セクション2
「…ヘエ。マサカ、こんなところでオナカマに出会えるとはな」オルトリストはどうでもよさげに呟いた。「アタシと妹、そんでコイツとこれからイイコトしようってのに、邪魔しやがってナンオラー!」「ウマに蹴られろや、チェラッコラー!」コワイ!姉妹マモノはヤクザスラングで相対するインキュバスとドローンにすごんだ。
「ウマ…ウフフ…そうだウマだ」(…ウマがどうしたんだ?)インキュバス、ホワイトナイトは後ろに庇った男のつぶやきに何か引っかかりを感じた。「なあ、ネエチャンがた。ここはひとつ、それについて謝るからよ…こっちのカレに謝って、そんでミンナ冷静に話し合おうってことでテウチできねえか?」
「アッコラー?!テメエ、黙って聞いてりゃ勝手なこと言いやがって!」「もういいから、ヤッチマンゾー!イヤーッ!」「イヤーッ!」交渉失敗!ここから、もはやイクサだ!「やるしかねえってか」『ってことだね!』ブウウゥゥゥン!ドローンが急速上昇!「イヤーッ!」ホワイトナイトは抜刀!着流しの男はイアイドの基本的な構えをとった。
(…見間違いか?このカタナ、なんか変に輝いて見える…)ホワイトナイトの背後の男、サブロはそのカタナの異様な雰囲気を感じ取った。(…ユメでもこの輝き…そして、ウマ…)すぐそばのイクサに目もくれず、やせ細った男はカミガカリ的に物思いに耽った。
「焦げちまえーッ!イヤーッ!」オルトリストは目からあふれる炎と同質のものを手から発射!「イヤーッ!」ホワイトナイトは間一髪その獄炎を切り払った!『気を付けろ!ヘルハウンドはその身を巡る炎を操るんだ!』「ヨソミスンナ、イヤーッ!」アブナイ!デジタルスクイレルのドローンにオルトレンドのツメが迫る。
『Take this!』ドローンが飛翔体を放つ!(へッ!ヘルハウンドが同じ攻撃を食らうかよ!)「イヤーッ!」オルトレンドはすでに見切っており、その鋭利なツメでなんらかの飛び道具を真っ二つにした!『アーア。キミならよけれただろうに…』「アアン!?」
ヘルハウンドが言葉の意味を理解するよりも早く、その鼻は異変を感じ取った。「クンクン…グワーッ!?」オルトレンドは目を充血させ、その場に倒れこんだ!「妹!?テメエ、何しやがった!」オルトリストは妹の悲鳴に振り返った。
ナムサン、毒ガスか!?実際、この刺激物はヘルハウンドの鋭敏な嗅覚には毒と同等であろう。デジタルスクイレルが用いたものは、かつて市販された暴漢撃退用スプレー「シビレル」を詰めた催涙弾である。もちろん、非殺傷用の護身グッズであるが、使用されたバイオ・ワサビはオーガニックの数十倍の辛さを含むのだ。『いかなマモノといえど…インヤ、むしろヘルハウンドの鼻だからこそ、ここまで効果を発揮したといえるか」
「チクショ…サヨナラッ」オルトレンドは腹出し降参気絶!「妹ォッ!もう許さねえ、ザッケンナコラ、イヤーッ!」オルトリストは怒り心頭で、対峙しているホワイトナイトに特大の火炎を放った!「グウウウッ」ホワイトナイトはカタナで炎を抑えたものの、徐々に押されていった。
「イヤーッ!」「グウウウッ」オルトリストは間髪入れずに火炎放射を続けた。男の羽織るコートは、今までは白かったのだが、徐々に先端から橙色、灰色、黒へと変色していった。「イイヤアアーッ!」「グウウウウウッ」
ヘルハウンドはさらに距離を詰める!ホワイトナイトの体力も削れていく、ジリープアー(訳注:徐々に不利)か!?
「ヘへへッ、今アタシらに謝ればミディアムレアくらいで許してヤンヨ?」「…断る、と言ったら?」「…じゃあ気ィ失うくらい殴るくらいでカンベンしてやるよォ!イヤーッ!オルトリストの火勢は最大に達する!このままでは、ホワイトナイト、そしてサブロは!?
