前編
「ピエンイー!ピエンイー!基盤1個300イェンが3個800イェン!」「アイヤー!そこのシャオジエ!このクリーム、ハリとツヤが段違いヨ!」「フン・ジン!フン・ジン!マーイ・ニード、マーイ・ニード・ホードゥ!」その日も市場から続くハマッコ・マールーは露店で賑わい、活気と商売人と観光客で溢れていた。
「電話王子様」「やわらか飲料!極度乾燥!」「小心对您的怀抱!」「夜道を照らす安心。それがわが社です!」そういった張り紙が壁を埋めつくし、怪しげな路地へ誘蛾灯めいて人々を誘い出す。入った者は、二度と出てこなくとも不思議ではない。
その大通りを一人の青年が駆けていた。スウェットにジャージの下履き、スニーカー、手にはオカモチ。器用に人々の間を縫って進んでいる「よおシャオグー!今日も精が出るな!」「シューシュー!オハヨ!じゃ急いでるから!」マンドウ露店の店主が、パラソルの下から青年に声をかけた。
「待ちな、ほら持ってけ!」彼はシャオグーと呼ばれた者に、蒸し終わったばかりのミート・ニクマンの包みを二つ投げ渡した。「シェシェ!」「たまにはネエチャンにも顔出すよう言ってくれよ。よろしくな!」シャオグーは、それを首から下げたキンチャクに入れて、また走り出した。
「かわいい顔が見えたと思ったら、シャオグー!朝から大変ねえ」「グーグー!ゴキゲンヨ!ゴメン、早く戻んないとジェジェが怒るからさ!」今度は、通りに面した花屋の老婦人が話しかけた。
「そうかい、じゃあこの花だけでも…」「これは?」花屋はシャオグーに黄色がかった花の束を手渡した。「スイカズラさ。メイラン=チャンに渡してあげてね」「わかった!ジェジェも喜ぶよ」少年は再び人混みを掻き分けて行った。
数分後、少年は雑居ビルの前に到着した。その1階にある中華料理屋に足を踏み入れた。「ディエンジャン!デマエ終わったよ!」シャオグーは元気よく報告した。「オカエリ、ナンハイ!すまんな叩き起こしてすぐ、食器取り行けだなんて」厨房から店長が体を乗り出した。側頭部以外髪がなく、逞しい腕を見せる日焼けした中年の男であった。
「メイランならもう起きて、ドージョーでトレーニングしてるぜ」「ジェジェが?珍しいこともあるんだな」彼の姉貴分(姐姐)は9時まで寝ていることもザラだ。(その癖、昼寝もきっちり取るし…昨日変なモノたべたのかな)そんなことを考えながら、シャオグーは厨房にオカモチを戻し、中のドンブリや皿をシンクに入れた。
彼は従業員通用口を潜ると、誇り被った階段を登り始めた。店子なのか、はたまた浮浪者のものか、よくわからない段ボールや合成飲料のアルミ缶、「中華二个零」と銘打たれた金属片が踊り場などに転がっていた。
「ほんとに、朝から修行してるみたいだな…」シャオグーはひとりごちた。階段を上がる度に、床を蹴る音、木材が軋む音が聞こえてきた。2階に上がるとすぐに、雑居ビルには似つかわしくない、白い漆喰の壁、木目の扉、羽目板が見えた。
「騶虞武馆」、これが彼と姉の暮らす家であり、修行場であった。シャオグーは扉を開いた。中に入ると、天井から釣り下がる銅鑼が彼の帰宅を出迎えた。その中心部には威圧的なカンジで「食铁兽」と刻まれていた。「鉄さえ食らうダーションマオ」、老師が残した言葉は今でも彼ら姉弟を見守っているのだ。
少年は、玄関からすぐの格子状に張られたフスマを開いた。ターン!中はタタミ十数枚のスペースで、等間隔に木人…否バイオ・バンブー製のカカシめいた人形が置かれていた。そして、それらを相手に演武する一人の女性が。
