連載小説
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セクション5
「…ドーモ。ドリームウィーヴァー=サン、ホワイトナイトです」ホワイトナイトは、狂った理想郷計画について考えないようにして、新手のマモノにアイサツを返した。(状況は二対一…この場所は完全な未知…キツイ)彼は周囲を見渡した。デジタルスクイレルに連れてこられた空間とは様相が異なり、角度により色彩を変える地面、マンゲキョのごとき遠景とこの世のものとは思えない世界が広がっていた。

「ワハハハ!感動して声も出んか?だが、よそ見はよくないぞ。イヤーッ!」ソムノファイルは、腕を後ろに広げ異様な速度でホワイトナイトに襲い掛かった。「イヤーッ!」ホワイトナイトは牽制に懐からナイフを投げる!「イヤーッ!」ソムノファイルは大げさに上体を動かし、ナイフ回避!そのまま拳を固めて、加速を行う!「イヤーッ!」「イヤーッ!」カタナと拳がぶつかる!

「イヤーッ!」ソムノファイルは、手の甲でカタナの腹を殴り刃を逸らす。そのままインキュバスは片腕で胴を狙う!「イヤーッ!」「ヌウウッ!」ホワイトナイトはずれた腕の慣性を使い、ソムノファイルの頬に肘を打ち込む!「イヤーッ!」体勢の崩れたインキュバスに、暗いオーラのカタナが迫る!

しかし!Clip-clop!「キエーッ!」ホワイトナイトの背中から女性のシャウトが聞こえる!ナムサン、先ほどまで十数メートル先にいたナイトメアが、大鎌を掲げすぐ後ろから突進を仕掛けていた!(クソッ!?)「イヤーッ!」ホワイトナイトは間一髪のところでしゃがみ回避!「よそ見するなと言っておろうがーッ!イイイヤッー!」そこにソムノファイルの蹴りが迫る!

「…ッイヤーッ!」それは須臾にも満たぬ一瞬であった。かがみ姿勢のホワイトナイトはドリームウィーヴァーの鎌が通り過ぎ、インキュバスの足が迫る、コンマ1秒の間に戦技を解放した。戦技とは、魔力と精力を全身の細胞に巡らせ、強化するワザ。その力によって。ベッドのスプリングが元に戻るときの瞬発力で、ホワイトナイトは空中に1回転した、それは人馬を跳び越すのに十分であった。「ナニ!?」ソムノファイルの蹴りが恋人に向かってしまう!アブナイ!

「イヤ…ッワー!」「ッダーリン!?」いったい何が起こったというのか!?インキュバスは最愛のナイトメアに攻撃が当たる寸前、自らの脚をチョップし切断した。バランスを崩し、ソムノファイルは地面を転がった。その脚の断面からは鮮血が流れている。「…なんてこった…」着地したホワイトナイトは、バツの悪そうな表情でその光景を見た。

「ダーリンケジメ 私のせいで 切断なんて…」「気にするな、アンミツ=チャン…君を傷つけることに比べれば…」ドリームウィーヴァーは、地面に横たわるソムノファイルに近づく。女は恋人に寄り添うため、ウマの前脚の関節を折り、人間の上体を降ろした。「ダーリン出血 有り得ない帰結 まかせて解決」「…アア。またお願いする」ナイトメアは、片脚ケジメインキュバスに手を翳した。七色に輝く地面や周囲のパーティクルが集まり、ソムノファイルの切断面を暗く光らせた。

「…!?」ホワイトナイトは驚くべきものを見た。かの主神でも、この超自然的な光景に目を背けるだろう。ソムノファイルの出血が止まったかと思えば、七色の物質が脚の形に整列した。見る見るうちに、骨、血管、筋肉、皮膚が形成され、数十秒で脚が再生した。「グウウウッ遥か…にイイ…さすが俺のアンミツ=チャン」「フフフ。 こんなの当然 貴方の安全 それが私の実存」二体のマモノは、敵を忘れたかのように抱き合った。

「…アノー」「「…!」」ホワイトナイトの声に彼らは振り返った。「オオッ!俺としたことが、貴様を忘れていたな…」「このまま不戦敗にしてやってもよかったけどな」ホワイトナイトは挑発した。「フンッ、減らず口もここまでにしておけ、イヤーッ!」ソムノファイルは床をたたいて起き上がった。「アンミツ=チャン、アリガト!これで俺の力は、君のおかげで100倍、すなわち1000倍だ!」「ダーリン無理しないで でもあいつに負けないで!」

「へッ、お熱うございますッてか」ホワイトナイトはイアイドの基本姿勢を構えた。「フフン!俺とアンミツ=チャンの絆は最強だ!」ソムノファイルはカラテニュービーめいた不格好な構えを行った。(実際、あの再生能力も危険だ…それに相方のウマは一瞬で間合いを詰めやがった…どうにか破る方法はないか?)にらみ合いながら、カタナのインキュバスは思案した。

「ウフフ、ホワイトナイト=サン。お前の恐怖は手に取るようにわかるぞ…」
「…!?」すわ!このインキュバスは思考を読んだのか!ホワイトナイトの懸念は別の人物により、説明がなされた。「モヤシ野郎 ダーリンに歯向かう下郎 よく見えるその絶望。 このユメ・プラザ 作り出したナイトメア 心さえ丸裸」「その通りだ!この娘の言うとおり、貴様の感情が段々このユメつまり無意識に取り込まれているのだ!」

