目が高いですな」「隠れたる信あらば顕れたる利生あり…信じればいつか叶いますよね…」「邪魔する方々…石にしちゃいまーす…ふひひ」

 西の大陸で言うところのバジリスクに相当する妖怪。恥ずかしがりで、人前に出るのは避けるが、実際は寂しがり。偶像(アイドル)になれば、皆に好かれると思い、参加しようとしていたが、知らない人に話しかけられないためズルズルと隠れていた。信用した相手にはグイグイくるタイプ。その声は人を恐慌させるので、小声。絵描きが趣味(コンセプトアートは、彼女が書いた設定)

第七話「午:疾の駮」
報酬:ファストトラベルと戦闘スキップ

ストーリー:北方から、馬賊(ケンタウロス)が大挙して押し寄せていると騒ぎになっていた。一行は、長城に向かった。しかして、人馬の群れは雨のような矢を放ち、軍が打って出れば即座に撤収。寄せては返す、波のようであった。主人公は、行き掛かりから、族長と一対一で話し合うことに…名、ウェイフトゥ…お前らいう駮(ハク)だ。覚えろ

ハク「サインバイノー(こんにちは)、腹減った」「◯◯ノヨーン(様)。お前、大丈夫か?」「言葉追うな、牛追え。お前らいう『兵は神速を貴ぶ』?とにかく、急げ」「お前たち、ハーンのモーリ(馬)じゃない。だけど、ハクのシャーズガイ(ワカサギの群)だ。一緒にがんばるぞ」

 霧の大陸の高原に住まうケンタウロスの族長。駮とは、「一本角の馬(ユニコーン)」の姿を取る。ハーンの命令で、南下部隊を率いていたが、主人公との勝負に引き分け、一行をシャーズガイと認めた。言葉に慣れていないので、ぶっきらぼうな印象がある。また、定住生活に馴染みがないため、庭や裏山でテント生活している。有事の際には、ギンやカエンチャンと一番槍を争う。

第八話「未:静の土螻」
報酬:寝室(寝起きと就寝時イベント)開放

ストーリー:リー老師による連日の過酷な特訓に、全員疲れ果てていた。サイケイによれば、近くの都市によく眠れると評判の睡具屋があるという。主人公は、早速店に向かうが、疲労困憊に加えて、店主の癒し系な話し方に眠気を催してしまう。起きた時には、彼女「土螻(ドロウ)」の顔が!?

ドロウ「あれ〜?どおしましたぁ?」「ドロウはぁ〜老師(せんせぇ)のぉためにちょっと頑張りますぅ」「樹ぃしずかなれども…何でしたっけぇ?とにかくぅ、早く終わらせて、寝ましょおよ〜」「むにゃむにゃ〜…起こさないでぇ…」

 四本角の羊の妖怪(ワーシープ)。歩く(ほとんど寝てるが)睡眠導入剤である。ほとんど練習や修行には参加しないが、本番ではわりと演技する。ファンサービスは必要最低限だが、そこが良いとする固定層がいるらしい。睡眠に関することは全力で、拠点の寝室を全員に合わせて改築した。

第九話:「申:掠の魃」
報酬:軒轅鏡(一日一回、天帝に徳を判定して貰う=デイリーピックアップ)開放

ストーリー:連日の猛暑に、一行も天下も疲弊していた。原因を探る内に、女神「魃(バツ)」の伝承に行き着く十二生肖達。かつての時代を統べる帝「黄帝軒轅」の娘、父により遥か北へと封ぜられたはず。ハクの先導のもと、主人公達は北方へ向かう。冬には極寒になる北の大地を暖める彼女は、何故、再び南に来ていたのか?

バツ「アタシは、バツってんだ。よろしくな!」「ああっ!?坊さん、しっかりしろい!」「心頭滅却すれば火もまた涼しってか?じゃあ火力あげてくぜ!」「皇女に生まれ、兵器として扱われ、今じゃ山猿…諸行無常とはこのことね…」

 女神であり、地上を統治する皇帝の娘であった。父のために尽くしたが、その強すぎる熱と旱の力を疎まれ、僻地に左遷された。その地のカク猿に認められ、彼女らの女王をしている内に彼女もまた猿の妖怪と化した。強すぎる力により、腕と脚、目を片方ずつ失っている。普段は、鋼鉄製の義手と義足を付けているが、戦闘時や気が昂ると溶けてしまう。今は姉御肌だが、ふとした時に皇女の顔を見せる。

第十話「酉:幼の雉鶏精」
報酬:時空の秘術(過去ミッション回想や復刻など)開放

ストーリー:中々の面子が揃ってきた十二生肖。しかし、リー老師曰く、「小さな女の子の目線が必要じゃ!」とのこと。彼女のサバ…きょうだ…とにかく、知り合いの有望株を参加させることに。呼ばれてっ☆飛び出てっ☆じゃじゃじゃじゃん☆!(ロリッ☆)我が名はっ☆魔法少女☆まじかる孔宣(コーセン)っ☆、と小さな鳥人(ハーピー)が現れた!

