連載小説
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後編
「聞いたか?」「元服したばかりで、密偵頭とは…」「彼奴の父が家老とはいえ、若輩者に謀が務まるかのう…」「そもそも、あれは誠に本物であろうか?」壮年から老年の武将達は、その日こぞってある者の噂話をした。それは、諜報を担う大役を、初めて烏帽子を冠ってからまだ一年経たぬ青年が務めるというものである。

青年は、一年ほど前隣国への偵察に初陣で向かった。しかし、部隊はある峠で謎の敵方の襲撃を受け潰走、名目上の大将たる彼は行方不明という失態を演じた。家老の嫡男たる若武者は、すぐさま捜索が行われたものの、痕跡一つ出なかった。数十日で「神隠し」と口にする者もいた。

それが、突然六月前に城の大手門に現れたのだ。当然、家中では不審を以て受け止められた。家老や一族、親しくしていた者が集められ、人相や素性を調べたが、本人と認めるしかなかった。

帰参してすぐ、青年はめきめきと頭角を表した。元服の折に形式的に受領した土地を精力的に練り歩き、領民の生活、地形や風土を調べ上げた。一月もしない内に、彼は領内で支持を獲得した。その流れで、隣国との物流や人の出入りを把握し、新参者でありながら調略に貢献すらした。

主君は若武者を気味悪がりながらも、実績と家柄から彼を重用するようになり、ここにきて密偵頭へ抜擢した。無論、他の家臣からの反発や不信の諫言が起きたものの、青年は逆にどうやったのか家中の後ろ暗きを調べ尽くしていた。皆が秘密を握られるようになり、彼を恐れるようになった。

また、口さがない者達には噂を立てられるようになった。曰く、夜な夜な寝所を抜け出して、何処かに走り去っていく。曰く、執務室の側を通り掛かると、部屋に他に人の出入りがないにも関わらず、何やらぼそぼそ独り言をしている。曰く、廊下ですれ違う影には角が生えている。


青年は、机の上に巻物を開き、暫し眺めていた。「ほおう?あることないこと、お主について書き連ねてあるぞ」
後ろから、酒焼けした声が聞こえた。彼が振り替えると、自分の背から、影法師が天井にまで伸び上がり、角を生やした。見る間に、真っ赤な大鬼が壁から姿を現した。

「これは、紅葉殿…何か御用でしょうか?」若武者は、鬼を一瞥した後、机に向き直った。「何か御用で、とはまた他人行儀よの?決まっておろう、お主の進捗を聞きに態々足を運んだのよ」紅葉は、天井に頭を擦りながら猫背気味になり、彼を見下ろして言った。

「特に、これといって…強いて言えば、今年は稲の育ちが良く、豊作になりそうです」青年は、密書に目を通したり、家中の通文事情を検閲しながら答えた。「ふむ?それは善きこと。旨い酒が出来そうじゃわい…じゃが、ワシが聞きたいのは、いかに大名連中の掌握が進んでおるかと」

「わたくしの見立てでは、四分五厘ほどかと…反発や疑心は出続けているものの、排除するための証しは掴めていない様子。対して、わたくしは首尾良く密偵頭に就きました。我が君、一門衆、重臣のお歴々の秘めたるは我が手に集いつつあります」「ふむ、末恐ろしい男よの」「お陰様です」

「良い報せが聞けたら、何ぞ喉が渇いてきよった…」大鬼は、わざとらしく座り込み、若武者に目配せした。彼は、文簡を巻き取ると、部屋の隅の畳を取り払った。板張りが剥き出しになり、中には優に七升は入る酒壺があるではないか。青年は、腕に力を込めると赤く膨張し、片手で壺を担ぎ出した。

「ふふふ、酌をしてくれるかえ?」紅葉は、何処からともなく楓の絵の入った、盃を取り出した。若武者は、慣れた手つきで、壺から直に酒を注いだ。なみなみと注がれた酒を見ながら、赤鬼は牙を剥き出しに嗤った。そして、一口に呑みきった。「…うまいのう」青年には、その赤ら顔が色を深めたように見えた。

「甘くまろやかか口当たりじゃの…肴もあればと言ったら高望みかの?」紅葉は、舌嘗めずりしながら、彼に催促した。若武者は、酒を呑んでもいないのに、仄かに頬を赤らめた。「…今夜は何をご所望で?」「そうさな…瑞々しい若人の吻じゃ!」

赤鬼は、乱暴に青年の唇を奪った。「!」「くははは…酒より増して、お主も甘ったるいの?」「…紅葉殿も…甘い…鼻を貫くような…甘さにござる…!」「そうかえ?お主も言うの」

紅葉は、若武者を押し倒すと、再び口付けた。更には裂けた口を開いて、異様に長い舌を這わせ、首筋、胸、臍を甘噛みした。その度に彼は、脳天をつんざくような快楽に背筋を振るわせ、身を捩るしかなかった。「うまい…うまい!酒とおなじよ…寝かせば寝かす程に深みが出るわ!」「…あああ!」

