セクション6
01001010
そこは、不思議な空間であった。先程までの廃ビルの閉鎖空間とは異なり、開けた虚空めいた場所であった。「ン?アイエエエ?!」マサキは不意に下を向くと、驚愕した。ナムサン!なんの足場もない中空に浮かんでいる!
「落ち着きたまえ。ここには重力なんて、あってないようなものだ」デジタルスクイレルは、至極当然といった風に言った。「マジカヨ!?」マサキは半信半疑だったが、徐々に重力制御めいて、体を安定させた。
「さて、単刀直入に言おう、ワタシたちは大ピンチだ。」リスのような女が切り出した。「ワタシだけでは勝てないし、キミだけでは倒せない。二人で協力しなければな…」
「それって、<シロイズキン1:51-25>くらいのピンチか?」マサキは冗談めかして質問した。「フフフッ、いんや、キミとワタシが協力すれば<3:21-16>くらいだろう。」「ハハハ、バカ言えよ!」「アハハ、バカハドッチダー!」二人は笑い合い、そして互いに両手を繋いだ。
「じゃあ、マジメに話そう。キミの精液が必要だ。」「チョッ、下ネタはまだ早くねェか?」マサキは少し困惑した。
「いんや、ワタシはマジメだ。前に話したろ?『Y2K<2000年問題>』の後に、<穴>が開いて、そっから侵略が始まったって…」「…」1時間前の会話だ。あのときは、単なる与太話かと思っていたが、まさか今回こうして実証されるとは。
「ン?それと精液がなんの関係あるんだ?」「掻い摘んで言えば、さっきのサテュロスやワタシら、ラタトスクみたいなマモノがこっちの次元に侵入してる。で、その目的は人間のオトコ。」「⁉」青年は驚愕した。では、彼女が自分を相棒に据えた理由は!
「スマナイ…キミを騙すつもりはなかった。徐々に真実を話そう、キミにワタシを好きになってもらおう、そうしてるうちに気づいたら1年経っていた…」「…」マモノの独白に、男は何も返さない。
「仕事仲間で始まり、今じゃ悪友みたいに話せるようになった。趣味だって共有した。二人で時間を共有していくうちに、居心地が良くなった。いや、なり過ぎた。」デジタルスクイレルは、今にも泣き出しそうな顔をした。
「最初は本能から、侵略の手段から、ボンノからキミを好きになった。でも今の関係になって、キミを理解して、情欲に、思慕や愛を交えてより好きになった。キミを通してこの世界も好きになった。だから、逆にこの状況、仕事仲間であり親友であることを壊したくなかったんだ…」青年は黙って聞いていた。少女の目から洪水が溢れた。
「ダカラ、ダカラ、ンムッ⁉」マサキはデジタルスクイレルの顔を引き寄せ、口づけを行った。「ンンン♡ンムムム♡」二人は、舌を絡ませ、互いの体液を交換する、熱に浮かされていた。
少女は、青年に別れを告げるつもりであった。こんな化け物に、騙された上に関係を迫られたのだ。今回きりで、その後は契約解消かと思っていた。だが、この接吻は今後の明るい未来の嚆矢と言えた。
「「ハアアアアッ」」マサキとデジタルスクイレルは、名残惜しくもあったが互いの唇を離した。ツツーッ、口元を離しても、淫靡な糸が二人を繋いだ。
「今までのことは水に流すぜ、言ったろ貸し借りなしだって。」「アリガト♡」「だが、精液の件はどういうことだ?」「マモノがオトコを求める理由の一つさ、キミらの精力がワタシたちの魔力を高めるし、食事の代わりにもなるんだ。」青年は説明を求めたことを後悔し始めた。
「そんな顔するなよ、それにモノはヤルキになったみたいだぞッ♡」少女は、そう言いながらズボンに貼られたテントを撫ぜた。「ウッ!」青年はズボンの上から触れられただけで、快感に震え顔の紅潮を深めた。
