「うっ、頭が割れるように痛む…」青年は、酷い頭痛により眠りから目を覚ました。「…？！ここは一体？」「…お目覚めでございますか、ご朗君…」「！？」見知らぬ部屋模様に困惑する最中、彼の頭上より聞き慣れぬ静かな声を聞いた。

かろうじて動かせる眼が、声の出所を探して部屋中を探し回る。だが、それは声の主本人に中止された。顔を後ろから覗き込まれることにより。「…まだ、安静になされまし…」「…」

その瞳は、辰砂のそれよりも赫い。目鼻立ちは若武者が見た中では整って見えるが、額の角と赤銅の肌が人ならざるものへの警戒を煽った。「…あ、もし…」だからこそ、彼はこのおなごに魅入られたのだろうか。

「…此度は至らぬばかりに…」「…いえ、ここはいづこに…？」彼は、深紅の瞳を凝視し、渇ききった喉から言葉を紡いだ。「…ご朗君の戸惑いは尤もにございます。しかし、今しばらくは休まれてはいかがでしょうか…」「…しかれど、世話になるばかりでは…」

「…何もご心配なさいますな…」「…けれど、あなたは、いや…そうだ鬼はあなた以外にも」若武者はここで意識の端から、数刻前の出来事を思い返す。「…ええ…」「…"あれ"は近くに「"あれ"とおっしゃいますか？」鬼女はその言葉に態度を変えた。

「あ、いや、その…」「ご朗君…ここに連れてきたのは"我ら"の都合なれど、『姉上』を"あれ"と呼ばわるは無礼にも程がありと存じ上げます…」「…」青年は、鬼の娘の怒気に今にも逃げ隠れたい思いであった。しかし、身体は依然として金縛りにあったかのようで、まんじりとも動けないではないか。

「呉葉よ、ワシらの客人にそのような堅苦しい物言いは止せ」一層低い声が、彼の右の耳から聞こえてきた。目をそちらに向けると、件の鬼がそこにいた。身体を少し屈め、部屋にぬるりと入ってきた。「…！…姉上、無作法を何卒お許しを…」「ふん…ヒック…別に怒ってはおらぬさ…ただ」姉鬼は、『呉葉』と若武者をしげしげと見て、瓢箪を煽った。

「自分のカラダでおもてなしとは、お前さンも数寄者よの」「…うっ、それは…！」若武者は、一瞬姉の言が理解できなかった。しかし、呉葉の動揺が彼の後頭部に伝わり、そして何やら柔らかな感触を覚えた。

「ふむふむ…ヒック…客人もお前さンの脚が寝心地よいとさ」「…姉上…」「！？」妙に心地の良い枕だと思っていたそれは、呉葉の膝と太股であったのだ。青年は、あまりの驚き続きに言葉もなかった。


「落ち着いたようだの」「はあ…世話をかけます」若武者は、姉妹の鬼達を交互にちらちらと見ながら頭を下げた。「昨日は、いきなり襲いかかって挨拶もできんかったの？ワシは、紅葉(もみじ)…ヒック…こっちが、妹の呉葉(くれは)よ」「…呉葉と申します。先ほどのことはご容赦を…」

「…紅葉殿、単刀直入にお尋ね申す、ここはいづこでございますか？」「戸隠山と麓の連中は言う」「戸隠…」聞き覚えがあった。ここは、隣国の大名の支配地ということか。

「もうひとつ…」「何じゃね」つまり、この鬼女達は敵方ということ、青年は捕虜となったのだ。「…刀自は、この若輩を捕らえて何を要求するおつもりか？」

「…戸隠流という忍術流派をご存知か？」「…いえ」「本来、忍びの名が広まるのはあってはならぬはず。だが、今は乱世よ。ワシらも、どこそこの流派がなにがしの侍に与すると聞くことが増えた」「…つまり、貴女は私を手土産に取り入るおつもりか？」

「…姉上がそのような下劣な真似をすると…！」妹は、姉への侮辱と捉えたか、袖から苦無を出して刃を向けた。「止せ、呉葉」「…しかし」姉は、それまでの飄々とした表情を消し、真顔で制止した。「止せ、と言っている」「…はい…」

「話を戻そう。ワシらは前も言った様に、この山と暮らしを守りたいだけよ。お前さンは、そのための間者に仕立てようと考えとる」「…間者ですか？」「そうじゃ。まあ委細はこの後伝える故、今はゆっくりとしなされ」


