連載小説
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第九回 「農業サバト」
 かつて、とあるサバトによって、バフォメット長老会議が二分(実際には、中立派もいた)されたことがある。私は、その時はまだ魔法に縁もゆかりもなかったので、直接は知らないことだ。

 その事件は、「マルーネ論争」と後に呼称された。争点は、サバト全てに通底する「少女の背徳」における、「少女性」と「発育」という命題だ。

 思春期の読者の方には、センシティブな話題なため、今回は詳細を省くが、実際のところこの論題は「少女とはそもそもどこまでを指すのか」、「早熟な女性はサバトに入団する資格はないのか」、「巨乳と貧乳のパラドックス」という哲学的な領域に波及した。

 そのような、ある種のブレイクスルーをもたらした、しかし本人達は至って素朴な村娘という、これまた異例な「農業サバト」を紹介したい。

概要:マルーネ・サバトは、ある地方の農村にて発足した。代表者は、「山羊角の村娘」ことマルーネ嬢。創立してから日が浅いのにも関わらず、巷では「7大サバト」に数え上げられる新進気鋭の共同体である。魔法を公共事業に使う、しかも第一次産業である農業に専ら利用するのはサバト業界広しと言えど、ほぼ唯一であると言える。かつて、農家と言うのは、家業であるから仕方なく行う、「きつく、汚く、危険な」仕事に挙げられた。だが、今やマルーネの村は、「農業体験」と「スローライフ」の聖地であり、多種多様な穀物、野菜、酪農の一大拠点として移住者と観光客が絶えないのだ。「農業女子に憧れる少女」や「都会に疲れたあなた」は、訪れてみては如何か?

魔女コレクトラ(以下コレ):本日はご協力いただき感謝致します。

魔女ナトゥーヤ(以下ナトゥ):おばんです(こんばんは)。

コレ:…え、もう一度よろしいですか?

ベコルスあんにゃ(以下ベコ):おめ、そら都会のヒトさ通じねえべよ。

ナトゥ:あっ、わりわり。えっと、おこんばんは。

コレ:あっ、そういうことですか。こんばんは。

ベコ:ほれみろ。おら言うたでねか、村の外出たら、言葉気を付けろでって?

ナトゥ:だけんじょ、あんにゃさまぁ、スァバトのむすめっこの中でおらがいっちばん訛りねって。

コレ:大丈夫ですよ。むしろ、かわいらしいです!

ナトゥ:へへへ、むずがい(恥ずかしい)べ!おめさまも、めんこいだよ!

ベコ:コレクトラさん、かえってわりな。うちのあんぽんたん(おばか)がよ。

ナトゥ:あんにゃ、なじょして、そんないじわる言うだよ!もっと優しゅうしてくんに!こんでれすけ(間抜け)!

ベコ:なじょ言ってんだ、ばかっこが!

コレ:まあ、まあ二人とも…

ナトゥ:あんにゃあ、おらこんだぁ、ごせやいだ(むかっ腹が立った)!おらのお胸しばらくさわらんな!

ベコ:そら、ほんとがい?

ナトゥ:ほんとも、ほんとだあよ!

コレ:…つまり?

ナトゥ:あんにゃといちゃくね(いたくない)!

ベコ:悪かっただよ。おめのことが、いっとう心配でな。

ナトゥ:ふん、今さらおせだよ!

ベコ:しょうがね…おらがお菓子分けてやる。

ナトゥ:したっけ(それなら)、許すだよ。

コレ:…仲直りされたということで、よろしいですか?
25/06/27 22:49更新 / ズオテン
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