「ジェジェ、ザオアン!」「ん…ザオアン…シャオグー…」シャオグーは姉弟子、メイランにアイサツした。一方は元気よくオジギ、他方は静かに抱拳した。その対称がドージョーのアトモスフィアを醸成した。「汗、かいてく?」彼女の言葉は凪いでいた。しかし、有無を言わせぬ言外の圧があった。
(ジェジェ、今日はヤルキがあるみたいだ。オレも最初からマジにならなきゃ…)シャオグーは早速構えた。片足を突きだし、もう片方を軸足に、右腕は真っ直ぐ伸ばし、左肘を後ろにしてバランスを取る基本姿勢である。
一方のメイランは、クマが爪を剥き出す様に両手の指を揃え左腕を引き、右腕を突きだした。あるいは、実際にその両手は毛皮に包まれ、肉球のついた掌をしていた。両者はタタミ2枚の距離に互いを見据えた。弟弟子はジャージにスウェットで、対する姉弟子はノースリーブのチャイナドレス。更に。下にはスポーツ用のスパッツを履いていた。
(動けばヤラレル!)「…」少年は、姉の無表情から獲物を狙う肉食獣を幻視した。いや、少なくとも彼女の白髪から見えるクマめいた黒い耳は本物であった。(…来る!)その耳が微かに動いた!
「ん!」メイランの右腕が振り下ろされた。「クウッ」シャオグーは左腕で防ぎ、右腕で掴んだ。「ん…ん!」「グワーッ!」メイランは、敢えて腕を脱力し足払いした。「んー!」「グウウッ」彼女は間髪いれずに、弟を掬い上げるように追撃を行う。少年は姉の打撃を辛うじて逸らした。
「ん!」「ハイーッ!」メイランは続けて、勢いを乗せ左腕を振り下ろした。シャオグーは、身を屈め回避した。「んー!」姉弟子は覆い被さる様に突撃した。「ハイヤーッ!」弟弟子はそれに対して、足のスナップで前傾から手をついて、逆さに爪先で後頭部を狙った。「ん!」メイランはスモトリめいて開脚し地に伏せて回避。
「ハイッ!ハイヤーッ!」シャオグーは、構わず地に足をつけ、その勢いでフリップジャンプ。彼は、幅跳びめいてメイランを飛び越え、タタミ3枚分の距離に離れた。「ん」姉弟子は頷き、ビデオの巻き戻しのごとく足を戻し、ゆったり立ち上がった。
「ハアーッハアーッ」弟弟子は息をととのえつつ、基本姿勢へゆっくりと戻った。「ん…まあ…朝イチにしては…まるかな」「何言ってるんだ…ジェジェ、オレまだ全然やれるよ!」メイランの言葉にシャオグーは顔をしかめた。
「朝ごはん…まだでしょ…ディエンジャンのおつかい…シンクーラ」「…ジェジェ、お腹すいたの?」「ん」シャオグーは姉の言葉を聞いて力を抜いた。「そうだ!実は、ワン・シューシューからミート・ニクマンを…」彼は荷物の方に向き直り、注意を逸らした。その油断が仇となった。
「ん…隙だらけ…」メイランは耳をピクピクと動かした。そのまま、クマが全力疾走する様に前傾姿勢を取り、床を蹴った。「ン?…アイエ!?」「ん…シャオグー…勝負が決する前に…警戒を解いちゃ行けない…ジェジェは前にも言ったよ?」彼女は弟弟子との距離を一瞬で詰め、後ろから抱きついた。柔らかい肉球と毛皮の触り心地に包まれた。
「ジェジェ…きついよ!」「ん…指導だから…我慢しなさい…」メイランはシャオグーの胴に腕を一周させた。髪に顎を埋めるように体を固定され、少年は2インチほど体を浮かせた。弟弟子からは、コウシンバラのシャンプーとすえた汗の匂いがした。
「ジェジェ…」「シャオグーは…やっぱり匂いが…男の子だね」「…!」少年は、横顔にメイランの吐息を感じた。そのつもりがなくとも、彼はスウェット越しの背中に柔らかさを意識して、顔を紅潮させた。姉弟子は、コウシンバラと僅かに獣のような香りが混じった匂いがした。
