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第六回 「病魔サバト」
 魔女やお兄ちゃんの皆さまは、「医療士」についてどう認識しておられるか?「白衣の天使」や「白衣授与式」のように、その制服が印象に残るだろう。

 何故「白い服」で揃えるのか?伝統的には「聖職者=医療者」という認識があるからで、実利としては「白衣=汚染や瘴気の浸透がわかりやすい」からだ。むしろ、聖職者が純白の衣装を身に纏うのは、経験則的に"清潔"と"衛生"の関係を熟知していたのではないか。

 ところで、あなたは「黒衣の医療士」を見たことがあろうか?敢えて、真逆の黒い格好をするのは、一体どのような意味を持つであろう。今回は、そんな魔女が集う「病魔サバト」を紹介していきたい。

概要:「闇医療士」は基本的に徒党を組むことはしないが、「双生の病魔」ことミュンヒハウゼン姉妹は多くの黒魔女と有毒魔物、アンデッドを従えている。姉の「疫病の山羊」ミドーリ・ミュンヒハウゼン、妹の「共依存の魔獣」グリューネ・ミュンヒハウゼン両名は、グレイリアとかつて同門であったという。医療魔法が未発達だった頃、彼女らは対処療法的に「傷口から毒を吸い出す」、「患者の病原と目されるものを肩代わりする」ことをしていた。彼女らは、最初は崇高な医学者を志したが、病毒を溜め込むうちに変質した。決定打は、双生児は男の好みまで同じであったこと。二人は、同じお兄様を取り合い、自分のものにするため、遂には「自分の病気を感染」させ、看病するという明らかな違法行為に手を染めた。ミドーリ・グリューネらは破門されたが、同時にお兄様は「あらゆる病気に抵抗を持つ」インキュバスと化して、彼女らに心酔した。そして、放逐して一年と立たずにこの暗黒のサバトの手口が、世界を騒がせた。

魔女コレクトラ(以下コレ)「本日はご協力いただきありがとうございます」

魔女ミザリー(以下ミザ)「あの…そんなにジロジロお兄様のことを見ないでください」隈の刻まれた目を細めて、神経質そうな声を出す。

パウロお兄様(以下パウ)「やめなさい。彼女には既にお兄さんがいる。それに、君の作るオートミールは世界のどこにいったって食べられるものではない。君から離れるわけがなかろう」その顔は病的に白い。おそらく日光に当たっていないのだろう。だが、魔力は驚くべき濃密さである。

ミザ「まあ、お兄様…」パウロの頬に手を添える。その白い肌に毒々しい魔力が染みていくのが見える。

コレ「はあ…あの、では…お二人はどちらで」異様な雰囲気に、努めて平常心を保とうとする健気さ。彼女こそ天使ではないか。

ミザ「何故そのようなことを聞かれるので?我々はお兄様(クランケ)の情報を開示しません。何に使われるかわかったものでは…」

パウ「やめろと言わなかったかい?この場は、そもそも私と君がどのように難病を克服したかと報告するために来たんだ」その目は、生気がないのにも関わらず、威圧感を持っていた。

ミザ「でも」バツの悪そうな顔をした。

パウ「"でも"じゃあないだろう。知られて困ることは何もない。君が私を救ってくれたんだ!」いきなりミザリーの小さな身体を抱き締め始めた。

ミザ「ああ…お兄様」興奮状態のパウロに抱かれて息苦しそうであった。しかし、その表情は恍惚としている。

コレ「お兄さん…たすけて」流石に今にも泣きそうな彼女をこのままにはしておけない。後日、資料にまとめるということで、二人にはお帰りいただいた。
25/06/15 10:37更新 / ズオテン
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