6:生死分かつとも、詩で2人は繋がっている
道ならぬ恋と知っていたけれど、貴方様はあの試合を勝ち抜いてくれた。昼には笑顔を向けて、夜には窓の下からリュートの音を聞かせてくれました。
埋められぬ身分の差、貴女様への恋は秘すべきだった。しかし、貴女様は私に笑みを返してくれた。私の拙い演奏に、澄んだ歌声を添えてくれた。
貴方様のためなら、公女の立場など捨てられた。
貴女様の愛ゆえに、ふさわしい身分を手に入れよう。
どうして、わたくしのそばにいてくださらないの。
どうして、わたしがみをたてるまでまってくれない。
お父様(侯爵閣下)は、王家との婚姻を望まれる。
わたくしはあなたがいれば、しあわせはなにもいらない。
わたしはあなたがしあわせならば、なにもいらない。
だから、わたくし(私)はその杯を手に取った。
だけど、
貴方がいないのなら、目覚めなければよかった。
貴女がいないのなら、そのまま共に眠ればよかった。
〜〜〜〜〜
老騎士、ヴィルヘルムは泣きそうな顔をした。相対する女侯、コルネリアは一筋の泪を流したが、その意志は戦いが避けられぬことを理解していた。
「貴女は…毒杯を共に飲み干した、あの時のままだ。私はこんなにも老いさらばえたのに」彼は、腰の双剣を抜いた。「老いた?貴方の瞳は、わたくしが最期に見たときと変わらず、美しい琥珀色。その生気は、むしろ若々しく見えますわ…」彼女は、扇を開き口元を隠して言った。
「買い被りすぎです、な!」ヴィルヘルムは、左手に持つ短剣を投げた。「…!」コルネリアは、扇で苦もなく払うと、騎士が走り出したのを見て、左手を翳した。一瞬後に、暗黒の魔力が放出された。
「はあっ!」老人は、細い体に見合わぬ脚力で、高く跳んでかわした。彼は、空中で弾かれた短剣を拾い、そのままワイトの前に着地した。「やっ!せい!はっ!」「…ふ!」右手の長剣の振り下ろし、扇で防がせ、短剣による突きを繰り出す。
コルネリアは、左手に突き刺させ、ヴィルヘルムの両手を押さえ込む。「どこが『老いさらばえた』なのでしょう?むしろ、以前よりも素早くなったのでなくて?」アンデッドの強化された膂力は、人間、それも老境に入った者では敵わない。2人は、息がかかるほどの距離で硬直、いや老騎士は押された。
「くっ…貴女は強くなりましたな」「ええ…起きた時にはお父様も、お母様も、貴方も、私を知る者は誰もいませんでした」女侯は、悲しみを隠さず言った。「領民を、城を、そして自分を守るために…強くなりましたわ」
「ヴィルヘルム様…どうして?」「貴女を今でもお慕いしている…だが、陛下にも恩義があるのですよ」老騎士は、自嘲気味に答えた。「恩義?」「ええ…」
「2人で逝けるように取り計らって下さったのですから…」ワイトは、彼が目を向けた、宮殿のバルコニーを窺った。「あれは…」王冠を戴き、王笏を手にした仮面の男が、光の矢を放とうとした。「今度こそ、私と貴女で!」ヴィルヘルムは、力を振り絞った。まるで、恋人を離すまいと抱き締めるがごとく。
〜〜〜〜〜
ハインリヒは、中庭の死闘を眺め、ゆっくりと立ち上がった。年齢からは考えられない曲がった腰を糺すと、彼はツェプトーア・デス・ゲビータース(君臨の権能)を掴み取った。
彼は、王家に伝わる秘法を研究し尽くした。時間の操作、禁術たるそれは、いくらでも活用法があり、その成果をエサに教会すら黙認させた。(時を弄べば、必ず報いが来る、か…)仮面の男は、亡き父の言葉を反芻した。しわくちゃの手がその結果を雄弁に語った。
