連載小説
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セクション6
「イヤーッ!」スパークストライクは、その両手の翼を全開にし、空へと羽ばたいた!「アバーッ!」その行動に対して、スティルボーンは背中のユニットから半自動追尾ドローンを射出!BUZZZZZZZ!コバエめいて展開するドローンが、空を駆ける鳥人を追跡する!

「イヤーッ!」ドローン操作を行うスティルボーンの隙を、マッチロックが見逃さなかった!BLAMN!「イヤーッ!」」ホワイトナイトがインタラプト!カタナで銃弾を両断するのはタツジンでさえ、角度や風向きに左右され困難を極める。もちろん彼の技術では、咄嗟のアクションでそこまでは不可能である。しかし!「イイイヤアアア!」カタナの反りに合わせ、銃弾の軌道は明後日の方向に逸れてしまった!

「ヒュー…」(結構タノシイな獲物に出会えたァ)カウボーイは、イクサのサイ中にもかかわらず、高揚感から口笛を吹いていた。一方、その相棒、スパークストライクは羽根をまき散らしながら高速飛行!追いすがるドローンは、そのジャイロによってさらに広く羽根を巻き上げる!「ヘヒャヒャ!オソイ、オソイ!」パンク女は、余裕の笑みを浮かべドローン群を翻弄!そこへホワイトナイトに軌道をずらされた銃弾!アブナイ!

「イヤーッ!」スパークストライクは全く弾丸を避けようとしなかった。彼女は気づいていないのか!?否!「フーリンカザン!イヤアアアア!」その全身が青い稲妻を纏ったかと思うと、周囲に舞い散る羽根もすべて呼応するように同色に輝いた!(マズイ!これはお父さんの言ってたフレミングの法則!)スティルボーンのスコープには、周囲の磁界の乱れが表示されていた!

スパークストライクに迫っていた銃弾は、まるで通行人が前から来た者を避けるかのように、滑らかに彼女から逃げた。それは、下界で争う二人の男たちにも確認できた。電気と磁力は、相互に密接に作用しあっている。電流が流れれば、自ずと磁界の向き、導体の進行方向は決定する!そして、電力源はスパークストライクと拡散した羽根が担っている。すべての羽根が落ちきるまで、銃弾はほぼ自由に動かせるのだ!

「掃除の時間だ!」スパークストライクは力強く宣言した!その言葉通り、弾丸は彼女の意志によって、追尾するドローン達を一掃した!KABOOOM!ドローンはほぼ時間差なく爆発!「これでサッパリしたなァ!」中空にホバリングしたパンク女は、下から見上げる青白い肌の敵に底意地の悪い笑顔を向けた。「まだ、勝利を確信するのは早いですよ!」「へッ、威勢はいいな、嬢ちゃん!妹ちゃんよりゃ楽しめそうだ!イヤーッ!」スティルボーンの啖呵に、スパークストライクは羽根で返答した!

「妹…楽しめそう?」「アン?」「私のミチェルをオモチャみたいに…」戦闘ユニットを担いだズンビーは、パンク鳥人の言葉に顔をしかめた。シュゴオオ!背部ユニットのジェットパックが点火!「今ならまだ謝罪は受け付けます…」「ハッ?」スパークストライクは困惑した。「目ェ見えてンのか?テメエは今コッチのフーリンカザンに入ってンだよ!」スティルボーンに飛び来るすべての羽根が輝きを増し、電気の網を作り出し迫った!アブナイ!

「アバーッ!」しかし、ズンビーは全く怯まなかった。ジェット噴射を片側に重点し、アームを地面に突き刺した。どうするつもりであろうか?彼女は、その場でアームを軸に遊園地のトラバントめいて回転を始めた。「ハッ!そんなことしようが、網から逃れることは…」スパークストライクは訝しんだ。(磁界の中で鉄の塊が回転だと?)

このパンクファッションのマモノは、この世界に来てから電気が豊富な文明が築かれていることに感動した。そして、貪欲にその電磁気学を情報収集した。一見粗暴であるが、全くの無知でもなかった。彼女の懸念は、回転が速さを増すごとに輪郭を濃くした。「マズイ!」スパークストライクは、飛翔して離脱しようとした。

しかし!「アバーッ!」今やその回転は青い光を伴って、なお加速していた!おお見よ!電磁投網と化した羽根の大群は、スンビートラバントに取り込まれた。スティルボーンは、背部ユニットのコイルに敢えて過充電させ、一つの強力磁石と化しているのだ!「グワーッ!」電気の豊富な彼女は、磁力には抗えない!正にフーリンカザン返しである!

一方そのころ、下では二人のインキュバス達が争っていた!「イヤーッ!」「イヤーッ!」カタナと火縄銃がぶつかる!(骨董品を得物にしてやがるが、なかなかどうしてワザモノみてえだな…)ホワイトナイトは眉根を寄せた。
数合の打ち合いで、この年代物の小筒が異様な耐久力を持つことに気づいた。

「なんか、オカシイを感じてるみたいだねェ…」「それがどうした?」鍔迫り合いの最中マッチロックは口を開いた。「オイラの銃はね、お腹いっぱいなのさ…」「何言って…」「君は別腹だけどね!イヤーッ!」「ヌウウウウ!」大柄な男は、その膂力をいきなり高めた。(コイツ、こんな力どこに!?)