コーセン「コーちゃん☆推参☆」「◯◯ちゃん☆ううん☆◯◯にーちゃん☆まかせてっ☆」「二人のこころが通じるのは☆黄絹幼婦って言うんだって☆なんかえっちだね☆
」「喜媚(キビ)ねーちゃんの夢…コーちゃんが果たすからっ☆」

 一時代を築いた偶像「三妖妃(ダッキシスターズ)」の次女であった、胡喜媚(コキビ)の実妹。リー老師のサバ…弟子の一人で、主人公の「妹(順番的には姉)」弟子である。実姉に憧れて、自分も偶像の頂点に立ち、解散した姉たちの名誉を回復したいと願う。種族は、雉鶏精(ニワトリのハーピー)で、何故か西の大陸の服装をしている。時空を操る妖術が得意。

第十一話「戌:忠の狡」
報酬:散歩(街や村を散策して、アイテムや素材をより回収しやすくなる)開放

ストーリー:霧の大陸の南には、犬のような種族の暮らす地域がある。一行が営業に向かうと、物珍しさか、はたまた主人を求めているのか、盛大な歓待を受ける。そのうちの一頭が、特に強く参加を希望する。リー老師としても、「ロリ系…じゃなかった、とにかく色んな類がいて損はないじゃろ」の鶴の一声で、狗精(クーシー)の「狡(コウ)」が加わることに。

コウ「お役に立てるなら、私は何でも頑張ります」「ご主人様と皆さんが全力を尽くせるように、このコウにお任せあれ」「忠ならんと欲さば孝ならんと欲す…故郷より今はご主人様のため」「それにしても、リー老師はズボラが過ぎるのでは?」

 犬のような姿をした妖怪。小柄な身体を目一杯使って、日々の雑事をこなす縁の下の力持ち。仙人修行にも、偶像訓練にも真面目に取り組み、器用万能な立ち回りを行う。しかし、絶対に主人公の近くから片時も離れようとはしない。リー老師は、雇用主にあたるが、普段のだらけきった様子や弟子に丸投げする態度から、たまに威嚇する。

第十二話「亥:親の合窳」
報酬:オンライン対戦の開放

ストーリー:いよいよ、最後の一人を残すのみとなった主人公達。しかし、中々候補になる者が見つからない。その時、急報が告げられた。ごろつきが、復讐のため、より凶悪な山賊を連れて舞い戻ったのだ。麓の街の危機に、十二生肖はすぐさま向かう。山賊の頭は、主人公を見るや嗜虐的な笑みを浮かべる。俺様は、合窳(ゴウユ)、そして今日からお前の飼い主だ!

ゴウユ「俺様が出りゃ一網打尽よ!」「クソ坊主!気張れよ!」「打つも撫でるも親の恩と言うがよ、俺様は打たれるのも、打つのも、撫でるのも、撫でられるのも大好きなんだよ!」「痛えよな?大丈夫、お前の痛がる姿で俺様も痛いんだよ。もっと痛くなろうぜ!」

 猪の妖怪、合窳(ハイオーク)。朱山賊(オーク)を率いて村々を襲い、軍隊すら粉砕する、「四神国」切っての大頭目。相手の痛がる姿に共感して、自分も痛くなり、それに興奮して更に強くなる豪傑。偶像になることも、「恥ずかしい、けど、だから良い」とむしろ乗り気であった。山賊を率いていただけあり、的確なアドバイスができるサブリーダー的立ち位置。

リー老師「今なら一章復刻中!始めるなら好機じゃぞ!」

25/05/15 19:20更新 / ズオテン

■作者メッセージ
薬屋のひとりごと、黒神話:悟空…もっと中華風な創作あってもいいよねっていう、霧の大陸を舞台にしたRPGの妄想。

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