読切小説
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夏休み宿題締め切り探偵ダダ
俺、マサト。麗須佳岻市に住む小学6年生。今ハマっていることは、カブトムシ収集だ。太陽が登るより早く起きて、暗いうちから裏山に行くと、木の幹の樹液が出てるところに、いっぱいカブトムシが居る。他の虫とかもいっぱい集まってるからちょっとヒくけど、カブトムシがゲットできるなら怖くない。

俺はカブトムシを入れた籠を見ながら、デカいスイカを食べる。超甘い。最高の夏休み…でもその最高さに影を落とす要素が、俺の心にこびりついてる…夏休みの宿題だ。ママとの会話を思い出す、「マサト、宿題を終わらせたの?」

大人って、いつもこうだ!大人はしたり顔で、実はフワッとした根拠迷信で俺達に命令してくる。昔はクーラーがダメだったらしい。30年前は、エッチなゲームをやると現実と混同して痴漢になるとか言われてた。50年前は「フリーセックス」とか言って、「性解放」の意味を取り違えてる人ばかりだった。全部まやかしのツァイトガイストだった。だのに、言いっぱなしだ。

だから俺は夏休みの宿題をやらなくても言いはずだ!…俺は溜息をついた。わかってる。そんな事を主張したって誰も聞いてくれない。…辛い…。俺はハッとして首を振った。ダメだ。今日は遊ぶことに決めたんだろう!「フフフ、面白い」窓の方向から声がした。「エッ!?」「窓、開けて」女子の声!

俺は窓を開けた。すると、窓の外にはメチャクチャHOTな女子が浮かんでいた!…いや、実際は羽根で飛んでいた!クラスの学級委員で誕生会にはクラス全員が集まるサユリちゃんよりHOTな女子なんてありえない筈なのに…「き、君はどこの転校生!?ていうか、ここ2階なんだけど」「そんなこと気にしないでよ」女子は部屋にイン!

「いったい君は…」「私、ラン」女子は顔を近づけてきた。いいにおいがした!「マサトくん、キミと夏休みの思い出一緒に作りに来たってゆったら、信じる?」「それって…」「私は不思議な少女なの。ひと夏の幻みたいに、これからキミと海を見たり、夜はお祭りで花火を見て、素敵なのよ」「すごい」

「私、二学期からはアメリカに行かなきゃいけないんだ。だから、今しかないの。私と冒険しよ」ランは俺の手を握った。握った手にもう一方の手を被せた。「ね」「で、でも宿題が…」「ほっといちゃおうよ。海、見せて」「
わかりました」「それじゃ、一緒に行こう」家の前にバスが停まった。

ランに手を引かれて、俺は階段を降り、家を出た。そしてバスに乗り込んだ。「マサトくん、こんにちは!」「イエー!」「たのしいよ!」車内には、HOTなバスガイドさん、HOTな教育実習生の先生、HOTな友達の年の離れたお姉さん、HOTな親戚の独身で距離感が近いお姉さんなどかいて、俺を歓迎してくれた!すごい!

「ほらァ、一番うしろの席だよ!」「シートベルトしてあげるね」「ダメよ!わたしがするんだから」HOTなお姉さんたちが俺を撫でたりしてくれるが、やっぱりランだった。「あ、ありがと…」「出発、進行!」制帽を目深にかぶった運転手が白手袋で指差し確認し、バスを発車させた。

バスはどんどん速度を上げて、山道に向かっていく。「
宿題とかいいじゃない。もう、やめちゃお?」ランがせつなそうに言った「え、でも…やらないと怒られるし取り返しがつかない」「本当にやらなかった子がどうなるか知らないでしょ?大丈夫よ」「確かに、完全にバックレたらどうなるか知らない」

「そうでしょ!大丈夫よ。大人は都合の悪いことは教えないから。教育を受けさせる義務があるんだし、基本的人権とかもあるから、留置場に入れられたりしないし、罰とかも裁判所の命令がなきゃバックレていいのよ」「本当にそうなの?すごい」俺は舞い上がっていた。だってそうだろ?君なら平気なのか?