大鬼は、青年の全身を隈無く嘗め回し、口付け、吸い尽くさんばかりであった。一通りの味見が終わる頃には、彼の身体は赤い斑にまみれた。彼女は、その様を反芻するように眺めるながら、盃を空にした。

「はあーっ…はあーっ…ご満足いただけましたか…?」「ん〜ん?」若武者は、怒涛のごとき愛撫に困憊し、思わず紅葉にこぼした。彼と鬼の真紅の目が交錯した。愉悦と嗜虐似細まる眼に、青年の背筋に恐怖と期待が同時に走った。

「満足?さて、お主のそんな様を見て、できるわけなかろうて」赤鬼は哄笑した。彼女の視線の先には、袴を押し上げる怒張があった。「欲しがりめ、まあいい気分にさせてもろうた手前、褒美をやらんわけにもいくまい?」「!」紅葉はそう言って、忍装束をはだけた。

素網ごしに、筋骨隆々たる真っ赤な鬼の肌が露になる。若武者は喉を鳴らした。固すぎず女性らしいしなやかな肉付き、しかしながらその重量感は、彼の知る多くの武士と比してすら巨大と言えた。そして何よりも、さらしで締め付けても存在感を放つ乳房に釘付けとなった。

「窮屈だの、ほれ脱がしてやる」「ああ、そんな…」「ワシにも、妹にも、今さら隠すものなどあらんじゃろうに」紅葉は、遠慮もなく彼の下履きを全て脱がした。「やはり、モノだけは立派な小童よな?」「そのような言い種…」

「黙って、ワシに身を預けよ!」「ううう!」赤鬼は、その胸で彼のそれをすっぽり挟み込んだ。「ほれほれ!」「くううぅぅう!」「暖かろ?存分に堪能せい!」「あ…それ以上は…」彼女は、怒張を挟んだまま上下に動いた。若武者は、ただただその刺激に身をくねらせるしかできずにいた。

「何じゃ?」「あ…だから!」「聞こえんなあ」「くう…それ以上は!」紅葉は意地の悪い笑顔のまま、動作を速めた。「どうかしたか?」「はあっ…その…」「その?」「うう…つまり…ああ!」「歯切れが悪いぞ…はっきり申せ!」「あっ!」赤鬼は乳房を更に力強く押し付けた。今や青年のそれは、粘液を出しびくびくと痙攣していた。  

「で…」「で?」「射精ます!」「射精せ!」言うが早いか、真っ赤な渓谷の中で真っ白な噴火が起きてしまった。紅葉の胸を白く塗り潰さんとする奔流は、彼女の口で受け止められた。「うぅぅう!」「…はあ、うまい!」乳房から溢れんばかりの精を赤鬼は豪快に嘗めとっていった。

「はあ…はあはあ…ふう」若武者は、肩で息をするのもやっとであった。だが、「まだまだ、夜はこれからぞ?」紅葉は彼を休ませる気など毛頭なかった。「…お許しを…」「許し?ワシからの褒美に許しがあるものか」「ああ…」

赤鬼は、一回り小さい身体を掴み上げると、また乱暴に口を吸った。するといかなる業か、青年のモノは直ぐ様その力を取り戻したではないか。そして、自身は畳に寝そべった。大の字に寝やるその開かれた両足の間は、既に十分に濡れそぼっていた。若武者は凝視するしかなかった。

「…ここまでお膳立てしたのじゃ…お主もすべきことがわかるじゃろ?」「…はい」「はよう来てくれ…」「…!はい!」「う…若いの…」青年は先ほどまでの躊躇いもなく、赤鬼の秘所に腰を打ち付けた。八尺を越える巨体が、その瞬間僅かに揺れた。

若武者は、彼女の腰を必死に掴んでいるが、それでも手に余る太さであった。「おお!いいぞ!」「…うっ…はい!」「もっと!」「ううう!」「もっとじゃ!」「くうっしめつけが…」紅葉の膣は、青年の怒張を全て包んで余りあるのに、その肉壁には全くゆとりがなかった。

灯火によって壁に映し出されたのは、淫靡で激しい影絵であった。小さな影が、大きな影にぶつかる度に、燭台が揺らめいた。「ああ!」「くうっ」「はあ!」「ううう!」赤鬼は、悦楽にその巨体を振るわせた。若武者は、必死に食らいつくも、段々と勢いを失っていく。そして…

「うっ…」「ああ!」二人の身体が内外で最も近づいた刹那、その胎内でついに両者が果てた。それと同時に、明かりはふっと掻き消えた。青年は精魂尽き果て、崩れ落ちたが、紅葉に抱き抱えられた。闇には、もう一つ真紅の眼の小さな影が現れた。「ふふ…どうやら、呉葉も着いたようじゃて…少し休め。まだまだ、夜は長うなる…」彼女は、若武者を慈愛に満ちた顔で抱きしめた。




25/03/22 00:36更新 / ズオテン
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