時針が空中に形成され、矢となり、槍となり、柱となった。それは、一直線に中庭の騎士と貴婦人を貫いた。一瞬、空気が吸い込まれたかと思えば、すぐさま爆発を起こした。爆心地には、半透明のドームが形成され、色を失った2人が取り残された。
「…ヴィルヘルムよ、コルネリアよ、余の餞別はお気に召したかね?」ハインリヒは、聞こえぬことを承知で呟いた。彼の輪郭が歪んだと思えば、瞬時に中庭に到着した。彼は、灰色のワイトから遠慮なく心臓を抜き取った。
「余の時間は、これで…」仮面の王は、血の通わない心臓を手に城の最上階へと、瞬く間に飛んでいった。それを遠くから見下ろす赤い眼に気づくことなく…
〜〜〜〜〜
色彩を欠いた空間に、白髪の騎士と、屍の女侯が重力を失い漂っていた。「…ここは、あの世なのか?」「いいえ、彼岸はもっと暗く寂しい場所でございます。わたくし達は、異界に囚われてしまったのです」「なんと…」
(こんなはずでは…私はただ、貴女と)ヴィルヘルムは、コルネリアの顔を見て、言葉を飲み込んだ。彼女は、泣きそうな顔をした。
「…ヴィルヘルム様」「…」2人は、お互いを見た。「…私は、貴女の死を認められなかった…」「…だから、陛下の…ハインリヒの計画に乗った、と?」「…申し開きもない。ただ、あの日終わるはずだった2人の物語に終止符を付けたかった…」
「…」コルネリアは、床のない空間を歩いていた。「…どこへ」ヴィルヘルムは、彼女に手を伸ばして、躊躇した。もはや、彼女は戻ってきはしまい。彼は、それほどのことをしでかしたのだ。
「…嗚呼、コルネリア。私は…ただ」「ただ、何でございますの?」「…え」いつの間にか、貴婦人は騎士の斜め上の場所に立っていた。その手には…「…それは」「あの日、貴方はおっしゃいましたわね。『君に唄ってほしい曲が出来上がった』と」彼女は、リュートを彼の前に見せた。
「どこでこれを?」その言葉に、コルネリアは自分の胸を指差した。「この空間は、時を失っています。わたくしと貴方の記憶が過去も未来もなく、わたくし達同様揺蕩うだけ」彼女は、ヴィルヘルムの手を無理やり掴み、リュートに触れさせた。その時鳴った音は、かつての数十年前の思い出を甦らせた。
「ああ…あああ…」老人は、泪を流してリュートを見た。「此度のことは、貴方と言えど許しがたいけれど…わたくしと貴方、未練によって今再び会えたのは喜ばしいと思いますわ…」ワイトは、彼の頬に手を添えた。「…またお聞かせ願えませんか?」「…ええ、貴女のためなら」
ヴィルヘルムは、おそるおそる弦に触れた。その音は不恰好に歪んでいた。彼は、錆び付いた記憶を手繰り寄せた。最初は躊躇いのあった指運びが、徐々に慣れた手付きに成っていった。
コルネリアは、かつて楽しんだ恋人の演奏を見守った。不器用な苦闘も、記憶を呼び起こす真剣な眼差し、そして段々と音を奏でるごとにその気になっていく姿も、全てが愛おしかった。いつしか、彼女は自然に声を出していた。
そこには、老いた騎士も、屍の女侯もいなかった。愛を誓いあった、かつての恋人達がいた。2人は、時間を忘れて、ただ思慕を奏で、恋情を歌い上げた。1曲演奏し終えると、コルネリアはヴィルヘルムに抱擁した。ヴィルヘルムは、一瞬驚いた後、ゆっくりとコルネリアを受け入れた。
その時、彼女らの背後で拍手が響いた。「「…!?」」「ヴンダバ!」そこにはドミノマスクの女性と、バツの悪そうな壮年の男性がいた。「いやあ、見たかねヨーゼフ氏…これだよ!悲恋に引き裂かれし男女!それが巡り巡りて敵として再会!最終的に和解する!」「はあ…」