「汗、かいたね…」「…ウン」「ごはんの前に…シャワー浴びようか?」「…」メイランがこのように言うときは、一緒に入りたいという意味であった。「返事は…」「…ウン」「ん」シャオグーは、恥ずかしがりながらも、弟として逆らえなかった。
◆◆◆◆◆
姉弟弟子は、何も言わず脱衣所で着衣を脱いでいた。少年の顔は真っ赤であった。「汗…気持ち悪いでしょ…早く入ろ?」そう言うと、メイランは無造作にチャイナドレスを脱いだ。
飾り気のない黒いスポーツブラとスパッツ姿、普段はなんてことないだらしない部屋着なのに、何故かシャオグーは目を離すことができなかった。「ん…あんまりジロジロ…見ないで…」「!…ゴメン!」「ん」彼はいそいそとスウェットを脱ぎ、ジャージの上部分、そしてズボンに手をかけた。手が止まった。
「…」シャオグーは固まってしまった。何故なら、股間部分が膨らんでいたからだ。(ジェジェに気づかれたらまずい…)彼は何とか、沈めようとした。しかし、そうすればするほど、先ほどのメイランの姿、彼女の熱を帯びた言葉が思い出された。それがより興奮を高めた。
「ん…どうしたの?」「ナ、ナンデモ!」少年は、姉弟子に後ろから声をかけられ。思わず背を強ばらせた。「ふーん…」「なに?」「…えい」彼女は、弟弟子の手に肉球を重ねた。そのまま一気にジャージのズボンを下ろした。
「ん…今日も元気だね…」「!」メイランは背中越しに、シャオグーの逸物を見た。サポーターからはみ出そうなほど、反っているがやはり大人よりは一回り小さなモノであった。彼の顔は赤を通り越して、白んで見えた。
「ジェジェ…これは、その…」「いいよ…ジェジェは全く…気にしてない」「…」シャオグーは恥ずかしさから、急いでサポーターを脱ぎタオルを四苦八苦して巻いた。「じゃあ…入ろ」メイランもバスタオルを巻いていた。しなやだが均整の取れた腕や脚、それぞれの先端は毛皮に艶のある毛皮に包まれていた。
彼らは、シャワーに入ると互いに体を洗いあった。しかし、シャオグーはメイランの目とあったまま、離せずにいた。一瞬でも目を離せば食い尽くされそうだったからだ。黙々と、鋭い爪、手足の指と肉球、毛皮、背中、機械的にタオルで磨いた。とうとう、残すは互いの正面部のみとなった。
「…」「シャオグー…後は前だけだよ…」「…ウ」シャオグーは、姉弟子の言葉に返答しようとしたが、呻きすら出せなかった。「仕方ない…ジェジェがやってあげるね…」「!」メイランは、彼のバスタオルを剥ぎ取った。小ぶりなぺニスが、その反動で揺れた。「ん」「ウウッ」彼女は無表情に反し、熱心に弟の身体を洗った。だが、決して「肝心の部分」には触れなかった。
「ん…もういいかな…気持ちよかった?」「…ウン」シャオグーはメイランに首肯した。しかし、その顔にはもどかしさが見えた。「じゃあ…ジェジェのも…お願い」「!?」そう言うと彼女は、バスタオルをほどいた。
バストは豊満であった。乳房は形がよく、しかしその重量感を感じさせる丸みは圧巻である。中心にはピンク色の突起が少し立っていた腹は、胸の影になっていたが、腹筋が割れているのが見えた。下腹部は、脂肪がつきすぎず、丸みがある上で引き締まっていた。少しだけ、白い毛が残っていた。ゴクリ。シャオグーは思わず喉を鳴らした。
「…早くして…風邪引いちゃうよ?」「ウ、ウン!」彼は無我夢中で、メイランの身体を洗った。「ん…」「痛かった!?」「大丈夫…ちょうどいい」弟は、ただ姉を拭った。球を、先端を、割れた腹の柱の一つ一つを。「ん…」その度に、メイランは耳を痙攣させ、喘いだ。シャオグーは、それを認識するほどに、股間に血を集め透明な迸りを溢れさせた。
