連載小説
[TOP][目次]
第拾八回「カーニバル・サバト」
 月には、三相がある。すなわち、「新月」「三日月」「満月」である。ただし、実際の月は地球に見せぬ、「月蝕」の地域が存在する。

 そのうち、「新月」として地球から観測される地域には、三つの都市が存在する。遠吠えの街「ヤルンヴィド」、バベルの塔の名残「エウリュパエソポリス」、そして捨て子の要塞「カエル・アリアンロッド」。今回の取材先である。

 前回は、三日月の地域で女神ヘカテーの都市で、魔術の聖地であった。今回のカエル・アリアンロッド(銀盤の砦)は、「子供」特に、「捨て子・みなしご」の集まる城塞都市である。

 信仰されるのは、月の女神の一人「アリアンロッド」である。彼女は、「母性の否定」「子捨て」という、曰く付きの権能を持つ。逆に言えば、孤児や勘当、間引きされた子や、行方不明の子供の中には、ここに行き着く者もいる。謂わば、街全体が「孤児院」なのだ。

 ネバーランド(常若の国)とも呼ばれ、親のいない子、生き別れた迷子、取り替え子(チェンジリング)が暮らしている。ごっこ遊びの延長で街は運営され、子供だと侮れない技能を持った少年少女が多数いるのだ。

 大人や盛年の魔物もいないことはなく、彼ら彼女らは、妖精の「遊び相手」やブギー、ボギーに連れていかれた「悪い子」、人買いに売られたり、捨てられた子供が変じた者である。

 人間の世界において、しばしば、移動式テントのサーカスや遊園地が開催されるが、そこの下働きには、よく「孤児」がいる。更には、魔物の見世物、怪しげな奇術師、不気味な道化師や着ぐるみ。それらは、ややもすると、ネバーランドより興行に来た、フリークスなのかもしれない…

概要:「グレイテスト・ショー=ゴート」こと、座長アラストール・ヴァイスが運営するサバト。表向きは、謎めいたサーカス団「キルクス・アルゲントールム」で、人間界でも人気を誇る。バフォメットの奇術師による手品と、数々の大道芸、遊具や体験ショー、出店等、「少女からお兄ちゃんまで」が楽しめるアトラクション目白押しである。アラストールのマジックには、「タネも仕掛けもない」と謳われる。実際のところは不明であるが、彼女は多くの種族を研究し、生態工学的な発明を行っている。その幻想の世界に魅了された者が一人、また一人と、ショーが終わると消え失せ。次の公演には、火の輪くぐりや空中ブランコをする、魔女やお兄ちゃんが増えているのだ。
魔女コレクトラ(以下コレ):本日は特別公演を催して頂き感謝致します。 出店で購入した、遮光器のお土産、わたあめ、三角帽子のかわいらしい生き物がインタビューを行っている。

魔女オーガスタ(以下オー):今夜のショーは味気ない?お大尋、そうは思いやしませんか?

ピエールおにいたん(以下ピエ):ひょほほほ!オイラもそう思っていたんだよ、プリンちゃん!フルコース、デザートたべなきゃ、物足りぬ?! 頭に比して異様に小さな帽子から、クリームパイを取り出す。

コレ:えっ!?

オー:ひええええ!逃げろや、スタコラサッサイ! 虚空より一輪車を取り出して、走り去る。

ピエ:あーら、逃げられちゃったい!せっーかくパイを焼いたのに! 相方にパイを投げるや、不思議な慣性が働き、コレクトラに軌道が向かう。

コレ:ちょっ、あぶな! 杖を振るうと、空中にシルクハットが出現する。

コレ:なにこれ!?

ピエ:あやつはどこじゃ?こいつか? 掴み上げるのはワーラビット。

ピエ:違った!じゃあ、こっち? 布が幾重にも結ばれ、延々と引っ張っていく。

ピエ:ちぇっ!いったいどこへ行きゃがった?
オー:誰かお探しかい? シルクハットから手が出て平手打ち。
ピエ:あいたっ!? 地面に落ちたハットから、足が生え、チュチュが見え、帽子を被る魔女が現れた。

二人は横並びになり、コレクトラにお辞儀する。
コレ:いやあ、面白かったです!
25/10/24 13:16更新 / ズオテン
戻る 次へ

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33