連載小説
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第七回 「爆発サバト」
魔女とは、特に戦闘を生業とする職業ではない。しかし、教団の悪意ある喧伝による、悪辣で暴力的な女魔導士のイメージが人口に膾炙して久しい。
 
 あるいは、あなたが少女であれば、バフォメット(仮名)御大も出資するあの女児向け映像作品によって、「魔法の杖により変身し、基本的に肉体強化で戦い、隙を見て敵対者を爆発魔法により吹き飛ばす」ものだと理解しただろう。

 実際のところ、魔女というか魔法使い一般は、"戦闘の専門家"とはいえない。「魔法は戦闘に使える」という、あなた方に一言言いたいのだが、「あらゆる技術は戦闘に応用できなくもない」のだ。
 
 話が長くなったが、しかし一方で"戦うこと"が目的の魔法を極めるサバトが存在し、彼女らは実際に爆発魔法を好んで用いる。その名も、「爆発サバト」。

概要:「爆炎アーチメイジ」こと、コガーネルというバフォメットにより創設された。彼女は、在野の魔道研究家で、専門は「爆発魔法」である。かつて、旧魔王軍により、教団ならびに人類圏がじわじわと押されている頃、武器商人のごとく、魔物であるはずのこの魔導士は、人間に自分の魔法と魔道具を売り込んでいた。何故なら、対魔王軍の方が、派手な爆発を試験できるからだそうだ。先代魔王は、離反者の彼女に暗殺者を何度も送り込んだが、幹部クラスですら爆破されて返り討ちにあったと言われる。

魔女コレクトラ(以下コレ)「本日は取材にご協力いただきありがとうございます」

魔女ボンバフデ(以下ボム)「汝は、硝煙と爆破の芸術(アート)に興味ありやなしや?」基本的に三角帽子に、かわいらしい装飾の制服であることは共通だが、謎のルーンが刻まれた包帯とよくわからないゴテゴテとした装飾の杖を持っている。

コレ「ええと…興味あらば、如何とする?」困惑しつつ、律儀に古語で対応する賢女。いとをかし。

ボム「しからば、汝は我の同胞(コマレード)と呼ばわん!嗚呼、何と幸いなるかな!」

コレ「普段から、このようなテンションなんですか?」兄君(あにぎみ)の方に質問相手を変える。

オカモートゥ兄君(以下オカ)「そうなんですよ。うちのサバトは、開祖からファミリアに至るまで、奇抜な格好をしつつ、なんか小難しい喋り方をしてまして…」発言者のお兄ちゃんは、しかして黒いコートに眼帯をしている。どうやら、隠匿の刻印と魔封じの魔道具のようだ。

ボム「兄君(マイン・プリンツ)…普段の貴様はもっと雅な物言いではなかったか?」不満そうに頬を膨らませる。

オカ「僕もたまには、一般人(エヴリマン)と話をしたいと思っていてね。マイネ・クライネ・ナハトプリンツェシン。それに、爆炎の素晴らしさを伝えるには、わかりやすく話さなくてはならないだろう?」

ボム「その通りだ。流石は、"全てを見通す者(アウル・オブ・ミネルヴァ)"の名を持ちし兄君」

コレ「ええと?」

ボム「我が友(コマレード)…爆発はいいぞ」右腕を顔に当て、左腕を下に向け、流し目で振り帰る。ステッキからは赤黒い光が溢れる。

オカ「彼女は…つまり、『爆破魔術師世直し紀行』主人公が放つ必殺技、"魔王爆殺陣(エクスプロージョン・アンホーリー)"のポーズをとっているんだ」腕組みし、感心したように首を振る。

コレ「そ…そうなんですか」

ボム「星辰の揃いし今夜、今天地の狭間にも双星は輝けり!汝と我…一つは夜空の星団に加わり、もう一つは地下深くの闇に熔ける…」杖の光が強まる。

コレ「あの…これ大丈夫なんですか」

オカ「大丈夫さ。僕は爆発耐性を既に獲得しているからね」

コレ「えっ…」

ボム「毎夜、見上げられ人々の記憶に残るか!地獄で忘失の彼方に消え行くか!二つに一つなり!魔王爆(エクスプロー…)

コレ「ストップ!一旦詠唱ストップ!」


25/06/17 22:44更新 / ズオテン
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