若武者は、二体の鬼に連れられ、屋形を見て回った。簡素だが厳かな邸内とこじんまりとした庭園、そして似つかわしくない木人や雲梯、深い池などが目についた。修行道具である。

また、屋内には不自然な壁の継ぎ目、からくり、坑道の隠し階段まであり、用途のわからぬ部屋や仕切りがそこかしこにあった。複雑怪奇な屋敷、敷地、異様に高い壁や日増しに濃くなる霞が、青年にこの世ならざる畏怖を抱かせた。

朝は七ツ刻に起こされた。「…っん！？」「ッンンン…ヒック、お早う…今日も気力が満ちとるのお」若武者は、彼の股間に顔を埋め、粘液にまみれる赤鬼を見た。毎朝、彼は精を絞られ起こされていた。

「…姉上、ご朗君…お早うございます…朝饗の支度ができました…」「おお、レロレロ…行こうかの」「うううっ…」紅葉は手に垂れた種を舐め取ると、紐で髪を結わえながら、部屋を後にした。そこには、早朝からうなだれる若武者と呉葉が残された。

「…もし…」「うううっ…」「…聞こえておりますか？…」「…はい、すぐに私も向かいますので…」「…冷めない内に、いらっしゃってくださいね…」

七ツ半、三人で朝食を終えると、彼らは霞に包まれた林に脚を運んだ。まだ、朝日は登りきっていない。右も左も見通せぬ中、それぞれが走り出した。十数歩の内に、足音も人影も感ぜられぬようになった。

若武者は、竹刀を構えた。耳をすませ、目をこらし、じっとその瞬間を待った。静寂と薄暗がりが彼を支配し始めた頃、「…！」「…！…」竹刀と苦無が同時に弾かれた。

呉葉は、一撃を防がれるやいなや反動を使い、頭上の枝葉に隠れた。青年は、樹の揺れや衣擦れを追うが、見失いやがて静寂が息を吹替えした。

脂汗が額を濡らし、喉が渇きに喘ぐ中、若武者の耳元に小声が聞こえた。「…わたしは、ここですよ…」「！？」彼が振り返ろうとした瞬間、首に腕が巻き付けられた。「ぐうっ！」「…ふふ、ご朗君も脇が甘いですね…」

青年は、締め上げられ、腕を捻られ、竹刀を取り落とした。自分よりも一回り小さいおなごの細腕が、偉丈夫や豪傑がごとき膂力で振りほどくこともできなかった。彼は、屈辱に喘いだ。

「…ふふ、知っていますよ…ここが弱いのですよね…」「あっ！」呉葉は、細長い指を彼の山着の裾に這わせた。その鋭い爪は、先端を乳首に当てていた。「…わたし程度に負けるなぞ…武士の名折れですね…」「…くうっ！」若武者は、器用に傷つけぬ様にそこをこねくり回された。

日が登りきり、屋敷に戻った彼らは、道場に集った。青年は柿色の装束、呉葉は薄菫色、紅葉は暗紫色に着替えた。「よいか、忍とは何かということを…」いつもの講義が始まった。口火を切ったのは、紅葉である

「…一説によれば、ある豪族が使役した"四鬼"というのが、今日の忍者の原形ではないかとも…」呉葉は、巻物を広げて見せた。「修験道や密教においては、"五鬼"という家系もあり、"前鬼"や"後鬼"という夫婦が祖であるらしいのう」紅葉は、酒を霧吹きして、空中に絵図を見せた。

講釈が終わり、彼らは組手を始めた。姉は八尺を越す筋骨隆々の肉体から繰り出す剛の技、妹は鬼の膂力に加えた速さと手数で攻め寄せた。若武者は、日に日に鍛練を重ね、日増しに力をつけるも一歩及ばぬ戦いを強いられた。

日が南中に達し、午九ツに入ると、三人は汗ばんだ身体を湯浴みした。身体を洗いながら、青年は湯船に浸かる赤鬼をちらちらと気にした。目があった。「…！」「なんじゃ、お前さン、ワシに見とれておるのか」姉鬼は、大柄な身体に見合う豊満な乳房を誇示し、満更でもなさ気に言った。

「…いえ」「…ご朗君…お背中お流しいたします…」「…！」妹の鬼は、彼の身体をいそいそと手拭いで洗い始めた。「…痛くはないですか？…」「…は、はい」吐息が感じられるほどに近づかれ、背中にはその小ぶりな乳房の柔らかさがあった。

