読切小説
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ヴァンパイアハンティング
 「人間にしては、やりますわね」「貴女こそ、華奢なお姿に反して、この膂力…流石は真祖といったところ」一瞬の斬り結びで、狩人の剣は刃こぼれしてしまった。

 相手の得物は、素手…そう、怪物、吸血鬼の真祖そのもの。「今なら、謝れば赦してあげましてよ」「何を…」青年の背後の闇に、紅い眼光が閃く。「…召し使いの端くれとか、如何」「!」

 狩人は、咄嗟に斬撃を繰り出すが、マントのような翼手が短剣を掴む。銀製の刃に触れて、燻る火傷が出来ようと、城主は離さない。「…観念おし」「くっ…」牙を剥き出し、首筋に迫る…

 「…はぁっ」「ぐっ…あああ」痛みは、最初だけであった。少女に見える吸血鬼の牙が突き立てられ、血が溢れるまで。「…んんん?」味に違和感があるものの、アクセントが利いていて、むしろ珍味と言えた。

 「あがぁががが…」青年の全身が痙攣し、うっとりと白目を剥いていたが、気にしていなかった。彼女は文字通り舌鼓を打って、夢中で舐め取った。

 だが、その時「でかした、弟子よ…」「…えっ」天井から声がした、振り向けば、ガラス瓶が投擲された。「なっ…」彼女の紅目は、超人的な動体視力で、その中身を理解した。速く、逃げねば…

 「しまっ…がはっ」「生物というのは、どれだけ高度になろうが、食事と性交、睡眠は無防備。サキュバスの類いは、『食事が性交』だから特にな。ヴァンパイアと言えど…かく言う私もそうだが」天井から、宙返りして着地した者は、「この魔力…血族…はあはあ」

 長い脚をブーツに、キュロットの上からも、形のよい太ももが強調され、下半身の手弱やかなる曲線が見えた。マントとベスト、孔雀羽をあしらうビコルヌ帽、そして真っ赤な眼。

 「初めまして、妹と呼んでもいいかね?」「半分…平民、下賤な…混血!」「随分な物言いだな。まあ、じゃれつく姉妹というものも、かわいらしいが」部屋には、常人でも鼻を摘まむであろう、大蒜の香りが立ち込めた。

 「『鮮血』のリリアンとか、巷で呼ばれているようだな」「…ああ、はあはあ…」城主、リリアンは、言葉を返すことが出来ずにいた。身体があつい…目の前の男(ごちそう)に意識が持ってかれる。

 「ふむ。少々、量が多すぎたかね?もう、意識を保つのがやっとだろう」「…この、男…血ィ」少女は、三度快感に震える青年にかぶりつく。「私の弟子(まきえ)、ヨナタンは中々旨いだろう?ここまで調合するのは大変だったよ」

「そう…い…」最後まで言葉を紡ぐことなく、リリアンは意識を手放した。

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 「うーん…」「起きろ、寝坊助」「はっ、し、師匠!」ヨナタンは、顔をはたかれて起き上がる。「きゅ、吸血鬼は?」「もう大丈夫だろう」その言葉に、青年は安堵した。

 「…?」彼は、身体をもたげようとしたが、動かない。「…あれ?何で、こんなところに、縛られ」「大丈夫か?ちょっと、きつくし過ぎたか?」「えっ…師匠が俺を?」「そうだ。逃げられたら困るからな」

 「うーん…おかあさま…おとうさま…」「はっ!?」横には、一糸まとわぬ少女…否「吸血鬼が!師匠、息がありますよ!」「当たり前だろう。妹を殺す姉は、そうそういてたまるか」「い、妹?!」

 「生き別れの、な。言ってなかったか?私は、人間の父とヴァンパイアの母の間に産まれてな。両親は、私が人間で言う20歳くらいに新婚旅行に出掛けて、旅先のこの城を別荘にしていたらしい」

 「ようこそ、デラティシュウ・ドゥ・ヴァンピレ…なんだ、母さんと父さんか、50年ぶりくらいか?」「ヴィヴィアンヌ…息災ですね」「なんだね、その格好は?年頃の女子はもっと節度をだな…」「…文句なら、あんたの隣にいる、淫魔の血に言ってくれ」

 「へえ。妹がねえ…」「はい。貴女も、もうすぐ70でしょう。手がかからない、独り立ちした歳ですからね」「それで?妹ちゃんに、お土産でも持って行ってあげろとでも?」

 「ちょっと、甘やかしすぎてなあ。女伯閣下?」「あら。父親ともあろうものが、責任逃れですか?まあ、いいでしょう。ヴィヴィアンヌ?」「母上、つまり、鼻っ柱をへし折ってやれと?」「姉の躾は、てきめんと思います。貴女の性質として…」