『Take this!』そこにドローンがまた催涙弾を発射!「アタシ今体温何度あるのかなーッ!」しかし、オルトリストは一瞬全身を炎に包み、催涙弾を燻蒸消毒!『そんなんアリ!?』「ヘルハウンドをナメンナヨ!」「グウウウッ」
『…もう十分じゃないか?』「アアアッ?テメエら、詫びもなし、殴れてもねえし、そんで十分だァ!?ソマシャッテ『アア、すまないコッチのハナシだ」アン?」ヘルハウンドは訝しんだ。(…コイツ、誰に話しかけ…)
「グウウウ…十分かもな」「ハッ、今さら大口たたいてもカッコつかねえだろ、消し炭がよォ!イイイイイヤアアアアッ!」ナムアミダブツ、オルトリストの最大火力がホワイトナイトに向けて放たれた!しかし!「イイイイヤヤヤヤヤヤヤヤッ!」
「ッ?!」「…?」ヘルハウンドは驚愕に目を見開き、この場にいるただ一人の人間はその光景をうつろに見ていた。既にコートが焼け落ち、着流しだけの男はどうやって危機を凌いだのか?
「彫刻のタツジンは石に最初から掘るべき形が見えていて、彼のノミはただその運命に従って動く」と言われることがある。ホワイトナイトのカタナは、持ち主の手足のごとく自然に、その刃を動かすべき線に沿って動いた。ただその速度は、コンマ数秒であり、常人には不可能であった。彼は実際、人間ではなくなっているだ。インキュバスである。
業火は細分化し、すべてがセンコ花火めいて散った。(バカナ、アリエナイ…)「…イ、イヤーッ!」オルトリストは先ほどまでの余裕は消え失せ、ヤバレカバレに殴りかかった。「イヤーッ!」「グワーッ!」ホワイトナイトはオルトリストを斬り捨てた。
「斬れて…いない?」サブロは疑問を口に出した。実際彼女の体は斬られたわけでなく、血も流していない。マモノのイクサは、命のやり取りではない。「愛と愛の一騎打ち」、「ケンカするのはユウジョウ」、「ボーイハント」、そういった類のものだ。魔物娘図鑑にも書かれている。ホワイトナイトはその魔力を込めたカタナであのヘルハウンドのボンノを斬ったのだ。
「サヨナラ」オルトリストは腹出し降参。『ヒヤヒヤ、させんなヨ!』「ごめんって、スクイリー!オレもまだこのワザには慣れなくて…』着流しの男はドローンに平謝りした。「ところで、キミ?」「エッ?」瘦せこけた男は、いきなりインキュバスに話しかけられた。
「ケガはないか?」「アッハイ…」「そりゃよかった、オレはマサキ、マサキ・ケンネイだ。」男はアイサツした。『そしてワタシは、クリス、ヨロシク!」」ドローンもアイサツした。
「…これはシツレイ、グルニヤ・サブロです。」そういって、会社員は名刺を差し出した。「助けていただき、アリガトウゴザイマス…」「…ドウイタシマシテ」マサキはその機械的な動作や心あらずの表情を見ながら、名刺を受け取った。セイショナゴン・コスメティック経理部会計課グルニヤ・サブロ
「今日見たことはスマンが忘れてほしい…」『サツにもできれば届け出ないでくれ』男とドローンは真剣なトーンで話した。「…まあ、私も無事なので別にこれ以上は。では、そこの二人の…ヨーカイは?」「起きたら、冷静になってるだろうから、ちょっと話聞いて、婚活のアドバイスってとこかな」
「ハァ?」「まットニカク、この二人はサツには扱えない…見ただろ、さっきの戦い」サブロは先ほどのイクサを朧げに思い返した。確かにこの世のものとは思えなかった。(…ン?この世のものとは思えない…)幽鬼じみた細身の男は、そのインスピレーションに足を動かした。(そうだ、ウマ、この世ならざる…)
「オイッダイジョブか?」「ウフフ…そうだ、ウマだ。ウツツにはいない、ユメで…」ぶつぶつと何事かを喋りながら、男は大通りに戻っていった。マサキとドローンは、呆気にとられ、すぐさま追いかけた。瘦せこけた男は雑踏に紛れて、もはや見えなかった。『…その名刺はちゃんと取ってないといけないね…』「ナンデ?」