「…ふふ…」「…如何なされた？」「…いえ、ご朗君のアソコが元気を取り戻されていますので…」「…！それは…」彼の
逸物は手拭いを押し上げんばかりになっていた。「…ふん、まだまだ元気に行けそうで良かったのう」紅葉は、猪口で呑みながら悦に入った。

昼飯を済ませると、彼らは酒蔵に向かった。姉妹は、てきぱきと櫂棒を手に取ると、ぶんぶんと振り回し始めた。なれた手付きで、米の入った大きな桶に棒を突き入れた。呉葉が脚立に乗り、紅葉は素で米を潰さず、優しく時に強くかき混ぜていった。

「ご客人？」「はい？」「鬼は、日にいくら酒を食らうと思うかね？」突然の質問に、若武者は答えることができなかった。「鬼によりけりだが、ワシなんか十升から一斗は軽く呑んだくれとるよ」「…姉上だけですよ、そこまで呑まれるのは…」「うるさいわい」

「兎に角、鬼は酒好きでの、ワシらはそれが高じて手前で造るようになったのよ」話ながらも、彼女らは拍子を決して崩さない。「こうやって、固い米をかき混ぜるのを鬼棒なんて言うらしいが、そういう鬼が昔から絶えんのかもしれんのう？」紅葉はそう言って、自分の櫂棒を投げ渡した。

「…！重い…」「掴めるだけ、力がついて来たようじゃの。どれ、ワシに代わってやってみんか？」青年の背を支えながら、紅葉は腰の入れ方や力加減を文字通り手取り足取り教えた。彼は、努めて至近距離の鬼のすえた匂いや熱を考えないようにした。ふと、呉葉と目が合うと面白くないと言いたげであった。

仕込みを終えると、姉妹は奥で寝かせてあった酒樽を取り出してきた。「…折角ですから、ご朗君も一杯…」「…しかし、まだ外は日が高いですよ…」「ここには、ワシらしかおらん。そんなこまいこと気にせんでよい」「…しかし、ぐむっ」彼の言葉は、呉葉の口付けで中断された。

「うむっ」「うううっ」「…はあーっ。ご朗君、姉上にばかり…わたしも…」口移しで酒を飲まされたからか、若武者は焼けるような熱さを感じた。「呉葉、酒も客人もワシの分は残しとくれよ？」「…姉上のご命とあらば…」

妹鬼は、そう言うとするすると上衣を脱ぎ始めた。「…！」青年は息を呑んだ。赤茶けた肌が素網ごしに汗ばんでおり、褌の下の太股はしとどに濡れているのがわかった。

まず、やたらに長い舌が彼の口を犯した。鋭い爪は、朝よりも精緻にしかし大胆に、全身をまさぐった。「ふぅー♥️ふぅー♥️」「ぐっ…」若武者は抵抗する間もなく、脱力しされるがままと化した。

彼の服は既に脱がされ、頼りない布だけが最後の守りだった。しかし、それも逸物に押し上げられ、意味をなしていなかった。「…いけませんね♥️…」「くうううっ！」呉葉は容赦なく前後に、時に優しく時に意地悪く、緩急をつけて扱き上げた。

「…こんなにして♥️…」「うううっ」呉葉は耳元でいつものように囁くように罵った。「…姉上に、色目を、使って…」「うっ…そのような、つもりはっ！」「…ケダモノ♥️…」「お許しを！」「…さて、どうしましょうか？…」彼は爆発しそうな欲を訴えた。

「…」「…許しませんよ♥️…」「…！」青年は、床に押し倒された。小柄な鬼は彼に跨がった。「…姉上を、襲おうとしていたでしょう？」「…そんなことは…！」「…まだ嘘をつくの、ですか♥️ん！」「ああ…！」呉葉は、言い訳を聞きたくないとばかりに、腰を打ち付けた。狭い胎内に、彼の肉欲を迎え入れた。

「…ん！いい、かげん、になさいな…」「…やめ！」「…やめ、ません♥️…あねうえに、てだし、できない、ようにしてあげます♥️」「ああ…」彼は一回目の射精を行った。鬼の責め苦はそれだけで終わらず、二度三度と腰を打ち付けては精を絞り上げていった。無間地獄がそこに出現したのだ。

「ヒック…やれやれ忠告したばかりに、ん…こりゃ今日は使い物にならんかもな」紅葉は、妹の情事を肴に酒を呑みつつ、股間に指を這わせた。「じゃが、この小僧、思ったより使えるかもしれんのう」にんまり笑う一本角の影が、灯火の揺れに写し出された。