「では、早速♡」「アアッ」言うが早いか、デジタルスクイレルは迷彩ズボン、サポーター、パンツを引っ手繰るように降ろしていった。
(イカン、開放感で更に…)彼の欲情は、肌着をズラされて擦れ、冷たい空気に触れたことで角度を更に急にした。そのまま、腹に激突するのではないかという勢いだ。「フーッフーッ♡」「クウッ」マモノの熱い吐息が、更に快感を高めた。
「ワタシが、どれだけこうしたいと思っていたことか…♡」デジタルスクイレルは、骨とう品を品定めする好事家めいて、両の手をマサキの男性器に触れた。(ヌウウッ!この手つきは…)マモノはゆっくりと慎重に、全体の造形を確かめるように手を動かした。
「ベ、ベイブッ!も、ウウウンッ、出して…」「ナンデ♡、まだまだ、これからだろう♡!」女は陰茎と睾丸の根元を抑えた。「ヌウウンッ」男は、こみ上げてきたものを堰き止められた。
「チュプププ♡」「ウウウッ!」女は男の逸物を一気に咥え込んだ。「ジュルチュププ♡」「アアアッ!」そして、間髪入れず舌で転がし
た。「チュプププジュルジュルーッ」「アアアーッ!」
マサキは耐えきれず、デジタルスクイレルの口の中に装填を発射した。(コイツの口がこんなにキモチイイとは…)
だが、ジゴクはまだ終わらない。「ゴクンッ、ンンン、プハァ」女は粘液を一滴たりともこぼさないように、喉を鳴らして飲み込んだ。しかし、口からモノを出してみればまだまだ硬さは十分であった。
「まだ出るだろ?チュプププジュルジュルーッ」「アアアッー!」「ジュルジュルーッ」「アアアッー!」「ジュルジュルーッ」「アアアッー!」
010001001
「イヤーッ!」ワインレッドの風は小部屋にエントリーした!「アカチャン、ドコ?イジワルしないで?」サテュロスは部屋内を確認したが、美味しそうな香りをした男が寝ているだけだ。あの泥棒ネコもといリスも、カワイイな青年もいなかった。
「フン、逃げてもムダ♡この建物から私を出し抜くのは無理よ。」マモノは、恍惚とした表情で独りごちた。「ああ、もう逃げも隠れもしねえよ…だよな、スクイリー。」「そうだね、マサキ♡、お返しもまだだもんね!」男は、片腕に相棒の少女を抱いていた。その腕は小柄な背中と身長よりも大きな尻尾に挟まれていた。
サテュロス、デボーチャリーは振り返った。(どういうこと?!この部屋にはいなかったはず!)おお見よ!そこには、先ほど相対した二人がいるではないか!その姿はほの明るい、なぜなら01のスプライトが二人の輪郭を強調しているのだ!
「まあいいわ。これで手間は省けたのですもの!イヤーッ!」山羊女は手にした角笛を吹いた!今度こそ二人を昏倒させるつもりである!しかし!「イヤーッ!」ラタトスク、デジタルスクイレルのセイケンヅキは、圧縮空気砲弾をかき消した!
「バカナーッ!イヤーッ!」「バカハドッチダー!イヤーッ!」二つの残像が交錯した!(さっきとは全然違う…今なら見える!)青年はその光景を、ナムサン、目で追えているのだ!
「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」
サテュロスがその長い脚で顔を蹴りつけようとすれば、ラタトスクは小柄な背をさらに低くかがめて下段チョップを繰り出す!角のある女の豊満な胸、栗色の耳の女の大きな尻尾が、それぞれのアクションのもとで、揺れる!揺れる!揺れ動く!
だが、その小規模な嵐ともいうべき、二体のマモノの打ち合いは終局を迎えた!「「イイイイヤアアアアーッ!」」両者のチョップとキックがぶつかる…一瞬小部屋の中の音がすべて止んだ。そして、KRATOOOOM!ソニックブームが発生し、すべてのホコリ、備品が吹き飛ぶ!「ンアーッ!」どちらかのマモノがその衝撃で吹き飛んだ!いったいどちらが!?