『確証はないが、近いうちにまたその名前を聞くことになりそうだからね…』ドローンのスピーカー越しに、クリスはその音を聞いた。ウマの蹄鉄の音を…
セクション2終わり。セクション3に続く
「ウマ…ウフフ…そうだウマだ」(…ウマがどうしたんだ?)インキュバス、ホワイトナイトは後ろに庇った男のつぶやきに何か引っかかりを感じた。「なあ、ネエチャンがた。ここはひとつ、それについて謝るからよ…こっちのカレに謝って、そんでミンナ冷静に話し合おうってことでテウチできねえか?」
「アッコラー?!テメエ、黙って聞いてりゃ勝手なこと言いやがって!」「もういいから、ヤッチマンゾー!イヤーッ!」「イヤーッ!」交渉失敗!ここから、もはやイクサだ!「やるしかねえってか」『ってことだね!』ブウウゥゥゥン!ドローンが急速上昇!「イヤーッ!」ホワイトナイトは抜刀!着流しの男はイアイドの基本的な構えをとった。
(…見間違いか?このカタナ、なんか変に輝いて見える…)ホワイトナイトの背後の男、サブロはそのカタナの異様な雰囲気を感じ取った。(…ユメでもこの輝き…そして、ウマ…)すぐそばのイクサに目もくれず、やせ細った男はカミガカリ的に物思いに耽った。
「焦げちまえーッ!イヤーッ!」オルトリストは目からあふれる炎と同質のものを手から発射!「イヤーッ!」ホワイトナイトは間一髪その獄炎を切り払った!『気を付けろ!ヘルハウンドはその身を巡る炎を操るんだ!』「ヨソミスンナ、イヤーッ!」アブナイ!デジタルスクイレルのドローンにオルトレンドのツメが迫る。
『Take this!』ドローンが飛翔体を放つ!(へッ!ヘルハウンドが同じ攻撃を食らうかよ!)「イヤーッ!」オルトレンドはすでに見切っており、その鋭利なツメでなんらかの飛び道具を真っ二つにした!『アーア。キミならよけれただろうに…』「アアン!?」
ヘルハウンドが言葉の意味を理解するよりも早く、その鼻は異変を感じ取った。「クンクン…グワーッ!?」オルトレンドは目を充血させ、その場に倒れこんだ!「妹!?テメエ、何しやがった!」オルトリストは妹の悲鳴に振り返った。
ナムサン、毒ガスか!?実際、この刺激物はヘルハウンドの鋭敏な嗅覚には毒と同等であろう。デジタルスクイレルが用いたものは、かつて市販された暴漢撃退用スプレー「シビレル」を詰めた催涙弾である。もちろん、非殺傷用の護身グッズであるが、使用されたバイオ・ワサビはオーガニックの数十倍の辛さを含むのだ。『いかなマモノといえど…インヤ、むしろヘルハウンドの鼻だからこそ、ここまで効果を発揮したといえるか」
「チクショ…サヨナラッ」オルトレンドは腹出し降参気絶!「妹ォッ!もう許さねえ、ザッケンナコラ、イヤーッ!」オルトリストは怒り心頭で、対峙しているホワイトナイトに特大の火炎を放った!「グウウウッ」ホワイトナイトはカタナで炎を抑えたものの、徐々に押されていった。
「イヤーッ!」「グウウウッ」オルトリストは間髪入れずに火炎放射を続けた。男の羽織るコートは、今までは白かったのだが、徐々に先端から橙色、灰色、黒へと変色していった。「イイヤアアーッ!」「グウウウウウッ」
ヘルハウンドはさらに距離を詰める!ホワイトナイトの体力も削れていく、ジリープアー(訳注:徐々に不利)か!?
「ヘへへッ、今アタシらに謝ればミディアムレアくらいで許してヤンヨ?」「…断る、と言ったら?」「…じゃあ気ィ失うくらい殴るくらいでカンベンしてやるよォ!イヤーッ!オルトリストの火勢は最大に達する!このままでは、ホワイトナイト、そしてサブロは!?
