第拾ニ回 「反主神暗黒演奏サバト」
主神教のプロパガンダにより、必要以上に魔物をデモナイズ(重複表現じみている)する作品が多いのは、多くの女の子とお兄ちゃん達にはご存知のことであろう。
しかし、何故かモチーフとして、「魔王は、何らかの楽器(主にパイプオルガン)を演奏しながら、勇者を待ち構えていた」という意図の不明瞭な場面が、散見されている。
魔物側は、近年このある種滑稽な表現について、面白がって実際にダンジョンにて楽器を演奏しつつ、冒険者を心待ちにする者達がいるのだ。
ガンダルヴァやサルピンクスのような、元から演奏に関わる種族、人魚やセイレーンのような生来歌を唱う種族だけでなく、多種多様な魔物がこの流行を取り入れている。
何度か、冒険者ギルドで取材した所、ダンジョンに入った瞬間、音楽が流れ始める怪現象が見受けられた。恐らく、それは幻聴ではなく魔物が実際に曲を流しているのだ。
さて、当然そのような流れに乗ったバフォメットならびに、サバトは存在するのだ。
概要:「反主神教暗黒演奏サバト」は、マリリン・マディソンなる芸名を持つ、バフォメットの音楽家が創設したサバトである。彼女は、主神教原理主義と反魔物教国の女の子を対象に無料で演奏し、音楽を教えていた。それが、サバトになるにつれ、「反主神教主義者」が協力を持ちかけるようになったという。始めは、同じ敵を持ち蜜月関係にあったが、彼らのあまりに過激な活動に辟易し、袂を分かった。それ以降は、反主神教の作詞や親魔物的神格の作曲をしつつ、教会の裏で演奏するというミサを行って、彼女らなりに対抗しているのだ。
魔女コレクトラ(以下、コレ):それでは、インタビューを開始します。
魔女アビゲイル(以下、アビ):よお…アンタ、「犬に取ってこい」(脚注1)やってるかい…?
伝統的、ゴシックなお嬢様の装いに反して、椅子の背もたれに寄りかかり、気だるげにしている。
コレ:えっ?
ケン兄貴:このコが言ッてんのは…つまり、主神を金儲けや支配の道具にしてる、真の冒涜者どもへの挑戦…そういうことだよ。
お兄ちゃんの男は、上半身裸であった。(コレクトラの目に毒だろう)だが、首からは主神を象徴するタリスマンを逆向きに下げている。
アビ:兄貴ィ…全部説明しちまうと…それはロック(脚注2)じゃねえよ…
ケン:アビィよお、兄ちゃんはな、野暮なことなんて承知してんだよ。あくまで、音楽で表現しろって。
アビ:じゃあ…
ケン:けどよお、オレらのパフォーマンスってのは、内輪向きになっちまったらオワリ、なんだよ。そう思うよな、インタビュアーさん?
コレ:ええと…確かに、音楽は食わず嫌いな人も多くて、特に反主神暗黒魔界鋼系は、魔女やお兄ちゃんでも避ける人が多いかな、と。
アビ:魔女っつってんのに、最近の連中は…気合い足んねえよ…
気だるげな中に、悔しさと怒りが籠っていた。
ケン:アビィ…気持ちわかるぜ…だがよ、そーいう態度っての?そーいうトーシロを拒むようなコト言うのは、教団と一緒になっちまうぞ。
彼は、異様な服装に反して、えらく優しく魔女の頭を撫でた。
アビ:兄貴ィ、ごめん…
ケン:いいってこった。兄ちゃんは、いつでも味方だぜ。
彼女を抱き締める手は、悪魔崇拝のサインを作っていた。
コレ:やだ、素敵…はっ、すみません、ではインタビュー再開しても?
アビ:あっ、すまねえ。じゃあ…
コレ:お二人は、どうやって出会われたのですか?
アビ:魔女裁判。兄貴が判事役の神父で、アタシが被告…
コレ:それは、また…
ケン:神父っつってもよ、まだ駆け出しのケツの青いガキだったんだ。知らなかったよ、教会がこんなちっこいのまで火炙りにするようなトコだって。
アビ:だけど、たまたまミサやりに来た、マディソンがあたしらを助けてくれてよ。でさ、二人でデュエットしながら、へたくそな歌をして…
ケン:オレは、実際ガキに手を出す変態だけどよ。ある種の…そう、ヘルマプロディトス的な、古代信仰みてえな?
神学とサバトって、表裏一体だなって、そんとき思ったよ。刺激的な夜だった…
コレ:なるほど、確かに未成年を神の器とする、未成熟の中性に神秘を…
彼女の知的好奇心は、我がサバトの模範とすべき姿だと思う。
アビ:ぷっ…アンタさ、あんまり兄貴の言うコト、真に受けんな。
コレ:へっ?