「ヤッパリナ!」マサキは確信を持った顔で駆け出した!勝者を、相棒を、そして恋人をたたえる為に!「オツカレサマ!」「アリガト!」二人は、マサキとデジタルスクイレルは抱き合い、その勢いで尻尾が体に巻き付いた!
山羊めいた角の女は、しばしの間倒れ伏し放心していたが、この二人の姿を見て、敗北を認めざるを得なかった。泣き出しそうな顔をして、サテュロスは腹出し降参(服装的には腹部は丸見えであったが)をしていた。
マモノのイクサは、主に3つに分類される。「狩り」、「婚活」、そして「オスの取り合い」である。彼女は、三番目の勝負を行い、そして敗北を喫した。イクサに敗北したマモノは、感情と折り合いをつけ、魔力と精力をおさえるために、「腹出し降参」を行う。魔物娘図鑑にも書かれている。
「「…」」いちゃついていたカップルは、サテュロスを見て沈黙した。そして顔を見合わせ、互いに首肯した。意を決して、青年のほうは歩き出した。「…?」山羊女はただ茫然と男が近づくのを見ていた。マサキは彼女の目の前に来ると、手を差し出した。女は困惑し、青年へと向けた目は細まった。(いまさら何よ…憐れんでるのかしら?)
「デボーチャリー=サン…だったか?ドーモ。マサキ・ケンネイです。」「…ドーモ。デボーチャリーです。何かしら、敗者に嫌味でもいいに来た?それともさっきのことで私に仕返し?」サテュロスは毒を吐いた。
「確かにアンタは負けた。それに…オレやそこのニシキ=サンにしたことを許しちゃいない。」マサキは頭を掻いていった。「じゃあッ「けどもうイクサは終わッたんだろ?これでお互いきっぱりイーブンじゃねえのか?」エッ?」
デボーチャリーは戸惑った、そのためどう返答したものか逡巡した。
「そこのボッチャンが言いたいのは、『別にもう気にしてない』ってことだよ!」デジタルスクイレルはにこやかに言った。「お前なァ、もっと言うことあんだろ。」「オイオイ、『シロイズキンも言ッてんだろ?言葉を弄すな、ただありのままを伝えろ』って、いつも言ッてくるのは誰かな?「わあッたよ!」
「とにかくよ、オレ達はもう敵じゃねえッてことだ」マサキは強引に、デボーチャリーの手を掴んで引き上げた。「アッ」山羊のマモノは抗えなかった。「まッこれからユウジョウとしてヨロシク!」青年は手を差し出した。「…!」女は少し間をおいて、しかし相手の手を握った。「アッ、ヨロシクオネガイシマス!」
「じゃあ、ワタシもヨロシク!」いつの間に近く来た、リスのマモノも手を差し出した。「ゴメンナサイ…あなたの好きな人に手を出そうとして…」山羊のマモノは頭を下げた。「…ワタシだって、マサキと同様そのことは許しちゃいない。」「…」「けどさ、シロイズキンも言うだろ、『昨日敵になったものでも、今日は敵じゃないかもしれない』ってね。」「…アリガト!」二人は握手した。笑いあった。
その光景を眺めていたマサキは、しかし少し不穏さを覚えた。(そのセリフの続きは、『ネズミよ、それはそれとしていつでもカタナを出せるようにせよ』なんだけどな…)そう思いながら、彼はただ笑みを作らざるを得なかった。(ベイブを怒らせるのだけはやめとこ…)栗色の瞳は、カタナめいた鋭さであった。しかし、イクサは終わった。直に、ニシキも目覚めるだろう。この件は、そしてマモノとの関りはどのように、この青年の転機となるのであろうか…
セクション6終わり。エピローグに続く
そこは、不思議な空間であった。先程までの廃ビルの閉鎖空間とは異なり、開けた虚空めいた場所であった。「ン?アイエエエ?!」マサキは不意に下を向くと、驚愕した。ナムサン!なんの足場もない中空に浮かんでいる!