『Take this!』そこにドローンがまた催涙弾を発射!「アタシ今体温何度あるのかなーッ!」しかし、オルトリストは一瞬全身を炎に包み、催涙弾を燻蒸消毒!『そんなんアリ!?』「ヘルハウンドをナメンナヨ!」「グウウウッ」
『…もう十分じゃないか?』「アアアッ?テメエら、詫びもなし、殴れてもねえし、そんで十分だァ!?ソマシャッテ『アア、すまないコッチのハナシだ」アン?」ヘルハウンドは訝しんだ。(…コイツ、誰に話しかけ…)
「グウウウ…十分かもな」「ハッ、今さら大口たたいてもカッコつかねえだろ、消し炭がよォ!イイイイイヤアアアアッ!」ナムアミダブツ、オルトリストの最大火力がホワイトナイトに向けて放たれた!しかし!「イイイイヤヤヤヤヤヤヤヤッ!」
「ッ?!」「…?」ヘルハウンドは驚愕に目を見開き、この場にいるただ一人の人間はその光景をうつろに見ていた。既にコートが焼け落ち、着流しだけの男はどうやって危機を凌いだのか?
「彫刻のタツジンは石に最初から掘るべき形が見えていて、彼のノミはただその運命に従って動く」と言われることがある。ホワイトナイトのカタナは、持ち主の手足のごとく自然に、その刃を動かすべき線に沿って動いた。ただその速度は、コンマ数秒であり、常人には不可能であった。彼は実際、人間ではなくなっているだ。インキュバスである。
業火は細分化し、すべてがセンコ花火めいて散った。(バカナ、アリエナイ…)「…イ、イヤーッ!」オルトリストは先ほどまでの余裕は消え失せ、ヤバレカバレに殴りかかった。「イヤーッ!」「グワーッ!」ホワイトナイトはオルトリストを斬り捨てた。
「斬れて…いない?」サブロは疑問を口に出した。実際彼女の体は斬られたわけでなく、血も流していない。マモノのイクサは、命のやり取りではない。「愛と愛の一騎打ち」、「ケンカするのはユウジョウ」、「ボーイハント」、そういった類のものだ。魔物娘図鑑にも書かれている。ホワイトナイトはその魔力を込めたカタナであのヘルハウンドのボンノを斬ったのだ。
「サヨナラ」オルトリストは腹出し降参。『ヒヤヒヤ、させんなヨ!』「ごめんって、スクイリー!オレもまだこのワザには慣れなくて…』着流しの男はドローンに平謝りした。「ところで、キミ?」「エッ?」瘦せこけた男は、いきなりインキュバスに話しかけられた。
「ケガはないか?」「アッハイ…」「そりゃよかった、オレはマサキ、マサキ・ケンネイだ。」男はアイサツした。『そしてワタシは、クリス、ヨロシク!」」ドローンもアイサツした。
「…これはシツレイ、グルニヤ・サブロです。」そういって、会社員は名刺を差し出した。「助けていただき、アリガトウゴザイマス…」「…ドウイタシマシテ」マサキはその機械的な動作や心あらずの表情を見ながら、名刺を受け取った。セイショナゴン・コスメティック経理部会計課グルニヤ・サブロ
「今日見たことはスマンが忘れてほしい…」『サツにもできれば届け出ないでくれ』男とドローンは真剣なトーンで話した。「…まあ、私も無事なので別にこれ以上は。では、そこの二人の…ヨーカイは?」「起きたら、冷静になってるだろうから、ちょっと話聞いて、婚活のアドバイスってとこかな」
「ハァ?」「まットニカク、この二人はサツには扱えない…見ただろ、さっきの戦い」サブロは先ほどのイクサを朧げに思い返した。確かにこの世のものとは思えなかった。(…ン?この世のものとは思えない…)幽鬼じみた細身の男は、そのインスピレーションに足を動かした。(そうだ、ウマ、この世ならざる…)
「オイッダイジョブか?」「ウフフ…そうだ、ウマだ。ウツツにはいない、ユメで…」ぶつぶつと何事かを喋りながら、男は大通りに戻っていった。マサキとドローンは、呆気にとられ、すぐさま追いかけた。瘦せこけた男は雑踏に紛れて、もはや見えなかった。『…その名刺はちゃんと取ってないといけないね…』「ナンデ?」
『確証はないが、近いうちにまたその名前を聞くことになりそうだからね…』ドローンのスピーカー越しに、クリスはその音を聞いた。ウマの蹄鉄の音を…
セクション2終わり。セクション3に続く
24/05/17 09:51更新 / ズオテン
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