いよいよ、白い毛を生やす秘所へ少年の手が伸びる瞬間、彼は手を掴まれた。「!?」「最後は…ジェジェとシャオグーで…一緒に洗お…」メイランは耳元で囁いた。シャオグーはなんとか意識を保つので精一杯であった。
姉弟子は、弟弟子を床に寝かせた。二人は互い違いになり、さながらトモエめいていた。そして、互いに局部を前ににタオルを手に取った。「ん!」「ウオッ!」それぞれが、敏感な部分を擦る度、我慢できずに叫んだ。「んん〜ん!」メイランはその爪で器用に泡立て、弟のぺニスを挟んで上下した。「ウウウ!」
「止まってる…」「アッ…ゴメン」「お願い…」シャオグーは、快感に手を止めていた。彼は、再び姉の秘裂にタオルを当てた。「…んん」荒削りながら、しかし毎日の鍛練か、彼の洗い方は素早く、指はひたむきに襞を力強く捉えた。
「アアア!」メイランは負けじと、爪の摩擦感と肉球の包容感を使い分けシャオグーの逸物を丹念に洗った。裏筋の一つ、睾丸の皺まで丹念に洗い上げた。「ウウッ、ジェジェ…オレも!」「ん!んん〜っ」少年はどうにか耐えながら、偶然にもタオルを擦り上げた。それは陰核を刺激し、仄かに赤らめさせた。
「アアア!」「んん〜!」「アアア!」「んん〜!」「アアア!」「んん〜!」互いのワザとワザ、対抗心とも献身とも、肉欲とも区別できぬ熱がぶつかり合った。そして…「ジェジェ、オレもう!」シャオグーの怒張は既に暴発寸前であった。今や、姉の肉球からすらはみ出ていた。「…ん!」メイランも限界を迎えていた。そのクリトリスは膨張し、愛液は弟を汚していた。
「ジェジェ!来る、来るよ!ツァァァオ!」少年は姉の顔に白濁した欲をぶちまけた。黒い耳に白い点を作り出していた。「んんーっ!」姉の方は、同じく透明な液で弟に潮を噴射した。「ハアーッハアーッ!」「ん…ふーっ…」「ウグウッ」互いに崩れ落ち、シャオグーはメイランの下敷きになった。身体と身体が重なり、互いの粘液と石鹸水にまみれた。
◆◆◆◆◆
二人は、身体を乾かし着替え終わると、疲れと空腹に苛まれた。マイクロウェーブで、ミート・ニクマンを再加熱し、その間、メイランはタケノコを切り、シャオグーは豆乳を煮込んでいた。
「そうだ!ジェジェにプレゼント渡し忘れてた!」彼は、豆乳鍋の火を止め、荷物を取りに行った。「今日は…何を貰ったの…」彼女は、包丁をリズミカルに動かしながら、無表情な顔から、興味深かげに目尻を下げた。「これ!」
彼は、スイカズラの花束を見せた。「忍冬(スイカズラ)…きれいだね…」「ジェジェは、知ってたんだ?」「ん」彼女は、早速手に取り、茎を切って食卓の花瓶に生けた。「リンファ・グーグー…私達に…ぴったり…流石…」「ぴったり?」「ん…朝ごはん終わったら…教えてあげる…」「アッ、鍋止めてた!」彼はすぐさまコンロに戻った。
『友愛・兄弟愛』『愛の絆』、「ジェジェと…シャオグーは…一緒に冬を越す…師範に会うため…」
「電話王子様」「やわらか飲料!極度乾燥!」「小心对您的怀抱!」「夜道を照らす安心。それがわが社です!」そういった張り紙が壁を埋めつくし、怪しげな路地へ誘蛾灯めいて人々を誘い出す。入った者は、二度と出てこなくとも不思議ではない。
その大通りを一人の青年が駆けていた。スウェットにジャージの下履き、スニーカー、手にはオカモチ。器用に人々の間を縫って進んでいる「よおシャオグー!今日も精が出るな!」「シューシュー!オハヨ!じゃ急いでるから!」マンドウ露店の店主が、パラソルの下から青年に声をかけた。