 「ふふふ。ヴァンパイアハンターとして、でなく姉として、か」「でも、じゃあ、なんで俺を縛って?」「言ってしまうと、お前の精が私の好みだったからな。妹のエサにもってこいだと思った」「じゃあ、もう拘束要らないですよね?」「姉妹の交流を深めるため『食事会』をやるのさ。お前も付き合え」「あっ…」ヨナタンは、ヴィヴィアンに唇を奪われた。

 「なんだ…この感覚」「見た目上人間と変わらんが、私も魔性がそれなりにあってな…」徐にナイフで、手首を傷つける。流れる血は、眠っている吸血鬼の鼻を擽った。

 「臭い…これ、おかあさま?」リリアンは目を擦りながら、目覚める。「…美味しいそう」「あ、あああ…」ヨナタンは目を合わせてしまった、紅い目と。

 ヴァンパイアは牙を剥き出し、舌舐めずりした。襲い掛からんとする刹那、パシンと頭をはたかれた。「痛っ!」「マナーがなっとらんぞ、人間の男は繊細だ。一発目から抱き潰しては、楽しめん」ヴィヴィアンは、帽子とマント、ブーツを脱いでベッドに上がり込む。

 「ふぅーっ、ふぅーっ!」「まあ、見ていろ。姉は、お前よりはやりなれているからな」彼女はそう言うと、青年の股間をまさぐった。「あ、ししょお…」「おお、硬いな。やっぱり期待できそうだ…」「あ、ああ…」リリアンは、羞恥に顔を覆い、指の隙間から覗く。

 「見ろ、男はこうすると、ほれ、準備万端になって…」「あっ、でちゃいます!」「バカたれが、まだ説明中だろうが」「ううっ!」ダンピールは、精嚢を握り発射を防ぐ。

 「リリアン!」「えっ?」「見てないで、お前もやらんか!」「わ、わかりましたわ…姉上…」「姉上…?」ヴィヴィアンは、手首の傷を舐めとり、妹に近づく。「な、何ですの…?んむ!?」「…はあっ」口をくっつけ、舌を絡める。自分の血を注ぎ込む。「んーっ!んーっ…んん」

 「『姉上』とは他人行儀もあったものだ、おねえさま、だろう?」「ひゃい…おねえさま…」「わかったら、ヨナタンをしっかり世話するんだな。いいか、傷をこれ以上付けると許さんぞ?」「はい…」

 リリアンは、おそるおそる、ヨナタンのモノに触れた。「あっ…」ヴァンパイアの体温なき手つきは、ダンピールのそれとも異なる快感であった。「…き、気持ちいいかしら?」「…あ、いいよ。すごっ、うう…」「…やだ、熱い」

 「ふふふ。私もちょっと、昂ってきたか…」ヴィヴィアンは、キュロットを脱ぎ捨て、レース状の下履きだけになる。既に、濡れている。「弟子よ…師匠に普段の薫陶の成果を見せろ…」「わぶっ」女は、青年の顔に乗った。

 「速くしろ…」「は、はい…」ヨナタンは慣れた手つきで、紐を解いて下着を脱がす。「…いい…いいぞ。お前の舌は…修行をつけた甲斐っ…ん、あったものだ…はあっ」

 芳しい血と、甘ったるい体液が、高級なシルクの寝具を怪我していく。三人は、一つの生き物となっていく。

 「おねえさま…いや、そこはきたないですわ…」「ふふふ。同じ血を分けた、れろ…姉妹ではないか」「ああ…」「お前の全てが、綺麗で、愛おしく…淫らだよ」姉は、妹の耳を擽るように言った。

 「し、ししょう…本当に?」「…そうだ。妹のハジメテ、精々キモチよくしてやれよ?」師匠は、弟子の背中に乳房を押し付け、指導した。「そんな…大きなもの、入りません…」「…失礼しますっ!」「ああ…だめぇ」

 「…いい香りだ」ヴィヴィアンは、結合部に顔を寄せた。「れろ…はあっ…クラクラするな」彼女は、先走りと破瓜の血が混じる粘液を舐め取った。

 「…いたい」「大丈夫か?妹よ…ヨナタン、教えた通りに、優しく抱いてやれよ?大切な妹だからな」「は…はい」「リリアン…痛みと血には、痛みと血…女と男が一つになれば、快楽が勝るぞ」彼女は、指を傷つけ、追加の血を喘ぐ口に押し込んだ。

 「…もごっ…ぷはぁ」吸血鬼の紅い眼が鮮烈さを増す。「…う、うわあ!」狩人を押し退け、逆に押し倒し、首に吸い付く。「はあはあ…」「あ、ああ…」そして、再び腰をくっつける。今度は、少女が動く番であった。

 「ふふふ。二人ともかわいいぞ…」ヴィヴィアンは、二人の情事を見つつ、自分の熱を慰める。「疲れたら言ってくれ。いつでも、変わるからな」

 
 
25/09/03 08:39更新 / ズオテン

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