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第三章 征服者と魔神 その4~閨での密会♥️
戴冠式は恙無く執り行われた。先帝セリムは、式典の最中は法衣を着て、ウラマーに交じり座っていた。(父上の認識は、もはや皇帝や皇族になく、信徒や教導者にあるのか)ダウードは思わず苦笑した。

「これにて、父上の私物ならびにレガリアは全て宝物庫とギョズミェの寺院への荷物に積ませました」宦官達がせっせと荷造りを行う裏で、新帝と太上皇帝はハグとキスを交わした。「すまぬな…ワシの我が儘に振り回してしまって」「いずれこうなることはわかっておりました。天命でございます。早いか晩いか、それだけのこと」

二人は事務的に別れを行うと、作業も全て終わり、若き皇帝が一人部屋に残る。すると、俄に部屋には、薄桃色の霞が立ち込めてきた。「ようやく、御主人様があるべき地位に就かれた様で…誠にめでたく存じ上げます」「社交辞令はいるまい…それで、君は僕が帝位に就いたくらいで満足か?」

魔神は、彼の言葉に口角を上げた。「…ええ。しかしながら、やっと出発点に辿り着いたこと、それ自体を祝福致しますわ」「そうだな。僕も君に感謝しなくては…」

それ以上の言葉は、ジーニーの細く形の良い人差し指に中断された。「わたくしにも、願いを叶える者として矜持がありますれば、このような些事にいちいち謝意を貰ってはおれません」

「そうだね。さて、僕らは次に何をすべきかな?」パーディシャーは、早速私物の文献を豪奢なテーブルに広げた。「権力基盤が脆弱な僕に、まず必要なのは軍部の掌握だ」「先日のあの何とか言うベイの表情からも、御主人様への不信と敵意は見てとれました。つまり、不満があるということですわ」魔神は、元帥の顔を模した即席の人形を見せた。

「不満があるってことは、逆に言えば解消すれば心象も変わるってことか?」「その通り。特に、新軍は徴募兵ではなく、皇帝が雇う戦士団。彼らを御せれば、逆説的に貴方は皇帝の威風を示せるということ」「ふむ。やってみる価値はあろうな」

二人は翌日から、早速宮中での工作に取り掛かった。まず、ジーニーを人間の女官として正式に入台させることにした。彼女は、何食わぬ顔で徴収された虜囚や奴隷の列に加わり、後宮の採用に合格した。

ダウードは折を見て、女官を抜き打ちで査察し、魔神は卒なく技量を示した。そして、女中長が気を利かせて、彼女を夜伽に指名した。

ノックの音がして、ダウードは扉を見た。「うむ。"一夜の妃とは、儚いものだ。夢が朝には消えるが如く、余の相手も夜明けと共に姿を消す"」彼は、夜伽の者が来る度にこの符丁を口にする。すぐに答えられぬ者や、返し句が違う者は全て帰らせる。

「"何故に女達は消えるのか。何故なら、太陽が起きるとき、夜露と霞が晴れるから。けれども、想いは雲となって天にて貴方の側にお供します"」「入りなさい」

若き皇帝は、その者の美貌に思わず喉を鳴らした。薄く化粧することで、素顔の妖艶さが強調されていた。髪は、串を入れ、香油で撫で付けただけなのに、風に靡く錦を思わせた。

「…う、うむ。やっと、二人きりで話ができそうだ…」「お気に召しましたか?」ジーニーは、ダウードの表情に気を良くして、更に意地悪な問いを投げ掛けた。「…いや、その。はい」「ふふ。せっかくですから、"初夜"を真似て見ますか?」彼女はしなだれかかってきた。

「いや、しかし…」彼は実際、彼女の艶やかさに当てられていた。そういう作戦とは言え、一方で部屋に招いた以上、「した」ことを扉の向こうの女官長に暗に示さないといけない。

「緊張しないで…貴方は出会ってもう三年は過ごしたではありませんか?知らぬ仲ではありませんよね」耳に当たる熱い吐息と、心地よくむず痒い小声が彼の精神を揺るがした。

「わかった…」「何が…ですか?」「それは、その…言わなくてもさ」「だぁ〜め、ですよ。私は御主人様の御用命でしか、手を出せないんですから、ね?」二人の体がより密着する。

「…したい」「何を」「よ…夜伽を!」「はい♥️よく出来ましたね」早速、ダウードは腕を掴まれて、ベッドに連れ去られた。そこからは、全てされるがままであった。

彼は全身余すところなく、毛繕いのように、舐められ、なぶられた。彼女が口を付ける度、その箇所が桃色に霞み、それがえもいわれぬ快感を生み出した。彼女は、楽しそうに主の"お世話"を行った。

「御主人様は、ここが弱いんですよね♥️」「はあ、うっ、悪いかっ」「いえ、むしろ私の責めでは、どんな殿方もご婦人もイチコロですから。御主人様はむしろよく耐えられた方かと♥️」魔神は、首筋を特に念入りに吸い上げた。

ダウードの"自信"が、特に猛々しく持ち上がったところで、彼女は口をそこに向けた。そして、ゆっくりと先端から呑み込んでいった。彼女が動く度、皇帝は快感に腰砕けになりかけた。

舌も、唇も、唾液も、全てが彼の射精を促した。ダウードは堪らず腰を前後した。ジーニーの口内は、どう動いても、どう激しくしても彼に吸い付いた。「くっ…出、る」「んんんん…ぷはぁ」恍惚とした魔神は、彼の精を全て味わい尽くした。

彼女は、数日ぶりの"食事"をすませると、その恩への"奉公"を再開した。彼女は、少し柔くなった彼の逸物を口から離し、ベッドに一緒に座らせた。「今日は、どちらが上かという訳でなく、二人とも座って行いましょうか」「…」

ジーニーはダウードの背中を擦りながら、身体を密着させる。彼女は、若き帝王の膝に乗り上げた。「御主人様、貴方の熱さ、貪欲さを感じます…」「…僕も、久しぶりに君に触れて…いつになく近くに感じる」

二人が互いを抱き締めると、自ずと下半身も密着する。もはや、主従を分ける境界はどこにもなかった。溶け合った彼らは、徐々に動きを激しくしていく。「あっ…御主人様を…カラダ全体で感じます」「ぼ、くも…」

ダウードは、ジーニーの豊かな胸に顔を埋めた。彼女は、何も言わず彼の頭を撫でた。「き、きみは…君は、ずっと居てくれる?」「はい」「僕を…置いてったり、しない?」「御主人様を決して置いてはいきませんよ」

皇帝は、安心した。魔神は、彼がこのように弱い部分を見せる姿も愛おしいと感じていた。そのため、彼女の締め付けが強まった。彼は安らかに全てを吐き出した。「ふっ…射精る」「今日もいっぱい、頑張りましたね」

疲れと、安心感から、ダウードはそのまま寝てしまった。ジーニーは、彼の身体を拭いて、上等な寝間着を着せ、添い寝した。(ふふふ…まだまだ、小さなかわいらしい子どもですね)彼女は、彼が起きるまで、その幸せな寝顔を楽しんだ。
25/06/24 06:42更新 / ズオテン
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