「待ちな、ほら持ってけ!」彼はシャオグーと呼ばれた者に、蒸し終わったばかりのミート・ニクマンの包みを二つ投げ渡した。「シェシェ!」「たまにはネエチャンにも顔出すよう言ってくれよ。よろしくな!」シャオグーは、それを首から下げたキンチャクに入れて、また走り出した。
「かわいい顔が見えたと思ったら、シャオグー!朝から大変ねえ」「グーグー!ゴキゲンヨ!ゴメン、早く戻んないとジェジェが怒るからさ!」今度は、通りに面した花屋の老婦人が話しかけた。
「そうかい、じゃあこの花だけでも…」「これは?」花屋はシャオグーに黄色がかった花の束を手渡した。「スイカズラさ。メイラン=チャンに渡してあげてね」「わかった!ジェジェも喜ぶよ」少年は再び人混みを掻き分けて行った。
数分後、少年は雑居ビルの前に到着した。その1階にある中華料理屋に足を踏み入れた。「ディエンジャン!デマエ終わったよ!」シャオグーは元気よく報告した。「オカエリ、ナンハイ!すまんな叩き起こしてすぐ、食器取り行けだなんて」厨房から店長が体を乗り出した。側頭部以外髪がなく、逞しい腕を見せる日焼けした中年の男であった。
「メイランならもう起きて、ドージョーでトレーニングしてるぜ」「ジェジェが?珍しいこともあるんだな」彼の姉貴分(姐姐)は9時まで寝ていることもザラだ。(その癖、昼寝もきっちり取るし…昨日変なモノたべたのかな)そんなことを考えながら、シャオグーは厨房にオカモチを戻し、中のドンブリや皿をシンクに入れた。
彼は従業員通用口を潜ると、誇り被った階段を登り始めた。店子なのか、はたまた浮浪者のものか、よくわからない段ボールや合成飲料のアルミ缶、「中華二个零」と銘打たれた金属片が踊り場などに転がっていた。
「ほんとに、朝から修行してるみたいだな…」シャオグーはひとりごちた。階段を上がる度に、床を蹴る音、木材が軋む音が聞こえてきた。2階に上がるとすぐに、雑居ビルには似つかわしくない、白い漆喰の壁、木目の扉、羽目板が見えた。
「騶虞武馆」、これが彼と姉の暮らす家であり、修行場であった。シャオグーは扉を開いた。中に入ると、天井から釣り下がる銅鑼が彼の帰宅を出迎えた。その中心部には威圧的なカンジで「食铁兽」と刻まれていた。「鉄さえ食らうダーションマオ」、老師が残した言葉は今でも彼ら姉弟を見守っているのだ。
少年は、玄関からすぐの格子状に張られたフスマを開いた。ターン!中はタタミ十数枚のスペースで、等間隔に木人…否バイオ・バンブー製のカカシめいた人形が置かれていた。そして、それらを相手に演武する一人の女性が。
「ジェジェ、ザオアン!」「ん…ザオアン…シャオグー…」シャオグーは姉弟子、メイランにアイサツした。一方は元気よくオジギ、他方は静かに抱拳した。その対称がドージョーのアトモスフィアを醸成した。「汗、かいてく?」彼女の言葉は凪いでいた。しかし、有無を言わせぬ言外の圧があった。
(ジェジェ、今日はヤルキがあるみたいだ。オレも最初からマジにならなきゃ…)シャオグーは早速構えた。片足を突きだし、もう片方を軸足に、右腕は真っ直ぐ伸ばし、左肘を後ろにしてバランスを取る基本姿勢である。
一方のメイランは、クマが爪を剥き出す様に両手の指を揃え左腕を引き、右腕を突きだした。あるいは、実際にその両手は毛皮に包まれ、肉球のついた掌をしていた。両者はタタミ2枚の距離に互いを見据えた。弟弟子はジャージにスウェットで、対する姉弟子はノースリーブのチャイナドレス。更に。下にはスポーツ用のスパッツを履いていた。
(動けばヤラレル!)「…」少年は、姉の無表情から獲物を狙う肉食獣を幻視した。いや、少なくとも彼女の白髪から見えるクマめいた黒い耳は本物であった。(…来る!)その耳が微かに動いた!