「落ち着きたまえ。ここには重力なんて、あってないようなものだ」デジタルスクイレルは、至極当然といった風に言った。「マジカヨ!?」マサキは半信半疑だったが、徐々に重力制御めいて、体を安定させた。
「さて、単刀直入に言おう、ワタシたちは大ピンチだ。」リスのような女が切り出した。「ワタシだけでは勝てないし、キミだけでは倒せない。二人で協力しなければな…」
「それって、<シロイズキン1:51-25>くらいのピンチか?」マサキは冗談めかして質問した。「フフフッ、いんや、キミとワタシが協力すれば<3:21-16>くらいだろう。」「ハハハ、バカ言えよ!」「アハハ、バカハドッチダー!」二人は笑い合い、そして互いに両手を繋いだ。
「じゃあ、マジメに話そう。キミの精液が必要だ。」「チョッ、下ネタはまだ早くねェか?」マサキは少し困惑した。
「いんや、ワタシはマジメだ。前に話したろ?『Y2K<2000年問題>』の後に、<穴>が開いて、そっから侵略が始まったって…」「…」1時間前の会話だ。あのときは、単なる与太話かと思っていたが、まさか今回こうして実証されるとは。
「ン?それと精液がなんの関係あるんだ?」「掻い摘んで言えば、さっきのサテュロスやワタシら、ラタトスクみたいなマモノがこっちの次元に侵入してる。で、その目的は人間のオトコ。」「⁉」青年は驚愕した。では、彼女が自分を相棒に据えた理由は!
「スマナイ…キミを騙すつもりはなかった。徐々に真実を話そう、キミにワタシを好きになってもらおう、そうしてるうちに気づいたら1年経っていた…」「…」マモノの独白に、男は何も返さない。
「仕事仲間で始まり、今じゃ悪友みたいに話せるようになった。趣味だって共有した。二人で時間を共有していくうちに、居心地が良くなった。いや、なり過ぎた。」デジタルスクイレルは、今にも泣き出しそうな顔をした。
「最初は本能から、侵略の手段から、ボンノからキミを好きになった。でも今の関係になって、キミを理解して、情欲に、思慕や愛を交えてより好きになった。キミを通してこの世界も好きになった。だから、逆にこの状況、仕事仲間であり親友であることを壊したくなかったんだ…」青年は黙って聞いていた。少女の目から洪水が溢れた。
「ダカラ、ダカラ、ンムッ⁉」マサキはデジタルスクイレルの顔を引き寄せ、口づけを行った。「ンンン♡ンムムム♡」二人は、舌を絡ませ、互いの体液を交換する、熱に浮かされていた。
少女は、青年に別れを告げるつもりであった。こんな化け物に、騙された上に関係を迫られたのだ。今回きりで、その後は契約解消かと思っていた。だが、この接吻は今後の明るい未来の嚆矢と言えた。
「「ハアアアアッ」」マサキとデジタルスクイレルは、名残惜しくもあったが互いの唇を離した。ツツーッ、口元を離しても、淫靡な糸が二人を繋いだ。
「今までのことは水に流すぜ、言ったろ貸し借りなしだって。」「アリガト♡」「だが、精液の件はどういうことだ?」「マモノがオトコを求める理由の一つさ、キミらの精力がワタシたちの魔力を高めるし、食事の代わりにもなるんだ。」青年は説明を求めたことを後悔し始めた。
「そんな顔するなよ、それにモノはヤルキになったみたいだぞッ♡」少女は、そう言いながらズボンに貼られたテントを撫ぜた。「ウッ!」青年はズボンの上から触れられただけで、快感に震え顔の紅潮を深めた。
「では、早速♡」「アアッ」言うが早いか、デジタルスクイレルは迷彩ズボン、サポーター、パンツを引っ手繰るように降ろしていった。