何とかわいらしい生き物か。
ケン:まあ、御託は置いといて、オレとアビィはロックで繋がってんだ。愛してるぜ。
アビ:アタシも…
脚注1:Dog-Fetchという、反主神スローガンの一つ。「Chief God(主神)」を逆転させ、「Dog Feich」として、更に似た音の「Dog Fetch(犬、取ってこい)」を当てたもの。
脚注2:「Rock and Roll」のことか。元は、古い主神教の警句「転がる石に苔は生えぬ(ほっつき歩いて、責任を取らぬ放蕩)」である。そこから転じて、「自由にやってやる」という意味で使われている。
しかし、何故かモチーフとして、「魔王は、何らかの楽器(主にパイプオルガン)を演奏しながら、勇者を待ち構えていた」という意図の不明瞭な場面が、散見されている。
魔物側は、近年このある種滑稽な表現について、面白がって実際にダンジョンにて楽器を演奏しつつ、冒険者を心待ちにする者達がいるのだ。
ガンダルヴァやサルピンクスのような、元から演奏に関わる種族、人魚やセイレーンのような生来歌を唱う種族だけでなく、多種多様な魔物がこの流行を取り入れている。
何度か、冒険者ギルドで取材した所、ダンジョンに入った瞬間、音楽が流れ始める怪現象が見受けられた。恐らく、それは幻聴ではなく魔物が実際に曲を流しているのだ。
さて、当然そのような流れに乗ったバフォメットならびに、サバトは存在するのだ。
概要:「反主神教暗黒演奏サバト」は、マリリン・マディソンなる芸名を持つ、バフォメットの音楽家が創設したサバトである。彼女は、主神教原理主義と反魔物教国の女の子を対象に無料で演奏し、音楽を教えていた。それが、サバトになるにつれ、「反主神教主義者」が協力を持ちかけるようになったという。始めは、同じ敵を持ち蜜月関係にあったが、彼らのあまりに過激な活動に辟易し、袂を分かった。それ以降は、反主神教の作詞や親魔物的神格の作曲をしつつ、教会の裏で演奏するというミサを行って、彼女らなりに対抗しているのだ。
魔女コレクトラ(以下、コレ):それでは、インタビューを開始します。
魔女アビゲイル(以下、アビ):よお…アンタ、「犬に取ってこい」(脚注1)やってるかい…?
伝統的、ゴシックなお嬢様の装いに反して、椅子の背もたれに寄りかかり、気だるげにしている。
コレ:えっ?
ケン兄貴:このコが言ッてんのは…つまり、主神を金儲けや支配の道具にしてる、真の冒涜者どもへの挑戦…そういうことだよ。
お兄ちゃんの男は、上半身裸であった。(コレクトラの目に毒だろう)だが、首からは主神を象徴するタリスマンを逆向きに下げている。
アビ:兄貴ィ…全部説明しちまうと…それはロック(脚注2)じゃねえよ…
ケン:アビィよお、兄ちゃんはな、野暮なことなんて承知してんだよ。あくまで、音楽で表現しろって。
アビ:じゃあ…
ケン:けどよお、オレらのパフォーマンスってのは、内輪向きになっちまったらオワリ、なんだよ。そう思うよな、インタビュアーさん?
コレ:ええと…確かに、音楽は食わず嫌いな人も多くて、特に反主神暗黒魔界鋼系は、魔女やお兄ちゃんでも避ける人が多いかな、と。
アビ:魔女っつってんのに、最近の連中は…気合い足んねえよ…
気だるげな中に、悔しさと怒りが籠っていた。
ケン:アビィ…気持ちわかるぜ…だがよ、そーいう態度っての?そーいうトーシロを拒むようなコト言うのは、教団と一緒になっちまうぞ。
彼は、異様な服装に反して、えらく優しく魔女の頭を撫でた。
アビ:兄貴ィ、ごめん…
ケン:いいってこった。兄ちゃんは、いつでも味方だぜ。
彼女を抱き締める手は、悪魔崇拝のサインを作っていた。
コレ:やだ、素敵…はっ、すみません、ではインタビュー再開しても?
アビ:あっ、すまねえ。じゃあ…
コレ:お二人は、どうやって出会われたのですか?
アビ:魔女裁判。兄貴が判事役の神父で、アタシが被告…
コレ:それは、また…
ケン:神父っつってもよ、まだ駆け出しのケツの青いガキだったんだ。知らなかったよ、教会がこんなちっこいのまで火炙りにするようなトコだって。
アビ:だけど、たまたまミサやりに来た、マディソンがあたしらを助けてくれてよ。でさ、二人でデュエットしながら、へたくそな歌をして…
ケン:オレは、実際ガキに手を出す変態だけどよ。ある種の…そう、ヘルマプロディトス的な、古代信仰みてえな?
神学とサバトって、表裏一体だなって、そんとき思ったよ。刺激的な夜だった…
コレ:なるほど、確かに未成年を神の器とする、未成熟の中性に神秘を…
彼女の知的好奇心は、我がサバトの模範とすべき姿だと思う。
アビ:ぷっ…アンタさ、あんまり兄貴の言うコト、真に受けんな。
コレ:へっ?
何とかわいらしい生き物か。
ケン:まあ、御託は置いといて、オレとアビィはロックで繋がってんだ。愛してるぜ。
アビ:アタシも…
脚注1:Dog-Fetchという、反主神スローガンの一つ。「Chief God(主神)」を逆転させ、「Dog Feich」として、更に似た音の「Dog Fetch(犬、取ってこい)」を当てたもの。
脚注2:「Rock and Roll」のことか。元は、古い主神教の警句「転がる石に苔は生えぬ(ほっつき歩いて、責任を取らぬ放蕩)」である。そこから転じて、「自由にやってやる」という意味で使われている。
25/07/16 08:09更新 / ズオテン
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