「…トイシュング?」「ヨーゼフ殿?何故この場に…」2人は、あわてて抱擁を中断した。「コルネリア、逢瀬を邪魔する野暮な真似ですまない…だが、ある方…君の友人に頼まれたのでね」「友人…?」
「うふふ…良いもの見せてくれたわね」いつの間にか、空中に逆さに立つ真っ赤なマントの人物がいた。「ノイン様!?」「大団円は、敵をどうにかしてからじゃないとね…」ノインは、牙を剥いて笑った。彼女の力が空間に、大きなヒビをいれていく。
〜〜〜〜〜
「ふーっ…ふしゅーっ…」ハインリヒは、興奮と疲労に荒い呼吸になっていた。彼の顔は、強い光に陰り、皺の深さと相まってまるで顔がないかのように、落ち窪んでいた。「もうすぐ…すぐに余は…」
光の柱の中には、3つの呪物が浮かんでいた。王笏「君臨の権能」、時の魔石を埋め込んだ冠、そして「不死の心臓」であった。彼は、その光に触れた。入れた瞬間、手指が若返っていく。「余、余の宿願は…成れり!」更に一歩、光に入ろうとした瞬間…
「!?」彼の後ろの床は破壊され、その穴からはバチバチと魔力を帯びる女が姿を表した。その胸には、大穴が空いているが、ないはずの心臓は明滅するものに置き換わっていた。
「陛下、いえハインリヒ…わたくしの心臓をお返しくださらないかしら?」青ざめた貴婦人は、優しげな笑みで催促した。だが、その威圧感はハインリヒの背を震わせた。
「どうやったかは知らぬが、できぬ相談だ」「つまり…」「貴様をここで始末すればよいだけのこと!」彼は、光を帯びた杖と王冠を身につけた。全身が輝き、生命力が満ちていく。「ぐうううっ!」強大な魔力に苦悶しつつ、ハインリヒは王笏を向けた。「…わたくしと、ヴィルヘルム様へ、そして何より我が友と民のため…あなたを止めましてよ!」コルネリアは、扇を全開にした。
埋められぬ身分の差、貴女様への恋は秘すべきだった。しかし、貴女様は私に笑みを返してくれた。私の拙い演奏に、澄んだ歌声を添えてくれた。
貴方様のためなら、公女の立場など捨てられた。
貴女様の愛ゆえに、ふさわしい身分を手に入れよう。
どうして、わたくしのそばにいてくださらないの。
どうして、わたしがみをたてるまでまってくれない。
お父様(侯爵閣下)は、王家との婚姻を望まれる。
わたくしはあなたがいれば、しあわせはなにもいらない。
わたしはあなたがしあわせならば、なにもいらない。
だから、わたくし(私)はその杯を手に取った。
だけど、
貴方がいないのなら、目覚めなければよかった。
貴女がいないのなら、そのまま共に眠ればよかった。
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老騎士、ヴィルヘルムは泣きそうな顔をした。相対する女侯、コルネリアは一筋の泪を流したが、その意志は戦いが避けられぬことを理解していた。
「貴女は…毒杯を共に飲み干した、あの時のままだ。私はこんなにも老いさらばえたのに」彼は、腰の双剣を抜いた。「老いた?貴方の瞳は、わたくしが最期に見たときと変わらず、美しい琥珀色。その生気は、むしろ若々しく見えますわ…」彼女は、扇を開き口元を隠して言った。
「買い被りすぎです、な!」ヴィルヘルムは、左手に持つ短剣を投げた。「…!」コルネリアは、扇で苦もなく払うと、騎士が走り出したのを見て、左手を翳した。一瞬後に、暗黒の魔力が放出された。
「はあっ!」老人は、細い体に見合わぬ脚力で、高く跳んでかわした。彼は、空中で弾かれた短剣を拾い、そのままワイトの前に着地した。「やっ!せい!はっ!」「…ふ!」右手の長剣の振り下ろし、扇で防がせ、短剣による突きを繰り出す。