「ん!」メイランの右腕が振り下ろされた。「クウッ」シャオグーは左腕で防ぎ、右腕で掴んだ。「ん…ん!」「グワーッ!」メイランは、敢えて腕を脱力し足払いした。「んー!」「グウウッ」彼女は間髪いれずに、弟を掬い上げるように追撃を行う。少年は姉の打撃を辛うじて逸らした。
「ん!」「ハイーッ!」メイランは続けて、勢いを乗せ左腕を振り下ろした。シャオグーは、身を屈め回避した。「んー!」姉弟子は覆い被さる様に突撃した。「ハイヤーッ!」弟弟子はそれに対して、足のスナップで前傾から手をついて、逆さに爪先で後頭部を狙った。「ん!」メイランはスモトリめいて開脚し地に伏せて回避。
「ハイッ!ハイヤーッ!」シャオグーは、構わず地に足をつけ、その勢いでフリップジャンプ。彼は、幅跳びめいてメイランを飛び越え、タタミ3枚分の距離に離れた。「ん」姉弟子は頷き、ビデオの巻き戻しのごとく足を戻し、ゆったり立ち上がった。
「ハアーッハアーッ」弟弟子は息をととのえつつ、基本姿勢へゆっくりと戻った。「ん…まあ…朝イチにしては…まるかな」「何言ってるんだ…ジェジェ、オレまだ全然やれるよ!」メイランの言葉にシャオグーは顔をしかめた。
「朝ごはん…まだでしょ…ディエンジャンのおつかい…シンクーラ」「…ジェジェ、お腹すいたの?」「ん」シャオグーは姉の言葉を聞いて力を抜いた。「そうだ!実は、ワン・シューシューからミート・ニクマンを…」彼は荷物の方に向き直り、注意を逸らした。その油断が仇となった。
「ん…隙だらけ…」メイランは耳をピクピクと動かした。そのまま、クマが全力疾走する様に前傾姿勢を取り、床を蹴った。「ン?…アイエ!?」「ん…シャオグー…勝負が決する前に…警戒を解いちゃ行けない…ジェジェは前にも言ったよ?」彼女は弟弟子との距離を一瞬で詰め、後ろから抱きついた。柔らかい肉球と毛皮の触り心地に包まれた。
「ジェジェ…きついよ!」「ん…指導だから…我慢しなさい…」メイランはシャオグーの胴に腕を一周させた。髪に顎を埋めるように体を固定され、少年は2インチほど体を浮かせた。弟弟子からは、コウシンバラのシャンプーとすえた汗の匂いがした。
「ジェジェ…」「シャオグーは…やっぱり匂いが…男の子だね」「…!」少年は、横顔にメイランの吐息を感じた。そのつもりがなくとも、彼はスウェット越しの背中に柔らかさを意識して、顔を紅潮させた。姉弟子は、コウシンバラと僅かに獣のような香りが混じった匂いがした。
「汗、かいたね…」「…ウン」「ごはんの前に…シャワー浴びようか?」「…」メイランがこのように言うときは、一緒に入りたいという意味であった。「返事は…」「…ウン」「ん」シャオグーは、恥ずかしがりながらも、弟として逆らえなかった。
◆◆◆◆◆
姉弟弟子は、何も言わず脱衣所で着衣を脱いでいた。少年の顔は真っ赤であった。「汗…気持ち悪いでしょ…早く入ろ?」そう言うと、メイランは無造作にチャイナドレスを脱いだ。