(オイオイオイ!カトゥーンやコミックじゃねえんだぞ…!?」ホワイトナイトは驚愕した。ニューロンでのつぶやきが声に出たのか?否!この空間に心の言葉が反響しているのだ!「フフハハハ!理解してきたようだな!このまま、俺たちは労せずして貴様をこの世界の住人にしてしまえる!」「…♡」ソムノファイルは、傍らのドリームウィーヴァーの鼻先と顎を撫でながら叫んだ。「だが、それだけでは面白くない…俺の脚の痛みのオトシマエ…」上半身裸のインキュバスはいきなり、カタナのインキュバスに向き直った。その眼は敵意と七色の暗い魔力に満ちていた。

「なにより、アンミツ=チャンの心の傷への仕返しだ!イヤーッ!」ソムノファイルは、狂ったように前傾姿勢でホワイトナイトに突進を開始した!「イヤーッ!」ホワイトナイトは、セイシンテキを高め、急接近する敵を見据えた。カタナに魔力が走る。「ここだ、トッタリー!」それは心からか口に出したのか、ホワイトナイトはヒサツワザをシャウトした!「…ユメは何でもできるのだ!イヤーッ!」ソムノファイルは右腕を後ろに動かした。渾身の戦技を繰り出すのか⁉「イヤーッ!」しかし、拳よりもカタナにリーチあり!だが!シュルルルルル!


「ッナニッ!?」「ウフフ、俺がトッタリ!」ホワイトナイトのカタナは止められた!それは拳ではなく、チェーン上のナニカであり、カタナに巻き付く先端部にはブンド(訳注:天秤に使用される錘)が付いていた!皆様が中近世の日本の武術に造詣が深ければ、これが何か気づいたであろう!チェーン・ブンドである!かつて日本列島で暗躍した闇の者たちは、この武器を扱い敵の得物を巻き上げていたと伝えられる!

「イヤーッ!」「ヌウウッ!」ホワイトナイトは呻いた。徐々にカタナが巻き取られていく。「カタナが動させねえ!」「ウフフ!言ったであろう!アンミツ=チャンはユメを作り出し、そのパートナーたる俺は何でもできる!ユメは何でもできるのだ!」

「だから何だってんだ!イヤーッ!」ホワイトナイトは全身の筋肉を振るわせ、カタナに魔力を注ぎ込んだ!「グウウウッ!ツナヒキか、いいだろう!イイヤアア!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」二者はチョーチョーハッシ!そのチェーンには両者の魔力が拮抗し、おぞましい七色に輝いていた!

「ダーリン…」そのジゴクめいたツナヒキをドリームウィーヴァーが見守る。だが、ついにその争いが…「「イイイヤアアアアッ」」……「グウウウウアアッ!」「ヤッタ!」なんということか!ホワイトナイトの魔力はチェーン全体に魔力を行き渡らせ、直接ソムノファイルにダメージを与えた!「ヌウウッ!」カタナからチェーンが外れていく!だがその時!「キエーッ!」ナイトメアが叫ぶと、吹き飛ばされたインキュバスのもとに地面が出現!

「イヤーッ!」90度の地面に、ソムノファイルは重力を無視して着地!「イヤーッ!」サイドチェーンを射出!「グウウウッ!」ホワイトナイトは咄嗟にカタナで防御したが、「イヤーッ!」インキュバスの腕がチェーンにスナップを加えるとしなり、首にブンドが巻き付いた!「グワーッ!」

「イヤーッ!スマン、アンミツ=チャン!俺は助けられてばかりだ!」「気にしないで ダーリンにはいっぱい愛をもらって それを返してるだけ♡」「ならば、せめてオハコは譲ろうか!」「グワーッ!」ホワイトナイトを縛る力が強まる!Clip-clop!「キエーッ!」そして、ドリームウィーヴァーが大鎌を掲げ迫る!アブナイ!おお主神よ、寝ておられるのですか?もはや、ホワイトナイトはここで一巻の終わりである!

その時!『イヤーッ!』「ンアーッ!」何者かのアンブッシュを受け、ドリームウィーヴァーが倒れる!「ナニ!?アンミツ=チャン!」ソムノファイルは狼狽した!『イヤーッ!』なおも闖入者はナイトメアに追撃を加えようとした。「イヤーッ!」ドリームウィーヴァーの反撃、体を起こす勢いでウマの後ろ脚によるダブルキック!『ン001アー01ッ!101』「「!?」」闖入者は攻撃を受けて、ナムサン、01に分解して消失!

「何者だ 今のは何だ 何だった?」ドリームウィーヴァーは訝しんだ。『やれやれ、ほんとにホワイトナイト=サンは世話が焼けるネ!』「!」聞きなじみのある声に、ホワイトナイトは意識を戻す!「どこだ!姿を見せろ!俺とアンミツ=チャンの愛の巣に土足で入りおって!」ソムノファイルは周囲を見回した。『オット、シツレイ!上をご覧いただこう!」「「「!」」」三者は頭上に目を向けた。そこには、UNIXモニターめいた巨大な窓が浮かび、01で構成されたラタトスクの顔が映し出されていた!『ドーモ。デジタルスクイレルです。うちのカレシへの借りは返させてもらうよ…」

セクション5終わり。セクション6へ続く


24/05/22 10:57更新 / ズオテン
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