コルネリアは、左手に突き刺させ、ヴィルヘルムの両手を押さえ込む。「どこが『老いさらばえた』なのでしょう?むしろ、以前よりも素早くなったのでなくて?」アンデッドの強化された膂力は、人間、それも老境に入った者では敵わない。2人は、息がかかるほどの距離で硬直、いや老騎士は押された。
「くっ…貴女は強くなりましたな」「ええ…起きた時にはお父様も、お母様も、貴方も、私を知る者は誰もいませんでした」女侯は、悲しみを隠さず言った。「領民を、城を、そして自分を守るために…強くなりましたわ」
「ヴィルヘルム様…どうして?」「貴女を今でもお慕いしている…だが、陛下にも恩義があるのですよ」老騎士は、自嘲気味に答えた。「恩義?」「ええ…」
「2人で逝けるように取り計らって下さったのですから…」ワイトは、彼が目を向けた、宮殿のバルコニーを窺った。「あれは…」王冠を戴き、王笏を手にした仮面の男が、光の矢を放とうとした。「今度こそ、私と貴女で!」ヴィルヘルムは、力を振り絞った。まるで、恋人を離すまいと抱き締めるがごとく。
〜〜〜〜〜
ハインリヒは、中庭の死闘を眺め、ゆっくりと立ち上がった。年齢からは考えられない曲がった腰を糺すと、彼はツェプトーア・デス・ゲビータース(君臨の権能)を掴み取った。
彼は、王家に伝わる秘法を研究し尽くした。時間の操作、禁術たるそれは、いくらでも活用法があり、その成果をエサに教会すら黙認させた。(時を弄べば、必ず報いが来る、か…)仮面の男は、亡き父の言葉を反芻した。しわくちゃの手がその結果を雄弁に語った。
時針が空中に形成され、矢となり、槍となり、柱となった。それは、一直線に中庭の騎士と貴婦人を貫いた。一瞬、空気が吸い込まれたかと思えば、すぐさま爆発を起こした。爆心地には、半透明のドームが形成され、色を失った2人が取り残された。
「…ヴィルヘルムよ、コルネリアよ、余の餞別はお気に召したかね?」ハインリヒは、聞こえぬことを承知で呟いた。彼の輪郭が歪んだと思えば、瞬時に中庭に到着した。彼は、灰色のワイトから遠慮なく心臓を抜き取った。
「余の時間は、これで…」仮面の王は、血の通わない心臓を手に城の最上階へと、瞬く間に飛んでいった。それを遠くから見下ろす赤い眼に気づくことなく…
〜〜〜〜〜
色彩を欠いた空間に、白髪の騎士と、屍の女侯が重力を失い漂っていた。「…ここは、あの世なのか?」「いいえ、彼岸はもっと暗く寂しい場所でございます。わたくし達は、異界に囚われてしまったのです」「なんと…」
(こんなはずでは…私はただ、貴女と)ヴィルヘルムは、コルネリアの顔を見て、言葉を飲み込んだ。彼女は、泣きそうな顔をした。
「…ヴィルヘルム様」「…」2人は、お互いを見た。「…私は、貴女の死を認められなかった…」「…だから、陛下の…ハインリヒの計画に乗った、と?」「…申し開きもない。ただ、あの日終わるはずだった2人の物語に終止符を付けたかった…」
「…」コルネリアは、床のない空間を歩いていた。「…どこへ」ヴィルヘルムは、彼女に手を伸ばして、躊躇した。もはや、彼女は戻ってきはしまい。彼は、それほどのことをしでかしたのだ。
「…嗚呼、コルネリア。私は…ただ」「ただ、何でございますの?」「…え」いつの間にか、貴婦人は騎士の斜め上の場所に立っていた。その手には…「…それは」「あの日、貴方はおっしゃいましたわね。『君に唄ってほしい曲が出来上がった』と」彼女は、リュートを彼の前に見せた。