(イカン、開放感で更に…)彼の欲情は、肌着をズラされて擦れ、冷たい空気に触れたことで角度を更に急にした。そのまま、腹に激突するのではないかという勢いだ。「フーッフーッ♡」「クウッ」マモノの熱い吐息が、更に快感を高めた。
「ワタシが、どれだけこうしたいと思っていたことか…♡」デジタルスクイレルは、骨とう品を品定めする好事家めいて、両の手をマサキの男性器に触れた。(ヌウウッ!この手つきは…)マモノはゆっくりと慎重に、全体の造形を確かめるように手を動かした。
「ベ、ベイブッ!も、ウウウンッ、出して…」「ナンデ♡、まだまだ、これからだろう♡!」女は陰茎と睾丸の根元を抑えた。「ヌウウンッ」男は、こみ上げてきたものを堰き止められた。
「チュプププ♡」「ウウウッ!」女は男の逸物を一気に咥え込んだ。「ジュルチュププ♡」「アアアッ!」そして、間髪入れず舌で転がし
た。「チュプププジュルジュルーッ」「アアアーッ!」
マサキは耐えきれず、デジタルスクイレルの口の中に装填を発射した。(コイツの口がこんなにキモチイイとは…)
だが、ジゴクはまだ終わらない。「ゴクンッ、ンンン、プハァ」女は粘液を一滴たりともこぼさないように、喉を鳴らして飲み込んだ。しかし、口からモノを出してみればまだまだ硬さは十分であった。
「まだ出るだろ?チュプププジュルジュルーッ」「アアアッー!」「ジュルジュルーッ」「アアアッー!」「ジュルジュルーッ」「アアアッー!」
010001001
「イヤーッ!」ワインレッドの風は小部屋にエントリーした!「アカチャン、ドコ?イジワルしないで?」サテュロスは部屋内を確認したが、美味しそうな香りをした男が寝ているだけだ。あの泥棒ネコもといリスも、カワイイな青年もいなかった。
「フン、逃げてもムダ♡この建物から私を出し抜くのは無理よ。」マモノは、恍惚とした表情で独りごちた。「ああ、もう逃げも隠れもしねえよ…だよな、スクイリー。」「そうだね、マサキ♡、お返しもまだだもんね!」男は、片腕に相棒の少女を抱いていた。その腕は小柄な背中と身長よりも大きな尻尾に挟まれていた。
サテュロス、デボーチャリーは振り返った。(どういうこと?!この部屋にはいなかったはず!)おお見よ!そこには、先ほど相対した二人がいるではないか!その姿はほの明るい、なぜなら01のスプライトが二人の輪郭を強調しているのだ!
「まあいいわ。これで手間は省けたのですもの!イヤーッ!」山羊女は手にした角笛を吹いた!今度こそ二人を昏倒させるつもりである!しかし!「イヤーッ!」ラタトスク、デジタルスクイレルのセイケンヅキは、圧縮空気砲弾をかき消した!
「バカナーッ!イヤーッ!」「バカハドッチダー!イヤーッ!」二つの残像が交錯した!(さっきとは全然違う…今なら見える!)青年はその光景を、ナムサン、目で追えているのだ!
「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」
サテュロスがその長い脚で顔を蹴りつけようとすれば、ラタトスクは小柄な背をさらに低くかがめて下段チョップを繰り出す!角のある女の豊満な胸、栗色の耳の女の大きな尻尾が、それぞれのアクションのもとで、揺れる!揺れる!揺れ動く!
だが、その小規模な嵐ともいうべき、二体のマモノの打ち合いは終局を迎えた!「「イイイイヤアアアアーッ!」」両者のチョップとキックがぶつかる…一瞬小部屋の中の音がすべて止んだ。そして、KRATOOOOM!ソニックブームが発生し、すべてのホコリ、備品が吹き飛ぶ!「ンアーッ!」どちらかのマモノがその衝撃で吹き飛んだ!いったいどちらが!?