飾り気のない黒いスポーツブラとスパッツ姿、普段はなんてことないだらしない部屋着なのに、何故かシャオグーは目を離すことができなかった。「ん…あんまりジロジロ…見ないで…」「!…ゴメン!」「ん」彼はいそいそとスウェットを脱ぎ、ジャージの上部分、そしてズボンに手をかけた。手が止まった。
「…」シャオグーは固まってしまった。何故なら、股間部分が膨らんでいたからだ。(ジェジェに気づかれたらまずい…)彼は何とか、沈めようとした。しかし、そうすればするほど、先ほどのメイランの姿、彼女の熱を帯びた言葉が思い出された。それがより興奮を高めた。
「ん…どうしたの?」「ナ、ナンデモ!」少年は、姉弟子に後ろから声をかけられ。思わず背を強ばらせた。「ふーん…」「なに?」「…えい」彼女は、弟弟子の手に肉球を重ねた。そのまま一気にジャージのズボンを下ろした。
「ん…今日も元気だね…」「!」メイランは背中越しに、シャオグーの逸物を見た。サポーターからはみ出そうなほど、反っているがやはり大人よりは一回り小さなモノであった。彼の顔は赤を通り越して、白んで見えた。
「ジェジェ…これは、その…」「いいよ…ジェジェは全く…気にしてない」「…」シャオグーは恥ずかしさから、急いでサポーターを脱ぎタオルを四苦八苦して巻いた。「じゃあ…入ろ」メイランもバスタオルを巻いていた。しなやだが均整の取れた腕や脚、それぞれの先端は毛皮に艶のある毛皮に包まれていた。
彼らは、シャワーに入ると互いに体を洗いあった。しかし、シャオグーはメイランの目とあったまま、離せずにいた。一瞬でも目を離せば食い尽くされそうだったからだ。黙々と、鋭い爪、手足の指と肉球、毛皮、背中、機械的にタオルで磨いた。とうとう、残すは互いの正面部のみとなった。
「…」「シャオグー…後は前だけだよ…」「…ウ」シャオグーは、姉弟子の言葉に返答しようとしたが、呻きすら出せなかった。「仕方ない…ジェジェがやってあげるね…」「!」メイランは、彼のバスタオルを剥ぎ取った。小ぶりなぺニスが、その反動で揺れた。「ん」「ウウッ」彼女は無表情に反し、熱心に弟の身体を洗った。だが、決して「肝心の部分」には触れなかった。
「ん…もういいかな…気持ちよかった?」「…ウン」シャオグーはメイランに首肯した。しかし、その顔にはもどかしさが見えた。「じゃあ…ジェジェのも…お願い」「!?」そう言うと彼女は、バスタオルをほどいた。
バストは豊満であった。乳房は形がよく、しかしその重量感を感じさせる丸みは圧巻である。中心にはピンク色の突起が少し立っていた腹は、胸の影になっていたが、腹筋が割れているのが見えた。下腹部は、脂肪がつきすぎず、丸みがある上で引き締まっていた。少しだけ、白い毛が残っていた。ゴクリ。シャオグーは思わず喉を鳴らした。
「…早くして…風邪引いちゃうよ?」「ウ、ウン!」彼は無我夢中で、メイランの身体を洗った。「ん…」「痛かった!?」「大丈夫…ちょうどいい」弟は、ただ姉を拭った。球を、先端を、割れた腹の柱の一つ一つを。「ん…」その度に、メイランは耳を痙攣させ、喘いだ。シャオグーは、それを認識するほどに、股間に血を集め透明な迸りを溢れさせた。