「どこでこれを?」その言葉に、コルネリアは自分の胸を指差した。「この空間は、時を失っています。わたくしと貴方の記憶が過去も未来もなく、わたくし達同様揺蕩うだけ」彼女は、ヴィルヘルムの手を無理やり掴み、リュートに触れさせた。その時鳴った音は、かつての数十年前の思い出を甦らせた。
「ああ…あああ…」老人は、泪を流してリュートを見た。「此度のことは、貴方と言えど許しがたいけれど…わたくしと貴方、未練によって今再び会えたのは喜ばしいと思いますわ…」ワイトは、彼の頬に手を添えた。「…またお聞かせ願えませんか?」「…ええ、貴女のためなら」
ヴィルヘルムは、おそるおそる弦に触れた。その音は不恰好に歪んでいた。彼は、錆び付いた記憶を手繰り寄せた。最初は躊躇いのあった指運びが、徐々に慣れた手付きに成っていった。
コルネリアは、かつて楽しんだ恋人の演奏を見守った。不器用な苦闘も、記憶を呼び起こす真剣な眼差し、そして段々と音を奏でるごとにその気になっていく姿も、全てが愛おしかった。いつしか、彼女は自然に声を出していた。
そこには、老いた騎士も、屍の女侯もいなかった。愛を誓いあった、かつての恋人達がいた。2人は、時間を忘れて、ただ思慕を奏で、恋情を歌い上げた。1曲演奏し終えると、コルネリアはヴィルヘルムに抱擁した。ヴィルヘルムは、一瞬驚いた後、ゆっくりとコルネリアを受け入れた。
その時、彼女らの背後で拍手が響いた。「「…!?」」「ヴンダバ!」そこにはドミノマスクの女性と、バツの悪そうな壮年の男性がいた。「いやあ、見たかねヨーゼフ氏…これだよ!悲恋に引き裂かれし男女!それが巡り巡りて敵として再会!最終的に和解する!」「はあ…」
「…トイシュング?」「ヨーゼフ殿?何故この場に…」2人は、あわてて抱擁を中断した。「コルネリア、逢瀬を邪魔する野暮な真似ですまない…だが、ある方…君の友人に頼まれたのでね」「友人…?」
「うふふ…良いもの見せてくれたわね」いつの間にか、空中に逆さに立つ真っ赤なマントの人物がいた。「ノイン様!?」「大団円は、敵をどうにかしてからじゃないとね…」ノインは、牙を剥いて笑った。彼女の力が空間に、大きなヒビをいれていく。
〜〜〜〜〜
「ふーっ…ふしゅーっ…」ハインリヒは、興奮と疲労に荒い呼吸になっていた。彼の顔は、強い光に陰り、皺の深さと相まってまるで顔がないかのように、落ち窪んでいた。「もうすぐ…すぐに余は…」
光の柱の中には、3つの呪物が浮かんでいた。王笏「君臨の権能」、時の魔石を埋め込んだ冠、そして「不死の心臓」であった。彼は、その光に触れた。入れた瞬間、手指が若返っていく。「余、余の宿願は…成れり!」更に一歩、光に入ろうとした瞬間…
「!?」彼の後ろの床は破壊され、その穴からはバチバチと魔力を帯びる女が姿を表した。その胸には、大穴が空いているが、ないはずの心臓は明滅するものに置き換わっていた。
「陛下、いえハインリヒ…わたくしの心臓をお返しくださらないかしら?」青ざめた貴婦人は、優しげな笑みで催促した。だが、その威圧感はハインリヒの背を震わせた。
「どうやったかは知らぬが、できぬ相談だ」「つまり…」「貴様をここで始末すればよいだけのこと!」彼は、光を帯びた杖と王冠を身につけた。全身が輝き、生命力が満ちていく。「ぐうううっ!」強大な魔力に苦悶しつつ、ハインリヒは王笏を向けた。「…わたくしと、ヴィルヘルム様へ、そして何より我が友と民のため…あなたを止めましてよ!」コルネリアは、扇を全開にした。
25/04/24 09:01更新 / ズオテン
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