「ヤッパリナ!」マサキは確信を持った顔で駆け出した!勝者を、相棒を、そして恋人をたたえる為に!「オツカレサマ!」「アリガト!」二人は、マサキとデジタルスクイレルは抱き合い、その勢いで尻尾が体に巻き付いた!
山羊めいた角の女は、しばしの間倒れ伏し放心していたが、この二人の姿を見て、敗北を認めざるを得なかった。泣き出しそうな顔をして、サテュロスは腹出し降参(服装的には腹部は丸見えであったが)をしていた。
マモノのイクサは、主に3つに分類される。「狩り」、「婚活」、そして「オスの取り合い」である。彼女は、三番目の勝負を行い、そして敗北を喫した。イクサに敗北したマモノは、感情と折り合いをつけ、魔力と精力をおさえるために、「腹出し降参」を行う。魔物娘図鑑にも書かれている。
「「…」」いちゃついていたカップルは、サテュロスを見て沈黙した。そして顔を見合わせ、互いに首肯した。意を決して、青年のほうは歩き出した。「…?」山羊女はただ茫然と男が近づくのを見ていた。マサキは彼女の目の前に来ると、手を差し出した。女は困惑し、青年へと向けた目は細まった。(いまさら何よ…憐れんでるのかしら?)
「デボーチャリー=サン…だったか?ドーモ。マサキ・ケンネイです。」「…ドーモ。デボーチャリーです。何かしら、敗者に嫌味でもいいに来た?それともさっきのことで私に仕返し?」サテュロスは毒を吐いた。
「確かにアンタは負けた。それに…オレやそこのニシキ=サンにしたことを許しちゃいない。」マサキは頭を掻いていった。「じゃあッ「けどもうイクサは終わッたんだろ?これでお互いきっぱりイーブンじゃねえのか?」エッ?」
デボーチャリーは戸惑った、そのためどう返答したものか逡巡した。
「そこのボッチャンが言いたいのは、『別にもう気にしてない』ってことだよ!」デジタルスクイレルはにこやかに言った。「お前なァ、もっと言うことあんだろ。」「オイオイ、『シロイズキンも言ッてんだろ?言葉を弄すな、ただありのままを伝えろ』って、いつも言ッてくるのは誰かな?「わあッたよ!」
「とにかくよ、オレ達はもう敵じゃねえッてことだ」マサキは強引に、デボーチャリーの手を掴んで引き上げた。「アッ」山羊のマモノは抗えなかった。「まッこれからユウジョウとしてヨロシク!」青年は手を差し出した。「…!」女は少し間をおいて、しかし相手の手を握った。「アッ、ヨロシクオネガイシマス!」
「じゃあ、ワタシもヨロシク!」いつの間に近く来た、リスのマモノも手を差し出した。「ゴメンナサイ…あなたの好きな人に手を出そうとして…」山羊のマモノは頭を下げた。「…ワタシだって、マサキと同様そのことは許しちゃいない。」「…」「けどさ、シロイズキンも言うだろ、『昨日敵になったものでも、今日は敵じゃないかもしれない』ってね。」「…アリガト!」二人は握手した。笑いあった。
その光景を眺めていたマサキは、しかし少し不穏さを覚えた。(そのセリフの続きは、『ネズミよ、それはそれとしていつでもカタナを出せるようにせよ』なんだけどな…)そう思いながら、彼はただ笑みを作らざるを得なかった。(ベイブを怒らせるのだけはやめとこ…)栗色の瞳は、カタナめいた鋭さであった。しかし、イクサは終わった。直に、ニシキも目覚めるだろう。この件は、そしてマモノとの関りはどのように、この青年の転機となるのであろうか…
セクション6終わり。エピローグに続く
24/05/12 09:37更新 / ズオテン
戻る
次へ