すごい勢いで窓の外の景色が流れていく。輝きは夜空の星みたいだ。アミは俺の腕に腕を絡めて、耳元で囁いた。「ねえ、図工の宿題『私の好きな風景』はもう決まった?」「え…風景…?」「もう、わかってるくせに」ランは笑った。そ、そうか。青いあさや(ブルーピリオ…)…


「隕石の発スル異様な電磁波のスペクトルにニタ色だヨォ!」「スペク…アアアアアアア!?」俺は悲鳴を上げていた。ランの下半身が膨張して、全身が名状しがたいキチン質の昆虫じみた外骨格に包まれて俺の顔に触れたのだ!「アアアアアアア!アアアアアーッ!」「抵抗するナよマサトくン!もうじゅうぶん、キミはイイ思いを、したンだヨ!」

「アアアア!」「ビルビルーッ!」ランだったものが叫び声を上げた。それに呼応して、車内のHOTなベイブ達が巨大なカブトムシ人間の正体を表す!「アアアアアーッ!」「マサト。ワンピースを着た不思議少女とお前は青春した。奇跡には代償が必要だ」

魔物がビルビルと音を出した。「お前は今からこの世ならざるスペクトル『異次元の色彩』を描いてもらう。あと、その子種もいただく。我々の魔界的エネルギーのためにな」「い、いやだ、いやだあああ!」「すぐに、よくなる」(ちょっとエロ…いや、ダメだ)「ヤアアア!アーアアアアー!」その時だ!バスがドリフトした!魔物はまとめて車内を吹き飛び窓に衝突!「ウギャーッ!?」

KRAASH!KRAASH!窓が割れ、カブトムシ人間は外の魔界ポータルへ呑み込まれていった!「ウッギャアアアーッ!」「バカな!我が眷属達が!」魔物が驚愕した。バスが急停止した。怪物が吹き飛び、天井に叩きつけられた。「ギャアーッ!」俺はシートベルトで平気!運転手が席を立つ…!「行き先は地獄ですよ」

「き、貴様は」魔物は起き上がり、身構えた。「我々の手配した深淵魔物運転手ではない!?いつすり替わった!」運転手は帽子に手をかけた。「この世には科学では説明のつかない出来事が沢山ある」帽子を投げ捨てると、黄金の髪を輝かせる戦乙女が立っていた!「夏休み宿題締め切り探偵、ダダ!」

「ビルビルーッ!我らに楯突く代償は、天に還れーッ!」魔物が向かってゆく!だがダダは両手をクロスさせ…開いた!「喰らえ!天使光線!」「ウッギャアアアアアーッ!」金色の光輪が凄まじい光を照射し、魔物は一瞬にしてポータルへ退散してしまった!目が開けられないほどの光がさると…そこはもとの山道だった。

「夢?」俺は呻いた。「ホットなお姉さん…幼馴染…不思議少女…あれ?バスに乗っていたはずだけど…」俺は瞬きした。ここはタクシーだ。「お前は熱中症になりかかっていた。要所要所で、しっかりと適切なナトリウムと糖分の割合を保ったドリンクを飲まないと命にかかわるぞ」「ごめんなさい」

「キミの事はこのまま家に送ってあげよう」「ありがとう」「だがその前にやるべき事がある」「え?」タクシーが停まった。運転手が振り返り、帽子を脱ぐと、その女は、金髪の戦乙女だった。「夏休みの宿題。締切はあと1週間だ」「アアアアア!?」「わかっているのか!」「アアアアアーッ!?」

ちなみに、お姉さんは一緒に宿題を手伝ってくれて、終わらせたご褒美にプールに連れていってくれた。
24/08/25 12:14更新 / ズオテン

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