いよいよ、白い毛を生やす秘所へ少年の手が伸びる瞬間、彼は手を掴まれた。「!?」「最後は…ジェジェとシャオグーで…一緒に洗お…」メイランは耳元で囁いた。シャオグーはなんとか意識を保つので精一杯であった。
姉弟子は、弟弟子を床に寝かせた。二人は互い違いになり、さながらトモエめいていた。そして、互いに局部を前ににタオルを手に取った。「ん!」「ウオッ!」それぞれが、敏感な部分を擦る度、我慢できずに叫んだ。「んん〜ん!」メイランはその爪で器用に泡立て、弟のぺニスを挟んで上下した。「ウウウ!」
「止まってる…」「アッ…ゴメン」「お願い…」シャオグーは、快感に手を止めていた。彼は、再び姉の秘裂にタオルを当てた。「…んん」荒削りながら、しかし毎日の鍛練か、彼の洗い方は素早く、指はひたむきに襞を力強く捉えた。
「アアア!」メイランは負けじと、爪の摩擦感と肉球の包容感を使い分けシャオグーの逸物を丹念に洗った。裏筋の一つ、睾丸の皺まで丹念に洗い上げた。「ウウッ、ジェジェ…オレも!」「ん!んん〜っ」少年はどうにか耐えながら、偶然にもタオルを擦り上げた。それは陰核を刺激し、仄かに赤らめさせた。
「アアア!」「んん〜!」「アアア!」「んん〜!」「アアア!」「んん〜!」互いのワザとワザ、対抗心とも献身とも、肉欲とも区別できぬ熱がぶつかり合った。そして…「ジェジェ、オレもう!」シャオグーの怒張は既に暴発寸前であった。今や、姉の肉球からすらはみ出ていた。「…ん!」メイランも限界を迎えていた。そのクリトリスは膨張し、愛液は弟を汚していた。
「ジェジェ!来る、来るよ!ツァァァオ!」少年は姉の顔に白濁した欲をぶちまけた。黒い耳に白い点を作り出していた。「んんーっ!」姉の方は、同じく透明な液で弟に潮を噴射した。「ハアーッハアーッ!」「ん…ふーっ…」「ウグウッ」互いに崩れ落ち、シャオグーはメイランの下敷きになった。身体と身体が重なり、互いの粘液と石鹸水にまみれた。
◆◆◆◆◆
二人は、身体を乾かし着替え終わると、疲れと空腹に苛まれた。マイクロウェーブで、ミート・ニクマンを再加熱し、その間、メイランはタケノコを切り、シャオグーは豆乳を煮込んでいた。
「そうだ!ジェジェにプレゼント渡し忘れてた!」彼は、豆乳鍋の火を止め、荷物を取りに行った。「今日は…何を貰ったの…」彼女は、包丁をリズミカルに動かしながら、無表情な顔から、興味深かげに目尻を下げた。「これ!」
彼は、スイカズラの花束を見せた。「忍冬(スイカズラ)…きれいだね…」「ジェジェは、知ってたんだ?」「ん」彼女は、早速手に取り、茎を切って食卓の花瓶に生けた。「リンファ・グーグー…私達に…ぴったり…流石…」「ぴったり?」「ん…朝ごはん終わったら…教えてあげる…」「アッ、鍋止めてた!」彼はすぐさまコンロに戻った。
『友愛・兄弟愛』『愛の絆』、「ジェジェと…シャオグーは…一緒に冬を越す…師範に会うため…」
24/07/23 17:10更新 / ズオテン
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