「イヤーッ!」マッチロックは、均衡が一瞬破れたのを見逃さなかった。頭突きである!「イヤーッ!」ホワイトナイトは瞬間的に力を緩めた。カタナがソレルに合わせ、火縄銃を持った両手がのけぞる。「イヤーッ!」「イヤーッ!」カウボーイ男は体勢が崩れたのに構わず、全身の質量を勢いに乗せ、ホワイトナイトへプレスした!それに対して、着流しのローニンは、滑り込んで前転回避!

両者の距離は、タタミ5つ分離れた。「連れないねェ!もっと仲良くしようよ!」「へッカウボーイとローニンじゃ西部劇にも、サムライドラマにもなりゃしねえだろ!」「言うねェ…」マモノたちの間に、剣呑なアトモスフィアが充満した。いよいよ、ヒサツワザを見せるのか!?その時、「グワーッ!」スパークストライクが落下してきた!「!?」「スパ=チャン!?」

「イヤーッ!」マッチロックは得物の火縄銃を捨て、相棒を助ける為に飛び上がった!「グウウウ」「ダイジョブかい!?」「シクッた…」スパークストライクの電気エネルギーが強い磁場により乱された!BOOOM!「アバッ!」「スティルボーン=サン!」遅れて、ズンビーの背部ユニットが爆発!宙に投げ出された彼女を、ホワイトナイトが両腕で捉えた!ナイスキャッチ!「アリガトゴザイマス!」彼女は元気に感謝した。

「…!」ホワイトナイトはスティルボーンの容態を確認した。背中は焼け焦げ、手足はあり得ない方向に曲がってしまっていた。彼女は青白い顔で申し訳ない表情を作った。「スミマセン…ちょっと戦えそうにないです…」「痛くはないのか?」「ハイ…ズンビーですから」「親御さんから、キミを預かってるんだ…あとは任せてくれ!」ホワイトナイトはスティルボーンの体を静かに横たえた。

スティルボーンは逡巡し、そして遠くに倒れる妹、ディケイを見た。「…ホワイトナイト=サン!」「何だ」「妹の分まで、センセイ、オネガイイタシマス!」「…カシコマリマシタ!」ホワイトナイトは、刀身に映る自分を見て、カタナを握りなおした。その視界に、大柄なカウボーイが立っていた。

「一発入魂…マッタはなし!いいねェ!」マッチロックは火縄銃に込めたすべての魔力と、体中の精力を最後の弾丸に充填した。この一発、外せばジゴク、当たった方もジゴク、どちらかが斃れるしかない。「…」傍らのスパークストライクを見た。ここまで満身創痍になった姿は初めてだ。「ナニ、見てんだ…」「いや、スパ=チャンとの馴れ初めを思い出してね。これくらい張り詰めてたよねェ」「覚えてねェ…できるか?」「俺が外したことあった?」「そうだな…マッチ=クン…」

マッチロックはスパークストライクの髪を撫で、そして立ち上がった。着流しのローニンが立っていた。「ローニン=サン…オイラのテッポウ、あと一発なんだよねェ…」「…」カウボーイは口を開いた。「この一発、これ以上は無粋かな」「…!」彼は、今までとは全く違う冷徹な声で、得物の銃を構えた。(勝負は一瞬…西部劇がやりたいッてことか…)「なら、せいぜい、オレがストライクするのをお祈りしな!」ホワイトナイトは刀身に魔力を注ぎ込んだ。

両者を隔てるものは何もなかった。風が吹くと、落ち葉と焦げた羽根が舞い上がった。「…」「…」ただ、にらみ合いが続いた。風が通り過ぎ、はらりとそれが落ち始めたその瞬間であった。「「イヤーッ!」」BLAMN!火縄銃の黒色火薬ではありえない初速で弾丸は発射された。剣士は、それを目で捉えた。距離を経るごとに加速するという、物理法則を無視する魔弾は、ローニンの心臓へ一直線であった。

カタナはその軌道上にあった。予定調和めいてそれは起こった。銃弾の方がカタナを避けたのだ。(…ナニ!?)ホワイトナイトはコンマ数秒で、その原因を探った。(羽根…!)彼の背中、心臓の真後ろにはスパークストライクの羽根があったのだ。レースカーがコーナーを曲がるが如く、魔弾は旋回し背中から彼の心臓に再度突撃を開始した。絶体絶命!

「アバアアアッ!」「「!?」」ホワイトナイトの背中をワイヤが通過し、致命弾丸がナックルで粉砕された!マッチロックとホワイトナイトが声の方に注意を向けた。そこには、「アバーッ!」ズンビーが立っていた。「ナンデ!?確かに電撃で気絶させたのに!」カウボーイは驚愕に叫び声をあげた!

(妹、ミチェル=サンか!?いやそれより、今だ!)ホワイトナイトはカタナを振りかぶり、脚に全ての力を集約し、踏み込んだ。常人のそれをはるかに上回る〈一歩〉は彼の戦技に他ならない。イアイドの奥義、ゴクラク・スプリントであった!「イイイヤアアアアッ!」「グワーッ!」一歩のうちに数フィートを移動し、カタナと体はすでにマッチロックの背後に回っていた!「サヨナラ!」

エピローグへ続く
24/06/30 09:37更新 / ズオテン
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